吻合部の一時的保護のための外科用装置
結腸(12、13、14)、直腸(11)、または肛門管(10)の吻合部(5)を一時的に保護するための外科用装置(1)であって、a)半硬質の縦長中空の一時アンカー部材(2)であって、その第1壁は、少なくとも50mm、好ましくは70mmから150mmの長さ(L1)を有する、実質的に円形の断面を有する実質的に円筒形の主部(2a)を備え、前記第1壁が、制御下で変動可能な外径を有する、一時アンカー部材と、b)柔軟性のあるシース(3)であって、前記アンカー部材(2)の第1壁に対して、好ましくは前記第1壁の回りに固定され、前記アンカー部材(2)の下流側に少なくとも50cm、好ましくは少なくとも1mの長さ(L3)と、静止時において20mmから40mm、好ましくは25mmから33mmの外径とを有するとともに、0.05mmから1mmの壁厚を有する生体適合性エラストマー材料からできているシース、とを備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結腸、直腸、または肛門管における吻合部を一時的に保護するための外科用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
よって、本発明の主題は、吻合瘻と呼ばれる分離のリスクを防止または低減するために、腸の一部の2つの端部間に造設された吻合部(結合部)を保護するための装置である。分離が起こると、感染症、膿瘍、腹膜炎を引き起こしかねず、これらはいずれも術後の合併症や死亡の主要原因となっている。
【0003】
従来用いられている手法には、吻合部位の上流側で腸の流れを迂回させるというものがある。つまり、吻合部の上流側にある腸の一部を、腹壁を通じて体外に誘導するものである。これは消化管ストーマと呼ばれる。腸の近くの腹壁に貼り付けた「パウチ」と呼ばれる袋によって、便が腹外で回収される。この手法では、ストーマが必要になるものの、吻合部の上流で便を迂回させることができる。しかしながら、ストーマは、社会的職業上の影響が大きく、局所的な(皮膚や腸の)合併症や全体的合併症(脱水症)を伴う率が高い。そのうえ、6週間から8週間後にはストーマを閉鎖するために新たな外科的処置が必要となり、その際の死亡率も無視できない。最後に、「パウチ」と呼ばれる装置と、ストーマのケアに費用がかかる。
【0004】
ストーマに代わる既知の手法としては、「バイパス」と呼ばれるものがある。この手法では、消化管の迂回はおこなわない。吻合部位は、インターフェイスによって便と接触しないよう保護されている。このインターフェイスは、柔軟性に富んだ(例えば、ビニール製の)チューブで、腸管内に挿入され、吻合すべき部位の上流側の腸管の近位端に、吸収性の糸によって固定されている。チューブの他端は、遠位の腸管内で自在に動くようになっている。その後、吻合をおこなう。吻合部の順調な治癒に必要とされる平均10日が過ぎ、固定用の糸が吸収されると、チューブは、肛門を通じて、便とともに自然に排泄される。
【0005】
この方法が初めて記載されたのは何年も前のことで、COLOSHIELD(登録商標)という装置も1992年から市販されている。実験並びに臨床試験により、この装置の信頼性が確認されている。しかしながら、この製品にはいくつかの欠点があるため、外科スタッフの間で使用されないようになって久しい。
【0006】
COLOSHIELD(登録商標)装置の欠点の一つは、吻合すべき部位の上流側の腸管に装着するという点にある。つまり、腸の内側の面を露出させ、そこに吸収性の糸でチューブを固定するには、腸の近位端を裏返すという操作が必要になる。このような操作は、腸の遠位端とつなぐべき場所で腸がひきつれたり、傷ついたり、裂傷したりする原因となる。この装置のもう一つの欠点は、吻合をおこなう際に自動円形ステープラーを使用できないという点である。結腸直腸の吻合術の80%以上が、この器具を使っておこなわれているにもかかわらずである。
【0007】
国際公開第03/094785(A1)号パンフレットは、円錐形もしくは漏斗形のプラスチック製の永久アンカー部材を開示している。このアンカー部材は、消化管の入口、特に小腸に、永久的に設置された弁を備えているとともに、前記アンカー部材の下流側の小腸の内部に延びる柔軟性のあるシースにつながれている。この装置は肥満治療を目的としたものである。このアンカー部材は、縫合によって永久的に腹部に固定されていなくてはならないため、その外径は、腸管輸送によって腸が膨張したときの外径よりやや大きくなっている。
【0008】
米国特許出願第2008/0208357号明細書は、瘻孔、すなわち、胃腸の吻合部における腸の内容物の漏出を治療する方法を開示している。この方法は、瘻孔または漏出箇所を修復したり塞いだりするための短い柔軟性シースにつながれた、長さ25mmから45mm、直径20mmから40mmの「ステント(stent)」から成るアンカー部材の使用を含む。この「ステント」は、経口で食道に挿入され、食道と胃との接合部にあたる解剖学的狭窄部位の上部に設置される。このように食道に設置された「ステント」は移動してはならないため、食道と胃との接合部にあたる解剖学的狭窄部位の上流に設置することにより、絶対に移動しないようになっている。
【0009】
米国特許出願第2008/0208357号明細書において、シースの長さは、胃に吻合された空腸ループの長さ(およそ60cm)より必然的に短くなっている。上述したように、この装置は必ず経口で挿入しなくてはならない。いったんステントが所定の位置に設置されると、空腸ループにシースが展開されるように、シースをステントの下流側に押さなくてはならない。展開したシースの遠位端と口腔との間の距離は合計で57cmから72cmである。しかし実際的には、このようにシースを押すことによって15cmから30cm以上にシースを展開することはできないであろう。また、シースを押す操作は、瘻孔によって非常に脆くなった部位でおこなわれ、瘻孔の状態を悪化させかねないため、吻合部にとって危険な操作である。
【0010】
最後に、米国特許出願第2008/0208357号明細書において、シースは0.01mmから0.025mmと非常に薄くなっている。このような用途においては、シースが、特に敏感な食道に刺激を与えてはならないからである。しかしながら、その薄さが故に、この種のシースは形状を記憶させておくことができない。ひだができたり、ねじれたりする可能性がある。そのため、上記特許出願は、シースのねじれを防止する円形の金属ワイヤーという形態の装置の使用に関する別の米国特許第7267794号明細書について言及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第03/094785(A1)号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願第2008/0208357号明細書
【特許文献3】米国特許第7267794号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決すべき課題は、結腸における「バイパス」タイプの吻合部を一時的に保護するための装置であって、吻合部を造設した後で所定の位置に挿入され、(縫合、ステープラーといった)手法を問わず、固定のための操作を必要とせず、吻合部の治癒から十分な時間を経て、外科的処置なしで自然に排出される装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、本発明は、結腸、直腸、または肛門管の吻合部を一時的に保護するための外科用装置を提供し、その装置は、
a)一時アンカー部材と呼ばれる半硬質の縦長中空部材であって、その第1壁が、長手方向の軸XXを中心とする回転面を定義し、実質的に円形の断面を有する実質的に円筒形の主部を備え、前記第1壁が、制御下で、
・前記第1壁が径方向に収縮した状態で、最大10mmの縮小外径D1’と、
・前記第1壁の主部が径方向に最大限拡張した状態で、20mmから40mm、好ましくは25mmから33mmの最大外径D1と、の間で、変動可能な外径を有する、一時アンカー部材と、
b)前記アンカー部材の第1壁に対して、好ましくは前記第1壁の回りに固定された、柔軟性のある筒状壁を有するシース、とを備え、
1)前記一時アンカー部材の前記第1壁が、少なくとも50mm、好ましくは70mmから150mmの長さL1を有する、直径の大きい前記主部を含み、
2)前記シースが、静止時において、前記アンカー部材の下流側に少なくとも50cm、好ましくは少なくとも1mの長さL3と、20mmから40mm、好ましくは25mmから33mmの外径とを有するとともに、0.05mmから1mmの壁厚を有する生体適合性エラストマー材料からできていることを特徴とする。
【0014】
前記第1壁が径方向に収縮した状態の外径を縮小外径D’1としたことにより、径方向に収縮した状態の前記アンカー部材を肛門から挿入した後、結腸、直腸、または肛門管の吻合部の上流側の一時留置位置まで結腸内に送り込むことができる。また、前記第1壁が径方向に最大限拡張した状態の外径を最大外径D1としたことにより、腸管輸送がない場合は、腸壁に対して径方向に拡張しようとする力によって、前記アンカー部材を一時的に留置するとともに、再び腸管輸送が始まり、いわゆる「蠕動段階」で腸が収縮、拡張すると、留置を開放して移動を始められるようにできる。
【0015】
前記アンカー部材に関して、
・「半硬質」という表現は、収縮および拡張状態それぞれにおいて、前記アンカー部材の第1壁が、前記回転面を定義する所定の形状を保っているという意味であり、
