説明

吸湿捲縮複合繊維

【課題】吸湿すると捲縮が発現し、見かけ糸長が収縮することによって、通気性自己調節機能及び透湿防水機能を有する布帛用の原糸及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリアミド成分とポリエステル成分とがサイドバイサイド型に接合されている複合繊維であって、ポリエステル成分が繰り返し単位中60〜99.5モル%をエチレンテレフタレート単位が占め、0.5〜40モル%をエチレンイソフタレート単位が占める共重合ポリエステルであり、特定のポリエーテルエステルアミドを該ポリエステル成分に5〜55重量%含み、該複合繊維を30分間沸水処理した後100℃で乾熱処理して捲縮を発現させ、捲縮を発現させた後に160℃で乾熱処理した複合繊維の捲縮率DCが0.2〜3.0%であり、該複合繊維を水浸漬後の捲縮率HCが0.5〜7.0%であり、下記式の捲縮率の差△Cが0.5〜6.0%である複合繊維。ΔC(%)=HC(%)−DC(%)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度変化に対して可逆的に捲縮率が変化する通気性の自己調節機能を有し、吸湿すると捲縮が発現することで、糸の見掛け長さが収縮するという感湿可逆捲縮性能を有し、染色や仕上げ工程を経ても優れた捲縮率変化特性を発揮する布帛を得ることができる複合繊維に関する。更に詳しくは織編物にした時に、その湿潤時の空隙が乾燥時のそれよりも低下する事を特徴とする複合繊維及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
綿や羊毛などの天然繊維の織編物を用いた衣料は、湿度変化に対して可逆的に捲縮率が変化するため、周囲の湿度に応じて織編物の目が開いて通気性が向上し、体を衣料の間や、衣料間にできた空気層の湿度を下げるといった特性、いわゆる通気性自己調節機能と、繊維自らが汗等の水分を吸着し、放湿する吸放湿性能有している。そのため、このような天然繊維を用いた衣料を着用すると、周囲の湿度変化や汗による不快感を感じることは少ない。このような天然繊維にならって、合成繊維にも吸湿による捲縮性自己調節機能を付与する試みがなされている。例えば、変性ポリエステルとポリアミドをサイドバイサイド型に接合し湿度変化に対し可逆的な形態変化を付与する複合繊維が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
その後、降雨等で濡れたときに、原糸の捲縮が縮むことによって織編物の目が閉じて、透湿防水性を発現するような通気性自己調節機能を有する複合繊維を得ることを目的として、熱処理条件を改良することによって、吸湿時に捲縮率が増大する複合繊維が提案されている(例えば特許文献2及び3参照。)。しかしながら、上記の従来技術は、染色や仕上げといった後工程を経ると、捲縮率の変化が小さくなるという問題や、仕上げ工程における温度や荷重が変化すると、捲縮性能の低下又は逆転現象が起こるといった問題があった。特に織編物などの布帛では、その染色及び仕上げ工程において、布帛を構成する単糸に掛かる荷重にばらつきがあるために、布帛全体に均一に捲縮性能を発現させることが困難なため、実用的なレベルに到達していないのが実情である。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−046119号公報
【特許文献2】特開昭58−046118号公報
【特許文献3】特開昭61−019816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来の技術を背景になされたもので、その目的は、吸湿すると捲縮が発現し、見かけ糸長が収縮することによって、通気性自己調節機能及び透湿防水機能を有する布帛用の原糸及びその製造方法を提供することにある。しかも、染色・仕上げ等の工程を経た後でも上記の優れた捲縮特性を安定的に提供できる複合繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、ポリアミド成分とポリエステル成分とがサイドバイサイド型に接合されている複合繊維であって、ポリエステル成分がポリエステル成分を構成する繰り返し単位中60〜99.5モル%をエチレンテレフタレート単位が占め、0.5〜40モル%をエチレンイソフタレート単位が占める共重合ポリエステルであり、両末端にカルボキシル基を有する数平均分子量500〜5,000のポリアミド(a)と数平均分子量1,600〜3,000のビスフェノール類のエチレンオキサイド付加物(b)から誘導され、相対粘度が1.5〜3.0(0.5重量%m−クレゾール溶液、25℃)であるポリエーテルエステルアミドを該ポリエステル成分にポリエステル成分の重量を基準として5〜55重量%含み、該複合繊維を30分間沸水処理した後100℃で乾熱処理して捲縮を発現させ、捲縮を発現させた後に160℃で乾熱処理した複合繊維の捲縮率DCが0.2〜3.0%であり、該複合繊維を水浸漬後の捲縮率HCが0.5〜7.0%であり、下記式で表される捲縮率の差△Cが0.5〜6.0%であることを特徴とする複合繊維によって達成される。
