説明

吸音遮水性に優れた置き敷きマット及びその製造方法

基布(7)にパイル(8)が植設されたマット本体(2)の裏面に不織布(3)を重ね合わせた状態でニードリングを行った後、該不織布(3)の非積層面側から撥水剤を含む高分子接着剤(4)を含浸せしめる。こうして得られた置き敷きマット(1)は、マット本体(2)の裏面に不織布(3)が接触状態で配置され、該不織布(3)の構成繊維の一部(30)が基布(7)に侵入してこれに絡んだものとなり、該不織布(3)に撥水剤を含む接着剤(4)が含浸されて吸音遮水層が形成され、この接着剤(4)がマット本体(2)の裏面にも固着されてパイル(8)の抜け止め及びマット本体(2)と不織布(3)の接合がなされたものとなる。

【発明の詳細な説明】
この出願は、2002年12月26日付で出願された日本国特許出願2002−376614号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容は、そのまま本願の一部を構成するものである。
【技術分野】
この発明は、例えば自動車用フロアーマット等の乗物用フロアーマット、玄関マット、トイレマット、キッチンマット、バスマット等として用いられる吸音遮水性に優れた置き敷きマット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
従来、例えば床面の上に置き敷きされる玄関マット、トイレマット等の置き敷きマットとしては、第5図に示すように、基布(107)の上にパイル(108)が植設されてなるマット本体(102)の裏面に不織布(103)がSBR等のラテックス接着層(104)を介して接合一体化されたものが公知である(例えば特許文献1参照)。上記従来構成のマットは、マット本体(102)の裏面にラテックスを塗布した後、この塗布面に不織布(103)を重ね合わせてロール等で加圧し、加熱乾燥することによって製造されている。
【特許文献1】 特開2001−348769号公報(請求項1、3、図1)
しかしながら、上記従来構成の置き敷きマットでは、マット本体(102)と不織布(103)を接着する接着層(104)の目付量としては、接合強度を十分に確保するためには通常600〜1000g/m(乾燥質量)に設定する必要があり、このために重量増となってマットとして十分な軽量性を確保できないという問題があった。
また、置き敷きマットは、使用を続けていると比較的短期間で汚れが目に付くようになってくることから、定期的に洗う必要が生じるが、上記従来構成の置き敷きマットを丸洗い(洗濯)すると、不織布(103)がマット本体(102)から剥がれてしまいやすく、このように耐洗濯性に劣るという問題も抱えていた。
一方、近年、特に自動車用フロアーマットでは、車室内空間の静粛性を向上させる観点から、マット自体が優れた吸音性を備えていることが強く求められている。更に、濡れた靴や傘等により持ち込まれた水がフロアーマットを通過してその裏面側に到達するようなことがあると、フロアーを構成する金属板に錆を生じさせることが懸念されるし、また予め自動車のフロアーにカーペットが敷設されている場合には該カーペットにかびが付く等の問題を生じることから、自動車用フロアーマットとしては前記優れた吸音性とともに十分な遮水性をも備えていることが強く求められるようになってきているが、上記従来構成の置き敷きマットではこのような要求に応えることはできなかった。
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、軽量であり、マット本体と不織布との剥離強度及びパイル抜糸強度が十分に得られて耐洗濯性に優れると共に、優れた吸音性を有し、十分な遮水性を確保できる置き敷きマット及びその製造方法を提供することを目的とする。
この発明の他の目的は、以下に示すこの発明の実施形態により明らかにされるであろう。
【発明の開示】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]基布にパイルが植設されてなるマット本体の裏面に不織布が接触状態で積層配置され、該不織布の構成繊維の一部が前記基布に侵入してこれに絡んだものとなされると共に、前記不織布に撥水剤を含有した高分子接着剤が含浸されて吸音遮水層が形成され、該高分子接着剤が前記マット本体の裏面にも固着されてパイルの抜け止めがなされると共にマット本体と不織布とが接合されていることを特徴とする吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
[2]前記含浸された高分子接着剤は気泡を含有している前項1に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
[3]前記高分子接着剤が前記基布内にまで含浸され、前記基布に侵入してこれに絡んだ不織布の構成繊維が、前記高分子接着剤によって前記基布に接着されている前項1または2に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
[4]前記高分子接着剤としてゴム又は樹脂のエマルジョンが用いられてなる前項1〜3のいずれか1項に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
[5]前記高分子接着剤の目付量(乾燥質量)が100〜550g/mである前項1〜4のいずれか1項に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
[6]前記不織布の目付量が100〜600g/mである前項1〜5のいずれか1項に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
[7]前記高分子接着剤の目付量(乾燥質量)が130〜450g/mであり、前記不織布の目付量が150〜450g/mである前項1〜4のいずれか1項に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
