説明

吹付けコンクリート製造装置、それを用いた吹付けコンクリートの吹付け方法及び吹付けコンクリートの製造方法

【課題】初期の付着力が良好なためにリバウンド率が小さく、粉塵量が少なく、作業性が良く、初期強度が低下しにくい吹付けが可能となり、不安定な地山への吹付け材料として最適であり、吹付け厚さを薄くできるので経済的となる、吹付けコンクリート製造装置、それを用いた吹付けコンクリートの製造方法を提供する。
【解決手段】コンクリート圧送管、液体急結剤と粉体混和材との混合物スラリーを調製する混合機、液体急結剤を搬送するためのエア量を調整する液体急結剤用圧縮エア管、混合物スラリー圧送管、吹付け用コンクリートと圧送した混合物スラリーとを混合するシャワリング管、及びノズルから構成される吹付けコンクリート製造装置。液体急結剤用圧縮エア管により、液体急結剤の搬送用エア量と、粉体混和材の搬送用エア量の割合が20:80〜70:30である吹付けコンクリートの製造装置を用いる吹付けコンクリートの吹付け方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、道路、鉄道、及び導水路等のトンネルにおいて、露出した地山面へ吹き付ける時に使用する吹付けコンクリートの製造装置、それを用いた吹付けコンクリートの吹付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削等、露出した地山の崩落を防止するために急結剤をコンクリートに配合した急結性吹付けコンクリートの吹付け工法が行われている(特許文献1参照)。
【0003】
この工法は、通常、掘削工事現場に設置した計量混合プラントで、セメント、骨材、及び水を混合して吹付けコンクリートを調製し、アジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、その途中に設けた合流管で、他方から圧送した急結剤と混合し、急結性吹付けコンクリートとして地山面に所定の厚みになるまで吹き付ける工法である。
【0004】
この際に使用する急結剤としては、カルシウムアルミネート及び/又はアルカリアルミン酸塩、並びに、それらとアルカリ炭酸塩等の混合物が知られている(特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5参照)。
【0005】
この急結剤を用いた急結性吹付けコンクリートは、凝結が速く、コンクリートが速やかに硬化するので、崩落の危険がある地山面を保護できるが、材齢28日後の長期強度は、急結剤を添加しない吹付けコンクリートと比較すると、30%前後低下するという課題があった。
このように、急結剤の添加により強度低下が起こるが、比較的安定した地山においては地山を保護するのには充分な強度であり、かなり不安定な地山においては、吹付け厚さを厚くすることにより対処されてきた。
【0006】
最近では、長期強度発現性を高め、さらには永久構造物用途として、硫酸アルミニウムを含有するアルカリ骨材反応抑制型急結剤が知られている。
硫酸アルミニウムを含有するアルカリ骨材反応抑制型急結剤としては、結晶水を有する含水硫酸アルミニウムとアルミン酸カルシウムの混合物が提案されている(特許文献6参照)。
【0007】
しかしながら、この混合物は、アルカリアルミン酸塩を使用した急結剤よりも急結性が弱く、湧水箇所の吹付けや厚吹きには適さない場合があった。
このため、アルミニウム成分とイオウ成分とを含有してなる酸性の液体急結剤と粉体混和材との混合物スラリーを調製してコンクリートに添加する吹付けコンクリートの製造装置が提案された(特許文献7)。
【0008】
ところが、この装置は、液体急結剤を圧送するために最適エア量については言及されておらず、液体急結剤の圧送に適正なエア量を使用することで低粉塵性能を得ることができ、さらに、リバウンドが低減することについては述べられていない。
【特許文献1】特公昭60−004149号公報
【特許文献2】特開昭64−051351号公報
【特許文献3】特公昭56−027457号公報
【特許文献4】特開昭61−026538号公報
【特許文献5】特開昭63−210050号公報
【特許文献6】特開平08−048553号公報