ΔC(%)=HC(%)−DC(%)
【発明の効果】
【0007】
本発明により吸湿すると捲縮が発現し、見かけ糸長が収縮することによって、通気性自己調節機能及び透湿防水機能を有する布帛用の複合繊維を提供することができる。更にこの複合繊維は、染色・仕上げ等の工程を経た後でも上記の優れた捲縮特性を安定的に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明におけるポリアミド成分としては、主鎖中にアミド結合を有するポリマーであり、例えばナイロン4、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66等が挙げられる。特にコスト面、汎用性、製糸性等の観点からナイロン6、ナイロン66が好ましい。なお、これらのポリアミド成分をベースに公知の成分を共重合せしめても良く、又はこれらのポリアミド成分に酸化チタンやカーボンブラック等の顔料、公知の抗酸化剤、帯電防止剤、耐光剤等を含有させても良い。
【0009】
一方、本発明のポリエステル成分は、そのポリエステルを構成する繰り返し単位中60〜99.5モル%をエチレンテレフタレート単位が占め、0.5〜40モル%をエチレンイソフタレート単位が占める共重合ポリエステルから構成される。かかるポリエステルは任意の方法で製造されたものでよく、例えばポリエチレンテレフタレートについて説明すれば、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させる、テレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとを直接エステル化反応させる、又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるなどして、テレフタル酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる。次いでこの生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させることによって製造される。
【0010】
尚、このポリエステルは、ポリエステルを構成するエチレンテレフタレート成分及びエチレンイソフタレート成分以外に、第三成分が共重合されていてもよく、第三成分は、ジカルボン酸成分又はグリコール成分のいずれでもよい。かかるジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、ジブロモテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸の如き二官能性芳香族ジカルボン酸、セバシン酸、アジピン酸、シュウ酸の如き二官能性脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を挙げることができる。また上記グリコール成分の一部を他のグリコール成分で置き換えてもよく、かかるグリコール成分としては例えばシクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール,ビスフェノールA,ビスフェノールS、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−(2−ハイドロキシエトキシ)フェニル)プロパンの如き脂肪族、脂環族、芳香族のジオールが挙げられる。更に、上述のポリエステルに必要に応じて他のポリマーを少量ブレンド溶融したもの、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメリット酸等の鎖分岐剤を少量使用したものであってもよい。このほか本発明のポリエステルは通常のポリエステルと同様に二酸化チタン、カーボンブラック等の顔料他、従来公知の抗酸化剤、着色防止剤が添加されていても勿論良い。
【0011】
本発明におけるポリエステルは、ポリエステルの繰り返し単位のうち60〜99.5モル%以上がエチレンテレフタレート単位であり、0.5モル%から40モル%がエチレンイソフタレート単位であるポリエステルである。エチレンテレフタレート単位が60モル%未満であると、得られる複合繊維の強伸度等の基本物性が十分に保持できないため好ましくない。エチレンテレフタレート単位が99.5モル%を超えたり、エチレンイソフタレートが0.5モル%未満であると、複合繊維が吸湿したときに、捲縮の収縮率が小さく、布帛にしたときに十分な透湿防水機能が発現しないために適当でない。エチレンイソフタレートが40モル%を越えると、複合繊維の強伸度等の基本物性が保持できず、また熱安定性にも劣り、製糸工程において分解性異物により紡糸口金部の濾過圧(パック圧)上昇が著しくなるので好ましくない。
【0012】
本発明のサイドバイサイド型複合繊維においては、任意の繊度、断面形状、複合形態をとることができるが、単糸繊度としては、1.5〜5.0dtex程度が適当である。さらに、本発明の複合繊維を中空複合繊維とすると湿度に対する感度も大きく、かつ嵩高性も大きくなる。また、ポリアミド成分とポリエステル成分の複合繊維の横断面における面積比は、ポリアミド成分/ポリエステル成分=30/70〜70/30の範囲が好ましく、より好ましくは40/60〜60/40の範囲である。
