説明

吸引作業車

【課題】回収物や回収方法に応じて適正な真空圧(適正なエンジン回転数)に自動的に制御することができ、無駄なエネルギー消費を低減して燃費を向上させること。
【解決手段】吸引装置の駆動によりタンク内を減圧し、吸引ホースから回収物をタンク内に吸引回収する吸引作業車であって、吸引装置を駆動するエンジンと、吸引装置により生じる真空圧が、第一設定圧力に達した時に第一信号を出力し、第一設定圧力より高い第二設定圧力に達した時に第二信号を出力し、第二設定圧力より高い第三設定圧力に達した時に第三信号を出力する圧力スイッチと、圧力スイッチからの出力信号に基づいてエンジンの回転数を制御する回転数制御手段を備えており、回転数制御手段は、第一信号を受信した時には回転数を第一設定回転数とし、第二信号を受信した時は第一設定回転数より高い第二設定回転数とし、第三信号を受信した時は第二設定回転数より高い第三設定回転数とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸引作業車に関し、より詳しくは、作業内容に応じてエンジンの回転数を適正に制御することができる吸引作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥等を吸引回収するための吸引作業車を使用した吸引作業は、エンジンによりブロワ等の吸引装置を駆動してタンク内を減圧し、タンクに接続されたホースを介して汚泥を吸引することにより行われる。
吸引作業においては途中で作業を何度も中断する場合があるため、中断時にはエンジンを低速化し、作業再開時にはエンジンを高速化するというエンジン回転数の調整を行うことが省エネルギーや騒音の観点から好ましい。
しかし、従来の吸引作業車においては、作業現場(ホースの先端位置)と吸引車が離れた位置にある場合、作業者はエンジンの回転数を調整するためには現場から吸引車に戻らなければならず、作業効率が非常に悪かった。
【0003】
下記特許文献1に開示された吸引作業車は、作業中断時(汚泥非吸引時)にはエンジンを自動的に低速化させ、作業中(汚泥吸引時)にはエンジンを自動的に高速化することができるものである。
しかしながら、この吸引作業車にも改良すべき問題点が存在していた。
吸引作業においては回収物や回収方法によって適正な真空圧(即ち、適正なエンジンの回転数)が異なる。例えば、砂利を吸引する場合やドブ漬け吸引の場合には高い真空圧(高い回転数)を必要とするが、粉体を吸引する場合や換気のための吸引の場合には低い真空圧(低い回転数)しか必要としない。
ところが、上記吸引作業車では、回収物や回収方法に応じて自動的に適正な真空圧(適正なエンジン回転数)に制御することはできない。そのため、本来は低い真空圧しか必要としない作業においても高い真空圧で作業を行わなければならず、無駄なエネルギーを消費し、燃費が悪化することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−37807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、回収物や回収方法に応じて適正な真空圧(適正なエンジン回転数)に自動的に制御することが可能であり、無駄なエネルギー消費を低減して燃費を向上させることができる吸引作業車を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、吸引装置の駆動によりタンク内を減圧して、吸引ホースから回収物を前記タンク内に吸引回収する吸引作業車であって、前記吸引装置を駆動するエンジンと、前記吸引装置により生じる真空圧が、第一設定圧力に達した時に第一信号を出力し、前記第一設定圧力より高い第二設定圧力に達した時に第二信号を出力し、前記第二設定圧力より高い第三設定圧力に達した時に第三信号を出力する圧力スイッチと、前記圧力スイッチから受信した出力信号に基づいて前記エンジンの回転数を制御する回転数制御手段とを備えており、前記回転数制御手段は、前記第一信号を受信した時には前記回転数をアイドリング回転数である第一設定回転数とし、前記第二信号を受信した時は前記回転数を前記第一設定回転数より高い第二設定回転数とし、前記第三信号を受信した時は前記回転数を前記第二設定回転数より高い第三設定回転数とすることを特徴とする吸引作業車に関する。