説明

吸音性発泡体用組成物及び吸音性発泡体

【課題】高い吸音率を有する吸音性発泡体が得られる吸音性発泡体用組成物を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂(a)及び/又はゴム(b)と、ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)とを含有し、
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、−20℃以上50℃以下の範囲にtanδピーク温度を有し、
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)のSP値((J/cm31/2)が、17.3以上20.0以下である吸音性発泡体用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音性発泡体用組成物及び吸音性発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車、事務機器、音響機器、家庭用電気製品をはじめとして、各種機器から発生する音を抑制するため、さまざまな吸音性を有する発泡体用組成物が検討されている。
【0003】
例えば、有機ポリイソシアネートとポリオールとを発泡剤、触媒等からなるポリウレタンフォーム用組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、ポリプロピレンと、tanδピーク温度が−20℃以上40℃以下の範囲にある共役ジエン系重合体と、発泡剤と、架橋剤とからなる組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。前記共役ジエン系重合体には、ビニル芳香族ブロック共重合体が含まれ、例えば、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−25863号公報
【特許文献2】特開平10−168212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のポリウレタンフォーム用組成物は、耐水性が十分では無く、また、経済性も必ずしも有利ではないという問題を有している。
また、特許文献1、2に記載されている組成物は、いずれも吸音率については、未だ改良の余地がある。
【0006】
そこで本発明においては、優れた吸音率を有する吸音性発泡体用組成物、及び発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂(a)及び/又はゴム(b)と、特定のビニル芳香族系ブロック共重合体(c)とを含有する吸音性発泡体用組成物及びこれを用いた吸音性発泡体が、上記従来の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0008】
〔1〕
熱可塑性樹脂(a)及び/又はゴム(b)と、
ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)と、
を、含有し、
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、−20℃以上50℃以下の範囲にtanδピーク温度を有し、
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)のSP値((J/cm31/2)が、17.3以上20.0以下である吸音性発泡体用組成物。
【0009】
〔2〕
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、水素添加物である前記〔1〕に記載の吸音性発泡体用組成物。
【0010】
〔3〕
前記熱可塑性樹脂(a)又はゴム(b)のSP値((J/cm31/2)と、
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)のSP値((J/cm31/2)との差が、0.5((J/cm31/2)以上である前記〔1〕又は〔2〕に記載の吸音性発泡体用組成物。
【0011】
〔4〕
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体とを主体とする共重合体である前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の吸音性発泡体用組成物。
【0012】
〔5〕
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(c1)を、1つ以上を含有する前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の吸音性発泡体用組成物。
【0013】
〔6〕
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)中の、前記ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(c1)のSP値と、前記(c1)以外のブロックのSP値との差の少なくとも一つが、2.5以下である前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の吸音性発泡体用組成物。
【0014】
〔7〕
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(c1)を1つ以上と、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体を主体とする共重合体ブロック(c2)を1つ以上、含有する前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の吸音性発泡体用組成物。
【0015】
〔8〕
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)中の、非水素添加の共役ジエン単量体単位が、5質量%〜70質量%の範囲にある前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の吸音性発泡体用組成物。
【0016】
〔9〕
