説明

含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法

【課題】安全性及び生産性が高く、簡便な含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】ペルフルオロアルキルスルホニルフロライド(RfSOF)とアンモニアとを反応させて反応液を得る第1の工程と、前記反応液とLi,Na,Kのいずれかのアルカリ金属元素Mの、水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩の中から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属化合物とを反応させて、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩(RfSONH・M)を含む混合物を得る第2の工程と、前記混合物とペルフルオロアルキルスルホニルハライド(RfSOX)とを反応させる第3の工程と、を備える含フッ素スルホニルイミド化合物((RfSO)(RfSO)N・M)の製造方法を採用する。但し、Rf及びRfは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基であり、Xはフッ素又は塩素である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素スルホニルイミド化合物は、イオン導伝材料やイオン液体のアニオン源として有用な物質であることが知られている。また、イオン液体は、特に電池やキャパシタの電解質、反応溶媒や触媒等として期待されており、例えば、含フッ素スルホニルイミド化合物である含フッ素スルホニルイミド酸の塩と、イミダゾリウム臭化物塩のような第4級アミンのハロゲン化物塩とを塩交換することによって得られることが一般に知られている。
【0003】
ところで、含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法としては、特許文献1及び特許文献2が知られている。具体的に、特許文献1には、下記式(1)に示すように、ペルフルオロアルキルスルホンアミド(RfSONH)と、ペルフルオロアルキルスルホニルハライド(RfSOX)と、フッ化カリウム等のフッ素化合物(MF)と、をアセトニトリルなどの有機溶媒下で反応させて、ペルフルオロアルキルスルホニルイミド塩((RfSO)(RfSO)N・M)を製造する方法が開示されている。
【0004】
【化1】

上記式(1)において、Rf及びRfはペルフルオロアルキル基等を、Mはアルカリ金属等を、Xはフッ素又は塩素をそれぞれ示している。
【0005】
また、特許文献2には、下記式(2)に示すように、ペルフルオロアルキルスルホンアミドとペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとを第3級アミンあるいは複素環式アミン存在下で反応させて、ペルフルオロアルキルスルホニルイミド塩((RfSO)(RfSO)N・M)を製造する方法が開示されている。
【0006】
【化2】

上記式(2)において、Rf及びRfはペルフルオロアルキル基等を、R〜Rはアルキル基等をそれぞれ示している。
【0007】
ところで、上記特許文献1及び特許文献2において、ペルフルオロアルキルスルホンアミドが原料として用いられている。このペルフルオロアルキルスルホンアミドの製造方法としては、非特許文献1が知られており、下記反応式(3)に示すように、一般式C2n+1SOX(nは1〜4の整数、XはF又はCl)で表されるペルフルオロアルキルスルホニルハライドとアンモニア(NH)とを反応させる方法である。
【0008】
【化3】

【0009】
具体的に非特許文献1には、トリフルオロメタンスルホンアミド(CFSONH)の製造方法が開示されている。非特許文献1に開示されたトリフルオロメタンスルホンアミドの製造方法は、−78℃の冷却下で無水アンモニアとトリフルオロメタンスルホニルフロライド(CFSOF)とを無溶媒で反応させた後、生成したトリフルオロメタンスルホンアミドをジオキサンによって抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−288193号公報
【特許文献2】特開平8−81436号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Inorganic chemistry 1984,23.3720−3723
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された方法では、ペルフルオロアルキルスルホンアミドとペルフルオロアルキルスルホニルハライドとを反応させてペルフルオロアルキルスルホニルイミド塩を生成する際に、イミド化反応の添加剤として高価なアルカリ金属フッ化物や第三級アミンを多量に添加する必要があるという課題があった。
【0013】
また、特許文献1及び特許文献2に記載の方法では、原料であるペルフルオロアルキルスルホンアミドの製造方法において、ペルフルオロアルキルスルホニルハライドと反応させるアンモニアとして、アンモニアガス、無水アンモニア(bp.−33℃)、アンモニウム塩等を用いることから、アンモニアの毒性や可燃性といった危険性、冷凍設備や高圧設備の必要性、生産コストの上昇という問題があった。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、安全性及び生産性が高く、簡便な含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究した結果、アンモニア、好ましくはアンモニア水とペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとを反応させて生成したペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩とフッ化アンモニウムとが溶解した溶液と、アルカリ金属元素の水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩の中から選ばれた少なくとも1種の化合物と、ペルフルオロアルキルスルホニルハライドと、を反応させることにより、高価なアルカリ金属フッ化物や第三級アミンを用いることなく、含フッ素スルホニルイミド化合物を生成可能であることを見出して本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[1] 下記式(4)に示される含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法であって、
