説明

吹きこぼれ防止具

【課題】一定の規格内の鍋において、鍋周壁内径に多少の誤差があっても、鍋周壁内面に密着して装着することができ、且つコンパクトにして収納に便利な吹きこぼれ防止具を提供する。
【解決手段】適宜な弾力性及び変形性を有するシリコンゴムで一体に成形されるものであって、傾斜面となる環状板部2a,2b,2c,3を内外周方向に多段に設けると共に、隣接環状板部とを折曲自在な薄肉連結部4b,4c,4dで表裏交互に連続させてなるものであって、最内周の環状板部(嵌合装着部3)が、装着対象の鍋の周壁部内径に対応して形成されると共に、下端が開放し上端外周側を薄肉連結部4dとしてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煮炊き調理時に鍋からの吹きこぼれを防止する器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
麺類の茹で調理に際しては、面の表面に付着している打ち粉や麺から溶出するデンプン等によって茹で汁が泡状となって吹きこぼれるので、その対策として従前より種々提案されているが、その一手段として、鍋の周壁面を上方に延長し、冷却(空気との接触)によって泡を消滅させ、吹きこぼれ防止を実現する手法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1(特開平9−37951号公報)には、胴部がその側面を外周へ膨出させた湾曲状で、下部開口部を筒状に形成した器具が示されており、前記器具は、下部開口部を鍋の周壁部上縁内に嵌合装着して使用し、吹きこぼれの原因となる泡を前記器具内で対流させて、吹きこぼれないようにしているものである。
【0004】
また特許文献2(特開2010−42100号公報)には、底部面中央に傾斜縁部を備えた孔部を設け、底部面を孔部に向かった勾配面とした容器状の器具が開示されており、前記器具を鍋の周壁部上縁上に載置して吹きこぼれ防止を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−37951号公報。
【特許文献2】特開2010−42100号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の公知器具のように鍋の開口部に載置する器具は、相応の高さを備えるために全体が嵩張った器具となってしまう。鍋と比べて使用頻度も高くない器具が嵩張っていることは、収納において問題となる。
【0007】
また特許文献1の器具は、下部開口部を鍋の周壁部上縁内に嵌合装着するものであるが、鍋はある程度の規格で製造されて市場に提供されているが、必ずしも正確に形成されているものではない。誤差が許容される同一規格内での汎用性を求めると、下部開口部はやや小さく形成しておく必要があり、結果的には側面膨出部分の下方を、鍋周壁上縁に載置する状態となり、装着安定性に欠けるきらいがある。
【0008】
特許文献2記載の器具も同様で、単に器具の底部面を鍋周壁上縁に載置して使用することになるので、装着安定性に欠ける。而も孔部径と鍋の周壁内径との差が大きいと、載置した器具は、泡で持ち上げられてしまう。
【0009】
そこで本発明は、収納性に優れ、且つ装着安定性を備えた新規な吹きこぼれ防止具を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る吹きこぼれ防止具は、適宜な弾力性及び変形性を有するシリコンゴムで一体に成形されるものであって、傾斜面となる環状板部を内外周方向に多段に設けると共に、隣接環状板部とを折曲自在な薄肉連結部で表裏交互に連続させてなるものであって、最内周の環状板部が、装着対象の鍋の周壁部内径に対応して形成されると共に、下端が開放し上端外周側を薄肉連結部としてなることを特徴とするものである。
【0011】
而して多段に設けられている環状板部は、相応の柔軟性を有すると共に、隣接環状板部との間は、折曲自在な薄肉連結部で表裏交互に連続させてなるから、薄肉連結部で順次折り返すことで蛇腹状に折り畳むことができ、扁平な状態で収納することができる。また逆に折り返しを解消すると、全体は下方が小径となる筒状に形成されるので、最下段(最内周でもある)の環状板部(嵌合装着部)を、鍋の上縁開口部に差し入れて装着すると、鍋で発生した泡は、器具内上部で外周方向に広がると共に、空気と接触して冷され、泡を維持できなくなり消滅するので、鍋からの吹きこぼれが防止される。
【0012】
更に最下層の環状板部(嵌合装着部)は、傾斜面に形成されるので、鍋の内径に多少の相違があったとしても、強く押し入れることで、嵌合装着部が鍋内壁面に密着することになり、安定して装着される。
【0013】
また本発明(請求項2)に係る吹きこぼれ防止具は、前記の器具において、特に最内周の環状板部の下端縁を内周側へのR状に形成してなるもので、器具の装着に際して、器具下端縁が鍋の上縁に衝突して、前記下端縁が変形する虞がない。
【0014】
また本発明(請求項3)に係る吹きこぼれ防止具は、前記の器具において、最外周の環状板部の外周に、薄肉連結部を介して連続した環状基部を設けると共に、前記環状基部の外周適宜個所に、把手部を突設してなるもので、把手部を持っての操作となり、鍋への着脱操作が容易になるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成は上記のとおりで、全体がシリコンゴムで形成されており、且つ傾斜状態の環状板部を多段にして底明きの容器状態として、最下段(最内周)の環状板部を鍋の上縁開口部に押し込むことで本発明器具が装着されるもので、柔軟性及び伸縮性を備えているシリコンゴム製であるので、鍋の周壁内径に多少の相違があったとしても、環状板部がぴったりと密着して装着され、使用時に器具がずれたり、浮き上がることが無い。更に収納に際しては、多段の環状板部を蛇腹状に折り畳み、全体を扁平にしてコンパクトな状態での収納が可能となったものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の全体斜視図。