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記回転数制御手段が、前記圧力スイッチからの出力信号を受信して回転するモータと、前記モータの回転角度に応じて前記エンジンの調速機レバーを操作する操作手段とからなり、前記モータの回転軸は、基準位置において前記第二信号の受信時には第一設定角度まで一方向に回転し、第一設定角度において前記第三信号の受信時には前記第一設定角度より大きい第二設定角度まで一方向に回転するとともに、第二設定角度において前記第二信号の受信時には第一設定角度まで逆方向に回転し、第一設定角度において前記第一信号の受信時には基準位置まで逆方向に回転し、前記操作手段は、前記モータが第一設定角度まで回転した時に第一操作量まで前記調速機レバーを操作し、前記モータが第二設定角度まで回転した時に第一操作量より多い第二操作量まで前記調速機レバーを操作することを特徴とする請求項1記載の吸引作業車に関する。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記回転数制御手段が、第一乃至第三のリミットスイッチを備えており、前記モータが回転した時に、第一のリミットスイッチが前記基準位置にあることを検知し、第二のリミットスイッチが第一の設定角度まで回転したことを検知し、第三のリミットスイッチが第二の設定角度まで回転したことを検知し、前記モータは、前記第一乃至第三のリミットスイッチからの検知信号を受信した時に回転を停止することを特徴とする請求項2記載の吸引作業車に関する。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記回転数制御手段のモータがサーボモータからなることを特徴とする請求項2記載の吸引作業車に関する。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記圧力スイッチは、前記切換スイッチを自動運転に切り替えた時に動作し、手動運転に切り替えた時には動作しないことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の吸引作業車に関する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、圧力スイッチが、吸引装置により生じる真空圧が第一設定圧力に達した時に第一信号を出力し、前記第一設定圧力より高い第二設定圧力に達した時に第二信号を出力し、前記第二設定圧力より高い第三設定圧力に達した時に第三信号を出力するとともに、回転数制御手段が、圧力スイッチから第一信号を受信した時にはエンジンの回転数をアイドリング回転数である第一設定回転数とし、第二信号を受信した時は第一設定回転数より高い第二設定回転数とし、第三信号を受信した時は回転数を前記第二設定回転数より高い第三設定回転数とすることから、吸引作業時における回収物や回収方法に応じて適正な真空圧(適正なエンジン回転数)に自動的に制御することが可能となり、無駄なエネルギー消費を低減して燃費を向上させることができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、回転数制御手段が、圧力スイッチからの出力信号を受信して回転するモータと、モータの回転角度に応じてエンジンの調速機レバーを操作する操作手段とからなり、モータの回転軸が、圧力スイッチから基準位置において第二信号の受信時には第一設定角度まで一方向に回転し、第一設定角度において第三信号の受信時には第一設定角度より大きい第二設定角度まで一方向に回転するとともに、第二設定角度において第二信号の受信時には第一設定角度まで逆方向に回転し、第一設定角度において第一信号の受信時には基準位置まで逆方向に回転し、操作手段が、モータが第一設定角度まで回転した時に第一操作量まで調速機レバーを操作し、モータが第二設定角度まで回転した時に第一操作量より多い第二操作量まで調速機レバーを操作する。そのため、圧力スイッチからの出力信号に応じてモータの回転角度が制御され、この制御されたモータの回転角度に応じてエンジンの調速機レバーの操作量が制御されることとなり、真空圧に応じてエンジンの回転数を自動的に制御することができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、モータが回転した時に、第一のリミットスイッチが基準位置を検知し、第二のリミットスイッチが第一の設定角度まで回転したことを検知し、第三のリミットスイッチが第二の設定角度まで回転したことを検知し、モータは第一乃至第三のリミットスイッチからの検知信号を受信した時に回転を停止することから、モータの回転角度を確実に制御することができ、真空圧に応じてエンジン回転数を適正に制御することが可能となる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、回転数制御手段のモータがサーボモータからなることから、リミットスイッチが無くともモータの回転角