・「制御下で、変動可能な外径」という表現は、前記第1壁の直径が、温度といったパラメータとは無関係に、装置の使用条件に応じて決定されるような方法、および/または、後述する装着器具、特に「導入管」のような、前記アンカー部材と協働する独立した機械的手段に応じて決定されるような方法で変動可能であるという意味である。
【0016】
前記アンカー部材が以下を採用可能なことは明らかである。すなわち、
・前記アンカー部材を、肛門から腸の吻合部の上流側まで挿入できるように、前記第1壁の縮小外径D’1を、少なくとも静止時の腸の直径より小さい直径、好ましくは10mm未満とすること、および
・前記アンカー部分を、少なくともその一部の径方向の拡張によって腸壁上に支持することにより、一時的に留置することができるように、前記第1壁の径方向に最大限に拡張した外径D1を、静止時の腸の直径以上とすること、および腸管輸送がないとき、特にイレウス(腸閉塞)という術後の腸管麻痺の段階では、前記アンカー部材は腸壁に固定されたままになるが、腸管輸送が再開すると、もはや腸に固定されず、実際的には、腸壁に沿って滑りながら移動し始めるように、直径D1が常に、蠕動段階の腸の最大径より小さくなるようにすること。
【0017】
直径D1を決定する一般的な方法では、外科医によって日常的に用いられている「ブジー(bougie)」と呼ばれる器具を使って、腸の一方の端部の断面を計測する。直径D1を決定する別の方法は、場合によっては、直径D1が機械吻合に用いられるステープラーの直径に等しいとみなすことである。より具体的には、直径D1は、現在市販されているステープラーの外径に対応して、25mmから33mmの範囲で変動可能である。
【0018】
「長手方向の端部」という表現は、長手方向における、前記アンカー部材の端部、または、場合によっては、前記シースの端部である。
【0019】
「静止時の」シースの長さと直径とは、それぞれ、その長手方向および径方向の弾性が作用しないときの長さと直径を意味する。
【0020】
腸管輸送が再開すると、腸の蠕動により前記アンカー部材は開放され、開放されたアンカー部材は移動するが、アンカー部材の径方向への拡張特性により、その外壁は腸の内壁と接触しながら滑り続けることになる。これにより十分に封止ができるため、アンカー部材の外壁と腸の内壁との間を便が通過するのを防止し、吻合部を保護し続けることができる。事実、便はシース内を通過せざるを得ないため、吻合部において、腸壁からうまく分離された状態になる。
【0021】
径方向に拡張した状態の前記アンカー部材の直径の値は、患者によっても異なるが、静止時の腸の直径よりやや大きく、腸管輸送により膨張したときの腸の最大径よりも小さく、30mmから60mmである。また、前記主部の長さは、結腸壁と前記アンカー部材との接触面と、径方向に拡張する力とが相まって、最大限に拡張した状態のアンカー部材が径方向に拡張する力が吻合部の上流側の腸壁に対してかかることによって、前記アンカー部材が一時的に固定された状態になり、腸管輸送が起こらなければ、アンカー部材が留置されてから少なくとも3日、好ましくは5日移動しなくなるような長さである。結腸と接触している主部の長さが少なくとも50mmない場合、固定手段を用いなければ、あるいは、より大きな最大拡張径のアンカー部材を用いなければ、アンカー部材を少なくとも3日間留置させておくことができないが、前者の場合、後で固定手段の機能を停止させて移動させるための手段および/または機能が必要になり、後者の場合、結腸が傷ついたり、腸管輸送の再開時にアンカー部材の自然な開放が妨げられる可能性がある。
【0022】
一方、シースの長さは、吻合部と上流の留置位置との距離を少なくとも50cm、好ましくは1mとれるような長さである。そうすれば、腸管輸送の再開時に、留置位置から吻合部までの移動時間が少なくとも3日、好ましくは少なくとも6日かかるように、また、前記アンカー部材が留置位置にある時、前記シースが吻合部を保護した上でさらに肛門の外に突き出すように、前記アンカー部材を吻合部より十分に上流側の結腸に留置することが可能である。
【0023】
従って、麻痺性イレウスと呼ばれる術後の腸管麻痺期が3日から5日続くことを考えると、アンカー部材がいったん開放されて、吻合部上流の留置位置から吻合部位に移動するのにかかる期間をその3日から5日に足した期間、このようにして吻合部を保護することが可能になる。ただし、この移動時間は、留置位置から吻合部までの通過距離による。実際的には、50cmから1mの距離は、3日から6日の移動時間を反映しているため、吻合部が造設されてから、合計で少なくとも6日から11日間保護されることになる。
【0024】
前記シースはエラストマーからなるため、腸壁と同様、径方向および長手方向への伸縮特性を有していることは明らかであり、この特性は、径方向および長手方向への弾力特性を有するシース形状のエラストマー材料の特性である。シースが持つこのような径方向および長手方向への弾力特性は、結腸壁の特性に似ており、アンカー部材の移動期間中ずっと、すなわち少なくとも6日から10日の間、前記シースの中で正しく腸管輸送をおこなうことができる。
【0025】
エラストマー製シースの長手方向の弾性は、腸の弾性より大きくてもよく、大きくしてもなんら問題はない。それどころか、肛門から突き出しているシースを引っ張ってカットした後、直腸の中を上流方向に戻すことができるという利点がある。
【0026】
径方向の弾性により、径方向に拡張しても、前記シースの長手方向の端部は、前記アンカー部材の端部に固定されたままになる。
【0027】
また、シースの厚さ特性と、その弾性とが相まって、シースに形状記憶特性を付与している。ここで、「形状記憶特性」という表現は、前記シースのエラストマー材料に折りひだができて変形しても、自然と元の形状に戻るということを指している。シースが非常に長いということを考えると、この形状記憶特性は、アンカー部材が開放されて移動している間にシースに折りひだができても、輸送を妨げることなく自然と縦長形状に戻るという、この材料にとって重要な特性である。
【0028】
好ましい実施形態においては、前記第1壁の主部が、前記第1壁の長手方向の上流端から、円筒形の主部より小径の特定形状の下流終端部まで延び、径方向に最大限拡張した状態で、前記第1壁の下流端の外径D2が20mmから35mmであり、前記第1壁の特定形状の終端部の長さL2が10mmから30mm、好ましくは15mmから25mmであり、前記終端部の直径が、前記第1壁の主部から下流端にかけて徐々に小さくなっていることが好ましい。
【0029】
この部位での詰まりを防止するため、アンカー部材の特定形状の下流部分は、通常、吻合部位の上流側および下流側の結腸の直径よりも狭い通路となっている吻合部位を移動しやすくなっている。このように通路が狭くなっているのは、吻合部領域で狭窄を起こしているからである。一方、アンカー部材の特定形状の上流部分では、アンカー部材と腸壁との間で漏出のリスクがある。
【0030】
より具体的には、特定形状の下流終端部の直径は、径方向に最大限拡張した状態の前記主部の直径よりも小径のエラストマー材料からなるリングをはめることにより狭められている。
【0031】
好ましくは、
・前記アンカー部材が、前記の収縮した状態に径方向に圧縮され、径方向の圧縮から開放されると、径方向に最大限拡張した状態をとることができるような、径方向の弾性特性を付与する材質でできており、
・前記シースが、0.1mmから0.5mmの壁厚を有し、径方向および長手方向の弾性特性、形状記憶特性、および非粘着特性を有しているシリコーンまたはポリウレタン・タイプのエラストマー・ベースの生体適合性ポリマー材料からできている。
【0032】
「非粘着特性」という表現は、前記シースのエラストマー材料が、折りひだができたときに相対するシース内壁の2つの面が互いにくっつかないような粘着係数を有しているため、気体や物質の通過の障害にならないということを指している。
【0033】
前記アンカー部材は、後述する「導入管」と呼ばれる器具を使って、径方向に収縮した状態に保持することができ、導入管から離脱した後に、アンカー部材の径方向の拡張が起こる。
【0034】
また、以下のことが明らかである。
・前記シースは、静止時において、径方向に収縮した状態の前記中空状のアンカー部材の縮小外径D’1と実質的に同じ径以上であり、且つ、静止時の腸の直径よりも小さい直径を有し、静止時における前記シースの直径は、静止時の腸壁の直径に実質的に等しいことが好ましいこと、および、
・前記シースは、シースが固定されている前記アンカー部材の端部から下流に向かって、前記吻合部の上流側の留置位置から下流位置までの距離に対応する長さにわたって、好ましくは肛門外口まで、延びていること。
【0035】
より具体的には、前記アンカー部材の第1壁の厚さは、0.5mmから5mm、好ましくは、1mmから3mmである。
【0036】
エラストマー製シースの長手方向の弾性は、腸の弾性より大きくてもよく、大きくしてもなんら問題はない。それどころか、必要に応じて、シースが肛門から突き出している部分を引っ張ってカットした後、直腸または肛門管の中を逆戻りさせることができるという利点がある。
【0037】
前記アンカー部材の第1壁は中実であってもよいし、孔が開いていてもよく、特に細孔または微小孔が開いていてもよい。
【0038】
特定の一実施形態においては、長手方向に延びる中空の一時アンカー部材は、ステント・タイプの経腸用のプロテーゼ(prosthesis)であり、その筒状の壁の、少なくともその外面は、生体適合性の合成材料のコーティング、好ましくはシリコーンまたはポリウレタン・タイプのエラストマーに覆われている。
【0039】
