説明

吸音性シート材料及び吸音性内装材料

【課題】吸音性、成形性に優れた軽量な吸音性シート材料、及びそれを用いた吸音性内装材料を提供する。
【解決手段】繊維シートの片面または両面に、熱可塑性樹脂を材料としメルトブローン法で得られた極細繊維を50質量%以上含む不織布を、ホットメルト接着剤粉末によって接着した吸音性シート材料であって、上記ホットメルト接着剤のJIS K 6863−1994に準じた方法によって測定された軟化点は、上記不織布の材料である熱可塑性樹脂のJIS K 6863−1994に準じた方法によって測定された軟化点よりも5℃以上低く設定されている吸音性シート材料、ならびに該吸音性シート材料を繊維基材に熱接着した吸音性内装材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の床材、家屋の壁材等の吸音性シート材料、及び該吸音性シート材料を用いた吸音性内装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源や温暖化等の問題により、特に自動車産業において燃費の向上が急務の課題となっている。また、一方では、性能向上のため、自動車車内及び車外に対しての防音対策が必要となり各種の吸音材が提案されている。
【0003】
メルトブローン法で得られた不織布を構成する繊維は極細繊維からなり、緻密構造を有するから、軽量で特に低周波数の音の吸音性に優れているので、従来から吸音性材料として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−203268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記メルトブローン法で得られた不織布を構成する極細繊維は、メルトブローン法によって製造する場合に延伸され、かなりの残留応力が内在している。
上記不織布は通常、他の繊維シートに接着されて例えば表皮材として用いられる吸音性シート材料として提供されるが、上記不織布と他の繊維シートとを接着する場合、得られるシート材料の吸音性を阻害しないようにするために、粉末状のホットメルト接着剤を使用することが望ましい。
しかし接着の際、上記不織布に含まれる極細繊維の原料である熱可塑性樹脂の軟化点以上に加熱すると、上記不織布中の極細繊維は残留応力により著しく収縮し、その結果上記不織布も丸まってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、好適な吸音性能を保持しつつ、軽量化を図ることができると共に、種々の用途に利用することができるように成形性が良い吸音性シート材料、及び該吸音性シート材料を用いた吸音性内装材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成する手段として、繊維シートの片面または両面に、熱可塑性樹脂を材料としメルトブローン法で得られた極細繊維を50質量%以上含む不織布を、ホットメルト接着剤粉末によって接着した吸音性シート材料であって、上記ホットメルト接着剤のJIS K 6863−1994に準じた方法によって測定された軟化点は、上記不織布の材料である熱可塑性樹脂のJIS K 6863−1994に準じた方法によって測定された軟化点よりも5℃以上低く設定されている吸音性シート材料を提供するものである。
上記不織布の通気抵抗は0.060kPa・s/m以上であり、かつ上記吸音性シート材料の通気抵抗は0.100〜1.000kPa・s/mであることが望ましく、また上記不織布に含まれる極細繊維の平均繊維径は0.1〜10μm、上記不織布の目付量は20〜400g/mであることが望ましい。
更に本発明では、JIS K 6863−1994に準じた方法によって測定された軟化点が、上記不織布の材料である熱可塑性樹脂のJIS K 6863−1994に準じた方法によって測定された軟化点と等しいかまたはそれよりも低い軟化点を有する熱可塑性樹脂を結着剤として30〜70質量%含む繊維基材表面に、上記吸音性シート材料を熱接着した吸音性内装材料が提供される。
上記繊維基材の通気抵抗は0.2〜2.0kPa・s/mであることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
〔作用〕