度を精密に制御することが可能となり、回転数制御手段の構造を簡素化・小型化することができる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、自動運転と手動運転の切換スイッチを備えており、圧力スイッチは、切換スイッチを自動運転に切り替えた時に動作し、手動運転に切り替えた時には動作しないことから、自動運転と手動運転を容易に切り換えることができるとともに、自動運転時においてのみ圧力スイッチが動作させて、真空圧に応じてエンジン回転数を適正に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る吸引作業車の外観図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明に係る吸引作業車の全体構成を示す概略構成図である。
【図3】吸引装置を含む吸引ユニットの構成を示すフローシートである。
【図4】回転数制御手段の一例を示す図であって、(a)〜(c)は回転数制御手段の動作を順次示している。
【図5】本発明に係る吸引作業車の操作盤を示す図である。
【図6】本発明に係る吸引作業車の吸引動作(開始動作)の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る吸引作業車の吸引動作(停止動作)の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る吸引作業車の動作時における時間、真空圧、エンジン回転数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る吸引作業車の好適な実施形態について、図面を適宜参照しながら説明する。
図1は本発明に係る吸引作業車の外観図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。図2は本発明に係る吸引作業車の全体構成を示す概略構成図である。
本発明に係る吸引作業車は、吸引装置(1)の駆動によりタンク(2)内を減圧して、吸引ホース(3)から回収物をタンク内に吸引回収する吸引作業車であって、吸引装置(1)を駆動するエンジン(4)と、吸引ホース(3)を介してタンク(2)に作用する真空圧に応じて異なる信号を出力する圧力スイッチ(5)と、圧力スイッチ(5)から受信した出力信号に基づいてエンジン(4)の回転数を制御する回転数制御手段(6)とを備えている。
【0018】
図3は吸引装置(1)を含む吸引ユニットの構成を示すフローシートである。
吸引装置(1)はブロワ又はポンプからなり、図示例では直列に接続された2台のルーツブロワ(1a)(1b)からなる。
上流側のルーツブロワ(1a)の吸引部は、2次キャッチャ(7)及び3次キャッチャ(8)を介してタンク(2)と接続されている。2次キャッチャ(7)はサイクロン式集塵機からなり、タンク(2)に回収されなかった微細な固形分を捕捉する。3次キャッチャ(8)は湿式集塵槽からなり、2次キャッチャ(7)で捕捉されなかった微細な固形分を捕捉する。
【0019】
上流側のルーツブロワ(1a)の吐出部に接続された配管は中途部で分岐し、一方の分岐管は下流側のルーツブロワ(1b)の吸引部に接続され、他方の分岐管は逆止弁(11)を介して吐出サイレンサ(9)の入口と接続されている。
下流側のルーツブロワ(1b)の吐出部は、吐出サイレンサ(9)を介して4次キャッチャ(10)と接続されている。4次キャッチャ(10)はミストキャッチャ兼消音水槽からなり、3次キャッチャ(8)で捕捉されずにルーツブロワ(1a)(1b)を通過した微細な固形分を捕捉する機能と消音機能を有している。
【0020】
4次キャッチャ(10)の吐出部に接続された配管は中途部で分岐し、一方の分岐管は、負荷開放弁(12)を介して3次キャッチャ(8)と上流側のルーツブロワ(1a)を連結する配管の中途部上流側に接続されている。他方の分岐管は、負荷開放弁(13)を介して2次キャッチャ(7)と3次キャッチャ(8)を連結する配管の中途部下流側に接続されている。2次キャッチャ(7)と3次キャッチャ(8)を連結する配管の中途部上流側にはバキュームブレーカ(20)が設けられている。
4次キャッチャ(10)の水槽部には、水槽内の水を冷却水として供給するための給水管(14)が接続されている。給水管(14)は、フローゲージ(15)を介して3次キャッチャ(8)と上流側のルーツブロワ(1a)を連結する配管の中途部下流側に接続されている。
【0021】