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、水素添加物であり、水素添加前におけるビニル芳香族ブロック共重合体中の総共役ジエンの不飽和基のうち、5mol%以上85mol%以下の範囲が水素添加されている前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一に記載の吸音性発泡体用組成物。
【0017】
〔10〕
発泡剤及び架橋剤を、さらに含有する前記〔1〕乃至〔9〕のいずれか一に記載の吸音性発泡体用組成物。
【0018】
〔11〕
前記〔1〕乃至〔10〕のいずれか一に記載の吸音性発泡体用組成物を用いて成形した吸音性発泡体。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた吸音率を有する吸音性発泡体、及び当該発泡体を得るための吸音性発泡体用組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0021】
〔吸音性発泡体用組成物〕
本実施形態の吸音性発泡体用組成物は、熱可塑性樹脂(a)及び/又はゴム(b)と、ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)とを含有するものである。
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)は、−20℃以上50℃以下の範囲にtanδピーク温度を有している。
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)の、後述するSP値((J/cm31/2)は、17.3以上20.0以下である。
【0022】
〔熱可塑性樹脂(a)〕
熱可塑性樹脂(a)は、特に限定はされないが、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等の芳香族系樹脂、ナイロン66、ナイロン6等のポリアミド、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
これらは、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を使用してもよい。
【0023】
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のホモ重合体、エチレン又はプロピレンとブテン、ヘキセン又はオクテン等とのブロック共重合体又はランダム共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ1−ブテン、プロピレン・1−ブテン共重合体、塩素化ポリオレフィン、エチレン・メタクリル酸及びそのエステル共重合体、スチレン・アクリル酸及びそのエステル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)等を挙げることができる。
【0024】
高い耐薬品性や耐熱性の観点から、上記の中でも、結晶性を有する熱可塑性樹脂が好ましい。
また、経済性の観点から、ポリプロピレン、プロピレンを含むブロック共重合体又はランダム共重合体などのプロピレン系樹脂や、高圧法低密度ポリエチレン、低圧法低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合されたポリエチレン系樹脂、あるいはエチレン酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0025】
〔ゴム(b)〕
ゴム(b)は、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、アクリルゴム(ACM)、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム(Q)、ブロックを有さないスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)等を挙げることができる。
経済性の観点から、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、ブロックを有さないスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)が好ましい。
【0026】
上述した各種熱可塑性樹脂(a)、ゴム(b)の中においては、優れた経済性及び高い吸音性を実現できる観点から、分子中にエチレン構造を有するものが好ましい。
また、熱可塑性樹脂(a)及び/又はゴム(b)の組み合わせの中では、経済性の観点から、熱可塑性樹脂が多い方が好ましく、(a)熱可塑性樹脂のみがより好ましい。
【0027】
〔ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)〕
ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)とは、ビニル芳香族単量体単位を有する共重合体を指す。
なお、本明細書において、共重合体を構成する各単量体単位の命名は、該単量体単位が由来する単量体の命名に従う。
例えば、「ビニル芳香族単量体単位」とは、単量体であるビニル芳香族化合物を重合した結果生ずる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、置換ビニル基に由来する置換エチレン基の二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。
また、「共役ジエン単量体単位」とは、単量体である共役ジエンを重合した結果生ずる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、共役ジエン単量体に由来するオレフィンの二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。
また、「主体とする」とは、含有量が60質量%以上であることを意味し、80質量%以上が好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
なお、ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)は、水素添加物であることが好ましい。
【0028】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)は、本実施形態の発泡体用組成物を用いて成形した発泡体において高い吸音率を得る観点から、−20℃以上50℃以下の範囲にtanδピーク温度を有するものとする。
