吸光−光音響検知を用いた低出力且つ高速の赤外線ガスセンサ
【課題】標的ガスの非常にわずかな濃度を検知し得て、センサの出力を長期間にわたって安定させ、標的ガスの濃度を精度良く定量化する。
【解決手段】ガスの存在を検知するためのガスセンサが、IR源と、マイクロフォンと、検出すべきガスとほぼ同じ基準ガスと、マイクロフォンに通じる圧力ポートを有する基準チャンバを中に規定する基準ボディと、少なくとも所定のガスの吸収ピークに対応するIR波長を通す広帯域の透光窓と、を有している。この窓は、IR源と基準チャンバとの間に置かれている。基準ガスは透光窓とマイクフォンとの間の基準チャンバの中に収容されている。
【解決手段】ガスの存在を検知するためのガスセンサが、IR源と、マイクロフォンと、検出すべきガスとほぼ同じ基準ガスと、マイクロフォンに通じる圧力ポートを有する基準チャンバを中に規定する基準ボディと、少なくとも所定のガスの吸収ピークに対応するIR波長を通す広帯域の透光窓と、を有している。この窓は、IR源と基準チャンバとの間に置かれている。基準ガスは透光窓とマイクフォンとの間の基準チャンバの中に収容されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年5月7日に出願され、開示全体が参照することにより全体として本書に盛り込まれている米国仮出願第60/928,000号の35 U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張する。
【0002】
本発明は、非分散型赤外線吸収(NDIR)に基づくガス検知の分野に属する。
【背景技術】
【0003】
NDIR技術が、好適なガス検知の方法として長年にわたって存在している。この技術は、ガスが、特定の波長の赤外線のエネルギ(光)を吸収し、異なるガスが異なる波長の吸収ピークを有するという事実による。このような吸収は、Beer−Lambert則に従って生じる:すなわち、
であり、ここで、Tは透過率、I0はガス試料に与えられる(特定の波長における)IRエネルギ強度、I1はガス試料によって伝送されるIRエネルギ強度、αはガスの吸収係数、lは経路長である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
少なくとも2のタイプのNDIRガス検知システムが今日使用されている:すなわち、Absorptive Infrared Detection(AID)及びPhoto−acoustic Infrared Detection(PID)である。これら2つの赤外線検知の方法の説明が、MSAのAllan Roczkoによる「Photo−acoustic Infrared Technology for Detection of Refrigerant Gases」に見られ、参照することにより全体として本書に盛り込まれている。2つの技術には顕著な差がある:AIDシステムはガス濃度が増加すると信号が低下し、PIDシステムはガス濃度が増加すると信号が増加する。それぞれのタイプの赤外線検知には、大きな欠点がある。
【0005】
吸収赤外線検知(Absorptive Infrared Detection)の問題点
【0006】
例えば、AIDに特有な問題点は、検知速さ及び安定性である。様々な形態の焦電デバイス(例えば、熱電対、測温体)が、一般に使用されており、温度(又は温度変化又は温度差)に比例する電気信号を発生させることによって、入射赤外線エネルギを電気信号に変換する。これらのデバイスは、一般に、大きな熱質量を有するため、検知器が入射エネルギの変化を検知できる速さを制限する。さらに、これらの器具は、赤外線エネルギではなく主に熱を検知するため(熱は、赤外線エネルギの吸収によって発生する副次的効果である)、周囲の状況(ウォーミングアップ、周囲の温度変化、機械的振動等)の変化を原因とするドリフト及びノイズの影響を受け易い。
【0007】
周囲のノイズ源を減らしたり拒絶するために様々な方法が採用されている。このような方法の一つは、2つの検知器を一方を基準用として他方を試料用として使用することである。試料用検知器の信号から基準用検知器の信号を差し引くことによって、一般的なモードの影響(例えば、周囲の温度、機械的なノイズ等)を減らしたり又は除去して、異なるモードの効果(すなわち、実信号)を高めている。周囲の状況によるドリフトを抑える(又は除去する)別の方法は、「光チョッピング」方式を使用することである。IR源への出力が低周波数で変調されて(電気的なチョッピング)断続的な周期の赤外光が発生するか、又は機械式チョッピングホイール(機械的なチョッピング)を使用して、赤外光を周期的に遮断する。これにより交流(AC)信号が熱電対から出力されて、直流(DC)に戻すよう変換されるのに先だってフィルタ処理及び増幅される。一般的に、「ロックイン」(同期)増幅器を使用して、チョッピング周波数の電気信号のみをDCに変換し、長い時間周期にわたって信号を平均化してドリフトする自由信号を発生させる。より大きなノイズ特性に対してであっても、チョッピングを上記のような試料/基準方式とともに使用できる。
【0008】
都合の悪いことに、上記の方法には問題がある。試料/基準方式は、2つの光路及び検知器を要し、検知器自身を慎重に合わせて較正する必要がある。さらに、最終的な信号を形成する成分を差し引くのに先だって、信号ゲイン及び調整のために(調和した)2つの電子機器を必要とする。このような二重構造により、単一チャンネル検知器よりも2倍以上の最終コストとなる。
【0009】
チョッピング方式は、ドリフトを大いに減らすが、それ自身の欠点を有する。一般に、IR源は大きな熱質量を有しており、電気的チョッピングを1Hz付近に制限する。このため、高価で信頼性のない機械式チョッパを時として使用し、チョッピング速さを増加させる。(最大25Hz又はそれ以上の)高周波数で動作可能な低熱質量のIR源が存在するが、使用するチョッピング方式に拘わらず、熱電対検知器は一般に要素を制限する。これらの検知器は、一般に数ヘルツよりも大きい周波数で変調されたIR信号を減衰させる。
【0010】
AC信号をDC信号に戻すよう変換するのに要する同期増幅器は、それ自身の問題の原因となっている。まず、位相ノイズ、すなわちアンプに出力される電気信号の位相変化による一つのドリフト影響を受けやすい。位相ノイズは、時間又は周囲の状況の変化によるアナログ成分値が変化する場合に生じる。第2に、同期アンプの出力は、入力信号の多くの周期を越える時定数を具えたローパスフィルタである。これにより、入力状態の早い変化に対して非常にゆっくりとした変動出力となる。
【0011】
光音響式赤外線検知(Photo−acoustic Infrared Detection)の問題点
【0012】
まず、光音響式赤外線検知は、赤外光の(電気的又は機械的パルスの)AC源を要し、上記のような全ての欠点を具えることに留意されたい。しかしながら、より大事なことは、PIDは、ガスが帯域制限された赤外放射源によって照射される試料チャンバを断続的にシール及び空気抜きすることを要することである。換言すれば、多くの機械式バルブを使用してセルの中に試料ガスを交互に流し、音響測定が行われる間、入口及び出口を閉止しなければならない。当然ながら、これは多くの意味を有する。はっきりと言えば、コストが、電気的に作動する機械式バルブに使用によって大きな影響を受ける。また、バルブを駆動させるのに必要な出力が問題である。結局、測定はバルブが閉止位置にある間のみ行うことができ、連続的な分析の可能性をなくしている。これは、装置が長い時間周期にわたってガス濃度のゆっくりとした変化を探知する監視型システムに適しているであろうが、それは、短い時間周期にわたる急激な変化を検知しなければならない漏れ検知装置として満足できないであろう。
【0013】
さらに、定量的な適用(すなわち、ガスの監視)のために、このような器具の較正が、少なくとも1の既知の濃度の標的ガスのその場での頻繁なサンプリングを要する。このような要求は、標的ガスが存在しない場合に検知器が信号を出力しないという事実によるものであり、所定の濃度の標的ガスに関する出力の大きさ、IR源のIR出力に対して変化し(時間とともに低下する)、さらには、成分のパラメータが時間とともに又は温度により変化する。較正用ガス試料は、高価で、遠隔地で入手するのが難しく、有害(例えば、有毒性、爆発性)である。
【0014】
双方の技術の問題点
【0015】
双方の技術の主要な問題点は、問題になっているガスに関する関心のある帯域に赤外線エネルギを帯域制限するための光学フィルタを要することである。まず、これらのフィルタは高価である。さらに、最も優れた通過帯域のスペクトルでさえ、問題となっているガスの吸収スペクトルに正確に適合しないため、検知器の選択性及び感度を減らす。さらに、このようなフィルタの通過帯域のスペクトルは、製造プロセス、温度、湿度、及び時間のそれぞれによるばらつきを免れない。
【0016】
さらに、双方の技術は、作動させるのに相当な電気的出力を要する。上記のような光学フィルタは、関心のある通過帯域でさえも赤外線エネルギを100%透過しないため、IR検知器(熱電対又は試料ガスチャンバ)に最終的に達するエネルギは、検知信号をノイズよりも高く上げるのに十分であるように、十分な出力をIR源に供給しなければならない。また、AC様式に使用する機械式チョッパ、光音響構造に使用するバルブは、相当な出力を消費し機械式装置のように本質的に信頼性がない。
【0017】
ある「赤外線漏れ検知器」が、Williamsによる米国特許番号第7,022,993号に記載されている。’993特許の開示に従って作成された装置は、「PredatIR」IR Refrigerant Leak Detectorとして販売されている。PredatIR装置の取扱説明書が、参照することにより全体として本書に盛り込まれている。’993特許に開示された検知器は、非参照型、非チョップの、吸収赤外線検知を使用した漏れ検知器でしかない。この検知器は、検知器から取得される得られる信号を安定化させるための方法を使用しない(あるいは、説明はこのような安定化を開示していない)。このため、’993装置が試料チャンバの中の関心のあるガスの濃度を定量化する可能性のある方法はない。
【0018】
’993特許全体を通して、明りょうな目的は、関心のあるガスが試料チャンバを通過することによって発生する光信号の変化を判定するための低コストの方法を創り出すことである。その明細書は、’993特許がDC(非チョッパ)赤外線エネルギ及び信号エッジを検出するためのアナログ微分回路の使用によって迅速な検知をもたらすことを具体的に示している。標的ガスの検知が、’993装置の使用をもたらす一方で、’993発明は、例えば、不十分なウォーミングアップ、電気ノイズ、又は他の周囲ノイズ源といった環境状態の急激な変化により頻繁に起きる誤った表示の影響を受けやすい。’993の明細書は、本装置が「低出力」であることを主張しているにも拘わらず、実際には、’993のIR源に電力を供給するのに要するDCエネルギが電気式チョップシステムの少なくとも2倍の出力を要する。その好適な実施例が、わずか4乃至5時間動作するのに12Vの再充電可能なNi−Cdバッテリを要するという点で、自明である。’993発明の安定性の不足は、好適な実施例がユニットに電源を投入してから2分のウォーミングアップの時間を要するという事実からも明らかである。
【0019】
また、重要なことに、DCでIR源を作動させることはIR源の寿命に著しく影響を与える。当業者は、IR源のエネルギ出力が時間とともに低下し、このような低下率がIR源によって消費される出力に関連することを知っている。例えば、50%の能率(AC)で動作するIR源は、100%の能率(DC)で動作するIR源よりも長く動作すると見込まれる。
【0020】
’993開示で記載された全ての実施例では、関心のあるガスに基づいて特定の波長用に特別に作られた光学フィルタを要する。さらなる問題点として、’993装置は、1Hz/2Hzのアラーム機能から明らかなように、ゼロ又は空値制御の形式で手動によるユーザの関与を要する。
【0021】
「Refrigerant Impurity Analyzer」が、Liebermannによる米国特許第5,498,873号に記載されている。’873Analyzerは、あるタイプの冷却剤のサンプルに、別のタイプの冷却剤が混入していることを判定するための装置である。本装置は、IR源として標準的な白熱電球を使用し、試料用冷却剤が流れる第1のチャンバに続いて、問題となっている汚染ガスを充填した第2のチャンバを使用することによって、光学フィルタを必要としない。圧電部品を使用して第2のチャンバにける圧力変化(音響エネルギ)を検出する。この圧力変化は、ガスによって吸収される波長を含む放射が第2のチャンバに入った場合のみ生じる。汚染した冷却剤を含むガスが第1のチャンバに入ると、問題となっている波長を吸収して、第2のチャンバにおける圧力の変化の減少をもたらす。このため、実際の光音響センサとは異なり、第1のチャンバの混入物の濃度に対して信号出力が減少する。’873特許に記載された解析のセンサは、光音響原理を使用する赤外線吸収式センサの性質を有する一方で、光学フィルタを製造する必要性をなくしている(第2のチャンバのガスが第1の機構及び検知機構の双方として機能する)。
【0022】
’873装置の2つの有益な特性がある:特別な光学フィルタは、上記のような光音響方法で要するバルブを要しない。それにもかかわらず、’873の構造は顕著な問題を有している。第1に、白熱電球のガラスが問題となっている大部分のIRエネルギを吸収する。このため、十分な検知のため電球を駆動するのに大量の電力を必要とする。第2に、電球の熱時定数が非常に長い。このため、パルス繰り返し数が1Hz又はそれよりも低く滞まらなければならず、検知が遅くなる。第3に、音響エネルギが、大きくて高インピーダンスの圧電装置を介して電気信号に変換される。このような装置は、電球のゆっくりとした電気式チョッピング速さよりも、高周波の機械的ノイズ及び大気圧の急激な変化に対してはるかに感度が高い。このため、1Hzの信号を回収するのにセンサ出力の顕著なローパスフィルタリングを必要とする。第4に、センサが物理的に大きく、(ノイズの問題が及ぼすにも拘わらず)携帯型の装置に適用できない。部品の大きな表面積により、長期間にわたって第2のチャンバに基準ガスを収容するのは難しい。
【0023】
上記に基づいて、一般に、IRガスセンサ技術を改善する必要性のあるのが明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
全てのガスセンサと同様に、新たなIRセンサ技術は、少なくとも以下の特徴を必要とするであろう。
高選択性−センサは目的とするガスのみに反応し、特定の場所の空気に混入する他のガスに反応しない必要がある(Williamsによるものとは異なる);
高感度−標的ガスの非常にわずかな濃度を検知するセンサの性能(Liebermannによるものとは異なる);
長寿命−センサは、長い動作時間及び長い保存期間の双方を示す必要がある(Williamsによるものとは異なる)。
さらに、監視型の適用のために、以下の特性が以下のIRセンサ技術を改善する:
長期の安定性−センサ出力は同じ入力条件について長期間わたって安定している必要がある(Williams及び従来のPIDによるものとは異なる);
参照特性−標的ガスの濃度を定量化するために、既知の濃度(理想的にはゼロ濃度)の試料に対して比較する必要がある(Williams及び従来のPIDによるものとは異なる);
その場(in situ)での較正は行わない−精度良い動作のために較正したガス試料を必要とすべきではない(Williams及び従来のPIDによるものとは異なる);
標的ガスの絶対的な濃度を検知する特性(Williamsによるものとは異なる)。 結局、携帯型漏れ検知への適用のために、以下の特性が従来のIRセンサ技術のさらなる改良点である;
迅速な検知時間−本装置は、1秒よりも短い時間で濃度の小さな変化を使用者に報知しなければならない(Liebermann及び従来のPIDによるものとは異なる);
迅速なクリア時間−本装置は、標的ガスがこれ以上存在しないとき又は所定の閾値よりも小さい濃度となった後に、1秒以内で表示を終わらせる必要がある(Williams及び従来のPIDによるものとは異なる);
(ノイズに対する)短期の安定性−標的ガス濃度の変化のみが出力信号の変化の原因となり、周囲の状況又は電気的又は機械的ノイズを変えない(Williamsによるものとは異なる);
極めて低出力−本装置は、小さくて一般的に入手可能なアルカリ電池(例えば、AAA−又はAA−サイズのバッテリ)で長時間(15時間よりも長く)動作し得る必要がある(Liebermann、Williams、従来のPID、及び従来のAIDによるものとは異なる);
迅速なウォーミングアップ−本機器は、電源投入後10分以内でその仕様を実行する必要がある(Williamsによるものとは異なる);
小型−本機器は片手で使うのに十分小さくて軽量でなければならない(Williamsによるものとは異なる);
全自動化−使用するための電源オンから電源オフまで、使用者は、本機器を手動でゼロにするか又は較正すべきではない;また、本機器は特定の場所の空気のバックグラウンド汚染を自動的に無視すべきである(Williamsによるものとは異なる);
広いダイナミックレンジ−検知器は、小さい濃度変化及び大きな濃度変化の双方を識別し得るべきであり、(a)小さな漏れを見付け(b)大きな漏れに狙いを定める性能を使用者に与える;
低コスト−本検知器は、可能な限りより低コストであるべきで、すなわち、高価な光学フィルタを無くすべきである(Williams及び従来のPID/AIDによるものとは異なる)。
【0025】
本発明に係る独創的なシステムは、全ての携帯型の形式において以下の有益な特性を提供する。
高選択性−本発明のセンサは目的とするガスのみに反応し、特定の場所の空気に混入する他のガスに反応しない;
高感度−本発明のセンサは標的ガスの非常にわずかな濃度を検知し得る;
長寿命−本発明のセンサは、長い動作時間及び長い保存期間の双方を示す;
長期の安定性−本発明に係るセンサの出力は同じ入力条件について長期間わたって安定している;
参照特性−独創的な装置は、測定される標的ガスと既知の濃度(ゼロ濃度)の試料とを比較して、標的ガスの濃度を定量化し得る;
較正不要−本発明の正確な動作のためにガス試料を較正する必要がない;
標的ガスの濃度を精度良く定量化する性能;
迅速な応答時間−本発明の装置は、1秒よりも短い時間で濃度のわずかな変化を使用者に報知し得る;
(ノイズに対する)短期の安定性−標的ガス濃度の変化のみが本発明に係る出力信号の変化の原因となり、周囲の状況又は電気的又は機械的ノイズの変化は出力信号の変化の原因とはならない;
極めて低出力−本発明に係る装置は、AA−サイズのバッテリといった一般的に入手可能なアルカリ電池で15時間よりも長く動作し得る;
迅速なウォーミングアップ−本発明に係る機器は、電源投入後10分以内でその仕様を実行する;
小型−本発明に係る機器は、片手で使用できる;
全自動化−使用するための電源オンから電源オフまで、本発明の使用者は、本発明に係る機器を手動でゼロにするか又は較正しなくてよく、本機器は特定の場所の空気のバックグラウンド汚染を自動的に無視する;
広いダイナミックレンジ−本発明に係る検知器は、小さい濃度変化及び大きな濃度変化の双方を識別して、使用者は、小さな漏れを見付け、大きな漏れに狙いを定め得る;
低コスト−本発明に係る検知器は、高価な光学フィルタを必要としないため、低コストである。
【0026】
上述及び視野内の他の目的で、少なくとも1の所定のガスの存在を検出するための本発明に係るガスセンサが提供されており、このガスセンサは、IR源と、マイクロフォンと、検知すべき少なくとも1の所定のガスと実質的に同じである基準ガスと、マイクロフォンに通じる圧力ポートを有する基準チャンバを中に規定する基準ボディと、所定のガスの吸収ピークに対応する少なくともIR波長が透過する広帯域の透光窓であって、IR源と基準チャンバとの間に置かれた透光窓と、を具えており、基準ガスが透光窓とマイクロフォンとの間の基準チャンバの中に収容される。
【0027】
本発明の別の態様によれば、IR源が低熱質量である。
【0028】
本発明のさらに別の態様によれば、IR源と試料ガスとの間に置かれた第2の広帯域の透光窓をさらに具えており、試料ガスからIR源を隔離する。
【0029】
本発明のさらに別の態様によれば、第2の透光窓が上流側のIR窓であり、透光窓が下流側のIR窓である。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、圧力ポートがマイクロフォンに音響的に接続されている。
【0031】
本発明のさらに別の態様によれば、上流側及び下流側の窓が、サファイヤ、フッ化カルシウム、セレン化亜鉛、シリコン、及びゲルマニウムから成る群のうちの1である。特に、上流側及び下流側の窓を、上流側及び下流側の窓によって伝送されるIRエネルギバンドを狭くするようコーティングし得る。
【0032】
本発明のさらに別の態様によれば、IR源に動作可能に結合され、ガス検知器具に繋がれる電気接点を有する第1のプリント回路基板と、マイクロフォンに動作可能に結合され、アクティブフィルタ回路及び第1のプリント回路基板に電気的に接続された接点を有する第2のプリント回路基板と、が設けられている。
【0033】
本発明のさらに別の態様によれば、マニホールドが、基準ボディに結合され、基準チャンバに隣接する試料チャンバを規定しており、試料チャンバが試料ガスを導入及び排出するための入口ポート及び出口ポートを有し、IR源が、試料チャンバの中の試料ガスを介してIRエネルギを導くよう配置される。
【0034】
本発明のさらに別の態様によれば、IR源と試料チャンバとの間に設置され、IR源から発生したIRエネルギを試料ガスに与える第2の広帯域の透光窓を具えており、第2の透光窓が上流側のIR窓で透光窓が下流側のIR窓であり、IR源が、まず上流側の窓を介して、その次に試料チャンバの中の試料ガスを介して、さらに下流側の窓を介して基準ガスの中にIRエネルギを導くよう配置されている。
【0035】
本発明のさらに別の態様によれば、試料チャンバが、研磨、メッキ、及び金メッキのうちの少なくとも1を施したものであり及び/又は基準チャンバが、研磨、メッキ、及び金メッキのうちの少なくとも1を施したものである。
【0036】
本発明のさらに別の態様によれば、IR源がPWM波形で駆動されるよう動作可能であり、PWM波形発生器がIR源に動作可能に結合されている。PWM波形発生器が単段発生器又は二段発生器とすることができる。
【0037】
本発明のさらに別の態様によれば、基準ガスが二酸化炭素である。
【0038】
本発明のさらに別の態様によれば、マイクロフォンがエレクトレット・コンデンサ・マイクロフォンである。
【0039】
本発明のさらに別の態様によれば、携帯型ガス検知器具が、基準ボディに結合され、基準チャンバに隣接する試料チャンバを規定するマニホールドを有している。試料チャンバが試料ガスを導入及び排出するための入口ポート及び出口ポートを有している。IR源が試料チャンバの中に試料ガスを介してIRエネルギを導くよう配置されている。また、IR源に動作可能に結合され、IR源に電気的に接続されてガス検知器具に繋がれる第1の接点を有する第1のプリント回路基板と、マイクロフォンに動作可能に結合され、アクティブフィルタ回路及び第1のプリント回路基板に電気的に接続された第2の接点を有する第2のプリント回路基板と、を有している。さらに、電源と、電源に動作可能に結合された回路基板アッセンブリと、を有している。回路基板アッセンブリは、第1及び第2のプリント回路基板に動作可能に接続されたセンサ回路を有している。吸引ポンプが、入口ポート及び出口ポートの少なくとも一方に流体的に接続されている。また、回路基板は、IR源、センサ、及びポンプのうちの少なくとも1を動作させるための制御部と、器具の状態を示すための表示部と、入口ポートに流体的に接続された管腔を規定するプローブと、に接続されている。外殻が、IR源、マイクロフォン、基準ボディ、上流側及び下流側の透光窓を中に嵌め込む大きさのセンサ区画と、電源を中に嵌め込む大きさの電源区画と、を規定する。
【0040】
本発明のさらに別の態様によれば、ガス検知器具がガス漏れ検知器具及びガス監視器具のうちの一方である。
【0041】
本発明の視野内の目的で、少なくとも1の所定のガスの存在を検出するためのガスセンサが提供されており、このガスセンサは、IR源と、マイクロフォンと、検知すべき少なくとも1の所定のガスと実質的に同じである基準ガスと、マイクロフォンに通じる圧力ポートを有する基準チャンバを中に規定する基準ボディと、基準ボディに結合され、基準チャンバに隣接する試料チャンバを規定するマニホールドであって、試料チャンバが試料ガスを導入及び排出するための入口ポート及び出口ポートを有するマニホールドと、基準チャンバと試料チャンバとの間に置かれ、IR源と基準チャンバとの間に置かれた下流側広帯域透光窓であって、所定のガスの吸収ピークに対応する少なくともIR波長が透過し、基準ガスが下流側透光窓とマイクロフォンとの間の基準チャンバの中に収容される下流側広帯域透光窓と、IR源と試料チャンバとの間に配置され試料ガスからIR源を隔離する上流側広帯域透光窓と、まず上流側の窓を介して、その次に試料チャンバの中の試料ガスを介して、さらに下流側の窓を介して基準ガスの中にIRエネルギを導くよう配置されたIR源と、IR源に動作可能に結合され、ガス検知器具に繋げられる電気接点を有する第1のプリント回路基板と、マイクロフォンに動作可能に結合され、アクティブフィルタ回路及び第1のプリント回路基板に電気的に接続された接点を有する第2のプリント回路基板と、を具える。