下流側のルーツブロワ(1b)と吐出サイレンサ(9)を連結する配管(16)の中途部には切換弁(第三切換弁)(17)が設けられている。配管(16)は、切換弁(17)の上流側において分岐されており、この分岐管(22)は切換弁(第二切換弁)(18)を介してタンク(2)と2次キャッチャ(7)を連結する配管の中途部上流側に接続されている。タンク(2)と2次キャッチャ(7)を連結する配管の中途部下流側には切換弁(第一切換弁)(19)が設けられている。
配管(16)には、分岐管(22)の上流側と切換弁(第三切換弁)(17)の下流側を連結するように、プレッシャブレーカ(21)が設けられている。
【0022】
圧力スイッチ(5)は、3次キャッチャ(8)と上流側のルーツブロワ(1a)を連結する配管の中途部上流側に取り付けられており、吸引装置(1)により生じる当該配管内の真空圧に応じて異なる電気信号を出力する。
具体的には、真空圧が第一設定圧力(例えば−30kPa)に達した時に第一信号を出力し、第一設定圧力より高い第二設定圧力(例えば−50kPa)に達した時に第二信号を出力し、第二設定圧力より高い第三設定圧力(例えば−90kPa)に達した時に第三信号を出力する。
【0023】
回転数制御手段(6)は、圧力スイッチ(5)から受信した出力信号に基づいてエンジン(4)の回転数を制御する。
具体的には、第一信号を受信した時には回転数をアイドリング回転数である第一設定回転数(例えば800rpm)とし、第二信号を受信した時は第一設定回転数より高い第二設定回転数(例えば1000rpm)とし、第三信号を受信した時は回転数を第二設定回転数より高い最大回転数である第三設定回転数(例えば1250rpm)とするように制御する。
【0024】
図4は回転数制御手段(6)の一例を示す図であって、(a)〜(c)は回転数制御手段(6)の動作を順次示している。
回転数制御手段(6)は、圧力スイッチ(5)からの出力信号を受信して回転するモータ(61)と、モータ(61)の回転角度に応じてエンジン(4)の調速機レバー(41)を操作する操作手段(62)とからなる。
【0025】
モータ(61)の回転軸は、基準位置(0°)において圧力スイッチ(5)から第二信号を受信した時には第一設定角度(例えば30°)まで一方向に回転し、第一設定角度にあるときに第三信号を受信した時には第一設定角度より大きい第二設定角度(例えば60°)まで一方向に回転する。また、第二設定角度(例えば60°)にあるときに第二信号を受信した時には第一設定角度(例えば30°)まで逆回転し、第一設定角度(例えば30°)にあるときに第一信号を受信した時には基準位置(0°)まで逆回転する。
【0026】
操作手段(62)は、モータ(61)の回転軸と調速機レバー(41)とを連結するリンク機構からなり、モータ(61)の回転軸が第一設定角度まで回転した時に第一操作量までエンジン(4)の調速機レバー(41)を操作(引っ張る又は押す(戻す))し、モータ(61)の回転軸が第二設定角度まで回転した時に第一操作量より多い第二操作量まで調速機レバー(41)を操作する。
【0027】
回転数制御手段(6)は、第一リミットスイッチ(63)、第二リミットスイッチ(64)、第三リミットスイッチ(65)を備えている。
モータ(61)の回転軸には、該回転軸と共に回転する検知用バー(61a)が取り付けられている。検知用バー(61a)の先端は、回転軸が一方向(図4の反時計回り方向)に回転した時において、回転角度の増加に伴って第一リミットスイッチ(63)、第二リミットスイッチ(64)、第三リミットスイッチ(65)により順次検知される。
より具体的には、第一のリミットスイッチ(63)が基準位置にあることを検知し、第二のリミットスイッチ(64)が第一の設定角度に達したことを検知し、第三のリミットスイッチ(65)が第二の設定角度に達したことを検知する。
【0028】
モータ(61)はステッピングモータ等からなり、第一乃至第三のリミットスイッチ(61)(62)(63)からの検知信号を受信した時に回転を停止する。
【0029】
以下、図4(a)〜(c)に基づいて回転数制御手段(6)の動作を説明する。
エンジン(4)の回転数がアイドリング回転数(第一設定回転数)であるとき、モータ(61)の回転軸は基準位置(0°)にある(図4(a)参照)。この状態では、第一リミットスイッチ(63)が検知用バー(61a)を検知している。
吸引作業が開始されると真空圧が増加し、圧力スイッチ(5)は真空圧が第一設定圧力に達した時に第一信号を出力し、第二設定圧力に達した時に第二信号を出力する。
モータ(61)の回転軸は、圧力スイッチ(5)から第二信号を受信すると、基準位置(0°)から第一設定角度(例えば30°)まで一方向に回転する(図4(b)参照)。このとき、第二リミットスイッチ(64)が検知用バー(61a)を検知し、モータ回転軸の回転は第一設定角度にて停止する。モータ(61)の回転軸が第一設定角度まで回転すると、リンク機構によりエンジン(4)の調速機レバー(41)が第一操作量まで引っ張られ、エンジン(4)の回転数が第二設定回転数まで増加する。
