説明

吐出装置

【課題】キャリッジの列を構成し、基板に機能液を吐出するヘッドを搭載した全てのキャリッジについて、そのヘッドからの吐出量を安定させるようにした、吐出装置を提供する。
【解決手段】ノズルを有するヘッドを搭載した正規のキャリッジ21aを複数、所定方向に配列してなり、正規のキャリッジ21aを基板に対して主走査方向及びこれに直交する副走査方向に相対的に移動させつつ、ヘッドのノズルから機能液を吐出することにより、基板Wに機能液を吐出配置する吐出装置1である。正規のキャリッジ21aの列の両方の外側に、ダミーのキャリッジ21bを配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上にカラーフィルター等の機能性薄膜を形成する方法としては、スピンコート法やフレキソ印刷法が一般に用いられている。これに対して近年では、インク使用量削減や工程数削減に効果的であるとして、液滴吐出法が種々の薄膜形成に用いられるようになってきている。液滴吐出法を用いた薄膜の形成方法では、機能性材料(固形分)を溶媒(分散媒)に溶解又は分散させてなるインク(機能液)を液滴として基板上に吐出し、所望位置に配置した後、この配置したインクを乾燥してインク中の溶媒(分散媒)を除去することにより、機能性材料からなる薄膜を形成している。
【0003】
ところで、工業的に形成するカラーフィルター等の機能性薄膜は、近年では益々精細化する傾向にあり、したがって液滴吐出法でこれら機能性薄膜を形成するにあたっては、より高い吐出精度が要求されるようになってきている。また、このような精細化とは別に、生産性の向上も要求されており、したがって機能性薄膜を形成する基板のサイズも、益々大型化している。
このような背景の基に、近年では、多数のノズルを有した吐出ヘッドを複数搭載したキャリッジを、さらに複数備えた液滴吐出装置が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−93570号公報
【特許文献2】特開2008−104916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のキャリッジを複数備えた液滴吐出装置では、キャリッジを副走査方向に沿って整列させ、これらキャリッジに設けられた複数のヘッドによって基板の全幅に対応させ、さらにこれらキャリッジを基板に対して主走査方向に相対移動させることにより、基板の全面に機能液を吐出配置可能にしている。
ところが、このように大型の液滴吐出装置にあっては、特に複数が配列されてなるキャリッジの配列方向において、その両方の外側に配置された二つのキャリッジのヘッドからの吐出量が、内側に配置されたキャリッジのヘッドからの吐出量に比べて安定せず、したがって、吐出精度が低くなる傾向にある。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、キャリッジの列を構成し、基板に機能液を吐出するヘッドを搭載した全てのキャリッジについて、そのヘッドからの吐出量を安定させるようにした、吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
吐出量が安定しない外側の二つのキャリッジを調べたところ、内側のキャリッジに比べ、温度が数度(例えば2℃程度)低いことが分かった。これは、外側のキャリッジが環境中の空気により近く、例えばキャリッジの列が副走査方向に移動したときなどに、外側のキャリッジが風を受けることになるためであると考えられる。そして、温度が1℃異なると、機能液はその粘度が変化することなどで吐出量が約3%異なるようになり、したがって、温度が例えば2℃異なると、吐出量が約6%も異なることになってしまう。
このような知見のもとに、本発明者はさらに研究を重ねた結果、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の吐出装置は、ノズルを有するヘッドを搭載した正規のキャリッジを複数、所定方向に配列してなり、前記正規のキャリッジを基板に対して主走査方向及びこれに直交する副走査方向に相対的に移動させつつ、前記ヘッドのノズルから機能液を吐出することにより、前記基板に前記機能液を吐出配置する吐出装置であって、