【0042】
また、本発明の視野内の目的で、携帯型ガス検知器具が、電源と、ガスセンサを中に嵌め込む大きさのセンサ区画と、電源を中に嵌め込む大きさの電源区画と、を規定する外殻と、電源に動作可能に結合された回路基板アッセンブリであって、第1及び第2のプリント回路基板に動作可能に接続されたセンサ回路と、入口ポート及び出口ポートの少なくとも一方に流体的に接続された吸引ポンプと、IR源、センサ、及びポンプのうちの少なくとも1を動作させるための制御部と、器具の状態を示すための表示部と、を有する回路基板アッセンブリと、入口ポートに流体的に接続された管腔を規定するプローブと、を具える。
【0043】
本発明の特徴として考えられる他の態様は、添付の特許請求の範囲で示されている。
【0044】
吸光−光音響検知を用いた低出力且つ高速の赤外線ガスセンサ、携帯型ガス漏れ検知器、及びガス監視器での実施として本発明を本書で図示且つ説明するが、それにもかかわらず、本発明の精神及び特許請求の範囲に相当する範囲及び領域から逸脱することなしに、様々な改良及び構造上の変更を行ってもよいため、示される明細に限定することを意図するものではない。
【0045】
しかしながら、本発明の構造及び動作方法は、その追加的な目的及び利点とともに、添付図面とともに読んだ場合、以下の特定の実施例の記載から良く理解されるであろう。
【0046】
必要に応じて、本発明の詳細な実施例を本書で開示する;しかしながら、開示された実施例は、様々な形態で実施し得る本発明の典型例に過ぎないことに留意されたい。このため、本書で詳細に開示されている特定の構造及び機能は、限定するものとして解釈されるものではなく、特許請求の範囲の根拠として、及び、適切に詳細な構造で事実上本発明を様々に使用する当業者に示唆するためのそれぞれの根拠として、単に解釈される。さらに、本書で使用する用語及び語句は、限定を意図するものではなく;むしろ、本発明の分かり易い説明を与えるものである。本書は、新規なものとされる本発明の特徴を規定する特許請求の範囲で始まっているが、同様の符号が繰り越される図面とともに以下の記載を考慮して、本発明がより良く理解されるであろうと考えられる。
【0047】
本書で使用する「a」又は「an」という用語は、1よりもむしろ1又はそれ以上として定義される。本書で使用する「複数」という用語は、2よりもむしろ2又はそれ以上として規定される。本書で使用する「別の」という用語は、少なくとも2又はそれ以上として定義される。本書で使用する「含む」及び/又は「有する」という用語は、具えるとして定義される。本書で使用する「結合される」という用語は、必ずしも直接的、及び必ずしも機械的ではないが、接続されるとして規定される。
【0048】
本書で使用するように、「約」又は「ほぼ」という用語は、明示的に示されているかどうかに拘わらず全ての数値の適用する。これらの用語は、当業者が引用された値に相当する(すなわち、同じ機能又は計算結果を有する)ものと考えるであろう数の範囲に言及する。多くの例では、これらの用語が、有効数字に四捨五入される数を有してよい。本書では、「長手方向」という用語を、典型的な円筒形のセンサアッセンブリの軸に一致する方向を意味するとして理解すべきである。本書で使用する「プログラム」、「コンピュータプログラム」、「コンピュータアルゴリズム」、「ソフトウェアアプリケーション」等の用語は、コンピュータシステム、マイクロプロセッサ、又はマイクロコントローラで実行するよう設計された一連の命令として定義される。「プログラム」、「コンピュータプログラム」、「コンピュータアルゴリズム」、又は「ソフトウェアアプリケーション」は、サブルーチン、関数、手順(procedure)、オブジェクト手法(object method)、オブジェクト実装、実行可能なアプリケーション、アプレット、サーブレット、ソースコード、オブジェクトコード、共用ライブラリ/動的ローディングライブラリ(dynamic load library)及び/又はコンピュータシステム、マイクロプロセッサ、又はマイクロコントローラで実行するよう設計された他の命令シーケンスを含んでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明に係る詳細な実施例が本書に開示されているが;開示した実施例は様々な形式で実施可能な本発明の単なる一例であることに留意されたい。このため、本書で詳細に開示されている特定の構造及び機能は、限定するものとして解釈されるものではなく、特許請求の範囲の根拠として、及び、適切に詳細な構造で事実上本発明を様々に使用する当業者に示唆するためのそれぞれの根拠として、単に解釈される。さらに、本書で使用する用語及び語句は、限定を意図するものではなく;むしろ、本発明の分かり易い説明を与えるものである。
【0050】
本書の実施例は、IRガス検知が可能な様々な技術を使用して幅広い方法で実施可能である。ここで、図1から図5を参照すると、センサアッセンブリ100が示されており、このセンサアッセンブリ100は、マニホールド110、基準ボディ120、及び2つのエンドキャップ130,140の4つの機械加工部品から成る。これらの部品は、2〜3例を挙げると、機械加工のし易さ、コスト、防錆といった固有の特性により、典型的な実施例ではそれぞれ真鍮製である。当然ながら、非常に低コストな適用として、アルムニウム、鋼、又は成型プラスチックといった他の材質を使用できる。機械加工された部品の間に、PCBアッセンブリ300、プリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400、マイクロフォンアッセンブリ500、1又はそれ以上の透光窓150,160、様々なガスケット170,180,190、及びナイロンの碍子200が入っている。これらの部品は、例えば図5に良く示すように、それぞれの側から各締結具セット220(例えば、#4−40丸頭小ねじ)で一緒に固定される。各締結具セット220を、基準ボディ120のねじの中に回し込まれる3本のねじボルトのサークルパターンで構成できる。センサアッセンブリ100の全体の長手方向の長さが約50mm(2”)の典型的な実施例では、マニホールド側のねじ220が1.25インチの長さで、基準ボディ120側のねじが0.25インチの長さである。締結具220として鋼、アルミニウム又は他の適切な材質を選択してもよい。
【0051】
出口ポート114に取り付けられた吸引ポンプ600により入口ポート116を通って引き込まれる試料ガス50が通る試料チャンバ112が、マニホールド110の中に機械加工されている。例えば、図6を参照されたい。試料ガス50として、不純物を含んでいる環境空気が可能であり、又はテストすべきガスが可能である。プローブアッセンブリ700が入口ポート116に取り付けられている。試料ガス引き込みプローブアッセンブリ700及び吸引ポンプ600のための気密取付具は、各ポート114,116の中に挿入されるシール210(例えば、Oリング)とすることができる。試料チャンバ112の長さ方向への最大IRエネルギ113の伝送を確実にするために、試料チャンバ112の内側の面を、研磨及び/又は金のような反射材料でめっきしてもよい。マニホールド110は、2つの締結具920(例えば、M2の丸頭小ねじ)が取り付けたセンサ110をガス検知具900の中に固定するための2つの取り付け穴118を有している(図9及び図12参照)。
【0052】
IR源PCBアッセンブリ300が、マニホールド110の入り口ポートの端部に配置されている。IR源PCBアッセンブリ300は、IR源320が取り付けられたプリント回路基板310(IR源PCB)を有している。PCB310は、エンドキャップ130のうちの一方によって所定の位置に保持されており、ナイロンの碍子200によってエンドキャップ及びマニホールドに対して電気的に絶縁されている。IR源320と試料チャンバ112との間に、シール170(例えば、ブナN、NBR、又はこれに似たゴムのガスケット)と共にIRが透過する透光窓150(例えば、9.5mmの直径で0.5mm厚のサファイヤ又は他の材質の透光窓)を使用して、試料ガス50をIR源320から隔離してもよい。代替的に、窓150を既に取り付けたIR源320を入手してもよく、ガスケット170の必要性を減らす。試料ガス50をIR源320から必ずしも隔離しなくてもよいケースでは、窓150及び/又はガスケット170を無くすことができる。
【0053】
IR源PCB310とエンドキャップ130との境界面によって形成された空洞135に、エポキシベースの埋め込み用樹脂を充填して、センサアッセンブリ100との干渉を防止してもよい。
【0054】
図6のブロック図を参照すると、IR源PCB310のエッジ312を使用して、センサアッセンブリ100とガス検知器具900のメインボード800上のカード・エッジコネクタ810との間の電気的接続を形成する。さらに、IR源PCB310上の端子314を使用して、プリゲイン/フィルタPCB410からIR源PCB310を通ってその後にカード・エッジ312に電気信号を送るための相互接続ワイヤ420により、(上記のような)プリゲイン/フィルタPCB410上の同じような端子412に接続してもよく、これにより、IR源駆動信号及びプリゲイン/フィルタPCB410によって生成された信号の双方を、1つのカードエッジコネクタ810のみを使用してガス検知器具900のメインシステムボード800に対して送受信することができる。IR源PCB310のエッジ312により、ガス検知器具900の中にセンサアッセンブリ100を簡単に「圧入」取り付けできる。図11及ぶ図12を参照されたい。
【0055】
IR源320は、IRエネルギ113を放射し得る器具でよい。好適には、少なくとも10Hzの周波数で変調し得る低熱質量装置を使用する。本書で使用するように、熱質量源として規定される低熱質量源は、ほぼ10Hzからほぼ25Hzの範囲で変調し得る。熱質量源として規定される高熱質量源は、5Hzよりも大きな周波数で変調できない。センサーの大きさを最小限にするために、TO−5 Transistor Canパッケージで入手し得る小型のIR源320を使用してもよい。
【0056】
マニホールド110の出口ポート側と基準ボディ120との間に、透光窓160(例えば、9.5mmの直径で0.5mm厚のサファイヤ又は他の材質の透光窓)及びガスケット180(例えば、ブナn、NBR、テフロン(登録商標)又はこれらと同様なガスケット)が挟まれている。ガスケット180を低蒸気圧の真空グリースでコーティングして、基準ボディ120又はマニホールド110の表面仕上げの不揃いにより生じる可能性のあるガス漏れをなくしてもよい。基準ボディ120は、その中に基準チャンバ122を規定する。製造時に、マイクロフォンアッセンブリ500の取り付けに先立って、基準チャンバ122を、圧力ポート124を通して100%の濃度の基準ガス123で満たす。基準チャンバ122の壁によって吸収されるIRエネルギ113量を制限するために、試料チャンバ112と同じように、基準チャンバ122の壁を、研磨及び/又は金といった反射材料でコーテティングしてもよい。
【0057】
センサ100の出口側は、マイクロフォン510を含むマイクロフォンアッセンブリ500と、プリゲイン/フィルタPCB410、端子412及び相互接続ワイヤ420を具えたプリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400と、を有する。製造後は、基準チャンバ122の中の基準ガス123の圧力変化が、圧力ポート124を介してマイクロフォン510に伝えられる。
【0058】
マイクロフォン510は、エラストマー(ゴム)のマイクロフォンホルダ520に取り付けられた市販されている標準的なエレクトレットコンデンサ型のマイクロフォンである。例えば、このマイクロフォン510は、−46デシベルから−42デシベルの範囲の感度を具えた6015型(6.0mmの直径及び1.5mm厚)でよい。高感度のマイクロフォン(例えば、−42デシベル)により、低感度のタイプよりも同じ電気出力に対するIRエネルギが少なくて済む。
【0059】
マイクロフォンアッセンブリ500、及びシール190(例えば、ブナn、NBR、テフロン(登録商標)又は同じようなガスケット)が、基準ボディ120とプリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400との間に挟まれていおり、プリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400自身はエンドキャップ140及び3つのねじによって所定の位置に保持されている。ガスケット190にグリースをコーティングして、基準チャンバ122からの基準ガス123の漏れを防いでもよい。マイクロフォン510とプリゲイン/フィルタPCB410との間の電気接点が、エラストマーのマイクロフォンホルダ520の導電性ゴム接点及びプリゲイン/フィルタPCB410の対応する接点を介して設けられている。プリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400は、AC接続されたプリアンプと、プリゲイン/フィルタPCB410から相互接続ワイヤ420、IR源310、及びエッジ312を介してガス検知器具900のメインシステム基板800に出力信号を送信するのに先立って、マイクロフォン510からの信号を事前に調整するローパスフィルタ回路430と、を含んでいる。プリゲイン/フィルタPCB410は、基準ボディ120の金属部がアンプの共通(グラウンド)信号に低雑音動作で電気的に接続されるように構成される。
【0060】
プリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400とエンドキャップ140との境界によって形成される空洞145にエポキシべースの埋め込み用樹脂を充填して、センサアッセンブリ100と干渉しないようにし、プリゲイン/フィルタPCB410材料を通した基準ガス123の拡散を防いでもよく、周囲の状況(温度、湿度)の変化による回路430を具えるプリゲイン/フィルタ部品のパラメータの変化を弱める。
【0061】
本システムの心臓部は、100%の濃度の基準ガス123の試料が、製造時に、透光窓16とマイクロフォンアッセンブリ500との間の基準チャンバ122の中に大気圧密封された基準ボディ120である。
【0062】
透光窓150及び160は、サファイヤ、フッ化カルシウム、セレン化亜鉛、ゲルマニウム、又はシリコンといった、広帯域のIRエネルギが通過できる材質でよいが、これらに限定されない。窓150及び160の最低必要条件は、問題になっているガスの少なくとも1又はそれ以上の吸収ピークと一致するIR波長を伝送することである。例えば、二酸化炭素は、4.5μm付近に強い吸収ピークを有している。低コストのサファイヤの窓は、最大5.0μmまでの全てのIR波長を伝送する。このため、サファイヤは、例えば、二酸化炭素ガス検知器に使用するのに理想的な材料である。他の窓用の材料を、他のIR波長の範囲の吸収ピークを具えるガスに使用してもよい。さらに、必ずしも必要ではないが、窓を光学的にコーティングして、窓を通過するIRエネルギの帯域を狭くしてもよい。
【0063】
広帯域のIRエネルギ113は窓160を通過するが、基準チャンバ122の中の基準ガス123の吸収ピークに一致する波長が基準ガス123によって吸収される。これにより、ガスの瞬間加熱が起きて、(光音響赤外線検知器と同じように)圧力が増加する。赤外線源を脈動させることで、パルス源の周波数と同じ周波数で基準チャンバ122の中に音圧波を形成する。これらの音圧波は、圧力ポート124--マイクロフォン510に基準チャンバ122を音響的に繋げる小さな穴(例えば、0.020’’)を介してマイクロフォン512に伝送される。マイクロフォン510によって発生される圧力波の振幅、すなわち、電気信号の振幅は、基準ガスによって吸収されるエネルギの量に正比例する。
【0064】
試料ガス50を入力ポート116及び試料チャンバ112の中に引き込みながら、吸引ポンプ600によってマニホールド110の出口ポート114から外に連続的又は周期的にガスを引き出す。基準ガス123と同じ試料チャンバ112のガスは、IR源320によって放射される赤外放射113を基準ガス123と同じ吸収帯域で吸収するため、基準ガス123を加熱するのに利用できるエネルギの量を減らす。これにより、基準チャンバ122の音圧波、さらには、マイクロフォン510からの電気信号が瞬時に減少する。Beer Lambert則によれば、電気信号の減少は、試料チャンバ112のガス試料の標的ガスの濃度の増加と直接的に対応する。
【0065】
基準ガス123によって吸収される波長と同じ波長を正確に吸収する試料ガスのみが、信号出力を減少させる。このように、センサアッセンブリ100は、極めてガスに固有であり、他の全てのガスを無視しつつ基準ガスと同じガスのみを検知し、特殊な光学フィルタを使用せずにこれを行う。他のガスに対する交差感受性を最小限にする(すなわち、他のガスが基準ガスの吸収スペクトルの小さな部分を占めるが、小さな濃度で大きな信号変化を発生させるのに十分ではない)。ガスの選択性は、他の方法よりも非常に高く、周囲の状況又はパラメータの変化に影響されない。さらに、圧力波のAC成分の振幅は、マイクロフォンから発せられる電気信号と同じように、試料ガス中の基準ガスの濃度の変化に対して瞬時に変化する。熱電対列のIR検知器の熱時定数は、IR源の最大変調周波数を判定しない。
【0066】
図6を参照すると、ガス漏れ検知又はガスの監視に適用する独創的な吸収性の光音響ガスセンサを使用した完全なガス検知システム900が、上記のようなガスセンサアッセンブリ100と、メインシステムPCB800とを有している。メインシステム基板800は、適切な電源(例えば、バッテリ、AC電源供給ライン)、アナログ信号前端(ゲイン及びバンドパスフィルタ)820、一体型(又は外付けの)A/D832を具えたCPU、PWM(パルス幅の変調又はパルス幅の変調器)機能部834、デジタル信号処理(DSP)演算を実行するためのソフトウェア836、IR源のためのパワードライバ840、及びユーザインターフェイス850を有している。
【0067】
図6の典型的な実施例に図示するCPU830は、(入力信号をサンプリングするための)一体型のA/D変換器832と(IR源320を駆動するための)PWM変換器834とを含んでいる。これは、低コスト、さらに言えば、より低コスト/複雑度の低い方法である。A/D及びPWM変換器をCPUとは別に設けることが可能である。また、相当な努力により、デジタル部品が全く無い同じような適用を実現できることが考え得る。このため、上記のような基本原理を利用するが、アナログでの実施を単に利用するシステムは、本発明の範囲内であると想定される。
【0068】
PWM834を、IR源のドライバ840に出力される可変デューティサイクルの方形波信号845を発生させるよう構成できる。PWM834の基本周波数は、システムの検知速さ及び感度を最適化するよう選択され、IR源320の熱時定数を考慮に入れる。低熱容量のIR源を具えたシステムのために、10Hzの基本周波数を使用して、検知スピードを増加させる。PWM834のデューティサイクルは、IR源ドライバ840を介してIR源320に加えられる電力を制御し、DSP836の制御の下で0%から100%まで変化させる。50%よりも高いデューティサイクルにより、信号の振幅の顕著なゲインなしにIR源320による出力散逸が増加するため、PWM制御の実際の範囲を0%から50%に制限する。IR源320の出力散逸の制限は、さらに、PWMの実際の最大のデューティサイクルを制限する。さらに、第2段階のPWM変調を、PWM信号845の「on」周期部分に適用して、合成PWM信号846を発生できる。これにより、IR源320に加えられる出力の非常に微妙なチューニングが可能となるため、センサ100から発せされる信号の振幅の微細な制御が可能となる。第2段階の変調器を0%から100%までの全範囲にわたって効果的に調整できる。理想的には、1又はそれ以上のPWMがプログラムで調整され、センサ100からの信号出力のダイナミック・レンジを最大限にする。
【0069】
2つのPWM834が同時に適用される場合、IR源320に適用される得られるエネルギは、2つのデューティサイクルの積に比例する。例えば、第1の(コース,coarse)変調器が12%のデューティサイクルで動作する場合、第2の(ファイン,fine)変調器は80%のデューティサイクルで動作して、IR源320への得られる出力は総出力の9.6%でありIR源320は双方の変調器が100%で動作したかどうかを確認する。
【0070】
非常に高い分解能を有する(且つ高価な)1つのPWM834を、2つの段階のPWM834の所定の場所で使用することが可能であり、同様な微細な調整機能を与えるが、2段階の実施は正確で、低コストで、加算計算機コードを具えたCPU830と一体となった一つの変調分解能を有するPWM834によって実施が容易であり、2段階の機能を発生する。
【0071】
PWM834はタイミング及びIR源320に加えられる出力を制御する一方で、PWM834は、さらに、(以下のような)A/D変換器832及びDSP836のタイミング835を制御する。これにより、信号処理段階の際にアナログ信号に含まれる同期ノイズを拒絶することが可能となる。
【0072】
PWM信号845又は846は、IR源ドライバ840への出力である。これは、単に、適切な調整出力供給回路及びトランジスタスイッチであり、このトランジスタは、PWM信号の「on」周期847に閉じてIR源320に電流を供給し、PWM信号の「off」周期848に開いてIR源320への電流を遮断する。2段階のPWM形態では、大きな「off」周期848の間に電力を受けないが、大きな「on」周期848の間にIR源320が素早くオンオフ切り替えされる電力を受けることに留意されたい。これらの小さなオン/オフ時間の周期は、IR320の熱時定数と比較して高いため、全てのIR源320は、「on」周期848の間に、駆動信号の平均的な出力を受ける。実際の例として、(IR源の熱時定数よりも遅い)10Hzの基本周波数を有するコースPWMを具えて、ファインPWMが(熱時定数よりも非常に早い)1280Hzの基本周波数を有している。上記の単一又は2段階のPWMモードが、図7のグラフに示されている。
【0073】
変調IR源から発せられたIRエネルギ113は、試料チャンバ112を通って伝播して、基準チャンバ122の中に入る。基準ガス123の吸収帯に対応するIRエネルギの波長は、コースPWM(例えば、10Hz)の基本周波数で音圧パルスを発生する基準ガス123を周期的に加熱する。これにより、対応するAC信号がマイクロフォン510からプリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400に発せられる。プリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400は、マイクロフォン510に出力するバイアス回路430と、アンプ及びローパスフィルタ回路が後に続くマイクロフォン信号からDC成分を除去するためのDCブロッキングコンデンサとを有している。アンプ及びローパスフィルタは、50のゲイン及び47Hzで3dbポイントを具えた6db/オクターブのロールオフを有してよい。ゲイン及びフィルタ特性は、プリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400から発せられる信号(例えば、10Hz)の振幅を最大限にするよう選択される一方で、アンプが信号をクリップして歪ませる原因となる高周波数のノイズ成分を減衰させる。得られる信号は、コースPWMの基本周波数を具えたAC波形である。
【0074】
このAC波形は、ローパスフィルタによってフィルタリングされない中間域のノイズとともにコースPWM周波数の調波の形式でノイズを依然として含むが、ガス検知器具のメインシステムボード800のゲイン及びバンドパスフィルタ回路820に伝播する。フィルタ820は、コースPWMの基本周波数(例えば10Hz)の中心にある通過帯域を有し、約2Hzの帯域幅を具えた(例えば、9Hzから11Hzの信号が通過して他の全てが遮断される)、2次、4次、又は高次のバンドパスフィルタでよい。フィルタ820は、6.4の通過帯域ゲインを有してよい。このような回路の出力で得られる信号は、IR源の出力(PWMデューティサイクル)及び利用可能なIR出力量によって決定されるコースPWMの周波数及び振幅を具えたクリーンで歪みが小さいAC信号であり、基準チャンバ122の中の標的ガス試料を励動させる。
【0075】
最後に、得られる信号をCPU830に導くことができ、組み込まれたA/D変換器832によってそれをデジタル化できる。サンプリング速度が(同期したノイズ軽減及び信号検知が可能となる)コースPWM速度となり、ナイキスト基準を満足するよう十分高くなるように、サンプリング速度を選択できる。1秒当たり640サンプルのサンプリング速度を、バンドパスフィルタによって通過するものと見込まれる高周波数よりもワンオーダー以上大きい、例えば、320Hzのナイキスト周波数となるよう選択することができる。A/D変換器832は、適用に応じて10ビット又はそれ以上の分解能を有することができる。
【0076】
デジタルの試料の流れを、DSP836に向けてプログラムで通過させることができ、DSP836はPWM制御、信号の定量化、較正、及び検知を操ることができる。DSPを通過するデジタル化したAC信号の振幅は、基準チャンバ122に入って基準ガスを励動させるIRエネルギ量についての全ての情報を含んでいる。(アナログ及びデジタルの)AC波形は、振幅成分及び位相成分の双方を含んでいる。実用的にするために、振幅情報を抽出して位相情報を切り捨てなければならない。このような抽出を実行できる多くの共通した方法があり、それぞれがそれ自身の欠点を有する。