【0030】
更に吸引作業によって真空圧が増加すると、圧力スイッチ(5)は、真空圧が第三設定圧力に達した時に第三信号を出力する。
モータ(61)の回転軸は、圧力スイッチ(5)から第三信号を受信すると、第一設定角度(例えば30°)から第二設定角度(例えば60°)まで一方向に回転する(図4(c)参照)。このとき、第三リミットスイッチ(65)が検知用バー(61a)を検知し、モータ回転軸の回転は第二設定角度にて停止する。モータ(61)の回転軸が第二設定角度まで回転すると、リンク機構によりエンジン(4)の調速機レバー(41)が第二操作量まで引っ張られ、エンジン(4)の回転数が第三設定回転数まで増加する。
【0031】
吸引作業を停止すると、真空圧が減少するので、圧力スイッチ(5)は真空圧が第二設定圧力まで低下した時に第二信号を出力する。
モータ(61)の回転軸は、圧力スイッチ(5)から第二信号を受信すると、第二設定角度(例えば60°)から第一設定角度(例えば30°)まで逆方向に回転する(図4(b)参照)。このとき、第二リミットスイッチ(64)が検知用バー(61a)を検知し、モータ回転軸の回転は第一設定角度にて停止する。モータ(61)の回転軸が第一設定角度まで回転すると、エンジン(4)の調速機レバー(41)が第一操作量まで戻り、エンジン(4)の回転数が第二設定回転数まで減少する。
低真空圧しか必要としない作業を行う場合は、この状態を維持して作業を続けることができる。
【0032】
更に真空圧が減少すると、圧力スイッチ(5)は真空圧が第一設定圧力まで低下した時に第一信号を出力する。
モータ(61)の回転軸は、圧力スイッチ(5)から第一信号を受信すると、第一設定角度(例えば30°)から基準位置(0°)まで逆方向に回転する(図4(a)参照)。このとき、第一リミットスイッチ(63)が検知用バー(61a)を検知し、モータ回転軸の回転は基準位置にて停止する。モータ(61)の回転軸が基準位置まで回転すると、エンジン(4)の調速機レバー(41)が基準位置まで戻り、エンジン(4)の回転数が第一設定回転数(アイドリング回転数)まで減少する。
【0033】
上記した如く、圧力スイッチ(5)からの出力信号に応じてモータ(61)の回転角度が制御され、この制御されたモータ(61)の回転角度に応じてエンジン(4)の調速機レバー(41)の操作量が制御されることとなるため、真空圧に応じてエンジン(4)の回転数を自動的に制御することができる。
【0034】
回転数制御手段(6)のモータ(61)は、サーボモータであってもよい。
この場合、リミットスイッチ(63〜65)が無くとも、モータ(61)の回転角度を圧力スイッチ(5)からの出力信号に基づいて精密に制御することが可能となるため、回転数制御手段(6)の構造を簡素化・小型化することができる。
尚、サーボモータの回転軸は、上述の場合と同様に、基準位置において第二信号の受信時には第一設定角度まで一方向に回転し、第一設定角度において第三信号の受信時には第一設定角度より大きい第二設定角度まで一方向に回転するとともに、第二設定角度において第二信号の受信時には第一設定角度まで逆方向に回転し、第一設定角度において第一信号の受信時には基準位置まで逆方向に回転する。
【0035】
図5は本発明に係る吸引作業車の操作盤を示す図である。
操作盤(23)は、運転席の後方の車両側面に取り付けられている(図1(b)参照)。
操作盤(23)には自動運転と手動運転の切換スイッチ(231)が設けられており、この切換スイッチ(231)を押すことにより自動運転と手動運転を切り換えることができる。
圧力スイッチ(5)は、切換スイッチ(231)を自動運転に切り替えた時に動作し、手動運転に切り替えた時には動作しない。従って、手動運転時には、吸引作業時においてエンジンは1種類の設定回転数に達するのみであり、自動運転時のように第一設定回転数から第二設定回転数へ、或いは第二設定回転数から第一設定回転数へと自動的に回転数が変化することはない。
【0036】
更に、操作盤(23)には、吸引、排出、圧送の各動作を開始するための3つの操作スイッチ(232)と、各操作を停止するための停止スイッチ(233)が設けられている。
3つの操作スイッチ(232)を押すことにより、第一切換弁(19)、第二切換弁(18)、第三切換弁(17)の開閉を切り換えて、吸引、排出、圧送の各動作を切り換えることができる。
