説明

吐出装置

【課題】複数種類の充填物を自動的に吐出するような要求に対して安価に対応する。
【解決手段】シリンジ筒体61に吐出圧力を与えることによってシリンジ筒体61に充填された充填物をシリンジ筒体61の先端部から外部に吐出する吐出装置1において、複数のシリンジ筒体61を保持し、かつこれら複数のシリンジ筒体61を所定の吐出軸心Cに選択的に配置させる態様で装置本体10に移動可能に配設したシリンジホルダ50と、装置本体10に配設し、シリンジホルダ50に保持されたシリンジ筒体61が吐出軸心Cに配置された状態で駆動した場合に吐出軸心Cに配置されたシリンジ筒体61に対して吐出圧力を与えるプランジャ30とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ筒体に吐出圧力を与えることによってシリンジ筒体に充填された充填物をシリンジ筒体の先端部から外部に吐出する吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリンジ筒体に充填された薬液等の充填物を吐出するようにした吐出装置には、従来より、シリンジポンプを適用するようにしたものが提供されている。シリンジポンプは、モータ等、アクチュエータの駆動によってシリンジに吐出圧力を与えることにより、シリンジに充填された薬液等の充填物を吐出するものである。こうしたシリンジポンプを適用した吐出装置によれば、アクチュエータの駆動を制御することにより、充填物を自動的に吐出したり、充填物の吐出量を高精度に制御したり、といった要求に対応することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−39396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、薬液を吐出する際に要求される条件は用途によって様々であり、例えば、同一の吐出対象に対して複数種類の充填物を自動的に吐出するような要求もある。こうした要求に対しては、吐出する薬液の種類に応じたシリンジ筒体を用意するとともに、各シリンジ筒体に対応してシリンジポンプを設ければ、これに対応することが可能となる。
【0005】
しかしながら、薬液の種類が多くなれば、それに応じてシリンジポンプの数も増やさなければならず、コストの面できわめて不利となる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、複数種類の充填物を自動的に吐出するような要求に対して安価に対応することのできる吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、シリンジ筒体に吐出圧力を与えることによってシリンジ筒体に充填された充填物をシリンジ筒体の先端部から外部に吐出する吐出装置において、複数のシリンジ筒体を保持し、かつこれら複数のシリンジ筒体を所定の吐出位置に選択的に配置させる態様で装置本体に移動可能に配設したシリンジホルダと、装置本体に対してシリンジホルダを移動させるホルダ移動手段と、装置本体に配設し、シリンジホルダに保持されたシリンジ筒体が前記吐出位置に配置された状態で駆動した場合に当該吐出位置に配置されたシリンジ筒体に対して吐出圧力を与える吐出駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上述した吐出装置において、前記シリンジホルダは、装置本体に対して所定の軸心回りに回転可能に配設し、該軸心を中心とした円周上に複数のシリンジ筒体を保持するものであり、前記ホルダ移動手段は、装置本体に対してシリンジホルダを回転させるものであり、前記装置本体は、シリンジホルダが回転した場合にシリンジホルダに保持したシリンジ筒体の基端部が摺接し、かつシリンジ筒体が前記吐出位置に配置された場合にその基端部に連通する連通孔を有した基準プレート部を備えたものであり、前記吐出駆動手段は、前記基準プレート部の連通孔に対応する部位に配設し、該連通孔を通じてシリンジ筒体に吐出圧力を与えるものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述した吐出装置において、前記装置本体は、シリンジホルダが回転した場合にシリンジホルダに保持したシリンジ筒体の先端部が摺接し、かつシリンジ筒体が前記吐出位置に配置された場合にその先端部に連通する吐出孔を有した吐出プレートを備えことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上述した