説明

含鉄粉体の押出成形方法

【課題】 押出成形初期から強固にすることが可能な含鉄粉体の押出成形方法を提供する。
【解決手段】 含鉄粉体に水溶性有機系バインダーを混ぜて混練機で混練し、この混練物11を押出成形機12により押出成形する方法において、混練機としてパドル式混練機10を用い、混練物11の空気含有量が20体積%以上40体積%以下になるように脱気しながら混練し、押出成形機12で押出成形する。また、パドル式混練機10で、混練物11の含有水分が10質量%以上20質量%以下になるように、含鉄粉体に水分を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、製鉄所で発生する含鉄粉体の押出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、製鉄所で発生する含鉄粉体(例えば、ダスト)の造粒方法としては、強固な造粒物を得るための有効な手段である焼成ペレット法が用いられている。しかし、この方法は、造粒物の強度発現のために熱エネルギーを要するため、特に省エネルギーの観点から有効な手段ではなく、近年においては、バインダーとしてセメント又は水溶性有機系バインダーを用いた非焼成造粒法による造粒物の製造方法が実用化されている。ここで、バインダーとしてセメントを使用する場合、造粒物であるペレットを使用できるまでには、大気中で数日間養生しなければならず、そのための期間を必要とし、更にペレットを養生するために広大な敷地を要するという問題がある。また、セメント中には硫黄成分が含まれているため、このペレットを脱硫後の溶鋼に供給することは好ましくない。
【0003】
そこで、造粒物を製造するバインダーに、主として水溶性有機系バインダーが使用されている。
このように、含鉄粉体を水溶性有機系バインダーを使用して造粒する方法としては、例えば、含鉄粉体と水溶性有機系バインダーをドラムミキサーで混合した後、パンペレタイザー又はブリケットマシーンを用いて圧縮しながら成形する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−214222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、原料と水溶性有機系バインダーとを、パンペレタイザー又はブリケットマシーンを用いて混練しても、混練物の脱気を十分に行うことができず、混練物の強度が低下する。このため、例えば、混練物のハンドリング(搬送)過程において、ベルトの乗り継ぎで混練物が崩壊し、その形状を維持できずに破壊して歩留りを向上できない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、押出成形初期から強固にすることが可能な含鉄粉体の押出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る含鉄粉体の押出成形方法は、含鉄粉体に水溶性有機系バインダーを混ぜて混練機で混練し、この混練物を押出成形機により押出成形する方法において、
前記混練機としてパドル式混練機を用い、前記混練物の空気含有量が20体積%以上40体積%以下になるように脱気しながら混練し、前記押出成形機で押出成形する。
ここで、空気含有量とは、混練物の見掛密度を混練物の粒子(含鉄粉体)1個の真密度で除した値、即ち(混練物の見掛密度)/(混練物の粒子1個の真密度)×100(%)である。
【0008】
本発明に係る含鉄粉体の押出成形方法において、前記パドル式混練機で、前記混練物の含有水分が10質量%以上20質量%以下になるように、前記含鉄粉体に水分を添加することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の含鉄粉体の押出成形方法は、含鉄粉体と水溶性有機系バインダーをパドル式混練機で処理し、他の混練機を使用した場合よりも混練物中の空気含有量を低減することで、含鉄粉体の粒子間の空隙を減少でき、押出成形初期から混練物の弾力性を高めることができる。
これにより、例えば、混練物のハンドリング過程において、ベルトの乗り継ぎで混練物が崩壊することを抑制できるので、この混練物の歩留りを向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る含鉄粉体の押出成形方法に使用する混練機及び押出成形機の部分側断面図である。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る含鉄粉体の押出成形方法は、含鉄粉体に水溶性有機系バインダーを混ぜてパドル式混練機10で混練しながら、この混練物中の空気を抜き、脱気した混練物11を押出成形機12により押出成形する方法である。このパドル式混練機10を適用するのは、混練力が強く、短時間に、かつ確実に混練物の脱気が可能となるためである。