表1は、第一切換弁(19)、第二切換弁(18)、第三切換弁(17)、負荷開放弁(12)の開閉状態と、吸引、排出、圧送の各動作の関係を示している。尚、図3中の矢印は、実線が吸引時の空気の流れ、長破線が圧送時の空気の流れ、短破線が回収物の流れ、二点鎖線が冷却水の流れを示している。
【0037】
【表1】

【0038】
第一切換弁(19)、第二切換弁(18)、第三切換弁(17)、負荷開放弁(12)は、エアー式バタフライ弁が好適に用いられるが、電気式や油圧式のバタフライ弁を用いてもよい。
【0039】
図6及び図7は本発明に係る吸引作業車の吸引動作の一例を示すフローチャートであり、図8は本発明に係る吸引作業車の動作時における時間、真空圧、エンジン回転数の関係を示すグラフである。
以下、図6乃至図8に基づいて、本発明に係る吸引作業車の吸引動作(自動運転時)について説明する。
【0040】
<準備段階>
先ずエンジンを回転する。このときのエンジンの回転数はアイドリング回転数である。
次いで、PTOを接続してブロワ等の吸引装置を駆動した後、切換スイッチ(231)を押して自動運転に切り替えて、吸引の操作スイッチ(232)をオンする。この状態(吸引作業が開始されていない状態)では、吸引ホース(3)の先端が回収物に接触しておらず大気のみを吸引しているため、真空圧が増加していない。そのため、圧力スイッチ(5)からは電気信号が出力されず、エンジンの回転数はアイドリング回転数のままである。
【0041】
<吸引作業1(第一段階)>
吸引作業を開始すると、吸引ホース(3)の先端が回収物に接触した状態となるため、真空圧が増加し、第一設定圧力に達した時に圧力スイッチ(5)は第一信号を出力するが、エンジン(4)の回転数はアイドリング回転数のままである。
更に真空圧が増加して第二設定圧力に達した時に、圧力スイッチ(5)は第二信号を出力する。すると、第二信号を受信した回転数制御手段(5)のモータ(61)の回転軸は、基準位置から第一設定角度まで一方向に回転し、操作手段(62)が第一操作量まで調速機レバー(41)を引っ張る。これにより、エンジン(4)の回転数が第二設定回転数に達するまで増加する。尚、モータ(61)の回転角度は、モータがステッピングモータ等である場合にはリミットスイッチにより制御され、サーボモータである場合にはモータ自身で制御される。この回転角度の制御によりエンジンの回転数が制御され、設定回転数(この場合は第二設定回転数)を超えることはない。
【0042】
<吸引作業2(第二段階)>
更に真空圧が増加して第三設定圧力に達した時に、圧力スイッチ(5)は第三信号を出力する。すると、第三信号を受信した回転数制御手段(5)のモータ(61)の回転軸は、第一設定角度から第二設定角度まで一方向に回転し、操作手段(62)が第二操作量まで調速機レバー(41)を引っ張る。これにより、エンジン(4)の回転数が第三設定回転数(最大回転数)に達するまで増加する。
【0043】
<吸引作業停止>
吸引作業を停止すると(吸引ホース(3)の先端を回収物から離すと)、真空圧が減少し、第二設定圧力に達した時に、圧力スイッチ(5)は第二信号を出力する。すると、第二信号を受信した回転数制御手段(5)のモータ(61)の回転軸は、第二設定角度から第一設定角度まで逆方向に回転し、操作手段(62)が第一操作量まで調速機レバー(41)を戻す。これにより、エンジン(4)の回転数が第二設定回転数に達するまで減少する。
この真空圧が減少した状態(低真空圧状態)で作業をする場合(粉体等の軽量の回収物の吸引作業を行う場合)には、真空圧をこれ以上低下させずに第二設定回転数を維持した状態で作業を行うことができる。
作業を終了する場合には、回収物が無い状態となるために真空圧は更に減少し、第一設定圧力に達した時に、圧力スイッチ(5)は第一信号を出力する。すると、第一信号を受信した回転数制御手段(5)のモータ(61)の回転軸は、第一設定角度から基準位置まで逆方向に回転し、操作手段(62)が基準位置まで調速機レバー(41)を戻す。これにより、エンジン(4)の回転数が第一設定回転数(アイドリング回転数)に達するまで減少する。
【0044】
<作業終了>
作業終了時には、吸引の操作スイッチ(232)をオフにし、PTOの接続を切って、エンジンを停止する。
【0045】
本発明において、第一切換弁(19)、第二切換弁(18)、第三切換弁(17)、負荷開放弁(12)の切換は、自動で行うことが可能であることが好ましいが、手動で行うようにしてもよい。
上記動作において、弁の切換を自動で行う場合、切換スイッチ(231)を押して自動運転に切り替えて、吸引の操作スイッチ(232)をオンにした時に、自動的に全ての弁が吸引状態に切り替わるが、手動で行う場合には、手動で弁を吸引状態に切り替えた後に切換スイッチ(231)を押す。
