説明

含油排水処理システム

【課題】含油排水処理システムに用いる各工程の相違を効率よく組み合わせて装置の簡素化を図る。
【解決手段】含油排水からなる原水の供給経路に油分を浮上分離させる分離槽を配置し、該分離槽の下流に、中空糸膜または平膜からなる膜分離モジュールを槽内に配置すると共に該膜分離モジュールの下方に気泡を発生させる散気装置を設置した膜濾過槽を配置し、前記分離槽から前記膜濾過槽へ循環ポンプを介設した供給管と、該膜濾過槽から前記分離槽へ前記気泡および油分を含む未濾過液を循環させる返送管を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含油排水処理システムに関し、詳しくは、浮上と沈降による前工程の分離と、後工程の膜濾過とを組み合わせた含油排水処理システムにおいて、前後工程の機能を組み合わせて効率的な処理を図るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から含油排水から油分を除去する処理装置および処理方法が種々提供されている。該含油排水処理として、一般的に凝集沈殿・加圧浮上等による前処理を経た後、濾過や活性炭処理等の後工程処理がなされている。しかしながら、これらの複数の排水処理工程を連続させた処理システムでは、後処理になればなる程、処理水量が低下し、大量に排出される含油排水の処理が追いつかなくなる問題があり、大量排出される含油排水処理においては精密な分離手段は、その処理速度の点から不適となっている。
【0003】
そこで、本出願人は特開2010−36183号公報で凝集沈殿・加圧浮上等による前処理後の処理で、膜濾過により油分を除去する中空糸膜からなる膜分離装置を提供している。該膜分離装置はPTFE、PSF、PESから選択される耐アルカリ性を備えた中空糸膜を用いており、該中空糸膜は化学的および物理的に強靭な膜であるため、効率的な洗浄が行え、処理速度を速めて大量の排水処理が可能となる利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−36183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の含油排水処理装置では、前工程の凝集沈殿、浮上分離、砂濾過の装置と後工程の膜濾過による膜分離装置とを配管を介して連続させているが、各装置内で行われる操作はそれぞれ独立で、前後工程の操作および設備は組み合わされていない。よって、設置面積が大きくなり、システム全体としての効率化の観点からまだ改善すべきところがある。
【0006】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、精密濾過処理を行う後工程の膜濾過装置と浮上/沈降による前工程の分離装置とを、操作上および装置上で効率良く組み合わせて、操作および装置の簡素化を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、含油排水からなる原水の供給経路に油分を浮上分離させる分離槽を配置し、該分離槽の下流に、中空糸膜または平膜からなる膜分離モジュールを槽内に配置すると共に該膜分離モジュールの下方に気泡を発生させる散気装置を設置した膜濾過槽を配置し、
前記分離槽から前記膜濾過槽へ循環ポンプを介設した供給管と、該膜濾過槽から前記分離槽へ前記油分および微細気泡を含む未濾過液を循環させる返送管を設けていることを特徴とする含油排水処理システムを提供している。
【0008】
前記のように、膜濾過槽内の膜分離モジュールの下方に気泡を発生させる散気装置を配置し、散気用のエアーのバブリングにより気泡を発生させている。該水中バブリングにより粗大な気泡が分離膜に振動を付与すると同時に気泡上昇流を発生させ、分離膜表面に付着する油分を含む異物を剥離して、目詰まりを低減して膜濾過の流量低下を防止している。また、分離膜表面で分離された微小油分がその継続した分離によるそれ自体の堆積により、これが会合して大きな油滴となり膜濾過槽内で浮上する。また、循環ポンプによる流速は膜面に堆積した油分や固形分を剥離する効果をもたらす。さらに、該膜濾過槽から分離槽へ返送管を設けているため、浮上した油分が該返送管により分離槽に送液され、分離槽中で浮上油となり分離可能となる。一方、気泡を含んだ未濾過液を返送管から分離槽に流入させ、該気泡を分離槽の適切な位置で供給することで、気泡の上昇流を発生させ分離槽内の油分を気泡に付着させて浮上させ、分離槽中で油分を効率よく分離することができる。このとき未濾過液は分離槽内への供給に先立ち、新規に供給される原水と混合されると、より効率よく分離することができる。