【0077】
振幅成分を抽出するための最も単純な方法は、信号調整及び平均化である(包絡線検波としても知られている)。この方法は、非常にゆっくりとしている(平均化を多くの信号周期、おそらく10の信号周期にわたって行って、適度に安定した信号振幅のDC表示を形成しなければならない)。また、本方法は、調整処理で相当量エラーする傾向がある。
【0078】
ピーク検出は、振幅を増加させるための迅速な結果を得ることができる別の基本的な方法であるが、クリーンな動作のために出力信号がAC波形の周期よりもかなりゆっくりと減衰しなければならないため、振幅を減少させるのが遅い。また、本方法は、高周波数ノイズに対して極端に感度が高い。
【0079】
包絡線検波及びピーク検出は、(低コストの一般的なCPUに対して)複雑度の低い計算機コード及びわずかな処理出力を具えたデジタル領域で容易に実行される基本的な方法である。
【0080】
より進んだ信号振幅の抽出法は、「Lock−In」増幅と称される(同期検波としても知られている)。この方法では、同じ周波数の一定の振幅の正弦波(局所的な発信器又はLO)によって信号が「ミックス」される(数学的に乗算される)。そして、積は、長い周期にわたって平均化され、LOの位相に関して(a)AC信号の振幅;及び(b)AC信号の位相に対して比例するDC信号を形成する。一般に、同期検波は、ミキシングの結果を最大限にするように、信号とLOとの間の位相関係を調整するための制御を有している。これは、入力信号とLOとの間に0°の位相差がある場合に生じる。入力信号の位相を自動的に探知する機能を加えることによって、位相依存を大いに減衰できる。低コストの適用では、正弦波LOの代わりに方形波LOを使用してもよい。
【0081】
同期検波の主要な利点は、精度及び感度である。平均化フィルタの時定数に応じて、非常に小さい信号振幅を大量のノイズから正確に抽出できる。2つの主要な欠点は、(相当な量の平均化が必要とする)速さ及び位相ノイズ(信号及びLO間の位相関係の変化に対する感度)である。同期検波は、一般に、(コンピュータプログラムを介して)デジタルで実行するための適量の処理出力を要し、様々な種類の位相補償方法を加えるため、複雑さが顕著に増大する。同期検波を、アナログ及びデジタル方法の双方で実行できる。
【0082】
Quadrature Detectionを使用して、同期検波に影響を及ぼす位相感度を除去できる。このような方法では、信号を直角位相(各2つのLO信号間の90°の位相差)で動作する2つの局所発信器によって乗算できる。一方のLOは、正弦波発信器と称され、他方のLOは、余弦波発信器と称される。各LOの基本周波数は、同期検波で検知するための信号と同じである。2つの乗算積は、長い時間にわたって平均化され、実質的に複素数と組み合わされ、平均正弦積値は実数成分であり、平均余弦積値は虚数成分である。ここで、このような複素数の計算結果は、オリジナルの波形の振幅及び位相情報の双方を含んでいる。ここでは、振幅情報の抽出は複素数のマグニチュードを判定する単純なケースであり、マグニチュードは、ピタゴラスの定理を適用することによって見出される:
同期検波では、生成又は演算を容易にするために、正弦波の代わりに直角で動作する2つの方形波を使用してよい。
【0083】
Quadrature Detectionの大きな利点は、入力信号の位相のための補償を要さず、位相ノイズに対して鈍感であることである。同時に、それは、同期検波と同じ精度及び感度特性を有する。都合の悪いことに、多くの信号周期にわたる平均化を依然として必要とし、これにより応答が遅くなる。さらに、デジタル領域におけるQuadrature Detectionは、一般に、計算上の複雑さ及び処理能力の点から見て非常に高価である。Quadrature Detectionをアナログ及びデジタルの双方の方法で実行できる。
【0084】
上記に基づいて、AC波形から振幅情報を素早く抽出するアルゴリズムを有する必要性、さらには、Quadrature Detectorの精度、感度、及び位相不感受性を有する必要性があるかどうかが判断された。さらに、低コストのマイクロプロセッサで実施するのに十分計算が簡単になるようなアルゴリズムを有するのが望ましかった。
【0085】
連続的なアナログAC波形を不連続なデジタルのサンプルに変換する利点の1つは、各波形の周期で既知の数の生成されるサンプルがあるように、サンプル・レートを選択できることである。このため、コンピュータアルゴリズムを書き込んで、多くの周期にわたって平均化せずにある周期全体に関する信号のマグニチュードの直角位相演算を演算できる。例えば、AC波形の基本周波数が10Hzであり、1秒当たり640サンプルを生成する場合、各波形の周期に関して64サンプルが生成されるであろう。これら64サンプルを、サイン及びコサイン直角位相波形と混ぜて周期全体にわたって平均化し、その周期の波形の振幅情報を演算可能な複素数値を形成するために組み合わせることができる。これらの信号特性及び抽出のタイミングでは、秒毎に10の正確な振幅演算を得る。これらの結果の値を、さらにデジタルでフィルタリングして高周波のアーチファクトを維持したまま平滑化でき、さらなる処理のために通過できる元のAC波形のRMSマグニチュードを表す10Hz列のデジタル値となる。
【0086】
これは、従来の方法にわたって一桁分の検知スピードの改善をもたらす一方で、この速さをさらに改善できることが見出された。前回の64サンプルの「移動する窓」におけるデータを、(各信号周期とは対照的に)各サンプル周期を演算するためのデータセットとして使用できる場合、これは、秒毎に640の正確な振幅データポイントをもたらし、検知スピードの別の桁分の増加を示す。都合の悪いことに、このプロセスは、各サンプル周期のサイン及びコサイン乗算、128(64のサイン及び64のコサイン)のデータ要素の数学的平均、及びマグニチュード演算を要する。一般に、この種の計算は低コストのマイクロプロセッサでの実行を排除するのに十分複雑である。それにもかかわらず、本発明に係るアルゴリズムが上記のような演算を実行するが、低コストのマイクロプロセッサで効果的に実行するのに十分に複雑性が低いということが分かっている。このような独創的なアルゴリズムは、本書でFast Digital Quadrature Detectionと称する。
【0087】
Fast Digital Quadrature Detectionアルゴリズムは、一方がサインの和用で他方がコサインの和用の2つの積算器(マイクロプロセッサ・レジスタのセット)、各64ワードの長さであって、この場合も一方がサインの和用で他方がコサインの和用の2つのアレイを使用する。このアレイは、循環バッファとしてセットアップされる。各サンプルデータポイントに関するサイン及びコサイン値を演算するのではなく、サンプル数に基づいて2つの各積算器によって新たなサンプル値を加算又は減算するかどうかの判断がプログラムでなされる。10HzのAC波形で、1秒当たり640サンプルのサンプリング速さでは、AC波形のそれぞれの完全な周期で64のサンプリングポイントが存在する。これらのサンプリングポイントは、0から63まで番号付けされている。サイン関数については、サンプル番号0から31までのサンプル値がサイン積算器によって加えられ、サンプル番号32から63までのサンプル値がサイン積算器によって差し引かれる。コサイン関数については、サンプル番号0から7までのサンプル値がコサイン積算器によって加えられ、サンプル番号8から47までのサンプル値がサイン積算器によって差し引かれる。これらの加算及び減算は、AC波形の直交する(例えば、90度の位相差)2つの単位振幅の方形波による乗算をシミュレートする。さらに、サインが上記の判断の逆として計算されるが、サンプル値又はその負数が、各循環バッファに設置される。例えば、サンプル番号0から31については、サンプル値の負数をサイン循環バッファに記憶する。上記の加算又は減算に先だって、前回の波形周期による対応するサンプル数の逆数値を表し64サンプル前に積算器に加えられた循環バッファの中の最も古い値が、新たな値で置換するのに先だって、サイン及びコサイン積算器に加えられる。このような方法では、サイン及びコサイン積算器は、サンプリング周期毎に128個(64と64の和)の値全ての和の再計算の必要なしに、常に、信号周期全体にわたって完全なサイン及びコサイン和(平均)を含んでいるため、計算する能力の劇的な低下をもたらす。最後に、以下の文で説明するように、各サンプル周期毎に和の位相振幅を演算する。
【0088】
aがサイン積算器の値で、bがコサイン積算器の値である場合、a+biのPhaser 絶対値cは、
これは、
に等しい。
【0089】
本式は、複素数が現れるが、簡単で以下のアルゴリズムに基づいて低コストのマイクロプロセッサが実行するのに効率的である。
・積a*a及びb*bを演算する;
・当該積の和を演算する;
・参照テーブル、区分的近似、及びバイナリシフト(binary shifting)により、2を底とする当該和の対数を演算する;
・シングルバイナリライトシフト(single binary right shift)により、当該対数を2で除した商を演算する;
・参照テーブル、区分的近似、及びバイナリシフトにより、2を得られた商の累乗することよって、マグニチュードを演算する。
【0090】
本発明に係るFast Digital Quadrature Detectionの結果として、最近の64サンプルに関するAC波形の振幅を正確に反映する新たな演算結果が、各サンプル周期毎、又は1秒当たり640回出来上がる。得られたデータストリームは、AC信号の時間変化するRMS値を表すDC信号のようであり、従来のデジタル信号処理法によってさらに処理される。
【0091】
Fast Digital Quadrature Detectionアルゴリズムによって生成されたデータストリームを使用して、1段又は2段PWMによってシステムを較正できる。ガス検知システムのタイプ(例えば、ガス監視又は漏れ検知)に基づいて較正方法を選択し、標的ガスが較正時にガス試料に存在すると仮定する。
【0092】
較正すると、データストリームがさらに適用(ガス漏れ検知、ガス監視、等)に応じた様々な方法でマイクロコントローラによって処理される。処理の結果を、マイクロプロセッサのI/Oポート838を介して、音声指示のためのスピーカ854、電子表示器856、例えばLEDディスプレイ、LEDアレイ、LCD図形、英数字、又は棒グラフディスプレイ、又は何らかの機械式、光学式装置、又は例えば振動器といった音声信号装置858といった装置で構成してよいユーザインターフェイスを通して使用者に表示できる。また、ガス濃度情報のさらなる処理、記録、送信又は表示のために、データストリームをネットワーク又は(ワイヤレスを含む)他のタイプの接続を介してホストコンピュータシステム又はマイクロプロセッサシステムに直接送信できる。また、ユーザインターフェイス850が、押しボタン、接触又はタッチスイッチ、タッチパネル、キーボード又はキーパッド、ポテンショメータ、又はアナログ制御といった、多くの入力装置852を含んでガス検知器具の動作を制御してもよい。また、(ワイヤレスを含む)コンピュータネットワーク又はホストコンピュータによる遠隔制御に関する設備をユーザインターフェイス850を介して設けてもよい。
【0093】
上述の明細書に基づいて、コンピュータソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア又はそれらの組み合わせ又はサブセットを含むコンピュータプロラミング又はエンジニアリング技法を用いて本発明を実施してもよい。このような得られるプログラムは、コンピュータが読み込み可能なコード手段を有しており、1又はそれ以上のコンピュータが読み込み可能な媒体の中で実施及び提供してもよいため、本発明に係るコンピュータプログラム製品、すなわち製品を生成する。コンピュータが読み込み可能な媒体は、例えば、固定(ハード)ドライブ、ディスケット、光ディスク、磁気テープ、読み取り専用メモリ(ROM)といった半導体メモリ等、又はインターネット又は他の通信ネットワーク又はリンクといった送信/受信媒体でよい。ある媒体から直接コードを実行することによって、ある媒体から別の媒体にコードを複製することによって、又はネットワークを介してコードを送信することによって、計算機コードを含む製品を作製及び/又は使用してもよい。コンピュータ科学の当業者は、上記のような作製したソフトウェアを、適切な一般的な用途又は特殊用途のコンピュータハードウェアと容易に組み合わせて、本発明に係る方法を実施するコンピュータシステム又はコンピュータサブシステムを作製することができるであろう。本発明を作製、使用又は販売するための器具は、中央処理装置(CPU)、メモリ、記憶装置、通信リンク及び装置、サーバ、I/O装置を含む1又はそれ以上のプロセシングシステムでよいがこれに限定されず、又は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア又は本発明を実施するそれらの組み合わせ又はサブセットを含む1又はそれ以上のプロセシングシステムのサブ部品を含んでよいが、これに限定されない。使用者入力は、キーボード、マウス、ペン、音声、タッチパネル、押しボタン、又は他の手段から受けてよく、アプリケーションプログラムといった他のプログラムを介することも含め、それらによって人間がコンピュータにデータを入力できる。
【0094】
図14は、本発明の一例の実施に有用なコンピュータシステムのブロック図である。このコンピュータシステムは、プロセッサ1404といった1又はそれ以上のプロセッサを有する。プロセッサ1404は、通信インターフェイス1402(例えば、通信バス、クロスオーバーバー(cross−over bar)又はネットワーク)に接続されている。様々なソフトウェアの実施例が典型的なコンピュータシステムに関して記載される。本記載を読んだ後に、他のコンピュータシステム及び/又はコンピュータアーキテクチュアを使用した本発明の実施のやり方が当業者にとって明らかとなろう。
【0095】
コンピュータシステムは、ディスプレイユニット1410上で表示するために通信インターフェイス1402から(又は図示しないフレームバッファから)図形、テキスト、及び他のデータを送るディスプレイインターフェイス1408を含めることができる。また、コンピュータシステムは、メインメモリ1406、好適にはランダム・アクセス・メモリ(RAM)を有しており、さらには補助メモリ1412を有してよい。補助メモリ1412は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブ等を代表とするハードディスクドライブ1414及び/又はリムーバブル記憶ドライブ1416を含んでよい。リムーバブル記憶ドライブ1416は、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、光ディスク等に対して読み出し書き込みを行い、コンピュータソフトウェア及び/又はデータを記憶する。また、システムは、図示しない他のものとともに図14に示す全てのリソースを含む、ディスクドライブ、ディスクアレイ、テープドライブ、CPU、メモリ、有線及び無線通信インターフェイス、ディスプレイ及びディスプレイインターフェイスといった、リソースR1−Rnを管理するためのリソーステーブルを含んでもよい。
【0096】
代替的な実施例では、補助メモリ1412が、コンピュータプログラム又は他の命令をコンピュータシステムに取り込むことができる他の同じような手段を有してよい。このような手段は、例えば、リムーバブル記憶ユニット1422及びインターフェイス1420を含んでもよい。これらの例は、及びリムーバブル記憶ユニット1422からコンピュータシステムにソフトウェア及びデータを移送し得るプログラムカートリッジ及び(ビデオゲーム装置に見られるような)カートリッジインターフェイス、(EPROM、又はPROMといった)リムーバブルメモリチップ及び関連するソケット、他のリムーバブル記憶ユニット1422及びインターフェイス1420を含んでよい。
【0097】
また、コンピュータシステムは、通信インターフェイス1424を有してよい。通信インターフェイス1424は入力部及び出力部として機能して、ソフトウェア及びデータをコンピュータシステム及び外部装置間で移送できる。通信インターフェイス1424の例として、モデム、(イーサネット(登録商標)カードといった)ネットワークインターフェイス、通信ポート、PCMCIAスロット及びカード等を含めてよい。通信インターフェイス1424を介して移送されるソフトウェア及びデータは、例えば、電子、電磁、光、又は通信インターフェイス1424によって受信可能な他の信号の形式である。これらの信号は通信経路(すなわち、チャンネル)1426を介して通信インターフェイス1424に送信される。このチャンネル1426は信号を送るが、配線又はケーブル、光ファイバ、電話線、携帯電話のリンク、RFリンク、及び又は他の通信チャンネルを用いて実施してよい。
【0098】
本書では、「コンピュータプログラム媒体」、「コンピュータが使用可能な媒体」、及び「コンピュータが読み込み可能な媒体」という用語を、一般に、メインメモリ1406及び補助メモリ1412、取り外し可能な保存ドライブ1416、リムーバブル記憶ドライブ1416、ハードディスクドライブ1414に組み込まれたハードディスク、及び信号といった媒体に言及するために使用する。これらのコンピュータプログラム製品は、コンピュータシステムにソフトウェアを提供するための手段である。コンピュータの読み込み可能な媒体により、コンピュータシステムが、データ、命令、メッセージ又はメッセージパケット、及び他のコンピュータが読み込み可能な情報をコンピュータの読み込み可能な媒体から読み込むことができる。コンピュータが読み込み可能媒体は、例えば、フロッピー(登録商標)、ROM、フラッシュメモリ、ディスクドライブメモリ、CD−ROM、及び他の固定記憶装置といった不揮発性のメモリを含んでよい。例えば、データ及びコンピュータの命令といった情報をコンピュータシステム間で移送するのが有用である。さらに、コンピュータが読み込み可能な媒体は、コンピュータが読み込み可能な情報を読み込むことができる有線ネットワーク又は無線ネットワークを含むネットワークリンク及び/又はネットワークインターフェイスといった一時的な媒体にコンピュータが読み込み可能な情報を具えてよい。
【0099】
コンピュータプログラム(コンピュータ制御ロジックとも称する)は、メインメモリ1406及び/又は補助メモリ1402に記憶されている。また、コンピュータプログラムを通信インターフェイス1424を介して受け取ることができる。このようなコンピュータプログラムは、実行した場合、コンピュータシステムが本書に記載のような本発明の態様を実行できる。特に、コンピュータプログラムは、実行した場合、プロセッサ1404がコンピュータシステムの態様を実行できる。従って、このようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステムのコントローラを表す。
【0100】
図8は、本発明に係る携帯型のガス漏れ検知器900の典型的な実施例を示す。図9に示すように、上殻930及び下殻910が、それぞれねじ916によって組立てられて、小さくて、人間工学に基づく、扱い易いケースを形成する。センサ区画カバー940及び電源区画カバー950は、キャプチャーねじ942及び952によって、それぞれ下殻910に締結されて器具を包装し、センサ100及び電源960(例えば、AAバッテリ)の取り付け/取り外しを簡単にし易くする。殻910,930及び及びカバー940,950をプラスチック(ABS、ポリカーボネート、又は他の材質)で成型してもよい。
【0101】
上殻930は、器具の動作を制御するためのプラスチック又は他の材質から成る表面の押しボタン932及びそのばね934と、使用者に目に見える動作及び漏れ情報を提供するためのプラスチック又は他の材質から成る透明の光ファイバ936とを有している。当然ながら、本実施例は、単に典型例であって、他の動作制御が想定される。スピーカグリル938を上殻930の中(又は他の場所)に形成してもよく、使用者に可聴情報を伝達する。
【0102】
センサ区画918及び電源区画919を具えた下殻910を形成して(図12)、センサ100及び電源960をそれぞれ収容してもよい。バッテリ端子860を組み込んで、電源960のバッテリのターミナルに電気的に接触させてもよい。また、センサ100の入口ポート116及び出口ポート114をプローブ700のサンプリングホース750(図10)及び配管アッセンブリ610にそれぞれ接続する2つのガスコネクタ912及び914を下殻910の中に形成してもよい。
【0103】
プローブアッセンブリ700は、図10に示すように、鋼又は(柔軟性のために)他の湾曲した(gooseneckといった)材質から成るプローブ本体710と、器具にプローブアッセンブリを固定するためのアルミニウム又は他の材質から成るアンカーブッシュ720と、所定の位置にプローブキャップ740を固定するためのアルミニウム又は他の材質から成るねじを切ったブッシュ730とを有する。柔軟性のあるビニール又は他の材質から成るサンプリングホース750を、プローブ先端部から器具の中に流れる試料ガスのための通路を規定するためのプローブアッセンブリの長さ方向に沿ってねじ込んでもよい。ビニール又は他の材質から成るカバーを、表面の装飾のためにグースネック(gooseneck)の外側を覆うよう形成してもよい。フィルタが、ねじを切ったブッシュ730の中に収容され、プローブキャップ740によって所定の位置に保持されており、汚れ、埃、又は湿気がプローブホース750を通って器具の中に引き込まれるのを防いでいる。プローブアッセンブリ700が、アンカーブッシュ720及びねじ916の一つによって上殻930及び下殻910に固定されている。試料ホースの端部752が、ガス注入コネクタ912に取り付けられおり、試料ガスのセンサ100への流路を形成している。
【0104】
様々な電気的及び機械的な部品が、上殻930及び下殻910によって形成された空洞の中に収容されており、器具アッセンブリを形成している。これらは、回路基板アッセンブリ800と、吸引ポンプ600と、配管アッセンブリ610とを有する。吸引ポンプ600を器具900の本体の中に固定してもよく、あるいは、図9に示すように、回路基板アッセンブリ800上に取り付けて組み立て処理を簡単にしてもよい。
【0105】
また、上記のような吸引ポンプ600に加えて、回路基板アッセンブリ800が、電源960のバッテリ端子から回路基板アッセンブリの電子部品に電力を供給するためのバッテリ端子860のうちのいくつか又は全部と、センサ100のカードエッジ312を回路基板アッセンブリ800に電気的に接続するカードエッジコネクタ810と、器具900の動作を制御するための(押しボタン932に機械的に接続された)スイッチ852と、スピーカグリル938を通して使用者に音声情報を与えるためのスピーカ854と、光ファイバを介して使用者に目に見える情報を与えるためのLED表示部856と、を有してもよい。また、図9に示されていないが、アナログ信号前端部品820と、(内部のA/D変換器832と、PWM変換器834と、DSPソフトウェア836と、I/O838とを具えた)CPU部品830と、IR源ドライバ部品840と、を回路基板アッセンブリ800上に有している。カードエッジコネクタ810は、下殻910の開口部を通ってセンサ区画918の中に突出しており、センサ100のカードエッジ312と回路基板アッセンブリ800のカードエッジコネクタ810との間の電気的接続をし易くしている。
【0106】
ガス出口コネクタ914を、柔軟性のあるビニール又は他の材質のホース及び適切な取付具から成る配管アッセンブリ610を介して、吸引ポンプ600の入口ポートに接続してもよい。また、配管アッセンブリ610は、センサを通って引かれる試料ガスの流量を必要に応じて制限するための流量制限器又は他の機器といった他の器具を有している。配管アッセンブリ610は、センサ100の出口ポートからコネクタ914のガス出口コネクタ914を介した吸引ポンプ600への試料ガス流路を形成する。吸引ポンプ600の出口ポートが、器具900の本体の中に直接的に排出するか、あるいは、図示しない付加的な配管アッセンブリによって本体の外部に通じていてもよい。試料ガス流路を通る流量は、配管アッセンブリ610及び吸引ポンプ600の性能によって決まるが、迅速な検知のために十分高くなければならない一方で、わずかな漏れが薄まって検知を困難にするのを防ぐのに十分低くなければならない。例えば、100cm3/min(sandard cubic centimeters per minute)と500cm3/minとの間の流量が、検知スピードと感度との間の容認できる妥協点を与える。
【0107】
図11及び図12を参照すると、センサ100、又は電源960の器具900に対する取り外し及び交換が明りょうに図示されている。センサ100を交換するために、使用者は、キャプチャーねじ942を緩めて、センサ区画918のセンサ100を露出させることによって、センサ区画カバー940を取り外す。そして、使用者は、2つのねじ920を取り外して、センサ100をセンサ区画から自由に引き出すことができる。そして、新たなセンサをセンサ区画の所定の位置に押し付けて、センサ100のIR源カードエッジ312と回路基板800のカードエッジコネクタ810との電気接点を自動的に形成する。また、センサ100の入口及び出口ポート116と、器具900の下殻910のガス入口及び出口コネクタ912,914との間にガス接続が形成される。センサ100のシール210が、コネクタ912及び914へのポート116及び114のガスの締まり嵌めを確実にする。最後に、器具900にセンサ100を固定するねじ920を取り替えて、センサ区画カバーを所定の位置に取り付けてキャプチャーねじ942によって固定する。