[8]前記基布の目付量が80〜400g/mである前項1〜7のいずれか1項に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
[9]前記パイルの目付量が300〜2000g/mである前項1〜8のいずれか1項に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
[10]前記不織布の構成繊維の繊度が3〜80デシテックスの範囲である前項1〜9のいずれか1項に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
[11]前記不織布の構成繊維として少なくとも2種類の繊度の繊維が混合されたものが用いられている前項10に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
[12]前記撥水剤がフッ素系撥水剤である前項1〜7のいずれか1項に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
[13]基布にパイルが植設されてなるマット本体の裏面に不織布を重ね合わせた状態でニードリングを行ってマット本体と不織布とを積層一体化する積層工程と、前記不織布の非積層面側から撥水剤を含有した高分子接着剤を含浸せしめて該高分子接着剤を少なくとも前記マット本体の裏面にまで到達せしめて吸音遮水層を形成する含浸工程とを包含することを特徴とする吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
[14]基布にパイルが植設されてなるマット本体の裏面にウェブを重ね合わせた状態でニードリングを行ってマット本体の裏面にニードルパンチ不織布を積層一体化する積層工程と、前記ニードルパンチ不織布の非積層面側から撥水剤を含有した高分子接着剤を含浸せしめて該高分子接着剤を少なくとも前記マット本体の裏面にまで到達せしめて吸音遮水層を形成する含浸工程とを包含することを特徴とする吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
[15]前記高分子接着剤をさらに前記基布内にまで含浸せしめる前項13または14に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
[16]前記高分子接着剤中の撥水剤の含有率が0.5〜8質量%である前項13〜15のいずれか1項に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
[17]前記高分子接着剤中の撥水剤の含有率が1〜5質量%である前項13〜15のいずれか1項に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
[18]前記ニードリングを1cm当たり10〜200回行う前項13〜17のいずれか1項に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
[19]前記ニードリングを1cm当たり30〜150回行う前項13〜17のいずれか1項に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
[20]前記ニードリングを行う際に、ニードルの刺し込みを不織布側から行う前項13〜19のいずれか1項に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
[21]前記高分子接着剤としてSBR等のゴムのエマルジョンを用い、該高分子接着剤の目付量(乾燥質量)が100〜550g/mとなるように含浸せしめるものとし、前記含浸工程の後に加熱処理してゴムの架橋を行う前項13〜20のいずれか1項に記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
[1]の発明では、マット本体の裏面に不織布が接触状態で積層配置され、さらに該不織布の構成繊維の一部が基布に侵入してこれに絡んだ状態でマット本体の裏面に高分子接着剤が固着されてマット本体と不織布とが接合されているので、マット本体と不織布の接合力を十分に確保するのに必要な高分子接着剤の量が非常に少なくて済む。従来構成では、マット本体の裏面に接着剤の層を先に形成せしめ、この接着剤層を介して不織布を接着せしめた構成であり、接合力を十分に確保するためには接着剤の目付量(乾燥質量)として600〜1000g/m程度を必要としていたのであるが、本発明では、a)マット本体と不織布とが重ね合わされた接触状態で、しかもb)不織布の構成繊維の一部が基布に侵入してこれに絡んだ状態で、マット本体裏面の接着剤により固着されているから、少ない接着剤量で十分な接合力が確保されるものとなる。即ち、前記a)とb)の作用によってマット本体と不織布の境界領域における空隙容積が非常に低減された状態で接着剤が含浸固着されるので、少ない接着剤量での接合が可能となり、かつ十分な接合力が確保されるものである。例えば、高分子接着剤の目付量(乾燥質量)が100〜550g/mであっても十分な接合力が得られる。また、不織布の構成繊維の一部が基布に侵入してこれに絡んでいるので接合力が更に向上されるものとなる。
また、不織布の構成繊維の一部が基布に侵入してこれに絡んだ状態でマット本体裏面の接着剤で接合されているので、マット本体と不織布との剥離強度及びパイル抜糸強度が十分に得られる。従って、耐洗濯性に優れたものとなり、丸洗いを繰り返し行っても不織布がマット本体から剥がれるようなことがない。
また、マットの下側からの音は下側の吸音遮水層等で吸音される一方、この吸音遮水層は通気性を有するので、マットの上側の音はマット本体を介してこの吸音遮水層に入り込んでここで吸音され、このようにマットが敷設された空間内(例えば車室内)において十分な静粛性が確保されるものとなる。