【特許文献7】特開2007−23707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、上記課題を種々検討した結果、ある特定の吹付けコンクリート製造装置を使用することにより、上記課題を解決できる知見を得て本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、コンクリートを搬送するコンクリート圧送管(符号1)、液体急結剤を搬送する液体急結剤圧送管(符号9)、液体急結剤を搬送するためのエア量を調整する液体急結剤用圧縮エア管(符号11)、粉体混和材を搬送する粉体混和材圧送管(符号10)、搬送されてきた液体急結剤と粉体混和材との混合物スラリーを調製する混合機(符号2)、混合物スラリーを搬送する混合物スラリー圧送管(符号3)、搬送した、コンクリートと混合物スラリーとを混合するシャワリング管(符号4)、及びノズル(符号5)から構成される吹付けコンクリート製造装置であり、液体急結剤が、アルミニウム成分やイオウ成分を主成分とする酸性の液体急結剤である請求項1記載の吹付けコンクリート製造装置であり、液体急結剤圧送管(符号9)に、液体急結剤用圧縮エア管(符号11)を導入し、液体急結剤を搬送するために使用するエア量と、粉体混和材圧送管(符号10)で粉体混和材を搬送するために使用するエア量の割合が20:80〜70:30である請求項1記載の吹付けコンクリートの製造装置を用いる吹付けコンクリートの吹付け方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吹付けコンクリート製造装置を使用することにより、初期の付着力が良好で、リバウンド率が小さく、粉塵量が少なく、作業性が良く、初期強度が低下しにくい吹付けが可能となる。
従って、本発明の吹付けコンクリート製造装置で製造した吹付けコンクリートは、不安定な地山への吹付け材料として最適であり、吹付け厚さを薄くできるので経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
【0013】
本発明のコンクリートとは、モルタルをも含むものであり、液体急結剤添加前のコンクリートを単にコンクリート、液体急結剤添加後のコンクリートを吹付けコンクリートとする。
【0014】
本発明は、コンクリートに、液体急結剤と粉体混和材を混合した混合物スラリーを添加して吹付けコンクリートとし、これを吹き付けるために使用する吹付けコンクリートの製造装置、それを用いた吹付けコンクリートの吹付け方法に関するものである。
【0015】
本発明で使用する液体急結剤は、特に限定されないが、アルミニウム成分やイオウ成分を主成分とする酸性の液体急結剤が好ましい。このような液体急結剤が好ましい理由は、酸性であるため作業員の安全性が高く、材料補給のハンドリングやポンプ圧送性の面で優れて、シャワリング管内での固結を防止するためである。
【0016】
アルミニウム成分の供給原料は特に限定されるものではないが、非晶質もしくは結晶質の水酸化アルミニウム、アルミニウムの硫酸塩、及びアルミン酸塩等の無機アルミニウム化合物、有機アルミニウム化合物、並びに、アルミニウム錯体等の化合物が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。本発明では、イオウ成分の供給原料ともなるアルミニウム硫酸塩の使用が好ましい。
【0017】
イオウ成分の供給原料は特に限定されるものではないが、硫黄や硫黄華のような元素状態の硫黄の他に、硫化物、硫酸又は硫酸塩、亜硫酸又は亜硫酸塩、チオ硫酸又はチオ硫酸塩、並びに、有機硫黄化合物等が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。これらのうち、水への溶解性が高く、製造コストが安く、かつ、急結性状が優れる面から硫酸又は硫酸塩が好ましく、硫酸塩としては明礬類や硫酸アルミニウムなどが好ましい。
【0018】
本発明の液体急結剤は、アルミニウム成分やイオウ成分の他に、アルカリ金属成分やフッ素成分、およびアルカノールアミン等の一種又は二種以上を含有させることが可能である。また、保存安定性を向上させる目的で、有機酸やリン酸類を含有させることが可能である。
【0019】
液体急結剤は、各成分を完全に溶液化したものから懸濁化したものまで、何れも使用可能である。
【0020】
液体急結剤のpHは酸性であれば良く、pH2〜4が好ましい。pH2未満では優れた強度発現性が得られない場合があり、pH4を超えると液体急結剤の安定性が悪くなる場合がある。
【0021】
液体急結剤の固形分濃度は、30〜70%が好ましく、35〜60%がより好ましい。30%未満では優れた急結性が得られない場合があり、70%を超えると液の安定性が悪くなる場合がある。
【0022】
液体急結剤中のAl/SOモル比は特に限定されるものではないが、0.2〜0.6が好ましく、0.3〜0.5がより好ましい。モル比がこの範囲外では、優れた急結性が得られない場合がある。
【0023】
液体急結剤の使用量は、コンクリート中のセメント100部に対して、3〜15部が好ましく、7〜12部がより好ましい。3部未満では優れた急結性が得られない場合があり、また、粉体混和材と組み合わせてスラリー化した際に流動性が得られずに固化し、シャワリング管を閉塞する場合がある。15部を超えると急結性が頭打ちになり、長期強度発現性が低下し、経済的に好ましくない。
【0024】