下記式(5)に示されるペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとアンモニアとを反応させて反応液を得る第1の工程と、
前記反応液と、Li,Na,Kのいずれかのアルカリ金属元素Mの、水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩の中から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属化合物と、を反応させて、下記式(6)に示されるペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩を含む混合物を得る第2の工程と、
前記混合物と、下記式(7)に示されるペルフルオロアルキルスルホニルハライドと、を反応させる第3の工程と、を備えることを特徴とする含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法。
(RfSO)(RfSO)N・M ・・・(4)
RfSOF ・・・(5)
RfSONH・M ・・・(6)
RfSOX ・・・(7)
但し、上記式(4)〜(7)において、Rf及びRfは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。
また、上記式(7)において、Xはフッ素(F)又は塩素(Cl)である。
【0017】
[2] 上記式(4)に示される含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法であって、
上記式(5)に示されるペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとアンモニアとを反応させて、下記式(8)に示されるペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩とフッ化アンモニウムとを含む反応液を得る第1の工程と、
前記反応液と、Li,Na,Kのいずれかのアルカリ金属元素Mの、水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩の中から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属化合物と、を反応させて、上記式(6)に示されるペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩と、下記式(9)に示されるアルカリ金属フッ化物と、を含む混合物を得る第2の工程と、
前記混合物と、上記式(7)に示されるペルフルオロアルキルスルホニルハライドと、を反応させる第3の工程と、を備えることを特徴とする前項1に記載の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法。
RfSONH・NH ・・・(8)
MF ・・・(9)
但し、上記式(8)において、Rfは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。
【0018】
[3] 前記第1の工程において、前記アンモニアがアンモニア水であり、得られる反応液が水溶液であって、
前記第2の工程において、前記反応液と前記アルカリ金属化合物との反応を前記水溶液中で行うことを特徴とする前項1又2に記載の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法。
[4] 前記第2の工程において発生するアンモニアを回収して前記第1の工程に供給する第4の工程を、さらに備えることを特徴とする前項1乃至3のいずれか一項に記載の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法。
【0019】
[5] 前記アンモニア水の濃度が、1〜50%の範囲であることを特徴とする前項1乃至4のいずれか一項に記載の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法。
[6] 前記アンモニア水の、前記ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドに対するモル量が3〜20倍の範囲であることを特徴とする前項1乃至5のいずれか一項に記載の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法。
[7] 前記ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドと、前記アンモニア水と、の反応温度が、0〜70℃の範囲であることを特徴とする前項1乃至6のいずれか一項に記載の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法によれば、ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとアンモニアとを反応させた反応液に、所定のアルカリ金属化合物を反応させてペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩を含む混合物を生成し、この混合物とペルフルオロアルキルスルホニルハライドとを反応させることで含フッ素スルホニルイミド化合物を製造する構成となっている。このため、アルカリ金属フッ化物や第三級アミンといった高価な添加剤を新たに加えることを必要としない。したがって、安全性及び生産性が高く、簡便な方法により、含フッ素スルホニルイミド化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用した一実施形態として、含フッ素スルホニルイミド化合物であるペルフルオロアルキルスルホンイミド塩の製造方法ついて、以下に詳細に説明する。