この外面のコーティングは、腸管輸送の再開時に、前記アンカー装置を腸壁に沿って滑らせながら展開を容易にするとともに、留置中は、前記縦長のアンカー部材の拡張から腸壁を保護するという、二重の意味で有利である。これがなければ、アンカー部材が腸壁の細胞内に入り込んで、その後再度開放できなくなり、腸壁に孔が開く可能性がある。
【0040】
このような「ステント」タイプの経腸プロテーゼは、過去20年余にわたって腸の腫瘍、主に食道、十二指腸、結腸の腫瘍性狭窄(狭くなること)の緩和治療に用いられてきた。このようなプロテーゼは、本発明のように腸の吻合部を保護するための装置を一時的に留置しておくことを意図したものではなかった。言い換えると、柔軟性のあるスリーブに取り付けられた経腸プロテーゼ、すなわち、消化管の吻合部を保護するために、上述した寸法特性、とりわけ弾性特性を有することを意図したアセンブリは、これまで全く提案されていなかった。
【0041】
前記一時アンカー部材は経腸プロテーゼであることが好ましく、その第1壁が、金属またはエラストマー、とりわけシリコーン・ベースのエラストマー材料でできたワイヤーのらせん状メッシュからなり、前記メッシュを覆う生体適合性合成材料の層でコートされていることが好ましく、前記コーティングは、好ましくはシリコーンといった生体適合性エラストマー材料である。
【0042】
既知のように、金属ワイヤーの交差角度を変えることによって、らせん状ワイヤーメッシュの菱形もしくは平行四辺形の幅が変化し、その結果径方向に拡張する。
【0043】
アンカー部材が、周囲温度20℃以上の温度でのみ、特に人間の体温でのみ、径方向の弾性による拡張を付与する材料からできているということが有利であり、前記アンカー部材は、上記周囲温度以下の温度で、好ましくは5℃以下の温度では、径方向に収縮した状態にある。筒状の材料が、周囲温度に応じて自動的にその直径を変化させることは明らかである。
【0044】
さらに具体的には、前記アンカー部材は経腸プロテーゼであり、その第1壁は、らせん状ワイヤーメッシュ、好ましくはニチノール製ワイヤーメッシュで形成されている。
【0045】
ニチノールは、周囲温度(25℃)以上の温度で、温度に応じて徐々に径方向に拡張する性質を持った金属合金であり、これより低い温度、特に4℃で保存すると、収縮した形状を保つことができる。いったん低温で収縮すると、導入管内に収まって、その導入管を使って腸内送り込まれるのに十分な時間、収縮した状態のままになる。いったん腸内で開放されると、より高い周囲温度、すなわち人間の体温の影響により、プロテーゼは、径方向に徐々に拡張する。
【0046】
特定の一実施形態においては、前記シースとアンカー部材との連結は、前記シースの端部が、少なくとも縦長中空部材の長手方向の端部の表面に密着して、弾性的に覆うようにしてなされている。
【0047】
実施形態の好ましい変形例では、前記シースは、前記アンカー部材の外面、少なくとも前記アンカー部材の下流端の外面に密着して、弾性的に覆っている。このように、前記シースはコーティング機能を有しており、場合によっては、アンカー部材のメッシュを覆う。
【0048】
上記2つの実施形態では、シースの製作のために、場合によってはアンカー部材に沿って、中実の成形用チューブをポリマー組成物の槽に漬すことにより、チューブ上にポリマー材を成形する方法を使用することもできる。このとき、前記縦長中空部材は、中実の成形チューブを漬す前に、そのチューブに嵌めておく。
【0049】
エラストマー製シースに径方向の拡張特性を付与するためには、その厚さ(0.05mmから0.4mm)を考慮すると、一定の硬度と、接着性(粘着係数)、および形状記憶性(圧縮時残留変形度(DRC))を有するエラストマー組成物を使用する必要があるが、これら特性について選択すべき値については後述する。
【0050】
より具体的には、前記シースは、好ましくはシリコーンおよび/またはポリウレタン・タイプの、エラストマー・ベースの生体適合性ポリマー材料からできており、以下の特性を有する。
・ショアA硬度5から95、好ましくは50から70、
・圧縮時残留変形度(DRC)10%から35%、好ましくは17%から23%、および
・摩擦係数0.30から0.90、好ましくは0.35から0.45。
【0051】
「硬度」という用語は、エラストマーの弾性変形のエネルギーを指し、ここでは、例えばDIN 53505規格によるショアA硬度で表される。
【0052】
「圧縮時残留変形度(DRC)」という用語は、DIN 53517 ISO 815B規格で規定された試験方法による、エラストマー試料への負荷を解除してから一定時間後の残留変形度を指す。これは、例えば、折り曲げ時の形状記憶特性であり、その材料を折り曲げた圧縮が開放されるとすぐに元の形状にもどる材料のことである。
【0053】
「摩擦係数」は、例えば、ASTM D1894規格に従って計測すればよい。
【0054】
摩擦係数が上記の値のとき、シース内壁の相対する2つの面が互いに接触しても付着しないようにできる。これは、第1に、シース内を気体や物質が抵抗無く通過できるようにするためであり、第2に、シースが折れ曲がっても、孔が塞がらないようにするためである。
【0055】
さらに具体的には、前記シースは、少なくとも以下の化合物を含むシリコーン・ベースの生体適合性ポリマー材料からできている。
・液状シリコーンゴム(「LSR」)グレードもしくは品質のエラストマー75wt%から95wt%、
・「RTV」グレードもしくは品質のエラストマー2.5wt%から12.5wt%、および
・「ゲル」グレードもしくは品質のエラストマー2.5wt%から12.5wt%。
【0056】
グレードの異なるエラストマー(「LSR」、「RTV」、「ゲル」)を組み合わせることで、次のような利点がある。
・LSRグレードもしくは品質のエラストマーは、耐引裂性をもたらす、
・RTVグレードもしくは品質のエラストマーは、径方向および長手方向の弾性特性をもたらす、および
・ゲルグレードもしくは品質のエラストマーは、低い粘着係数(非粘着性)をもたらす。
【0057】
好ましい実施形態においては、前記アンカー部材は、少なくともその外面が、シリコーンまたはポリウレタン・タイプの合成エラストマー材料のコーティングで覆われた、ステント・タイプの経腸プロテーゼであり、前記エラストマーのコーティングは、前記シースのエラストマー材料よりも柔軟性があり、前記シースとアンカー部材との連結が、少なくとも徐々に径が縮小する特定形状の下流端を含む前記アンカー部材の長さの一部分のみを覆っている前記シースによってなされている。
【0058】
エラストマー、特にシリコーン・ベースのエラストマーでコートされたステント・タイプの経腸プロテーゼは、既知であり、市販されている。
【0059】
このように、ステントを覆うエラストマーのコーティングは、シースのエラストマーより径方向および長手方向の変形性が高い。つまり、ステントのエラストマー・コーティングは、必要に応じて種類の異なるシリコーンの混合物から構成され、そのうちRTVグレードの重量含有率はシースのエラストマーよりも高いが、上述した2.5wt%から12.5wt%の範囲内である。
【0060】
以下に説明するが、本実施形態では、シースに牽引力をかけてステントの直径を狭め、軸方向に伸ばすことにより、腸からステントを引き離し、前記アンカー部材を開放して、吻合部を移動しやすくしている。
【0061】
また、既知の「ラッソ(lasso)」という細長い糸状の部材をその端部に備えた、ステント・タイプのアンカー部材を使用すると有利である。このような部材を使用すると、当業者にとって既知のやり方で、場合によっては結腸鏡といった器具を用いて、ステント・タイプのアンカー部材の端部に牽引力をかけることができるため、必要に応じてアンカー部材を容易に開放および/または吻合部位を通って移動させ、その領域での詰まりを防止することができる。
【0062】
前記シースのポリマー材料は、チューブの長手方向に配置した、X線を通さない、特に硫酸バリウム製のフィラメントを複数含んでいると有利である。
【0063】
このようなフィラメントにより、シースの排出時に、その初期位置や移動過程をモニタしたり、シースの移動を追跡したりすることができる。また、このようなフィラメントを長手方向に配置すると、シースは伸びが抑えられると同時に、例えば大腸と比べて長手方向の弾性が高すぎるかもしれない場合に、その弾性を低下させる(上記参照)。
【0064】
シースの上流端から昇順に目盛りが付けられていると有利である。
【0065】
より具体的には、その一方の端部にハンドルを備え、その内部に、収縮した状態の前記アンカー部材と前記シースとを、好ましくは長手方向に展開した状態で、収容することのできる内径と長さを有した、既知のカテーテル・タイプの半硬質ガイドチューブで、前記導入管が構成されていてもよい。
【0066】
しかしながら、前記装置は、
(1)筒状の外被であって、その遠位端の内部に、前記収縮状態に圧縮されたアンカー部材を収容、保持できるようになっており、前記シースをも収容するのに十分なほど長く、好ましくは少なくとも110cm、好ましくは少なくとも150cmの長さを有する筒状外被と、
(2)前記導入管の遠位端を、肛門外口から吻合部の上流側にある腸内の前記留置位置まで送り込む手段と、
(3)好ましくは、前記外被から前記アンカー部材を取り外すための手段であって、好ましくは、前記アンカー部材の長手方向の端部と必要に応じて接触しているストッパーを、その遠位端に備えた緩衝チューブから構成され、前記アンカー部材の下流側の前記シースが、その外被の内部の前記緩衝チューブをとり囲んでいる、手段