本発明で使用する粉体混和材は、例えば、(1)Al原料(Aと略記)とCaO原料(Cと略記)を焼成や溶融して得られるCA、C12、CA、及びCAなどに代表されるカルシウムアルミネート、(2)カルシウムアルミネートにシリカを含有したカルシウムアルミノシリケート、(3)これらのカルシウムアルミネートやカルシウムシリケートに、アルカリ金属やMgOを含有させたもの、(4)アルカリ金属の、硫酸塩、炭酸塩、アルミン酸塩、及び珪酸塩等のアルカリ金属含有物質、(5)二水、無水、及び半水石膏に代表される硫酸カルシウム、(6)水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムなどの水酸化物、(7)硫酸アルミニウム粉末、(8)明礬類、並びに、(9)有機酸、(10)炭酸マグネシウムや炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩等が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上を使用することが可能である。これらのうち、カルシウムアルミネート、硫酸カルシウム、アルカリ土類炭酸塩、及びアルカリ金属含有物質等を使用することが好ましい。
【0025】
カルシウムアルミネートやカルシウムアルミノシリケートは、結晶質もしくは非晶質のものが使用可能である。
【0026】
粉体混和材の粉末度は特に規定されるものではないが、ブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)で2,000cm/g以上が好ましい。
【0027】
本発明で使用するセメントは、通常市販されている普通、早強、中庸熱、及び超早強等の各種ポルトランドセメント、並びに、これらのポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグなどを混合した各種混合セメントなどが挙げられ、これらを微粉末化して使用することも可能であり、廃棄物利用型セメントも使用可能である。
廃棄物利用型セメントは、都市型廃棄物や下水汚泥を主原料として製造されるセメントを総称するものであり特に限定されるものではない。
【0028】
これらセメントのうち、吹付けに要求されるリバウンド率や粉塵量の低減、圧送性、強度発現性、及び施工条件等により適したセメントを選択できるが、一般的に使用できる普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0029】
本発明において、セメントの使用量は350〜550kg/mが好ましい。使用量が350kg/m未満では、優れた強度発現性が得られない場合があり、使用量が550kg/mを超えると施工コストが上昇し、経済的に好ましくない。
【0030】
本発明で使用する混合物スラリーは、液体急結剤と粉体混和材の混合物のスラリーである。酸性の液体急結剤を分散剤として用いて、粉体混和材をスラリー化することで、吹付け時の吹付けコンクリートの付着性が良好で、粉塵量が少なく作業環境が良好で、さらに強度発現性が良好なものとすることが可能となる。
【0031】
液体急結剤と粉体混和材の混合割合は、液体急結剤/粉体混和材の質量比で0.6〜12が好ましく、0.8〜6がより好ましい。混合割合が0.6未満では混合物スラリー出口6が閉塞する場合があり、混合割合が12を超えると吹付けコンクリートの付着性が低下する場合がある。
【0032】
本発明では、酸性の液体急結剤圧送管(符号9)に液体急結剤用圧縮エア管(符号11)を追加して導入することを最大の特徴とする。液体急結剤用圧縮エア管(符号11)を用いて、液体急結剤をエア搬送して混合機(符号2)に導入する。この時、液体急結剤を搬送するエア量と、粉体混和材圧送管(符号10)で使用する圧縮エア量の合計は2〜12m/hrであり、前者と後者のエア量の割合が20:80〜70:30であることが好ましく、30:70〜50:50がより好ましい。割合がこの範囲外では、24時間強度の発現性が低くなる場合があり、また、リバウンド量が多くなる場合がある。
【0033】
混合物スラリーの使用量は、コンクリート中のセメント100部に対して、5〜20部が好ましく、7〜15部がより好ましい。使用量が5部未満では初期凝結が充分に得られない場合があり、使用量が20部を超えると、長期強度発現性が低下したり、配管等が閉塞したりし、経済的に不利になる場合がある。
【0034】
本発明では、減水剤や増粘剤等を使用することも可能である。
【0035】
減水剤とは、コンクリートの流動性を改善するために使用するもので、液状や粉状のものいずれも使用可能である。
【0036】