このように、分離槽と膜濾過槽とを返送管で連結して、後工程の膜濾過槽内の散気装置で発生させる粗大な気泡で膜の目詰まりを低減するとともに微小な気泡を前工程の分離槽へ返送し、前後工程の設備および操作を機能的に組み合わせて、プロセスの単純化、設置面積の減少を図ることができる。
【0009】
前記分離槽と膜濾過槽とを連結する前記供給管は、前記分離槽の上下中間領域に連通させると共に前記膜濾過槽の下部に連通させ、前記返送管は膜濾過槽の上部に連通している。分離槽から膜濾過槽へ供給される循環水の一部は膜濾過された処理水となり、残りが未濾過水となり分離槽へ返送される。循環水の流量は多いほど、膜濾過槽の膜の目詰まりを低減する効果が大きいが、その場合、一方では分離槽へ返送される未濾過液の流量が大きくなる。その結果、分離槽の液面が大きく変動して浮上油分や沈降する凝集沈殿物が撹拌され分離しにくくなることがある。
【0010】
よって、前記各膜分離モジュールの外周または複数の膜分離モジュールの外周に隙間をあけてガイド筒を配置し、該ガイド筒の下端開口から気泡および原水を流入させると共に、上端開口から流出させる構成とすることが好ましい。
前記構成とすると、ガイド筒内において気泡上昇を効率化でき、気泡の散逸を防ぐことができる。その結果、膜への振動効果等がより効果的になり、その分循環流量すなわち膜濾過槽から分離槽への返送流量も低減でき、循環ポンプによる処理水の循環量を低減することが可能となり、かつ、分離槽の液の乱れを防止でき、必要な分離槽の断面積を小さくしても、浮上油、沈殿物の除去を容易にすることができるため、分離槽のイニシャルコストを低減させることも可能になる。
【0011】
分離槽内では貯溜する液面付近に油分および比重の小さい異物が浮上し、分離槽内の底部に比重の大きな汚泥が堆積するため、多量の油分や異物が存在しない上下中間領域に前記供給管の原水取出口を設けることが好ましい。また、膜濾過槽内では水中を上昇する気泡を分離膜に作用させた後に取り出すことが好ましいため、膜濾過槽の上部側に取出口を設けることが好ましい。
【0012】
前記膜濾過槽内に配置する前記散気装置は、前記膜分離モジュールの下方に配管される散気管に空気源から圧力空気を送給し、該散気管の噴射穴から発生させる気泡で膜分離モジュールの中空糸膜または平膜に振動を付与する。気泡中に微小な気泡も存在しており、これが槽内の微小油分を浮上させる効果を担っている。望ましくは、より小さい径の穴を有する微細気泡散気装置を別に設け、意識的に微細気泡を発生させ、膜分離槽内の微小油分を浮上させるとともに前記返送管へ導出させるようにしてもよい。1つの散気管に粗大気泡用の穴と、微細気泡用の穴を設けてもよい。
【0013】
前記散気管に圧力空気を供給する前記空気源は、ブロアまたはコンプレッサーとしていることが好ましい。
【0014】
また、前記分離槽の液面位置にスカムスキマーをモータの駆動軸に連結して配置し、浮上する油分をスカムスキマーで集めて排出すると共に、前記モータの駆動軸の下端に汚泥掻き寄せ具を連結し、該汚泥掻き寄せ具を前記分離槽の底面上に配置し、沈降する汚泥を掻き集めて排出する構成とすることが好ましい。
【0015】
前記膜濾過槽内に配置する膜分離モジュールの濾過膜として中空糸膜または平膜のいずれでも良いが、特に膜の振動による剥離効果を出すためには中空糸膜がよい。平膜でもフレキシブルな平膜なら好適に利用できる。また膜の材質面では、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PSF(ポリスルホン)およびPES(ポリエーテルスルホン)から選択される耐アルカリ性を備えた多孔質膜が好適に用いられ、中でも処理流量を維持するために行う散気による振動あるいは逆洗による圧力に耐えうる強度を有するものが望ましい。具体的には抗張力は30N以上出ることが望ましい。
【0016】
PTFE、PSF、PESから選択される多孔質分離膜の中空糸膜または平膜を用いた膜分離モジュールは、極めて優れた非水溶性油分除去性能と耐薬品性、特に、耐アルカリ性を備え、かつ耐久(正常な濾過性能を発揮する使用可能期間)とを兼ね備える。その結果、非水溶性油分含有量を低減できる高性能濾過を実現しながら、膜面に付着した非水溶性油分をアルカリ性水溶液による化学洗浄により溶解除去して繰り返し再生が可能であるので、高性能濾過を長期に渡り持続させることができる。