tanδピーク温度は、−10℃以上40℃以下の範囲が好ましく、0℃以上30℃以下の範囲がより好ましく、10℃以上30℃未満がさらに好ましい。
tanδピーク温度は、後述する実施例に示す粘弾性測定より得られる値である。
【0029】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)は、本実施形態の発泡体用組成物を用いて成形した発泡体において高い吸音率を得る観点から、SP値((J/cm31/2)が、17.3以上20.0以下の範囲であることが必須である。SP値((J/cm31/2)は、18.0以上19.3以下が好ましく、18.2以上19.0以下がより好ましく、18.5以上18.8以下がさらに好ましい。
【0030】
前記SP値は、ビニルポリマーのモル体積、凝集エネルギーを、Bicerano(文献:J.Bicerano,Prediction of Polymer Properties,3rd,Marcel Dekker,2002)の方法で計算し、Van Krevelen法に準拠し求めることができる。
結晶性の有無は無視する。また、ブロック共重合体が、ミクロ相分離していても無視する。
計算方法は、Jozef.Bicerano:PREDICTION OF POLYMER PROPERTIES, Marcel Dekker,AMERICA(2002)のp.615の17.8から17.10式に示される方法を使用できる。
【0031】
具体的に、前記ビニル芳香族系ブロック共重合体のSP値の計算方法は、ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)を構成する各々のビニルポリマーのモル体積、凝集エネルギーを、Bicerano(文献:J.Bicerano,Prediction of Polymer Properties,3rd,MarcelDekker,2002)の方法で計算する。
凝集エネルギーに関しては、Van Krevelen法に準拠し計算した値を用いる。
次に、Jozef.Bicerano:PREDICTION OF POLYMER PROPERTIES, Marcel Dekker,AMERICA(2002)の、p.615の17.8から17.10式に示される方法で、任意の組成の共重合体のSP値を求めることができる。
なお、結晶性やブロック共重合体等のミクロ相分離構造は無視する。
【0032】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)を構成する各ビニルポリマーの凝集エネルギーE(J/mol)/モル体積V(10-63/mol)例示する。
ポリスチレン:36932/97.0、1,2−ポリブタジエン:16450/58.3、1,4−ポリブタジエン:18579/59.1、1,2−ポリブチレン:17527/65.6、水素添加1,4−ポリブタジエン:18146/64.4、1,4−ポリイソプレン:22644/76.6、1,2−ポリイソプレン:19407/75.3、3,4−ポリイソプレン:20908/82.2、ポリエチレン:9073/32.2である。
例えば、スチレン/1,4−ブタジエンの等モルの共重合体の場合のSP値の計算方法を以下に示す。
E=36932×0.5+18579×0.5=27755(J/mol)
V=97.0×0.5+59.1×0.5=78.1(m3/mol)
SP値=(27755/78.1)1/2755/=18.6((J/cm31/2
【0033】
本実施形態の発泡体組成物を用いて成形した発泡体において、より高い吸音率を得る観点から、前記熱可塑性樹脂(a)又はゴム(b)のSP値((J/cm31/2)と、前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)のSP値((J/cm31/2)との差が、0.5((J/cm31/2)以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。
【0034】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)は、経済性や、本実施形態の発泡体組成物を用いて成形した発泡体において、より高い吸音率を得る観点から、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを主体とする共重合体であることが好ましい。
ビニル芳香族単量体とは、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等のビニル芳香族化合物が挙げられる。
これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
上記ビニル芳香族単量体の中では、経済性の観点からスチレンが好ましい。
【0035】
上記共役ジエン単量体を構成する「共役ジエン」は、1対の共役二重結合を有するジオレフィンである。
例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
これらの共役ジエンは、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、本実施形態の発泡体組成物を用いて成形した発泡体において、優れた機械強度を得る観点から、1,3−ブタジエンを主体とするものであることがより好ましい。
さらに、共役ジエン中の1,3−ブタジエン含有量が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0036】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)は、当該共重合体の製造容易性、及び本実施形態の発泡体組成物の機械的強度の観点から、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(c1)を、1つ以上含有するものであることが好ましい。
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)中の、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(c1)の量は、本実施形態の発泡体組成物の機械的強度の観点や、前記共重合体(c)の製造容易性の観点から、5質量%以上が好ましく、本実施形態の発泡体組成物を用いて成形した発泡体において高い吸音率を得る観点から50質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下の範囲がより好ましく、13質量%以上25質量%以下がさらに好ましい。