【0013】
本発明の複合繊維を単糸数本のマルチフィラメントとした場合の、そのマルチフィラメントの総繊度は特に限定されないが、通常の衣料用素材として用いられる40〜200dtexの範囲で用いることができる。なお、必要に応じて交絡処理が施されていてもよい。
【0014】
本発明に用いるポリエーテルエステルアミドは、好ましくは、両末端にカルボキシル基を有する数平均分子量500〜5,000のポリアミド(a)と数平均分子量1,600〜3,000のビスフェノール類のエチレンオキシド付加物(b)から誘導される。「誘導」とは両成分を反応させて得られるの意味であり、共重合して得られるとも捉えることができる。
【0015】
両末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a)は、ポリアミド部分と分子量調節剤からなる事が好ましい。そのポリアミド部分は(1)ラクタム開環重合体、(2)アミノカルボン酸の重縮合体、若しくは(3)ジカルボン酸とジアミンの重縮合体の少なくともいずれか1つからなる。このうち、(1)のラクタムとしては、ブチロラクタム、バレロラクタム、カプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタム、ウンデカノラクタムなどが挙げられる。(2)のアミノカルボン酸としては、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸,11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などが挙げられる。(3)のジカルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジ酸、ドデカンジ酸,イソフタル酸などが挙げられる。また(3)のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミンなどが挙げられる。以上これらのラクタム、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミンを総称してポリアミド部分形成性モノマーと称する。
【0016】
上記の両末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a)のポリアミド部分形成性モノマーとして例示したものは、2種以上を併用してもよい。これらのうち好ましいものは、カプロラクタム,12−アミノドデカン酸及びアジピン酸−ヘキサメチレンジアミンであり、特に好ましいものは、カプロラクタムである。
【0017】
上記の両末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a)は、更に炭素数4〜20のジカルボン酸成分を分子量調整剤として使用し、これの存在下に上記ポリアミド部分形成性モノマーを常法により開環重合あるいは重縮合させることによって得られる。炭素数4〜20のジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジ酸、若しくはドデカンジ酸などの脂肪酸ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、若しくはナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、若しくはジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸;又は5−スルホイソフタル酸ナトリウム、若しくは5−スルホイソフタル酸カリウムなどの5−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩などが挙げられる。これらのうち、好ましいものは、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び5−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩である。より好ましいものはアジピン酸、テレフタル酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウムである。
【0018】
ポリアミド部分形成性モノマーを常法により開環重合あるいは重縮合させる際には、その平均重合度は2〜10である場合が好ましく、より好ましくは平均重合度が3〜8である。その結果このポリアミド部分の数平均分子量は100〜1,000、より好ましくは300〜700である。
【0019】
