説明

吸音体

【課題】従来の多孔質材料で形成されている吸音材と比較して薄型であり、任意の周波数域の音を吸収することができ、しかも低周波数から高周波数域の幅広い音を吸収することが可能な吸音体を提供することにある。
【解決手段】吸音体1は、膜振動層2・骨格層3・多孔質層4・遮音層5の4層が、この順序で積層された構造になっている。膜振動層2には細孔6が備えられており、骨格層3には空洞部7備えられている。膜振動層の細孔6は、積層方向に対して垂直な方向の断面の面積が、空洞部7に対して積層方向と垂直な方向の断面の面積より小さく、これら細孔6及び空洞部7がヘルムホルツ共鳴器に相当する構造を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸音体としては、例えばグラスウールを用いて形成されたものが知られている。このようなグラスウール製の吸音体は、比較的高い周波数域の音を吸収する特性に優れていると言われている。
【0003】
また、従来、ヘルムホルツ共鳴器と呼ばれる仕組みを利用した吸音体も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載の技術では、紙素材によってヘルムホルツ共鳴器が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−228506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、グラスウール製の吸音体には、比較的低い周波数域の音を吸収することが難しいという問題があった。また、グラスウール製の吸音体の場合、所期の吸音性能を発揮させるためにはグラスウール層を相応に厚くせざるを得ず、狭いスペースに配設することが難しいという問題もあった。
【0006】
また、特許文献1に記載された技術のように、吸音体が紙素材で作られている場合、吸音特性に優れた吸音体を構成することが難しく、十分に満足な吸音効果を得ることは困難であった。
【0007】
さらに、上述のようなグラスウール製の吸音体やヘルムホルツ共鳴器型の吸音体では、吸音体で吸収しきれなかった音が吸音体を透過してしまうのを防ぐことはできなかった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、従来の吸音体と比較して薄型化が可能で、しかも、低周波数域から高周波数域にわたる幅広い音域で音を吸収可能で、さらに音の透過をも防止可能な吸音体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の吸音体は、比重が2〜5で制振性のある第1の樹脂組成物で形成されており、厚みは0.05〜1mmとされた薄膜体で、音を受けた際には振動する膜振動層と、JIS A硬度が60以下で制振性のある第2の樹脂組成物で形成されており、前記膜振動層を支持する骨格になる骨格層と、第3の樹脂組成物で形成されており、連続気泡を有する多孔質体とされた多孔質層と、比重が2〜10とされた第4の樹脂組成物で形成されており、音を受けた際には当該音を反射させることにより、音の透過を遮断する遮音層とを、前記膜振動層、前記骨格層、前記多孔質層、前記遮音層の順に積層してなる積層構造体であって、前記骨格層には、当該骨格層を前記積層構造体の積層方向に貫通する空間であって、当該積層方向両端のうち、一端は前記膜振動層によって塞がれた状態、他端は前記多孔質層によって塞がれた状態にある空洞部が形成されており、前記膜振動層には、当該膜振動層を積層方向に貫通して前記空洞部に連通する細孔が形成されていることを特徴とする。
【0009】
この吸音体において第1の樹脂組成物の比重は2〜5とされる。比重が2以下であると音の吸収周波数が高くなってしまい低周波数の音を吸収する効果が低くなる傾向がある。また、比重が5以下になると剛性が高くなってしまい膜振動を起こしにくくなる(低周波数の音は相応に吸収するものの、その吸収は少なくなる傾向がある。)。
【0010】
また、第1の樹脂組成物の厚みは0.05〜1mmとされる。この厚みが0.05mm以下になると、音を受けた場合に剛性が不足し弾性が過剰に弱まり、戻りも少なくなり、膜振動を起こしにくくなる傾向がある。一方、第1の樹脂組成物の厚みが1mm以上であると、剛性が高くなりすぎるので、この場合も膜振動を起こしにくくなる傾向がある。
【0011】
また、第4の樹脂組成物の比重は2〜10とされる。この比重が2以下であると音を反射しにくくなる傾向があり、一方、この比重が10以上になると、成形性が低下し、製造が困難になる傾向がある。
【0012】
