説明

含水ゲルの検査方法及び不良品選別方法

【課題】
本発明の目的は、含水ゲルの強度を簡便で高精度に検査する方法を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、測定に供する含水ゲルの重量及び/又は個数を測定する工程、2)所定の温度に保持した水槽内で脱イオン水に比重調整剤を添加して、所定の比重に調整する工程、3)該比重調整水に測定に供する含水ゲルを投入し、攪拌する工程、4)攪拌後、浮上した含水ゲルを回収し、回収した含水ゲルの重量及び/又は個数を測定する工程及び5)測定に供する含水ゲルの重量及び/又は個数に基づく浮上した含水ゲルの個数及び/又は重量の割合を算出する工程を含んでなる含水ゲルの検査方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水ゲルの強度不足を簡便に且つ高精度に検査する方法及び不良品を選別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活廃水や工業廃水に含まれる窒素化合物(主にアンモニア、亜硝酸及び硝酸など)は、地下水、河川、湖沼及び内湾などの周辺環境へ排出され、重大な環境問題を引き起こすことがある。そこで廃水処理技術として活性汚泥を使った生物学的硝化・脱窒法が開発され、廃水処理施設において利用されている。これらの生物学的硝化・脱窒法においては、増殖速度の遅い硝化細菌を処理槽内に保持することが、技術的に重要な課題である。この課題を解決するために、処理槽内に硝化細菌を高密度に保持する担体投入型硝化・脱窒法が行なわれている。
【0003】
処理槽内において硝化細菌を高濃度に付着させる担体には、処理槽内の攪拌によって破砕されないための物理的な強度や、廃水中での化学的安定性が要求される。特に物理的な強度が低いと、破砕されて硝化細菌の付着量が減少するだけでなく、フィルターの目詰まりを引き起こしたり、担体が系外に流出する場合がある。また、処理槽に投入する以前の、製造から輸送段階において破壊しないためにも、担体の物理的な強度は重要である。
【0004】
特許文献1には、微生物固定化担体を用いてなる水処理システムにおいて、曝気槽内における好気処理に、微生物固定化用担体として、含水ゲル担体及びプラスチック担体を併用して用いる水処理システムについて記載されている。含水ゲルとは、気相にあっては、乾燥したペレット状,球状または粉末状などで、水中に投入すると、水を吸収して膨潤しゲル状になる物質を意味する。
【0005】
また、含水ゲルは、古くから、こんにゃく、ところてん等に代表される身近な食品用素材として、使用されてきた。一方、芳香剤、保冷剤、衛生用品、化粧品等の日用品用素材として使用されることが多く、我々の生活に極めて密着している素材である。さらに、近年では、これまでの食品や日用品に限らず、塗料、医療品、生体材料、建築・土木資材、環境浄化材料、バイオリアクターなどの担体材料にも拡大しつつある。上記の如き用途に含水ゲルを使用する場合において、特に強度が重要である。
【0006】
そこで、これら含水ゲルの検査においては、統計学的に信頼できるサンプル数について圧縮破壊強度、引っ張り強度などの物理強度を測定することが必要である。しかしながら、製造した含水ゲル全数について測定することを要するため、それには膨大な工数が必要となり、製品のコスト上昇を引き起こしていた。
【0007】
【特許文献1】特開2004−113996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、工業的に広く使用され強度が要求される含水ゲルにおいて、強度が低い含水ゲルは比重が軽いことに着目し、含水ゲルを比重により選別することによって含水ゲルの強度不足を簡便に且つ高精度で検査する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
1.1)測定に供する含水ゲルの重量及び/又は個数を測定する工程、2)所定の温度に保持した水槽内で脱イオン水に比重調整剤を添加して、比重調整水を得る工程、3)該比重調整水に測定に供する含水ゲルを投入し、攪拌する工程、4)攪拌後、浮上した含水ゲルを回収し、浮上した含水ゲルの重量及び/又は個数を測定する工程及び5)測定に供する含水ゲルの重量及び/又は個数に基づく浮上した含水ゲルの個数及び/又は重量の割合を算出する工程を含んでなる含水ゲルの検査方法、