なお、前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)中の、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(c1)の量は、後述する実施例に示す方法で求めることができる。
【0037】
また、本実施形態の発泡体用組成物を用いて成形した発泡体において高い吸音率を得る観点から、前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)中の、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(c1)と、(c1)以外のブロックのSP値との差の少なくとも一つが、0.2以上2.5以下の範囲であることが好ましく、0.4以上2.0以下の範囲であることがより好ましく、0.6以上1.5以下の範囲であることがさらに好ましい。
前記ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(c1)以外のブロックの分子量は、少なくとも3000以上である。
【0038】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)の製造容易性の観点から、当該ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(c1)を1つ以上と、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体を主体とする共重合体ブロック(c2)を、1つ以上含有することが好ましい。なお、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体を主体とする共重合体ブロック(c2)は、水素添加しても、しなくてもよい。
【0039】
ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体を主体とする共重合体ブロック(c2)中の、ビニル芳香族単量体単位の含有量は、本実施形態の発泡体用組成物を用いて成形した発泡体において高い吸音性を得る観点から、35質量%以上85質量%以下の範囲が好ましく、40質量%以上80質量%の範囲がより好ましく、50質量%以上75質量%以下の範囲がさらに好ましく、55質量%以上70質量%以下の範囲がさらにより好ましい。
【0040】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)中に、前記ブロック(c1)、(c2)が、それぞれ2つ以上あるときは、各ブロックは同一であっても異なっていてもよい。
また、必要に応じて、共役ジエン単量体を主体とする重合体ブロックを含有してもよい。
前記ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(c1)、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体を主体とする共役ジエン単量体を主体とする共重合体ブロック(c2)中のビニル芳香族単量体単位の分布は、上述したビニル芳香族化合物含有量の範囲であれば限定されず、均一に分布していても、テーパー状、階段状、凸状、あるいは凹状に分布していてもよい。
また、重合体ブロック中には、結晶部が存在していてもよい。
各共重合体ブロック中には、ビニル芳香族化合物含有量の異なるセグメントが複数個共存していてもよい。
各共重合体ブロック中のビニル結合量に分布があってもよい。
【0041】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)のブロック構造としては、例えば、((c1)−(c2))n、(c1)−((c2)−(c1))n、(c1)−(c3)−(c2)−(c1)、(c1)−(c3)−(c2)−(c3)−(c1)の構造(カップリング重合や逐次重合のどちらでもよい。)が挙げられる。
ここで、nは、1〜3の整数、c3は、共役ジエンを主体とする重合体ブロック(水素添加してもよい。)である。
特に、(c1)−(c2)−(c1)、(c1)−(c3)−(c2)−(c1)の構造がより好ましい。
【0042】
前記ビニル芳香族系ブロック系共重合体(c)の総共役ジエン単量体単位中のビニル結合量(水素添加物の場合は、水素添加前の総共役ジエン単量体単位中のビニル結合量)は、当該共重合体(c)の製造容易性の観点から、5mol%以上50mol%以下の範囲が好ましく、10mol%以上40mol%以下の範囲がより好ましく、15mol%以上35mol%以下の範囲がさらに好ましい。
ビニル結合量とは、水素添加前の共役ジエンの1,2−結合、3,4−結合及び1,4−結合の結合様式で組み込まれているうち、1,2−結合及び3,4−結合で組み込まれているものの割合とする。
架橋用組成物の場合、機械強度の観点から、前記ビニル芳香族ブロック共重合体(c)中の、非水素添加の共役ジエン単量体単位が5質量%から70質量%の範囲にあることが好ましい。
また、吸音性発泡体用組成物の高い耐光性や機械的物性の観点から、水素添加前における、前記共重合体(c)中の、総共役ジエンの不飽和基のうち、5mol%以上85mol%以下の範囲を水素添加することが好ましく、10mol%以上75mol%以下の範囲がより好ましく、20mol%以上60mol%以下がさらに好ましい。
【0043】
〔ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)の製造方法〕
ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)の重合方法としては、特に限定されないが、配位重合、アニオン重合またはカチオン重合などの重合方法が挙げられる。構造の制御の容易さの点で、アニオン重合が好ましい。
アニオン重合のビニル芳香族系ブロック共重合体の製造方法としては、公知の方法を適用でき、例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−4106号公報、特公昭56−28925号公報、特開昭59−166518号公報、特開昭60−186577号公報等に記載された方法が挙げられる。