更に上記両末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a)は、分子量調整剤である炭素数4〜20のジカルボン酸成分の両末端にポリアミド部分が付与されている成分、片末端にポリアミド部分が付与されている成分、又は両末端にポリアミド部分が付与されている成分及び片末端にポリアミド部分が付与されている成分の混合物であっても良い。混合物である場合には、片末端にポリアミド部分が付与されている成分が1モルに対して、両末端にポリアミド部分が付与されている成分が1〜10モルとなるモル比が好ましい。より好ましくは片末端に付与されている成分1モルに対して、両末端に付与されている成分3〜8モルである。そして両末端にカルボキシル基を有するように上述のポリアミド部分形成性モノマーのカルボキシル基を有する成分の量を適宜調整する。ポリアミド部分形成性モノマーとしてラクタム及び/又はアミノカルボン酸のみ使用するならば分子量調節剤がジカルボン酸成分なので、容易に両末端がカルボキシル基を有するポリアミド(a)を製造することができる。ポリアミド部分形成性モノマーとしてジカルボン酸とジアミンの重縮合体を用いる場合には、例えば重合体の最後にジカルボン酸を改めて反応させる等の方法を用いる事で両末端がカルボキシル基を有するポリアミド(a)を製造することができる。
【0020】
上記両末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a)の数平均分子量は、通常、500〜5,000、好ましくは500〜3,000である。数平均分子量が500未満ではポリエーテルエステルアミド自体の耐熱性が低下し、一方、5,000を超えると反応性が低下するためポリエーテルエステルアミド製造時に多大な時間を要する。数平均分子量をこの範囲とするためには、分子量調節剤となる炭素数4〜20のジカルボン酸成分の選択、ポリアミド部分の重合の際における反応条件を適宜設定することによって可能となる。
【0021】
また、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加物(b)において、ビスフェノール類としては、ビスフェノールA(4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン)、ビスフェノールF(4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン)、ビスフェノールS(4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン)及び4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタンなどが挙げられ、これらのうちビスフェノールAが好ましい。
【0022】
上記のビスフェノール類のエチレンオキシド付加物(b)は、これらのビスフェノール類にエチレンオキシドを常法により付加させることにより得られる。また、エチレンオキシドと共に他のアルキレンオキシド(プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,4−ブチレンオキシドなど)を併用することもできるが、他のアルキレンオキシドの用いる量は用いる全エチレンオキシドの重量に基づいて、通常、10重量%以下である。
【0023】
また上記付加物(b)はビスフェノール類の2つのヒドロキシル基に対して、平均で20〜70モルのエチレンオキシド、他のアルキレンオキシド(以下、エチレンオキシド等という)が重合されている場合が好ましい。より好ましくは32〜60モルのエチレンオキシド等が重合されている場合である。すなわちビスフェノールの1つのヒドロキシル基に対して10〜35モル、より好ましくは16〜30モル、更に好ましくは16〜20モルのエチレンオキシド等が重合(付加)されている付加物であることである。
【0024】
上記付加物(b)の数平均分子量は、通常、1,600〜3,000であり、特にエチレンオキシド付加モル数が32〜60のものを使用することが好ましい。数平均分子量が1,600未満では、帯電防止性が不十分となり、一方、3,000を超えると反応性が低下するためポリエーテルエステルアミド製造時に多大な時間を要する。数平均分子量は、好ましくは1,800〜2,400、エチレンオキシド等の付加モル数は、さらに好ましくは32〜40である。数平均分子量をこの範囲にするには、ビスフェノール類の分子量を考慮したうえで、エチレンオキシド等の付加モル数をその調整することにより達成する事ができる。
【0025】
以上の付加物(b)は、ポリエーテルエステルアミド中の上記(a)と(b)の合計重量に基づいて20〜80重量%の範囲で用いられる。付加物(b)の量が20重量%未満ではポリエーテルエステルアミドの帯電防止性が劣り、一方、80重量%を超えるとポリエーテルエステルアミドの耐熱性が低下するために好ましくない。より好ましくは、付加物(b)は上記(a)と(b)の合計重量に基づいて40〜70重量%の範囲で用いられる。
【0026】
本発明に用いられるポリエーテルエステルアミドの相対粘度は、1.5〜3.5(0.5重量%、m−クレゾール溶液、25℃)、好ましくは、2.0〜3.0である。1.5未満では、混練するベースポリマー成分(ポリアミド成分及びポリエステル成分)との溶融粘度差が大きくなるために導管内や紡糸パック内で滞留しやすくなり、長時間にわたる紡糸を実施すると吐出異常が起こりやすく、得られる複合繊維の品質が安定しない。一方、3.5を超える範囲では、製糸の際の断糸の原因となる。