本実施形態のペルフルオロアルキルスルホンイミド塩の製造方法は、下記式(10)に示されるペルフルオロアルキルスルホンイミド塩を製造する方法であって、下記式(11)に示されるペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとアンモニアとを反応させて反応液を得る第1の工程と、前記反応液と、Li,Na,Kのいずれかのアルカリ金属元素Mの、水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩の中から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属化合物と、を反応させて、下記式(12)に示されるペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩を含む混合物を得る第2の工程と、前記混合物と、下記式(13)に示されるペルフルオロアルキルスルホニルハライドと、を反応させる第3の工程と、を備えて概略構成されている。
(RfSO)(RfSO)N・M ・・・(10)
RfSOF ・・・(11)
RfSONH・M ・・・(12)
RfSOX ・・・(13)
但し、上記式(10)〜(13)において、Rf及びRfは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。
また、上記式(13)において、Xはフッ素(F)又は塩素(Cl)である。
【0022】
(ペルフルオロアルキルスルホンイミド塩)
本実施形態の含フッ素スルホニルイミドであるペルフルオロアルキルスルホンイミド塩の製造方法は、RfとRfとが同一の対称性イミド、特にRfとRfとが異なる非対称性イミド化合物の合成に有効である。
【0023】
上記式(10)で表されるペルフルオロアルキルスルホンイミド塩は、RfとRfとが同一の場合(対称構造)として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩[(CFSON・M]、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド塩[(CSON・M]、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド塩[(CSON・M]、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド塩[(CSON・M]等のペルフルオロアルキルスルホンイミド塩類が挙げられる。なお、本実施形態のRf及びRfにおいて、炭素数3又は4の場合には、直鎖状以外に分岐状の構造異性体を含んでいる(以下、同様)。
【0024】
また、RfとRfとが異なる場合(非対称構造)として、ペンタフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]エタンスルホニルアミド塩[(CFSO)(CSO)N・M]、ヘプタフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]プロパンスルホニルアミド塩[(CFSO)(CSO)N・M]、ノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド塩[(CFSO)(CSO)N・M]、ヘプタフルオロ−N−[(ペンタフルオロエタン)スルホニル]プロパンスルホニルアミド塩[(CSO)(CSO)N・M]、ノナフルオロ−N−[(ペンタフルオロエタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド塩[(CSO)(CSO)N・M]、ノナフルオロ−N−[(ヘプタフルオロプロパン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド塩[(CSO)(CSO)N・M]等が挙げられる。
【0025】
また、本実施形態の上記式(10)で表されるペルフルオロアルキルスルホンイミド塩において、アルカリ金属元素Mは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)のいずれか一種の元素である。したがって、本実施形態の製造方法によって得られる上記式(10)で表されるペルフルオロアルキルスルホンイミド塩としては、
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム塩、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム塩、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム塩、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドナトリウム塩、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドカリウム塩、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム塩、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドナトリウム塩、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドカリウム塩、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム塩、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドナトリウム塩、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドカリウム塩;ペンタフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]エタンスルホニルアミドリチウム塩、ペンタフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]エタンスルホニルアミドナトリウム塩、ペンタフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]エタンスルホニルアミドカリウム塩、ヘプタフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]プロパンスルホニルアミドリチウム塩、ヘプタフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]プロパンスルホニルアミドナトリウム塩、ヘプタフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]プロパンスルホニルアミドカリウム塩、ノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミドリチウム塩、ノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミドナトリウム塩、ノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミドカリウム塩、ヘプタフルオロ−N−[(ペンタフルオロエタン)スルホニル]プロパンスルホニルアミドリチウム塩、ヘプタフルオロ−N−[(ペンタフルオロエタン)スルホニル]プロパンスルホニルアミドナトリウム塩、ヘプタフルオロ−N−[(ペンタフルオロエタン)スルホニル]プロパンスルホニルアミドカリウム塩、ノナフルオロ−N−[(ペンタフルオロエタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミドリチウム塩、ノナフルオロ−N−[(ペンタフルオロエタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミドナトリウム塩、ノナフルオロ−N−[(ペンタフルオロエタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミドカリウム塩、ノナフルオロ−N−[(ヘプタフルオロプロパン)スルホニル]ブタンスルホニルアミドリチウム塩、ノナフルオロ−N−[(ヘプタフルオロプロパン)スルホニル]ブタンスルホニルアミドナトリウム塩、ノナフルオロ−N−[(ヘプタフルオロプロパン)スルホニル]ブタンスルホニルアミドカリウム塩;が挙げられる。
【0026】
(第1の工程)
本実施形態の第1の工程は、上記式(11)に示されるペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとアンモニアとを反応させて、ペルフルオロアルキルスルホンイミド塩の原料として用いるペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩を含む反応液を得る工程である。より具体的には、上記式(11)に示されるペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとアンモニアとを反応させて、下記式(14)に示されるペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩とフッ化アンモニウム(NHF)とを含む反応液を得る。
RfSONH・NH ・・・(14)
【0027】
原料であるアンモニアには、アンモニアガス又はアンモニア水を用いることができる。本実施形態では、特にアンモニア水を用いることが好ましい。
第1の工程において、アンモニア水を用いる場合には、上記ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとアンモニア水とを反応させて反応液を得る。
すなわち、下記式(15)に示すように、ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドがアンモニア水と反応して、上記式(14)に示すペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩とフッ化アンモニウムとが生成する。
【0028】
【化4】

【0029】
ここで、上記式(14)及び(15)において、Rfは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。
すなわち、上記式(11)で示されるペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとしては、トリフルオロメタンスルホニルフロライド、ペンタフルオロエタンスルホニルフロライド、ヘプタフルオロプロパンスルホニルフロライド、ノナフルオロブタンスルホニルフロライドが挙げられる。
また、上記式(14)で表されるペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩としては、トリフルオロメタンスルホンアミドアンモニウム塩、ペンタフルオロエタンスルホンアミドアンモニウム塩、ヘプタフルオロプロパンスルホンアミドアンモニウム塩、ノナフルオロブタンスルホンアミドアンモニウム塩が挙げられる。
【0030】
アンモニア水は、その濃度範囲の下限が、1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。また、濃度範囲の上限としては、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。アンモニア水の濃度が1%未満であると、ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドと反応するアンモニアが不足し、ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドが加水分解してしまうために好ましくない。一方、アンモニア水の濃度が50%を超えると、アンモニア水の生成が困難となるために好ましくない。これに対して、アンモニア水の濃度が上記範囲内であると、アンモニア水の調整が容易であると共にペルフルオロアルキルスルホニルフロライドの加水分解が少なく好ましい。
【0031】
また、アンモニア水のモル量は、ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドに対して3〜20倍の範囲とすることが好ましく、5〜10倍の範囲とすることがより好ましい。アンモニア水のペルフルオロアルキルスルホニルフロライドに対するモル量が3倍未満であると、上記式(15)の反応が不十分となるために好ましくない。一方、20倍を越えると、経済的に無駄である。これに対して上記範囲内であると、上記式(15)の反応を充分に進行させるとともに、ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドの加水分解を抑制させることができるために好ましい。
【0032】
また、反応工程においては、ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとアンモニア水との反応温度が、0〜70℃の範囲となるように制御することが好ましい。ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとアンモニア水との反応温度が0℃未満であるとアミド化の反応が遅く、未反応の原料であるスルホニルフロライドをガスとしてロスしてしまう割合が増加するため、好ましくない。一方、反応温度が70度以上では、アンモニアの水に対する溶解度が下がり、アンモニアをガスとしてロスしてしまう割合が増加するため、好ましくない。