吐出装置において、前記シリンジ筒体は、シリンジホルダに対して着脱可能に保持させたものであり、前記吐出駆動手段は、吐出位置に配置されたシリンジ筒体に流体圧を作用させることによって充填物を外部に吐出するものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述した吐出装置において、前記シリンジ筒体は、基端部が開口し、かつ内部に粉末状の薬剤を充填し、かつシリンジホルダに対して着脱可能に保持させたものであり、前記吐出駆動手段は、吐出位置に配置されたシリンジ筒体の内部に薬剤を溶解させる液溶媒を加圧供給することによって溶解した充填物を外部に吐出するものであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述した吐出装置において、前記吐出プレートの吐出孔に注射針を具備し、該注射針を介してシリンジ筒体の充填物を動物の体内に注入するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置本体に対してシリンジホルダを移動させることにより、複数のシリンジ筒体を吐出位置に対して選択的に配置することが可能であるため、吐出位置においてシリンジ筒体に吐出圧力を与えることのできる吐出駆動手段を用意すれば良い。従って、複数種類の充填物を自動的に吐出するような要求に対しても安価に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である吐出装置の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した吐出装置の側面図である。
【図3】図3は、図1に示した吐出装置の断面側面図であり、回転用駆動モータユニット及び吐出用駆動モータユニットを省略した図である。
【図4】図4は、図1に示した吐出装置に適用するシリンジホルダの斜視図である。
【図5】図5は、図1に示した吐出装置を雌牛の腟内に設置した状態を示す概念図である。
【図6】図6は、図1に示した吐出装置の変形例を示す斜視図である。
【図7】図7は、図6に示した吐出装置の側面図である。
【図8】図8は、図6に示した吐出装置の断面側面図であり、回転用駆動モータユニット及びポンプ用駆動モータユニットを省略した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る吐出装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1〜図3は、本発明の実施の形態である吐出装置を示したものである。ここで例示する吐出装置1は、図5に示すように、家畜である雌牛100の腟101内に設置して過剰排卵を行わせるべく2種類のホルモン製剤、例えばFSH(Follicle stimulating hormone)及びPGF2α(prostaglandin F2α)を卵巣102に近い位置で数日間に渡り定期的に限局注射するためのもので、装置本体10を備えている。装置本体10は、吐出装置1のベースとなるもので、矩形のプレート状を成すベース部11の一端部に吐出プレート部12を有する一方、ベース部11の他端部にポンプ保持部13を有している。
【0017】
吐出プレート部12は、ベース部11の長辺方向に沿った一端部の上面から直角上方に向けて延在したプレート状部分である。吐出プレート部12の突出端部は、ベース部11の長辺方向に沿い、かつベース部11の上面に平行となる軸心を中心とした円板状に構成してある。
【0018】
この吐出プレート部12には、中心部に回転支持孔12aが形成してあるとともに、外表面に吐出柱12bが設けてある。回転支持孔12aは、吐出プレート部12の軸心を中心として形成した細径の孔であり、吐出プレート部12の外表面から内表面に亘って貫通している。吐出柱12bは、吐出プレート部12の軸心に平行となる吐出軸心(吐出位置)Cを中心として形成した円柱状部分である。より具体的に説明すると、吐出柱12bは、吐出プレート部12の軸心を含み、かつベース部11の上面に直交する正中面において吐出プレート部12の軸心とベース部11の上面との間に位置する軸心を吐出軸心Cとして吐出プレート部12の外表面から突出するように形成してある。この吐出柱12bには、吐出軸心Cを中心とした位置に吐出孔12cが形成してある。吐出柱12bの吐出孔12cは、吐出柱12bの先端面から吐出プレート部12の内表面に亘って貫通している。
【0019】