また、高分子接着剤は撥水剤を含有しているので、その撥水作用によってマット上面から吸音遮水層への水の侵入が効果的に防止されるものとなり、水はマットの裏面側には到達せず、このように本マットは十分な遮水機能を有したものとなる。
更に、不織布に高分子接着剤が含浸されているので、下地面に対する耐摩耗性に優れると共に十分な滑り止め効果が得られるものとなるし、不織布のほつれ発生も防止できる。のみならず、この高分子接着剤はマット本体裏面にも固着されているので、パイルの抜け止めが十分に図られており、このように高分子接着剤を含浸せしめるだけで上記の優れた諸効果を一度に享受できるものであり、従って多機能な置き敷きマットとしてより低コストなものが得られる。
[2]の発明では、吸音性能をより向上させることができる。
[3]の発明では、基布に侵入してこれに絡んだ不織布の構成繊維が基布に接着されているので、マット本体と不織布の剥離強度及びパイル抜糸強度がさらに向上すると共に、耐洗濯性も一段と向上する。
[4]の発明では、高分子接着剤としてはゴム又は樹脂のエマルジョンが用いられているので、接着強度をより向上できるし、より少ない目付量で十分な接合力を確保できるので更なる軽量化を図り得る。
[5]の発明では、十分な接合強度及び優れた耐洗濯性を確保しつつ、マットとしてより一層の軽量化を図ることができる。即ち、本発明では高分子接着剤の目付量(乾燥質量)が100〜550g/mであっても十分な接合力が得られるので、このような範囲に設定することで、十分に軽量化を図ることができる。
[6]の発明では、吸音性能を向上させることができる。
[7]の発明では、十分な接合強度及び優れた耐洗濯性を確保しつつ、吸音性能をさらに向上させることができると共に、更なる軽量化を図り得る。
[8]の発明では、マットとしての強度をさらに向上させることができる。
[9]の発明では、より一層良好な踏込み感を実現できると共に、軽量性も十分に確保できる。
[10]の発明では、十分な接合強度を確保しつつ吸音性能をさらに向上させることができる。
[11]の発明では、コストをさらに低減できる。
[12]の発明では、より優れた遮水性能を確保することができる。
[13]、[14]の発明では、ニードリングを行うことで、不織布の構成繊維の一部が基布に侵入してこれに絡んだ状態で重ね合わせることができ、このような接触状態で接着剤をマット本体の裏面にまで含浸により到達せしめてマット本体と不織布とを接合するものであり、従来のようにマット本体の裏面に接着剤の層を先に形成せしめてから不織布を重ね合わせて接合するものではないから、従来と比較して格段に少ない接着剤量でマット本体と不織布とを十分な接合力で接合できる。即ち、一方の構成繊維が他方に入り込んでこれに絡み合った態様で重ね合わされた接触境界面に接着剤を供給して両者を接合する方法と、一方の裏面に接着剤の層を先に形成せしめておいてから他方を重ね合わせて接合する方法とでは、同等の接合力を確保するのに要する接着剤使用量が格段に相違するのであり、前者の本発明の方法のほうが格段に少なくて済み、従って本製造方法によれば、十分に軽量化された置き敷きマットを得ることができる。また、上記製造方法により得られる置き敷きマットは、不織布の構成繊維の一部が基布に侵入してこれに絡んだ状態でマット本体裏面の接着剤により接合されているので、マット本体と不織布との剥離強度及びパイル抜糸強度が十分に得られる。従って耐洗濯性にも優れたものとなり、丸洗いを繰り返し行っても不織布がマット本体から剥がれるようなことがない。また、マットの下側からの音は下側の吸音遮水層等で吸音される一方、該吸音遮水層は通気性を有するので、マットの上側の音はマット本体を介してこの吸音遮水層に入り込んでこの吸音遮水層で吸音され、このようにマットが敷設された空間内(例えば車室内)において十分な静粛性を確保できる。また、高分子接着剤は撥水剤を含有しているので、この撥水作用によってマット上面から吸音遮水層内への水の侵入が効果的に防止されるものとなり、マットは十分な遮水機能を備えたものとなる。更に、上記製造方法により得られる置き敷きマットは、不織布に高分子接着剤が含浸されているので、下地面に対する耐摩耗性及び滑り止め効果が十分に得られるし、不織布のほつれ発生も防止できる。のみならず、高分子接着剤はマット本体の裏面にも固着されているので、パイルの抜け止めが十分に図られており、このように不織布の非積層面側から高分子接着剤を含浸せしめる工程を設けるだけで上記の優れた諸効果を一度に享受できるものであり、従って生産性良く多機能な置き敷きマットを製造することができ、ひいては多機能な置き敷きマットをより低コストで製造できる。なお、従来は、マットの製造に用いるマット本体としては、その裏面にパイル抜け防止用のラテックス層が予め前処理加工されたものが用いられるのが一般的であったが、本製造方法では、マット本体の裏面にこのような前処理加工を行わなくても良いので、その分工程数を少なくすることができる利点もある。
更に[14]の発明では、ニードリングの際に、ウェブからのニードルパンチ不織布の製作をも同時に行うものであるから、[13]の製造方法よりも生産効率を向上させることができる利点がある。
[15]の発明では、ニードリングにより基布に侵入してこれに絡んだ不織布の構成繊維を該高分子接着剤によって基布に接着せしめることができるので、マット本体と不織布との剥離強度及びパイル抜糸強度をさらに向上できると共に、耐洗濯性も一段と向上させることができる。
[16]の発明では、十分な接合強度及び優れた耐洗濯性を確保しつつ、さらに優れた遮水性能を実現することができる。
[17]の発明では、十分な接合強度及び優れた耐洗濯性を確保しつつ、さらに一層優れた遮水性能を実現することができる。
[18]の発明では、マット本体と不織布との剥離強度をさらに増大させることができる。
[19]の発明では、マット本体と不織布との剥離強度をさらに一層増大させることができる。