【0033】
(第2の工程)
本実施形態の第2の工程は、第1の工程で得られた上記反応液と、Li,Na,Kのいずれかのアルカリ金属元素Mの、水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩の中から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属化合物と、を反応させて、上記式(12)に示されるペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩と、下記式(16)に示されるアルカリ金属フッ化物と、を含む混合物を得る工程である。
MF ・・・(16)
【0034】
第2の工程では、上記第1の工程で得られた反応液がアンモニア水溶液の場合、この反応液と上記アルカリ金属化合物との反応をアンモニア水溶液中で行う。
【0035】
ここで、本実施形態における、Li,Na,Kのいずれかのアルカリ金属元素Mの、水酸化物(MOH)、炭酸塩(MCO)、及び重炭酸塩(MHCO)の中から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属化合物としては、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸リチウム(LiCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸水素リチウム(LiHCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)が挙げられる。
【0036】
すなわち、第2の工程では、下記式(17)〜(19)に示すように、水溶液中に溶解しているペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩とフッ化アンモニウム(NHF)とが、上記アルカリ金属化合物と反応して、上記式(12)に示されるペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩と、上記式(16)で示されるアルカリ金属フッ化物と、を含む混合物を生成する。
【0037】
下記式(17)は、上記アルカリ金属化合物としてアルカリ金属元素Mの水酸化物(MOH)を用いた場合の反応式である。
【0038】
【化5】

【0039】
また、下記式(18)は、上記アルカリ金属化合物としてアルカリ金属元素Mの炭酸塩(MCO)を用いた場合の反応式である。
【0040】
【化6】

【0041】
さらに、下記式(19)は、上記アルカリ金属化合物としてアルカリ金属元素Mの重炭酸塩(MHCO)を用いた場合の反応式である。
【0042】
【化7】

【0043】
ここで、上記式(12)において、Rfは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。
すなわち、上記式(12)で示されるペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩としては、トリフルオロメタンスルホンアミドリチウム塩、トリフルオロメタンスルホンアミドナトリウム塩、トリフルオロメタンスルホンアミドカリウム塩、ペンタフルオロエタンスルホンアミドリチウム塩、ペンタフルオロエタンスルホンアミドナトリウム塩、ペンタフルオロエタンスルホンアミドカリウム塩、ヘプタフルオロプロパンスルホンアミドリチウム塩、ヘプタフルオロプロパンスルホンアミドナトリウム塩、ヘプタフルオロプロパンスルホンアミドカリウム塩、ノナフルオロブタンスルホンアミドリチウム塩、ノナフルオロブタンスルホンアミドナトリウム塩、ノナフルオロブタンスルホンアミドカリウム塩が挙げられる。
【0044】
また、上記式(16)に示されるアルカリ金属フッ化物としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)が挙げられる。
以上のようにして、ペルフルオロアルキルスルホンイミド塩の原料となるペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩を生成する。
【0045】
(第3の工程)
本実施形態の第3の工程は、第2の工程で得られた混合物と、上記式(13)に示されるペルフルオロアルキルスルホニルハライドと、を反応させる工程である。より具体的には、第2の工程で得られた混合物を含む水溶液を濃縮し、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩とアルカリ金属フッ化物とを含む混合物を得る。この混合物を溶媒中で上記ペルフルオロアルキルスルホニルハライドと反応させて、上記式(10)に示されるペルフルオロアルキルスルホンイミド塩を得る。
【0046】
ここで、第3の工程で使用できる溶媒としては、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩とアルカリ金属フッ化物とに対して不活性なものであれば、特に限定されるものではない。このような溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ペルフルオロカーボン等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、ヘプタン、ヘキサン等の炭化水素類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、マロノニトリル、アジポニトリルなどのニトリル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が挙げられる。これらの溶媒は単独又は混合して使用することができる。
【0047】
上記式(13)において、Rfは上記Rfと同様に、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Xは、フッ素(F)又は塩素(Cl)である。
すなわち、上記式(13)で示されるペルフルオロアルキルハライドとしては、上記式(11)で示されるペルフルオロアルキルスルホニルフロライド及び、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、ペンタフルオロエタンスルホニルクロライド、ヘプタフルオロプロパンスルホニルクロライド、ノナフルオロブタンスルホニルクロライドが挙げられる。