前記正規のキャリッジの列の両方の外側に、ダミーのキャリッジを配設したことを特徴としている。
【0009】
この吐出装置によれば、正規のキャリッジの列の両方の外側に、ダミーのキャリッジを配設したので、これらダミーのキャリッジが風よけなどとして機能するようになる。したがって、これらダミーのキャリッジの内側に位置する正規のキャリッジは、極端な温度低下がなく、全てほぼ同じ温度になる。よって、これら正規のキャリッジに搭載されたヘッド間では、温度差に起因する吐出量のバラツキが抑制され、その吐出量が安定する。
【0010】
また、前記吐出装置において、前記ダミーのキャリッジには、ノズルを有するヘッドが搭載されるとともに、該ヘッドには、機能液を供給する機能液供給手段が接続されているのが好ましい。
このようにすれば、ダミーのキャリッジにおけるヘッドも、正規のキャリッジにおけるヘッドと同様に動作可能となるため、その仕事量を同等にすることなどにより、正規のキャリッジにおけるヘッドと同等の発熱をなさせることが可能になる。したがって、ダミーのキャリッジに挟まれた正規のキャリッジの温度を、より安定させることが可能になる。
【0011】
また、前記吐出装置においては、前記基板を載置するステージが備えられ、該ステージには、前記正規のキャリッジのヘッドのノズルから基板上に機能液を吐出する際に、前記ダミーのキャリッジのヘッドのノズルから吐出する機能液を受けるダミーのフラッシングエリアが設けられているのが好ましい。
このようにすれば、正規のキャリッジのヘッドのノズルから基板上に機能液を吐出する際に、ダミーのキャリッジについても、そのヘッドのノズルから機能液をダミーのフラッシングエリアに吐出させることが可能になる。したがって、ダミーのキャリッジにおけるヘッドの仕事量を、正規のキャリッジにおけるヘッドの仕事量と同等にすることができ、ダミーのキャリッジに挟まれた正規のキャリッジの温度を、より安定させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】吐出装置の構造を示す概略平面図である。
【図2】吐出装置の構造を示す概略側面図である。
【図3】キャリッジの列の模式図である。
【図4】(a)吐出ヘッドの概略斜視図、(b)ノズルプレートの概略平面図である。
【図5】吐出ヘッドの配置を示す概略平面図である。
【図6】吐出装置の制御系を示すブロック図である。
【図7】液晶表示装置の構造を示す概略分解斜視図である。
【図8】カラーフィルターの製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。
なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また、図1は吐出装置の構造を示す概略平面図、図2は吐出装置の構造を示す概略側面図である。
【0014】
図1、図2に示すように本実施形態の吐出装置1は、基板Wが載置される吸着テーブル(ステージ)41をX軸方向に移動させる主走査移動機構としてのX軸テーブル22と、複数のキャリッジ21をX軸テーブル22の上方において、それぞれ独立してY軸方向に移動させる副走査移動機構としてのY軸テーブル23と、を備えている。
【0015】
Y軸方向(副走査方向)に配列されたキャリッジ21は、本実施形態では、図3に示すように10基の正規なキャリッジ21aと、これら10基の正規なキャリッジ21aの両側(外側)に配置された2基のダミーのキャリッジ21bと、からなっている。正規なキャリッジ21aとダミーのキャリッジ21bとは、本実施形態では、これらが搭載する吐出ヘッド(ヘッド)が、基板Wに対して機能液を吐出するか否か、との点でのみ異なり、その他は同じに構成されている。
【0016】
すなわち、図示しないものの、正規のキャリッジ21aにおける吐出ヘッドには、これから吐出させる機能液を該吐出ヘッドに供給するための機能液供給手段が接続されているが、ダミーのキャリッジ21bにおける吐出ヘッドにも、同じ構成の機能液供給手段が接続されている。したがって、該ダミーのキャリッジ21bにおける吐出ヘッドからも、正規のキャリッジ21aにおける吐出ヘッドと同様に、機能液の吐出が行えるようになっている。なお、機能液供給手段は、機能液を貯留するタンクと、このタンクと吐出ヘッドとを接続してタンク内の機能液を吐出ヘッドに移送するフレキシブルチューブと、を備えて構成されている。