ポンプ保持部13は、ベース部11の長辺方向に沿った他端部の上面から直角上方に向けて延在したブロック状部分である。ポンプ保持部13の突出端部には、保持孔13aが形成してある。保持孔13aは、吐出プレート部12の吐出軸心Cを中心として形成した太径の円形開口であり、ポンプ保持部13の外表面から内表面に亘って貫通している。
【0020】
このポンプ保持部13には、保持孔13aを介してポンプケース20が取り付けてある。ポンプケース20は、円柱状を成すプランジャ部21と、プランジャ部21の先端に設けた基準プレート部22とを有したもので、基準プレート部22を装置本体10の吐出プレート部12に対向させ、かつプランジャ部21をポンプ保持部13の保持孔13aに嵌合させた状態でポンプ保持部13に保持させてある。ポンプ保持部13の基準プレート部22は、吐出プレート部12の軸心を中心とした円板状に形成してある。尚、図には明示していないが、ポンプ保持部13とポンプケース20のプランジャ部21との間には、両者の軸方向に沿った相対移動を許容する一方、保持孔13aの軸心を中心とした両者の相対回転を阻止する回転規制手段が介在させてある。この回転規制手段の機能により、ポンプ保持部13の基準プレート部22は、その軸心が常時吐出プレート部12の軸心に合致した状態に維持される。
【0021】
このポンプケース20は、プランジャ部21にプランジャ収容孔21aを有しているとともに、基準プレート部22に連通孔22aを有している。
【0022】
プランジャ部21のプランジャ収容孔21aは、吐出プレート部12の吐出軸心Cを中心とした円柱状の開口であり、その内部にプランジャ30を収容している。プランジャ30は、気密部31とギヤ駆動部32とを一体に形成したもので、気密部31を基準プレート部22側に配置し、かつプランジャ部21の軸心方向に往復移動可能となる状態でプランジャ収容孔21aに移動可能に装着してある。
【0023】
プランジャ30の気密部31は、弾性を有した部材によって成形したもので、プランジャ収容孔21aの内周面との間の気密状態を確保した状態でプランジャ収容孔21aに収容してある。
【0024】
プランジャ30のギヤ駆動部32には、外周部に規制突起32aが形成してあるとともに、中心部に駆動ネジ部材33が設けてある。規制突起32aは、プランジャ部21に設けたスライド溝21bに係合することによってプランジャ部21に対するギヤ駆動部32の回転を規制するものである。駆動ネジ部材33は、ネジ孔32bを介してプランジャ30のギヤ駆動部32に螺合したもので、ギヤ駆動部32の外部に位置する部位にドリブンギヤ34を備えている。
【0025】
ドリブンギヤ34は、駆動ネジ部材33と一体に回転するように設けた平歯車である。このドリブンギヤ34は、ギヤケース35に収容した複数段の減速ギヤ列35aを介して吐出用駆動モータユニット(吐出駆動手段)36に接続してあり、吐出用駆動モータユニット36が駆動した場合に自身の軸心回りに回転されることになる。図には明示していないが、吐出用駆動モータユニット36と減速ギヤ列35aとの間には、不思議歯車による減速機構39が介在させてある。
【0026】
基準プレート部22の連通孔22aは、吐出プレート部12の吐出軸心Cを中心とし、かつプランジャ収容孔21aよりも僅かに細径となる円柱状の開口である。この連通孔22aは、一方の端部が基準プレート部22の外表面に開口し、かつ他方の端部がプランジャ収容孔21aに連通している。
【0027】
尚、図中の符号37は、装置本体10のポンプ保持部13とポンプケース20の基準プレートとの間に介在させた押圧スプリングである。また、図中の符号38は、後述するシリンジホルダ50のフロントプレート51に設けた原点検出用突起51dを検出対象とするロータリエンコーダである。
【0028】
一方、上記吐出装置1は、装置本体10の吐出プレート部12と、ポンプケース20の基準プレート部22との間に回転用駆動モータ(ホルダ移動手段)40及びシリンジホルダ50を備えている。回転用駆動モータ40は、出力軸41にピニオンギヤ42を取り付けたもので、出力軸41の軸心が吐出プレート部12の軸心と平行となり、かつピニオンギヤ42を基準プレート部22よりも吐出プレート部12に近接させた位置に配置した状態で装置本体10に保持させてある。回転用駆動モータ40としては、ステッピングモータを適用している。
【0029】