また、ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)は、アニオン重合系で、逐次重合やカップリング重合等を行うことにより製造できる。
カップリング重合を行うときのカップリング剤としては、四塩化ケイ素、四塩化スズ、エポキシ化大豆油、ポリハロゲン化炭化水素化合物、カルボン酸エステル化合物、ポリビニル化合物、ビスフェノール型エポキシ化合物、アルコキシシラン化合物、ハロゲン化シラン化合物、エステル系化合物等が挙げられる。
【0044】
ビニル芳香族系ブロック共重合体を水素添加し、ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)を得る際の、水素添加を行う方法としては、水素添加触媒の存在下で、水素を供給し、不飽和部を水素添加する方法が挙げられる。
水素添加触媒としては、特に限定はされるものではなく、従来公知の(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水素添加触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩またはアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水素添加触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水素添加触媒が挙げられる。
ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)の重量平均分子量は、機械強度の観点から、5万以上が好ましく、発泡体用組成物において良好な加工性を得る観点から、40万以下の範囲が好ましく、6万以上30万以下の範囲がより好ましく、8万以上20万以下の範囲がさらに好ましく、10万以上15万以下の範囲がさらにより好ましい。
ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)の重量平均分子量は、後述する実施例に記載された方法により測定できる。
【0045】
本実施形態の発泡体用組成物中の、ビニル芳香族ブロック共重合体(c)の含有量は、高い吸音性を得る観点から、10質量%以上であることが好ましく、経済性の観点から90質量%以下の範囲が好ましく、15質量%以上75質量%以下の範囲がより好ましく、20質量%以上50質量%以下の範囲がさらに好ましい。
【0046】
〔発泡体用組成物、発泡体〕
本実施形態の発泡体用組成物は、前記熱可塑性樹脂(a)、ゴム(b)、前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)、発泡剤、及び架橋剤を含有する。
これらを、例えば、加圧ニーダー及びロールオープンミル等を用いて、混練することにより発泡体用組成物が得られる。
【0047】
上記発泡体用組成物を発泡することにより発泡体が得られる。
発泡体用組成物の発泡方法としては、特に限定されるものではなく、化学的方法、物理的方法等が適用でき、各々、無機系発泡剤、有機系発泡剤等の化学的発泡剤、物理発泡剤等の発泡剤の添加等により、発泡体用組成物の内部に気泡を分布させて、発泡体が得られる。
また、樹脂からなる外殻と、内包される膨張剤とを有する熱膨張性微小球を発泡剤として用いてもよい。
【0048】
無機系発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機化合物が挙げられる。
また、無機系発泡剤に、発泡速度を改良するため弱酸性化合物を併用してもよい。
弱酸性化合物としては、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸等の有機酸、ホウ酸等の無機酸、及びクエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウム等の酸性塩が挙げられる。
有機系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジニトロソ−N,N’−ジメチルテレフタルアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。
物理的発泡剤としては、例えば、ペンタン、ブタン、ヘキサン等の炭化水素、塩化メチル、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、窒素、空気等のガス、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ハイドロフルオロカーボン等のフッ素化炭化水素等が挙げられる。
上述した発泡剤は、単独で用いてもよく、組み合わせて使用してもよい。
発泡剤の配合量は、発泡用組成物中の0.1〜20質量%の範囲が好ましく、0.3〜15質量%の範囲がより好ましく、0.5〜8質量%の範囲がさらに好ましい。
これらの発泡剤の助剤として尿素を主成分とした化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物、即ち高級脂肪酸あるいは高級脂肪酸の金属化合物を添加してもよい。
【0049】
本実施形態における発泡体の比重は任意であるが、0.03〜0.4の範囲が好ましい。
【0050】
本実施形態の発泡体は、より高い機械強度を得る観点から、架橋発泡体とすることが好ましい。
架橋体の製造方法は、特に制限されるものではなく、架橋剤により架橋する方法、紫外線架橋法、電子線架橋法、熱架橋法等の公知の方法を用いることができる。特に、架橋剤により、架橋する方法が好ましい。
架橋剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物などのラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用される。硫黄含有化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物などが含まれる。
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。
なお、架橋剤としての有機過酸化物は、使用される樹脂や、架橋時における温度によって最適な材料を用いる。