減水剤としては、ポリオール誘導体、リグニンスルホン酸塩やその誘導体、及び高性能減水剤等が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上を使用することが可能である。これらの中では、高強度発現性や分散安定性の面で、高性能減水剤が好ましい。高性能減水剤により、液体急結剤と粉体混和材を混合した混合物スラリーの使用量を少なくでき、また、粉塵の発生量やリバウンド率を極めて少なくすることが可能である。
【0037】
増粘剤とは、コンクリートに粘性を与え、吹付け直後のダレを防止し、リバウンド率を小さくし、粉塵の発生を抑制するものをいう。
【0038】
増粘剤としては、セメントコンクリートに粘性を与え、吹付け直後のダレを防止し、リバウンドを小さくし、粉塵発生を抑制するものを言う。増粘剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシエチルエチルセルロースなどのセルロース類、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、β−1,3−グルカン、プルラン、グアガム、カゼイン、及びウェランガムなどの多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、及びポリプチレンオキサイドなどが挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用してもよい。これらの中では、初期凝結を阻害しにくい点で、セルロース類やポリエチレンオキサイドが好ましい。
【0039】
本発明では、超微粉や繊維を使用することも可能である。超微粉とは、平均粒径10μm以下のものをいい、セメント量、粉塵量、及びリバウンド率を低減し、セメントコンクリートの圧送性を向上する効果がある。
【0040】
超微粉としては、微粉スラグ、微粉フライアッシュ、ベントナイト、メタカオリオン、及びシリカフュームなどが挙げられ、これらの中では、強度発現性の点でシリカフュームが好ましい。
【0041】
超微粉の使用量は、セメント100部に対して、1〜50部が好ましく、2〜30部がより好ましい。使用量が1部未満では効果が得られなくなるおそれがあり、使用量が50部を超えると凝結や硬化が遅延するおそれがある。
【0042】
繊維物質とは、セメントコンクリートの耐衝撃性や弾性を向上させるものであり、無機質や有機質いずれも使用可能である。
【0043】
無機質の繊維物質としては、ガラス繊維、炭素繊維、ロックウール、石綿、セラミック繊維、及び金属繊維等が挙げられ、有機質の繊維物質としては、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリル繊維、セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、パルプ、麻、木毛、及び木片等が挙げられる。これらの中では経済性の点で、金属繊維やビニロン繊維が好ましい。
【0044】
繊維物質の長さは、圧送性や混合性等の点で、50mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましい。長さが50mmを超えると圧送中にセメントコンクリートが圧送管等を閉塞させるおそれがある。
【0045】
本発明で使用する水の使用量は、強度発現性の面で、水/セメント比で35%以上が好ましく、40〜65%がより好ましい。水/セメント比が35%未満だとコンクリートが充分に混合できない場合があり、水/セメント比が65%を超えると強度発現性を阻害する場合がある。
【0046】
本発明で使用する骨材は、吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましく、細骨材率や骨材の最大寸法は吹き付けできれば特に制限されるものではない。
細骨材としては、川砂、山砂、石灰砂、及び珪砂等が使用可能であり、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利等が使用可能である。
【0047】
本発明において、コンクリートの細骨材率は0.5以上が好ましい。細骨材率が0.5未満では、コンクリートの圧送性が悪くなり、吹付け時のリバウンド率が大きくなる場合がある。
【0048】
本発明で使用するコンクリートのスランプ値やフロー値は特に限定されるものではなく、施工可能なコンクリートが調製されればいかなる数値のものも使用可能である。
【0049】
本発明の吹付けコンクリート製造装置を図面に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
本発明の吹付けコンクリート製造装置は、コンクリートをシャワリング管まで圧送するコンクリート圧送管(符号1)、アルミニウム成分とイオウ成分とを含有してなる酸性の液体急結剤と粉体混和材との混合物スラリーを調製する混合機(符号2)、混合物スラリーを搬送する混合物スラリー圧送管(符号3)、別途、コンクリート圧送管(符号1)にて圧送したコンクリートと、混合物スラリーとを混合して、吹付けコンクリートを製造するシャワリング管(符号4)、及び吹付けコンクリートを吹付けるためのノズル(符号5)から構成される。