【0027】
該ポリエーテルエステルアミドのポリアミド成分への添加量は0重量%が最適である。少量でも添加すると、ポリアミド成分の吸湿伸長性が低下し、本発明の目的である吸湿時に捲縮が発現して、糸長が縮むという機能が損なわれる。
【0028】
一方該ポリエーテルエステルアミドのポリエステル成分への添加量はポリエステル成分重量に対して5〜55重量%であることが必要である。5重量%未満では、複合繊維が吸湿したときに、捲縮の収縮率が小さく、布帛にしたときに十分な透湿防水機能が発現しないために適当でない。また、55重量%を超えると、安定的に紡糸ができなくなるために適当でない。
【0029】
本発明においては、捲縮率等の物性品質の安定化の観点より、上記複合繊維を30分間沸水処理し、さらに100℃で30分間乾熱処理して捲縮を発現させ、これを80〜160℃で1分間乾熱処理した繊維が、次に述べる捲縮率DC、水浸漬後の捲縮率HC、及びこれらの捲縮率の差△Cに関する要件を同時に満足していることが肝要である。さらにこの一連の後処理工程における荷重としては、織編物構造中の単糸に掛かる荷重を想定して、0.055〜5.5mgf/dtexの範囲が好ましい。
【0030】
本発明者らの検討した結果、かかる捲縮特性を有する複合繊維は、吸湿によって捲縮率が増加して水に濡れても『透ける』という課題及び防水性の低下や保温性の低下を改善でき、しかも染色や仕上げなどの工程を経た後でもその特性が低下しないことを見出した。すなわち、捲縮率DCを0.2〜3.0%、好ましくは0.3〜2.5%、より好ましくは0.4〜2.3%とする必要がある。上記捲縮率DCが0.2%未満の場合は、水浸漬後の捲縮率HCの方が、数値が高くなり透け防止・防水性・保温性の観点からは好ましいが、複合繊維自体の結晶性が悪くなり、第2ローラーによる熱処理に耐える事が出来なくなり製糸性が低下するので好ましくはない。一方、上記捲縮率DCが3.0%を超える場合は、捲縮DCの値が水浸漬後の捲縮率HCより大きくなり、目的とする水に濡れて透けが改善されて防水性・保温性に優れた布帛を得る事が出来ないので好ましくない。
【0031】
水浸漬後の捲縮率HCは0.5〜7.0%好ましくは0.8〜6.5%、より好ましくは1.0〜6.0%である。HCが0.5%未満の場合は水浸漬後の捲縮率自体が低すぎて目的とする透け防止効果が不十分となるので好ましくない。一方、HCの値が7.0%を越える場合は、複合繊維自体の結晶性が悪くなり、第2ローラーによる熱処理に耐える事が出来なくなり製糸性が低下するので好ましくはない。
【0032】
更にこれらHCとDCの差である△Cの値は0.5〜6.0%、好ましくは0.7〜5.5%、より好ましくは0.8〜5.0%である。ΔCの値が0.5%未満の場合は、水浸漬後の捲縮率向上の効果が少なく、目的とする水に濡れて透けが改善されて防水性・保温性に優れた布帛を得る事が出来ないので好ましくない。一方、ΔCの値が6.0%を超える場合は、複合繊維自体の結晶性が悪くなり、第2ローラーによる熱処理に耐える事が出来なくなり製糸性が低下するので好ましくはない。又、本発明の複合繊維の形態であるが、基本的にポリエステル成分を捲縮形態の内側に配置し、ポリアミド成分を捲縮の外側に配置した形態にする必要がある。
【0033】
この形態では水を含む事にてポリアミド成分が伸長してより捲縮が増加する為である。その意味において、ポリエステル成分及びポリアミド成分共に余り結晶性を高めないほうが好ましい結果を与える。しかしながら、結晶性が低すぎると第2延伸ローラーでの熱処理に耐える事が出来なくなり、その結果、延伸性が低下するので好ましくない。
【0034】
本発明の複合繊維においては、複合繊維を20℃×65%RH(相対湿度65%)の雰囲気下に4時間放置した後の吸湿率をMRとし、複合繊維を35℃×95%RH(相対湿度95%)の雰囲気下に4時間放置した後の吸湿率をMRとしたとき、下記式で表される吸湿率差ΔMRが2.0%以上であることが、これを織編物として衣料に用いた際、快適性の観点から好ましい。
ΔMR=MR−MR
[上記式において、MRは複合繊維を20℃×65%RH(相対湿度65%)の雰囲気下に4時間放置した後の吸湿率、MRは複合繊維を35℃×95%RH(相対湿度95%)の雰囲気下に4時間放置した後の吸湿率を示す。]
【0035】
このように複合繊維が△MRが2.0%以上となる様にするには、上述のようなポリエーテルエステルアミドをポリエステル成分に所定量配合した、ポリエステル成分とポリアミド成分からなるサイドバイサイド型複合繊維によって達成する事ができる。
【0036】
以下、本発明の複合繊維を得るための製造方法について説明する。