【図2】同収納時状態を示し(イ)は平面図(ロ)は断面図である。
【図3】同使用状態時を示し(イ)は平面図(ロ)は断面図である。
【図4】同使用状態の一部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態の吹きこぼれ防止具(以下「本器具」という)は、適宜な弾力性及び変形性を有するシリコンゴムで一体に成形されるものであって、全体が筒状で且つ下方が径小となる逆円錐台形状で、上方に環状基部1が設けられ、前記環状基部1から順次の下方が径小となる傾斜を備えた環状板部2a,2b,2cを多段に連続させ、最下段に嵌合装着部(環状板部)3を設けたものである。
【0018】
前記の環状基部1、環状板部2a,2b,2c及び嵌合装着部3は、折り曲げ自在の薄肉連結部4a,4b,4c,4dで連結されているもので、前記薄肉連結部4a,4cは内側(内周側)に、同4b,4dは外側(外周側)となるように表裏交互に連続させてなり、特に嵌合装着部(最内周であり而も最下段である環状板部)3の上部の連結個所の薄肉連結部4dが、必ず外周側となるようにする。
【0019】
また前記環状基部1は、円形枠形状で、外周適宜個所に把手部11を突設し、把手部11の適宜個所に吊下げ用の孔部12を設けたものである。
【0020】
更に嵌合装着部3は、装着対象の鍋Aの周壁部内径の規格寸法に対応して形成されると共に、特に下縁を内周側へのR状のR縁31としたのである。
【0021】
而して本器具は、環状基部1の把手部11を手に持って、嵌合装着部3を鍋Aの鍋の上縁開口部に押し込むように差し入れて装着するもので、特に前記の差し入れに際しては、嵌合装着部3の下方のR縁31が鍋Aの上縁にぶつかっても、そのままずれて嵌合装着部3が鍋内に導かれ、更に強く押圧すると嵌合装着部3の外周面が鍋Aの内壁面に密着して鍋Aに本器具がしっかりと装着されることになる。
【0022】
また鍋Aは規格が存在するが、必ずしも市場に存在する鍋(勿論各家庭で現に使用している鍋も含む)は、正確な規格寸法で製造されているものではなく、多少の誤差を有している。しかし本器具の嵌合装着部3は、下方が径小となる傾斜を備えているものであるから、本器具を強く押し入れることで、嵌合装着部3が必ず鍋Aの内壁面に密着することになるので、前記の誤差は何らの支障にもならない。
【0023】
前記のように本器具を鍋Aに装着して、麺等の茹で調理を行うと、調理時に生じた吹きこぼれの原因となる泡Bは、鍋Aに装着した本器具内で上昇する。このとき環状板部2a,2b,2cが上にいくほど径大となっているので、外周方向に広がると共に、空気との接触面積も大きくなり、泡Bは冷され、泡状態を維持できなくなり消滅することになる。従って麺の茹で調理において、吹きこぼれが防止されることになる(図3参照)。
【0024】
また本器具を使用しないときには、環状基部1、環状板部2a,2b,2c及び嵌合装着部(最下段環状板部)3は、薄肉連結部4a,4b,4c,4dで連結されていると共に、環状板部2a,2b,2c及び嵌合装着部(最下段環状板部)3は、順次径小となる傾斜面となっているものであるから、薄肉連結部4a,4b,4c,4dで順次折り返すと、環状板部2a,2b,2c及び嵌合装着部(最下段環状板部)3は蛇腹状に折り畳まれる(図2参照)。
【0025】
従って使用しない時には、前記のとおり折り畳むことで、全体が扁平にコンパクト化され、収納に場所をとらず、取り扱い易いものとなり、また孔部12を使用しての吊下げ収納も可能となるものである。
【0026】
尚前記実施形態では、環状板部(嵌合装着部も含む)を4段に形成したが、2段でも6段でも良く、また嵌合装着部(最下段環状板部)3は、他の環状板部2よりも高く(高さ方向を長く)形成することで、鍋Aの上方開口部の内径の相違への対応性を高めることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 環状基部
11 把手部
12 吊下げ用孔
2a,2b,2c 環状板部
3 嵌合装着部(最下段環状板部)
31 R縁
4a,4b,4c,4d 薄肉連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜な弾力性及び変形性を有するシリコンゴムで一体に成形されるものであって、傾斜面となる環状板部を内外周方向に多段に設けると共に、隣接環状板部とを折曲自在な薄肉連結部で表裏交互に連続させてなるものであって、最内周の環状板部が、装着対象の鍋の周壁部内径に対応して形成されると共に、下端が開放し上端外周側を薄肉連結部としてなることを特徴とする吹きこぼれ防止具。
【請求項2】
最内周の環状板部の下端縁を内周側へのR状に形成してなる請求項1記載の吹きこぼれ防止具。
【請求項3】
最外周の環状板部の外周に、薄肉連結部を介して連続した環状基部を設けると共に、前記環状基部の外周適宜個所に、把手部を突設してなる請求項1記載の吹きこぼれ防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−229719(P2011−229719A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103364(P2010−103364)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000111867)パール金属株式会社 (15)
【Fターム(参考)】