【0048】
第3の工程では、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩とアルカリ金属フッ化物とを溶媒中で、上記ペルフルオロアルキルスルホニルハライドとを反応させる。
すなわち、下記式(20)に示すように、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩がペルフルオロアルキルスルホニルハライドと反応して、上記式(10)に示されるペルフルオロアルキルスルホンイミド塩が生成する。
【0049】
【化8】

【0050】
本実施形態の製造方法では、所望する上記式(10)で示されるペルフルオロアルキルスルホンイミド塩を製造するために、上記式(11)で示されるペルフルオロアルキルスルホニルフロライドと、上記式(13)で示されるペルフルオロアルキルスルホニルハライドと、の組合せを適宜選択することができる。
すなわち、上記式(11)で示されるペルフルオロアルキルスルホニルフロライドと上記式(13)で示されるペルフルオロアルキルスルホニルハライドにおいて、同一構造のペルフルオロアルキル基(Rf=Rf)を用いることにより、対称構造のペルフルオロアルキルスルホンイミド塩を得ることができる。
一方、上記式(11)で示されるペルフルオロアルキルスルホニルフロライドと上記式(13)で示されるペルフルオロアルキルスルホニルハライドにおいて、異なる構造のペルフルオロアルキル基を用いることにより、非対称構造のペルフルオロアルキルスルホンイミド塩を得ることができる。
【0051】
(第4の工程)
さらに、本実施形態の製造方法では、第2の工程において発生するアンモニアガスを回収し、アンモニアガスからアンモニア水を生成して第1の工程に供給する第4の工程を設けることが好ましい。具体的には、第2の工程の上記式(17)〜(19)において発生するアンモニアガスを水中で捕捉して、アンモニア水として回収する。したがって、本実施形態の製造方法によれば、第4の工程を設けることにより、反応系に残存するアンモニアもしくは副生するアンモニウム塩を廃棄することなく、第1の工程に用いるアンモニア水として再利用することが可能となる。
【0052】
ところで、従来のペルフルオロアルキルスルホンイミド塩の製造方法では、ペルフルオロアルキルスルホンイミド塩の原料であるペルフルオロアルキルスルホンアミドは、一般的にはペルフルオロアルキルスルホニルハライドと無水アンモニアとをエーテル溶媒下で反応させて生成したものが用いられていた(上記非特許文献1を参照)。さらに、上記方法で生成したペルフルオロアルキルスルホンアミドを単離するために、ペルフルオロアルキルスルホニルハライドと無水アンモニアとの反応後に塩酸を加え、ペルフルオロアルキルスルホンアミドをエーテル層に、副生したハロゲン化アンモニウムを塩酸層にそれぞれ溶解させて、ペルフルオロアルキルスルホンアミドとハロゲン化アンモニウムとを分離していた。そして、単離されたペルフルオロアルキルスルホンアミドが精製されてイミド化の原料として用いられ、副生したハロゲン化アンモニウムは反応系から分離除去された後に廃棄されていた。
【0053】
ここで、ペルフルオロアルキルスルホンイミド塩の合成において、ペルフルオロアルキルスルホンアミドとペルフルオロアルキルスルホニルハライドだけではイミド化反応は効率よく進行せず、上記特許文献1及び特許文献2に示した従来のペルフルオロアルキルスルホンイミド塩の製造方法では、原料であるペルフルオロアルキルスルホンアミド及びペルフルオロアルキルスルホニルハライドに、アルカリ金属塩や第三級アミンなどの塩基を添加して反応させる構成となっている。
【0054】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に示すような従来のペルフルオロアルキルスルホンイミド塩の製造方法では、イミド化反応の添加剤であるアルカリ金属フッ化物や第三級アミンを、別途原料として多量に加える必要があった。これらの添加剤は高価であるため、製造コストが大きくなるという問題があった。
【0055】
これに対して、本実施形態のペルフルオロアルキルスルホンイミド塩の製造方法によれば、ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとアンモニアとの反応生成物を溶液中で混合したまま、所定のアルカリ金属化合物を反応させることによって、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩及びフッ化アンモニウムからそれぞれ対応するペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩及びアルカリ金属フッ化物の混合物を生成することができる。このように、安価なアルカリ金属化合物を用いることでペルフルオロアルキルスルホンアミド塩を生成することができるため、アルカリ金属フッ化物や第三級アミンのような高価な添加剤を用いる必要がない。
【0056】
そして、生成した混合物、すなわち、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩及びアルカリ金属フッ化物と、ペルフルオロアルキルスルホニルハライドと、を反応させることにより、ペルフルオロアルキルスルホンイミド塩を生成することができる。このように、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩を生成する際に副生するフッ化アンモニウムを反応系から除去せずに、安価なアルカリ金属化合物と反応させることにより、反応系内でアルカリ金属フッ化物を生成することができる。このため、アルカリ金属フッ化物や第三級アミンのような高価な添加剤を原料の一部として別途加える必要がない。
【0057】
なお、本実施形態の製造方法および特許文献1に記載の製造方法では、いずれもイミド化反応の際にアルカリ金属フッ化物が存在している。しかしながら、上述したように、特許文献1におけるアルカリ金属フッ化物は、原料の一部として反応系外から新たに添加されるものであるのに対し、本実施形態の製造方法におけるアルカリ金属フッ化物は、反応系内から生成されるものであって反応系外から新たに添加されるものではない。すなわち、本実施形態の製造方法におけるアルカリ金属フッ化物と特許文献1におけるアルカリ金属フッ化物とは、全くの別の物であるといえる。