【0108】
電力供給940バッテリを、同じような方法で交換する。使用者は、キャプチャーねじ952を緩めることによって電源供給区画カバー950を取り外し、電源供給960バッテリを露出させる。そして、消耗したバッテリを取り外して、新品のバッテリと交換する。最後に、電源供給区画カバー950を所定の位置に取り付けてキャプチャーねじ952によって固定する。
【0109】
ある実施例では、典型的な漏れ検知器具900の全ての動作態様を、電源オン、電源オフ、感度の変更、及びリセットを含む押しボタン932による単一のスイッチ852を介して使用者が制御する。動作状態を、光ファイバ936を介してLED表示器856によって視覚的に表示し、スピーカグリル938を通してスピーカ854によって音声的に報知する。
【0110】
器具900を動作させるために、使用者が押しボタン932を押すことで、電源オンのシーケンスが開始する。電源オンのシーケンスにより、吸引ポンプ600及び回路基板アッセンブリ800の全ての電子部品が作動するが、このシーケンスは、初めのウォームアップシーケンスと、これに続く自動較正シーケンスを有してよい。電源オンシーケンスの状態を、(走査パターンにより)LED表示器を介して視覚的及び(特定のパターンのビープ音により)スピーカを介して音声的に使用者に表示する。
【0111】
ウォームアップシーケンスの開始時に、1又は2段階のPWM834デューティサイクルを初期値に設定する。例えば、2段階PWMのファインPWMを80%に設定して、2段階PWMのコースPWMを25%に設定してもよい。これにより、IR源ドライバ840を介したIR源320の駆動を開始し、基準チャンバ122の中に音圧パルスを形成し、プリゲインフィルタPCBアッセンブリ400及びアナログ前端820を介してマイクロフォン510からA/D変換器832にAC電気信号を出力する。電子機器が安定化し、試料チャンバ112がプローブ700を通って引かれる周囲の空気(標的ガスのバックグラウンド汚染を含んでも又は含んでいなくてもよい)によって洗浄されると、この信号は、短い時間(1又は2秒)安定することができる。この時間周期が終わると、本器具が動作の較正シーケンスを開始する。
【0112】
ガス検知器具のダイナミック・レンジ(すなわち、精度良く測定可能なガス濃度の範囲)を最大限にするために、AD変換器832に与えられるAC信号の振幅を、変換器の最大入力可能範囲を越えないようできるだけ大きくする必要がある。例えば、A/D変換器が0から3VDCの入力電圧範囲を有する場合、変換器に与えられる信号の振幅は、3VACp−p(ピークトゥーピーク)を越えてはならない。PWM834のデューティサイクルの値を調整することによって、このような振幅を調整できる。動作し易くするために、器具のソフトウェアが、電源オンシーケンスの較正シーケンスの際にこれらの値を自動的に調整してもよい。このシーケンスは、一連の連続的な小さなステップから成っていてもよく、各ステップが最適動作に要するPWMデューティサイクル値のより近い近似をもたらす。この方法は、逐次比較法(Successive Approximation)と称される。
【0113】
逐次比較較正シーケンスの各ステップの間に、(Fast Digital Quadrature Detectionアルゴリズムを介して)AC電圧のRMS値(実効値)を演算し、この値を、最大のAC信号(例えば、〜3VACp−p)のRMS値を表すターゲット値と比較し、(計算値がターゲット値よりも小さい場合)コースPWMデューティサイクルを増加させるか、又は(計算値がターゲット値よりも大きい場合)コースPWMデューティサイクルを減少させるかの決定を行う。この手順は、コースPWM変換器の極限解像度に対して精緻に実行される。最後に、ファインPWMデューティサイクルを同じような方法で調整する。このような較正シーケンスが完了すると、最適なデューティサイクル値でコース及びファインPWMのそれぞれが動作して、A/D変換器に出力される最適な振幅のAC信号を生成する。最終的なRMSの計算値は、ターゲット値に適度に近く、「リセット」値;すなわち、周囲のバックグラウンド濃度よりも高い標的ガスの濃度が存在しない場合のセンサ信号を表す値としてCPUに記憶される。例えば、二酸化炭素ガス検知器のケースでは、これにより、350乃至400ppm又はそれ以上のバックグラウンド汚染が常に存在している場合でさえも、器具の最適な較正が可能となる。
【0114】
さらなる利点として、較正シーケンスの際に、センサ100及び器具がその仕様の範囲内で動作していることを判断することが可能である。センサが古くなると、IR源の劣化又は埃、試料チャンバ112の反射面又は窓150及び160の伝送面に集まる汚れ又は湿気といった、長期にわたる有害な影響が生じる。これらの影響は、長期にわたると、IR源から放出されて最適な振幅のA/C信号を生成するのに要する電力量の増加をもたらす。シーケンスの間に、コースPWMデューティサイクルが、IR源(例えば、40%)に安全に出力される値を越えたことが明らかとなった場合、(センサ及び/又は器具へのさらなるダメージを防ぐために)器具がIR源への電力を自動的に止めて、例えば、LED表示器及び音声アラームを介して問題を使用者に報知する。このような方法では、使用者が器具がその仕様の範囲内で動作していることを確認して、開始する前にセンサを交換するための機会を有する。典型的な漏れ検知器具では、デューティサイクル(コースPWMとファインPWMデューティサイクルとの積)の適切な動作範囲が、8%(新しいセンサ)と40%(古いセンサ)との間を変わることが明らかになっている。このような広い範囲により、センサの交換をしなくならなくなる前に、センサの著しい劣化が長期にわたって生じる。さらに、低い熱質量のIR源と組み合わせた(例えば、40%よりも低い)低いデューティサイクルにより、小さなAAバッテリを具えた場合であっても(最大20時間のバッテリの)長い電力供給(バッテリ)寿命が可能となる。
【0115】
ウォームアップ及び較正を有する電源オンのシーケンス全体は、実行するのにわずか10秒を必要とし、その後で器具が測定段階の動作を開始する。測定段階の開始時に、本器具は、「ハイ」レベルにその感度レベルを自動的に設定して、一定のビープ音及び点滅LEDを発して、器具が適切に機能していることを使用者に表示する。
【0116】
「ハイ」レベルの感度では、「リセット」RMS値よりも小さいRMS値を表す所定の閾値を選択する。試料チャンバの中の標的ガスの濃度が増加するときはいつでも、センサ信号のRMS値が閾値を下回って低下し、例えば、センサ信号RMS値が閾値を下回って低下する量に比例して警告のピッチ及び速さを増加させることによって、器具が使用者に報知する。また、LED表示器が同様な方法で点灯してもよい。使用者に警告する本方法は、濃度の増加が起きたことを注意する情報を提供するだけではなく、増加量の定性的な説明を与える。また、1又はそれ以上の低いレベルの感度である可能性があり、この場合にはあるレベルの警告を与えるために濃度の大きな変化を必要とする。事前にセットされた様々な感度を、(例えば、コンピュータのマウスの)押しボタン932の例えば「ダブルクリック」によって使用者が選択してもよい。代替的な実施例では、アナログポテンショメータ又はダイヤル式の制御装置を、連続的な範囲の感度によって器具を調整するよう設けることができる。
【0117】
さらに、使用者は、現状のレベルの濃度での警報を止めることで、器具がより高い濃度でのみ警報するよう選択してもよい。使用者は、押しボタンを素早く押すことによってこれを行うことができ、現在のセンサ信号のRMS値をCPUのメモリに記憶された予め「リセット」した値に変える。このような機能は、本書では「リセット」と称する。
【0118】
例えば、短い時間(例えば、1/2秒)押しボタンを押した状態を保持することによって、本器具の電源を切ってもよい。典型的な実施例では、一つの押しボタンによって制御される一方で、各々が1又はそれ以上の異なる機能を制御する複数の押しボタン又は制御部によっても全ての動作形態を制御できることに留意されたい。
【0119】
器具の動作中に、パラメータ及び環境の変化により、A/D変換器に出力されるAC信号が、試料チャンバの中の標的ガスの濃度が一定のままである場合でさえも、最適なターゲット値からゆっくりとドリフトする可能性がある。このような状況を、CPUによって認識でき、CPUがファインPWMデューティサイクルの値に対してゆっくりとした微調整を自動的に行って、最適な性能を維持する。
【0120】
上記の典型的な実施例における本器具の実際の適用は、ガス漏れ検知であり、加圧容器からのわずかなガス漏れを特定して場所を示さなければならない。一般に、技術者は、容器又は他の標的ガス源から離れて器具に電源を投入し、電源オンのシーケンスの完了を待つ。続いて、プローブの先端部を漏れが疑われる箇所(例えば、1/4インチ以内)にゆっくりと(例えば、1秒当たり2インチよりも遅い)移動させる。このような漏れが検出された場合、警報が漏れ(プローブの先端部でのガス濃度の増加)の存在を知らせる。大きな漏れのケースでは、使用者は器具の制御部を低い感度に変え、及び/又は「リセット」機能を使用して使用者が漏れの正確な場所をゼロに合わせることができる。漏れの正確な場所を知ることで、修復を行うことができ満足な状態を確認するために容器を再検査できる。
【0121】
図13は、本発明に係るさらに別の典型的な実施例;このケースでは、ガス監視器を示す。ガスの監視は、ガスの監視が特定の場所でのガス濃度を正確に計測しなければならない点で、ガス漏れ検知とは異なり、濃度が所定の制限値又は一組の制限値を越えた場合、使用者に警報を出す。ガス監視器は、一般に、長期間にわたって自律的に動作するものと見込まれており、ガス濃度の制限値を越える場合又はメンテナンスの目的のみに介入する必要がある。
【0122】
ガス監視器900は、監視器が動作すると見込まれる環境に適合する筺体の中に漏れ検知器具と同じように構成されている。それは、センサ100及びそれに対応する部品と、CPU830を具えたメインの回路基板800と、アナログ及びIR駆動部品820及び840と、ユーザインターフェイス850とを有している。ユーザインターフェイスは、LED及び/又はLCD表示器と、アレイと、ディスプレイと、音声信号装置(スピーカ)とを含む、漏れ検知装置と同じような表示装置を含んでよい。それは、1又はそれ以上の押しボタン、キーパッド、又は器具の動作を制御するための他の制御部を有してもよい。また、ホストコンピュータシステムによる遠隔制御、及びそれに続く処理、記憶、表示、又はガス濃度の情報の送信のために、配線又はネットワーク(ワイヤレス又はそれ以外)を介して、ユーザインターフェイスをホストコンピュータ又他の装置に接続してもよい。
【0123】
プローブアッセンブリ700を双方向のガス弁760(又は、代替的に作動する2又はそれ以上の一方向のガス弁)に代えてもよい。ガス弁の一方の取り入れ口は、標的ガス(例えば、外部の周囲空気)を含んでいないことが分かっている較正用ガス60のガス源に接続され、他方の取り入れ口は、監視50される環境ガスに接続される。弁の出口は、センサ100の入口ポート116に導かれることで、ガス50又は60を試料ホルダ112の中に導入する。CPUI/O838を介した制御信号762によりCPU830を用いて弁760を自動的に制御してもよく、ある動作モード(較正モード)において、較正用ガス60が試料チャンバ112の中に引き込まれ、別の動作モード(分析モード)では、環境ガス50が試料チャンバ112の中に引き込まれる。さらに別の実施例では、較正用ガス60が、ボンベ、ガスバッグ、又は他のガス源から送出される(ゼロ濃度を含む)既知の濃度の標的ガスでもよい。
【0124】
ガス監視器具900を、ガス濃度の情報を収集及び分析すべきエリアに設置してもよい。周期的(1分毎、時間毎、1日毎、又はそれよりも長く)又は連続的に、CPU830が測定周期を発生させてもよい。各測定周期は、動作の較正段階及び分析段階を有している。
【0125】
ある典型的な動作方法では、較正段階が、以下のステップを有している:すなわち、センサ100の試料チャンバ112の中に較正用ガス60を導入するよう弁760を切り替えるステップと;吸引ポンプ600をオンにすることで試料チャンバの中に較正用ガスを引き込むステップと;IR源ドライバ840を介したPWM834によりIR源320のウォームアップ及び較正サイクルを動作させる(これにより、較正用ガスの中の既知の濃度(ゼロでもよい)のガスの存在下で最適なセンサ信号をA/D変換器832に出力するPWMデューティサイクル値を判定する)ステップとを有する。(Fast Quadrature Detection アルゴリズムを介して計算される)得られるRMS信号を、較正用ガスの既知の濃度を表すRMS値として記憶してもよい。
【0126】
さらに別の動作方法における較正段階では、既知のガス濃度に関する最適なRMS信号を表す(製造時にプログラムされ、又は、手動又は自動較正サイクルによって予め記憶される)所定のPWMデューティサイクルを設定することで、各分析サイクルで較正用ガスをサンプリングする必要性を無くす。所定のRMS値は、前回の較正サイクルでサンプリングされる較正用ガスの濃度で見込まれるRMS信号を表す。
【0127】
較正段階が終了すると、分析段階の動作が開始される。CPU830により弁760を切り替えて、センサ100の中に環境ガス50を導入する。わずかな時間の後、環境ガスの存在下でのACセンサ波形の振幅を表す新たなRMS値を演算し、センサの設計及び/又は製造の際に予め決めた係数を使用して、Beer−Lambert式を適用することによって環境ガスの中の標的ガスの濃度を算出する。
【0128】
そして、ユーザインタフェイスによってガス濃度が表示され、ホストコンピュータに送信され、及び/又は1又はそれ以上の予めプログラムした設定点と比較することで、ガス濃度がこのようなレベルを越える場合に使用者に報知するよう警告を作動させる。
【0129】
最後に、CPUが器具の電源をオフして電力供給エネルギを節約し、次の分析周期を待つ。
【0130】
上記の例及び実施例は単に説明のためであって、それに関する様々な変形又は変更を当業者に示唆し、これらが本願の精神及び範囲内に含まれることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0131】
添付図面は、別の視野にわたった同じ符号が同一又は機能的に類似する要素に言及しており、上記の詳細な説明とともに明細に盛り込まれてその一部を形成しており、様々な実施例のさらなる説明をする働きをし、本発明に係る様々な原理及び利点を説明する。
【0132】
【図1】図1は、本発明に係る赤外線吸収光音響式ガスセンサの斜視図である。
【図2】図2は、図1の赤外線吸収光音響式ガスセンサの断面図である。
【図3】図3は、図1及び図2のガスセンサの基準チャンバ側の斜視図である。
【図4】図4は、図1及び図2のガスセンサの試料チャンバ側の斜視図である。
【図5】図5は、図1,2,3及び4のガスセンサの分解斜視図である。
【図6】図6は、本発明に係る赤外線吸収光音響式ガスセンサを使用したガス検知システムの部品の構造を示すブロック回路図である。
【図7】図7は、本発明に係るガス検知システムの赤外線源に出力される変動デューティサイクルの方形波信号を生成するための単段及び2段パルス幅変調を比較した1組のグラフである。
【図8】図8は、本発明に係る携帯型ガス漏れ検知器具の典型的な実施例の斜視図である。
【図9】図9は、図8の器具の分解斜視図である。
【図10】図10は、図8の器具のプローブアッセンブリの斜視図である。
【図11】図11は、図8の器具の下部側の斜視図であり、センサ及び電源カバーが取り外された状態を示す。
【図12】図12は、図8の器具の下部側の斜視図且つ部分分解図であり、センサ及び電源カバーが取り外された状態を示す。
【図13】図13は、本発明に係る赤外線吸収光音響式ガスセンサを用いたガス監視システムの部品の構造を示すブロック回路図である。
【図14】図14は、本発明に係るシステム及び方法に使用するコンピュータの典型的な構造を示すブロック回路図である。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年5月7日に出願され、開示全体が参照することにより全体として本書に盛り込まれている米国仮出願第60/928,000号の35 U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張する。
【0002】
本発明は、非分散型赤外線吸収(NDIR)に基づくガス検知の分野に属する。
【背景技術】
【0003】
NDIR技術が、好適なガス検知の方法として長年にわたって存在している。この技術は、ガスが、特定の波長の赤外線のエネルギ(光)を吸収し、異なるガスが異なる波長の吸収ピークを有するという事実による。このような吸収は、Beer−Lambert則に従って生じる:すなわち、
であり、ここで、Tは透過率、I0はガス試料に与えられる(特定の波長における)IRエネルギ強度、I1はガス試料によって伝送されるIRエネルギ強度、αはガスの吸収係数、lは経路長である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
少なくとも2のタイプのNDIRガス検知システムが今日使用されている:すなわち、Absorptive Infrared Detection(AID)及びPhoto−acoustic Infrared Detection(PID)である。これら2つの赤外線検知の方法の説明が、MSAのAllan Roczkoによる「Photo−acoustic Infrared Technology for Detection of Refrigerant Gases」に見られ、参照することにより全体として本書に盛り込まれている。2つの技術には顕著な差がある:AIDシステムはガス濃度が増加すると信号が低下し、PIDシステムはガス濃度が増加すると信号が増加する。それぞれのタイプの赤外線検知には、大きな欠点がある。
【0005】
吸収赤外線検知(Absorptive Infrared Detection)の問題点
【0006】
例えば、AIDに特有な問題点は、検知速さ及び安定性である。様々な形態の焦電デバイス(例えば、熱電対、測温体)が、一般に使用されており、温度(又は温度変化又は温度差)に比例する電気信号を発生させることによって、入射赤外線エネルギを電気信号に変換する。これらのデバイスは、一般に、大きな熱質量を有するため、検知器が入射エネルギの変化を検知できる速さを制限する。さらに、これらの器具は、赤外線エネルギではなく主に熱を検知するため(熱は、赤外線エネルギの吸収によって発生する副次的効果である)、周囲の状況(ウォーミングアップ、周囲の温度変化、機械的振動等)の変化を原因とするドリフト及びノイズの影響を受け易い。
【0007】
周囲のノイズ源を減らしたり拒絶するために様々な方法が採用されている。このような方法の一つは、2つの検知器を一方を基準用として他方を試料用として使用することである。試料用検知器の信号から基準用検知器の信号を差し引くことによって、一般的なモードの影響(例えば、周囲の温度、機械的なノイズ等)を減らしたり又は除去して、異なるモードの効果(すなわち、実信号)を高めている。周囲の状況によるドリフトを抑える(又は除去する)別の方法は、「光チョッピング」方式を使用することである。IR源への出力が低周波数で変調されて(電気的なチョッピング)断続的な周期の赤外光が発生するか、又は機械式チョッピングホイール(機械的なチョッピング)を使用して、赤外光を周期的に遮断する。これにより交流(AC)信号が熱電対から出力されて、直流(DC)に戻すよう変換されるのに先だってフィルタ処理及び増幅される。一般的に、「ロックイン」(同期)増幅器を使用して、チョッピング周波数の電気信号のみをDCに変換し、長い時間周期にわたって信号を平均化してドリフトする自由信号を発生させる。より大きなノイズ特性に対してであっても、チョッピングを上記のような試料/基準方式とともに使用できる。
【0008】
都合の悪いことに、上記の方法には問題がある。試料/基準方式は、2つの光路及び検知器を要し、検知器自身を慎重に合わせて較正する必要がある。さらに、最終的な信号を形成する成分を差し引くのに先だって、信号ゲイン及び調整のために(調和した)2つの電子機器を必要とする。このような二重構造により、単一チャンネル検知器よりも2倍以上の最終コストとなる。
【0009】
チョッピング方式は、ドリフトを大いに減らすが、それ自身の欠点を有する。一般に、IR源は大きな熱質量を有しており、電気的チョッピングを1Hz付近に制限する。このため、高価で信頼性のない機械式チョッパを時として使用し、チョッピング速さを増加させる。(最大25Hz又はそれ以上の)高周波数で動作可能な低熱質量のIR源が存在するが、使用するチョッピング方式に拘わらず、熱電対検知器は一般に要素を制限する。これらの検知器は、一般に数ヘルツよりも大きい周波数で変調されたIR信号を減衰させる。
【0010】
AC信号をDC信号に戻すよう変換するのに要する同期増幅器は、それ自身の問題の原因となっている。まず、位相ノイズ、すなわちアンプに出力される電気信号の位相変化による一つのドリフト影響を受けやすい。位相ノイズは、時間又は周囲の状況の変化によるアナログ成分値が変化する場合に生じる。第2に、同期アンプの出力は、入力信号の多くの周期を越える時定数を具えたローパスフィルタである。これにより、入力状態の早い変化に対して非常にゆっくりとした変動出力となる。
【0011】
光音響式赤外線検知(Photo−acoustic Infrared Detection)の問題点
【0012】
まず、光音響式赤外線検知は、赤外光の(電気的又は機械的パルスの)AC源を要し、上記のような全ての欠点を具えることに留意されたい。しかしながら、より大事なことは、PIDは、ガスが帯域制限された赤外放射源によって照射される試料チャンバを断続的にシール及び空気抜きすることを要することである。換言すれば、多くの機械式バルブを使用してセルの中に試料ガスを交互に流し、音響測定が行われる間、入口及び出口を閉止しなければならない。当然ながら、これは多くの意味を有する。はっきりと言えば、コストが、電気的に作動する機械式バルブに使用によって大きな影響を受ける。また、バルブを駆動させるのに必要な出力が問題である。結局、測定はバルブが閉止位置にある間のみ行うことができ、連続的な分析の可能性をなくしている。これは、装置が長い時間周期にわたってガス濃度のゆっくりとした変化を探知する監視型システムに適しているであろうが、それは、短い時間周期にわたる急激な変化を検知しなければならない漏れ検知装置として満足できないであろう。
【0013】
さらに、定量的な適用(すなわち、ガスの監視)のために、このような器具の較正が、少なくとも1の既知の濃度の標的ガスのその場での頻繁なサンプリングを要する。このような要求は、標的ガスが存在しない場合に検知器が信号を出力しないという事実によるものであり、所定の濃度の標的ガスに関する出力の大きさ、IR源のIR出力に対して変化し(時間とともに低下する)、さらには、成分のパラメータが時間とともに又は温度により変化する。較正用ガス試料は、高価で、遠隔地で入手するのが難しく、有害(例えば、有毒性、爆発性)である。
【0014】
双方の技術の問題点
【0015】
双方の技術の主要な問題点は、問題になっているガスに関する関心のある帯域に赤外線エネルギを帯域制限するための光学フィルタを要することである。まず、これらのフィルタは高価である。さらに、最も優れた通過帯域のスペクトルでさえ、問題となっているガスの吸収スペクトルに正確に適合しないため、検知器の選択性及び感度を減らす。さらに、このようなフィルタの通過帯域のスペクトルは、製造プロセス、温度、湿度、及び時間のそれぞれによるばらつきを免れない。
【0016】
さらに、双方の技術は、作動させるのに相当な電気的出力を要する。上記のような光学フィルタは、関心のある通過帯域でさえも赤外線エネルギを100%透過しないため、IR検知器(熱電対又は試料ガスチャンバ)に最終的に達するエネルギは、検知信号をノイズよりも高く上げるのに十分であるように、十分な出力をIR源に供給しなければならない。また、AC様式に使用する機械式チョッパ、光音響構造に使用するバルブは、相当な出力を消費し機械式装置のように本質的に信頼性がない。
【0017】
ある「赤外線漏れ検知器」が、Williamsによる米国特許番号第7,022,993号に記載されている。’993特許の開示に従って作成された装置は、「PredatIR」IR Refrigerant Leak Detectorとして販売されている。PredatIR装置の取扱説明書が、参照することにより全体として本書に盛り込まれている。’993特許に開示された検知器は、非参照型、非チョップの、吸収赤外線検知を使用した漏れ検知器でしかない。この検知器は、検知器から取得される得られる信号を安定化させるための方法を使用しない(あるいは、説明はこのような安定化を開示していない)。このため、’993装置が試料チャンバの中の関心のあるガスの濃度を定量化する可能性のある方法はない。
【0018】
