説明

合金鋼の表面上に形成された窒化物層を検出しかつ除去する方法

【課題】その上に磁性表面層が形成された非磁性合金製の構成要素を処理する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、(a)較正マグネットゲージの磁石を構成要素の表面と接触させるステップと、(b)磁石を構成要素の表面から引離しかつ該磁石を引離すのに必要な力を測定するステップと、(c)その力を磁性表面層の厚さと相関させるステップと、(d)表面層の厚さが所定の最小厚さよりも大きい場合には、該表面層を除去するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的にはタービン燃焼器金属製品に関し、より具体的には、オーステナイト系合金鋼の表面上に形成された窒化物層についての検出及び該窒化物層に対して取るべき適切な一連の措置の決定に関する。
【背景技術】
【0002】
Nimonic(商標)合金263、つまり析出硬化性ニッケル−クロム−コバルト合金(本明細書では、「N−263」と呼ぶ)は、ターボ機械用の燃焼器金属製品を製造するのに使用されることが多いInternational Nickel Corp.の特許金属である。N−263に関連する劣化メカニズムは、その合金が2000°F以上の温度に曝された時に発生する窒化である。窒化は、合金が高窒素環境に曝された時にそれによってその表面内に窒素原子を吸収する高温不可逆過程である。窒素原子は、合金内に拡散して高窒素表面層を形成し、この高窒素表面層は、除去されなければならない。現在の補修方法は、単純磁石を使用して合金の表面上における窒化層の存在を検査するものである。磁気応答が検出されると、その磁気応答がなくなるまで試行錯誤法で表面を研削する。現在の方法は、特に検出法により、除去すべき窒化物の量を決定しないので、大ざっぱなものである。言い換えると、現在の方法は、補修工場の作業者に合金材料内に存在する問題成分(窒化物)の量に関しての何らの情報も与えないし、また望ましくない窒化物層を除去するのに必要な何らの機械加工の程度も与えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それ故に、現在の方法は、時間がかかりかつ不正確なものであり、従って、より有効な検出/除去方法に対する必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様では、本発明は、その上に磁性表面層が形成された非磁性合金製の構成要素を処理する方法に関し、本方法は、(a)較正マグネットゲージの磁石を構成要素の表面と接触させるステップと、(b)磁石を構成要素の表面から引離しかつ該磁石を引離すのに必要な力を測定するステップと、(c)その力を磁性表面層の厚さと相関させるステップと、(d)表面層の厚さが所定の最小厚さよりも大きい場合には、該表面層を除去するステップとを含む。
【0005】
別の態様では、本発明は、ニッケル−クロム−コバルト合金構成要素の表面上における窒化物層を検出する方法に関し、本方法は、(a)較正マグネットゲージを合金構成要素の表面と接触させるステップと、(b)合金構成要素の表面上における窒化物層の存在を、それがある場合には検出するステップと、(c)存在する場合には、マグネットゲージを合金構成要素の表面から取外すのに必要な力を測定しかつその情報を使用して窒化物層の厚さを決定するステップとを含む。
【0006】
次に、下記した図面の図に関連させて、本発明を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の方法で利用する公知の較正マグネットゲージの概略部分側面図。
【図2】本発明の例示的な実施形態による、窒化物層を検出しかつ除去する方法の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、例えば鉄鋼業界で付着皮膜厚さを測定するのに一般的に使用されるタイプの市販の較正マグネットゲージ10の概略図である。そのようなゲージは、その永久磁石を被検査物の表面から引離すのに必要な力の度合いを目盛盤上に示す本質的に高感度のバネばかりである。具体的には、一般的に作業者が、ゲージ磁石12を被検査物表面14と接触状態にし、目盛盤により、その磁石12を取外す(引離す)のに必要な力を記録する。較正曲線を参照することにより、付着皮膜16についての厚さ寸法を決定することができる。較正マグネットゲージは、容易に入手可能であり、1つの好適なゲージは、Magne−Gage Sales and Service Co.,Inc.(of Avoca,PA)から商品名Magne−Gage(商標)として市販されている。
【0009】
図2は、本主題発明の例示的な実施形態で使用する処理方法の概略図である。具体的には、マグネットゲージ10は、N−263基体上における磁性窒化物層の厚さに対して較正され、また実検査データを較正データと相関させるための適切なチャート、コンピュータプログラム又は同様なものが、開発される。磁気ヘッド12がN−263合金(オーステナイト系非磁性合金)構成要素の表面に対して適用された時に、窒化物層が存在する場合には、磁石が表面層に引付けられ、従ってそのような層の容易な初期検出を可能にすることになる。磁気引付け(磁力)が存在しない場合には、検査手順は、簡単に終了する。一方、磁力が存在する場合には、磁石は、合金の表面に引付けられることになる。その後、ゲージを引戻し、磁石を取外すのに必要な力を記録しかつ従前の構成と比較参照して、それによって窒化物層の厚さを決定する。検出層が最小閾値厚さ以下である場合には、その時点で窒化物層を除去することを必要としない状態で使用可能なものと見なすことができる。言い換えると、現時点ではおそらく更なる措置を全く必要としないほどに窒化物層が微量であると推定でき、構成要素部品は、実使用に戻すことができる。