このように構成された吸音体において、音が膜振動層に当たると、膜振動層が膜振動を起こすことにより、低周波数域の音が吸収される。
また、膜振動層の細孔は、積層方向に対して垂直な方向の断面の面積が、空洞部に対して積層方向と垂直な方向の断面の面積より小さく、これら細孔及び空洞部がヘルムホルツ共鳴器に相当する構造を形成している。このような細孔と空洞部を備えるので、音が細孔に入射すると、空洞部の空気が弾性体として機能し、共鳴周波数域では貫通孔の空気が激しく振動するため、音は摩擦損失により吸収される。
【0013】
さらに、骨格層は、硬度がJIS A硬度で60以下の材料で形成された軟質体となっているため、音圧によって空洞部内の空気が圧縮された際には、圧縮された空気から受ける圧力で骨格層が伸縮させられて、ここでも音のエネルギーが損失する。
【0014】
したがって、伸縮性がないもので形成されている骨格層と比較して、伸縮させられることにより音のエネルギーを熱に変換する効率が向上されるため、吸音効果は高められる。
また、膜振動層、骨格層、多孔質層で吸収しきれなかった音は遮音層で反射されて、再び多孔質層に入射するため、この反射音も多孔質層等において吸収される。
【0015】
したがって、以上のような仕組みを備えた吸音体によれば、例えばグラスウールなどの多孔質材と比較して、薄膜化が可能になり、さらに、低周波数域から高周波数域にわたる幅広い音域の音を吸収することができる。また、上述のような遮音層を備えているので、同様の遮音層を備えていない吸音材と比較して、音の透過を防ぐ効果を向上させることができる。
【0016】
なお、以上のような吸音体において、膜振動層に形成される細孔は、所期の効果が得られるものであれば、その具体的寸法等は任意であるが、例えば、直径0.2〜2mm程度の貫通孔が形成されていると好ましい。
【0017】
また、空洞部としては、例えば、積層方向寸法が1〜5mm程度、積層方向に垂直な断面が円形になっている場合であれば、直径5〜30mm程度のものが好ましい。
また、多孔質層については、積層方向寸法が1mm以上程度は確保されていると好ましい。また、多孔質層の材質についても、特に限定されないが、音を受けて振動することで音のエネルギーを損失させるには、低硬度な材質である方が好ましく、例えば、硬度がJIS A硬度で10以下といったきわめて低硬度な発泡材料で形成されていると好ましい。このような低硬度発泡材料の具体例としては、例えば、ポリオール系フッ素ゴムの発泡体などを挙げることができる。さらに、音のエネルギーを損失させる観点から、多孔質層は、損失係数が0.6以上の振動特性を備えていると好ましい。
【0018】
請求項2に記載の吸音体は、請求項1に記載の吸音体において、上限温度130度までの環境において使用可能な耐熱性を備えていることを特徴とする。
このような吸音体であれば、例えばウレタンゴムのように耐熱性が低い樹脂組成物で形成されている吸音材とは異なり、上限温度130度までの高温環境下でも、熱によって吸音体が劣化するといった問題を起こすこともなく、所期の吸音効果を維持することができる。したがって、耐熱性の低い従来品では配置することが困難であった場所、例えば自動車のモーター付近やコンプレッサー付近などであっても、吸音体を配置することができるようになる。
【0019】
請求項3に記載の吸音体は、請求項1及び請求項2に記載の吸音体において、前記積層構造体の積層方向の寸法は、10mm以下とされていることを特徴とする。
このように構成された吸音体によれば、厚さが10mm以下というきわめて薄い構造になっているので、機器に吸音体を設置するために必要なスペースを小さくすることができ、小型の機械にも容易に設置することができる。
【0020】
請求項4に記載の吸音体は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の吸音体において、前記第1の樹脂組成物は、ポリオール系フッ素ゴムをマトリクスとして、当該マトリクス中に炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム及びSUS粉の中から選ばれる一種又は二種が配合された組成物であることを特徴とする。
【0021】
このように構成された吸音体によれば、第1の樹脂組成物として、ポリオール系フッ素ゴム中に炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム及びSUS粉の中から選ばれる一種又は二種を充填したものを使用しているので、このような樹脂組成物であれば比重が2以上の制振性のある材料となり、所期の性能を備えた膜振動層を形成することができる。