以下、まず本発明の一実施の形態に係る含鉄粉体の押出成形方法に使用するパドル式混練機10及び押出成形機12について説明した後、含鉄粉体の押出成形方法について説明する。
【0012】
パドル式混練機10としては、例えば、特開平9−10571号公報、特開平9−187635号公報に開示された混練機を使用できる。
図1に示すように、パドル式混練機10は、正断面視して2つの円の一部が重なり合った複胴型のバレル13を有するものであり、このバレル13には、その上流側上部に原料の投入口14が、下流側下部に混練物11の排出口15がそれぞれ設けられている。
バレル13内には、実質的に平行に配置された2本の回転軸16が、モータ(図示しない)によって同一方向に回転可能に配置されている。なお、各回転軸16には、原料を投入口14から排出口15へ送り出す方向に傾斜したパドル17が周設され、各回転軸16に設けられたパドル17の間で、水供給口18から供給される水と共に原料が混練されながら排出口15側へ送られている。
【0013】
パドル式混練機10の下流側には、押出成形機12が設けられている。
この押出成形機12のバレル19も、前記したパドル式混練機10のバレル13と実質的に同一の構成となっており、このバレル19の上流側上部に設けられた混練物11の投入口20が、パドル式混練機10の排出口15に接続されている。
バレル19内には、実質的に平行に配置された2本の回転軸21が、モータ(図示しない)によって反対方向に回転可能に配置されている。なお、各回転軸21には、原料を投入口20から排出口22へ送り出す方向に傾斜した送り出し用のスクリュー羽根23が周設されている。
【0014】
2本の回転軸21の基側上部には、この回転軸21に混練物11を押し込むための一対のローラ24が配置されている。なお、各ローラ24は、その下方に配置される回転軸21と、その周速を同調させながら逆方向に回転駆動する。
これにより、ローラ24によって回転軸21に押し込まれた混練物11は、回転軸21に設けられたスクリュー羽根23の間で混練されながら、バレル19の下流側端部に設けられた排出口22へ送られ、排出口22に設けられた金型25を介して外部へ押し出される。
【0015】
パドル式混練機10の排出口15と押出成形機12の投入口20との間の連接部分は密閉されており、この密閉状態の連接部に接続されたホース26により、真空ポンプ(図示しない)を使用して、連接部内の空気を排気可能な構成となっている。
これにより、パドル式混練機10による混練時においては、混練による脱気と真空ポンプによる脱気により、従来よりも空気含有量を低減させた混練物11を製造できる。
【0016】
次に、本発明の一実施の形態に係る含鉄粉体の押出成形方法について、図1を参照しながら説明する。
まず、含鉄粉体と水溶性有機系バインダーからなる原料をホッパー(図示しない)から切り出し、パドル式混練機10の投入口14へ供給する。
ここで、含鉄粉体とは、例えば、製鉄所で発生する鉄分を50質量%以上含む、平均粒径100μm以下のダストである。
また、水溶性有機系バインダーとは、α化した澱粉又は穀粉であり、例えば、コーンスターチ、小麦澱粉、又は米澱粉である。
【0017】
パドル式混練機10の投入口14からバレル13内に投入される原料は、水供給口18から供給される水分と共に、回転軸16に周設されたパドル17で混練されながら脱気され、排出口15へ送られる。
この混練は、混練物の空気含有量が、20体積%以上40体積%以下になるように脱気しながら行う。
ここで、混練物の空気含有量が40体積%を超える場合、押出成形物中に空気が多く含まれ、押出成形物の強度(例えば、圧潰強度)が低下して、押出成形物の搬送の際に加わる衝撃に耐えられず、崩壊する恐れがある。一方、混練物の空気含有量が20体積%未満の場合、押出成形物の強度の顕著な向上がみられず、しかも押出成形機での押圧を高くする必要がある。
以上のことから、十分な強度を備える押出成形物を安定して歩留りよく製造するため、混練物の空気含有量の上限を40体積%、好ましくは35体積%とし、下限を20体積%、好ましくは30体積%とする。
【0018】
また、原料に添加する水分量は、混練物11の含有水分が10質量%以上20質量%以下になるように行うことが好ましい。
押出成形物の圧潰強度は、混練物の含有水分が16〜17質量%近傍のときに最大となる。ここで、混練物の水分量が20質量%を超える場合、押出成形物同士が互いに着き合って団子状になり、これを破壊する必要性が生じ、押出成形物の生産性が低下し、しかも作業性が悪い。一方、混練物の含有水分が10質量%未満の場合、含鉄粉体と水溶性有機系バインダーの結合が不足してしまうために、混練物のハンドリング過程において、例えば、ベルトの乗り継ぎが多ければ、搬送中に混練物が崩壊する。
【0019】
パドル式混練機10により製造された混練物11は、排出口15を介して、ローラ24によって押出成形機12の投入口20へ押し込まれる。そして、混練物11を回転軸21のスクリュー羽根23で混練しながら金型25から押出成形し、棒状の押出成形物27を製造する。