メルトブローン法で得られた不織布には極細繊維が50質量%以上含まれており、通常該極細繊維の平均繊維径は0.1〜10μm程度であるから、不織布は無数の微細空間を含み、また上記不織布の通気抵抗を0.060kPa・s/m以上とし、かつ上記吸音性シート材料の通気抵抗を0.100〜1.000kPa・s/mに設定すれば、該吸音性シート材料は高い吸音性能を有する。しかし該不織布に含まれる繊維は、メルトブローン法による製造時に延伸されるので、延伸変形に基づく残留応力が存在する。
【0009】
本発明では上記不織布と他の繊維シートとを接着して吸音性シート材料とする場合に、該シート材料の通気性を阻害しないよう粉末状のホットメルト接着剤を使用するが、接着時の加熱によって上記不織布に含まれる極細繊維の収縮を防止する目的で、上記不織布に含まれる極細繊維の材料である熱可塑性樹脂の軟化点Tsよりも、上記ホットメルト接着剤粉末の軟化点Tsを5℃以上低く設定する(Ts≦Ts)。Ts>Ts−5(℃)の場合には、上記不織布に含まれる上記極細繊維の収縮を完全に防ぐことができない。
【0010】
上記メルトブローン法で得られた極細繊維を50質量%以上含む不織布は、表面に極細繊維に基づく微細なケバを無数に有するから、上記吸音性シート材料を熱可塑性樹脂を結着剤として30〜70質量%含む繊維基材の表面に熱接着して吸音性内装材料を製造する場合、上記シート材料の不織布表面の無数の微細なケバが加熱軟化した熱可塑性樹脂結着剤を含む繊維基材の表面に食い込み、該シート材料と該繊維基材との間にホットメルト接着剤等の接着剤を使用することなく該繊維基材表面に該シート材料が強固に接着される。
【0011】
上記繊維基材中の熱可塑性樹脂結着剤の含有量が30質量%に満たない場合には、上記表皮材の不織布と上記繊維基材との接着力が不足し、かつ上記繊維基材中の繊維相互の結着性が乏しくなる。
一方上記繊維基材中に含まれる熱可塑性樹脂結着剤の量が70質量%を超えると、該繊維基材の物性が該熱可塑性樹脂結着剤の物性に影響されるようになり、該繊維基材の剛性が低下する。
【0012】
〔効果〕
本発明の吸音性シート材料は軽量でかつメルトブローン法で得られた極細繊維を50質量%以上含む不織布(以下メルトブローン不織布と云う)によって高度な吸音性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】通気抵抗Rの測定方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を以下に詳細に説明する。
(繊維シート)
本発明に用いられる繊維シートの繊維材料としては、例えばポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維等の合成繊維、とうもろこしやサトウキビ等の植物から抽出された澱粉からなる生分解繊維、パルプ、木綿、ヤシ繊維、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維等の天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石綿繊維等の無機繊維、あるいはこれらの繊維を使用した繊維製品のスクラップを解繊して得られた再生繊維の1種または2種以上の繊維が使用されるが、例えばガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石綿繊維、ステンレス繊維等の無機繊維やポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維等のアラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維等の望ましくは融点が250℃以上の耐熱性合成繊維を使用すれば、耐熱性の極めて高い吸音性シート材料が得られる。その中でも炭素繊維は焼却処理が可能で細片が飛散しにくい点で有用な無機繊維であり、アラミド繊維は比較的安価で入手し易い点で有用な合成繊維である。
【0015】
また、繊維シートには、上記繊維の全部または一部として、融点が180℃以下である低融点熱可塑性繊維を使用することができる。