’993特許全体を通して、明りょうな目的は、関心のあるガスが試料チャンバを通過することによって発生する光信号の変化を判定するための低コストの方法を創り出すことである。その明細書は、’993特許がDC(非チョッパ)赤外線エネルギ及び信号エッジを検出するためのアナログ微分回路の使用によって迅速な検知をもたらすことを具体的に示している。標的ガスの検知が、’993装置の使用をもたらす一方で、’993発明は、例えば、不十分なウォーミングアップ、電気ノイズ、又は他の周囲ノイズ源といった環境状態の急激な変化により頻繁に起きる誤った表示の影響を受けやすい。’993の明細書は、本装置が「低出力」であることを主張しているにも拘わらず、実際には、’993のIR源に電力を供給するのに要するDCエネルギが電気式チョップシステムの少なくとも2倍の出力を要する。その好適な実施例が、わずか4乃至5時間動作するのに12Vの再充電可能なNi−Cdバッテリを要するという点で、自明である。’993発明の安定性の不足は、好適な実施例がユニットに電源を投入してから2分のウォーミングアップの時間を要するという事実からも明らかである。
【0019】
また、重要なことに、DCでIR源を作動させることはIR源の寿命に著しく影響を与える。当業者は、IR源のエネルギ出力が時間とともに低下し、このような低下率がIR源によって消費される出力に関連することを知っている。例えば、50%の能率(AC)で動作するIR源は、100%の能率(DC)で動作するIR源よりも長く動作すると見込まれる。
【0020】
’993開示で記載された全ての実施例では、関心のあるガスに基づいて特定の波長用に特別に作られた光学フィルタを要する。さらなる問題点として、’993装置は、1Hz/2Hzのアラーム機能から明らかなように、ゼロ又は空値制御の形式で手動によるユーザの関与を要する。
【0021】
「Refrigerant Impurity Analyzer」が、Liebermannによる米国特許第5,498,873号に記載されている。’873Analyzerは、あるタイプの冷却剤のサンプルに、別のタイプの冷却剤が混入していることを判定するための装置である。本装置は、IR源として標準的な白熱電球を使用し、試料用冷却剤が流れる第1のチャンバに続いて、問題となっている汚染ガスを充填した第2のチャンバを使用することによって、光学フィルタを必要としない。圧電部品を使用して第2のチャンバにける圧力変化(音響エネルギ)を検出する。この圧力変化は、ガスによって吸収される波長を含む放射が第2のチャンバに入った場合のみ生じる。汚染した冷却剤を含むガスが第1のチャンバに入ると、問題となっている波長を吸収して、第2のチャンバにおける圧力の変化の減少をもたらす。このため、実際の光音響センサとは異なり、第1のチャンバの混入物の濃度に対して信号出力が減少する。’873特許に記載された解析のセンサは、光音響原理を使用する赤外線吸収式センサの性質を有する一方で、光学フィルタを製造する必要性をなくしている(第2のチャンバのガスが第1の機構及び検知機構の双方として機能する)。
【0022】
’873装置の2つの有益な特性がある:特別な光学フィルタは、上記のような光音響方法で要するバルブを要しない。それにもかかわらず、’873の構造は顕著な問題を有している。第1に、白熱電球のガラスが問題となっている大部分のIRエネルギを吸収する。このため、十分な検知のため電球を駆動するのに大量の電力を必要とする。第2に、電球の熱時定数が非常に長い。このため、パルス繰り返し数が1Hz又はそれよりも低く滞まらなければならず、検知が遅くなる。第3に、音響エネルギが、大きくて高インピーダンスの圧電装置を介して電気信号に変換される。このような装置は、電球のゆっくりとした電気式チョッピング速さよりも、高周波の機械的ノイズ及び大気圧の急激な変化に対してはるかに感度が高い。このため、1Hzの信号を回収するのにセンサ出力の顕著なローパスフィルタリングを必要とする。第4に、センサが物理的に大きく、(ノイズの問題が及ぼすにも拘わらず)携帯型の装置に適用できない。部品の大きな表面積により、長期間にわたって第2のチャンバに基準ガスを収容するのは難しい。
【0023】
上記に基づいて、一般に、IRガスセンサ技術を改善する必要性のあるのが明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
全てのガスセンサと同様に、新たなIRセンサ技術は、少なくとも以下の特徴を必要とするであろう。
高選択性−センサは目的とするガスのみに反応し、特定の場所の空気に混入する他のガスに反応しない必要がある(Williamsによるものとは異なる);
高感度−標的ガスの非常にわずかな濃度を検知するセンサの性能(Liebermannによるものとは異なる);
長寿命−センサは、長い動作時間及び長い保存期間の双方を示す必要がある(Williamsによるものとは異なる)。
さらに、監視型の適用のために、以下の特性が以下のIRセンサ技術を改善する:
長期の安定性−センサ出力は同じ入力条件について長期間わたって安定している必要がある(Williams及び従来のPIDによるものとは異なる);
参照特性−標的ガスの濃度を定量化するために、既知の濃度(理想的にはゼロ濃度)の試料に対して比較する必要がある(Williams及び従来のPIDによるものとは異なる);
その場(in situ)での較正は行わない−精度良い動作のために較正したガス試料を必要とすべきではない(Williams及び従来のPIDによるものとは異なる);
標的ガスの絶対的な濃度を検知する特性(Williamsによるものとは異なる)。 結局、携帯型漏れ検知への適用のために、以下の特性が従来のIRセンサ技術のさらなる改良点である;
迅速な検知時間−本装置は、1秒よりも短い時間で濃度の小さな変化を使用者に報知しなければならない(Liebermann及び従来のPIDによるものとは異なる);
迅速なクリア時間−本装置は、標的ガスがこれ以上存在しないとき又は所定の閾値よりも小さい濃度となった後に、1秒以内で表示を終わらせる必要がある(Williams及び従来のPIDによるものとは異なる);
(ノイズに対する)短期の安定性−標的ガス濃度の変化のみが出力信号の変化の原因となり、周囲の状況又は電気的又は機械的ノイズを変えない(Williamsによるものとは異なる);
極めて低出力−本装置は、小さくて一般的に入手可能なアルカリ電池(例えば、AAA−又はAA−サイズのバッテリ)で長時間(15時間よりも長く)動作し得る必要がある(Liebermann、Williams、従来のPID、及び従来のAIDによるものとは異なる);
迅速なウォーミングアップ−本機器は、電源投入後10分以内でその仕様を実行する必要がある(Williamsによるものとは異なる);
小型−本機器は片手で使うのに十分小さくて軽量でなければならない(Williamsによるものとは異なる);
全自動化−使用するための電源オンから電源オフまで、使用者は、本機器を手動でゼロにするか又は較正すべきではない;また、本機器は特定の場所の空気のバックグラウンド汚染を自動的に無視すべきである(Williamsによるものとは異なる);
広いダイナミックレンジ−検知器は、小さい濃度変化及び大きな濃度変化の双方を識別し得るべきであり、(a)小さな漏れを見付け(b)大きな漏れに狙いを定める性能を使用者に与える;
低コスト−本検知器は、可能な限りより低コストであるべきで、すなわち、高価な光学フィルタを無くすべきである(Williams及び従来のPID/AIDによるものとは異なる)。
【0025】
本発明に係る独創的なシステムは、全ての携帯型の形式において以下の有益な特性を提供する。
高選択性−本発明のセンサは目的とするガスのみに反応し、特定の場所の空気に混入する他のガスに反応しない;
高感度−本発明のセンサは標的ガスの非常にわずかな濃度を検知し得る;
長寿命−本発明のセンサは、長い動作時間及び長い保存期間の双方を示す;
長期の安定性−本発明に係るセンサの出力は同じ入力条件について長期間わたって安定している;
参照特性−独創的な装置は、測定される標的ガスと既知の濃度(ゼロ濃度)の試料とを比較して、標的ガスの濃度を定量化し得る;
較正不要−本発明の正確な動作のためにガス試料を較正する必要がない;
標的ガスの濃度を精度良く定量化する性能;
迅速な応答時間−本発明の装置は、1秒よりも短い時間で濃度のわずかな変化を使用者に報知し得る;
(ノイズに対する)短期の安定性−標的ガス濃度の変化のみが本発明に係る出力信号の変化の原因となり、周囲の状況又は電気的又は機械的ノイズの変化は出力信号の変化の原因とはならない;
極めて低出力−本発明に係る装置は、AA−サイズのバッテリといった一般的に入手可能なアルカリ電池で15時間よりも長く動作し得る;
迅速なウォーミングアップ−本発明に係る機器は、電源投入後10分以内でその仕様を実行する;
小型−本発明に係る機器は、片手で使用できる;
全自動化−使用するための電源オンから電源オフまで、本発明の使用者は、本発明に係る機器を手動でゼロにするか又は較正しなくてよく、本機器は特定の場所の空気のバックグラウンド汚染を自動的に無視する;
広いダイナミックレンジ−本発明に係る検知器は、小さい濃度変化及び大きな濃度変化の双方を識別して、使用者は、小さな漏れを見付け、大きな漏れに狙いを定め得る;
低コスト−本発明に係る検知器は、高価な光学フィルタを必要としないため、低コストである。
【0026】
上述及び視野内の他の目的で、少なくとも1の所定のガスの存在を検出するための本発明に係るガスセンサが提供されており、このガスセンサは、IR源と、マイクロフォンと、検知すべき少なくとも1の所定のガスと実質的に同じである基準ガスと、マイクロフォンに通じる圧力ポートを有する基準チャンバを中に規定する基準ボディと、所定のガスの吸収ピークに対応する少なくともIR波長が透過する広帯域の透光窓であって、IR源と基準チャンバとの間に置かれた透光窓と、を具えており、基準ガスが透光窓とマイクロフォンとの間の基準チャンバの中に収容される。
【0027】
本発明の別の態様によれば、IR源が低熱質量である。
【0028】
本発明のさらに別の態様によれば、IR源と試料ガスとの間に置かれた第2の広帯域の透光窓をさらに具えており、試料ガスからIR源を隔離する。
【0029】
本発明のさらに別の態様によれば、第2の透光窓が上流側のIR窓であり、透光窓が下流側のIR窓である。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、圧力ポートがマイクロフォンに音響的に接続されている。
【0031】
本発明のさらに別の態様によれば、上流側及び下流側の窓が、サファイヤ、フッ化カルシウム、セレン化亜鉛、シリコン、及びゲルマニウムから成る群のうちの1である。特に、上流側及び下流側の窓を、上流側及び下流側の窓によって伝送されるIRエネルギバンドを狭くするようコーティングし得る。
【0032】
本発明のさらに別の態様によれば、IR源に動作可能に結合され、ガス検知器具に繋がれる電気接点を有する第1のプリント回路基板と、マイクロフォンに動作可能に結合され、アクティブフィルタ回路及び第1のプリント回路基板に電気的に接続された接点を有する第2のプリント回路基板と、が設けられている。
【0033】
本発明のさらに別の態様によれば、マニホールドが、基準ボディに結合され、基準チャンバに隣接する試料チャンバを規定しており、試料チャンバが試料ガスを導入及び排出するための入口ポート及び出口ポートを有し、IR源が、試料チャンバの中の試料ガスを介してIRエネルギを導くよう配置される。
【0034】
本発明のさらに別の態様によれば、IR源と試料チャンバとの間に設置され、IR源から発生したIRエネルギを試料ガスに与える第2の広帯域の透光窓を具えており、第2の透光窓が上流側のIR窓で透光窓が下流側のIR窓であり、IR源が、まず上流側の窓を介して、その次に試料チャンバの中の試料ガスを介して、さらに下流側の窓を介して基準ガスの中にIRエネルギを導くよう配置されている。
【0035】
本発明のさらに別の態様によれば、試料チャンバが、研磨、メッキ、及び金メッキのうちの少なくとも1を施したものであり及び/又は基準チャンバが、研磨、メッキ、及び金メッキのうちの少なくとも1を施したものである。
【0036】
本発明のさらに別の態様によれば、IR源がPWM波形で駆動されるよう動作可能であり、PWM波形発生器がIR源に動作可能に結合されている。PWM波形発生器が単段発生器又は二段発生器とすることができる。
【0037】
本発明のさらに別の態様によれば、基準ガスが二酸化炭素である。
【0038】
本発明のさらに別の態様によれば、マイクロフォンがエレクトレット・コンデンサ・マイクロフォンである。
【0039】
本発明のさらに別の態様によれば、携帯型ガス検知器具が、基準ボディに結合され、基準チャンバに隣接する試料チャンバを規定するマニホールドを有している。試料チャンバが試料ガスを導入及び排出するための入口ポート及び出口ポートを有している。IR源が試料チャンバの中に試料ガスを介してIRエネルギを導くよう配置されている。また、IR源に動作可能に結合され、IR源に電気的に接続されてガス検知器具に繋がれる第1の接点を有する第1のプリント回路基板と、マイクロフォンに動作可能に結合され、アクティブフィルタ回路及び第1のプリント回路基板に電気的に接続された第2の接点を有する第2のプリント回路基板と、を有している。さらに、電源と、電源に動作可能に結合された回路基板アッセンブリと、を有している。回路基板アッセンブリは、第1及び第2のプリント回路基板に動作可能に接続されたセンサ回路を有している。吸引ポンプが、入口ポート及び出口ポートの少なくとも一方に流体的に接続されている。また、回路基板は、IR源、センサ、及びポンプのうちの少なくとも1を動作させるための制御部と、器具の状態を示すための表示部と、入口ポートに流体的に接続された管腔を規定するプローブと、に接続されている。外殻が、IR源、マイクロフォン、基準ボディ、上流側及び下流側の透光窓を中に嵌め込む大きさのセンサ区画と、電源を中に嵌め込む大きさの電源区画と、を規定する。
【0040】
本発明のさらに別の態様によれば、ガス検知器具がガス漏れ検知器具及びガス監視器具のうちの一方である。
【0041】
本発明の視野内の目的で、少なくとも1の所定のガスの存在を検出するためのガスセンサが提供されており、このガスセンサは、IR源と、マイクロフォンと、検知すべき少なくとも1の所定のガスと実質的に同じである基準ガスと、マイクロフォンに通じる圧力ポートを有する基準チャンバを中に規定する基準ボディと、基準ボディに結合され、基準チャンバに隣接する試料チャンバを規定するマニホールドであって、試料チャンバが試料ガスを導入及び排出するための入口ポート及び出口ポートを有するマニホールドと、基準チャンバと試料チャンバとの間に置かれ、IR源と基準チャンバとの間に置かれた下流側広帯域透光窓であって、所定のガスの吸収ピークに対応する少なくともIR波長が透過し、基準ガスが下流側透光窓とマイクロフォンとの間の基準チャンバの中に収容される下流側広帯域透光窓と、IR源と試料チャンバとの間に配置され試料ガスからIR源を隔離する上流側広帯域透光窓と、まず上流側の窓を介して、その次に試料チャンバの中の試料ガスを介して、さらに下流側の窓を介して基準ガスの中にIRエネルギを導くよう配置されたIR源と、IR源に動作可能に結合され、ガス検知器具に繋げられる電気接点を有する第1のプリント回路基板と、マイクロフォンに動作可能に結合され、アクティブフィルタ回路及び第1のプリント回路基板に電気的に接続された接点を有する第2のプリント回路基板と、を具える。
【0042】
また、本発明の視野内の目的で、携帯型ガス検知器具が、電源と、ガスセンサを中に嵌め込む大きさのセンサ区画と、電源を中に嵌め込む大きさの電源区画と、を規定する外殻と、電源に動作可能に結合された回路基板アッセンブリであって、第1及び第2のプリント回路基板に動作可能に接続されたセンサ回路と、入口ポート及び出口ポートの少なくとも一方に流体的に接続された吸引ポンプと、IR源、センサ、及びポンプのうちの少なくとも1を動作させるための制御部と、器具の状態を示すための表示部と、を有する回路基板アッセンブリと、入口ポートに流体的に接続された管腔を規定するプローブと、を具える。
【0043】
本発明の特徴として考えられる他の態様は、添付の特許請求の範囲で示されている。
【0044】
吸光−光音響検知を用いた低出力且つ高速の赤外線ガスセンサ、携帯型ガス漏れ検知器、及びガス監視器での実施として本発明を本書で図示且つ説明するが、それにもかかわらず、本発明の精神及び特許請求の範囲に相当する範囲及び領域から逸脱することなしに、様々な改良及び構造上の変更を行ってもよいため、示される明細に限定することを意図するものではない。
【0045】
しかしながら、本発明の構造及び動作方法は、その追加的な目的及び利点とともに、添付図面とともに読んだ場合、以下の特定の実施例の記載から良く理解されるであろう。
【0046】
必要に応じて、本発明の詳細な実施例を本書で開示する;しかしながら、開示された実施例は、様々な形態で実施し得る本発明の典型例に過ぎないことに留意されたい。このため、本書で詳細に開示されている特定の構造及び機能は、限定するものとして解釈されるものではなく、特許請求の範囲の根拠として、及び、適切に詳細な構造で事実上本発明を様々に使用する当業者に示唆するためのそれぞれの根拠として、単に解釈される。さらに、本書で使用する用語及び語句は、限定を意図するものではなく;むしろ、本発明の分かり易い説明を与えるものである。本書は、新規なものとされる本発明の特徴を規定する特許請求の範囲で始まっているが、同様の符号が繰り越される図面とともに以下の記載を考慮して、本発明がより良く理解されるであろうと考えられる。
【0047】
本書で使用する「a」又は「an」という用語は、1よりもむしろ1又はそれ以上として定義される。本書で使用する「複数」という用語は、2よりもむしろ2又はそれ以上として規定される。本書で使用する「別の」という用語は、少なくとも2又はそれ以上として定義される。本書で使用する「含む」及び/又は「有する」という用語は、具えるとして定義される。本書で使用する「結合される」という用語は、必ずしも直接的、及び必ずしも機械的ではないが、接続されるとして規定される。
【0048】
本書で使用するように、「約」又は「ほぼ」という用語は、明示的に示されているかどうかに拘わらず全ての数値の適用する。これらの用語は、当業者が引用された値に相当する(すなわち、同じ機能又は計算結果を有する)ものと考えるであろう数の範囲に言及する。多くの例では、これらの用語が、有効数字に四捨五入される数を有してよい。本書では、「長手方向」という用語を、典型的な円筒形のセンサアッセンブリの軸に一致する方向を意味するとして理解すべきである。本書で使用する「プログラム」、「コンピュータプログラム」、「コンピュータアルゴリズム」、「ソフトウェアアプリケーション」等の用語は、コンピュータシステム、マイクロプロセッサ、又はマイクロコントローラで実行するよう設計された一連の命令として定義される。「プログラム」、「コンピュータプログラム」、「コンピュータアルゴリズム」、又は「ソフトウェアアプリケーション」は、サブルーチン、関数、手順(procedure)、オブジェクト手法(object method)、オブジェクト実装、実行可能なアプリケーション、アプレット、サーブレット、ソースコード、オブジェクトコード、共用ライブラリ/動的ローディングライブラリ(dynamic load library)及び/又はコンピュータシステム、マイクロプロセッサ、又はマイクロコントローラで実行するよう設計された他の命令シーケンスを含んでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明に係る詳細な実施例が本書に開示されているが;開示した実施例は様々な形式で実施可能な本発明の単なる一例であることに留意されたい。このため、本書で詳細に開示されている特定の構造及び機能は、限定するものとして解釈されるものではなく、特許請求の範囲の根拠として、及び、適切に詳細な構造で事実上本発明を様々に使用する当業者に示唆するためのそれぞれの根拠として、単に解釈される。さらに、本書で使用する用語及び語句は、限定を意図するものではなく;むしろ、本発明の分かり易い説明を与えるものである。
【0050】
本書の実施例は、IRガス検知が可能な様々な技術を使用して幅広い方法で実施可能である。ここで、図1から図5を参照すると、センサアッセンブリ100が示されており、このセンサアッセンブリ100は、マニホールド110、基準ボディ120、及び2つのエンドキャップ130,140の4つの機械加工部品から成る。これらの部品は、2〜3例を挙げると、機械加工のし易さ、コスト、防錆といった固有の特性により、典型的な実施例ではそれぞれ真鍮製である。当然ながら、非常に低コストな適用として、アルムニウム、鋼、又は成型プラスチックといった他の材質を使用できる。機械加工された部品の間に、PCBアッセンブリ300、プリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400、マイクロフォンアッセンブリ500、1又はそれ以上の透光窓150,160、様々なガスケット170,180,190、及びナイロンの碍子200が入っている。これらの部品は、例えば図5に良く示すように、それぞれの側から各締結具セット220(例えば、#4−40丸頭小ねじ)で一緒に固定される。各締結具セット220を、基準ボディ120のねじの中に回し込まれる3本のねじボルトのサークルパターンで構成できる。センサアッセンブリ100の全体の長手方向の長さが約50mm(2”)の典型的な実施例では、マニホールド側のねじ220が1.25インチの長さで、基準ボディ120側のねじが0.25インチの長さである。締結具220として鋼、アルミニウム又は他の適切な材質を選択してもよい。
【0051】
出口ポート114に取り付けられた吸引ポンプ600により入口ポート116を通って引き込まれる試料ガス50が通る試料チャンバ112が、マニホールド110の中に機械加工されている。例えば、図6を参照されたい。試料ガス50として、不純物を含んでいる環境空気が可能であり、又はテストすべきガスが可能である。プローブアッセンブリ700が入口ポート116に取り付けられている。試料ガス引き込みプローブアッセンブリ700及び吸引ポンプ600のための気密取付具は、各ポート114,116の中に挿入されるシール210(例えば、Oリング)とすることができる。試料チャンバ112の長さ方向への最大IRエネルギ113の伝送を確実にするために、試料チャンバ112の内側の面を、研磨及び/又は金のような反射材料でめっきしてもよい。マニホールド110は、2つの締結具920(例えば、M2の丸頭小ねじ)が取り付けたセンサ110をガス検知具900の中に固定するための2つの取り付け穴118を有している(図9及び図12参照)。
【0052】
IR源PCBアッセンブリ300が、マニホールド110の入り口ポートの端部に配置されている。IR源PCBアッセンブリ300は、IR源320が取り付けられたプリント回路基板310(IR源PCB)を有している。PCB310は、エンドキャップ130のうちの一方によって所定の位置に保持されており、ナイロンの碍子200によってエンドキャップ及びマニホールドに対して電気的に絶縁されている。IR源320と試料チャンバ112との間に、シール170(例えば、ブナN、NBR、又はこれに似たゴムのガスケット)と共にIRが透過する透光窓150(例えば、9.5mmの直径で0.5mm厚のサファイヤ又は他の材質の透光窓)を使用して、試料ガス50をIR源320から隔離してもよい。代替的に、窓150を既に取り付けたIR源320を入手してもよく、ガスケット170の必要性を減らす。試料ガス50をIR源320から必ずしも隔離しなくてもよいケースでは、窓150及び/又はガスケット170を無くすことができる。
【0053】
IR源PCB310とエンドキャップ130との境界面によって形成された空洞135に、エポキシベースの埋め込み用樹脂を充填して、センサアッセンブリ100との干渉を防止してもよい。
【0054】
図6のブロック図を参照すると、IR源PCB310のエッジ312を使用して、センサアッセンブリ100とガス検知器具900のメインボード800上のカード・エッジコネクタ810との間の電気的接続を形成する。さらに、IR源PCB310上の端子314を使用して、プリゲイン/フィルタPCB410からIR源PCB310を通ってその後にカード・エッジ312に電気信号を送るための相互接続ワイヤ420により、(上記のような)プリゲイン/フィルタPCB410上の同じような端子412に接続してもよく、これにより、IR源駆動信号及びプリゲイン/フィルタPCB410によって生成された信号の双方を、1つのカードエッジコネクタ810のみを使用してガス検知器具900のメインシステムボード800に対して送受信することができる。IR源PCB310のエッジ312により、ガス検知器具900の中にセンサアッセンブリ100を簡単に「圧入」取り付けできる。図11及ぶ図12を参照されたい。
【0055】
IR源320は、IRエネルギ113を放射し得る器具でよい。好適には、少なくとも10Hzの周波数で変調し得る低熱質量装置を使用する。本書で使用するように、熱質量源として規定される低熱質量源は、ほぼ10Hzからほぼ25Hzの範囲で変調し得る。熱質量源として規定される高熱質量源は、5Hzよりも大きな周波数で変調できない。センサーの大きさを最小限にするために、TO−5 Transistor Canパッケージで入手し得る小型のIR源320を使用してもよい。
【0056】