【0022】
さらに、請求項5に記載の吸音体は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の吸音体において、前記第4の樹脂組成物は、マトリクスとなる樹脂材料中に、硫酸バリウム、タングステン及びSUS粉の中から選ばれる一種又は二種が配合された組成物であることを特徴とする。
【0023】
このように構成された吸音体によれば、第4の樹脂組成物として、マトリクスとなる樹脂材料中に硫酸バリウム、タングステン及びSUS粉の中から選ばれる一種又は二種を充填したものを使用しているので、このような樹脂組成物であれば比重が2以上の制振性のある材料となり、所期の性能を備えた遮音層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は吸音体の一例を示す平面図、(b)はA−A線断面図である。
【図2】(a)は加振装置の構造を示す説明図、(b)は共振曲線の一例を示すグラフである。
【図3】各試料の振動伝達関数を示すグラフである。
【図4】振動・騒音源を囲む箱の壁面に設置された吸音体を示す説明図である。
【図5】(a)は、騒音・振動源の平面部分に吸音体を直接貼り付けた事例を示す説明図、(b)は、騒音・振動源の曲面部分に吸音体を直接貼り付けた事例を示す説明図である。
【図6】(a)は、空洞部の断面形状が四角形となっている事例を示す説明図、(b)は、空洞部の断面形状が六角形となっている事例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
[吸音体の構造]
図1(a)、(b)に示す吸音体1は、膜振動層2・骨格層3・多孔質層4・遮音層5の4層が、この順序で積層された構造になっている。吸音体1の厚さ(積層方向の寸法)は10mmとされている。
【0026】
膜振動層2は、厚みが0.25mmの薄膜体である。この膜振動層2は、制振性のある樹脂組成物によって形成されたもので、本実施形態においては、ポリオール系フッ素ゴムをマトリクスにして炭酸カルシウムを充填してなる樹脂組成物(比重は2)によって形成されている。
【0027】
骨格層3も、膜振動層2と同様、制振性のある樹脂組成物によって形成されたものである。ただし、骨格層3は、膜振動層2以上に柔らかい樹脂組成物によって形成されており、本実施形態においては、ポリオール系フッ素ゴムで形成され、その硬度はJIS A硬度で46という、柔らかいものとなっている。
【0028】
多孔質層4は、連続気泡を有する多孔質材料によって形成されており、本実施形態においては、ポリオール系フッ素ゴムの発泡体で形成され、その硬度はJIS A硬度が10という、骨格層3以上にきわめて柔らかいものとなっている。
【0029】
遮音層5は、比重の大きい遮音性に優れた材料で形成され、本実施形態においては、ポリオール系フッ素ゴムをマトリクスとして硫酸バリウムを充填してなる樹脂組成物(比重は4)によって形成されている。
【0030】
膜振動層2には、図1(b)に示すように、膜振動層2を厚さ方向(積層方向)へ貫通する細孔6が形成され、骨格層3には、骨格層3を厚さ方向(積層方向)へ貫通する空洞部7が形成されている。
【0031】
細孔6は、積層方向に対して垂直な方向の断面の形が直径1mmの円形とされており、空洞部7は、上記断面の形が直径20mmの円形、積層方向寸法は3mmとされ、これら細孔6及び空洞部7がヘルムホルツ共鳴器に相当する構造を形成している。
【0032】
[性能評価]
次に、吸音体1の性能を評価するため、まず、膜振動層2・骨格層3・多孔質層4で構成された積層体について、その振動特性を測定した(実施例1)。また、比較のため、フェルトの振動特性(比較例1)とネオプレンスポンジの振動特性(比較例2)を、同様の方法で測定した。評価項目は、最大振動伝達率、損失係数、ゼロクロスの3項目とした。
【0033】
振動特性(最大振動伝達率、損失係数、ゼロクロス)の測定方法は、次のようなものである。まず、試料から、厚み3mm、縦5mm、横5mmのサイズの試験片を4枚切り出した。次いで、図2(a)に示すような加振装置8を準備した。この加振装置8は、所定の周波数の振動を発生して加振台9を振動させる装置である。また、荷重板10と取付板12(荷重板10と取付板12の総重量は400g)を準備した。
【0034】
この加振台9に4枚の試験片11を載せて、その上からさらに取付板12と荷重板10をこの順番に載せて、加振台9と取付板12の間に試験片11を挟み込んで固定した。4枚の試験片11は、取付板12を4点で支持するように加振台9の四隅それぞれに1枚ずつ配置した。