シリンジホルダ50は、図4に示すように、カートリッジ60を複数保持するためのものである。カートリッジ60は、シリンジ筒体61の内部に上述したホルモン製剤を充填したものである。シリンジ筒体61は、図3及び図4に示すように、両端が開口し、かつ先端部が細径の円筒状を成すものである。シリンジ筒体61の先端部には、セプタム62が配設してある。セプタム62は、ゴム等の弾性部材によって成形した蓋体であり、キャップ部材63を介してシリンジ筒体61の先端開口を閉塞するように取り付けてある。このセプタム62には、中心部にスリット孔62aが設けてある。スリット孔62aは、通常状態において弾性的に閉鎖された状態に維持される一方、圧力を加えた場合に弾性的に開口するように形成したものである。尚、キャップ部材63においてセプタム62のスリット孔62aに対応する部位には、開口63aが設けてある。
【0030】
シリンジ筒体61の基端部外周面及びキャップ部材63の先端部外周面には、それぞれOリング装着溝61a,63bが形成してある。シリンジ筒体61のOリング装着溝61aは、シリンジ筒体61の基端部において基端面及び外周面に開口するように形成した円環状の溝部である。キャップ部材63のOリング装着溝63bは、キャップ部材63の先端部において先端面及び外周面に開口するように形成した円環状の溝部である。これらのOリング装着溝61a,63bには、それぞれOリングOL1,OL2が装着してある。図には明示していないが、シリンジ筒体61のOリング装着溝61aに装着したOリングOL1は、シリンジ筒体61の基端面から僅かに突出し、かつシリンジ筒体61の外周面から僅かに突出する大きさに構成してある。同様に、キャップ部材63のOリング装着溝63bに装着したOリングOL2は、キャップ部材63の先端面から僅かに突出し、かつキャップ部材63の外周面から僅かに突出する大きさに構成してある。
【0031】
図1〜図4に示すように、カートリッジ60を保持するシリンジホルダ50は、フロントプレート51とリヤギヤプレート52とを備えている。フロントプレート51は、ホルダ部51aとセンタシャフト部51bとを一体に成形したものである。ホルダ部51aは、装置本体10の吐出プレート部12よりも外径の小さい円板状を成すもので、その軸心を中心とした円周上となる部位に複数のシリンジ先端装着孔51cを有している。シリンジ先端装着孔51cは、個々の軸心とホルダ部51aの軸心との間の距離が、吐出プレート部12の軸心と吐出軸心Cとの間の距離と同一となり、かつそれぞれの軸心が互いに平行となるように形成した円柱状の孔であり、ホルダ部51aの外表面から内表面に亘って貫通している。シリンジ先端装着孔51cの内径は、カートリッジ60の先端部に装着したキャップ部材63を嵌合することのできる大きさに形成してある。フロントプレート51の外周部には、原点検出用突起51dが設けてある。
【0032】
センタシャフト部51bは、ホルダ部51aの軸心となる部位に設けた円柱状部分であり、ホルダ部51aの内外両表面からそれぞれ突出している。ホルダ部51aの外表面から突出したセンタシャフト部51bは、吐出プレート部12に形成した回転支持孔12aに回転可能に嵌合する大きさに形成してある。ホルダ部51aの内表面から突出したセンタシャフト部51bは、外表面から突出したセンタシャフト部51bよりも突出長さが大きく構成してある。
【0033】
リヤギヤプレート52は、外周面に歯を有した円板状部材であり、フロントプレート51とほぼ同じ外径に構成してある。このリヤギヤプレート52には、その軸心部分にセンタシャフト支持孔52aが形成してあるとともに、センタシャフト支持孔52aの軸心を中心とした円周上となる部位に複数のシリンジ基端装着孔52bが設けてある。センタシャフト支持孔52aは、フロントプレート51のセンタシャフト部51bを回転可能に嵌合する大きさに形成してある。シリンジ基端装着孔52bは、個々の軸心とリヤギヤプレート52の軸心との間の距離が、吐出プレート部12の軸心と吐出軸心Cとの間の距離と同一となり、かつそれぞれの軸心が互いに平行となるように形成した円柱状の孔であり、リヤギヤプレート52の外表面から内表面に亘って貫通している。シリンジ基端装着孔52bの内径は、シリンジ筒体61の基端部を嵌合することのできる大きさに形成してある。図には明示していないが、フロントプレート51のホルダ部51aに形成したシリンジ先端装着孔51cとリヤギヤプレート52に形成したシリンジ基端装着孔52bとは、同一のピッチで同一の数だけ設けてある。本実施の形態では、シリンジ先端装着孔51c及びシリンジ基端装着孔52bがそれぞれ互いに同一の円周上となる部位に6個ずつ形成してあり、それぞれにホルモン製剤を充填したカートリッジ60が取り付けてある。
【0034】