以上説明したように、本実施形態の製造方法によれば、安全性及び生産性が高く、簡便な方法により、ペルフルオロアルキルスルホンイミド塩を製造することができる。
【0058】
本発明の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法によれば、第1の工程が、ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとアンモニア、好ましくはアンモニア水とを反応させて、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩とフッ化アンモニウムとを含む反応液を得る構成となっている。このように、上記反応液を得る際に、アンモニア水を使用することで、必ずしもアンモニアガスや無水アンモニアを用いる必要がないため、安全性及び生産性が高く、簡便な方法により、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩とフッ化アンモニウムとを含む反応液を得ることができる。
【0059】
また、第2の工程が、上記反応液と所定のアルカリ金属化合物とを反応させて、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩とアルカリ金属フッ化物とを含む混合物を得る構成となっている。このように、上記第1の工程で生成するペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩からペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩を生成するとともに、フッ化アンモニウムとアルカリ金属化合物とからアルカリ金属フッ化物を生成することができるため、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩を生成する際に副生するフッ化アンモニウムを分離除去する必要がなく、これを有効に利用することができる。
【0060】
さらに、第3の工程が、上記混合物とペルフルオロアルキルスルホニルハライドとを反応させる構成となっている。ここで、上記混合物中には、第2の工程で生成したアルカリ金属フッ化物が存在するため、イミド化反応の際に必要とされるアルカリ金属フッ化物や第三級アミンといった高価な添加剤を新たに加えることを必要としない。
【0061】
さらにまた、第2の工程において、上記反応液と上記アルカリ金属化合物との反応を水溶液中で行う場合、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩を生成する際に有機溶媒を使うことなく、安全性の高い含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法を提供することができる。
【0062】
また、本発明の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法によれば、上記第2の工程において発生するアンモニアガスを回収し、このアンモニアガスからアンモニア水を生成して第1の工程に供給する第4の工程を備える構成とすることにより、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩と、アルカリ金属フッ化物と、を含む混合物を生成する際に副生するアンモニアを再利用できる工業的に有利な含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法とすることができる。
【0063】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態の第1工程では、アンモニアとしてアンモニア水を用いた場合を説明したが、アンモニアガスを用いることもできる。
【0064】
第1工程においてアンモニアガスを用いる場合には、エーテル等の有機溶媒中でペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとアンモニアガスとを反応させ、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩とスラリー状に析出したフッ化アンモニウムとを得ることができる。
【0065】
そして、第2工程において、第1工程の反応後の有機溶媒に所定のアルカリ金属化合物を添加しても良いし、水を加えて有機溶媒−水系とした後に反応させても良い。また、一旦、有機溶媒を濃縮した後に水を加え、水溶液系でアルカリ金属化合物と反応させてもよい。これらの方法によっても、上記実施形態と同様に、ペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩とアルカリ金属フッ化物とを含む混合物を得ることができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例によって本発明の効果をさらに詳細に説明する。なお、本発明は実施例によって、なんら限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)・・・(CSONKの合成
先ず、100mlのフラスコに20%アンモニア水50gを入れ、40℃にてヘプタフルオロプロパンスルホニルフロライド(CSOF)を30g滴下した。40℃で2時間撹拌後、48%水酸化カリウム(KOH)水溶液28gを入れて、濃縮した。
次に、100mlのフラスコに、濃縮したヘプタフルオロプロパンスルホンアミドと水酸化カリウムとの反応混合物8.1gとヘプタフルオロプロパンスルホニルフロライド(CSOF)5.7gを入れ、溶媒としてアセトニトリル32gを用いて40℃にて48時間撹拌した。NMR内標法により、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドカリウム塩((CSONK)8.6gを得た。ヘプタフルオロプロパンスルホニルフロライド(CSOF)を基準とした収率は86%であった。
【0068】
(実施例2)・・・(CSO)(CSO)NKの合成
実施例1と同様にして得たヘプタフルオロプロパンスルホンアミドと水酸化カリウムの反応混合物5.0gとノナフルオロブタンスルホニルフロライド(CSOF)4.1gを入れ、溶媒としてアセトニトリル20gを用いて50℃にて30時間撹拌した。NMR内標法により、ノナフルオロ−N−[(ヘプタフルオロプロパン)スルホニル]ブタンスルホニルアミドカリウム塩((CSO)(CSO)NK)5.45gを得た。ヘプタフルオロプロパンスルホニルフロライド(CSOF)を基準とした収率は83%であった。