【0051】
コンクリート圧送管としては、耐圧性の金属メッシュ入りのホース(耐圧ホース)や金属製の配管が使用可能である。通常は、耐圧ホースが使用され、その前後は金属管を使用することが好ましい。
【0052】
耐圧ホースの長さは特に限定されるものではなく、施工状況により使用される長さは変わってくるが、通常、5〜30mのものが使用される。
【0053】
耐圧ホースの直径は、モルタルの場合は1〜3.5インチ、コンクリートの場合は2.5〜3.5インチのものが通常使用される。直径がこの範囲未満では圧送圧が高くなり、圧送が困難となる場合があり、直径がこの範囲を超えると耐圧ホースの取り扱いが不便になる場合がある。
【0054】
本発明で使用する液体急結剤と粉体混和材との混合物スラリーを調製する混合機(符号2)は、液体急結剤と粉体混和材を混合してスラリー化できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、空気で圧送されてきた粉体混和材と、別途圧送されてきた液体急結剤が合流して均一に混ざる構造をしているものであれば使用可能である。
【0055】
混合機(符号2)で調製した混合物スラリーは、混合物スラリー圧送管(符号3)を介して、シャワリング管(符号4)の混合物スラリー出口(符号6)からコンクリートと合流混合される。混合物スラリー圧送管(符号3)の形状などは特に限定されるものではない。
【0056】
混合機(符号2)で、液体急結剤と粉体混和材が混合されてスラリー化したものが、シャワリング管(符号4)でコンクリートと混合するまでの距離は1m以内が好ましい。距離が1mを超えると混合物スラリー出口(符号6)が閉塞する場合がある。
【0057】
本発明で使用するシャワリング管(符号4)は、外管と内管からなる二重構造を有し、コンクリートが圧送されるコンクリート圧送管(符号1)の径は、通常、1.0〜3.5インチ程度のものであり、2つ以上の混合物スラリー出口(符号6)を有するものである。
【0058】
混合物スラリー出口(符号6)の孔数は2〜15個が好ましく、4〜10個がより好ましい。孔数が1個ではコンクリートと混合物スラリーの均一な混合が得られず、優れた付着性や粉塵低減性が得られない場合があり、孔数が16個以上では混合物スラリー出口(符号6)が閉塞する場合がある。
【0059】
シャワリング管(符号4)の外管幅は特に限定されるものではないが、通常、5〜20cm程度のものが使用され、管径は特に限定されるものではない。
【0060】
シャワリング管(符号4)の材質は特に限定されるものではないが、金属製、樹脂製、及びプラスチック製のものが使用可能であり、これらを複合したものも使用可能である。
【0061】
シャワリング管(符号4)の混合物スラリー出口(符号6)の形状は特に限定されるものではない。また、コンクリートの流れに対して、垂直もしくは吹付けコンクリート出口(符号7)方向に角度をつけて開けることが好ましい。
【0062】
混合物スラリー出口(符号6)の総面積は特に限定されるものではないが、2〜30cmが好ましく、4〜20cmがより好ましい。総面積が2cm未満では混合物スラリー出口(符号6)が閉塞する場合があり、総面積が30cmを超えるとコンクリートと混合物スラリーの均一な混合が得られず、優れた付着性や粉塵低減性が得られない場合がある。
【0063】
本発明で使用するノズル(符号5)とは、シャワリング管(符号4)の吐出口より、吹付けコンクリート出口(符号7)までを形成するものであり、ノズル(符号5)としては、連続的に縮径しているものや、縮径後に吹付けコンクリートを整流する直管をつけたものが使用可能である。
【0064】
ノズル(符号5)の長さは、15〜145cmが好ましく、25〜75cmがより好ましい。長さが15cm未満では、コンクリートと混合物スラリーの均一な混合が得られず、優れた付着性や粉塵低減性が得られない場合があり、長さが145cmを超えると、混合物スラリー出口(符号6)の閉塞やノズル(符号5)内での吹付けコンクリートの閉塞が起こる場合がある。
【0065】
ノズル(符号5)の材質は特に限定されるものではないが、金属製のものやセラミックス製のものが使用可能であり、ゴム素材でできたノズルの配管内面にセラミックスや金属でライニングされたものやこれらのチップ状のものを埋め込んだものが使用可能である。
【0066】