とを含む導入管をさらに含むことが好ましい。
【0067】
外被が収縮し、次に緩衝チューブが収縮することにより、シースを展開するのに追加の外科手術を必要とせずに、アンカー部材の下流側にシースを完璧に展開することができる。
【0068】
本発明の装置は、以下の保護チューブを備えることがさらに好ましい。すなわち、好ましくは20mmから40mmの外径と、10cmから25cmの長さを有する保護チューブであって、仙椎後彎に応じた彎曲形状の部分を含み、前記導入管の外被よりも硬く、前記保護チューブが肛門外口から挿入され、肛門外口から前記吻合部の上流まで延びるような外径と長さを有し、前記保護チューブが前記導入管を収容して、肛門外口から前記吻合部まで送り込むことができるような、前記仙椎後彎に応じた内径と彎曲を有する保護チューブを備える。
【0069】
本発明によれば、以下の連続した工程を実行することにより、吻合部の瘻孔のリスクを防止または軽減するために、大腸もしくは結腸、直腸、または肛門の吻合部を一時的に保護するための本発明の外科用装置を用いた外科的治療を採用することができる。すなわち、
1)前記外科用装置を肛門から挿入し、吻合部位上流の留置位置まで送りこむ。前記アンカー部材は、径方向に収縮して直径D’1の状態で保持され、導入管と呼ばれる器具を使用して送り込まれ、前記エラストマー・シースの長さは、留置位置と肛門外口との距離以上である。
2)導入管が前記留置位置まで送り込まれたら、前記アンカー部材から切り離し、前記アンカー部材が径方向に最大限拡張した状態で、腸壁に対して留置姿勢をとれるようにする。
【0070】
前記留置位置と前記吻合部との距離は、腸管輸送の再開によりアンカー部材が腸壁から開放されて移動し始めてから、少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間進む距離以上であることが好ましい。
【0071】
より具体的には、吻合部と留置位置との距離は、少なくとも50cm、好ましくは少なくとも1mである。
【0072】
さらに具体的には、腸管輸送が再開しない場合、前記アンカー部材は、留置されてから少なくとも3日間、好ましくは5日間、前記留置位置に留置されたままとなる。
【0073】
従って、麻痺性イレウスと呼ばれる術後の腸管麻痺期が3日から5日続くことを考えると、アンカー部材がいったん開放されて、吻合部上流の留置位置から吻合部位に移動するのにかかる期間をその3日から5日に足した期間、このようにして吻合部を保護することが可能になる。ただし、この移動時間は、留置位置から吻合部までの通過距離による。実際的には、50cmから1mの距離は、3日から6日の移動時間を反映しているため、吻合部が造設されてから、合計で6日から11日間保護されることになる。
【0074】
前記導入管は、半硬質の保護チューブの中に押し込むようにして挿入することが好ましい。前記保護チューブは、好ましくは20mmから40mmの外径と、10cmから25cmの長さを有するチューブであって、仙椎後彎に応じた彎曲形状の部分を含み、前記導入管の外被よりも硬い。また、前記保護チューブは、肛門外口から導入され、肛門外口から前記吻合部の上流地点まで延びるような外径と長さを有しているとともに、前記導入管を収容して、肛門外口から前記吻合部まで送り込むことができるような、前記仙椎後彎に応じた内径と彎曲を有し、前記吻合部から肛門外口にかけて延びている。
【0075】
アンカー部材がいったん前記腸壁から開放されると、腸管輸送によって、保護チューブ内に回収されることがさらに好ましい。前記保護チューブは、好ましくは20mmから40mmの外径と、10cmから25cmの長さを有するチューブであって、仙椎後彎に応じた半硬質の彎曲形状の部分を含み、前記導入管の外被よりも硬い。また、前記保護チューブは、肛門外口から導入され、肛門外口から前記吻合部の上流まで延びるような外径と長さを有しているとともに、前記導入管を収容して、肛門外口から前記吻合部まで送り込むことができるような、前記仙椎後彎に応じた内径と彎曲を有し、前記吻合部から肛門外口にかけて延びている。
【0076】
本発明の他の特徴および利点は、図1から11を参照して以下に詳細に説明することによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、本発明に係る装置を概略的に示している。
【図2】本発明に係る装置の一実施形態の縦断面図であり、円筒状の主部より小径の、特定形状のアンカー部材の下流終端部2bを示している。
【図3】図3は、消化器系の概略図であり、吻合部5を示している。
【図4】図4は、導入管4を介して設置位置まで送り込まれた本発明に係る装置の概略図であり、アンカー部材2は、導入管の外に出て、径方向に収縮した状態にあり、シース3は、まだ導入管の中に収容されている。
【図5】図5は、留置位置にある本発明に係る装置を示しており、アンカー部材は、径方向に最大限拡張した状態で腸壁に固定されている。
【図6】図6は、留置位置にあって吻合部を保護する本発明の装置を概略的に示しており、シース3は、アンカー部材2の下流側に展開している。
【図7】図7Aおよび7Bは、排出蠕動により移動中(図7A)、および排出終了時点(図7B)の、本発明に係る装置を示している。
【図8】図8は、本発明に係る導入管を示している。
【図9】図9は、本発明に係る保護チューブを示している。
【図10】図10は、仙椎後彎部において保護チューブに通された、本発明に係る導入管を示している。
【図11】図11は、本発明に係る装置の好ましい実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1は、
・径方向に最大限拡張した状態にある、以下に説明するタイプの経腸プロテーゼからなるアンカー部材2と、
・円筒形の経腸プロテーゼの下流端に取り付けられ、アンカー部材2の少なくとも2倍の長さL3にわたって延びる柔軟なシリコーン製シース3、
とを備える本発明に係る外科用装置を示している。
【0079】
プロテーゼ2は、特にニチノールからできた「ステント」という既知の装置であり、その物性は、当業者にとって既知である。ステントとは、温度に応じて制御された径方向の拡張特性を持つ小さなチューブである。より正確には、約20℃を上回る温度になると、徐々に径方向に拡張する。この部材は、1つまたは複数のシリコーン層で全体をコートされた、らせん状のニチノールワイヤーのメッシュにより形成されている。
【0080】
図2は、アンカー部材または「ステント」2の好ましい変形例を示している。このアンカー部材において、前記第1壁の主部2aは、その第1壁の長手方向の上流端21から、円筒状の主部より小径の特定形状の下流終端部2bまで延びている。径方向に最大限拡張した状態の円筒状の主部の直径D1は、約32mmである。経方向に最大限拡張した状態の第1壁の下流端22の直径D2は、約24mmである。円筒状の主部の長さL1は、約70mmである。特定形状の終端部2bの長さL2は、約20mmである。前記終端部2bの直径は、前記主部2aの下流端22から第1壁の下流端22にかけて徐々に小さくなっている。
【0081】
より正確には、特定形状の下流終端部2bの直径は、径方向に最大限拡張した状態の前記主部の直径よりも小径のエラストマー材料のリング31を周りにはめることにより、狭められている。
【0082】
収縮した状態では、このプロテーゼ2は、直径が3mmから8mmの範囲となってもよい。
【0083】
シース3は、弾性リング31同様、シリコーンまたはポリウレタン・ベースの生体適合性エラストマー材料でできている。
【0084】
図2に示された実施形態において、シースの上流端は、シースを構成するエラストマーに埋め込まれたアンカー部材2を、その長さ全体にわたって覆っており、これにより、シースとアンカー部材2とを確実に連結しつつ、前記アンカー部材2の外面全体をコートできる。
【0085】
前記シースは、静止時において、前記アンカー部材の下流側に少なくとも50cm、好ましくは少なくとも1mの長さと、26mmから33mmの直径D2と、0.1mmから0.5mmの壁厚とを有している。
【0086】
この少なくとも50cm、好ましくは1mという長さによって、吻合部5から上流側に、それぞれ少なくとも50cmの位置、または少なくとも約1mの位置に、アンカー部材2の配置場所7を置くことを想定することが可能になる。
【0087】
上述したように、シース3は、「LSR」、「RTV」、「ゲル」という違ったタイプのシリコーンの混合物を使って得られる。
【0088】
外科医は、一般的な手法、多くの場合ステープラーを用いて、吻合をおこなう。吻合が完了したら、助手が導入管を挿入する。
【0089】
図3は、腸の様々な部分、すなわち、直腸11、肛門管10、下行結腸12、横行結腸13、上行結腸14、小腸15、胃16,および食道17を示している。
【0090】
腸の摘出部分の2つの端部6aおよび6bと、吻合部を構成するこれら2つの端部の接合部5が示されている。
【0091】
図4は、本発明に係る装置の挿入の様子を示している。直径3mmから8mmで長さ70cmから220cmの変形可能な半硬質プラスチック製チューブからなり、アンカー部材が収縮状態で挿入されている導入管4を介して、この装置は、収縮状態2Aで挿入される。前記シースは、導入管のガイドチューブ内において、アンカー部材の下流に位置している。いったん導入管のガイドチューブが配置位置7、例えば吻合部5の上流約1mの地点に到達すると、アンカー部材は、導入管の端部から外に出て、図5に示す拡張状態2Bになる。なお、アンカー部材を導入管に挿入してから、配置位置7まで送りこむのに必要な時間は、実際的には、その後体内で受ける温度上昇によって、前記アンカー部材が径方向に拡張する時間より短い。