【0069】
(実施例3)・・・(CSO)(CSO)NKの合成
実施例1と同様にして得たヘプタフルオロプロパンスルホンアミドと水酸化カリウムの反応混合物5.0gとペンタフルオロエタンスルホニルフロライド(CSOF)2.8gを0℃にて吹き込み、その後50℃にて溶媒としてアセトニトリル20gを用いて48時間撹拌した。NMR内標法により、ヘプタフルオロ−N−[(ペンタフルオロエタン)スルホニル]プロパンスルホニルアミドカリウム塩((CSO)(CSO)NK)4.39gを得た。ヘプタフルオロプロパンスルホニルフロライド(CSOF)を基準とした収率は81%であった。
【0070】
(実施例4)・・・アンモニアの回収
先ず、200mlのフラスコに、20%アンモニア水150gを入れ、SUS製の充填物を充填した反応塔を立ててアンモニア水を循環させ、25℃にてトリフルオロメタンスルホニルフロライド(CFSOF)36.5gを吹き込み、25℃で2時間攪拌を行った。
続いて48%水酸化カリウム水溶液40gを滴下し、100℃で1時間撹拌を行い、発生したアンモニアガスをトラップ内にて水87gで回収したところ、20%アンモニア水110g(無水アンモニア21.6g、回収率90%)を得た。
その後、トリフルオロメタンスルホンアミドと水酸化カリウムの反応液を濃縮したところ、トリフルオロメタンスルホンアミドと水酸化カリウムの反応混合物43gを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)に示される含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法であって、
下記式(2)に示されるペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとアンモニアとを反応させて反応液を得る第1の工程と、
前記反応液と、Li,Na,Kのいずれかのアルカリ金属元素Mの、水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩の中から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属化合物と、を反応させて、下記式(3)に示されるペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩を含む混合物を得る第2の工程と、
前記混合物と、下記式(4)に示されるペルフルオロアルキルスルホニルハライドと、を反応させる第3の工程と、を備えることを特徴とする含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法。
(RfSO)(RfSO)N・M ・・・(1)
RfSOF ・・・(2)
RfSONH・M ・・・(3)
RfSOX ・・・(4)
但し、上記式(1)〜(4)において、Rf及びRfは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。
また、上記式(4)において、Xはフッ素(F)又は塩素(Cl)である。
【請求項2】
上記式(1)に示される含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法であって、
上記式(2)に示されるペルフルオロアルキルスルホニルフロライドとアンモニアとを反応させて、下記式(5)に示されるペルフルオロアルキルスルホンアミドのアンモニウム塩とフッ化アンモニウムとを含む反応液を得る第1の工程と、
前記反応液と、Li,Na,Kのいずれかのアルカリ金属元素Mの、水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩の中から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属化合物と、を反応させて、上記式(3)に示されるペルフルオロアルキルスルホンアミドのアルカリ金属塩と、下記式(6)に示されるアルカリ金属フッ化物と、を含む混合物を得る第2の工程と、
前記混合物と、上記式(4)に示されるペルフルオロアルキルスルホニルハライドと、を反応させる第3の工程と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法。
RfSONH・NH ・・・(5)
MF ・・・(6)
但し、上記式(5)において、Rfは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。
【請求項3】
前記第1の工程において、前記アンモニアがアンモニア水であり、得られる反応液が水溶液であって、
前記第2の工程において、前記反応液と前記アルカリ金属化合物との反応を前記水溶液中で行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法。
【請求項4】
前記第2の工程において発生するアンモニアを回収して前記第1の工程に供給する第4の工程を、さらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法。
【請求項5】
前記アンモニア水の濃度が、1〜50%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法。
【請求項6】
前記アンモニア水の、前記ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドに対するモル量が3〜20倍の範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法。
【請求項7】
前記ペルフルオロアルキルスルホニルフロライドと、前記アンモニア水と、の反応温度が、0〜70℃の範囲であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の含フッ素スルホニルイミド化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−57666(P2011−57666A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180251(P2010−180251)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(597065282)三菱マテリアル電子化成株式会社 (151)
【Fターム(参考)】