架橋時における温度は、好ましくは80以上200℃以下、より好ましくは100以上180℃以下である。
架橋剤の含有量は、高い機械強度を得る観点から、発泡体用組成物中において、0.01質量%以上とすることが好ましく、経済性の観点から10質量%以下とすることが好ましく、これらの観点から0.1質量%以上3質量%以下とすることがより好ましい。
【0051】
架橋剤として上述した有機過酸化物を使用する際には、架橋助剤として、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N,4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミド等のペルオキシ架橋助剤、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ノナンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー;ビニルブチラート、ビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマー等を併用してもよい。
その他の架橋助剤として、亜鉛華、ステアリン酸などを必要に応じた量で使用できる。
【0052】
本実施形態の発泡体において、発泡性の改良(造核剤)の改良を図り、高い曲げ弾性率、耐衝撃性を得る観点から、無機充填剤を併用してもよい。
無機充填剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、グラファイト、酸化チタン、チタン酸カリウムウイスカー、カーボンファイバー、アルミナ、カオリンクレー、ケイ酸、ケイ酸カルシウム、石英、マイカ、タルク、クレー、ジルコニア、チタン酸カリウム、アルミナ、金属粒子等が挙げられる。
【0053】
本実施形態の発泡体用組成物及び発泡体には、要求性能に応じて、その他の添加剤を併用してもよい。
例えば、難燃剤、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、流れ増強剤、ステアリン酸金属塩といった離型剤、シリコーンオイル、鉱物油系軟化剤、合成樹脂系軟化剤、銅害防止剤、架橋剤、核剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
本実施形態の発泡体は、より高い吸音率を得るために、連続気泡を有する発泡体にしてもよい。
連続気泡を有する発泡体を得る方法としては、上述した熱可塑性樹脂(a)及び/又はゴム(b)、及びビニル芳香族系ブロック共重合体(c)に、発泡剤及び架橋剤を添加混練し、得られた発泡体用組成物を加熱発泡させて発泡体を形成させ、次いで機械的変形を加えて気泡を連通化させる方法であれば、従来公知の方法が適用でき、特に限定されない。
このような方法のうち、特に、特公昭62−19294号公報及び特公平1−44499号公報に記載されているように、発泡体用組成物を所望の形状に加熱成形した後、気密でない金型中で常圧下にて加熱して、架橋剤及び発泡剤を同時進行的に分解させて気泡体を形成させ、次いで機械的変形を加えて気泡を連通化させる方法等が挙げられる。
この発泡・架橋工程例としては、例えば、発泡体用組成物を所望の断面形状、寸法を有する気密でない、すなわち密閉されていない金型に入れ、当該金型中に入れ、金型の金属板を外部から加熱することによって、上記組成物を間接的に加熱せしめる方法が挙げられる。
また、発泡体用組成物シートの両面に、それぞれに電子線を照射して架橋させ、得られた架橋された発泡体用組成物シートを熱風式発泡炉に通して加熱し、発泡させる方法も挙げられる。
上述のようにして得られた気泡体(いわゆる独立気泡体)を、例えば、等速二本ロール等により圧縮変形を加えることによって気泡膜が破壊され、気泡が連通化されて連続気泡体が得られる。このとき、等速二本ロールの表面に無数の小さい針を設けるか、又は等速二本ロールの前及び/又は後に無数の針を設けたロールを配置して、気泡体の表面に無数の小孔を開けることによって、気泡の連通化を促進させることができる。
なお、発泡体用組成物をエマルジョン化させて、泡立て器などを用いて樹脂組成物中に空気を混合させることにより、発泡エマルジョンとして用いてもよい。
【0055】
本実施形態の発泡体は、他の例えば繊維シート等のシートを積層して用いてもよい。
【0056】
〔用途〕
本実施形態の発泡体用組成物、及び発泡体は、事務機器、音響機器、家庭用電気製品をはじめとして、各種機器の内外装材、自動車用の内外装材、あるいは住居の床や内装材等に利用できる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた評価法、及び測定方法を下記に示す。
【0058】
〔I.(c)の組成、及び構造評価〕
(I−1)スチレン含有量、共役ジエンのビニル結合量、共役ジエンに基づく二重結合の水素添加率
ポリマー中のスチレン単位、ブタジエンの1,4−結合単位、及び1,2−結合単位、エチレン単位、あるいはブチレン単位量は、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により下記の条件で測定した。
測定機器:JNM−LA400(JEOL製)
溶媒:重水素化クロロホルム
測定サンプル:ポリマーを水素添加する前後の抜き取り品
サンプル濃度:50mg/ml
観測周波数:400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数:64回
パルス幅:45°
測定温度:26℃
【0059】
(I−2)ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)中の、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(c1)の含有量
I.M.Kolthoff,et al.,J.Polym.Sci.,1946,Vol.1,p.429に記載の四酸化オスミウム酸法で測定した。
測定サンプル:下記〔III.〕で作製するビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、水素添加される前段階における抜き取り品。
ポリマー分解用溶液:オスミウム酸0.1gを第3級ブタノール125mLに溶解した溶液。
【0060】