ポリアミド成分とポリエステル成分とをサイドバイサイド型に複合紡糸するには従来公知の任意の方法を採用することができる。例えば、特開2000−144518号公報に記載されているような、高粘度成分側と低粘度成分側の吐出孔を分離し、かつ高粘度側の吐出線速度を小さくした(吐出断面積を大きくした)紡糸口金を用い、高粘度側吐出孔に溶融ポリエステルを通過させ低粘度側吐出孔側に溶融ポリアミドを通過させて接合させ、冷却固化させる方法によって紡糸糸条を得ることができる。なお本発明においては、この際に紡糸口金を適切に設計する事により、サイドバイサイド型の中空複合繊維としても良い。紡糸して得られた糸条は、一旦巻き取った後これを延伸して更に必要に応じて熱処理を行う、いわゆる別延方式のほか、未延伸糸を一旦巻き取らないで延伸して更に必要に応じて熱処理を行う、いわゆる直延方式のどちらの方法も採用することができる。上記紡糸における紡糸速度としては、例えば通常採用されている1000〜3500m/分程度の紡糸速度のものを採用することができる。また、延伸、熱処理は、延伸後の切断伸度が10〜60%、通常は20〜45%程度になるように条件を設定するのが、捲縮の発現、製織編性などから好ましい。
【0037】
本発明の複合繊維において、捲縮を発現させるためには、まずこれを沸騰水で処理する。これにて、ポリエステル成分が内側に配置された捲縮が得られる。只、この状態では水分を含んだ状態であるため、水の可塑化効果にてポリアミド成分が伸長するため、捲縮自体は時間と共に変化して不安定なものとなるので、乾熱処理して水分を除き、捲縮を安定化させる。
【0038】
本発明の複合繊維は、従来のポリアミドとポリエステルの複合繊維とは異なり、目的の捲縮特性が発現する後工程条件範囲が非常に広いことが最大の特徴である。すなわち、100〜130℃で30分間乾熱処理して捲縮を発現させ、これを80℃〜200℃で1分間乾熱処理することによって、目的の性能を有する布帛を得ることができる。さらに、上記後工程の際、単糸の掛かる荷重としては、0.055mgf/dtex〜5.5mgf/dtexの範囲が好適であり、従来の複合糸よりも非常に幅広い荷重範囲で捲縮性能を安定的に発現することができる。通常実施される仕上げ工程での熱処理を施しても目的の性能を有する布帛を得る事が出来るのである。
【0039】
本発明の複合繊維は単独で使用することができるのはもちろん、他繊維と混繊しての混繊糸としても使用できる。又、必要に応じて更に仮撚り加工を行い仮撚り加工糸としても使用することができる、又、伸度の異なる複合仮撚りとしても使用する事が出来る。
【0040】
本発明でいう少なくとも一部に本発明の複合繊維を含んでなる布帛とは、その形態は織編物、不織布、フェルトなど特に限定されない。また、該布帛は本発明の複合繊維とともに各種合成繊維と混合して作製することができる。勿論、本複合繊維と天然繊維との複合にてもより一層効果を発揮することができ、更に、ウレタンあるいはポリトリメチレンテレフタレートとの組み合わせにて更にストレッチ性を付与して用いても構わない。
【0041】
本発明の複合繊維は衣料用の各種の用途に使用することができ、例えば、水着や各種のスポーツウェア素材・インナー素材・ユニフォーム素材等快適性を要求される用途において、特に好ましく使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例によって、本発明を更に詳しく具体的に説明する。ただし、これらの実施例は本発明の理解を助けるためのものであって、これらの記載によって、本発明の主旨に合致する実施例までも限定するものではない。なお、実施例中における各物性値は下記の方法で測定した。
【0043】
(1)捲縮率DC、水浸漬後の捲縮率HC、及びそれらの差ΔC
複合繊維にて2700dtexのカセを作り、6gf(2.2mgf/dtex)の軽荷重下で沸騰水中にて30分間処理した。濾紙にて水分を軽く取り除き、次いで6gf(2.2mgf/dtex)の荷重下で100℃の乾熱にて30分間乾燥して水分を除去した。さらに、このカセを6gf(2.2mgf/dtex)の荷重下で160℃の乾熱にて1分間熱処理して測定試料とした。
(a)捲縮率DC(%)
上記の処理を行った測定資料(カセ)を6gf(2.2mgf/dtex)の荷重下にて5分処理し、次いで、このカセを取り出し、さらに600gf(合計606gf:2.2mgf/dtex+220mgf/dtex)の荷重をかけ1分放置しそのカセの長さL0を求めた。次いで、600gfの荷重を外し、6gf(2.2mg/dtex)の荷重下にて1分放置しその長さL1を求めた。下記の計算式より、捲縮率DCを求めた。
DC(%)=(L0−L1)/L0×100
(b)水浸漬後の捲縮率HC(%)
捲縮率DCを求めた後の同じカセを用い、6gf(2.2mgf/dtex)の荷重下で水中(室温)にて10時間浸漬処理した。このカセを濾紙にて水をふき取り、100℃の乾熱下にて乾燥後更に600gf(合計606gf:2.2mgf/dtex+220mgf/dtex)の荷重を更にかけ1分間放置し、そのカセの長さL2を求めた。次いで、600gfの荷重を外し、6gf(2.2mgf/dtex)の荷重下にて1分放置しその長さL3を求めた。下記の計算式より、水浸漬後の捲縮率DCを求めた。
HC(%)=(L2−L3)/L2×100
(c)ΔC(%)
上記の捲縮率DCと水浸漬後の捲縮率HCとの差ΔCは次の式により求めた。
△C(%)=HC(%)−DC(%)
【0044】