また、図3では、合計12基のキャリッジ21をY軸方向に平行に配列したが、これらキャリッジ21の配列については、図3中二点鎖線で示すようにその列方向がY軸方向に沿っていれば、Y軸方向に対して非平行になっていてもよい。
【0017】
これらキャリッジ21(21a、21b)には、図4(a)に示すように、機能液を液滴として吐出する複数の吐出ヘッド62が搭載されている。吐出ヘッド62は、いわゆる2連のもので、2連の接続針72を有する液導入部71と、液導入部71に連なるヘッド基板73と、液導入部71の上方に連なり、内部に機能液が満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体74とを備えている。接続針72は、圧力調整弁等を介して前記機能液供給手段における機能液が貯留されたタンクに接続され、これにより、吐出ヘッド62のヘッド内流路に機能液が供給されるようになっている。
【0018】
ヘッド本体74は、キャビティ81と、ノズル面82aに複数のノズル85からなる2本のノズル列84を形成したノズルプレート82とを有している。前記ヘッド基板73には、2連のコネクタ75が設けられており、各コネクタ75は、フレキシブルフラットケーブルを介して後述するヘッドドライバに接続されている。ヘッドドライバは、圧電素子に駆動電圧を与えてキャビティ81の体積を変化させるものである。これによって圧電素子は、キャビティ81に充填された機能液を加圧し、ノズル85から機能液を液滴として吐出させるようになっている。
【0019】
図4(b)に示すように、各ノズル列84の長さは、例えば1インチ(略25.4mm)であって、各ノズル列84は180個のノズル85が等しいピッチP1(略140μm)で並べられて構成されている。この場合、一方のノズル列84は、他方のノズル列84に対して、ノズル列方向に半ピッチ(70μm)分ずれて設けられている。よって、各ノズル列方向と直交する方向から見ると360個のノズル85がノズルピッチP2で配列した状態となっている。また、2つのノズル列84から吐出された液滴のドット密度(解像度)は360dpiである。
【0020】
なお、吐出ヘッド62としては、圧電素子を備えたものに限らず、機能液を加圧するエネルギー発生手段として、振動板を静電吸着することによって振動させる電気機械変換素子や、機能液を加熱する発熱素子を備えたものであってもよい。
【0021】
図5は、キャリッジ21(21a、21b)における吐出ヘッド62の配置を示す概略平面図であり、詳しくは、X軸テーブル22側から見た底面図である。
図5に示すようにキャリッジ21には、合計12個の吐出ヘッド62が搭載されている。これら吐出ヘッド62は、X軸方向に沿って6個の吐出ヘッド62が階段状に配列し、2つのヘッド群62L,62Rを構成している。各ヘッド群62L,62Rは、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のカラーフィルター形成材料を含む機能液が充填された3つの吐出ヘッド62が、RGBの順に並列している。
【0022】
そして、例えば、赤色(R)の機能液が充填された各ヘッドR1,R2,R3,R4のノズル列84が、X軸方向から見て1ノズルピッチP2を置いてY軸方向に並んでいる。他の緑色(G)、青色(B)においても同様である。また、異なる色の機能液が充填されたヘッドR2とヘッドG2、ヘッドG2とヘッドB2とにおいて、ノズル列84がノズル列84の全長の1/3の距離でY軸方向に互いにずれた状態で配置されている。
【0023】
図1、図2に示すように前記X軸テーブル22には、キャリッジ21に搭載された各吐出ヘッド62から吐出される機能液を受けて、その重量を吐出ヘッド62ごとに測定する重量測定機構91と、重量計測機構91に並列して吸着テーブル41側に設けられたフラッシング部としてのフラッシングボックス114とが備えられている。この場合、X軸テーブル22によって重量測定機構91とフラッシングボックス114とが一体になり、X軸方向に移動可能になっている。
【0024】