この押出成形物27を、コンベア(図示しない)を介して乾燥機まで搬送して乾燥させ、例えば、16質量%程度の含有水分を、0.3質量%以上0.5質量%以下程度まで低減した後、転炉へ供給する。
【実施例】
【0020】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、含鉄粉体として、転炉排ガス集塵ダスト(転炉ダスト:平均粒径0.5μm以上5μm以下)と高炉炉前集塵ダスト(高炉集塵ダスト:平均粒径10μm以上50μm以下)の混合ダストを使用し、水溶性有機系バインダーとしてα澱粉を使用した。なお、この混合ダストは多少の水分も含んでいる。
また、混合ダストとしたのは、各々単独のダストを混練するよりも、良好な混練結果(空気含有量の低減)が得られ易いためである。これは、両ダストを混合することにより、粒度分布が広くなり、単位体積当たりの充填密度が高くなることによると推定される。
この混合ダストにα澱粉を添加した後、更に水分を添加し、前記したパドル式混練機で90秒混練して、押出成形機で押出成形物を製造した。なお、押出成形機の下流側端部に設けられた金型は、円周方向に直径16mmの成形孔を6個備えており、これにより、直径16mm、長さ40mmの押出成形物を製造した。この押出成形物を使用し、JIS H8718により圧潰強度を測定した。この試験条件と結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
表1に示すように、実施例1及び2においては、混練物の空気含有量を30体積%とし、前記した規定範囲(20体積%以上40体積%以下の範囲)内とすることで、空気含有量が規定範囲の下限未満の比較例1(18体積%)、及び上限を超える比較例2(45体積%)と比較して、押出成形物の圧潰強度を向上できた。
また、実施例3〜5においては、混練物の空気含有量を前記した規定範囲内とし、更に混練物の含有水分量を10質量%以上20質量%以下の範囲内に設定することで、実施例1及び2よりも押出成形物の圧潰強度を更に向上できた。
このように、混練物の空気含有量を規定することで、混練物から得られる押出成形物を乾燥機まで搬送する過程において、ベルトの乗り継ぎで押出成形物が崩壊することを抑制できるので、この押出成形物を転炉に供給することで、鉄分の回収歩留りを従来よりも向上できる。なお、この効果は、混練物の含有水分量を規定することで、更に顕著になる。
【0023】
以上、本発明を、一実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の含鉄粉体の押出成形方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、成形物の製造に、パドル式混練機と押出成形機とが一体となった装置を使用する場合について説明したが、パドル式混練機と押出成形機とが個別となった装置を使用してもよい。なお、押出成形機としては、例えば、複胴型のバレルでなく単胴型のバレルを備えるものを使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る含鉄粉体の押出成形方法に使用する混練機及び押出成形機の部分側断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10:パドル式混練機、11:混練物、12:押出成形機、13:バレル、14:投入口、15:排出口、16:回転軸、17:パドル、18:水供給口、19:バレル、20:投入口、21:回転軸、22:排出口、23:スクリュー羽根、24:ローラ、25:金型、26:ホース、27:押出成形物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含鉄粉体に水溶性有機系バインダーを混ぜて混練機で混練し、この混練物を押出成形機により押出成形する方法において、
前記混練機としてパドル式混練機を用い、前記混練物の空気含有量が20体積%以上40体積%以下になるように脱気しながら混練し、前記押出成形機で押出成形することを特徴とする含鉄粉体の押出成形方法。
【請求項2】
請求項1記載の含鉄粉体の押出成形方法において、前記パドル式混練機で、前記混練物の含有水分が10質量%以上20質量%以下になるように、前記含鉄粉体に水分を添加することを特徴とする含鉄粉体の押出成形方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−31768(P2007−31768A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216194(P2005−216194)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】