すなわち、シリンジ先端装着孔51cにキャップ部材63を嵌合させ、かつシリンジ基端装着孔52bにシリンジ筒体61の基端部を嵌合させることにより、フロントプレート51とリヤギヤプレート52との間に6個のカートリッジ60が取り付けてある。この状態においては、フロントプレート51の内表面から突出したセンタシャフト部51bがリヤギヤプレート52のセンタシャフト支持孔52aに嵌合しており、フロントプレート51とリヤギヤプレート52とが互いに軸心を合致させた状態で連結されている。
【0035】
カートリッジ60を取り付けたシリンジホルダ50は、フロントプレート51の外表面から突出するセンタシャフト部51bを吐出プレート部12の回転支持孔12aに嵌合させ、かつリヤギヤプレート52の外表面を基準プレート部22の外表面に当接させた状態でフロントプレート51とポンプケース20との間に保持される。また、シリンジホルダ50は、リヤギヤプレート52の外周面に設けられた歯が、回転用駆動モータ40のピニオンギヤ42に歯合しており、回転用駆動モータ40の駆動により、センタシャフト部51bの軸心回りに装置本体10に対して回転することが可能である。
【0036】
ここで、基準プレート部22の外表面とシリンジ筒体61の基端面との間は、ポンプ保持部13とポンプケース20の基準プレート部22との間に介在させた押圧スプリング37の押圧力によって互いに押圧された状態にある。同様に、吐出プレート部12の外表面とキャップ部材63の先端面との間についても、押圧スプリング37の押圧力によって互いに押圧された状態にある。従って、基準プレート部22の外表面に対しては、シリンジ筒体61のOリング装着溝61aに装着したOリングOL1が圧接されることになり、吐出プレート部12の外表面に対しては、キャップ部材63のOリング装着溝63bに装着したOリングOL2が圧接されることになる。これらの結果、カートリッジ60に充填されたホルモン製剤が基準プレート部22との間や吐出プレート部12との間から外部に漏出する恐れはない。
【0037】
上記のように構成した吐出装置1では、回転用駆動モータ40を駆動し、ピニオンギヤ42及びこれが歯合するリヤギヤプレート52を介してシリンジホルダ50がセンタシャフト部51bの軸心回りに装置本体10に対して回転させると、装置本体10の吐出プレート部12に対してカートリッジ60が回転することになり、ロータリエンコーダ38からの出力に基づいて回転用駆動モータ40の駆動を停止させれば、吐出プレート部12に形成した吐出孔12cに対して複数のカートリッジ60を互いに軸心を合致させた位置に択一的に配置させることができる。
【0038】
吐出孔12cに対応して配置されたカートリッジ60は、キャップ部材63の開口63aを介してセプタム62のスリット孔62aが吐出プレート部12の吐出孔12cに対向するとともに、シリンジ筒体61の基端開口がポンプケース20の基準プレート部22に形成した連通孔22aを通じてプランジャ部21のプランジャ収容孔21aに連通する。従って、この状態から吐出用駆動モータユニット36を駆動すると、減速ギヤ列35aを介して駆動ネジ部材33が回転し、ギヤ駆動部32に形成したネジ孔32bとのネジの作用によりプランジャ30がプランジャ収容孔21aに対して進出移動する。この結果、基準プレート部22の連通孔22aを通じてシリンジ筒体61の内部に空気による吐出圧力が与えられることになり、シリンジ筒体61に充填されたホルモン製剤がセプタム62のスリット孔62a及び吐出プレート部12の吐出孔12cを通じて吐出柱12bの先端から吐出されることになる。
【0039】
次いで、吐出用駆動モータユニット36を停止させると、プランジャ30のプランジャ収容孔21aに対する進出移動が停止し、シリンジ筒体61に対する吐出圧力の供給も停止される。この状態から回転用駆動モータ40を駆動すると、シリンジホルダ50が回転し、次のカートリッジ60が吐出プレート部12に形成した吐出孔12cに対して軸心を合致させた位置に配置される。再びこの状態から吐出用駆動モータユニット36を駆動すれば、新たなカートリッジ60のシリンジ筒体61に充填されたホルモン製剤が吐出柱12bの吐出孔12cから外部に吐出されることになる。
【0040】
以降、上述した動作を繰り返し実施すれば、シリンジホルダ50に保持させた6個のカートリッジ60から順次ホルモン製剤を吐出することができるようになる。従って、シリンジホルダ50に2種類のホルモン製剤を保持させておけば、同一の吐出孔12cから異なる種類のホルモン製剤の自動的な吐出が可能となる。しかも、ホルモン製剤を吐出させるための手段としては、吐出プレート部12の吐出孔12cに対向配置されたカートリッジ60に対して吐出圧力を与えるものを唯一用意すれば良いため、コスト的に有利となる。