[20]の発明では、ニードルの刺し込みを不織布側から行うので、不織布の構成繊維を基布に十分に絡ませることができて、マット本体と不織布の接合力をさらに向上させたマットを製造することができる。
[21]の発明では、接着剤の目付量が従来よりも少ないので、ゴムに対する加熱が十分に行き渡るものとなってゴムの架橋を十分に行わしめることができるので、マット本体と不織布との剥離強度及びパイル抜糸強度をより一層向上させることができ、より一層耐洗濯性に優れた置き敷きマットを製造できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明の一実施形態に係る置き敷きマットを示す模式的断面図である。
第2図は、この発明の製造方法における積層工程の一例を示す側面図である。
第3図は、この発明の製造方法における積層工程の他の例を示す側面図である。
第4図は、この発明の置き敷きマットの他の例を示す模式的断面図である。
第5図は、従来の置き敷きマットを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
この発明の一実施形態に係る置き敷きマット(1)を第1図に示す。この置き敷きマット(1)は、基布(7)の上にパイル(8)が植設されてなるマット本体(2)の裏面に不織布(3)がニードリングにより積層一体化されてなり、該ニードリングによって不織布(3)の構成繊維の一部(30)が基布(7)及びパイル(8)根元部に侵入してこれらに絡んだ態様で積層されている。また、前記不織布(3)にはその非積層面側(第1図では下面側)から撥水剤を含有した高分子接着剤(4)が含浸されて吸音遮水層が形成されており、該高分子接着剤(4)が前記マット本体(2)の裏面にも固着されて、これによりパイル(8)の抜け止めがなされると共に、マット本体(2)と不織布(3)とが接合されている。更に、前記高分子接着剤(4)は基布(7)内にまで含浸されており、前記ニードリングによって基布(7)に侵入して基布(7)に絡んだ不織布(3)の構成繊維(30)が、高分子接着剤(4)によって基布(7)に接着されたものとなされている。前記含浸された高分子接着剤(4)は気泡を含有した構成である。なお、このマット(1)は、マットの厚さ方向において通気性を備えたものとなされている。
上記置き敷きマット(1)では、マット本体(2)と不織布(3)とが重ね合わされた接触状態で、なおかつ不織布(3)の構成繊維の一部が基布(7)に侵入して基布(7)に絡んだ態様で、マット本体(2)裏面の接着剤(4)によって固着されているから、マット本体の裏面に接着剤の層を先に形成せしめてからこれに不織布を接着せしめた場合(従来構成)と比較すると格段に少ない接着剤量で十分な接合強度が確保されるものとなる。例えば、高分子接着剤の目付量(乾燥質量)が100〜550g/mであっても十分な接合力が得られる。
また、不織布(3)の構成繊維の一部(30)が基布(7)に侵入して基布(7)に絡んだ状態で、マット本体(2)の裏面で接着剤(4)により接合されているので、マット本体(2)と不織布(3)との剥離強度及びパイル抜糸強度が十分に得られて、耐洗濯性に優れたものとなり、丸洗いを繰り返し行っても不織布(3)がマット本体(2)から剥がれるようなことがない。
また、マット(1)の下側からの音は下側の吸音遮水層等で吸音される一方、この吸音遮水層は通気性を有するので、マットの上側の音はマット本体(2)を介してこの吸音遮水層に入り込んでここで吸音され、こうしてマット(1)が敷設された空間内(例えば車室内)において十分な静粛性が確保されるものとなる。なお、吸音については、不織布(3)に高分子接着剤(4)が含浸されて形成された吸音遮水層における不織布、含浸接着剤、接着剤中の気泡等による複合的な作用によって吸音効果が十分に得られているものと推定される。前記高分子接着剤中に存在する気泡は、連続気泡であっても良いし、独立気泡であっても良い。特に好適な形態は、前記含浸された高分子接着剤(4)が、連続気泡と独立気泡の両方を含有した構成であり、この場合にはより一層優れた吸音効果が得られるものとなる。
また、高分子接着剤(4)は撥水剤を含有しているので、その撥水作用によってマット上面から吸音遮水層内への水の侵入が効果的に防止されるものとなり、水はマット(1)の裏面側には到達せず、このように本マット(1)は十分な遮水機能を有したものとなる。
更に、不織布(3)に高分子接着剤(4)が含浸されているので、下地面に対する耐摩耗性に優れると共に十分な滑り止め効果が得られるものとなるし、不織布(3)のほつれ発生も防止できる。のみならず、この高分子接着剤(4)はマット本体(2)の裏面にも固着されているので、パイル(8)の抜け止めが十分に図られており、このように撥水剤を含有した高分子接着剤(4)を含浸せしめるだけで上記の優れた諸効果を一度に享受できるのであり、従って多機能な置き敷きマットとしてより低コストなものが得られる。
上記構成の置き敷きマット(1)は、例えば次のようにして製造される。まず、第2図に示すように、基布(7)の上にパイル(8)が植設されてなるマット本体(2)の裏面に不織布(3)を重ね合わせ、この状態で図面左から右方向にローラ(21)(21)(22)(22)で搬送しつつ、ニードリング装置(20)のニードル(20a)…を上下に昇降させることによってニードリングを行ってマット本体(2)と不織布(3)とを積層一体化して積層シート(9)を得る(積層工程)。このニードリングによって不織布(3)の構成繊維の一部(30)が基布(7)に侵入してこれに絡んだ態様で積層一体化される。なお、第2図に示すようにニードル(20a)の刺し込みは不織布側(3)から行うのが、マット本体(2)と不織布(3)の接合強度を向上できる点で、好ましい。
次に、前記積層シート(9)における不織布(3)の非積層面側から撥水剤を含有した高分子接着剤(4)を含浸せしめて吸音遮水層を形成する。この含浸工程で高分子接着剤(4)を少なくともマット本体(2)の裏面にまで到達せしめる。好ましくは高分子接着剤(4)をさらに基布(7)内にまで含浸せしめる。接着剤(4)含浸のための具体的方法は特に限定されず、例えばダイレクトコート法、ロールコーター法等の公知の手法等を適用できる。