【0092】
図6は、導入管4を引き抜いた後にシース3を展開した、完全な状態の装置を示している。シース3は、配置位置7から肛門外口10まで延びている。
【0093】
ステントは、最初は導入管の中で閉じた状態で収容されており、その直径は非常に小さく、特に3mmから8mmである。ステントは、吻合部5を通過した後、腸の上流12へと入っていく。外科医は、腸壁越しに導入管を触診し、ステントの拡張を視覚的に確認しながら、導入管4の進み具合と適切な配置場所とを判断する。腸管内に開放されたステントは、徐々に最終的な直径になる。外科医が腸壁越しにステントを手で挟むことによって、ステントをしかるべき場所で一時的に保持してもよい。その後、導入管を引き抜く。導入管4を引き抜くと、シース3は自然と徐々に展開していく。導入管が吻合部、肛門外口10へと順方向に戻ってゆき、シース3を完全に開放する。平均4日から6日が過ぎると、腸の収縮効果により、このステント/スリーブ・アセンブリは、上流の留置位置から肛門外口10に向かって徐々に移動する。この留置位置は、吻合部より十分に上流、好ましくは、腸の長さにして少なくとも1m上流で、ステントが、腸管輸送の再開後5日から6日後に肛門外口に到達し、その後、図7Aおよび図7Bに示すように、装置が便と共に排出されるような位置である。
【0094】
図8は、導入管4の一例を示している。その導入管4は、以下を含む。
・まっすぐな筒状の外被41であって、導入管を肛門外口から腸内に送り込む際に、腸の輪郭に沿って彎曲するように、半硬質の材料でできている、外被。この外被は、吻合部における腸壁よりも小さい20mmから40mmの外径を有し、また、収縮状態に圧縮されている前記アンカー部材2と、アンカー部材の後ろに、実際的には100mmから150mmの長さで延びている前記シースとを収容できるような内径と長さを有している。
・前記外被内に軸方向に配置された緩衝チューブ44であって、その遠位端が、径方向の拡張によって前記外被41の遠位端に固定されている前記アンカー部材に接触しているストッパー45を備えている、緩衝チューブ。この緩衝チューブは、アンカー部材の下流端に固定されているシース3を収容するよう、外被の内径よりもやや小さい直径を有し、前記シースは前記緩衝チューブ41を取り囲んでいる。外被を引き抜くと、緩衝チューブがアンカー部材を保持するため、アンカー部材が外被と一緒に引き抜かれることはなく、アンカー部材は外に出て、腸壁に対して径方向に展開する。
・緩衝チューブの軸、および外被に収容され、収縮した状態のアンカー部材の軸に沿って挿入された柔軟性のあるガイドワイヤー42。このガイドワイヤーの遠位端は、挿入時に外傷をつけないよう「J」字型になっている。ガイドワイヤーは、金属または合成材料でできていてもよい。
・ガイドワイヤー42を通すために軸方向に孔をあけた外傷防止コーン43。このコーン43は、外被の内径よりも大きな直径を有し、導入管が腸内を進みやすいように、外被の下流側に配置されている。
【0095】
プロテーゼは以下のように配置される。
1)ガイドワイヤーをアンカー部材の留置位置まで腸内に挿入する。
2)肛門外口の外で、外傷防止コーンの孔、アンカー部材の軸管、そして導入管の軸上の緩衝チューブへと、プロテーゼの近位端を挿入していく。
3)腸内のガイドワイヤーに沿って、導入管の外被の遠位端を押すと、外傷防止コーンが押されて吻合部の上流側の留置位置に到達する。
4)ガイドワイヤー42を引き抜く。
5)アンカー部材が開放されないよう緩衝チューブ44を保持しながら、外被41を部分的に引き抜く。
6)緩衝チューブおよび外傷防止コーン43と一緒に、外被を完全に引き抜く。
【0096】
本発明によれば、本装置は、瘻孔の生じない吻合のための予防策として用いられる。しかしながら、導入管4を用いた装置1の配置には、装置の挿入時に吻合部を傷つけてしまうという潜在的危険性がある操作を伴う。この危険性を回避するため、保護チューブと呼ばれる半硬質チューブ8の使用が有利である。
【0097】
保護チューブ8は、装置を配置している間、すなわち導入管4を挿入している間一時的に吻合部を保護するものである。従って、保護チューブ8は、導入管4の配置、操作の前に配置される。いったん吻合がおこなわれると、まず最初に保護チューブが挿入される。
【0098】
この保護チューブ8は、導入管4より硬く、導入管4を挿入中に腸壁を変形させることがないよう、腸壁を保護する。
【0099】
保護チューブ8の彎曲形状により、腸の曲線に合致させることができる。この保護チューブは、当業者が仙椎後彎と言う、脊柱下端の彎曲と似た彎曲中央部8aを有している。このような彎曲は、ステープラー装置に見ることができる。このチューブ8の両端は開口している。保護チューブ8の近位端84はラッパ状に広がっており、肛門外口の外縁の解剖学的形状と合致させることができる。同じく近位端は、その外面に、チューブをつかむのに用いるやや傾斜したまっすぐな棒85を備えている。チューブ8の遠位端は、肛門外口への挿入後、吻合部5の上流地点まで送りこめるように、ラッパ状にはなっていない。この目的のために、チューブ8のラッパ状になっていないほうの端部は、保護チューブ内腔に置かれた棒83に付いている外傷防止コーン82により、可逆的に塞がれていることが好ましい。この外傷防止コーン82は、保護チューブ8の挿入時に腸を傷つけないようにするためのものである。
【0100】
保護チューブ8は、肛門外口と吻合部との距離に少なくとも対応する長さ、実際的には少なくとも5cmから25cmの長さと、吻合部における腸の外径以下の外径を有し、実際的には吻合のために用いられるステープラーの直径以下の外径、すなわち10mmから40mm、好ましくは20mmから30mmの外径を有する。保護チューブの内径は、導入管4が貫通できるように、導入管の直径以上である。
【0101】
実際的には、吻合には、結腸と結腸、結腸と直腸、および結腸と肛門管、の3種類がある。吻合の種類にもよるが、腸の2つの端部をつなぐ接合部位は、(この場合、基準点としての)肛門外口から多少離れた位置にある。つまり、肛門外口から上流方向に向かって、結腸と肛門の吻合は、肛門外口から1cmから3cmの距離、結腸と直腸の吻合は、4cmから10cmの距離、結腸と結腸の吻合は、肛門外口から11cmから20cmの距離になる。このため、肛門外口から最も遠い位置にあるタイプの、結腸と結腸との吻合部まで到達させるために、チューブ8の長さを最長25cmとしている。より肛門外口に近い吻合の場合、チューブ全体を挿入する必要はない。チューブ8の正確な位置決めは、常にオペレータが視覚的に制御しながらおこなわれる。
【0102】
いったん保護チューブの遠位端を、吻合部の上流数センチの地点まで送りこんだら、外傷防止コーンを引き抜いて、保護チューブの内腔を空にする。その後、導入管4を保護チューブの内腔に挿入する。保護チューブ8は、その半硬質性により、吻合部が導入管4と擦れるのを防止する。導入管が腸内の上流側に深く入れば入るほど、腸壁への摩擦が大きくなり、オペレータによって導入管に加えられる圧力が大きくなる。消化管腔の抵抗係数は、その内壁により、さらに腸の収縮により、無視できない程度のものである。このことは、導入管4の引き抜きにも同様に当てはまる。
【0103】
実際的には、いったん吻合がおこなわれると、棒83を使って、外傷防止コーン82を備えたチューブ8をつかみ、肛門外口を通してチューブ全体を腸内に挿入する。保護チューブ8を、吻合部5の先の腸12の上流側まで押し込む。チューブ8の遠位端が8の位置に来ると、棒83が肛門外縁に接触し、オペレータが手でその位置に保持する。チューブ8よりやや小径の外傷防止コーン82を引き抜く。その後、保護チューブのラッパ状の開口84を介して導入管4を挿入し、保護チューブ内に押し込む。これに続く工程は、導入管4の使用に関して上述したのと同じようにおこなわれる。導入管4の操作中におこなわれる一連の操作はすべて、保護チューブ8を介しておこなわれ、その際、保護チューブは、吻合部を保護する防壁となって、損傷を回避する。導入管4を完全に引き抜いた後、今度は保護チューブを引き抜く。
【0104】
特定形状の終端部2bのおかげで、ステント2は腸管腔を容易に進むことができる。しかし、吻合領域では、腸の2つの端部の接合部において狭窄を生じることが多いため、その両側にある腸よりも小径になっている。この狭窄は吻合部の治癒により起こる。このように狭窄が起こると、ステント2が吻合部を通過するのを妨げる可能性があり、極端な場合、この部位でのステントの閉塞を引き起こすことになる。シース3の近位部に牽引力をかけるという操作によって、常にステントを移動しやすくすることはできるが、時にはこれだけでは不十分な場合もある。このような場合は、1つの保護チューブ8の助けを借りて、ステントを通過しやすくしたり、極端な場合は、ステントを再び開通させることもできる。
【0105】
これは、上述した保護チューブ8と同様、仙椎や腸と同様に彎曲した半硬質の円筒形チューブであるが、肛門外口から吻合部5の上流側まで延びている。その一端、すなわち近位端は、肛門外縁の構造に合わせてラッパ状になっている。しかし、その内径は、径方向に収縮した状態のアンカー部材またはステントより少なくとも大きい。その長さは、導入管4を配置するための保護チューブの長さと同じである。
【0106】
このチューブの操作には、X線透視による制御下での吻合部位の特定が必要である。吻合をおこなうために使用したクリップの存在と、X線不透過マークを付けたステントの存在によって、この部位を簡単に見つけることができる。
【0107】