重量測定機構91は、複数のキャリッジ21に搭載された複数の吐出ヘッド62から吐出描画可能な描画領域31に対して、X軸方向に配設されている。そして、重量測定時には、各キャリッジ21は描画領域31における配列状態を維持した状態で、重量測定領域33に相対移動するようになっている。
X軸テーブル22をY軸方向に外れた位置には、吐出ヘッド62のメンテナンスを行うメンテナンス機構12が設けられている。Y軸テーブル23は、X軸テーブル22に直交して延設されたもので、描画領域31に配列した複数のキャリッジ21を、メンテナンス機構12が設けられたメンテナンス領域32に移動させるようになっている。
【0025】
メンテナンス機構12は、吐出ヘッド62内で増粘した機能液を吸引除去する吸引ユニット111と、吸引除去等によって吐出ヘッド62の表面(ノズル面)に付着した機能液や異物をワイピングシート112aにより拭き取りを行うワイピングユニット112とを備えている。吸引ユニット111は、複数のキャリッジ21(12a、21b)に対応して、Y軸方向に複数配列した状態で設けられている。各吸引ユニット111とワイピングユニット112とは、アングル架台118上に配設されている。このような構成のもとにメンテナンス機構12は、前記各吸引ユニット111とワイピングユニット112とにより、複数のキャリッジ21に搭載された複数の吐出ヘッド62のノズル目詰まり等を解消し、吐出機能を回復させるようになっている。
【0026】
図2は、吐出装置1の構造を示す概略側面図であり、詳しくはメンテナンス機構12側から見た側面図である。図2に示すようにX軸テーブル22は、基台40と、基台40上に配設された一対のX軸ガイドレール45と、一対のX軸ガイドレール45に並設された一対のX軸リニアモーター(図示省略)とを備えている。さらに、一対のX軸ガイドレール45によりガイドされ、X軸リニアモーターによってX軸方向にスライド自在に移動するX軸スライダ44、47と、X軸スライダ44により支持されたテーブル支持部43と、X軸スライダ47によって支持された重量測定機構支持部46と、を備えている。
【0027】
テーブル支持部43には、基板Wを吸着(エアー吸引)セットする吸着テーブル41と、吸着テーブル41を介して基板Wのθ位置を微調整するθ軸テーブル42とが配設されている。一対のX軸リニアモーターを駆動すると、一対のX軸ガイドレール45によりガイドされたX軸スライダ44がX軸方向に移動し、吸着テーブル41にセットされた基板WがX軸方向に移動するようになっている。
【0028】
また、吸着テーブル41には、X軸方向に一対のX軸幅寄せ機構(図示せず)が設けられ、Y軸方向に一対のY軸幅寄せ機構(図示せず)が設けられており、セットした基板Wを位置決め(プリアライメント)できるようになっている。セットされた基板Wは、Y軸テーブル23等に設けられたワーク認識カメラ(図示せず)により、画像認識されて最終的に位置決めされるようになっている。
【0029】
重量測定機構支持部46には、重量測定機構91とフラッシングボックス114とが並列して配設されている。一対のX軸リニアモーターを駆動すると、一対のX軸ガイドレール45によりガイドされたX軸スライダ47がX軸方向に移動して、キャリッジ21を重量測定機構91またはフラッシングボックス114が配置された位置に移動させることができる。すなわち、複数のキャリッジ21はその配列を維持した状態で、図1に示した重量測定領域33上またはフラッシング領域34上に、移動するようになっている。
【0030】
図1、図2に示すように、吐出ヘッド62の吐出機能を安定化させるため、X軸テーブル22には、Y軸方向に配列した複数のキャリッジユニット21に対応して設けられたフラッシングボックス114のほかに、吸着テーブル41のX軸方向の両端部に、2つの描画前フラッシングボックス115が備えられている。
図2に示すように、重量測定機構91とフラッシングボックス114とは、その上面が吸着テーブル41の上面とほぼ同じ高さとなるように重量測定機構支持部46に配設されている。同様に、前記描画前フラッシングボックス115も、その上面が吸着テーブル41の上面とほぼ同じ高さとなるように、吸着テーブル41に配設されている。
【0031】