上記低融点熱可塑性繊維としては、例えば融点180℃以下のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ポリエステル共重合体繊維、ポリアミド繊維、ポリアミド共重合体繊維等がある。これらの低融点熱可塑性繊維は、単独あるいは2種以上組み合わせて使用される。該低融点熱可塑性繊維の繊度は、0.1〜60dtexの範囲であることが好ましい。本発明に使用する望ましい低融点熱可塑性繊維としては、例えば上記通常繊維を芯部分とし、該低融点熱可塑性繊維の材料樹脂である融点100〜180℃の低融点熱可塑性樹脂を鞘とする芯鞘型繊維がある。該芯鞘型繊維を使用すると、得られる繊維シートの剛性や耐熱性が低下しない。
【0016】
本発明の繊維シートは、上記繊維のウェブのシートあるいはマットをニードルパンチングによって絡合する方法やスパンボンド法、あるいは上記繊維のウェブのシートあるいはマットが上記低融点熱可塑性繊維からなるか、あるいは上記低融点熱可塑性繊維が混合されている場合には上記繊維のウェブのシートあるいはマットを加熱して該低融点熱可塑性繊維を軟化せしめることによって結着するサーマルボンド法か、あるいは上記繊維のウェブのシートまたはマットに合成樹脂バインダーを含浸あるいは混合して結着するケミカルボンド法か、あるいは上記繊維のウェブのシートまたはマットをニードルパンチングによって絡合した上で該低融点熱可塑性繊維を加熱軟化せしめて結着するか、あるいは糸で縫い込むステッチボンド法や高圧水流で絡ませるスパンレース法、上記ニードルパンチングを施したシートまたはマットに上記合成樹脂バインダーを含浸して結着する方法、更に上記繊維を編織する方法等によって製造される。
なお、本発明に係る繊維シートの目付量、厚みは原則任意に設定可能であるが、望ましくは、目付量20〜2000g/m、厚み0.1〜20mmに設定され得る。
【0017】
(メルトブローン不織布)
本発明に使用するメルトブローン不織布は、通常ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を材料としてメルトブローン法によって製造される極細繊維を50質量%以上含んだ不織布である。上記極細繊維の平均繊維径は通常0.1〜10μmである。
上記メルトブローン不織布は、例えば紡糸ノズルから溶融熱可塑性樹脂を糸状に吐出させ、直後に該溶融熱可塑性樹脂糸状吐出物に熱風を吹き付けて延伸することにより極細繊維を製造し、該極細繊維をベルトコンベア等の基板に受けて相互融着させるか、あるいはニードルパンチングを施して相互絡合させることによって製造される。
【0018】
上記メルトブローン不織布には、上記したように少なくとも50質量%の上記メルトブローン法によって得られた極細繊維が含まれるが、上記極細繊維以外の繊維が混合されていてもよい。上記極細繊維以外の繊維としては、上記メルトブローン不織布が接着される繊維シートに用いられている繊維と同様な繊維が使用される。
上記極細繊維と上記極細繊維以外の繊維との混合繊維を材料としたメルトブローン不織布を製造する方法としては主としてニードルパンチング法が適用される。
【0019】
上記メルトブローン不織布中には、上記したように少なくとも50質量%のメルトブローン法によって得られた極細繊維が含まれることが必要である。何故ならば上記極細繊維の含有量が50質量%を下回ると、上記メルトブローン不織布の吸音性が充分でなくなり、また不織布表面の微細なケバが少なくなって、繊維基材との熱接着性が低下する。
良好な吸音性を保持するために、上記メルトブローン不織布の目付量は通常20〜400g/mとされ、また通気抵抗は0.060kPa・s/m以上に設定される。
【0020】
上記の通気抵抗(Pa・s/m)とは、通気性材料の通気の程度を表す尺度である。この通気抵抗の測定は定常流差圧測定方式により行われる。図1に示すように、シリンダー状の通気路W内に試験片Lを配置し、一定の通気量V(図中矢印の向き)の状態で図中矢印の始点側の通気路W内の圧力P1と、図中矢印の終点P2の圧力差を測定し、次式より通気抵抗Rを求めることが出来る。
【0021】
R=ΔP/V
ここで、ΔP(=P1−P2):圧力差(Pa)、V:単位面積当りの通気量(m/m・s)である。
通気抵抗は、例えば、通気性試験機(製品名:KES−F8−AP1、カトーテック株式会社製、定常流差圧測定方式)によって測定することが出来る。
【0022】
〔吸音性シート材料〕
本発明の吸音性シート材料は、上記繊維シートの片面または両面に上記メルトブローン不織布を接着することによって製造される。上記繊維シートと上記メルトブローン不織布との接着には、通気性を考慮して粉末状のホットメルト接着剤が使用される。