(2)筒編の形態変化
複合繊維を筒編みし、ボイル染色を行い、水洗後160℃の乾熱中にて1分セットし、測定試料とした。この筒編に水を滴下し、筒編の側面写真(倍率:200倍)にて水滴下部及びその周辺の状況を調査し、水滴下による編目の膨らみ及び縮み状況、並びに筒編の透け感を肉眼にて判定した。
(a)編目変化
良好 :水滴にて編目が顕著に縮んでいる。
やや不良:水滴による編目変化は殆ど見られない。
不良 :水滴にて編目がむしろ伸びている。
(b)透け感(不透明感)
良好 :水滴部の透け感が減少している(不透明感が増加している)
やや不良:水滴による透け感変化は見られない。(不透明感は変わらず)
不良 :水滴にて透け感が大きくなっている。(不透明感が減少している)
【0045】
(3)吸湿率
本発明の複合繊維を20℃×65%RH(相対湿度65%)あるいは35℃×95%RH(相対湿度95%)とした恒温恒湿室中に4時間調湿し、絶乾試料の重量と調湿試料の重量から下記式により吸湿率を求めた。
吸湿率MR(%)=(調湿後の重量−絶乾時の重量)×100/絶乾時の重量
【0046】
(4)吸湿率の差(ΔMR)
吸湿率の差(ΔMR)は、20℃×65%RH(相対湿度65%)の雰囲気下に4時間放置した後の吸湿率MR、複合繊維を35℃×95%RH(相対湿度95%)の雰囲気下に4時間放置した後の吸湿率MRとを測定し、下記式を用いて算出した値である。
ΔMR=MR−MR
【0047】
(5)吸湿収縮率
吸湿収縮率は、複合繊維を長さ30cmのカセにとり、1.77×10−3cN/dtex(2.2mgf/de)の荷重をかけて沸水中で30分間処理して捲縮を発現させ、次いで24時間自然乾燥を行い、さらに、160℃の温度下で1分間乾熱処理を行った。該サンプルを、1.77×10−3cN/dtex(2.2mgf/de)の荷重をかけて、20℃×65%RH(相対湿度65%)の雰囲気下に12時間放置した後の糸長J、複合繊維を無荷重下で水中へ2分間浸漬後1分間以内に1.77×10−3cN/dtex(2.2mgf/de)の荷重をかけて、測定した糸長Jとを測定し、下記式を用いて算出した。
捲縮の収縮率(%)=(J−J)/J×100
【0048】
(6)固有粘度(IV)
ポリエチレンテレフタレートについては、サンプルを一定量計量し、o−クロロフェノールを溶媒に用いて、常法に従って35℃にて求めた。ナイロン6については、同様にフェノール/テトラクロロエタンの等質量混合溶媒を用いて、30℃にて測定を行った。
【0049】
(7)数平均分子量
両末端にカルボキシル基を有する数平均分子量500〜5,000のポリアミド(a)部分及びビスフェノール類のエチレンオキサイド付加物(b)部分の数平均分子量は測定サンプルを重トリフルオロ酢酸/重クロロホルムの等質量の混合溶媒に溶解してNMRを測定した。その測定結果から、それぞれ部分の繰り返し単位を特定し、その結果から数平均分子量を求めた。
【0050】
(8)ポリエーテルエステルアミドの重量比率
複合繊維製造時にギヤポンプによる条件を調整することによって制御する事ができるが、複合繊維を形成するポリアミド部分、ポリエステル部分を(7)に記載の方法に準じてNMR測定を行うことによっても、その結果を解析することによりポリアミド成分中又はポリエステル成分中のポリエーテルエステルアミドの重量比率を算出する事ができる。
【0051】
[実施例1〜3、比較例1〜2]
固有粘度(IV)が1.1dL/gのナイロン6(Ny6)と、表1に記載の重量%分のポリエーテルエステルアミドをブレンドしたイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートチップ(IV=0.65dL/g)とを常法により、紡糸温度290℃、紡糸速度1000m/minで紡糸し、ついで巻き取ることなく延伸温度60℃、延伸倍率2.5倍で延伸し、さらに130℃で熱セットして糸条を得た。その結果ポリエーテルエステルアミドをブレンドしていないナイロン6と、ポリエーテルエステルアミドをブレンドしたポリエチレンテレフタレートとの重量比が50:50でサイドバイサイド型に接合された、84dtex/24fil(フィラメント数)の捲縮複合繊維を得た(以上実施例1)。実施例2〜3、比較例1〜2においてイソフタル酸の共重合率を表1に記載の通りに変更する他は実施例1と同様の条件にて84dtex/24filの捲縮複合繊維を得た。得られた複合繊維の物性を表1に示した。実施例1、2、3は、イソフタル酸共重合比率、ポリエーテルエステルアミド(以下PEEA)のポリマー組成及びブレンド量が適正であることから、吸湿収縮率及び吸湿率は本発明の課題を解決できるレベルの値を実現する事ができ、性能と品位に優れた複合繊維を得ることができた。
【0052】
また、比較例1は、イソフタル酸を共重合していないため、サイドバイサイド型の複合繊維のポリエステル成分(PET)側の柔軟性に乏しく、吸湿捲縮発現性において本発明の目的を達成すると言う点において不十分な性能であった。比較例2は、イソフタル酸の共重合比率が多い為に、ポリエステル成分(PET)のポリマーの耐熱性が不足しており、複合繊維の紡糸設備中、PETポリマーの熱分解物による紡糸口金の濾過昇圧(パック圧)の上昇が著しく、連続製糸が不可能であった。