また、本実施形態では、これらフラッシングボックスとは別に、吸着テーブル(ステージ)41の図1に示した描画領域31となる位置に、ダミーのフラッシングボックス(ダミーのフラッシングエリア)116が一対設けられている。これらダミーのフラッシングボックス116は、描画領域31のY軸方向における両側となる位置に設けられたもので、後述するように正規のキャリッジ21aの吐出ヘッド62から基板W上に機能液を吐出する際、ダミーのキャリッジ21bの吐出ヘッド62から吐出される機能液を受けるようになっている。
【0032】
このような構成のもとに、吐出ヘッド62のすべてのノズル85(図4参照)から機能液を、フラッシングボックス114や描画前フラッシングボックス115に向けて定期的あるいは描画前に吐出するフラッシングを行うことにより、ノズル85内の機能液のメニスカスを安定化させることができるようになっている。また、正規のキャリッジ21aの吐出ヘッド62から基板W上に機能液を吐出する際に、ダミーのキャリッジ21bの吐出ヘッド62からダミーのフラッシングボックス116に機能液を吐出させることにより、ダミーのキャリッジ21bにおける吐出ヘッド62の仕事量を、正規のキャリッジ21aにおける吐出ヘッド62の仕事量と同等にすることができる。
【0033】
一方、Y軸テーブル23は、基台40から立設した一対の支持スタンド56と、一対の支持スタンド56上に架け渡された一対の柱状支持部材55と、一対の柱状支持部材55に併設された一対のY軸リニアモーター54とを備えている。一対の柱状支持部材55上には、一対のY軸ガイドレール53と、一対のY軸ガイドレール53にガイドされ、Y軸リニアモーター54によってY軸方向に自在に移動する複数のY軸スライダ52とが設けられている。
【0034】
Y軸スライダ52は、各キャリッジ21にそれぞれ対応して設けられたもので、メインキャリッジ63が吊設されたブリッジプレート51を支持するものである。すなわち、12基のブリッジプレート51が、それぞれ独立したY軸スライダ52に支持されている。このような構成のもとにY軸リニアモーター54を駆動すると、一対のY軸ガイドレール53によりガイドされたY軸スライダ52がY軸方向に移動し、ブリッジプレート51に吊設されたメインキャリッジ63をY軸方向に移動させるようになる。
【0035】
メインキャリッジ63は、吐出ヘッド62を保持するキャリッジ本体66と、キャリッジ本体66を吊設するとともに、キャリッジ本体66の上部に連結され、キャリッジ本体66を介して、ヘッドユニット61のθ位置をモーター駆動で微調整可能なヘッドθ軸テーブル67と、ヘッドθ軸テーブル67の上部に連結され、ヘッドθ軸テーブル67およびキャリッジ本体66を介して、吐出ヘッド62のZ軸方向の位置をモーター駆動で微調整可能なヘッドZ軸テーブル68と、を有して構成されている。
また、このような構成からなる吐出装置1は、ヘッパユニット6を上部に備えたチャンバ5に収容され、その内部が所定のクリーン度、温度、湿度となるように空調された状態で用いられる。
【0036】
次に、図6を参照して、吐出装置1全体の制御系について説明する。図6は、吐出装置の制御系を示すブロック図である。図6に示すように吐出装置(液滴吐出装置)1の制御系は、基本的に、上位コンピューター2と、吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)62、X軸テーブル22、Y軸テーブル23、メンテナンス機構12、重量測定機構91等を駆動する各種ドライバを有する駆動部121と、駆動部121を含め吐出装置1全体を統括制御する制御部122(コントローラー13)と、を備えて構成されている。
【0037】
上位コンピューター2は、コントローラー13に接続されたコンピューター本体に、キーボードや、キーボードによる入力結果等を画像表示するディスプレイ等が接続されて構成されている。
駆動部121は、吐出ヘッド62を吐出駆動制御するヘッドドライバ131と、X軸テーブル22およびY軸テーブル23の各リニアモーターをそれぞれ駆動制御する移動用ドライバ132と、メンテナンス機構12の吸引ユニット111、ワイピングユニット112およびユニット昇降機構を駆動制御するメンテナンス用ドライバ133と、重量測定機構91の電子天秤(図示せず)等を制御する重量測定用ドライバ134と、を備えて構成されている。
【0038】