前記含浸された高分子接着剤(4)が気泡を含有した構成とするには、例えば撥水剤を含有した高分子接着剤のエマルジョンを機械発泡したものを、前記不織布(3)の非積層面側から含浸せしめれば良い。或いは、発泡剤と撥水剤を含有した高分子接着剤のエマルジョンを、前記不織布(3)の非積層面側から含浸せしめた後、加熱により発泡させて高分子接着剤(4)中に気泡を形成せしめるようにしても良い。
なお、前記積層工程(第2図)は次のような積層工程としても良い。即ち、第3図に示すように、基布(7)の上にパイル(8)が植設されてなるマット本体(2)の裏面にウェブ(10)を重ね合わせ、この状態で図面左から右方向にローラ(21)(21)(22)(22)で搬送しつつ、ニードリング装置(20)のニードル(20a)…を上下に昇降させることによってニードリングを行ってマット本体(2)とニードルパンチ不織布(3)とを積層一体化して積層シート(9)を得る。前記同様にニードリングによって不織布(3)の構成繊維の一部(30)が基布(7)に侵入してこれに絡んだ態様となるのであるが、本製造方法によれば、このニードリングの際に、ウェブ(10)からのニードルパンチ不織布(3)の製作をも同時に行っているので、前者の製造方法よりも生産効率を向上させることができる利点がある。
上記製造方法において、ニードリングは1cm当たり10〜200回行うのが好ましい。即ち、1cm当たりのニードルの刺し込み回数は10〜200回に設定するのが好ましい。10回未満では不織布(3)の構成繊維が基布(7)内へ侵入してこれに絡む程度が不足するので好ましくないし、一方200回を超えて行っても、これ以上絡み力の向上は望めないし、基布(7)等の組織破壊を引き起こすことが懸念されるので、好ましくない。中でも、前記ニードリングは1cm当たり30〜150回行うのがより好ましく、特に好ましい範囲は1cm当たり40〜120回である。
前記実施形態では、ニードリングを不織布(3)またはウェブ(10)に対して全面に行っているが、これを部分的に行うようにしても良く、この場合には第4図に示すように、得られた置き敷きマット(1)において不織布(3)層の下面が凹凸面に形成されるから、マット(1)は敷設下地面に対して十分な滑り防止性を備えたものとなる。なお、第4図において、(M)はニードリングを行った領域であり、(N)はニードリングを行わなかった領域である。また、第4図に示すような不織布(3)層の下面が凹凸面に形成された構造は、ニードリング量を部分的に少なくすることによっても形成可能である。即ち、第4図を参照すれば、(M)はニードリング量の多い領域、(N)はニードリング量の少ない領域である。なお、このようなニードリング量の多い少ないの設定は、例えばニードルの配置密度の調整によって行うことができる。
なお、不織布(3)層の下面に付着させる高分子の量を多くすることによっても、敷設下地面に対する滑り防止性を向上させることができる。
この発明において、前記高分子接着剤(4)の目付量(乾燥質量)は100〜550g/mとするのが好ましいが、中でもこの目付量(乾燥質量)は120〜500g/mとするのがより好ましい。上述したように本発明では高分子接着剤(4)の目付量(乾燥質量)が100〜550g/mであっても十分な接合強度が得られるので、このような範囲に設定することが可能となり、これにより十分な軽量化を図ることができる。100g/m未満では接合強度が十分に得られなくなるので好ましくない。中でも、前記高分子接着剤(4)の目付量(乾燥質量)は130〜450g/mとするのがより一層好ましく、特に好ましい範囲は150〜400g/mである。
また、前記高分子接着剤(4)としてはゴム又は樹脂のエマルジョンを用いるのが好ましい。エマルジョンを用いることで不織布(3)内に均一な分散状態で含浸させることができて接着強度をより向上できると共に必要な通気性も確保できる。また、均一分散状態で含浸できるので、より少ない目付量で十分な接合強度を確保することができ、ひいては一層の軽量化を図り得るものとなる。
前記エマルジョンとしては、特に限定されるものではないが、例えばNBRラテックスエマルジョン、SBRラテックスエマルジョン、PVCエマルジョン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂)エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョン等が挙げられる。
前記エマルジョンの粘度は30000mPa・s以下に設定されるのが好ましい。これより粘度が大きくなるとマット本体(2)の裏面にまで接着剤(4)を到達せしめるのが難しくなる。中でも、特に好ましいのは200〜5000mPa・sである。
なお、SBR等のゴムエマルジョンを用いる場合には、その目付量(乾燥質量)が100〜550g/mとなるように含浸せしめた後、所定時間加熱処理してゴムの架橋を行うのが好ましい。接着剤(ゴム)の目付量が少ないので、ゴムに対する加熱が十分に行き渡るものとなってゴムの架橋を十分に行うことができ、これによりマット本体(2)と不織布(3)の接合強度を大きくすることができるから、耐洗濯性をより一層向上させることができる。
前記高分子接着剤(4)に含有させる撥水剤としては、特に限定されるものではないが、例えばフッ素含有ポリマー等のフッ素系撥水剤、シリコーン系撥水剤、流動パラフィン等が挙げられる。これらの中でも、フッ素系撥水剤を用いるのが好ましく、この場合にはより優れた遮水性を確保することができる。
前記含浸操作に用いる高分子接着剤(4)中における撥水剤の含有率は0.5〜8質量%に設定するのが好ましい。0.5質量%未満では十分な遮水性能が得られなくなるので好ましくないし、一方8質量%を超えると、マット本体(2)と不織布(3)との剥離強度及びパイル抜糸強度が十分に得られなくなるので、好ましくない。中でも、高分子接着剤(4)中における撥水剤の含有率は1〜5質量%に設定するのがより好ましい。