シース3の下流端が吻合部5の下流側に到達すると、シース3の下流端は、チューブ8の遠位端からチューブの内腔に挿入される。シースは、保護チューブの近位端から外に引き出される。保護チューブ8は、ガイドワイヤーとして機能するシース3に沿って徐々に滑っていく。保護チューブ8は、肛門管を通って大腸へと入る。オペレータは、ステントの下流端に接触するまでチューブを押して、そこに固定する。シースの下流端を徐々に引く。ステントにつながれたシースの上流端は、チューブの遠位側の内腔に入る。シースの下流端に牽引力をかけ続ける。ステントの下流端は、シースの上流端に従って引っ張られる。ステントには収縮性があるため、チューブの内径に合わせて、チューブの遠位端側の内腔に入ることができる。チューブの内径は、導入管の内径以上である。下流側のシースを牽引し続けることにより、ステントをチューブ8内に完全に入れることができる。その後、ステントとシースを収容したチューブ8全体を、肛門管を通じて引き抜く。
【0108】
図11は、本発明に係る装置の好ましい形態を示している。この装置において、シース3は、部分的にしかステント2を覆っていないが、その円錐形の下流端部全体を覆っており、シース3とステント2との連結は、特定形状の領域2bの上流端より上流側の、長さ約3mmから30mm、好ましくは5mmから15mmの領域2cを含む、円錐形端部の上流から始まっている。
【0109】
らせん状のワイヤーメッシュでできているステント2は、シリコーン・コーティング24で覆われており、そのシリコーン・コーティング24は、前記シースより薄いとともに、前記シースより大きな径方向および長手方向の変形性を前記ステントに付与する。従って、ステントが吻合部の上流側で動かなくなり、ステントの展開、および/または吻合部を通る移動ができなくなった場合は、前記シースの近位端を手で牽引して、その直径を小さくし、ステントの残りの部分を延ばすよう変形させることで、吻合部を通過しやすくすることができる。
【0110】
ステント2は、その両端それぞれに、長さ約10mmの、好ましくはステントと同じ材料からできた、「ラッソ(lasso)」という糸状の延長部材を有していることがより好ましい。その場合、既知の方法、すなわち、結腸鏡や直腸鏡といった市販されている器具を使って、ステントの下流端のラッソを牽引することにより、容易にステントの直径を小さくし、軸方向に延ばすことができる。
【0111】
一方、ステントが詰まって動かなくなった場合、やはり既知の方法でステントの上流端のラッソを牽引することにより、ステントの上流端21を上流から下流方向にステントの内部から引いて裏返しにして、ステントが入り込んだ可能性のある腸壁からステントを開放することができる。
【0112】
既知のように、「ラッソ」と呼ばれるステントの糸状端部23は、前記ステントの下流端22または上流端21を構成する周縁部から延びている。
【0113】
別の実施形態では、上述した「ラッソ」と呼ばれる糸状の下流端に加え、または代わりに、ラッソと同様の特性を持つ柔軟性のあるストランドが、ステントの近位(下流)端の周囲に取り付けられ、メッシュの隙間に通されている。この場合、このストランドを牽引すると、シースの始まりとなるステントの近位下流端をほぼ完全に閉鎖することができる。このストランドは、前記シースの中を通って、肛門にある前記シースの近位端まで延びているため、このストランドをつかむのに、必ずしも大腸鏡や直腸鏡を使う必要がない。万一ステントが没入した場合は、ストランドを牽引してステントの近位端を閉鎖すれば、ステントは容易に吻合部を通過できるようになる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、結腸、直腸、または肛門管における吻合部を一時的に保護するための外科用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
よって、本発明の主題は、吻合瘻と呼ばれる分離のリスクを防止または低減するために、腸の一部の2つの端部間に造設された吻合部(結合部)を保護するための装置である。分離が起こると、感染症、膿瘍、腹膜炎を引き起こしかねず、これらはいずれも術後の合併症や死亡の主要原因となっている。
【0003】
従来用いられている手法には、吻合部位の上流側で腸の流れを迂回させるというものがある。つまり、吻合部の上流側にある腸の一部を、腹壁を通じて体外に誘導するものである。これは消化管ストーマと呼ばれる。腸の近くの腹壁に貼り付けた「パウチ」と呼ばれる袋によって、便が腹外で回収される。この手法では、ストーマが必要になるものの、吻合部の上流で便を迂回させることができる。しかしながら、ストーマは、社会的職業上の影響が大きく、局所的な(皮膚や腸の)合併症や全体的合併症(脱水症)を伴う率が高い。そのうえ、6週間から8週間後にはストーマを閉鎖するために新たな外科的処置が必要となり、その際の死亡率も無視できない。最後に、「パウチ」と呼ばれる装置と、ストーマのケアに費用がかかる。
【0004】
ストーマに代わる既知の手法としては、「バイパス」と呼ばれるものがある。この手法では、消化管の迂回はおこなわない。吻合部位は、インターフェイスによって便と接触しないよう保護されている。このインターフェイスは、柔軟性に富んだ(例えば、ビニール製の)チューブで、腸管内に挿入され、吻合すべき部位の上流側の腸管の近位端に、吸収性の糸によって固定されている。チューブの他端は、遠位の腸管内で自在に動くようになっている。その後、吻合をおこなう。吻合部の順調な治癒に必要とされる平均10日が過ぎ、固定用の糸が吸収されると、チューブは、肛門を通じて、便とともに自然に排泄される。
【0005】
この方法が初めて記載されたのは何年も前のことで、COLOSHIELD(登録商標)という装置も1992年から市販されている。実験並びに臨床試験により、この装置の信頼性が確認されている。しかしながら、この製品にはいくつかの欠点があるため、外科スタッフの間で使用されないようになって久しい。
【0006】
COLOSHIELD(登録商標)装置の欠点の一つは、吻合すべき部位の上流側の腸管に装着するという点にある。つまり、腸の内側の面を露出させ、そこに吸収性の糸でチューブを固定するには、腸の近位端を裏返すという操作が必要になる。このような操作は、腸の遠位端とつなぐべき場所で腸がひきつれたり、傷ついたり、裂傷したりする原因となる。この装置のもう一つの欠点は、吻合をおこなう際に自動円形ステープラーを使用できないという点である。結腸直腸の吻合術の80%以上が、この器具を使っておこなわれているにもかかわらずである。
【0007】
国際公開第03/094785(A1)号パンフレットは、円錐形もしくは漏斗形のプラスチック製の永久アンカー部材を開示している。このアンカー部材は、消化管の入口、特に小腸に、永久的に設置された弁を備えているとともに、前記アンカー部材の下流側の小腸の内部に延びる柔軟性のあるシースにつながれている。この装置は肥満治療を目的としたものである。このアンカー部材は、縫合によって永久的に腹部に固定されていなくてはならないため、その外径は、腸管輸送によって腸が膨張したときの外径よりやや大きくなっている。
【0008】
米国特許出願第2008/0208357号明細書は、瘻孔、すなわち、胃腸の吻合部における腸の内容物の漏出を治療する方法を開示している。この方法は、瘻孔または漏出箇所を修復したり塞いだりするための短い柔軟性シースにつながれた、長さ25mmから45mm、直径20mmから40mmの「ステント(stent)」から成るアンカー部材の使用を含む。この「ステント」は、経口で食道に挿入され、食道と胃との接合部にあたる解剖学的狭窄部位の上部に設置される。このように食道に設置された「ステント」は移動してはならないため、食道と胃との接合部にあたる解剖学的狭窄部位の上流に設置することにより、絶対に移動しないようになっている。
【0009】
米国特許出願第2008/0208357号明細書において、シースの長さは、胃に吻合された空腸ループの長さ(およそ60cm)より必然的に短くなっている。上述したように、この装置は必ず経口で挿入しなくてはならない。いったんステントが所定の位置に設置されると、空腸ループにシースが展開されるように、シースをステントの下流側に押さなくてはならない。展開したシースの遠位端と口腔との間の距離は合計で57cmから72cmである。しかし実際的には、このようにシースを押すことによって15cmから30cm以上にシースを展開することはできないであろう。また、シースを押す操作は、瘻孔によって非常に脆くなった部位でおこなわれ、瘻孔の状態を悪化させかねないため、吻合部にとって危険な操作である。
【0010】
最後に、米国特許出願第2008/0208357号明細書において、シースは0.01mmから0.025mmと非常に薄くなっている。このような用途においては、シースが、特に敏感な食道に刺激を与えてはならないからである。しかしながら、その薄さが故に、この種のシースは形状を記憶させておくことができない。ひだができたり、ねじれたりする可能性がある。そのため、上記特許出願は、シースのねじれを防止する円形の金属ワイヤーという形態の装置の使用に関する別の米国特許第7267794号明細書について言及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第03/094785(A1)号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願第2008/0208357号明細書