制御部122は、CPU141と、ROM142と、RAM143と、P−CON144とを備え、これらは互いにバス145を介して接続されている。ROM142は、CPU141で処理する制御プログラム等を記憶する制御プログラム領域と、描画動作や重量測定を行うための制御データ等を記憶する制御データ領域を有している。
RAM143は、各種レジスタ群のほか、基板Wに機能液の吐出を行うための描画データを記憶する描画データ記憶部、基板Wおよび吐出ヘッド62の設計位置データを記憶する位置データ記憶部等の各種記憶部を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。
【0039】
P−CON144には、駆動部121の各種ドライバのほか、基板Wの位置を認識するカメラ等が接続されており、CPU141の機能を補うとともに、周辺回路とのインタフェース信号を取り扱うための論理回路が構成されて組み込まれている。このため、P−CON144は、上位コンピューター2からの各種指令等をそのままあるいは加工してバス145に取り込むとともに、CPU141と連動して、CPU141等からバス145に出力されたデータや制御信号を、そのままあるいは加工して駆動部121に出力するようになっている。
【0040】
そして、CPU141は、ROM142内の制御プログラムに従って、P−CON144を介して各種検出信号、各種指令、各種データ等を入力し、RAM143内の各種データ等を処理した後、P−CON144を介して駆動部121等に各種の制御信号を出力することにより、吐出装置1全体を制御している。例えば、CPU141は、吐出ヘッド62、X軸テーブル22およびY軸テーブル23を制御して、所定の液滴吐出条件および所定の移動条件で、吐出ヘッド62から基板Wに機能液を液滴として吐出する描画を行うようになっている。
【0041】
また、CPU141は、X軸テーブル22を制御して重量測定機構91を移動させ、複数のキャリッジ21を重量測定領域33に配置し、これらキャリッジ21に搭載された吐出ヘッド62から機能液を液滴として吐出させ、電子天秤(図示せず)によって計測された機能液の重量に基づいて液滴の吐出量を演算するようになっている。この演算結果に基づき、各吐出ヘッド62の圧電素子を駆動する駆動電圧を制御して、適正な量の液滴を吐出させるようになっている。
【0042】
次に、このような構成からなる吐出装置1による機能液の吐出方法について、カラーフィルターの製造方法を例に説明する。
まず、カラーフィルターが用いられた電気光学装置の一つである液状表示装置について説明する。図7は、液晶表示装置の構造を示す概略分解斜視図である。
【0043】
図7に示すように液晶表示装置500は、TFT(Thin Film Transistor)透過型の液晶表示パネル520と、液晶表示パネル520を照明する照明装置516とを備えている。液晶表示パネル520は、着色層としてのカラーフィルター505を有する対向基板501と、画素電極510に3端子のうちの1つが接続されたTFT素子511を有する素子基板508と、両基板501、508によって挟持された液晶(図示せず)と、を備えて構成されている。また、液晶表示パネル520の外面側となる両基板501、508の表面には、透過する光を偏向させる上偏光板514と下偏光板515とが配設される。
【0044】
対向基板501は、透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に隔壁部504によってマトリクス状に区画された複数の着色領域に複数色の着色層としてRGB3色のカラーフィルタ505R、505G、505Bがストライプ状に形成されている。隔壁部504は、Crなどの遮光性を有する金属あるいはその酸化膜からなるブラックマトリクスと呼ばれる下層バンク502と、下層バンク502の上(図面では下向き)に形成された有機化合物からなる上層バンク503とにより構成されている。また、対向基板501は、隔壁部504とカラーフィルター505R、505G、505Bとを覆う平坦化層としてのオーバーコート層(OC層)506と、OC層506を覆うように形成されたITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなる対向電極507と、を備え構成されている。カラーフィルター505R、505G、505Bは、後述するカラーフィルターの製造方法を用いて製造されている。