マニホールド110の出口ポート側と基準ボディ120との間に、透光窓160(例えば、9.5mmの直径で0.5mm厚のサファイヤ又は他の材質の透光窓)及びガスケット180(例えば、ブナn、NBR、テフロン(登録商標)又はこれらと同様なガスケット)が挟まれている。ガスケット180を低蒸気圧の真空グリースでコーティングして、基準ボディ120又はマニホールド110の表面仕上げの不揃いにより生じる可能性のあるガス漏れをなくしてもよい。基準ボディ120は、その中に基準チャンバ122を規定する。製造時に、マイクロフォンアッセンブリ500の取り付けに先立って、基準チャンバ122を、圧力ポート124を通して100%の濃度の基準ガス123で満たす。基準チャンバ122の壁によって吸収されるIRエネルギ113量を制限するために、試料チャンバ112と同じように、基準チャンバ122の壁を、研磨及び/又は金といった反射材料でコーテティングしてもよい。
【0057】
センサ100の出口側は、マイクロフォン510を含むマイクロフォンアッセンブリ500と、プリゲイン/フィルタPCB410、端子412及び相互接続ワイヤ420を具えたプリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400と、を有する。製造後は、基準チャンバ122の中の基準ガス123の圧力変化が、圧力ポート124を介してマイクロフォン510に伝えられる。
【0058】
マイクロフォン510は、エラストマー(ゴム)のマイクロフォンホルダ520に取り付けられた市販されている標準的なエレクトレットコンデンサ型のマイクロフォンである。例えば、このマイクロフォン510は、−46デシベルから−42デシベルの範囲の感度を具えた6015型(6.0mmの直径及び1.5mm厚)でよい。高感度のマイクロフォン(例えば、−42デシベル)により、低感度のタイプよりも同じ電気出力に対するIRエネルギが少なくて済む。
【0059】
マイクロフォンアッセンブリ500、及びシール190(例えば、ブナn、NBR、テフロン(登録商標)又は同じようなガスケット)が、基準ボディ120とプリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400との間に挟まれていおり、プリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400自身はエンドキャップ140及び3つのねじによって所定の位置に保持されている。ガスケット190にグリースをコーティングして、基準チャンバ122からの基準ガス123の漏れを防いでもよい。マイクロフォン510とプリゲイン/フィルタPCB410との間の電気接点が、エラストマーのマイクロフォンホルダ520の導電性ゴム接点及びプリゲイン/フィルタPCB410の対応する接点を介して設けられている。プリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400は、AC接続されたプリアンプと、プリゲイン/フィルタPCB410から相互接続ワイヤ420、IR源310、及びエッジ312を介してガス検知器具900のメインシステム基板800に出力信号を送信するのに先立って、マイクロフォン510からの信号を事前に調整するローパスフィルタ回路430と、を含んでいる。プリゲイン/フィルタPCB410は、基準ボディ120の金属部がアンプの共通(グラウンド)信号に低雑音動作で電気的に接続されるように構成される。
【0060】
プリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400とエンドキャップ140との境界によって形成される空洞145にエポキシべースの埋め込み用樹脂を充填して、センサアッセンブリ100と干渉しないようにし、プリゲイン/フィルタPCB410材料を通した基準ガス123の拡散を防いでもよく、周囲の状況(温度、湿度)の変化による回路430を具えるプリゲイン/フィルタ部品のパラメータの変化を弱める。
【0061】
本システムの心臓部は、100%の濃度の基準ガス123の試料が、製造時に、透光窓16とマイクロフォンアッセンブリ500との間の基準チャンバ122の中に大気圧密封された基準ボディ120である。
【0062】
透光窓150及び160は、サファイヤ、フッ化カルシウム、セレン化亜鉛、ゲルマニウム、又はシリコンといった、広帯域のIRエネルギが通過できる材質でよいが、これらに限定されない。窓150及び160の最低必要条件は、問題になっているガスの少なくとも1又はそれ以上の吸収ピークと一致するIR波長を伝送することである。例えば、二酸化炭素は、4.5μm付近に強い吸収ピークを有している。低コストのサファイヤの窓は、最大5.0μmまでの全てのIR波長を伝送する。このため、サファイヤは、例えば、二酸化炭素ガス検知器に使用するのに理想的な材料である。他の窓用の材料を、他のIR波長の範囲の吸収ピークを具えるガスに使用してもよい。さらに、必ずしも必要ではないが、窓を光学的にコーティングして、窓を通過するIRエネルギの帯域を狭くしてもよい。
【0063】
広帯域のIRエネルギ113は窓160を通過するが、基準チャンバ122の中の基準ガス123の吸収ピークに一致する波長が基準ガス123によって吸収される。これにより、ガスの瞬間加熱が起きて、(光音響赤外線検知器と同じように)圧力が増加する。赤外線源を脈動させることで、パルス源の周波数と同じ周波数で基準チャンバ122の中に音圧波を形成する。これらの音圧波は、圧力ポート124--マイクロフォン510に基準チャンバ122を音響的に繋げる小さな穴(例えば、0.020’’)を介してマイクロフォン512に伝送される。マイクロフォン510によって発生される圧力波の振幅、すなわち、電気信号の振幅は、基準ガスによって吸収されるエネルギの量に正比例する。
【0064】
試料ガス50を入力ポート116及び試料チャンバ112の中に引き込みながら、吸引ポンプ600によってマニホールド110の出口ポート114から外に連続的又は周期的にガスを引き出す。基準ガス123と同じ試料チャンバ112のガスは、IR源320によって放射される赤外放射113を基準ガス123と同じ吸収帯域で吸収するため、基準ガス123を加熱するのに利用できるエネルギの量を減らす。これにより、基準チャンバ122の音圧波、さらには、マイクロフォン510からの電気信号が瞬時に減少する。Beer Lambert則によれば、電気信号の減少は、試料チャンバ112のガス試料の標的ガスの濃度の増加と直接的に対応する。
【0065】
基準ガス123によって吸収される波長と同じ波長を正確に吸収する試料ガスのみが、信号出力を減少させる。このように、センサアッセンブリ100は、極めてガスに固有であり、他の全てのガスを無視しつつ基準ガスと同じガスのみを検知し、特殊な光学フィルタを使用せずにこれを行う。他のガスに対する交差感受性を最小限にする(すなわち、他のガスが基準ガスの吸収スペクトルの小さな部分を占めるが、小さな濃度で大きな信号変化を発生させるのに十分ではない)。ガスの選択性は、他の方法よりも非常に高く、周囲の状況又はパラメータの変化に影響されない。さらに、圧力波のAC成分の振幅は、マイクロフォンから発せられる電気信号と同じように、試料ガス中の基準ガスの濃度の変化に対して瞬時に変化する。熱電対列のIR検知器の熱時定数は、IR源の最大変調周波数を判定しない。
【0066】
図6を参照すると、ガス漏れ検知又はガスの監視に適用する独創的な吸収性の光音響ガスセンサを使用した完全なガス検知システム900が、上記のようなガスセンサアッセンブリ100と、メインシステムPCB800とを有している。メインシステム基板800は、適切な電源(例えば、バッテリ、AC電源供給ライン)、アナログ信号前端(ゲイン及びバンドパスフィルタ)820、一体型(又は外付けの)A/D832を具えたCPU、PWM(パルス幅の変調又はパルス幅の変調器)機能部834、デジタル信号処理(DSP)演算を実行するためのソフトウェア836、IR源のためのパワードライバ840、及びユーザインターフェイス850を有している。
【0067】
図6の典型的な実施例に図示するCPU830は、(入力信号をサンプリングするための)一体型のA/D変換器832と(IR源320を駆動するための)PWM変換器834とを含んでいる。これは、低コスト、さらに言えば、より低コスト/複雑度の低い方法である。A/D及びPWM変換器をCPUとは別に設けることが可能である。また、相当な努力により、デジタル部品が全く無い同じような適用を実現できることが考え得る。このため、上記のような基本原理を利用するが、アナログでの実施を単に利用するシステムは、本発明の範囲内であると想定される。
【0068】
PWM834を、IR源のドライバ840に出力される可変デューティサイクルの方形波信号845を発生させるよう構成できる。PWM834の基本周波数は、システムの検知速さ及び感度を最適化するよう選択され、IR源320の熱時定数を考慮に入れる。低熱容量のIR源を具えたシステムのために、10Hzの基本周波数を使用して、検知スピードを増加させる。PWM834のデューティサイクルは、IR源ドライバ840を介してIR源320に加えられる電力を制御し、DSP836の制御の下で0%から100%まで変化させる。50%よりも高いデューティサイクルにより、信号の振幅の顕著なゲインなしにIR源320による出力散逸が増加するため、PWM制御の実際の範囲を0%から50%に制限する。IR源320の出力散逸の制限は、さらに、PWMの実際の最大のデューティサイクルを制限する。さらに、第2段階のPWM変調を、PWM信号845の「on」周期部分に適用して、合成PWM信号846を発生できる。これにより、IR源320に加えられる出力の非常に微妙なチューニングが可能となるため、センサ100から発せされる信号の振幅の微細な制御が可能となる。第2段階の変調器を0%から100%までの全範囲にわたって効果的に調整できる。理想的には、1又はそれ以上のPWMがプログラムで調整され、センサ100からの信号出力のダイナミック・レンジを最大限にする。
【0069】
2つのPWM834が同時に適用される場合、IR源320に適用される得られるエネルギは、2つのデューティサイクルの積に比例する。例えば、第1の(コース,coarse)変調器が12%のデューティサイクルで動作する場合、第2の(ファイン,fine)変調器は80%のデューティサイクルで動作して、IR源320への得られる出力は総出力の9.6%でありIR源320は双方の変調器が100%で動作したかどうかを確認する。
【0070】
非常に高い分解能を有する(且つ高価な)1つのPWM834を、2つの段階のPWM834の所定の場所で使用することが可能であり、同様な微細な調整機能を与えるが、2段階の実施は正確で、低コストで、加算計算機コードを具えたCPU830と一体となった一つの変調分解能を有するPWM834によって実施が容易であり、2段階の機能を発生する。
【0071】
PWM834はタイミング及びIR源320に加えられる出力を制御する一方で、PWM834は、さらに、(以下のような)A/D変換器832及びDSP836のタイミング835を制御する。これにより、信号処理段階の際にアナログ信号に含まれる同期ノイズを拒絶することが可能となる。
【0072】
PWM信号845又は846は、IR源ドライバ840への出力である。これは、単に、適切な調整出力供給回路及びトランジスタスイッチであり、このトランジスタは、PWM信号の「on」周期847に閉じてIR源320に電流を供給し、PWM信号の「off」周期848に開いてIR源320への電流を遮断する。2段階のPWM形態では、大きな「off」周期848の間に電力を受けないが、大きな「on」周期848の間にIR源320が素早くオンオフ切り替えされる電力を受けることに留意されたい。これらの小さなオン/オフ時間の周期は、IR320の熱時定数と比較して高いため、全てのIR源320は、「on」周期848の間に、駆動信号の平均的な出力を受ける。実際の例として、(IR源の熱時定数よりも遅い)10Hzの基本周波数を有するコースPWMを具えて、ファインPWMが(熱時定数よりも非常に早い)1280Hzの基本周波数を有している。上記の単一又は2段階のPWMモードが、図7のグラフに示されている。
【0073】
変調IR源から発せられたIRエネルギ113は、試料チャンバ112を通って伝播して、基準チャンバ122の中に入る。基準ガス123の吸収帯に対応するIRエネルギの波長は、コースPWM(例えば、10Hz)の基本周波数で音圧パルスを発生する基準ガス123を周期的に加熱する。これにより、対応するAC信号がマイクロフォン510からプリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400に発せられる。プリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400は、マイクロフォン510に出力するバイアス回路430と、アンプ及びローパスフィルタ回路が後に続くマイクロフォン信号からDC成分を除去するためのDCブロッキングコンデンサとを有している。アンプ及びローパスフィルタは、50のゲイン及び47Hzで3dbポイントを具えた6db/オクターブのロールオフを有してよい。ゲイン及びフィルタ特性は、プリゲイン/フィルタPCBアッセンブリ400から発せられる信号(例えば、10Hz)の振幅を最大限にするよう選択される一方で、アンプが信号をクリップして歪ませる原因となる高周波数のノイズ成分を減衰させる。得られる信号は、コースPWMの基本周波数を具えたAC波形である。
【0074】
このAC波形は、ローパスフィルタによってフィルタリングされない中間域のノイズとともにコースPWM周波数の調波の形式でノイズを依然として含むが、ガス検知器具のメインシステムボード800のゲイン及びバンドパスフィルタ回路820に伝播する。フィルタ820は、コースPWMの基本周波数(例えば10Hz)の中心にある通過帯域を有し、約2Hzの帯域幅を具えた(例えば、9Hzから11Hzの信号が通過して他の全てが遮断される)、2次、4次、又は高次のバンドパスフィルタでよい。フィルタ820は、6.4の通過帯域ゲインを有してよい。このような回路の出力で得られる信号は、IR源の出力(PWMデューティサイクル)及び利用可能なIR出力量によって決定されるコースPWMの周波数及び振幅を具えたクリーンで歪みが小さいAC信号であり、基準チャンバ122の中の標的ガス試料を励動させる。
【0075】
最後に、得られる信号をCPU830に導くことができ、組み込まれたA/D変換器832によってそれをデジタル化できる。サンプリング速度が(同期したノイズ軽減及び信号検知が可能となる)コースPWM速度となり、ナイキスト基準を満足するよう十分高くなるように、サンプリング速度を選択できる。1秒当たり640サンプルのサンプリング速度を、バンドパスフィルタによって通過するものと見込まれる高周波数よりもワンオーダー以上大きい、例えば、320Hzのナイキスト周波数となるよう選択することができる。A/D変換器832は、適用に応じて10ビット又はそれ以上の分解能を有することができる。
【0076】
デジタルの試料の流れを、DSP836に向けてプログラムで通過させることができ、DSP836はPWM制御、信号の定量化、較正、及び検知を操ることができる。DSPを通過するデジタル化したAC信号の振幅は、基準チャンバ122に入って基準ガスを励動させるIRエネルギ量についての全ての情報を含んでいる。(アナログ及びデジタルの)AC波形は、振幅成分及び位相成分の双方を含んでいる。実用的にするために、振幅情報を抽出して位相情報を切り捨てなければならない。このような抽出を実行できる多くの共通した方法があり、それぞれがそれ自身の欠点を有する。
【0077】
振幅成分を抽出するための最も単純な方法は、信号調整及び平均化である(包絡線検波としても知られている)。この方法は、非常にゆっくりとしている(平均化を多くの信号周期、おそらく10の信号周期にわたって行って、適度に安定した信号振幅のDC表示を形成しなければならない)。また、本方法は、調整処理で相当量エラーする傾向がある。
【0078】
ピーク検出は、振幅を増加させるための迅速な結果を得ることができる別の基本的な方法であるが、クリーンな動作のために出力信号がAC波形の周期よりもかなりゆっくりと減衰しなければならないため、振幅を減少させるのが遅い。また、本方法は、高周波数ノイズに対して極端に感度が高い。
【0079】
包絡線検波及びピーク検出は、(低コストの一般的なCPUに対して)複雑度の低い計算機コード及びわずかな処理出力を具えたデジタル領域で容易に実行される基本的な方法である。
【0080】
より進んだ信号振幅の抽出法は、「Lock−In」増幅と称される(同期検波としても知られている)。この方法では、同じ周波数の一定の振幅の正弦波(局所的な発信器又はLO)によって信号が「ミックス」される(数学的に乗算される)。そして、積は、長い周期にわたって平均化され、LOの位相に関して(a)AC信号の振幅;及び(b)AC信号の位相に対して比例するDC信号を形成する。一般に、同期検波は、ミキシングの結果を最大限にするように、信号とLOとの間の位相関係を調整するための制御を有している。これは、入力信号とLOとの間に0°の位相差がある場合に生じる。入力信号の位相を自動的に探知する機能を加えることによって、位相依存を大いに減衰できる。低コストの適用では、正弦波LOの代わりに方形波LOを使用してもよい。
【0081】
同期検波の主要な利点は、精度及び感度である。平均化フィルタの時定数に応じて、非常に小さい信号振幅を大量のノイズから正確に抽出できる。2つの主要な欠点は、(相当な量の平均化が必要とする)速さ及び位相ノイズ(信号及びLO間の位相関係の変化に対する感度)である。同期検波は、一般に、(コンピュータプログラムを介して)デジタルで実行するための適量の処理出力を要し、様々な種類の位相補償方法を加えるため、複雑さが顕著に増大する。同期検波を、アナログ及びデジタル方法の双方で実行できる。
【0082】
Quadrature Detectionを使用して、同期検波に影響を及ぼす位相感度を除去できる。このような方法では、信号を直角位相(各2つのLO信号間の90°の位相差)で動作する2つの局所発信器によって乗算できる。一方のLOは、正弦波発信器と称され、他方のLOは、余弦波発信器と称される。各LOの基本周波数は、同期検波で検知するための信号と同じである。2つの乗算積は、長い時間にわたって平均化され、実質的に複素数と組み合わされ、平均正弦積値は実数成分であり、平均余弦積値は虚数成分である。ここで、このような複素数の計算結果は、オリジナルの波形の振幅及び位相情報の双方を含んでいる。ここでは、振幅情報の抽出は複素数のマグニチュードを判定する単純なケースであり、マグニチュードは、ピタゴラスの定理を適用することによって見出される:
同期検波では、生成又は演算を容易にするために、正弦波の代わりに直角で動作する2つの方形波を使用してよい。
【0083】
Quadrature Detectionの大きな利点は、入力信号の位相のための補償を要さず、位相ノイズに対して鈍感であることである。同時に、それは、同期検波と同じ精度及び感度特性を有する。都合の悪いことに、多くの信号周期にわたる平均化を依然として必要とし、これにより応答が遅くなる。さらに、デジタル領域におけるQuadrature Detectionは、一般に、計算上の複雑さ及び処理能力の点から見て非常に高価である。Quadrature Detectionをアナログ及びデジタルの双方の方法で実行できる。
【0084】
上記に基づいて、AC波形から振幅情報を素早く抽出するアルゴリズムを有する必要性、さらには、Quadrature Detectorの精度、感度、及び位相不感受性を有する必要性があるかどうかが判断された。さらに、低コストのマイクロプロセッサで実施するのに十分計算が簡単になるようなアルゴリズムを有するのが望ましかった。
【0085】
連続的なアナログAC波形を不連続なデジタルのサンプルに変換する利点の1つは、各波形の周期で既知の数の生成されるサンプルがあるように、サンプル・レートを選択できることである。このため、コンピュータアルゴリズムを書き込んで、多くの周期にわたって平均化せずにある周期全体に関する信号のマグニチュードの直角位相演算を演算できる。例えば、AC波形の基本周波数が10Hzであり、1秒当たり640サンプルを生成する場合、各波形の周期に関して64サンプルが生成されるであろう。これら64サンプルを、サイン及びコサイン直角位相波形と混ぜて周期全体にわたって平均化し、その周期の波形の振幅情報を演算可能な複素数値を形成するために組み合わせることができる。これらの信号特性及び抽出のタイミングでは、秒毎に10の正確な振幅演算を得る。これらの結果の値を、さらにデジタルでフィルタリングして高周波のアーチファクトを維持したまま平滑化でき、さらなる処理のために通過できる元のAC波形のRMSマグニチュードを表す10Hz列のデジタル値となる。
【0086】
これは、従来の方法にわたって一桁分の検知スピードの改善をもたらす一方で、この速さをさらに改善できることが見出された。前回の64サンプルの「移動する窓」におけるデータを、(各信号周期とは対照的に)各サンプル周期を演算するためのデータセットとして使用できる場合、これは、秒毎に640の正確な振幅データポイントをもたらし、検知スピードの別の桁分の増加を示す。都合の悪いことに、このプロセスは、各サンプル周期のサイン及びコサイン乗算、128(64のサイン及び64のコサイン)のデータ要素の数学的平均、及びマグニチュード演算を要する。一般に、この種の計算は低コストのマイクロプロセッサでの実行を排除するのに十分複雑である。それにもかかわらず、本発明に係るアルゴリズムが上記のような演算を実行するが、低コストのマイクロプロセッサで効果的に実行するのに十分に複雑性が低いということが分かっている。このような独創的なアルゴリズムは、本書でFast Digital Quadrature Detectionと称する。
【0087】
Fast Digital Quadrature Detectionアルゴリズムは、一方がサインの和用で他方がコサインの和用の2つの積算器(マイクロプロセッサ・レジスタのセット)、各64ワードの長さであって、この場合も一方がサインの和用で他方がコサインの和用の2つのアレイを使用する。このアレイは、循環バッファとしてセットアップされる。各サンプルデータポイントに関するサイン及びコサイン値を演算するのではなく、サンプル数に基づいて2つの各積算器によって新たなサンプル値を加算又は減算するかどうかの判断がプログラムでなされる。10HzのAC波形で、1秒当たり640サンプルのサンプリング速さでは、AC波形のそれぞれの完全な周期で64のサンプリングポイントが存在する。これらのサンプリングポイントは、0から63まで番号付けされている。サイン関数については、サンプル番号0から31までのサンプル値がサイン積算器によって加えられ、サンプル番号32から63までのサンプル値がサイン積算器によって差し引かれる。コサイン関数については、サンプル番号0から7までのサンプル値がコサイン積算器によって加えられ、サンプル番号8から47までのサンプル値がサイン積算器によって差し引かれる。これらの加算及び減算は、AC波形の直交する(例えば、90度の位相差)2つの単位振幅の方形波による乗算をシミュレートする。さらに、サインが上記の判断の逆として計算されるが、サンプル値又はその負数が、各循環バッファに設置される。例えば、サンプル番号0から31については、サンプル値の負数をサイン循環バッファに記憶する。上記の加算又は減算に先だって、前回の波形周期による対応するサンプル数の逆数値を表し64サンプル前に積算器に加えられた循環バッファの中の最も古い値が、新たな値で置換するのに先だって、サイン及びコサイン積算器に加えられる。このような方法では、サイン及びコサイン積算器は、サンプリング周期毎に128個(64と64の和)の値全ての和の再計算の必要なしに、常に、信号周期全体にわたって完全なサイン及びコサイン和(平均)を含んでいるため、計算する能力の劇的な低下をもたらす。最後に、以下の文で説明するように、各サンプル周期毎に和の位相振幅を演算する。
【0088】
aがサイン積算器の値で、bがコサイン積算器の値である場合、a+biのPhaser 絶対値cは、
これは、
に等しい。
【0089】
本式は、複素数が現れるが、簡単で以下のアルゴリズムに基づいて低コストのマイクロプロセッサが実行するのに効率的である。
・積a*a及びb*bを演算する;
・当該積の和を演算する;
・参照テーブル、区分的近似、及びバイナリシフト(binary shifting)により、2を底とする当該和の対数を演算する;
・シングルバイナリライトシフト(single binary right shift)により、当該対数を2で除した商を演算する;
・参照テーブル、区分的近似、及びバイナリシフトにより、2を得られた商の累乗することよって、マグニチュードを演算する。
【0090】
本発明に係るFast Digital Quadrature Detectionの結果として、最近の64サンプルに関するAC波形の振幅を正確に反映する新たな演算結果が、各サンプル周期毎、又は1秒当たり640回出来上がる。得られたデータストリームは、AC信号の時間変化するRMS値を表すDC信号のようであり、従来のデジタル信号処理法によってさらに処理される。
【0091】
Fast Digital Quadrature Detectionアルゴリズムによって生成されたデータストリームを使用して、1段又は2段PWMによってシステムを較正できる。ガス検知システムのタイプ(例えば、ガス監視又は漏れ検知)に基づいて較正方法を選択し、標的ガスが較正時にガス試料に存在すると仮定する。