【0017】
本発明の含油排水処理システムは油田随伴水用、油分を含有する工場排水等、いずれの分野の含油排水処理システムとしても用いることができる。また海水を淡水化する際、海水中に油分が含まれる場合などに特に有効である。例えば震災に伴う津波の被害などで原子力発電所が破壊された際に、放射性排水が発生し、その処理が必要となる。その場合、放射性物質の除去に先立ち、前処理として海水中の油分の除去が必要となるが、その際にも精度のよい油分除去を安定して行うことができ、放射性物質の吸着等後処理の効率を上げることができる。
【発明の効果】
【0018】
前述したように、本発明の含油排水処理システムによれば、上流側の分離槽と下流側の膜濾過槽との間に返送管を設置し、膜濾過槽に存在する膜分離モジュールに循環流を供給し、かつ膜分離モジュールの下部より散気による気泡上昇流および振動による膜面の浄化作用を付加させることにより、膜の安定したろ過能力を維持し、膜濾過槽から分離槽へ浮上油分を移送させることで膜分離槽内の油分を除去する。かつ、膜濾過槽から気泡を含む非濾過液を分離槽に循環させているため、分離槽内に散気装置を設けなくとも分離槽内に気泡を存在させ、その気泡の上昇時に油分を気泡に付着させて効率良く浮上分離することができる。このように、分離槽と膜濾過槽とを返送管および前記供給管を介して連結して組み合わせることで、プロセスを単純化し、設置面積を減少できる。
特に、膜濾過槽内で発生させる粗大気泡で分離膜を振動させることにより、膜表面に付着する異物を剥離させて濾過性能の低下を抑制でき、かつ、微細気泡を分離槽に循環させることで油分の浮上分離に有効に寄与させることができる。
また、比重による前記分離槽の下流に膜濾過槽を配置し、分離膜を用いて膜濾過を行うため、処理水質を向上できると共に、運転の安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の含油排水処理システムの全体図である。
【図2】図1に示す膜濾過槽の拡大図である。
【図3】散気装置の変形例の要部拡大図である。
【図4】(A)(B)は膜分離モジュールの第1変形例を示す図面である。
【図5】膜分離モジュールの第2変形例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1および図2に本発明の実施形態を示す。
図1に示す全体構成図において、1は異物を浮上および沈降させて分離する分離槽、2は異物を膜濾過する膜濾過槽である。
膜濾過槽2内に中空糸膜モジュール(膜分離モジュール)3を収容すると共に、該中空糸膜モジュール3の下部に気泡を発生させる散気装置4を収容している。
前記分離槽1の上下中間領域と膜濾過槽2の下部領域とをポンプ5を介設した供給管6で連続すると共に、膜濾過槽2の上部領域と分離槽1の上部領域とを連通する返送管7を設け、該返送管7から気泡を含む非濾過液を分離槽1へ循環させている。
【0021】
前記分離槽1へ供給される含油排水からなる原水W1は、一旦、薬品混和槽8で貯溜し、該薬品混和槽8で薬品注入装置9から必要に応じpH調整剤、吸着剤、凝集剤等を注入している。薬品混和槽8から液位調整槽10へ送給し、該液位調整槽10から前記分離槽1へ原水W1を原水供給管11を通して供給している。
【0022】
分離槽1は油分や異物を比重に応じて液面側へ浮上させると共に、底部側へ沈降させて分離する槽としている。
分離槽1の上部へ浮上した異物を集めるスカムスキマー12を液面に配置している。該スカムスキマー12は、上方に搭載するモータ13から垂下した駆動軸13aにスカムスキマー12を固定して、モータ13により水平回転させて浮上した油分を含む異物を集めるようにしている。また、駆動軸13aの下端を分離槽1の円錐形状に突出させた底壁1aに位置させ、該底壁1aに沿って配置する汚泥掻き寄せ具14に連結し、該汚泥掻き寄せ具14を回転駆動させて底壁1aの上面側に沈降する汚泥を中央最下端部に掻き寄せるようにしている。
【0023】
前記スカムスキマー12の下面側にスカム排出管15を開口させて配管すると共に、分離槽1の最下端部に汚泥排出管16を開口させて配管し、これらスカム排出管15および汚泥排出管16の他端をスカム・汚泥受槽17に連結している。
【0024】