【0041】
実際に、上述の吐出装置1を適用して雌牛100にホルモン製剤を投与する場合には、図5に示すように、吐出柱12bに注射針70を取り付け、注射針70を限局注射すべき卵巣102の近辺に刺した状態で装置本体10を腟101内に設置すれば良い。図には明示していないが、装置本体10には、電源となるバッテリーの他、吐出用駆動モータユニット36及び回転用駆動モータ40の動作を制御するための制御基板を搭載し、これらのすべてに防水処理が施されることになる。適用する吐出装置1の具体的な大きさとしては、吐出プレート部12の外径が約50mmであり、装置本体10において吐出プレート部12の外表面からポンプ保持部13の外表面までの長さも約50mmである。
【0042】
尚、上述した実施の形態では、吐出駆動手段として、吐出用駆動モータユニット36の駆動によってプランジャ30を直進移動させ、プランジャ収容孔21aの空気を圧縮することによってシリンジ筒体61の内部に吐出圧力を与えるものを例示しているが、必ずしもこれらの構成に限定されない。例えば、図6〜図8に示す変形例のように、ポンプ用駆動モータユニット80の回転によって駆動する空圧ポンプ81を適用し、空圧ポンプ81から吐出される空気を吐出圧力として基準プレート部22の連通孔22aから直接シリンジ筒体61の内部に供給することも可能である。尚、図6〜図8に示す変形例において、上述した実施の形態と同様の構成に関しては、同一の符号を付している。
【0043】
この変形例においても、回転用駆動モータ40を駆動し、ピニオンギヤ42及びこれが歯合するリヤギヤプレート52を介してシリンジホルダ50がセンタシャフト部51bの軸心回りに装置本体10に対して回転させると、装置本体10の吐出プレート部12に対してカートリッジ60が回転することになり、ロータリエンコーダ38からの出力に基づいて回転用駆動モータ40の駆動を停止させれば、吐出プレート部12に形成した吐出孔12cに対して複数のカートリッジ60を互いに軸心を合致させた位置に択一的に配置させることができる。
【0044】
吐出孔12cに対応して配置されたカートリッジ60は、キャップ部材63の開口63aを介してセプタム62のスリット孔62aが吐出プレート部12の吐出孔12cに対向するとともに、シリンジ筒体61の基端開口がポンプケース20の基準プレート部22に形成した連通孔22aを通じてポンプ部21′のポンプ吐出孔21a′に連通する。従って、この状態からポンプ用駆動モータユニット80を駆動すると、空圧ポンプ81が駆動し、基準プレート部22の連通孔22aを通じてシリンジ筒体61の内部に空気による吐出圧力が与えられることになり、シリンジ筒体61に充填されたホルモン製剤がセプタム62のスリット孔62a及び吐出プレート部12の吐出孔12cを通じて吐出柱12bの先端から吐出されることになる。
【0045】
次いで、ポンプ用駆動モータユニット80を停止させると、シリンジ筒体61に対する吐出圧力の供給も停止される。この状態から回転用駆動モータ40を駆動すると、シリンジホルダ50が回転し、次のカートリッジ60が吐出プレート部12に形成した吐出孔12cに対して軸心を合致させた位置に配置される。再びこの状態からポンプ用駆動モータユニット80を駆動すれば、新たなカートリッジ60のシリンジ筒体61に充填されたホルモン製剤が吐出柱12bの吐出孔12cから外部に吐出されることになる。
【0046】
以降、上述した動作を繰り返し実施すれば、シリンジホルダ50に保持させた6個のカートリッジ60から順次ホルモン製剤を吐出することができるようになる。従って、シリンジホルダ50に2種類のホルモン製剤を保持させておけば、同一の吐出孔12cから異なる種類のホルモン製剤の自動的な吐出が可能となる。しかも、ホルモン製剤を吐出させるための手段としては、吐出プレート部12の吐出孔12cに対向配置されたカートリッジ60に対して吐出圧力を与えるものを唯一用意すれば良いため、コスト的に有利となる。
【0047】
また、上述した実施の形態及び変形例では、シリンジ筒体61の基端部が開口したものを適用しているが、シリンジ筒体61の内部にプランジャを備えたものを適用しても良い。
【0048】
さらに、上述した実施の形態及び変形例では、シリンジホルダ50を回転させることによってシリンジ筒体61を択一的に吐出位置に配置させるようにしているが、例えばスライドさせることによってシリンジ筒体61を択一的に吐出位置に配置させるように構成することも可能である。