前記マット本体(2)を構成する基布(7)としては、特に限定されるものではないが、例えば織基布、編基布、不織布等を例示できる。具体的には、例えばヘッシャン、キャップ、ニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。この基布(7)を構成する繊維の種類も特に限定されず、例えばPET等のポリエステル繊維、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維等が挙げられる。また、この基布(7)の目付量としては80〜400g/mの範囲が好ましく採用される。
また、前記マット本体(2)を構成するパイル(8)としては、特に限定されるものではなくどのような構成のものも採用でき、例えばカットパイル、ループパイル等が挙げられる。このパイル(8)を構成する糸の種類は特に限定されず、例えばBCF糸、スパン糸、モノフィラ糸等が挙げられ、またその繊維の種類も特に限定されず、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、綿、羊毛等が挙げられる。また、このパイル(8)の目付量としては100〜5000g/mの範囲が好ましく採用され、特に好ましい範囲は300〜2000g/mである。
また、前記不織布(3)としては、特に限定されるものではないが、例えばニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布等を例示できる。また、この不織布(3)を構成する繊維の種類も特に限定されず、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、レーヨン、綿、麻等が挙げられる。この不織布(3)層の目付量としては100〜600g/mの範囲が好ましく採用される。100g/m未満では吸音性能が低下するので好ましくないし、600g/mを超えても通気性が低下することに起因して吸音性能が低下するので好ましくない。中でも、不織布(3)層の目付量は150〜450g/mに設定するのが特に好ましい。
前記不織布(3)の構成繊維の繊度は3〜80デシテックスの範囲とするのが好ましい。前記下限値を下回ると不織布(3)中に必要以上に接着剤(4)が含浸されて通気性を確保できなくなることが懸念されるし、基布(7)内へ侵入した状態時において繊維の絡み力(引き剥がしに対する抵抗力)が低下するので、好ましくない。一方、前記上限値を上回ると、不織布(3)の構成繊維を基布(7)内へ侵入させることが困難となるので、好ましくない。中でも、前記不織布(3)の構成繊維の繊度は6〜70デシテックスの範囲とするのがより好ましい。また、前記不織布(3)の構成繊維としては、少なくとも2種類の繊度の繊維が混合されたものが用いられるのが好ましく、この場合にはコストの低減を図り得る利点がある。
この発明の置き敷きマット(1)は、その用途は特に限定されるものではなく、例えばフローリング床等の床面に置き敷きされるマット、床面に敷設されたカーペット等の上に置き敷きされる(上載せ)マット、或いは床面上に配置された台座シート(上面に多数の滑止め突起が設けられた構成等)の上に置き敷きされるマット等として用いられる。具体的用途としては、例えば自動車用フロアーマット等の乗物用フロアーマット、玄関マット、トイレマット、キッチンマット、バスマットなどが挙げられる。中でも、この発明の置き敷きマット(1)は、吸音性及び遮水性に優れているので、自動車用フロアーマットとして特に好適である。
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
【実施例1】
目付120g/mのPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維製スパンボンド不織布からなる基布(7)に、ナイロンBCF糸からなるパイル(8)が目付610g/mでタフトされてなるタフトカーペット原反(マット本体)(2)を、第2図に示すように目付200g/mのPET繊維製ニードルパンチ不織布(3)と重ね合わせた状態でニードリング装置(20)のニードル(20a)を上下に昇降させてニードリングを行ってマット本体(2)と不織布(3)とを積層一体化した。ニードリングは1cm当たり100回行った。前記ニードルパンチ不織布(3)の構成繊維の比率は、44.4デシテックスの糸/6.7デシテックスの糸=60/40(質量%)であった。
次に、不織布(3)の非積層面側からダイレクトコート法により粘度1000mPa・sの機械発泡したSBRラテックスエマルジョン(高分子接着剤)(4)を乾燥目付300g/mで含浸せしめることによって、該エマルジョンを前記マット本体(2)の裏面及び基布(7)内にまで到達せしめた。次いで、150℃で7分間加熱を行うことによって、エマルジョン中の水を乾燥させてラテックスを固着させると同時にラテックス(ゴム)の架橋を行わしめて、第1図に示す構成の置き敷きマット(1)を得た。
前記SBRラテックスエマルジョン中にはフッ素系撥水剤が混合されており、その含有率はエマルジョン液全体に対して3.0質量%であった。
【実施例2〜4】
前記接着剤の目付量(乾燥質量)が表に示す数値になるように接着剤を含浸せしめた以外は、実施例1と同様にして置き敷きマットを得た。
【実施例5〜8】
前記不織布(3)として目付量150g/mに設定されたニードルパンチ不織布を用いるものとし、かつ前記接着剤中における撥水剤の含有率を表に示す含有率に設定した以外は、実施例1と同様にして置き敷きマットを得た。
実施例9、10
前記不織布(3)として目付量400g/mに設定されたニードルパンチ不織布を用いるものとし、かつ前記接着剤の目付量(乾燥質量)が表に示す数値になるように接着剤を含浸せしめた以外は、実施例1と同様にして置き敷きマットを得た。