前記液位調整槽10から原水W1を供給する前記原水供給管11は分離槽1のスカムスキマー12の下面側の位置に開口させている。該原水供給管11に前記返送管7を連通し、返送管7を通して循環する気泡を含む非濾過液W3と原水W1とを合流させて、分離槽1の上部領域に供給している。このように、分離槽1へ気泡を供給することで油分を気泡に付着させて油分を浮上させやすくし、スカムスキマー12に油分を付着させやすくしている。なお、原水供給管11に返送管7を合流させずに、別々に分離槽1に接続してもよい。
【0025】
前記分離槽1には、原水供給管11を連結した側壁と反対側の側壁で、かつ、前記スカムスキマー12と汚泥掻き寄せ具14を配置した上下位置を除く中間領域に、前記供給管6の取出口を開口している。供給管6にポンプ5を介設しているため、分離槽1内の分離液W2を供給管6に吸引し、膜濾過槽2の側壁下部に設けた開口から膜濾過槽2内に供給している。本実施形態では前記ポンプ5の吐出圧力は50〜300kPaとしている。
【0026】
膜濾過槽2は空気弁等を設けた浸漬槽とし、その内部に中空糸膜モジュール3を収容すると共に該中空糸膜モジュール3の下部に気泡を発生させる散気装置4を収容し、前記供給管6から供給する原水W1内に中空糸膜モジュール3および散気装置4を浸漬している。
中空糸膜モジュール3は、中空糸膜20の内側から原水W1を吸引することにより中空糸膜20の外側から内側に向けて原水W1を透過させる浸漬型のモジュールとしている。
【0027】
中空糸膜モジュール3は中空糸膜20を複数本(本実施形態では3500本)束ねた集束体21を備え、各中空糸膜20の下端開口を固定材40で閉鎖している。中空糸膜20の上端は開口状態として、固定材23で固定し、固定材23に上部キャップ24を取り付けている。該固定材23と前記固定材40とを支持ロッド41で連結し、かつ、固定材40に下向きに突出するスカート材42を固定している。
前記上部キャップ24の内部を各中空糸膜20の中空部と連通させた導出口を設け、該導出口を濾過済み液取出配管25と接続している。該濾過済み液取出配管25に吸引ポンプ26を介設して、濾過済み液W2を後処理槽27へ導出している。該後処理槽27として活性炭吸着、生物処理・沈殿処理、逆浸透膜処理等を付加する場合もある。
また、前記膜濾過槽2の上壁にエアベント管28を取り付けている。かつ、膜濾過槽2の側壁上部に、濾過されなかった非処理液の排出口を設け、該排出口を前記返送管7と連通している。
【0028】
中空糸膜モジュール3の下部に配置する前記散気装置4は、ブロア31と接続した散気用空気導入管30を備えている。該散気用空気導入管30に設けた噴射穴32を中空糸膜モジュール3の下方に配置し、噴射穴32から前記スカート材42内にエアが噴射されるようにしている。該噴射穴32は同一径のものを複数設けている。1つの噴射穴32から噴射されるエアにより、粗大気泡K1といくらかの微細気泡K2が発生する。
なお、図3の変形例に示すように、噴射穴32は粗大気泡を発生させる大径穴32aと微細気泡を発生させる小径穴32bを設けてもよい。該小径穴32bを形成するために、例えば、疎水性多孔質膜のパイプ、膜材などが好適に用いられる。
【0029】
散気装置4は、濾過運転時に常時下方から散気し、集束体21の各中空糸膜20に向けて散気し、粗大気泡K1と微細気泡K2を原水W1中に上向きに発生させている。これら気泡のうち、主として粗大気泡K1は中空糸膜20を振動させ、該中空糸膜20の膜表面に付着した異物を剥離して、中空糸膜20に目詰まりを発生させないようにしている。かつ、粗大気泡K1は前記エアベント管28により大気に放出している。一方、微細気泡K2は上方に配置した返送管7より導出させ、分離槽1に循環させるようにしている。
【0030】
本実施形態で用いる前記中空糸膜20は、多孔質延伸PTFE製のチューブからなる支持層と、該支持層の外表面に多孔質膜延伸PTFEシートからなる濾過層を備えた多孔質複層中空糸膜からなる。さらに親水性高分子等で親水化したものを用いることができる。 前記濾過層の外周面に多数存在する各空孔の平均最大長さは、支持層中に多数存在する繊維状骨格により囲まれた各空孔の平均最大長さより小さくしている。具体的には、濾過層の空孔の平均長さを、前記支持層の空孔の平均長さの1%〜30%としているのが良く、できるだけ小さくしている方が良い。これにより、外周面側から内周面側への透過性を高めることができる。