シャワリング管(符号4)の混合物スラリー出口(符号6)からノズル(符号5)の先端の吹付けコンクリート出口(符号7)までの距離は特に限定されるものではないが、20〜150cmが好ましく、30〜80cmがより好ましい。距離が20cm未満では、コンクリートと混合物スラリーの均一な混合が得られず、優れた付着性や粉塵低減性が得られない場合があり、距離が150cmを超えると、混合物スラリー出口(符号6)の閉塞や混合物スラリー出口(符号6)以降のノズル(符号5)などでの吹付けコンクリートによる閉塞が起こる場合がある。
【0067】
ノズル(符号5)の先端の吹付けコンクリート出口(符号7)の内径aとコンクリート入口(符号8)の内径bの比率(a/b)は特に限定されるものではないが、0.3〜0.9が好ましく、0.4〜0.7がより好ましい。比率が0.3未満では混合物スラリー出口(符号6)の閉塞や吹付け管内での吹付けコンクリートの閉塞が起こる場合があり、比率が0.9を超えると、コンクリートと混合物スラリーの均一な混合が得られず、優れた付着性や粉塵低減性が得られない場合がある。
【0068】
本発明の吹付け工法においては、従来の吹付け設備が使用可能であり、吹付け圧力は特に限定されるものではなく、吹付けコンクリートの吐出量は、通常、1.5〜20m/hrであり、吹付け空気量は特に限定されるものではない。
【0069】
本発明の吹付けでは、乾式吹付け工法も施工可能であるが、粉塵量が多くなるおそれがあるので、液体急結剤と粉体混和材の混合物スラリーを使用すると同時に、あらかじめ水をコンクリート側に加えて混練りした湿式吹付け工法を使用することが好ましい。
【0070】
湿式吹付け工法としては、セメント、細骨材、粗骨材、及び水を加えてコンクリートを調製してから、ピストン式コンクリートポンプ又は空気圧送方式でシャワリング管(符号4)まで搬送し、ここで混合物スラリーをコンクリートに添加し、吹付けコンクリートとしてノズル(符号5)から吹き付けるものである。
【0071】
吹付け設備は、吹付けが充分に行われれば特に限定されるものではなく、コンクリートの圧送にはアリバー社商品名「アリバー280」、シンテック社「MKW−25SMT」、PET社「G4ポンプ」、及びスクイズポンプなどが使用可能である。また、粉体混和材の圧送には、急結剤圧送装置「ナトムクリート」が使用可能であり、液体急結剤の圧送には一般的に液体を圧送する装置、例えば、スクイズポンプ、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、スクリューポンプ、及びギヤポンプなどが使用可能である。
【0072】
以下、実施例により本願発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
実施例1
各材料の単位量を、セメント400kg/m、細骨材1,058kg/m、粗骨材711kg/m、及び水200kg/mとしてコンクリートを調製し、シンテック社コンクリート圧送機商品名「MKW−25SMT」により、10m/hrの速度で圧送した。
長さ10mの3インチ耐圧ホースの後に、内管の径が3インチの図1に示すシャワリング管(符号4)、連続的に縮径したノズル(符号5)の順序で組み込んだ。
急結剤添加装置「ナトムクリート」を用いて、粉体混和材を4m/minの圧縮エアと共に、粉体混和剤圧送管(符号10)にて搬送し、別途、液体圧送ポンプを用いて液体急結剤圧送管(符号9)から搬送された液体急結剤に、液体急結剤用エア管(符号11)より、表1に示す圧縮エア量を導入しながら、液体急結剤/粉体混和材質量比8/4の割合となるよう混合機(符号2)にて合流混合し混合物スラリーを調製した。
混合機(符号2)で調製した混合物スラリーを、混合物スラリー圧送管(符号3)にてシャワリング管(符号4)まで搬送し、コンクリート圧送管(符号1)内のコンクリート中のセメント100部に対して12部となるように、コンクリートに添加・混合して吹付けコンクリートとし、ノズル(符号5)から5分間吹き付けた。
混合機(符号2)でスラリー化されてからシャワリング管(符号4)でコンクリートに添加されるまでの混合物スラリーの圧送距離は30cm、シャワリング管(符号4)の混合物スラリー出口(符号6)からノズル(符号5)の先端の吹付けコンクリート出口(符号7)までの距離は50cm、吹付けコンクリート出口(符号7)の内径aとコンクリート入口(符号8)の内径bの比率(a/b)は0.7とした。
混合物スラリー出口(符号6)の数が6孔、スラリー添加口総面積が5cmのシャワリング管を用いた。結果を表1に示す。
【0074】
<使用材料>
セメント :普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン値3,200cm/g、密度3.15g/cm
細骨材 :新潟県糸魚川市姫川産川砂、表乾状態、密度2.62g/cm
粗骨材 :新潟県糸魚川市姫川産川砂利、表乾状態、密度2.64g/cm、最大寸法10mm
粉体混和材:市販品、デンカナトミックUSS
主成分:カルシウムアルミネート
密度:2.80g/cm