【特許文献3】米国特許第7267794号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決すべき課題は、結腸における「バイパス」タイプの吻合部を一時的に保護するための装置であって、吻合部を造設した後で所定の位置に挿入され、(縫合、ステープラーといった)手法を問わず、固定のための操作を必要とせず、吻合部の治癒から十分な時間を経て、外科的処置なしで自然に排出される装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、本発明は、結腸、直腸、または肛門管の吻合部を一時的に保護するための外科用装置を提供し、その装置は、
a)一時アンカー部材と呼ばれる半硬質の縦長中空部材であって、その第1壁が、長手方向の軸XXを中心とする回転面を定義し、実質的に円形の断面を有する実質的に円筒形の主部を備え、前記第1壁が、制御下で、
・前記第1壁が径方向に収縮した状態で、最大10mmの縮小外径D1’と、
・前記第1壁の主部が径方向に最大限拡張した状態で、20mmから40mm、好ましくは25mmから33mmの最大外径D1と、の間で、変動可能な外径を有する、一時アンカー部材と、
b)前記アンカー部材の第1壁に対して、好ましくは前記第1壁の回りに固定された、柔軟性のある筒状壁を有するシース、とを備え、
1)前記一時アンカー部材の前記第1壁が、少なくとも50mm、好ましくは70mmから150mmの長さL1を有する、直径の大きい前記主部を含み、
2)前記シースが、静止時において、前記アンカー部材の下流側に少なくとも50cm、好ましくは少なくとも1mの長さL3と、20mmから40mm、好ましくは25mmから33mmの外径とを有するとともに、0.05mmから1mmの壁厚を有する生体適合性エラストマー材料からできていることを特徴とする。
【0014】
前記第1壁が径方向に収縮した状態の外径を縮小外径D’1としたことにより、径方向に収縮した状態の前記アンカー部材を肛門から挿入した後、結腸、直腸、または肛門管の吻合部の上流側の一時留置位置まで結腸内に送り込むことができる。また、前記第1壁が径方向に最大限拡張した状態の外径を最大外径D1としたことにより、腸管輸送がない場合は、腸壁に対して径方向に拡張しようとする力によって、前記アンカー部材を一時的に留置するとともに、再び腸管輸送が始まり、いわゆる「蠕動段階」で腸が収縮、拡張すると、留置を開放して移動を始められるようにできる。
【0015】
前記アンカー部材に関して、
・「半硬質」という表現は、収縮および拡張状態それぞれにおいて、前記アンカー部材の第1壁が、前記回転面を定義する所定の形状を保っているという意味であり、
・「制御下で、変動可能な外径」という表現は、前記第1壁の直径が、温度といったパラメータとは無関係に、装置の使用条件に応じて決定されるような方法、および/または、後述する装着器具、特に「導入管」のような、前記アンカー部材と協働する独立した機械的手段に応じて決定されるような方法で変動可能であるという意味である。
【0016】
前記アンカー部材が以下を採用可能なことは明らかである。すなわち、
・前記アンカー部材を、肛門から腸の吻合部の上流側まで挿入できるように、前記第1壁の縮小外径D’1を、少なくとも静止時の腸の直径より小さい直径、好ましくは10mm未満とすること、および
・前記アンカー部分を、少なくともその一部の径方向の拡張によって腸壁上に支持することにより、一時的に留置することができるように、前記第1壁の径方向に最大限に拡張した外径D1を、静止時の腸の直径以上とすること、および腸管輸送がないとき、特にイレウス(腸閉塞)という術後の腸管麻痺の段階では、前記アンカー部材は腸壁に固定されたままになるが、腸管輸送が再開すると、もはや腸に固定されず、実際的には、腸壁に沿って滑りながら移動し始めるように、直径D1が常に、蠕動段階の腸の最大径より小さくなるようにすること。
【0017】
直径D1を決定する一般的な方法では、外科医によって日常的に用いられている「ブジー(bougie)」と呼ばれる器具を使って、腸の一方の端部の断面を計測する。直径D1を決定する別の方法は、場合によっては、直径D1が機械吻合に用いられるステープラーの直径に等しいとみなすことである。より具体的には、直径D1は、現在市販されているステープラーの外径に対応して、25mmから33mmの範囲で変動可能である。
【0018】
「長手方向の端部」という表現は、長手方向における、前記アンカー部材の端部、または、場合によっては、前記シースの端部である。
【0019】
「静止時の」シースの長さと直径とは、それぞれ、その長手方向および径方向の弾性が作用しないときの長さと直径を意味する。
【0020】
腸管輸送が再開すると、腸の蠕動により前記アンカー部材は開放され、開放されたアンカー部材は移動するが、アンカー部材の径方向への拡張特性により、その外壁は腸の内壁と接触しながら滑り続けることになる。これにより十分に封止ができるため、アンカー部材の外壁と腸の内壁との間を便が通過するのを防止し、吻合部を保護し続けることができる。事実、便はシース内を通過せざるを得ないため、吻合部において、腸壁からうまく分離された状態になる。
【0021】
径方向に拡張した状態の前記アンカー部材の直径の値は、患者によっても異なるが、静止時の腸の直径よりやや大きく、腸管輸送により膨張したときの腸の最大径よりも小さく、30mmから60mmである。また、前記主部の長さは、結腸壁と前記アンカー部材との接触面と、径方向に拡張する力とが相まって、最大限に拡張した状態のアンカー部材が径方向に拡張する力が吻合部の上流側の腸壁に対してかかることによって、前記アンカー部材が一時的に固定された状態になり、腸管輸送が起こらなければ、アンカー部材が留置されてから少なくとも3日、好ましくは5日移動しなくなるような長さである。結腸と接触している主部の長さが少なくとも50mmない場合、固定手段を用いなければ、あるいは、より大きな最大拡張径のアンカー部材を用いなければ、アンカー部材を少なくとも3日間留置させておくことができないが、前者の場合、後で固定手段の機能を停止させて移動させるための手段および/または機能が必要になり、後者の場合、結腸が傷ついたり、腸管輸送の再開時にアンカー部材の自然な開放が妨げられる可能性がある。
【0022】
一方、シースの長さは、吻合部と上流の留置位置との距離を少なくとも50cm、好ましくは1mとれるような長さである。そうすれば、腸管輸送の再開時に、留置位置から吻合部までの移動時間が少なくとも3日、好ましくは少なくとも6日かかるように、また、前記アンカー部材が留置位置にある時、前記シースが吻合部を保護した上でさらに肛門の外に突き出すように、前記アンカー部材を吻合部より十分に上流側の結腸に留置することが可能である。
【0023】
従って、麻痺性イレウスと呼ばれる術後の腸管麻痺期が3日から5日続くことを考えると、アンカー部材がいったん開放されて、吻合部上流の留置位置から吻合部位に移動するのにかかる期間をその3日から5日に足した期間、このようにして吻合部を保護することが可能になる。ただし、この移動時間は、留置位置から吻合部までの通過距離による。実際的には、50cmから1mの距離は、3日から6日の移動時間を反映しているため、吻合部が造設されてから、合計で少なくとも6日から11日間保護されることになる。
【0024】
前記シースはエラストマーからなるため、腸壁と同様、径方向および長手方向への伸縮特性を有していることは明らかであり、この特性は、径方向および長手方向への弾力特性を有するシース形状のエラストマー材料の特性である。シースが持つこのような径方向および長手方向への弾力特性は、結腸壁の特性に似ており、アンカー部材の移動期間中ずっと、すなわち少なくとも6日から10日の間、前記シースの中で正しく腸管輸送をおこなうことができる。
【0025】
エラストマー製シースの長手方向の弾性は、腸の弾性より大きくてもよく、大きくしてもなんら問題はない。それどころか、肛門から突き出しているシースを引っ張ってカットした後、直腸の中を上流方向に戻すことができるという利点がある。
【0026】
径方向の弾性により、径方向に拡張しても、前記シースの長手方向の端部は、前記アンカー部材の端部に固定されたままになる。
【0027】
また、シースの厚さ特性と、その弾性とが相まって、シースに形状記憶特性を付与している。ここで、「形状記憶特性」という表現は、前記シースのエラストマー材料に折りひだができて変形しても、自然と元の形状に戻るということを指している。シースが非常に長いということを考えると、この形状記憶特性は、アンカー部材が開放されて移動している間にシースに折りひだができても、輸送を妨げることなく自然と縦長形状に戻るという、この材料にとって重要な特性である。
【0028】
好ましい実施形態においては、前記第1壁の主部が、前記第1壁の長手方向の上流端から、円筒形の主部より小径の特定形状の下流終端部まで延び、径方向に最大限拡張した状態で、前記第1壁の下流端の外径D2が20mmから35mmであり、前記第1壁の特定形状の終端部の長さL2が10mmから30mm、好ましくは15mmから25mmであり、前記終端部の直径が、前記第1壁の主部から下流端にかけて徐々に小さくなっていることが好ましい。
【0029】
この部位での詰まりを防止するため、アンカー部材の特定形状の下流部分は、通常、吻合部位の上流側および下流側の結腸の直径よりも狭い通路となっている吻合部位を移動しやすくなっている。このように通路が狭くなっているのは、吻合部領域で狭窄を起こしているからである。一方、アンカー部材の特定形状の上流部分では、アンカー部材と腸壁との間で漏出のリスクがある。
【0030】