また、弁の切換を自動で行う場合、吸引の操作スイッチ(232)をオフにした時に、自動的に負荷開放弁(12)が開放状態となるが、手動で行う場合には、負荷開放弁(12)を開放状態とした後、吸引の操作スイッチ(232)をオフにする。
【0046】
上記したように、本発明に係る吸引作業車によれば、吸引作業時における回収物や回収方法に応じて適正な真空圧(適正なエンジン回転数)に自動的に制御することが可能であり、無駄なエネルギー消費を低減して燃費を向上させることができる。
また、弁の切換により圧送、排出の作業を行うことができ、圧送、排出作業時においても、圧力スイッチ(5)と回転数制御手段(6)の作用により、適正な真空圧(適正なエンジン回転数)に自動的に制御することが可能となり、無駄なエネルギー消費を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、汚泥や粉体等を吸引回収するための吸引作業車として利用される。
【符号の説明】
【0048】
1 吸引装置
2 タンク
3 吸引ホース
4 エンジン
41 調速機レバー
5 圧力スイッチ
6 回転数制御手段
61 モータ
62 操作手段
63 第一リミットスイッチ
64 第二リミットスイッチ
65 第三リミットスイッチ
231 切換スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引装置の駆動によりタンク内を減圧して、吸引ホースから回収物を前記タンク内に吸引回収する吸引作業車であって、
前記吸引装置を駆動するエンジンと、
前記吸引装置により生じる真空圧が、第一設定圧力に達した時に第一信号を出力し、前記第一設定圧力より高い第二設定圧力に達した時に第二信号を出力し、前記第二設定圧力より高い第三設定圧力に達した時に第三信号を出力する圧力スイッチと、
前記圧力スイッチから受信した出力信号に基づいて前記エンジンの回転数を制御する回転数制御手段とを備えており、
前記回転数制御手段は、前記第一信号を受信した時には前記回転数をアイドリング回転数である第一設定回転数とし、前記第二信号を受信した時は前記回転数を前記第一設定回転数より高い第二設定回転数とし、前記第三信号を受信した時は前記回転数を前記第二設定回転数より高い第三設定回転数とすることを特徴とする吸引作業車。
【請求項2】
前記回転数制御手段が、
前記圧力スイッチからの出力信号を受信して回転するモータと、
前記モータの回転角度に応じて前記エンジンの調速機レバーを操作する操作手段とからなり、
前記モータの回転軸は、基準位置において前記第二信号の受信時には第一設定角度まで一方向に回転し、第一設定角度において前記第三信号の受信時には前記第一設定角度より大きい第二設定角度まで一方向に回転するとともに、第二設定角度において前記第二信号の受信時には第一設定角度まで逆方向に回転し、第一設定角度において前記第一信号の受信時には基準位置まで逆方向に回転し、
前記操作手段は、前記モータが第一設定角度まで回転した時に第一操作量まで前記調速機レバーを操作し、前記モータが第二設定角度まで回転した時に第一操作量より多い第二操作量まで前記調速機レバーを操作することを特徴とする請求項1記載の吸引作業車。
【請求項3】
前記回転数制御手段が、第一乃至第三のリミットスイッチを備えており、
前記モータが回転した時に、第一のリミットスイッチが前記基準位置にあることを検知し、第二のリミットスイッチが第一の設定角度まで回転したことを検知し、第三のリミットスイッチが第二の設定角度まで回転したことを検知し、
前記モータは、前記第一乃至第三のリミットスイッチからの検知信号を受信した時に回転を停止することを特徴とする請求項2記載の吸引作業車。
【請求項4】
前記回転数制御手段のモータがサーボモータからなることを特徴とする請求項2記載の吸引作業車。
【請求項5】
自動運転と手動運転の切換スイッチを備えており、
前記圧力スイッチは、前記切換スイッチを自動運転に切り替えた時に動作し、手動運転に切り替えた時には動作しないことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の吸引作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−252353(P2011−252353A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128178(P2010−128178)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000165343)兼松エンジニアリング株式会社 (23)
【Fターム(参考)】