【0045】
素子基板508は、同じく透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に絶縁膜509を介してマトリクス状に形成された画素電極510と、画素電極510に対応して形成された複数のTFT素子511とを有している。TFT素子511の3端子のうち、画素電極510に接続されない他の2端子は、互いに絶縁された状態で画素電極510を囲むように格子状に配設された走査線512とデータ線513とに接続されている。
【0046】
照明装置516は、光源として白色のLED、EL、冷陰極管等を用い、これらの光源からの光を液晶表示パネル520に向かって出射することができる導光板や拡散板、反射板等の構成を備えたものであれば、どのようなものでもよい。なお、液晶を挟む対向基板501と素子基板508の表面には、液晶の分子を所定の方向に配列させるための配向膜(図示せず)がそれぞれ形成されている。また、上下偏光板514、515は、視角依存性を改善する目的等で用いられる位相差フィルムなどの光学機能性フィルムと組み合わされたものでもよい。液晶表示パネル520は、アクティブ素子としてTFT素子に限らずTFD(Thin Film Diode)素子を有したものでもよく、さらには、少なくとも一方の基板にカラーフィルターを備えるものであれば、画素を構成する電極が互いに交差するように配置されるパッシブ型の液晶表示装置でもよい。
【0047】
(カラーフィルターの製造方法)
図8は、カラーフィルターの製造方法を示す概略図である。本例のカラーフィルターの製造方法では、前記吐出装置1を用いてカラーフィルター材料を含む機能液を吐出する。なお、図8において、破線で示した各吐出ヘッド62のY軸方向の幅は、有効ノズルから機能液を吐出可能な領域の幅を示している。
図8に示すように、前記液滴吐出装置1において、Y軸方向に配列した複数のキャリッジ21(21a、21b)のうち、外側のダミーのキャリッジ21bを除いた、内側の正規のキャリッジ21aに対して、RGB3色の着色領域Aのストライプ方向が平行となるように、基板Wを吸着テーブル41にセットして位置決めする。
【0048】
例えば、吐出ヘッド62のうちのヘッドR1のY軸方向の端が、基板Wの赤色(R)の着色領域Aの端と一致するように位置決めする。
そして、X軸テーブル22を駆動し、複数(10基)の正規のキャリッジ21aに対して基板WをX軸方向に相対移動させる間に、各正規のキャリッジ21aに搭載された各吐出ヘッド62から着色領域Aに向けてカラーフィルター形成材料を含む機能液を液滴として吐出する。また、このようにして正規のキャリッジ21aの吐出ヘッド62から基板W上に機能液を吐出する際に、ダミーのキャリッジ21bの吐出ヘッド62からは、ダミーのフラッシングボックス116に向けて機能液を吐出する。これにより、ダミーのキャリッジ21bにおける吐出ヘッド62の仕事量を、正規のキャリッジ21aにおける吐出ヘッドの仕事量と同等にすることができる。
【0049】
このようにして正規のキャリッジ21aの吐出ヘッド62から基板W上に機能液を吐出すると、各キャリッジ21aには、X軸方向から見て同色の機能液を吐出する吐出ヘッド62がY軸方向に4つ並んでいる。よって、同色の機能液をY軸方向に吐出可能な描画幅Eが連続するように、描画領域31にキャリッジ21aを配列すれば、基板Wの幅に対応して同色の機能液を隙間を空けることなく付与することができる。当然のことながら着色領域Aの端付近では、赤色(R)以外の緑色(G)や青色(B)に対応する着色領域Aに機能液が付与されない領域が発生する。よって、複数のヘッドユニット61をY軸方向に移動させる副走査を行ってから、再び液滴を吐出する主走査を行うようにすれば、すべての着色領域Aに所望の色の機能液を付与することができる。
【0050】