【0035】
次いで、加振装置8を加速度0.4Gで作動させて加振台9を振動させた。このとき1oct/min(458sec)という掃引条件下において、振動の周波数を10Hzから1000Hzまで変化させた。
【0036】
そして、各試験片11の上部に配置した荷重板10の振動を加速度ピックアップ13で検出し、図2(b)に示すように共振曲線を作製した。なお、この振動試験は、温度24度という条件で行った。
【0037】
(評価項目1)最大振動伝達率
加振装置8が試験片11を加振する加速度をa0とし、加速度ピックアップ13にて検出される試験片11の加速度をaとすると、振動伝達率τは、τ=a/a0で表すことができる(図3参照)。
【0038】
振動伝達率τを下記の式を用いて倍率(対数)に変換し、縦軸に倍率、横軸に周波数をとった周波数応答関数が、その試験片11の振動加速度に対する周波数特性となる(図2(b)参照)。
【0039】
倍率[dB]=20log10τ
(評価項目2)損失係数
次に、損失係数tanδについては、図2(b)の共振曲線のピーク値(共振倍率)を示した共振周波数f0(Hz)と、そのピーク値よりも3dB下がった値を示した周波数f1,f2(f1<f0<f2)とに基づいて、損失係数tanδ=(f2−f1)/f0を算出した。
【0040】
(評価項目3)ゼロクロス
ゼロクロス点は共振曲線が0dBを示す周波数であり、この周波数以上の周波数では振動伝達を抑制する効果(防振効果)がある(図2(b)参照。)。
【0041】
各試料の共振周波数、最大振動伝達率、損失係数、ゼロクロスを表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
図2(b)、図3、及び表1から明らかなように、実施例1は、比較例1や比較例2と比べ、損失係数tanδが大きくなっている。したがって、実施例1は、フェルトやネオプレンスポンジを使用した場合よりも制振性に優れた吸音体であることがわかる。なお、吸音体1には、実施例1で示した積層体に加え、さらに遮音層も積層してあるので、さらに高い制振効果が発現するものと期待でき、さらに、遮音効果も向上しているものと期待できる。
【0044】
[効果]
以上のように構成された吸音体1は、例えば、図4に示すように、膜振動層2の細孔6から音が入射されるように、膜振動層2を騒音・振動源側に向けて、遮音層5を騒音・振動源を囲む箱の壁面に接するように設置される。
【0045】
このような設置状態において、騒音・振動源から到来する音が膜振動層2に当たると膜振動層2が振動し、この膜振動による吸音効果によって低周波数の音が吸収される。
また、膜振動層2の細孔6と骨格層3の空洞部7がヘルムホルツ共鳴器に相当する構造を形成しているので、共鳴周波数域の音が細孔6から入射されると、空洞部7の空気が弾性体として働き、細孔6付近を中心に空気の振動が発生して、音が摩擦損失により吸収される。
【0046】
さらに、骨格層3は、低硬度な材料で形成されているため、空洞部7を備えている骨格層3は容易に伸縮させられる。したがって、音圧によって空洞部7内の空気が圧縮された際には、その圧力で骨格層3は伸縮させられるので、音のエネルギーを熱に変換する効率が向上され、吸音効果が高められる。さらに、空洞部7は変形によって容積が増減するため、共鳴器が対応する周波数範囲が広くなる。
【0047】
また、膜振動層2、骨格層3で吸収しきれなかった高周波数帯の音は、多孔質層4の連続気泡を透過する際に吸収される。
加えて、膜振動層2、骨格層3、多孔質層4で吸収しきれなかった音は、遮音層5において反射される。遮音層5は、硫酸バリウムが配合されることによって高比重になっているため、遮音層5に当たった音は反射されて、多孔質層4等に再び入射して吸収される。
【0048】
したがって、以上のような仕組みを備えた吸音体1によれば、低周波数域から高周波数域にわたる幅広い音域において音を吸収することができる。そのため、このような吸音体1であれば、グラスウール製の吸音体や比較的硬質な材料で形成されたヘルムホルツ共鳴器型吸音体などに比べ、薄型化しても優れた吸音性能を発揮するものとなり、その結果、機器に吸音体1を設置するために必要なスペースを小さくすることができ、小型の機械にも容易に設置することができるようになる。さらに、遮音層5を備えているので、同様の遮音層5を備えていない吸音材と比較して、音の透過を防ぐ効果を向上させることができる。
【0049】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0050】