上記ホットメルト接着剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、低融点ポリアミド、低融点ポリエステル等が使用されるが、該ホットメルト接着剤のJIS K 6863−1994に準じた方法によって測定された軟化点Tsが、上記メルトブローン不織布に含まれるメルトブローン法によって製造された極細繊維の材料である熱可塑性樹脂のJIS K 6863−1994に準じた方法によって測定された軟化点Tsよりも5℃以上低く設定する(Ts≦Ts−5(℃))。
【0023】
上記ホットメルト接着剤粉末は上記繊維シートおよび/または上記メルトブローン不織布の表面に撒布されるが、良好な吸音性を確保するために、散布量は通常2〜40g/mとされる。
上記繊維シートおよび/またはメルトブローン不織布のホットメルト接着剤粉末散布面をTsより低くかつTsより高い温度Tに加熱して上記ホットメルト接着剤粉末を軟化せしめた上で、上記繊維シートと上記メルトブローン不織布とを接着する。この接着には圧力が及ぼされることが望ましい。
【0024】
このようにしてメルトブローン不織布中のメルトブローン法によって得られた極細繊維が残留応力によって収縮することを防ぎつつ、上記繊維シートと上記メルトブローン不織布とを接着することができるが、上記ホットメルト接着剤の充分な軟化を行なうためには、加熱温度TはTsよりも2℃以上高い温度に設定し、かつ上記極細繊維の収縮を防ぐためには、加熱温度TはTsよりも1℃以上低い温度に設定する(Ts+2≦T≦Ts−1)。Tについてこのような幅をとるためには、Ts−Ts≧5℃の幅を設定しておくとTの自由度が広がる。
【0025】
〔吸音性内装材料〕
本発明の吸音性内装材料は、上記シート材料を表皮材として繊維基材に熱接着することによって得られる。
上記繊維基材に使用される繊維としては、上記繊維シートに使用される繊維と同様な繊維が使用されるが、特に望ましい繊維としては、石油資源に依存しない天然繊維である植物性繊維がある。
上記植物性繊維としては、例えばパルプ、木綿、コウゾ、ミツマタ、ワラ、バガス、ヤシ繊維、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維等があるが、入手が容易で安価なケナフ繊維は、望ましい植物性繊維である。上記植物性繊維は単独あるいは2種以上組み合わせて使用される。
【0026】
また上記繊維基材のバインダーとして使用される熱可塑性樹脂としては、上記繊維シートや上記メルトブローン不織布に樹脂を塗布および/または含浸させる場合に使用される熱可塑性樹脂と同様なものが例示されるが、特に望ましい熱可塑性樹脂としては、低融点熱可塑性樹脂繊維がある。
上記低融点熱可塑性樹脂繊維としては、繊維シートに用いられた低融点熱可塑性樹脂繊維と同様なものが使用される。
【0027】
上記繊維基材に使用される繊維と上記低融点熱可塑性樹脂繊維とは、例えば解繊機、混合機、カード機等によって均一に混合され、得られた混合繊維は支持体上に堆積されてマットがフォーミングされ、上記マットは所望なればニードルパンチングを施された上で、含有する上記低融点熱可塑性樹脂繊維の軟化点以上の温度に加熱され、そしてボード状に冷間プレス成形するか、あるいは上記低融点熱可塑性樹脂繊維の軟化点以上の温度でホットプレス成形して通気性のある繊維基材とする。
【0028】
上記通気性のある繊維基材の通気抵抗は、吸音性の観点から0.2〜2.0kPa・s/mの範囲に設定されることが望ましい。上記繊維基材の通気抵抗を上記範囲に設定するには、上記繊維基材に使用される繊維の繊度や、バインダーとしての熱可塑性樹脂として上記低融点熱可塑性樹脂繊維を使用する場合には、上記低融点熱可塑性樹脂繊維の繊度、上記繊維と上記熱可塑性樹脂の混合比、上記繊維基材の厚みや目付量等によって調整されるが、上記繊維基材中の上記低融点熱可塑性樹脂繊維の混合比率が70質量%を超えると剛性が低下し、また上記繊維基材の柔軟性が乏しくなり、所定形状に成形した場合、上記低融点熱可塑性樹脂繊維相互が融着して撚りが発生し、均一な成形基材が得られない。
一方上記繊維基材中の上記熱可塑性樹脂の混合比率が30質量%を下回った場合には、上記繊維基材と上記吸音性シート材料のメルトブローン不織布との接着力が不足し、かつ上記繊維基材中の繊維相互の結着力が低下する。