濾過層の外表面において、該外表面の全表面積に対する前記空孔の面積占有率が、画像処理で測定して、30%〜90%としている。空孔の最大長さが小さくても、空孔の面積占有率がある程度大きいと、流量を減らすこともなく、効率良く、濾過性能を向上することができる。
具体的には、濾過層の空孔率は30%〜80%、支持層の空孔率は50%〜85%としている。これにより、強度とのバランスを保ちながら、中空糸膜の外周面側から内周面側への透過性をさらに高めることができる。
【0031】
前記濾過層の厚みは5μm〜100μmとしている。前記範囲より小さいと濾過層の形成が困難であり、前記範囲より大きくしても濾過性能向上への影響は望み難いためである。支持層の厚みは0.1mm〜5mmとしている。これにより、軸方向、径方向、周方向のいずれにおいても良好な強度を得ることができ、内外圧や屈曲等に対する耐久性を向上することができる。なお、支持層の内径は0.3mm〜12mmとしている。
【0032】
前記濾過層の平均空孔径は0.01〜1μmとしている。
また、中空糸膜20は、中空糸膜全体で内径0.3〜12mm、外径0.8〜14mm、バブルポイント50〜400kPa、膜厚0.2〜1mm、気孔率30〜90%、最大許容膜間差圧は0.1〜1.0MPaの耐圧性を備えたものとすることが好ましい。
【0033】
また、中空糸膜20は抗張力が30N以上の強度を備えたものとしている。
なお、抗張力はJIS K 7161に準拠し、試験体としては中空糸膜そのものを用いた。試験時の引張速度は100mm/分、標線間距離は50mmとして測定した。また、該中空糸膜20の熱変形温度は100℃以上であるため、経年使用しても熱劣化が発生しにくいものとしている。
【0034】
中空糸膜20の集束体21からなる中空糸膜モジュール3では、集束体21における中空糸膜20間の寸法平均値を0.5mm〜5mmと比較的広くし、かつ、集束体21の断面積に対する中空糸膜20の充填率が20%〜60%としている。
【0035】
本実施形態では、濾過運転時に、膜濾過槽2内では、常時、散気装置4から空気を噴射して粗大気泡K1と微細気泡K2を発生させている。これら気泡を槽50内の含油排水からなる原水W1中でバブリングさせながら上昇させ、循環流を発生させている。
その際、前記のように、粗大気泡K1で中空糸膜20を振動しつつ、中空糸膜20の膜面に付着している非水溶性油分および固形分をふるい剥ぎ取っている。
【0036】
微細気泡K2は濾過されなかった非濾過液の原水W1と混合されて返送管7に導出される。返送管7を原水供給管11と合流させているため、前記微細気泡K2と濾過されなかった非濾過液W3は原水W1と混合されて分離槽1に導入される。このように、微細気泡K2が分離槽1内に導入されることで、分離槽1内で微細気泡K2に油分が付着し、油分が微細気泡K2と共に浮上しやすくなり、スカムスキマー12で効率よく集めることができる。
【0037】
このように、油分の浮上分離と汚泥の沈降分離とにより含油排水から油分と汚泥からなる異物を分離槽1内で分離した後に、膜濾過槽2へ原水W1を供給しているため、膜濾過槽2内に配置した中空糸膜モジュール3の中空糸膜20の表面に付着する油分および汚泥からなる異物を低減できる。これにより中空糸膜20の膜濾過の性能が低下せず、処理水量の低減を防止できる。かつ、膜濾過槽2に用いる散気装置4で発生させる気泡を分離槽1へ循環させて機能的に利用しているため、分離槽1における分離機能を高めることができる。さらに、分離槽に気泡を発生させる散気装置を設ける必要はないため、設備の簡素化が図れ、設置面積を縮小できる。
【0038】
図4(A)(B)に膜濾過槽2の第1変形例を示す。
膜濾過槽2に浸漬する複数の中空糸膜モジュール3にはそれぞれ、中空糸膜20の集束体21の外周に隙間をあけてガイド筒45を被せている。このガイド筒45は上下両端を開口45a、45bとし、下端の開口45bより原水W1がガイド筒45内部に流入して中空糸膜20で濾過され、濾過されなかった未濾過水の原水W1が上端の開口45aから流出し、ガイド筒45の外周側を下向きに流れて循環するようにしている。また、散気装置4から噴射するエアも下端の開口45bからガイド筒45内に噴射されるようにしている。
【0039】