【0092】
較正すると、データストリームがさらに適用(ガス漏れ検知、ガス監視、等)に応じた様々な方法でマイクロコントローラによって処理される。処理の結果を、マイクロプロセッサのI/Oポート838を介して、音声指示のためのスピーカ854、電子表示器856、例えばLEDディスプレイ、LEDアレイ、LCD図形、英数字、又は棒グラフディスプレイ、又は何らかの機械式、光学式装置、又は例えば振動器といった音声信号装置858といった装置で構成してよいユーザインターフェイスを通して使用者に表示できる。また、ガス濃度情報のさらなる処理、記録、送信又は表示のために、データストリームをネットワーク又は(ワイヤレスを含む)他のタイプの接続を介してホストコンピュータシステム又はマイクロプロセッサシステムに直接送信できる。また、ユーザインターフェイス850が、押しボタン、接触又はタッチスイッチ、タッチパネル、キーボード又はキーパッド、ポテンショメータ、又はアナログ制御といった、多くの入力装置852を含んでガス検知器具の動作を制御してもよい。また、(ワイヤレスを含む)コンピュータネットワーク又はホストコンピュータによる遠隔制御に関する設備をユーザインターフェイス850を介して設けてもよい。
【0093】
上述の明細書に基づいて、コンピュータソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア又はそれらの組み合わせ又はサブセットを含むコンピュータプロラミング又はエンジニアリング技法を用いて本発明を実施してもよい。このような得られるプログラムは、コンピュータが読み込み可能なコード手段を有しており、1又はそれ以上のコンピュータが読み込み可能な媒体の中で実施及び提供してもよいため、本発明に係るコンピュータプログラム製品、すなわち製品を生成する。コンピュータが読み込み可能な媒体は、例えば、固定(ハード)ドライブ、ディスケット、光ディスク、磁気テープ、読み取り専用メモリ(ROM)といった半導体メモリ等、又はインターネット又は他の通信ネットワーク又はリンクといった送信/受信媒体でよい。ある媒体から直接コードを実行することによって、ある媒体から別の媒体にコードを複製することによって、又はネットワークを介してコードを送信することによって、計算機コードを含む製品を作製及び/又は使用してもよい。コンピュータ科学の当業者は、上記のような作製したソフトウェアを、適切な一般的な用途又は特殊用途のコンピュータハードウェアと容易に組み合わせて、本発明に係る方法を実施するコンピュータシステム又はコンピュータサブシステムを作製することができるであろう。本発明を作製、使用又は販売するための器具は、中央処理装置(CPU)、メモリ、記憶装置、通信リンク及び装置、サーバ、I/O装置を含む1又はそれ以上のプロセシングシステムでよいがこれに限定されず、又は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア又は本発明を実施するそれらの組み合わせ又はサブセットを含む1又はそれ以上のプロセシングシステムのサブ部品を含んでよいが、これに限定されない。使用者入力は、キーボード、マウス、ペン、音声、タッチパネル、押しボタン、又は他の手段から受けてよく、アプリケーションプログラムといった他のプログラムを介することも含め、それらによって人間がコンピュータにデータを入力できる。
【0094】
図14は、本発明の一例の実施に有用なコンピュータシステムのブロック図である。このコンピュータシステムは、プロセッサ1404といった1又はそれ以上のプロセッサを有する。プロセッサ1404は、通信インターフェイス1402(例えば、通信バス、クロスオーバーバー(cross−over bar)又はネットワーク)に接続されている。様々なソフトウェアの実施例が典型的なコンピュータシステムに関して記載される。本記載を読んだ後に、他のコンピュータシステム及び/又はコンピュータアーキテクチュアを使用した本発明の実施のやり方が当業者にとって明らかとなろう。
【0095】
コンピュータシステムは、ディスプレイユニット1410上で表示するために通信インターフェイス1402から(又は図示しないフレームバッファから)図形、テキスト、及び他のデータを送るディスプレイインターフェイス1408を含めることができる。また、コンピュータシステムは、メインメモリ1406、好適にはランダム・アクセス・メモリ(RAM)を有しており、さらには補助メモリ1412を有してよい。補助メモリ1412は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブ等を代表とするハードディスクドライブ1414及び/又はリムーバブル記憶ドライブ1416を含んでよい。リムーバブル記憶ドライブ1416は、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、光ディスク等に対して読み出し書き込みを行い、コンピュータソフトウェア及び/又はデータを記憶する。また、システムは、図示しない他のものとともに図14に示す全てのリソースを含む、ディスクドライブ、ディスクアレイ、テープドライブ、CPU、メモリ、有線及び無線通信インターフェイス、ディスプレイ及びディスプレイインターフェイスといった、リソースR1−Rnを管理するためのリソーステーブルを含んでもよい。
【0096】
代替的な実施例では、補助メモリ1412が、コンピュータプログラム又は他の命令をコンピュータシステムに取り込むことができる他の同じような手段を有してよい。このような手段は、例えば、リムーバブル記憶ユニット1422及びインターフェイス1420を含んでもよい。これらの例は、及びリムーバブル記憶ユニット1422からコンピュータシステムにソフトウェア及びデータを移送し得るプログラムカートリッジ及び(ビデオゲーム装置に見られるような)カートリッジインターフェイス、(EPROM、又はPROMといった)リムーバブルメモリチップ及び関連するソケット、他のリムーバブル記憶ユニット1422及びインターフェイス1420を含んでよい。
【0097】
また、コンピュータシステムは、通信インターフェイス1424を有してよい。通信インターフェイス1424は入力部及び出力部として機能して、ソフトウェア及びデータをコンピュータシステム及び外部装置間で移送できる。通信インターフェイス1424の例として、モデム、(イーサネット(登録商標)カードといった)ネットワークインターフェイス、通信ポート、PCMCIAスロット及びカード等を含めてよい。通信インターフェイス1424を介して移送されるソフトウェア及びデータは、例えば、電子、電磁、光、又は通信インターフェイス1424によって受信可能な他の信号の形式である。これらの信号は通信経路(すなわち、チャンネル)1426を介して通信インターフェイス1424に送信される。このチャンネル1426は信号を送るが、配線又はケーブル、光ファイバ、電話線、携帯電話のリンク、RFリンク、及び又は他の通信チャンネルを用いて実施してよい。
【0098】
本書では、「コンピュータプログラム媒体」、「コンピュータが使用可能な媒体」、及び「コンピュータが読み込み可能な媒体」という用語を、一般に、メインメモリ1406及び補助メモリ1412、取り外し可能な保存ドライブ1416、リムーバブル記憶ドライブ1416、ハードディスクドライブ1414に組み込まれたハードディスク、及び信号といった媒体に言及するために使用する。これらのコンピュータプログラム製品は、コンピュータシステムにソフトウェアを提供するための手段である。コンピュータの読み込み可能な媒体により、コンピュータシステムが、データ、命令、メッセージ又はメッセージパケット、及び他のコンピュータが読み込み可能な情報をコンピュータの読み込み可能な媒体から読み込むことができる。コンピュータが読み込み可能媒体は、例えば、フロッピー(登録商標)、ROM、フラッシュメモリ、ディスクドライブメモリ、CD−ROM、及び他の固定記憶装置といった不揮発性のメモリを含んでよい。例えば、データ及びコンピュータの命令といった情報をコンピュータシステム間で移送するのが有用である。さらに、コンピュータが読み込み可能な媒体は、コンピュータが読み込み可能な情報を読み込むことができる有線ネットワーク又は無線ネットワークを含むネットワークリンク及び/又はネットワークインターフェイスといった一時的な媒体にコンピュータが読み込み可能な情報を具えてよい。
【0099】
コンピュータプログラム(コンピュータ制御ロジックとも称する)は、メインメモリ1406及び/又は補助メモリ1402に記憶されている。また、コンピュータプログラムを通信インターフェイス1424を介して受け取ることができる。このようなコンピュータプログラムは、実行した場合、コンピュータシステムが本書に記載のような本発明の態様を実行できる。特に、コンピュータプログラムは、実行した場合、プロセッサ1404がコンピュータシステムの態様を実行できる。従って、このようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステムのコントローラを表す。
【0100】
図8は、本発明に係る携帯型のガス漏れ検知器900の典型的な実施例を示す。図9に示すように、上殻930及び下殻910が、それぞれねじ916によって組立てられて、小さくて、人間工学に基づく、扱い易いケースを形成する。センサ区画カバー940及び電源区画カバー950は、キャプチャーねじ942及び952によって、それぞれ下殻910に締結されて器具を包装し、センサ100及び電源960(例えば、AAバッテリ)の取り付け/取り外しを簡単にし易くする。殻910,930及び及びカバー940,950をプラスチック(ABS、ポリカーボネート、又は他の材質)で成型してもよい。
【0101】
上殻930は、器具の動作を制御するためのプラスチック又は他の材質から成る表面の押しボタン932及びそのばね934と、使用者に目に見える動作及び漏れ情報を提供するためのプラスチック又は他の材質から成る透明の光ファイバ936とを有している。当然ながら、本実施例は、単に典型例であって、他の動作制御が想定される。スピーカグリル938を上殻930の中(又は他の場所)に形成してもよく、使用者に可聴情報を伝達する。
【0102】
センサ区画918及び電源区画919を具えた下殻910を形成して(図12)、センサ100及び電源960をそれぞれ収容してもよい。バッテリ端子860を組み込んで、電源960のバッテリのターミナルに電気的に接触させてもよい。また、センサ100の入口ポート116及び出口ポート114をプローブ700のサンプリングホース750(図10)及び配管アッセンブリ610にそれぞれ接続する2つのガスコネクタ912及び914を下殻910の中に形成してもよい。
【0103】
プローブアッセンブリ700は、図10に示すように、鋼又は(柔軟性のために)他の湾曲した(gooseneckといった)材質から成るプローブ本体710と、器具にプローブアッセンブリを固定するためのアルミニウム又は他の材質から成るアンカーブッシュ720と、所定の位置にプローブキャップ740を固定するためのアルミニウム又は他の材質から成るねじを切ったブッシュ730とを有する。柔軟性のあるビニール又は他の材質から成るサンプリングホース750を、プローブ先端部から器具の中に流れる試料ガスのための通路を規定するためのプローブアッセンブリの長さ方向に沿ってねじ込んでもよい。ビニール又は他の材質から成るカバーを、表面の装飾のためにグースネック(gooseneck)の外側を覆うよう形成してもよい。フィルタが、ねじを切ったブッシュ730の中に収容され、プローブキャップ740によって所定の位置に保持されており、汚れ、埃、又は湿気がプローブホース750を通って器具の中に引き込まれるのを防いでいる。プローブアッセンブリ700が、アンカーブッシュ720及びねじ916の一つによって上殻930及び下殻910に固定されている。試料ホースの端部752が、ガス注入コネクタ912に取り付けられおり、試料ガスのセンサ100への流路を形成している。
【0104】
様々な電気的及び機械的な部品が、上殻930及び下殻910によって形成された空洞の中に収容されており、器具アッセンブリを形成している。これらは、回路基板アッセンブリ800と、吸引ポンプ600と、配管アッセンブリ610とを有する。吸引ポンプ600を器具900の本体の中に固定してもよく、あるいは、図9に示すように、回路基板アッセンブリ800上に取り付けて組み立て処理を簡単にしてもよい。
【0105】
また、上記のような吸引ポンプ600に加えて、回路基板アッセンブリ800が、電源960のバッテリ端子から回路基板アッセンブリの電子部品に電力を供給するためのバッテリ端子860のうちのいくつか又は全部と、センサ100のカードエッジ312を回路基板アッセンブリ800に電気的に接続するカードエッジコネクタ810と、器具900の動作を制御するための(押しボタン932に機械的に接続された)スイッチ852と、スピーカグリル938を通して使用者に音声情報を与えるためのスピーカ854と、光ファイバを介して使用者に目に見える情報を与えるためのLED表示部856と、を有してもよい。また、図9に示されていないが、アナログ信号前端部品820と、(内部のA/D変換器832と、PWM変換器834と、DSPソフトウェア836と、I/O838とを具えた)CPU部品830と、IR源ドライバ部品840と、を回路基板アッセンブリ800上に有している。カードエッジコネクタ810は、下殻910の開口部を通ってセンサ区画918の中に突出しており、センサ100のカードエッジ312と回路基板アッセンブリ800のカードエッジコネクタ810との間の電気的接続をし易くしている。
【0106】
ガス出口コネクタ914を、柔軟性のあるビニール又は他の材質のホース及び適切な取付具から成る配管アッセンブリ610を介して、吸引ポンプ600の入口ポートに接続してもよい。また、配管アッセンブリ610は、センサを通って引かれる試料ガスの流量を必要に応じて制限するための流量制限器又は他の機器といった他の器具を有している。配管アッセンブリ610は、センサ100の出口ポートからコネクタ914のガス出口コネクタ914を介した吸引ポンプ600への試料ガス流路を形成する。吸引ポンプ600の出口ポートが、器具900の本体の中に直接的に排出するか、あるいは、図示しない付加的な配管アッセンブリによって本体の外部に通じていてもよい。試料ガス流路を通る流量は、配管アッセンブリ610及び吸引ポンプ600の性能によって決まるが、迅速な検知のために十分高くなければならない一方で、わずかな漏れが薄まって検知を困難にするのを防ぐのに十分低くなければならない。例えば、100cm3/min(sandard cubic centimeters per minute)と500cm3/minとの間の流量が、検知スピードと感度との間の容認できる妥協点を与える。
【0107】
図11及び図12を参照すると、センサ100、又は電源960の器具900に対する取り外し及び交換が明りょうに図示されている。センサ100を交換するために、使用者は、キャプチャーねじ942を緩めて、センサ区画918のセンサ100を露出させることによって、センサ区画カバー940を取り外す。そして、使用者は、2つのねじ920を取り外して、センサ100をセンサ区画から自由に引き出すことができる。そして、新たなセンサをセンサ区画の所定の位置に押し付けて、センサ100のIR源カードエッジ312と回路基板800のカードエッジコネクタ810との電気接点を自動的に形成する。また、センサ100の入口及び出口ポート116と、器具900の下殻910のガス入口及び出口コネクタ912,914との間にガス接続が形成される。センサ100のシール210が、コネクタ912及び914へのポート116及び114のガスの締まり嵌めを確実にする。最後に、器具900にセンサ100を固定するねじ920を取り替えて、センサ区画カバーを所定の位置に取り付けてキャプチャーねじ942によって固定する。
【0108】
電力供給940バッテリを、同じような方法で交換する。使用者は、キャプチャーねじ952を緩めることによって電源供給区画カバー950を取り外し、電源供給960バッテリを露出させる。そして、消耗したバッテリを取り外して、新品のバッテリと交換する。最後に、電源供給区画カバー950を所定の位置に取り付けてキャプチャーねじ952によって固定する。
【0109】
ある実施例では、典型的な漏れ検知器具900の全ての動作態様を、電源オン、電源オフ、感度の変更、及びリセットを含む押しボタン932による単一のスイッチ852を介して使用者が制御する。動作状態を、光ファイバ936を介してLED表示器856によって視覚的に表示し、スピーカグリル938を通してスピーカ854によって音声的に報知する。
【0110】
器具900を動作させるために、使用者が押しボタン932を押すことで、電源オンのシーケンスが開始する。電源オンのシーケンスにより、吸引ポンプ600及び回路基板アッセンブリ800の全ての電子部品が作動するが、このシーケンスは、初めのウォームアップシーケンスと、これに続く自動較正シーケンスを有してよい。電源オンシーケンスの状態を、(走査パターンにより)LED表示器を介して視覚的及び(特定のパターンのビープ音により)スピーカを介して音声的に使用者に表示する。
【0111】
ウォームアップシーケンスの開始時に、1又は2段階のPWM834デューティサイクルを初期値に設定する。例えば、2段階PWMのファインPWMを80%に設定して、2段階PWMのコースPWMを25%に設定してもよい。これにより、IR源ドライバ840を介したIR源320の駆動を開始し、基準チャンバ122の中に音圧パルスを形成し、プリゲインフィルタPCBアッセンブリ400及びアナログ前端820を介してマイクロフォン510からA/D変換器832にAC電気信号を出力する。電子機器が安定化し、試料チャンバ112がプローブ700を通って引かれる周囲の空気(標的ガスのバックグラウンド汚染を含んでも又は含んでいなくてもよい)によって洗浄されると、この信号は、短い時間(1又は2秒)安定することができる。この時間周期が終わると、本器具が動作の較正シーケンスを開始する。
【0112】
ガス検知器具のダイナミック・レンジ(すなわち、精度良く測定可能なガス濃度の範囲)を最大限にするために、AD変換器832に与えられるAC信号の振幅を、変換器の最大入力可能範囲を越えないようできるだけ大きくする必要がある。例えば、A/D変換器が0から3VDCの入力電圧範囲を有する場合、変換器に与えられる信号の振幅は、3VACp−p(ピークトゥーピーク)を越えてはならない。PWM834のデューティサイクルの値を調整することによって、このような振幅を調整できる。動作し易くするために、器具のソフトウェアが、電源オンシーケンスの較正シーケンスの際にこれらの値を自動的に調整してもよい。このシーケンスは、一連の連続的な小さなステップから成っていてもよく、各ステップが最適動作に要するPWMデューティサイクル値のより近い近似をもたらす。この方法は、逐次比較法(Successive Approximation)と称される。
【0113】
逐次比較較正シーケンスの各ステップの間に、(Fast Digital Quadrature Detectionアルゴリズムを介して)AC電圧のRMS値(実効値)を演算し、この値を、最大のAC信号(例えば、〜3VACp−p)のRMS値を表すターゲット値と比較し、(計算値がターゲット値よりも小さい場合)コースPWMデューティサイクルを増加させるか、又は(計算値がターゲット値よりも大きい場合)コースPWMデューティサイクルを減少させるかの決定を行う。この手順は、コースPWM変換器の極限解像度に対して精緻に実行される。最後に、ファインPWMデューティサイクルを同じような方法で調整する。このような較正シーケンスが完了すると、最適なデューティサイクル値でコース及びファインPWMのそれぞれが動作して、A/D変換器に出力される最適な振幅のAC信号を生成する。最終的なRMSの計算値は、ターゲット値に適度に近く、「リセット」値;すなわち、周囲のバックグラウンド濃度よりも高い標的ガスの濃度が存在しない場合のセンサ信号を表す値としてCPUに記憶される。例えば、二酸化炭素ガス検知器のケースでは、これにより、350乃至400ppm又はそれ以上のバックグラウンド汚染が常に存在している場合でさえも、器具の最適な較正が可能となる。
【0114】
さらなる利点として、較正シーケンスの際に、センサ100及び器具がその仕様の範囲内で動作していることを判断することが可能である。センサが古くなると、IR源の劣化又は埃、試料チャンバ112の反射面又は窓150及び160の伝送面に集まる汚れ又は湿気といった、長期にわたる有害な影響が生じる。これらの影響は、長期にわたると、IR源から放出されて最適な振幅のA/C信号を生成するのに要する電力量の増加をもたらす。シーケンスの間に、コースPWMデューティサイクルが、IR源(例えば、40%)に安全に出力される値を越えたことが明らかとなった場合、(センサ及び/又は器具へのさらなるダメージを防ぐために)器具がIR源への電力を自動的に止めて、例えば、LED表示器及び音声アラームを介して問題を使用者に報知する。このような方法では、使用者が器具がその仕様の範囲内で動作していることを確認して、開始する前にセンサを交換するための機会を有する。典型的な漏れ検知器具では、デューティサイクル(コースPWMとファインPWMデューティサイクルとの積)の適切な動作範囲が、8%(新しいセンサ)と40%(古いセンサ)との間を変わることが明らかになっている。このような広い範囲により、センサの交換をしなくならなくなる前に、センサの著しい劣化が長期にわたって生じる。さらに、低い熱質量のIR源と組み合わせた(例えば、40%よりも低い)低いデューティサイクルにより、小さなAAバッテリを具えた場合であっても(最大20時間のバッテリの)長い電力供給(バッテリ)寿命が可能となる。
【0115】
ウォームアップ及び較正を有する電源オンのシーケンス全体は、実行するのにわずか10秒を必要とし、その後で器具が測定段階の動作を開始する。測定段階の開始時に、本器具は、「ハイ」レベルにその感度レベルを自動的に設定して、一定のビープ音及び点滅LEDを発して、器具が適切に機能していることを使用者に表示する。
【0116】
「ハイ」レベルの感度では、「リセット」RMS値よりも小さいRMS値を表す所定の閾値を選択する。試料チャンバの中の標的ガスの濃度が増加するときはいつでも、センサ信号のRMS値が閾値を下回って低下し、例えば、センサ信号RMS値が閾値を下回って低下する量に比例して警告のピッチ及び速さを増加させることによって、器具が使用者に報知する。また、LED表示器が同様な方法で点灯してもよい。使用者に警告する本方法は、濃度の増加が起きたことを注意する情報を提供するだけではなく、増加量の定性的な説明を与える。また、1又はそれ以上の低いレベルの感度である可能性があり、この場合にはあるレベルの警告を与えるために濃度の大きな変化を必要とする。事前にセットされた様々な感度を、(例えば、コンピュータのマウスの)押しボタン932の例えば「ダブルクリック」によって使用者が選択してもよい。代替的な実施例では、アナログポテンショメータ又はダイヤル式の制御装置を、連続的な範囲の感度によって器具を調整するよう設けることができる。
【0117】
さらに、使用者は、現状のレベルの濃度での警報を止めることで、器具がより高い濃度でのみ警報するよう選択してもよい。使用者は、押しボタンを素早く押すことによってこれを行うことができ、現在のセンサ信号のRMS値をCPUのメモリに記憶された予め「リセット」した値に変える。このような機能は、本書では「リセット」と称する。
【0118】
例えば、短い時間(例えば、1/2秒)押しボタンを押した状態を保持することによって、本器具の電源を切ってもよい。典型的な実施例では、一つの押しボタンによって制御される一方で、各々が1又はそれ以上の異なる機能を制御する複数の押しボタン又は制御部によっても全ての動作形態を制御できることに留意されたい。
【0119】
器具の動作中に、パラメータ及び環境の変化により、A/D変換器に出力されるAC信号が、試料チャンバの中の標的ガスの濃度が一定のままである場合でさえも、最適なターゲット値からゆっくりとドリフトする可能性がある。このような状況を、CPUによって認識でき、CPUがファインPWMデューティサイクルの値に対してゆっくりとした微調整を自動的に行って、最適な性能を維持する。
【0120】
上記の典型的な実施例における本器具の実際の適用は、ガス漏れ検知であり、加圧容器からのわずかなガス漏れを特定して場所を示さなければならない。一般に、技術者は、容器又は他の標的ガス源から離れて器具に電源を投入し、電源オンのシーケンスの完了を待つ。続いて、プローブの先端部を漏れが疑われる箇所(例えば、1/4インチ以内)にゆっくりと(例えば、1秒当たり2インチよりも遅い)移動させる。このような漏れが検出された場合、警報が漏れ(プローブの先端部でのガス濃度の増加)の存在を知らせる。大きな漏れのケースでは、使用者は器具の制御部を低い感度に変え、及び/又は「リセット」機能を使用して使用者が漏れの正確な場所をゼロに合わせることができる。漏れの正確な場所を知ることで、修復を行うことができ満足な状態を確認するために容器を再検査できる。
【0121】
図13は、本発明に係るさらに別の典型的な実施例;このケースでは、ガス監視器を示す。ガスの監視は、ガスの監視が特定の場所でのガス濃度を正確に計測しなければならない点で、ガス漏れ検知とは異なり、濃度が所定の制限値又は一組の制限値を越えた場合、使用者に警報を出す。ガス監視器は、一般に、長期間にわたって自律的に動作するものと見込まれており、ガス濃度の制限値を越える場合又はメンテナンスの目的のみに介入する必要がある。