【0029】
更に上記吸音性シート材料と上記繊維基材とを積層接着することによって得られる吸音性内装材料の通気抵抗は、略0.300〜2.500kPa・s/mの範囲に設定する。上記内装材料の通気抵抗が0.300kPa・s/mに満たないと吸音性能が劣化し、一方2.500kPa・s/mを超える通気抵抗の場合は高周波領域での吸音性能が劣化する。
【0030】
本発明の吸音性内装材料は、上記繊維基材の表面に上記吸音性シート材料を表皮材として、接着剤を塗布する工程を経ることなく熱接着することによって製造される。詳しく説明すれば上記繊維基材は、少なくとも表面部分を加熱することによって該繊維基材内に含有される熱可塑性樹脂が軟化せられ、上記吸音性シート材料のメルトブローン不織布側を上記繊維基材表面に接するようにして上記吸音性シート材料を上記繊維基材に重合し、プレス盤、ロールプレス等のプレス手段により加圧することで上記吸音性シート材料を上記繊維基材に接着剤を塗布する工程を経ることなく接着する。この場合のプレス手段は通常冷間プレス手段が選択されるが、熱間プレス手段を採用してもよい。
この際、上記メルトブローン不織布のケバが上記繊維基材の軟化状態の熱可塑性樹脂に食い込み、上記吸音性シート材料は上記繊維基材表面に強固に接着される。特に上記繊維基材のバインダーとして低融点熱可塑性樹脂繊維を使用した場合には、上記メルトブローン不織布のケバと、上記繊維基材の軟化状態にある低融点熱可塑性樹脂繊維とが絡み合い、このような絡み合い効果によって上記シート材料と上記繊維基材とはより強固に接着される。
【0031】
上記吸音性シート材料と上記繊維基材とを接着する工程で同時に成形を行なってもよい。その場合には、上記繊維基材を全体的に加熱することによって該繊維基材中の熱可塑性樹脂を軟化させる。上記成形は通常は冷間プレス手段によって行われるが、熱間プレス手段を採用してもよい。
【0032】
上記シート材料と上記繊維基材とを熱接着する場合には、上記繊維基材の表面を加熱して該繊維基材に含まれる熱可塑性樹脂を軟化させるのであるが、この場合の加熱温度は上記表皮材のメルトブローン不織布の極細繊維の熱収縮を防ぐために、上記極細繊維の材料の熱可塑性樹脂の軟化点Tsよりも低い加熱温度に設定する。したがって上記繊維基材中の熱可塑性樹脂のJIS K 6863−1994に準じた方法によって測定された軟化点TsはTsと等しいか、あるいはそれ以下であることが望ましい(Ts≦Ts)。
【0033】
以下に本発明を更に具体的に説明するための実施例を記載するが、本発明は該実施例にのみ限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1〕
ポリエステル繊維からなるウェブに対してニードルパンチングを行ない繊維シート(目付量80g/m、厚さ2.0mm)を製造した。
次にポリエステル(繊度6.6dtex、カット長75mm)40質量%、および極細繊維としてメルトブローン法により得られたポリプロピレン繊維(繊維径0.2μm、軟化点150℃)60質量%からなる混合繊維ウェブに対してニードルパンチングを行ない、目付量400g/m、厚さ15mm、通気抵抗0.438kPa・s/mのメルトブローン不織布を製造した。
次に上記繊維シートの片面に、ホットメルト接着剤粉末として共重合ポリアミド粉末(粒度200〜300μm、軟化点145℃)をスキャタリング法により10g/mの量で散布し、さらにその上に上記メルトブローン不織布を重合し147±1℃に調整された熱風循環恒温機中で積層接着させ吸音性シート材料(A)を製造した。
得られた吸音性シート材料(A)は通気抵抗0.492kPa・s/m、厚さ17mmの均一なシートであり、垂直入射吸音率法による吸音率を測定した結果、周波数1600Hzで55%、周波数4000Hzで95%の吸音率の優れた吸音性シート材料であった。
【0035】
〔比較例1〕
実施例1において、ホットメルト接着剤の軟化点を148℃とし、熱風循環恒温機中の温度を150℃とした他は同様にして吸音性シート材料(B)を製造した。
得られた吸音性シート材料(B)はホットメルト接着剤の軟化点が148℃のため、繊維シートとメルトブローン不織布の接着時の熱風循環恒温機中の温度を150℃とした。このためメルトブローン不織布中の極細繊維であるポリプロピレン繊維の残留応力によりメルトブローン不織布が収縮し、厚さが10〜15mmでばらつき、均一なシートが得られなかった。