(I−3)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)
下記の条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
ポリスチレン(PS)換算分子量で求めた。
測定装置:HLC−8220(TOSOH社製、商品名)
カラム:TSKgelGMHXL SuperH5000:1本、SuperH4000:2本(TOSOH社製、商品名)
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
検量線用サンプル:市販(TOSOH社製)の標準ポリスチレン、10点測定
【0061】
(I−4)tanδピーク温度
tanδピーク温度は、動的粘弾性測定(1Hz)により得た。
具体的には、動的粘弾性データは、試料を、幅10mm、長さ35mmのサイズにカットし、装置ARES(ティーエイインスツルメントー株式会社製、商品名)の捻りタイプのジオメトリーに試料をセットし、実効測定長さは25mm、ひずみ0.5%、周波数1Hz、−60℃から100℃まで、昇温速度3℃/分の条件で測定した。
ピーク温度は、RSI Orchestrator(ティーエイインスツルメントー株式会社製、商品名)の自動測定より求めた。
【0062】
〔II.水素添加触媒の調製〕
下記IIIの、ビニル芳香族系ブロック共重合体(c−1)を製造する際に行う水素添加反応に用いた水素添加触媒は、下記の方法で調製した。
窒素置換した反応容器に、乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
【0063】
〔III.ビニル芳香族系ブロック共重合体:(c−1)、(c−2)の調製〕
(c−1)
攪拌装置及びジャケットを備えた槽型反応器(内容積:10リットル)に、シクロヘキサン200質量部を仕込み、温度70℃に調整した。
その後、n−ブチルリチウムを0.07質量部、反応器の底部から添加した。
次に、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを0.10質量部、添加した。
その後、スチレンを7.5質量部、約10分間で供給した。
供給停止後、15分間、反応器内温度を70℃に維持し、反応させた。
次に、シクロヘキサンで24質量%に希釈したブタジエン34質量部と、スチレン51質量部とを、60分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給した。
供給停止後、15分間反応器内温度を70℃に維持し、その後に、シクロヘキサンで24質量%に希釈したスチレンを7.5質量部、約10分で供給した。
その間の反応器内温度を70〜80℃になるように調整した。
供給停止後、10分間反応器内温度を70℃に調整しながら反応させた。
その後、メタノールを0.03質量部添加した。
次に、上記〔II〕で調製した水素添加触媒を添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を1時間行った。
反応終了後、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを添加し、ビニル芳香族ブロック共重合体(c−1)を得た。
このビニル芳香族ブロック共重合体(c−1)は、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロックの含有量が15質量%、1,4−ブタジエン単位が16質量%、水素添加1,4−ブタジエン単位が7質量%、水素添加1,2−ブタジエン単位が11質量%であった。
また、共役ジエン中の不飽和基の水素添加率は50mol%、重量平均分子量は13万であった。
さらに、tanδピーク温度は20℃であった。
またさらに、このビニル芳香族ブロック共重合体(c−1)のSP値は、18.61((J/cm31/2)、c1(ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック)のSP値は、19.51((J/cm31/2)、c2(ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体を主体とする共重合体ブロック)のSP値は、18.45((J/cm31/2)であった。
【0064】
(c−2)
攪拌装置及びジャケットを備えた槽型反応器(内容積:10リットル)に、シクロヘキサン200質量部を仕込み、温度50℃に調整した。
その後、n−ブチルリチウムを0.09質量部、反応器の底部から添加した。
次に、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを0.26質量部、添加した。
その後、スチレンを10質量部、約10分間で供給した。
供給停止後、15分間反応器内温度を50℃に維持し、反応させた。
次に、シクロヘキサンで24質量%に希釈したイソプレン80質量部を、70分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給した。
供給停止後、15分間反応器内温度を50℃に維持した後に、シクロヘキサンで24質量%に希釈したスチレンを10質量部、約10分で供給した。なお、その間の反応器内温度を50℃になるように調整した。
供給停止後、15分間反応器内温度を50℃に調整しながら反応させた。
その後、メタノールを0.04質量部添加した。
その後、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを添加し、ビニル芳香族ブロック共重合体(c−2)を得た。
このビニル芳香族系ブロック共重合体(c−2)は、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロックの含有量が20質量%、1,4−イソプレン単位が24質量%、3,4−イソプレン単位が48質量%、1,2−イソプレン単位が8質量%、重量平均分子量は10万であった。
tanδピーク温度は17℃であった。
またさらに、このビニル芳香族ブロック共重合体(c−2)のSP値は17.09((J/cm31/2)であった。
c1のSP値は、19.51((J/cm31/2)、イソプレンブロックのSP値は、16.59((J/cm31/2)であった。
【0065】
〔実施例1、2〕、〔比較例1、2〕
〔IV.発泡体の製造〕
下記表1に示す第1工程の配合成分を、下記表1に示す割合に従い、加圧ニーダーを用いて、設定温度120℃で、10分混合を行った。