また、この吐出装置1にあっては、正規のキャリッジ21aの列の両方の外側に、ダミーのキャリッジ21bを配設したので、これらダミーのキャリッジ21bが風よけなどとして機能するようになる。したがって、これらダミーのキャリッジ21bの内側に位置する正規のキャリッジ21aは、極端な温度低下がなく、全てほぼ同じ温度になる。よって、これら正規のキャリッジ21aに搭載された吐出ヘッド32間では、温度差に起因する吐出量のバラツキが抑制され、その吐出量が安定する。これにより、例えば形成するカラーフィルターにスジムラ(濃淡ムラ)などが発生するのが防止される。
【0051】
また、ダミーのキャリッジ21bに搭載された吐出ヘッド62についても、正規のキャリッジ21aに搭載された吐出ヘッド62と同様に、機能液を供給する機能液供給手段を接続しているので、これらダミーのキャリッジ21bにおける吐出ヘッド62についても、正規のキャリッジ21aにおける吐出ヘッド62と同様に動作させることができる。これにより、ダミーのキャリッジ21bの吐出ヘッド62にも吐出動作に伴う発熱等を生じさせることができ、ダミーのキャリッジ21bに挟まれた正規のキャリッジ21aの温度を、より安定させることができる。
【0052】
また、吸着テーブル(ステージ)41に、ダミーのキャリッジ21bの吐出ヘッドから吐出される機能液を受けるダミーのフラッシングボックス(ダミーのフラッシングエリア)116を設けたので、正規のキャリッジ21aの吐出ヘッド62から基板W上に機能液を吐出する際、ダミーのキャリッジ21bについても、その吐出ヘッド62から機能液をダミーのフラッシングボックス116に吐出させることができる。したがって、ダミーのキャリッジ21bの吐出ヘッド62の仕事量を、正規のキャリッジ21aの吐出ヘッド62の仕事量と同等にして、ダミーのキャリッジ21bにも発熱等を生じさせることができ、これにより、ダミーのキャリッジ21bに挟まれた正規のキャリッジ21aの温度をより安定させ、吐出量が安定させることができる。
【0053】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記吐出装置において正規のキャリッジの数については、基板Wのサイズ等によって適宜変更可能である。
また、前記実施形態では、本発明の吐出装置を、カラーフィルターの製造に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、機能液の吐出配置を必要とする種々のものに適用することが可能である。具体的には、液晶表示装置において、その配向膜を液滴吐出法で形成する場合にも、本発明の吐出装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…吐出装置、21…キャリッジ、21a…正規のキャリッジ、21b…ダミーのキャリッジ、41…吸着テーブル(ステージ)、62…吐出ヘッド(ヘッド)、116…ダミーのフラッシングボックス(ダミーのフラッシングエリア)、84…ノズル列、85…ノズル、W…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを有するヘッドを搭載した正規のキャリッジを複数、所定方向に配列してなり、前記正規のキャリッジを基板に対して主走査方向及びこれに直交する副走査方向に相対的に移動させつつ、前記ヘッドのノズルから機能液を吐出することにより、前記基板に前記機能液を吐出配置する吐出装置であって、
前記正規のキャリッジの列の両方の外側に、ダミーのキャリッジを配設したことを特徴とする吐出装置。
【請求項2】
前記ダミーのキャリッジには、ノズルを有するヘッドが搭載されるとともに、該ヘッドには、機能液を供給する機能液供給手段が接続されていることを特徴とする請求項1記載の吐出装置。
【請求項3】
前記基板を載置するステージが備えられ、該ステージには、前記正規のキャリッジのヘッドのノズルから基板上に機能液を吐出する際に、前記ダミーのキャリッジのヘッドのノズルから吐出する機能液を受けるダミーのフラッシングエリアが設けられていることを特徴とする請求項2記載の吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−264411(P2010−264411A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119549(P2009−119549)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】