例えば、上記実施形態においては、騒音・振動源を囲む箱の壁面に設置されているが、設置する場所は、騒音・振動源に直接貼り付けて設置してもよい。図5(a)に示すような、振動・騒音源が平面部分を有するもの14や、図5(b)に示すような騒音・振動源が曲面部分を有するもの15には、それらの形状に沿って自由に吸音体の形状を変えて、膜振動層2側を騒音・振動源に貼り付けて設置することができる。
【0051】
したがって、このような場合には、騒音・振動源を囲む箱の壁面に設置される場合とは異なり、騒音・振動源から発する振動を直接吸収することができるため、自己振動が低減されることにより、固体伝播音を低減することができる。
【0052】
さらに、空洞部7は断面形状が円形となっていたが、円形以外の断面形状になっていてもよく、例えば、図6(a)に示すような、断面形状が四角形の空洞部16であってもよいし、図6(b)に示すような、断面形状が六角形の空洞部17であってもよい。
【0053】
ただし、空洞部7では、空洞部7の内壁をなす骨格層3に音が当たって、骨格層3が伸縮させられることによって吸音効果が高められるため、空洞部7の内壁が伸縮変形しやすい形態である方が好ましい。
【0054】
また、上記実施形態では、騒音・振動源側に膜振動層2側に向けて、騒音・振動源を囲む箱の壁面に遮音層5側が接するように設置される例を示したが、実験的に確認したところ、騒音・振動源側に遮音層5側を向けて、騒音・振動源を囲む箱の壁面に膜振動層2側が接するように設置しても同じ吸音効果を得ることができた。したがって、必要があれば、吸音体1の表裏を逆向きにして設置するようにしても問題はない。
【符号の説明】
【0055】
1…吸音体、2…膜振動層、3…骨格層、4…多孔質層、5…遮音層、6…細孔、7…空洞部、8…加振装置、9…加振台、10…荷重板、11…試験片、12…取付板、13…加速度ピックアップ、14…振動・騒音源が平面部分を有するもの、15…騒音・振動源が曲面部分を有するもの、16…断面形状が四角形の空洞部、17…断面形状が六角形の空洞部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重が2〜5で制振性のある第1の樹脂組成物で形成されており、厚みは0.05〜1mmとされた薄膜体で、音を受けた際には振動する膜振動層と、
JIS A硬度が60以下で制振性のある第2の樹脂組成物で形成されており、前記膜振動層を支持する骨格になる骨格層と、
第3の樹脂組成物で形成されており、連続気泡を有する多孔質体とされた多孔質層と、 比重が2〜10とされた第4の樹脂組成物で形成されており、音を受けた際には当該音を反射させることにより、音の透過を遮断する遮音層とを、前記膜振動層、前記骨格層、前記多孔質層、前記遮音層の順に積層してなる積層構造体であって、
前記骨格層には、当該骨格層を前記積層構造体の積層方向に貫通する空間であって、当該積層方向両端のうち、一端は前記膜振動層によって塞がれた状態、他端は前記多孔質層によって塞がれた状態にある空洞部が形成されており、
前記膜振動層には、当該膜振動層を積層方向に貫通して前記空洞部に連通する細孔が形成されている
ことを特徴とする吸音体。
【請求項2】
前記積層構造体は、上限温度130度までの環境において使用可能な耐熱性を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の吸音体。
【請求項3】
前記積層構造体の積層方向の寸法が、10mm以下とされている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸音体。
【請求項4】
前記第1の樹脂組成物は、ポリオール系フッ素ゴムをマトリクスとして、当該マトリクス中に炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム及びSUS粉の中から選ばれる一種又は二種が配合された組成物である
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の吸音体。
【請求項5】
前記第4の樹脂組成物は、マトリクスとなる樹脂材料中に、硫酸バリウム、タングステン及びSUS粉の中から選ばれる一種又は二種が配合された組成物である
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の吸音体。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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