【0010】
しかしながら、それとは正反対に、検出層厚さが最大閾値以上である、すなわち窒化物層が部品を使用不能であると宣言しなければならないほど厚い場合には、ここでも同様に全く措置を取る必要がなく、その部品は、廃棄されるか又は破壊されることになる。
【0011】
最小閾値と最大閾値との間の範囲内にある厚さ決定の場合には、窒化物層は、それ自体が該窒化物層の検出厚さのみを除去するように較正することができる研削又は機械加工(或いは、あらゆるその他の好適な方法又は作業)によって除去されることになる。
【0012】
従って、較正マグネットゲージを使用して、構成要素部品上に形成される可能性があるあらゆる窒化物層の厚さを決定することによって、特に所定の閾値厚さ測定値以上又は以下の一部の構成要素をあらゆる更なる処理から排除した処理ステップと組合せる時に、如何なる措置をとるべきかを一層容易かつ迅速に決定することが可能になる。
【0013】
下にある基体が非磁性体でありかつ表面劣化層が磁性体である限り、同様な方法を使用して、その他の合金上の望ましくない表面劣化を検出することができることが分かるであろう。
【0014】
現在最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるものに関して本発明を説明してきたが、本発明は開示した実施形態に限定されるものではなく、逆に特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲内に含まれる様々な変更及び均等な構成を保護しようとするものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0015】
10 較正マグネットゲージ
12 ゲージ磁石
14 被検査物表面
16 付着皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上に磁性表面層が形成された非磁性合金製の構成要素を処理する方法であって、
(a)較正マグネットゲージの磁石を前記構成要素の表面と接触させるステップと、
(b)前記磁石を前記構成要素の表面から引離しかつ該磁石を引離すのに必要な力を測定するステップと、
(c)前記力を前記磁性表面層の厚さと相関させるステップと、
(d)前記表面層の厚さが所定の最小厚さよりも大きい場合には、該表面層を除去するステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記ステップ(d)において、前記表面層の厚さが所定の最大厚さよりも大きい場合には、該表面層を除去しないで前記構成要素を廃棄するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記非磁性合金が、オーステナイト系ニッケル−クロム−コバルト合金を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記表面層が、窒化物層である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記非磁性合金が、ニッケル−クロム−コバルト合金である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ニッケル−クロム−コバルト合金構成要素の表面上における窒化物層を検出する方法であって、
(a)較正マグネットゲージを前記ニッケル−クロム−コバルト合金構成要素の表面と接触させるステップと、
(b)前記ニッケル−クロム−コバルト合金構成要素の表面上に形成された可能性がある前記窒化物層の存在を、それがある場合には検出するステップと、
(c)前記窒化物層が存在する場合には、前記マグネットゲージを前記ニッケル−クロム−コバルト合金構成要素の表面から取外すのに必要な力を測定しかつその情報を使用して前記窒化物層の厚さを決定するステップと、を含む、
方法。
【請求項7】
あらゆる検出窒化物層について、前記窒化物層の最小及び最大閾値厚さを決定するステップを含み、
前記最小閾値厚さと前記最大閾値厚さとの間の前記窒化物層の厚さの場合には、前記検出窒化物層の除去が行なわれる、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記最小閾値厚さ以下又は前記最大閾値厚さ以上の前記窒化物層の厚さの場合には、前記検出窒化物層が除去されない、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記除去が、機械加工又は研削によって行なわれる、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記ニッケル−クロム−コバルト合金構成要素が、ガスタービン燃焼器構成要素を含む、請求項6記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−160150(P2010−160150A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−296998(P2009−296998)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】