【0053】
【表1】

【0054】
[実施例4〜6、比較例3〜4]
ポリエステル成分(PET)側へのPEEA添加量を変化させ、実施例1と同様に実験を行った。得られた複合繊維の物性を表2に示した。実施例4〜6では、PEEA添加量が適切であるために、本発明の課題を解決できる性能を有する複合繊維が得られた。一方比較例3ではポリエステル成分中にPEEAを添加していないため、ポリエステル成分(PET)側の柔軟性に乏しく、吸湿捲縮発現において不十分な性能であった。比較例4はPEEA添加量が多い為に、ポリエステル成分(PET)側のポリマーの吐出が安定化せず、連続製糸不可能であった。
【0055】
【表2】

【0056】
[実施例7〜10、比較例5〜6]
両末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a)部分の数平均分子量及びビスフェノール類(ビスフェノールA使用)のエチレンオキサイド付加物(b)部分の数平均分子量が異なり、また相対粘度も異なる種々のdPEEAを用いて実施例1と同様に実験を行った。得られた複合繊維の物性を表3に示した。
【0057】
実施例7〜10ではPEEA部分の数平均分子量及び相対粘度が適切であり、本発明の課題を解決できる性能を有する複合繊維が得られた。一方、比較例5では両末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a)部分の数平均分子量が小さいために、紡糸工程における耐熱性が不十分であり、紡糸段階において断糸が発生した。比較例6では、ビスフェノール類(ビスフェノールA使用)のエチレンオキサイド付加物(b)部分の数平均分子量が小さい為にブレンドしたポリエステル成分(PET)側の柔軟性が低く、複合繊維の吸湿捲縮発現性に乏しく、また吸湿性が不十分であった。
【0058】
【表3】

【0059】
[実施例11〜15]
実施例2と同条件において製糸した複合糸を染色する際に、染色温度、熱セット温度及び荷重を種々変化させた条件において同様に評価を行った。得られた複合繊維の物性を表4に示した。実施例11〜15に示すように、本発明の複合糸は、染色温度、熱セット温度及び荷重が表4に示すように変化しても、安定して吸湿捲縮性能が発現し、筒編みの形態変化も良好であった。
【0060】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明により吸湿すると捲縮が発現し、見かけ糸長が収縮することによって、通気性自己調節機能及び透湿防水機能を有する布帛用の複合繊維を提供することができる。更にこの複合繊維は、染色・仕上げ等の工程を経た後でも上記の優れた捲縮特性を安定的に示す。このような複合繊維を用いて布帛を製造する事により、周囲の湿度に応じて織編物の目が開いて通気性が向上するといった通気性自己調節機能と吸放湿性能を有する布帛を製造する事ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド成分とポリエステル成分とがサイドバイサイド型に接合されている複合繊維であって、ポリエステル成分がポリエステル成分を構成する繰り返し単位中60〜99.5モル%をエチレンテレフタレート単位が占め、0.5〜40モル%をエチレンイソフタレート単位が占める共重合ポリエステルであり、両末端にカルボキシル基を有する数平均分子量500〜5,000のポリアミド(a)と数平均分子量1,600〜3,000のビスフェノール類のエチレンオキサイド付加物(b)から誘導され、相対粘度が1.5〜3.0(0.5重量%m−クレゾール溶液、25℃)であるポリエーテルエステルアミドを該ポリエステル成分にポリエステル成分の重量を基準として5〜55重量%含み、該複合繊維を30分間沸水処理した後100℃で乾熱処理して捲縮を発現させ、捲縮を発現させた後に160℃で乾熱処理した複合繊維の捲縮率DCが0.2〜3.0%であり、該複合繊維を水浸漬後の捲縮率HCが0.5〜7.0%であり、下記式で表される捲縮率の差△Cが0.5〜6.0%であることを特徴とする複合繊維。
ΔC(%)=HC(%)−DC(%)
【請求項2】
下記式で表される吸湿率の差(ΔMR)が2.0%以上であることを特徴とする請求項1に記載の複合繊維。
ΔMR=MR−MR
[上記式において、MRは複合繊維を20℃×65%RH(相対湿度65%)の雰囲気下に4時間放置した後の吸湿率、MRは複合繊維を35℃×95%RH(相対湿度95%)の雰囲気下に4時間放置した後の吸湿率を示す。]
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の複合繊維を少なくとも一部に含んでなる布帛。

【公開番号】特開2009−19305(P2009−19305A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183224(P2007−183224)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】