その後に、ロールオープンミルを用いて、第1工程の混練物と、第2工程の各配合成分とを、設定温度110℃で、5分混合した。
次に、圧縮成形機を用いて、上記の混練物を、温度160℃、圧力150kgf/cm2で15分間圧縮成形した。
その後、圧力を開放して重合体組成物の架橋発泡体を得た。
得られた架橋発泡体の上面と下面をスライスし、厚み5mm発泡体を得た。
下記表1中、第1工程で用いた材料(a):LDPE、第2工程で用いたジクミルパーオキサイド、発泡剤の具体的な材料名を下記に示す。
LDPE:ノバテックYF30(日本ポリエチレン株製、商品名、MFR(JIS−K6922−2:1.1g/10分)
発泡剤 :FE788(永和化成工業製、商品名、ADCA系)
DCP :ジクミルパーオキサイド
【0066】
〔V.吸音率の測定方法〕
上記〔VI.発泡体の製造〕により得られた発泡体を、トムソン刃でA管、B管用の形に打ち抜き、自動垂直入射吸音管(TYPE10041A)で吸音率の測定を行った。
測定方法は、JIS A1405「管内法による建築材料の垂直入射吸音率測定法」に従って行った。
A管法は、100〜1250Hzの範囲で測定を行い、得られた結果より、吸音率の最大値を読みとった。
吸音率は大きい方が好ましい。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例1、2においては、いずれも優れた吸音率を有する発泡体が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の発泡体用組成物は、事務機器、音響機器、家庭用電気製品をはじめとして、各種機器の内外装材、自動車用の内外装材、住居の床や内装材等として、産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(a)及び/又はゴム(b)と、
ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)と、
を、含有し、
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、−20℃以上50℃以下の範囲にtanδピーク温度を有し、
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)のSP値((J/cm31/2)が、17.3以上20.0以下である吸音性発泡体用組成物。
【請求項2】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、水素添加物である請求項1に記載の吸音性発泡体用組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(a)又はゴム(b)のSP値((J/cm31/2)と、
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)のSP値((J/cm31/2)との差が、0.5((J/cm31/2)以上である請求項1又は2に記載の吸音性発泡体用組成物。
【請求項4】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、
ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体とを主体とする共重合体である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の吸音性発泡体用組成物。
【請求項5】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、
ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(c1)を、1つ以上を含有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の吸音性発泡体用組成物。
【請求項6】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)中の、
前記ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(c1)のSP値と、
前記(c1)以外のブロックのSP値との差の少なくとも一つが、
2.5以下である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の吸音性発泡体用組成物。
【請求項7】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、
ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(c1)を1つ以上と、
ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体を主体とする共重合体ブロック(c2)を1つ以上、含有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の吸音性発泡体用組成物。
【請求項8】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)中の、非水素添加の共役ジエン単量体単位が、5質量%〜70質量%の範囲にある請求項1乃至7のいずれか一項に記載の吸音性発泡体用組成物。
【請求項9】
前記ビニル芳香族系ブロック共重合体(c)が、水素添加物であり、
水素添加前におけるビニル芳香族ブロック共重合体中の総共役ジエンの不飽和基のうち、5mol%以上85mol%以下の範囲が水素添加されている請求項1乃至8のいずれか一項に記載の吸音性発泡体用組成物。
【請求項10】
発泡剤及び架橋剤を、さらに含有する請求項1乃至9のいずれか一項に記載の吸音性発泡体用組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の吸音性発泡体用組成物を用いて成形した吸音性発泡体。

【公開番号】特開2011−122021(P2011−122021A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279453(P2009−279453)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】