液体急結剤:市販品、デンカナトミックLSA
主成分:硫酸アルミニウム
密度:1.40g/cm、pH2.8(酸性)
【0075】
<評価方法>
リバウンド率:高さ4.4mの模擬トンネル内側に吹付けコンクリートを吹き付けた際の吹付け量とリバウンド量から、吹付け時の吹付けコンクリートのリバウンド率を算出した。リバウンド率(%)=リバウンド量(kg)/吹付け総量(kg)×100
24時間強度:幅25cm×長さ25cmのプルアウト型枠に設置したピンを、プルアウト型枠表面から吹付けコンクリートで被覆し、型枠の裏側よりピンを引き抜き、その時の引き抜き強度を求め、(24時間強度)=(引き抜き強度)×4/(供試体接触面積)の式から算出した。
【0076】
【表1】

【0077】
これより、液体急結剤圧送管(符号9)の途中に導入した液体急結剤用圧縮エア管(符号11)のエア量を調節することにより、液体急結剤を搬送するエア量と粉体混和材を搬送するエア量の割合を20:80〜70:30の範囲に安定して調整することが可能となる。その結果、吹き付けコンクリートのリバウンド率を低くすることが可能となり、吹き付け強度が高い吹き付けコンクリート面を得ることができることが分かる。
【0078】
実施例2
酸性の液体急結剤を、アルカリ性の液体急結剤に替えた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
<使用材料>
液体急結剤:市販品、電気化学社製ナトミックL:50%の液体急結剤
密度1.45g/cm、pH14(アルカリ性)
【0079】
【表2】

【0080】
これより、アルカリ性の液体急結剤を使用すると、シャワリング管内でゲル化して固結しやすいため、安定してコンクリートに添加することができず、吹き付け試験ができないことが分かる。
従って、本願発明の装置は、ハンドリングやポンプ圧送性の面で、酸性の液体急結剤に適している。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の吹付けコンクリート製造装置、それを用いた吹付けコンクリートの製造方法、及びその吹付けコンクリートは、例えば、道路、鉄道、及び導水路等のトンネルにおいて、露出した地山面へ吹き付ける時に使用できるものであり、これらの他に、深礎吹付けや法面吹付けの用途にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】吹付けコンクリート製造装置の外観図である。
【図2】吹付けコンクリート製造装置の軸方向の断面図である。
【図3】混合物スラリー出口(符号6)のセンター部分の断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 コンクリート圧送管
2 混合機
3 混合物スラリー圧送管
4 シャワリング管
5 ノズル
6 混合物スラリー出口
7 吹付けコンクリート出口
8 コンクリート入口
9 液体急結剤圧送管
10 粉体混和材圧送管
11 液体急結剤用圧縮エア管
12 シャワリング管外管
13 シャワリング管内管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを搬送するコンクリート圧送管(符号1)、液体急結剤を搬送する液体急結剤圧送管(符号9)、液体急結剤を搬送するためのエア量を調整する液体急結剤用圧縮エア管(符号11)、粉体混和材を搬送する粉体混和材圧送管(符号10)、搬送されてきた液体急結剤と粉体混和材との混合物スラリーを調製する混合機(符号2)、混合物スラリーを搬送する混合物スラリー圧送管(符号3)、搬送した、コンクリートと混合物スラリーとを混合するシャワリング管(符号4)、及びノズル(符号5)から構成される吹付けコンクリート製造装置。
【請求項2】
液体急結剤圧送管(符号9)に、液体急結剤用圧縮エア管(符号11)を導入し、液体急結剤を搬送するために使用するエア量と、粉体混和材圧送管(符号10)で粉体混和材を搬送するために使用するエア量の割合が20:80〜70:30である請求項1記載の吹付けコンクリートの製造装置を用いる吹付けコンクリートの吹付け方法。
【請求項3】
液体急結剤が、アルミニウム成分やイオウ成分を主成分とする酸性の液体急結剤である請求項1記載の吹付けコンクリート製造装置を用いる吹付けコンクリートの製造方法。


































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−7230(P2010−7230A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163990(P2008−163990)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】