2.比重調整剤がコロイダルシリカである1項記載の含水ゲルの検査方法、
3.含水ゲルが、光硬化粒状ゲル担体であることを特徴とする1項又は2項記載の含水ゲル担体の検査方法、
4.含水ゲルを工業的に製造する工程において、1〜3項記載の含水ゲルの検査方法を用いて、生産した含水ゲルの中から強度が不足する不良品を選別する不良品選別方法。
5.4項記載の不良品選別方法で選別された含水ゲルの圧縮破壊強度を測定する不良品選別方法、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脱イオン水に比重調整剤を添加して得られた比重調製水中に含水ゲルを投入して、含水ゲルを比重により選別することにより、強度が不足する含水ゲルを簡便に且つ高精度に検査することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の含水ゲルとは、半固体状で弾性に富むゲル状物であって、乾燥状態では、ペレット状,球状または粉末状などであるものを意味する。特に環境浄化に用いられる担体では、極めて高い精度である一定以上の強度を有することが求められる。そのため、本発明方法は、特に、これらの担体に適用することが出来る。しかしながら、本発明方法の用途は、上記担体に限定されるものではない。
【0012】
本明細書においては、上記の環境浄化に用いられる担体を用途とする場合について説明する。環境浄化に用いられる担体としては、具体的には、水溶性エチレン性不飽和単量体を水溶液重合し、粉砕後、乾燥したものや、造粒されたポリエチレングリコールを主成分とするウレタン樹脂、PVAおよびアルギン酸ナトリウムの水溶液を塩化カルシウム水溶液に接触させて球状化した後、凍結乾燥を行なって得られたもの、光硬化粒状ゲル担体等を挙げることができる。これらの含水ゲルは、通常比重を1.001〜1.05に調製したものが使用される。
【0013】
本発明方法においては、まず、測定に供する含水ゲルの個数及び/又は重量を測定する。個数を測定する場合には、予め所定の個数の重量を測定し、比例計算を行なって重量から個数を算出することが出来る。
【0014】
本発明方法においては、水槽に満たした脱イオン水の比重を1.001〜1.05に調整して比重調整水を得る。比重調整水の比重は、測定に供する含水ゲルの乾燥状態における設計比重から決定することができる。具体的には、前記設計比重に対して、所定の数値だけ小さい数値を比重調整水の比重とすることができる。
【0015】
本発明において、測定に使用する水槽は、温度を所定の温度に保持できるものである。ここでいう所定の温度とは通常、10℃から30℃を意味する。
【0016】
本発明において、比重調整剤としては、水に可溶な溶剤、塩、ショ糖等を使用することが出来るが、含水ゲル内に分子が入り込まないコロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカとしては、比重調整水中で、安定であれば特に制限されるものではない。具体的には、スノーテックス40等のスノーテックスシリーズ(商品名、日産化学社製)、カタロイドSI−80P等のカタロイドSシリーズ(商品名、触媒化成工業社製)、その他にもアデライトATシリーズ(商品名、旭電化社製)、シリカドール(商品名、日本化学工業社製)等を挙げることができる。
【0017】
次に、得られた比重調整水に測定に供する含水ゲルを投入する。投入時には、比重調整水を泡立てないように、投入した含水ゲルが水槽全体に均一に流動するように、適宜攪拌を行なう。供試する含水ゲルを全量水槽に投入したら、攪拌を中止し、その後、水槽の中で、含水ゲルが流動しなくなるまで静置する。
【0018】
次に、上記比重調整水に投入した含水ゲルのうちで、浮上した含水ゲルを回収する。回収方法としては、特に限定されるものではないが、含水ゲルの粒径よりも細かな網目の網、ザル等の固液を分離する器具を使用することができる。
【0019】
次に、回収した含水ゲルの個数及び/又は重量を測定する。個数は直接数えても良いが、個数が多い場合には、投入前に測定する場合と同様に予め所定の個数の重量を測定し、比例計算を行なって重量から個数を算出することが出来る。
【0020】