【実施例11〜13】
ニードリング回数を表に示す値に設定した以外は、実施例1と同様にして置き敷きマットを得た。
【実施例14】
前記撥水剤として、フッ素系撥水剤に代えてシリコーン系撥水剤を用いた以外は、実施例1と同様にして置き敷きマットを得た。
【実施例15】
前記接着剤として、SBR系ラテックスエマルジョンに代えて、NBR系ラテックスエマルジョンを用いた以外は、実施例1と同様にして置き敷きマットを得た。
【実施例16】
マット本体のパイルの目付量を1100g/mに設定した以外は、実施例1と同様にして置き敷きマットを得た。
【実施例17〜22】
表に示す製造条件でそれぞれ製造するものとした以外は、実施例1と同様にして置き敷きマットを得た。
比較例1
ニードリングを全く行わないものとした以外は、実施例1と同様にして置き敷きマットを得た。
比較例2
前記接着剤として、前記撥水剤を含有したSBR系ラテックスエマルジョンの代わりに、撥水剤を全く含有しないSBR系ラテックスエマルジョンを用いた以外は、実施例1と同様にして置き敷きマットを得た。
比較例3
目付120g/mのPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維製スパンボンド不織布からなる基布(7)に、ナイロンBCF糸からなるパイル(8)が目付610g/mでタフトされてなるタフトカーペット原反(マット本体)(2)の裏面に、SBR系ラテックスエマルジョン(撥水剤非含有)を塗工(乾燥目付750g/m)した後、更に目付200g/mのPET繊維製ニードルパンチ不織布を重ね合わせてロールで加圧し、加熱乾燥させることによって、マット本体の裏面に接着層を介して不織布層を積層一体化した置き敷きマットを得た。
上記のようにして得られた各マットに対して下記評価法に基づいて各種評価を行った。これらの結果を表3、4に示す。




(パイル抜糸強度測定法)
マットから90mm×90mmの試料を切り出し、この試料を水平状態に確実に固定した状態で1束のパイルをチャックして引張試験機で引張速度100mm/分で引張り、パイルが抜脱するときの最大荷重(N)を測定する。試験の際の環境条件は、室温23±2℃、湿度65±20%とした。試料5個の平均値をパイル抜糸強度(N)とした。
(剥離強度測定法)
マットから幅25mm×長さ250mmの試料を縦方向、横方向にそれぞれ5枚づつ採取した。各試料のマット本体(2)の長さ方向の一端を予め50mm程度不織布(3)から剥がしておき、上側のチャックでマット本体(2)の剥がした一端部をチャックする一方、下側のチャックで不織布(3)の剥がした一端部をチャックして引張試験機で引張速度100mm/分で引張り、引張を開始してから100mm剥離した時の引張強度(N)を測定した。試験の際の環境条件は、室温23±2℃、湿度65±20%とした。縦方向、横方向ともに試料5個の平均値を剥離強度(N)とした。
(吸音率評価法)
JIS A1405の垂直入射法に準拠して各周波数での吸音率の測定を行った。
(通気量測定法)
JIS L1096−1999 8.27.1 A法(フラジール形法)に準拠してマットの通気量(L/分)を測定した。
(遮水性評価法)
マットから210mm×290mmの試料を切り出し、この試料をバケツの上部開口面に載置して試料の中央部を窪ませた状態とし、この状態で試料の表面(パイル面)に100ccの水をこぼさないように入れ、10分間経過後に裏面(不織布)側に水の透過があったかどうかを目視及び手触り感で評価した。下記判定基準に基づいて遮水性を評価した。
判定基準
「○」…目視及び手触り感のいずれにおいても水の存在が全く確認されなかった
「△」…目視では水は観察されなかったが、手触り感で湿った感覚が感じられた
「×」…手触り感で明らかに水の存在(透過)が確認された。
表3、4から明らかなように、この発明の実施例1〜22の置き敷きマットは、パイル抜糸強度及びマット本体と不織布との剥離強度が十分に得られると共に、優れた吸音性を有し、かつ十分な遮水性を備えることがわかった。
これに対して、ニードリングを行わなかった比較例1では、マット本体と不織布との剥離強度が十分ではなかった。また、接着剤に撥水剤を含有せしめなかった比較例2では、遮水性が得られなかった。また、比較例3では、高音域(例えば4kHz)での吸音が不十分であり吸音性能に劣っていたし、接合力を十分に確保するためには接着剤の目付量を多くしなければならず軽量化できないという問題があった。
ここで用いられた用語及び説明は、この発明に係る実施形態を説明するために用いられたものであって、この発明はこれに限定されるものではない。この発明は請求の範囲内であれば、その精神を逸脱するものでない限りいかなる設計的変更をも許容するものである。
【産業上の利用可能性】
この発明の置き敷きマット及びこの発明の製造方法で製造された置き敷きマットは、吸音遮水性に優れているので、例えば自動車用フロアーマット等の乗物用フロアーマット、玄関マット、トイレマット、キッチンマット、バスマット等として用いられる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布にパイルが植設されてなるマット本体の裏面に不織布が接触状態で積層配置され、該不織布の構成繊維の一部が前記基布に侵入してこれに絡んだものとなされると共に、前記不織布に撥水剤を含有した高分子接着剤が含浸されて吸音遮水層が形成され、該高分子接着剤が前記マット本体の裏面にも固着されてパイルの抜け止めがなされると共にマット本体と不織布とが接合されていることを特徴とする吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
【請求項2】
前記含浸された高分子接着剤は気泡を含有している請求の範囲第1項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
【請求項3】