【0122】
ガス監視器900は、監視器が動作すると見込まれる環境に適合する筺体の中に漏れ検知器具と同じように構成されている。それは、センサ100及びそれに対応する部品と、CPU830を具えたメインの回路基板800と、アナログ及びIR駆動部品820及び840と、ユーザインターフェイス850とを有している。ユーザインターフェイスは、LED及び/又はLCD表示器と、アレイと、ディスプレイと、音声信号装置(スピーカ)とを含む、漏れ検知装置と同じような表示装置を含んでよい。それは、1又はそれ以上の押しボタン、キーパッド、又は器具の動作を制御するための他の制御部を有してもよい。また、ホストコンピュータシステムによる遠隔制御、及びそれに続く処理、記憶、表示、又はガス濃度の情報の送信のために、配線又はネットワーク(ワイヤレス又はそれ以外)を介して、ユーザインターフェイスをホストコンピュータ又他の装置に接続してもよい。
【0123】
プローブアッセンブリ700を双方向のガス弁760(又は、代替的に作動する2又はそれ以上の一方向のガス弁)に代えてもよい。ガス弁の一方の取り入れ口は、標的ガス(例えば、外部の周囲空気)を含んでいないことが分かっている較正用ガス60のガス源に接続され、他方の取り入れ口は、監視50される環境ガスに接続される。弁の出口は、センサ100の入口ポート116に導かれることで、ガス50又は60を試料ホルダ112の中に導入する。CPUI/O838を介した制御信号762によりCPU830を用いて弁760を自動的に制御してもよく、ある動作モード(較正モード)において、較正用ガス60が試料チャンバ112の中に引き込まれ、別の動作モード(分析モード)では、環境ガス50が試料チャンバ112の中に引き込まれる。さらに別の実施例では、較正用ガス60が、ボンベ、ガスバッグ、又は他のガス源から送出される(ゼロ濃度を含む)既知の濃度の標的ガスでもよい。
【0124】
ガス監視器具900を、ガス濃度の情報を収集及び分析すべきエリアに設置してもよい。周期的(1分毎、時間毎、1日毎、又はそれよりも長く)又は連続的に、CPU830が測定周期を発生させてもよい。各測定周期は、動作の較正段階及び分析段階を有している。
【0125】
ある典型的な動作方法では、較正段階が、以下のステップを有している:すなわち、センサ100の試料チャンバ112の中に較正用ガス60を導入するよう弁760を切り替えるステップと;吸引ポンプ600をオンにすることで試料チャンバの中に較正用ガスを引き込むステップと;IR源ドライバ840を介したPWM834によりIR源320のウォームアップ及び較正サイクルを動作させる(これにより、較正用ガスの中の既知の濃度(ゼロでもよい)のガスの存在下で最適なセンサ信号をA/D変換器832に出力するPWMデューティサイクル値を判定する)ステップとを有する。(Fast Quadrature Detection アルゴリズムを介して計算される)得られるRMS信号を、較正用ガスの既知の濃度を表すRMS値として記憶してもよい。
【0126】
さらに別の動作方法における較正段階では、既知のガス濃度に関する最適なRMS信号を表す(製造時にプログラムされ、又は、手動又は自動較正サイクルによって予め記憶される)所定のPWMデューティサイクルを設定することで、各分析サイクルで較正用ガスをサンプリングする必要性を無くす。所定のRMS値は、前回の較正サイクルでサンプリングされる較正用ガスの濃度で見込まれるRMS信号を表す。
【0127】
較正段階が終了すると、分析段階の動作が開始される。CPU830により弁760を切り替えて、センサ100の中に環境ガス50を導入する。わずかな時間の後、環境ガスの存在下でのACセンサ波形の振幅を表す新たなRMS値を演算し、センサの設計及び/又は製造の際に予め決めた係数を使用して、Beer−Lambert式を適用することによって環境ガスの中の標的ガスの濃度を算出する。
【0128】
そして、ユーザインタフェイスによってガス濃度が表示され、ホストコンピュータに送信され、及び/又は1又はそれ以上の予めプログラムした設定点と比較することで、ガス濃度がこのようなレベルを越える場合に使用者に報知するよう警告を作動させる。
【0129】
最後に、CPUが器具の電源をオフして電力供給エネルギを節約し、次の分析周期を待つ。
【0130】
上記の例及び実施例は単に説明のためであって、それに関する様々な変形又は変更を当業者に示唆し、これらが本願の精神及び範囲内に含まれることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0131】
添付図面は、別の視野にわたった同じ符号が同一又は機能的に類似する要素に言及しており、上記の詳細な説明とともに明細に盛り込まれてその一部を形成しており、様々な実施例のさらなる説明をする働きをし、本発明に係る様々な原理及び利点を説明する。
【0132】
【図1】図1は、本発明に係る赤外線吸収光音響式ガスセンサの斜視図である。
【図2】図2は、図1の赤外線吸収光音響式ガスセンサの断面図である。
【図3】図3は、図1及び図2のガスセンサの基準チャンバ側の斜視図である。
【図4】図4は、図1及び図2のガスセンサの試料チャンバ側の斜視図である。
【図5】図5は、図1,2,3及び4のガスセンサの分解斜視図である。
【図6】図6は、本発明に係る赤外線吸収光音響式ガスセンサを使用したガス検知システムの部品の構造を示すブロック回路図である。
【図7】図7は、本発明に係るガス検知システムの赤外線源に出力される変動デューティサイクルの方形波信号を生成するための単段及び2段パルス幅変調を比較した1組のグラフである。
【図8】図8は、本発明に係る携帯型ガス漏れ検知器具の典型的な実施例の斜視図である。
【図9】図9は、図8の器具の分解斜視図である。
【図10】図10は、図8の器具のプローブアッセンブリの斜視図である。
【図11】図11は、図8の器具の下部側の斜視図であり、センサ及び電源カバーが取り外された状態を示す。
【図12】図12は、図8の器具の下部側の斜視図且つ部分分解図であり、センサ及び電源カバーが取り外された状態を示す。
【図13】図13は、本発明に係る赤外線吸収光音響式ガスセンサを用いたガス監視システムの部品の構造を示すブロック回路図である。
【図14】図14は、本発明に係るシステム及び方法に使用するコンピュータの典型的な構造を示すブロック回路図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の所定のガスの存在を検出するためのガスセンサであって、
IR源と、
マイクロフォンと、
検知すべき前記少なくとも1の所定のガスと実質的に同じである基準ガスと、
前記マイクロフォンに通じる圧力ポートを有する基準チャンバを中に規定する基準ボディと、
前記所定のガスの吸収ピークに対応する少なくともIR波長が透過する広帯域の透光窓であって、前記IR源と前記基準チャンバとの間に置かれた透光窓と、
を具えており、
前記基準ガスが前記透光窓と前記マイクロフォンとの間の前記基準チャンバの中に収容されることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記IR源が低熱質量であることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
さらに、前記IR源と試料ガスとの間に置かれた第2の広帯域の透光窓を具え、前記試料ガスから前記IR源を隔離することを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記第2の透光窓が上流側のIR窓であり、前記透光窓が下流側のIR窓であることを特徴とする請求項3に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記圧力ポートが前記マイクロフォンに音響的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記上流側及び下流側の窓が、サファイヤ、フッ化カルシウム、セレン化亜鉛、シリコン、及びゲルマニウムから成る群のうちの1であることを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記上流側及び下流側の窓が、前記上流側及び下流側の窓によって伝送されるIRエネルギバンドを狭くするようコーティングされていることを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項8】
さらに、前記IR源に動作可能に結合され、ガス検知器具に繋がれる電気接点を有する第1のプリント回路基板と、
前記マイクロフォンに動作可能に結合され、アクティブフィルタ回路及び前記第1のプリント回路基板に電気的に接続された接点を有する第2のプリント回路基板と、
を具えることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項9】
さらに、前記基準ボディに結合され、前記基準チャンバに隣接する試料チャンバを規定するマニホールドを具えており、
前記試料チャンバが試料ガスを導入及び排出するための入口ポート及び出口ポートを有し、
前記IR源が、前記試料チャンバの中の前記試料ガスを介してIRエネルギを導くよう配置されることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項10】
さらに、前記IR源と前記試料チャンバとの間に設置され、前記IR源から発生したIRエネルギを前記試料ガスに与える第2の広帯域の透光窓を具えており、
前記第2の透光窓が上流側のIR窓で前記透光窓が下流側のIR窓であり、
前記IR源が、まず前記上流側の窓を介して、その次に前記試料チャンバの中の前記試料ガスを介して、さらに前記下流側の窓を介して前記基準ガスの中にIRエネルギを導くよう配置されていることを特徴とする請求項9に記載のガスセンサ。
【請求項11】
前記試料チャンバが、研磨、メッキ、及び金メッキのうちの少なくとも1を施したものであることを特徴とする請求項9に記載のガスセンサ。
【請求項12】
前記基準チャンバが、研磨、メッキ、及び金メッキのうちの少なくとも1を施したものであることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項13】
前記基準チャンバが、研磨、メッキ、及び金メッキのうちの少なくとも1を施したものであることを特徴とする請求項9に記載のガスセンサ。
【請求項14】
前記IR源がPWM波形で駆動されるよう動作可能であり、
PWM波形発生器が前記IR源に動作可能に結合されていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項15】
前記PWM波形発生器が単段発生器及び二段発生器のうちの一方であることを特徴とする請求項14に記載のガスセンサ。
【請求項16】
前記IR源がPWM波形で駆動されるよう動作可能であり、
PWM波形発生器が前記IR源に動作可能に結合されていることを特徴とする請求項9に記載のガスセンサ。
【請求項17】
前記PWM波形発生器が単段発生器及び二段発生器のうちの一方であることを特徴とする請求項16に記載のガスセンサ。
【請求項18】
前記基準ガスが二酸化炭素であることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項19】
前記マイクロフォンがエレクトレット・コンデンサ・マイクロフォンであることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項20】
さらに、携帯型ガス検知器具を具えており、
前記携帯型ガス検知器具が、
前記基準ボディに結合され、前記基準チャンバに隣接する試料チャンバを規定するマニホールドであって、前記試料チャンバが前記試料ガスを導入及び排出するための入口ポート及び出口ポートを有しており、前記IR源が前記試料チャンバの中の前記試料ガスを介してIRエネルギを導くよう配置されているマニホールドと、
前記IR源に動作可能に結合され、前記IR源に電気的に接続されて前記ガス検知器具に繋がれる第1の接点を有する第1のプリント回路基板と、
前記マイクロフォンに動作可能に結合され、アクティブフィルタ回路及び前記第1のプリント回路基板に電気的に接続された第2の接点を有する第2のプリント回路基板と、
電源と、
前記電源に動作可能に結合された回路基板アッセンブリであって、前記第1及び第2のプリント回路基板に動作可能に接続されたセンサ回路と、前記入口ポート及び前記出口ポートの少なくとも一方に流体的に接続された吸引ポンプと、前記IR源、前記センサ、及び前記ポンプのうちの少なくとも1を動作させるための制御部と、器具の状態を示すための表示部と、を有する回路基板アッセンブリと、
前記入口ポートに流体的に接続された管腔を規定するプローブと、
前記IR源、前記マイクロフォン、前記基準ボディ、前記上流側及び下流側の透光窓を中に嵌め込む大きさのセンサ区画と、前記電源を中に嵌め込む大きさの電源区画と、を規定する外殻と、
を有することを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項21】
前記ガス検知器具がガス漏れ検知器具及びガス監視器具のうちの一方であることを特徴とする請求項20に記載のガスセンサ。
【請求項22】
少なくとも1の所定のガスの存在を検出するためのガスセンサであって、
IR源と、
マイクロフォンと、
検知すべき前記少なくとも1の所定のガスと実質的に同じである基準ガスと、
前記マイクロフォンに通じる圧力ポートを有する基準チャンバを中に規定する基準ボディと、
前記基準ボディに結合され、前記基準チャンバに隣接する試料チャンバを規定するマニホールドであって、前記試料チャンバが前記試料ガスを導入及び排出するための入口ポート及び出口ポートを有するマニホールドと、
前記基準チャンバと前記試料チャンバとの間に置かれ、前記IR源と前記基準チャンバとの間に置かれた下流側の広帯域の透光窓であって、前記所定のガスの吸収ピークに対応する少なくともIR波長が透過し、前記基準ガスが前記下流側の透光窓と前記マイクロフォンとの間の前記基準チャンバの中に収容される下流側の広帯域の透光窓と、
前記IR源と前記試料チャンバとの間に配置され、前記試料チャンバ内の前記試料ガスから前記IR源を隔離する上流側の広帯域の透光窓と、
まず前記上流側の窓を介して、その次に前記試料チャンバの中の前記試料ガスを介して、さらに前記下流側の窓を介して前記基準ガスの中にIRエネルギを導くよう配置されたIR源と、
前記IR源に動作可能に結合され、ガス検知器具に繋げられる電気接点を有する第1のプリント回路基板と、
前記マイクロフォンに動作可能に結合され、アクティブフィルタ回路及び前記第1のプリント回路基板に電気的に接続された接点を有する第2のプリント回路基板と、
を具えることを特徴とするガスセンサ。
【請求項23】
携帯型ガス検知器具であって、
電源と、
請求項22に係るガスセンサを中に嵌め込む大きさのセンサ区画と、前記電源を中に嵌め込む大きさの電源区画と、を規定する外殻と、
前記電源に動作可能に結合された回路基板アッセンブリであって、前記第1及び第2のプリント回路基板に動作可能に接続されたセンサ回路と、前記入口ポート及び前記出口ポートの少なくとも一方に流体的に接続された吸引ポンプと、前記IR源、前記センサ、及び前記ポンプのうちの少なくとも1を動作させるための制御部と、器具の状態を示すための表示部と、を有する回路基板アッセンブリと、
前記入口ポートに流体的に接続された管腔を規定するプローブと、
を具えることを特徴とするガス検知器具。
【請求項1】
少なくとも1の所定のガスの存在を検出するためのガスセンサであって、
IR源と、
マイクロフォンと、
検知すべき前記少なくとも1の所定のガスと実質的に同じである基準ガスと、
前記マイクロフォンに通じる圧力ポートを有する基準チャンバを中に規定する基準ボディと、
前記所定のガスの吸収ピークに対応する少なくともIR波長が透過する広帯域の透光窓であって、前記IR源と前記基準チャンバとの間に置かれた透光窓と、
を具えており、
前記基準ガスが前記透光窓と前記マイクロフォンとの間の前記基準チャンバの中に収容されることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記IR源が低熱質量であることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
さらに、前記IR源と試料ガスとの間に置かれた第2の広帯域の透光窓を具え、前記試料ガスから前記IR源を隔離することを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記第2の透光窓が上流側のIR窓であり、前記透光窓が下流側のIR窓であることを特徴とする請求項3に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記圧力ポートが前記マイクロフォンに音響的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記上流側及び下流側の窓が、サファイヤ、フッ化カルシウム、セレン化亜鉛、シリコン、及びゲルマニウムから成る群のうちの1であることを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記上流側及び下流側の窓が、前記上流側及び下流側の窓によって伝送されるIRエネルギバンドを狭くするようコーティングされていることを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項8】
さらに、前記IR源に動作可能に結合され、ガス検知器具に繋がれる電気接点を有する第1のプリント回路基板と、
前記マイクロフォンに動作可能に結合され、アクティブフィルタ回路及び前記第1のプリント回路基板に電気的に接続された接点を有する第2のプリント回路基板と、
を具えることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項9】
さらに、前記基準ボディに結合され、前記基準チャンバに隣接する試料チャンバを規定するマニホールドを具えており、
前記試料チャンバが試料ガスを導入及び排出するための入口ポート及び出口ポートを有し、
前記IR源が、前記試料チャンバの中の前記試料ガスを介してIRエネルギを導くよう配置されることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項10】
さらに、前記IR源と前記試料チャンバとの間に設置され、前記IR源から発生したIRエネルギを前記試料ガスに与える第2の広帯域の透光窓を具えており、
前記第2の透光窓が上流側のIR窓で前記透光窓が下流側のIR窓であり、
前記IR源が、まず前記上流側の窓を介して、その次に前記試料チャンバの中の前記試料ガスを介して、さらに前記下流側の窓を介して前記基準ガスの中にIRエネルギを導くよう配置されていることを特徴とする請求項9に記載のガスセンサ。
【請求項11】
前記試料チャンバが、研磨、メッキ、及び金メッキのうちの少なくとも1を施したものであることを特徴とする請求項9に記載のガスセンサ。
【請求項12】
前記基準チャンバが、研磨、メッキ、及び金メッキのうちの少なくとも1を施したものであることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項13】
前記基準チャンバが、研磨、メッキ、及び金メッキのうちの少なくとも1を施したものであることを特徴とする請求項9に記載のガスセンサ。
【請求項14】
前記IR源がPWM波形で駆動されるよう動作可能であり、
PWM波形発生器が前記IR源に動作可能に結合されていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項15】
前記PWM波形発生器が単段発生器及び二段発生器のうちの一方であることを特徴とする請求項14に記載のガスセンサ。
【請求項16】
前記IR源がPWM波形で駆動されるよう動作可能であり、
PWM波形発生器が前記IR源に動作可能に結合されていることを特徴とする請求項9に記載のガスセンサ。
【請求項17】
前記PWM波形発生器が単段発生器及び二段発生器のうちの一方であることを特徴とする請求項16に記載のガスセンサ。
【請求項18】
前記基準ガスが二酸化炭素であることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項19】
前記マイクロフォンがエレクトレット・コンデンサ・マイクロフォンであることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項20】
さらに、携帯型ガス検知器具を具えており、
前記携帯型ガス検知器具が、
前記基準ボディに結合され、前記基準チャンバに隣接する試料チャンバを規定するマニホールドであって、前記試料チャンバが前記試料ガスを導入及び排出するための入口ポート及び出口ポートを有しており、前記IR源が前記試料チャンバの中の前記試料ガスを介してIRエネルギを導くよう配置されているマニホールドと、
前記IR源に動作可能に結合され、前記IR源に電気的に接続されて前記ガス検知器具に繋がれる第1の接点を有する第1のプリント回路基板と、
前記マイクロフォンに動作可能に結合され、アクティブフィルタ回路及び前記第1のプリント回路基板に電気的に接続された第2の接点を有する第2のプリント回路基板と、
電源と、
前記電源に動作可能に結合された回路基板アッセンブリであって、前記第1及び第2のプリント回路基板に動作可能に接続されたセンサ回路と、前記入口ポート及び前記出口ポートの少なくとも一方に流体的に接続された吸引ポンプと、前記IR源、前記センサ、及び前記ポンプのうちの少なくとも1を動作させるための制御部と、器具の状態を示すための表示部と、を有する回路基板アッセンブリと、
前記入口ポートに流体的に接続された管腔を規定するプローブと、
前記IR源、前記マイクロフォン、前記基準ボディ、前記上流側及び下流側の透光窓を中に嵌め込む大きさのセンサ区画と、前記電源を中に嵌め込む大きさの電源区画と、を規定する外殻と、
を有することを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項21】
前記ガス検知器具がガス漏れ検知器具及びガス監視器具のうちの一方であることを特徴とする請求項20に記載のガスセンサ。
【請求項22】
少なくとも1の所定のガスの存在を検出するためのガスセンサであって、
IR源と、
マイクロフォンと、
検知すべき前記少なくとも1の所定のガスと実質的に同じである基準ガスと、
前記マイクロフォンに通じる圧力ポートを有する基準チャンバを中に規定する基準ボディと、
前記基準ボディに結合され、前記基準チャンバに隣接する試料チャンバを規定するマニホールドであって、前記試料チャンバが前記試料ガスを導入及び排出するための入口ポート及び出口ポートを有するマニホールドと、
前記基準チャンバと前記試料チャンバとの間に置かれ、前記IR源と前記基準チャンバとの間に置かれた下流側の広帯域の透光窓であって、前記所定のガスの吸収ピークに対応する少なくともIR波長が透過し、前記基準ガスが前記下流側の透光窓と前記マイクロフォンとの間の前記基準チャンバの中に収容される下流側の広帯域の透光窓と、
前記IR源と前記試料チャンバとの間に配置され、前記試料チャンバ内の前記試料ガスから前記IR源を隔離する上流側の広帯域の透光窓と、
まず前記上流側の窓を介して、その次に前記試料チャンバの中の前記試料ガスを介して、さらに前記下流側の窓を介して前記基準ガスの中にIRエネルギを導くよう配置されたIR源と、
前記IR源に動作可能に結合され、ガス検知器具に繋げられる電気接点を有する第1のプリント回路基板と、
前記マイクロフォンに動作可能に結合され、アクティブフィルタ回路及び前記第1のプリント回路基板に電気的に接続された接点を有する第2のプリント回路基板と、
を具えることを特徴とするガスセンサ。
【請求項23】
携帯型ガス検知器具であって、
電源と、
請求項22に係るガスセンサを中に嵌め込む大きさのセンサ区画と、前記電源を中に嵌め込む大きさの電源区画と、を規定する外殻と、
前記電源に動作可能に結合された回路基板アッセンブリであって、前記第1及び第2のプリント回路基板に動作可能に接続されたセンサ回路と、前記入口ポート及び前記出口ポートの少なくとも一方に流体的に接続された吸引ポンプと、前記IR源、前記センサ、及び前記ポンプのうちの少なくとも1を動作させるための制御部と、器具の状態を示すための表示部と、を有する回路基板アッセンブリと、
前記入口ポートに流体的に接続された管腔を規定するプローブと、
を具えることを特徴とするガス検知器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−2938(P2009−2938A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−121147(P2008−121147)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(508137279)コア エンタープライゼズ インク. (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121147(P2008−121147)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(508137279)コア エンタープライゼズ インク. (1)
【Fターム(参考)】
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