本発明方法においては、さらに、上記により選別した担体の圧縮破壊強度又は引張り強度を測定することにより、より精度を高めて不良品を選別することができる。圧縮破壊強度又は引張り強度の測定方法としては、特に限定されるものではないが、具体的には、レオロジーやテクスチャーの測定に用いられるレオメーターを使用する方法を挙げることができる。該レオメーターとしては、COMPAC−100(商品名、サン科学社製)、FUDOHレオメーター(商品名、レオテック社製)、テクスチャーアナライザー(商品名、英弘精機社製)等が挙げられることができる。
【0021】
本発明方法においては、前記回収した含水ゲルの個数及び/又は重量の測定に供した含水ゲルの個数及び/又は重量に基づく割合を計算して、測定に供した含水ゲルに基づく強度が不足する含水ゲルの割合とすることができる。
【実施例】
【0022】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0023】
(比重調整水の調製)
実験室内において100リットル容水槽に脱イオン水を約40kg投入した。ついでカタロイドSI−50(商品名、コロイダルシリカ、触媒化成工業社製)を投入して攪拌し、比重1.0047の比重調整水を得た。このときの水温は、21.1℃であった。このとき比重の測定には、浮きばかり(JIS B7525に規定)を使用した。
【0024】
(含水ゲルの投入)
次に上記比重調整水に含水ゲル20kgを比重調整水が泡立たないようにゆっくりと投入した。含水ゲルとしては、ポリエチレングリコールを主骨格とする光硬化性樹脂溶液を塩化カルシウム溶液に滴下して粒状化し、粒子に光照射を行なって硬化せしめた後に固液分離して得られた粒径約4mmの担体を使用した。この含水ゲルの強度は、1.8MPa以上であることが要求される。
【0025】
(攪拌、静置)
比重調整水に供試する含水ゲルを全量投入後、ガラス棒で水槽内をゆっくり攪拌して、比重調製水中に含水ゲルがほぼ均一になったことを目視にて確認し、その後1分間放置した。
【0026】
(浮上した含水ゲルの回収)
網目が3mmのステンレス製のざるを使用して、比重調製水中で浮上した担体を回収し、金属バット上で風乾させた。
【0027】
(浮上した含水ゲルの割合を算出)
浮上した含水ゲルを乾燥後、重量を測定した。供試した20kgに基づく浮上した含水ゲルの重量を計算して、浮上した含水ゲルの割合を得た。
【0028】
(圧縮破壊強度の測定)
浮上した含水ゲル全数について、圧縮破壊強度を測定した。測定には、RT2005J(レオメーター、商品名、レオテック社製)を使用した。その結果、すべての含水ゲルの圧縮破壊強度は、1.8MPa未満であった。
【0029】
併せて、沈降した含水ゲルから、100個を任意に選択して同様にして圧縮破壊強度を測定したところ、いずれの含水ゲルも1.8MPa以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、一定以上の強度が要求される含水ゲルを簡便に且つ高精度に検査することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)測定に供する含水ゲルの重量及び/又は個数を測定する工程、2)所定の温度に保持した水槽内で脱イオン水に比重調整剤を添加して、比重調整水を得る工程、3)該比重調整水に測定に供する含水ゲルを投入し、攪拌する工程、4)攪拌後、浮上した含水ゲルを回収し、浮上した含水ゲルの重量及び/又は個数を測定する工程及び5)測定に供する含水ゲルの重量及び/又は個数に基づく浮上した含水ゲルの個数及び/又は重量の割合を算出する工程を含んでなる含水ゲルの検査方法。
【請求項2】
比重調整剤がコロイダルシリカである請求項1記載の含水ゲルの検査方法。
【請求項3】
含水ゲルが、光硬化粒状ゲル担体であることを特徴とする請求項1又は2記載の含水ゲル担体の検査方法。
【請求項4】
含水ゲルを工業的に製造する工程において、請求項1〜3記載の含水ゲルの検査方法を用いて、生産した含水ゲルの中から強度が不足する不良品を選別する不良品選別方法。
【請求項5】
請求項4記載の不良品選別方法で選別された含水ゲルの圧縮破壊強度を測定する不良品選別方法。

【公開番号】特開2006−214729(P2006−214729A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24765(P2005−24765)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】