前記高分子接着剤が前記基布内にまで含浸され、前記基布に侵入してこれに絡んだ不織布の構成繊維が、前記高分子接着剤によって前記基布に接着されている請求の範囲第1項または第2項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
【請求項4】
前記高分子接着剤としてゴム又は樹脂のエマルジョンが用いられてなる請求の範囲第1項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
【請求項5】
前記高分子接着剤の目付量(乾燥質量)が100〜550g/mである請求の範囲第1項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
【請求項6】
前記不織布の目付量が100〜600g/mである請求の範囲第1項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
【請求項7】
前記高分子接着剤の目付量(乾燥質量)が130〜450g/mであり、前記不織布の目付量が150〜450g/mである請求の範囲第1項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
【請求項8】
前記基布の目付量が80〜400g/mである請求の範囲第1項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
【請求項9】
前記パイルの目付量が300〜2000g/mである請求の範囲第1項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
【請求項10】
前記不織布の構成繊維の繊度が3〜80デシテックスの範囲である請求の範囲第1項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
【請求項11】
前記不織布の構成繊維として少なくとも2種類の繊度の繊維が混合されたものが用いられている請求の範囲第10項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
【請求項12】
前記撥水剤がフッ素系撥水剤である請求の範囲第1項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマット。
【請求項13】
基布にパイルが植設されてなるマット本体の裏面に不織布を重ね合わせた状態でニードリングを行ってマット本体と不織布とを積層一体化する積層工程と、
前記不織布の非積層面側から撥水剤を含有した高分子接着剤を含浸せしめて該高分子接着剤を少なくとも前記マット本体の裏面にまで到達せしめて吸音遮水層を形成する含浸工程とを包含することを特徴とする吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
【請求項14】
基布にパイルが植設されてなるマット本体の裏面にウェブを重ね合わせた状態でニードリングを行ってマット本体の裏面にニードルパンチ不織布を積層一体化する積層工程と、
前記ニードルパンチ不織布の非積層面側から撥水剤を含有した高分子接着剤を含浸せしめて該高分子接着剤を少なくとも前記マット本体の裏面にまで到達せしめて吸音遮水層を形成する含浸工程とを包含することを特徴とする吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
【請求項15】
前記高分子接着剤をさらに前記基布内にまで含浸せしめる請求の範囲第13項または第14項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
【請求項16】
前記高分子接着剤中の撥水剤の含有率が0.5〜8質量%である請求の範囲第13項または第14項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
【請求項17】
前記高分子接着剤中の撥水剤の含有率が1〜5質量%である請求の範囲第13項または第14項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
【請求項18】
前記ニードリングを1cm当たり10〜200回行う請求の範囲第13項または第14項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
【請求項19】
前記ニードリングを1cm当たり30〜150回行う請求の範囲第13項または第14項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
【請求項20】
前記ニードリングを行う際に、ニードルの刺し込みを不織布側から行う請求の範囲第13項または第14項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。
【請求項21】
前記高分子接着剤としてSBR等のゴムのエマルジョンを用い、該高分子接着剤の目付量(乾燥質量)が100〜550g/mとなるように含浸せしめるものとし、前記含浸工程の後に加熱処理してゴムの架橋を行う請求の範囲第13項または第14項記載の吸音遮水性に優れた置き敷きマットの製造方法。

【国際公開番号】WO2004/058014
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【発行日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562888(P2004−562888)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016440
【国際出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【出願人】(000120696)永大化工株式会社 (22)
【Fターム(参考)】