【0049】
またさらに、上述した実施の形態及び変形例では、共通の吐出孔12cを通じてシリンジ筒体61の充填物を吐出するようにしているが、個々のシリンジ筒体61が個別の吐出孔12cを通じて充填物を吐出するようにしても良い。
【0050】
さらに、上述した実施の形態及び変形例では、シリンジ筒体61に液状の薬剤を充填したものを前提として説明したが、例えば、シリンジ筒体61に粉末状の薬剤を充填し、吐出駆動手段が駆動した場合に吐出位置に配置されたプランジャ収容孔21aの内部に薬剤を溶解させる液溶媒(例えば、生理的食塩水)を加圧供給することにより溶解した充填物を外部に吐出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 吐出装置
10 装置本体
12c 吐出孔
22 基準プレート部
22a 連通孔
30 プランジャ
36 吐出用駆動モータユニット
40 回転用駆動モータ
50 シリンジホルダ
61 シリンジ筒体
70 注射針
C 吐出軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジ筒体に吐出圧力を与えることによってシリンジ筒体に充填された充填物をシリンジ筒体の先端部から外部に吐出する吐出装置において、
複数のシリンジ筒体を保持し、かつこれら複数のシリンジ筒体を所定の吐出位置に選択的に配置させる態様で装置本体に移動可能に配設したシリンジホルダと、
装置本体に対してシリンジホルダを移動させるホルダ移動手段と、
装置本体に配設し、シリンジホルダに保持されたシリンジ筒体が前記吐出位置に配置された状態で駆動した場合に当該吐出位置に配置されたシリンジ筒体に対して吐出圧力を与える吐出駆動手段と
を備えたことを特徴とする吐出装置。
【請求項2】
前記シリンジホルダは、装置本体に対して所定の軸心回りに回転可能に配設し、該軸心を中心とした円周上に複数のシリンジ筒体を保持するものであり、
前記ホルダ移動手段は、装置本体に対してシリンジホルダを回転させるものであり、
前記装置本体は、シリンジホルダが回転した場合にシリンジホルダに保持したシリンジ筒体の基端部が摺接し、かつシリンジ筒体が前記吐出位置に配置された場合にその基端部に連通する連通孔を有した基準プレート部を備えたものであり、
前記吐出駆動手段は、前記基準プレート部の連通孔に対応する部位に配設し、該連通孔を通じてシリンジ筒体に吐出圧力を与えるものである
ことを特徴とする請求項1に記載の吐出装置。
【請求項3】
前記装置本体は、シリンジホルダが回転した場合にシリンジホルダに保持したシリンジ筒体の先端部が摺接し、かつシリンジ筒体が前記吐出位置に配置された場合にその先端部に連通する吐出孔を有した吐出プレートを備えことを特徴とする請求項2に記載の吐出装置。
【請求項4】
前記シリンジ筒体は、それぞれシリンジホルダに対して着脱可能に保持させたものであり、
前記吐出駆動手段は、吐出位置に配置されたシリンジ筒体に流体圧を作用させることによって充填物を外部に吐出するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の吐出装置。
【請求項5】
前記シリンジ筒体は、基端部が開口し、かつ内部に粉末状の薬剤を充填し、かつシリンジホルダに対して着脱可能に保持させたものであり、
前記吐出駆動手段は、吐出位置に配置されたシリンジ筒体の内部に薬剤を溶解させる液溶媒を加圧供給することによって溶解した充填物を外部に吐出するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の吐出装置。
【請求項6】
前記吐出プレートの吐出孔に注射針を具備し、該注射針を介してシリンジ筒体の充填物を動物の体内に注入するものであることを特徴とする請求項3に記載の吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−279497(P2010−279497A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134280(P2009−134280)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(503366841)株式会社アイカムス・ラボ (27)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【Fターム(参考)】