【0036】
〔実施例2〕
ポリエステル繊維からなるスパンボンド法による繊維シート(目付量30g/m、厚さ0.2mm)を製造した。
次にポリエステル(繊度7.8dtex、カット長76mm)20質量%、および極細繊維としてメルトブローン法により得られたポリプロピレン繊維(繊維径5μm、軟化点150℃)80質量%からなる混合繊維ウェブに対してニードルパンチングを行ない、目付量50g/m、厚さ5mm、通気抵抗0.320kPa・s/mのメルトブローン不織布を製造した。
次に上記繊維シートの片面に、ホットメルト接着剤粉末として共重合ポリアミド粉末(粒度80〜100μm、軟化点135℃)をスキャタリング法により5g/mの量で散布し、さらにその上に上記メルトブローン不織布を重合し145±1℃に調整された熱風循環恒温機中で積層接着させ吸音性シート材料(C)を製造した。
次に繊維基材としてポリエステル繊維40質量%、および結着剤として低融点ポリエステル繊維(融点140℃)60質量%からなる混合ウェブを150℃で加熱することによって厚さ15mm、通気抵抗0.438kPa・s/m、目付量1000g/mの繊維基材を製造した。
こうして得られた繊維基材を145℃で加熱し表面を軟化させた上で上記吸音性シート材料(C)のメルトブローン不織布側を重合し冷却プレスで厚さ10mm、通気抵抗0.856kPa・s/mの吸音性内装材料を製造した。
この吸音性内装材料の垂直入射吸音率法による吸音率を測定した結果、周波数630Hzで75%、周波数1600Hzで95%、周波数4000Hzで80%の吸音率があり、低周波数から高周波数までの吸音性能の優れた吸音性内装材料であり、自動車の内装材料やドアボード内に使用される吸音性内装材料として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の吸音性シート材料や吸音性内装材料は、高い吸音効率を有するから、例えば自動車の内装材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維シートの片面または両面に、熱可塑性樹脂を材料としメルトブローン法で得られた極細繊維を50質量%以上含む不織布を、ホットメルト接着剤粉末によって接着した吸音性シート材料であって、
上記ホットメルト接着剤のJIS K 6863−1994に準じた方法によって測定された軟化点は、上記不織布の材料である熱可塑性樹脂のJIS K 6863−1994に準じた方法によって測定された軟化点よりも5℃以上低く設定されている
ことを特徴とする吸音性シート材料。
【請求項2】
上記不織布の通気抵抗は0.060kPa・s/m以上であり、かつ上記吸音性シート材料の通気抵抗は0.100〜1.000kPa・s/mである請求項1に記載の吸音性シート材料。
【請求項3】
上記不織布に含まれる極細繊維の平均繊維径は0.1〜10μm、上記不織布の目付量は20〜400g/mである請求項1または2に記載の吸音性シート材料。
【請求項4】
JIS K 6863−1994に準じた方法によって測定された軟化点が、上記不織布の材料である熱可塑性樹脂のJIS K 6863−1994に準じた方法によって測定された軟化点と等しいかまたはそれよりも低い軟化点を有する熱可塑性樹脂を結着剤として30〜70質量%含む繊維基材表面に、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸音性シート材料を熱接着したことを特徴とする吸音性内装材料。
【請求項5】
上記繊維基材の通気抵抗は0.2〜2.0kPa・s/mである請求項4に記載の吸音性内装材料。


【図1】
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【公開番号】特開2010−243831(P2010−243831A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92968(P2009−92968)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000243892)名古屋油化株式会社 (78)
【Fターム(参考)】