前記のように、ガイド筒45内にエア及び原水W1を流入させると、原水W1の循環流量を低くしても、ガイド筒45内、すなわち、中空糸膜20の集束体21の膜面付近を流れる原水W1の線速は大きくなり、中空糸膜20の膜面に堆積した固形分、油分をより効率よく剥離させることができる。また、発生させる気泡を中空糸膜20の表面に効率よく負荷して中空糸膜を揺らすことができ、エアの供給量を低減してラニングコストを低下できる。さらに、膜濾過槽2から分離槽1へ返送される未処理液の流量が少なくなるので、速やかな沈降を実現するために必要な分離槽の断面積を小さくでき、イニシャルコストを低減させることも可能になる。
【0040】
図5に第2変形例を示す。
第2変形例では、膜濾過槽2内に浸漬する複数の中空糸膜モジュール3は複数組(実施形態では縦横並列した6個の中空糸膜モジュール3)を1つのガイド筒48で覆っている。このように、中空糸膜モジュール3を比較的密に配置して、1つのガイド筒48で覆うと、膜濾過槽2内に高密度に中空糸膜モジュールを配置することができる。
【0041】
前記実施形態および変形例では膜濾過槽2内に設置する中空糸膜モジュール3として中空糸膜の集束体を用いているが、中空糸膜に変えて平膜を用いてもよい。該平膜を用いた場合も、その下方に前記実施形態と同様に気泡を発生させる散気装置を配置している。
【符号の説明】
【0042】
1 分離槽
2 膜濾過槽
3 中空糸膜モジュール
4 散気装置
6 供給管
7 返送管
K1 粗大気泡
K2 微細気泡
W1 原水
W2 濾過済み液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含油排水からなる原水の供給経路に油分を浮上分離させる分離槽を配置し、該分離槽の下流に、中空糸膜または平膜からなる膜分離モジュールを槽内に配置すると共に該膜分離モジュールの下方に気泡を発生させる散気装置を設置した膜濾過槽を配置し、
前記分離槽から前記膜濾過槽へ循環ポンプを介設した供給管と、該膜濾過槽から前記分離槽へ前記油分および微細気泡を含む未濾過液を循環させる返送管を設けていることを特徴とする含油排水処理システム。
【請求項2】
前記各膜分離モジュールの外周または複数の膜分離モジュールの外周に隙間をあけてガイド筒を配置し、該ガイド筒の下端開口から気泡および原水を流入させると共に、上端開口から流出させる構成としている請求項1に記載の含油排水処理システム。
【請求項3】
前記膜濾過槽内に配置する膜分離モジュールの分離膜は中空糸膜または平膜のいずれかとし、該分離膜はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PSF(ポリスルホン)およびPES(ポリエーテルスルホン)から選択される多孔質膜からなる請求項1または請求項2に記載の含油排水処理システム。
【請求項4】
前記分離槽と膜濾過槽とを連結する前記供給管は、前記分離槽の上下中間領域に連通させると共に前記膜濾過槽の下部に連通させ、前記返送管は膜濾過槽の上部に連通している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の含油排水処理システム。
【請求項5】
前記膜濾過槽内に配置する前記散気装置は、前記膜分離モジュールの下方に配管される散気管に空気源から圧力空気を送給し、該散気管に大径穴と小径穴を設け、大径穴から発生させる粗大気泡で膜分離モジュールの中空糸膜または平膜に振動を付与する一方、前記小径穴から微細気泡を前記返送管へ導出させている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の含油排水処理システム。
【請求項6】
前記分離槽の液面位置にスカムスキマーをモータの駆動軸に連結して配置し、浮上する油分をスカムスキマーで集めて排出すると共に、前記モータの駆動軸の下端に汚泥掻き寄せ具を連結し、該汚泥掻き寄せ具を前記分離槽の底面上に配置し、沈降する汚泥を掻き集めて排出する構成としている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の含油排水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−52364(P2013−52364A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192916(P2011−192916)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【出願人】(599167021)株式会社山協製作所 (1)
【Fターム(参考)】