より具体的には、特定形状の下流終端部の直径は、径方向に最大限拡張した状態の前記主部の直径よりも小径のエラストマー材料からなるリングをはめることにより狭められている。
【0031】
好ましくは、
・前記アンカー部材が、前記の収縮した状態に径方向に圧縮され、径方向の圧縮から開放されると、径方向に最大限拡張した状態をとることができるような、径方向の弾性特性を付与する材質でできており、
・前記シースが、0.1mmから0.5mmの壁厚を有し、径方向および長手方向の弾性特性、形状記憶特性、および非粘着特性を有しているシリコーンまたはポリウレタン・タイプのエラストマー・ベースの生体適合性ポリマー材料からできている。
【0032】
「非粘着特性」という表現は、前記シースのエラストマー材料が、折りひだができたときに相対するシース内壁の2つの面が互いにくっつかないような粘着係数を有しているため、気体や物質の通過の障害にならないということを指している。
【0033】
前記アンカー部材は、後述する「導入管」と呼ばれる器具を使って、径方向に収縮した状態に保持することができ、導入管から離脱した後に、アンカー部材の径方向の拡張が起こる。
【0034】
また、以下のことが明らかである。
・前記シースは、静止時において、径方向に収縮した状態の前記中空状のアンカー部材の縮小外径D’1と実質的に同じ径以上であり、且つ、静止時の腸の直径よりも小さい直径を有し、静止時における前記シースの直径は、静止時の腸壁の直径に実質的に等しいことが好ましいこと、および、
・前記シースは、シースが固定されている前記アンカー部材の端部から下流に向かって、前記吻合部の上流側の留置位置から下流位置までの距離に対応する長さにわたって、好ましくは肛門外口まで、延びていること。
【0035】
より具体的には、前記アンカー部材の第1壁の厚さは、0.5mmから5mm、好ましくは、1mmから3mmである。
【0036】
エラストマー製シースの長手方向の弾性は、腸の弾性より大きくてもよく、大きくしてもなんら問題はない。それどころか、必要に応じて、シースが肛門から突き出している部分を引っ張ってカットした後、直腸または肛門管の中を逆戻りさせることができるという利点がある。
【0037】
前記アンカー部材の第1壁は中実であってもよいし、孔が開いていてもよく、特に細孔または微小孔が開いていてもよい。
【0038】
特定の一実施形態においては、長手方向に延びる中空の一時アンカー部材は、ステント・タイプの経腸用のプロテーゼ(prosthesis)であり、その筒状の壁の、少なくともその外面は、生体適合性の合成材料のコーティング、好ましくはシリコーンまたはポリウレタン・タイプのエラストマーに覆われている。
【0039】
この外面のコーティングは、腸管輸送の再開時に、前記アンカー装置を腸壁に沿って滑らせながら展開を容易にするとともに、留置中は、前記縦長のアンカー部材の拡張から腸壁を保護するという、二重の意味で有利である。これがなければ、アンカー部材が腸壁の細胞内に入り込んで、その後再度開放できなくなり、腸壁に孔が開く可能性がある。
【0040】
このような「ステント」タイプの経腸プロテーゼは、過去20年余にわたって腸の腫瘍、主に食道、十二指腸、結腸の腫瘍性狭窄(狭くなること)の緩和治療に用いられてきた。このようなプロテーゼは、本発明のように腸の吻合部を保護するための装置を一時的に留置しておくことを意図したものではなかった。言い換えると、柔軟性のあるスリーブに取り付けられた経腸プロテーゼ、すなわち、消化管の吻合部を保護するために、上述した寸法特性、とりわけ弾性特性を有することを意図したアセンブリは、これまで全く提案されていなかった。
【0041】
前記一時アンカー部材は経腸プロテーゼであることが好ましく、その第1壁が、金属またはエラストマー、とりわけシリコーン・ベースのエラストマー材料でできたワイヤーのらせん状メッシュからなり、前記メッシュを覆う生体適合性合成材料の層でコートされていることが好ましく、前記コーティングは、好ましくはシリコーンといった生体適合性エラストマー材料である。
【0042】
既知のように、金属ワイヤーの交差角度を変えることによって、らせん状ワイヤーメッシュの菱形もしくは平行四辺形の幅が変化し、その結果径方向に拡張する。
【0043】
アンカー部材が、周囲温度20℃以上の温度でのみ、特に人間の体温でのみ、径方向の弾性による拡張を付与する材料からできているということが有利であり、前記アンカー部材は、上記周囲温度以下の温度で、好ましくは5℃以下の温度では、径方向に収縮した状態にある。筒状の材料が、周囲温度に応じて自動的にその直径を変化させることは明らかである。
【0044】
さらに具体的には、前記アンカー部材は経腸プロテーゼであり、その第1壁は、らせん状ワイヤーメッシュ、好ましくはニチノール製ワイヤーメッシュで形成されている。
【0045】
ニチノールは、周囲温度(25℃)以上の温度で、温度に応じて徐々に径方向に拡張する性質を持った金属合金であり、これより低い温度、特に4℃で保存すると、収縮した形状を保つことができる。いったん低温で収縮すると、導入管内に収まって、その導入管を使って腸内送り込まれるのに十分な時間、収縮した状態のままになる。いったん腸内で開放されると、より高い周囲温度、すなわち人間の体温の影響により、プロテーゼは、径方向に徐々に拡張する。
【0046】
特定の一実施形態においては、前記シースとアンカー部材との連結は、前記シースの端部が、少なくとも縦長中空部材の長手方向の端部の表面に密着して、弾性的に覆うようにしてなされている。
【0047】
実施形態の好ましい変形例では、前記シースは、前記アンカー部材の外面、少なくとも前記アンカー部材の下流端の外面に密着して、弾性的に覆っている。このように、前記シースはコーティング機能を有しており、場合によっては、アンカー部材のメッシュを覆う。
【0048】
上記2つの実施形態では、シースの製作のために、場合によってはアンカー部材に沿って、中実の成形用チューブをポリマー組成物の槽に漬すことにより、チューブ上にポリマー材を成形する方法を使用することもできる。このとき、前記縦長中空部材は、中実の成形チューブを漬す前に、そのチューブに嵌めておく。
【0049】
エラストマー製シースに径方向の拡張特性を付与するためには、その厚さ(0.05mmから0.4mm)を考慮すると、一定の硬度と、接着性(粘着係数)、および形状記憶性(圧縮時残留変形度(DRC))を有するエラストマー組成物を使用する必要があるが、これら特性について選択すべき値については後述する。
【0050】
より具体的には、前記シースは、好ましくはシリコーンおよび/またはポリウレタン・タイプの、エラストマー・ベースの生体適合性ポリマー材料からできており、以下の特性を有する。
・ショアA硬度5から95、好ましくは50から70、
・圧縮時残留変形度(DRC)10%から35%、好ましくは17%から23%、および
・摩擦係数0.30から0.90、好ましくは0.35から0.45。
【0051】
「硬度」という用語は、エラストマーの弾性変形のエネルギーを指し、ここでは、例えばDIN 53505規格によるショアA硬度で表される。
【0052】
「圧縮時残留変形度(DRC)」という用語は、DIN 53517 ISO 815B規格で規定された試験方法による、エラストマー試料への負荷を解除してから一定時間後の残留変形度を指す。これは、例えば、折り曲げ時の形状記憶特性であり、その材料を折り曲げた圧縮が開放されるとすぐに元の形状にもどる材料のことである。
【0053】
「摩擦係数」は、例えば、ASTM D1894規格に従って計測すればよい。
【0054】
摩擦係数が上記の値のとき、シース内壁の相対する2つの面が互いに接触しても付着しないようにできる。これは、第1に、シース内を気体や物質が抵抗無く通過できるようにするためであり、第2に、シースが折れ曲がっても、孔が塞がらないようにするためである。
【0055】
さらに具体的には、前記シースは、少なくとも以下の化合物を含むシリコーン・ベースの生体適合性ポリマー材料からできている。
・液状シリコーンゴム(「LSR」)グレードもしくは品質のエラストマー75wt%から95wt%、
・「RTV」グレードもしくは品質のエラストマー2.5wt%から12.5wt%、および
・「ゲル」グレードもしくは品質のエラストマー2.5wt%から12.5wt%。
【0056】
グレードの異なるエラストマー(「LSR」、「RTV」、「ゲル」)を組み合わせることで、次のような利点がある。
・LSRグレードもしくは品質のエラストマーは、耐引裂性をもたらす、
・RTVグレードもしくは品質のエラストマーは、径方向および長手方向の弾性特性をもたらす、および
・ゲルグレードもしくは品質のエラストマーは、低い粘着係数(非粘着性)をもたらす。
【0057】
好ましい実施形態においては、前記アンカー部材は、少なくともその外面が、シリコーンまたはポリウレタン・タイプの合成エラストマー材料のコーティングで覆われた、ステント・タイプの経腸プロテーゼであり、前記エラストマーのコーティングは、前記シースのエラストマー材料よりも柔軟性があり、前記シースとアンカー部材との連結が、少なくとも徐々に径が縮小する特定形状の下流端を含む前記アンカー部材の長さの一部分のみを覆っている前記シースによってなされている。
【0058】
エラストマー、特にシリコーン・ベースのエラストマーでコートされたステント・タイプの経腸プロテーゼは、既知であり、市販されている。
【0059】
このように、ステントを覆うエラストマーのコーティングは、シースのエラストマーより径方向および長手方向の変形性が高い。つまり、ステントのエラストマー・コーティングは、必要に応じて種類の異なるシリコーンの混合物から構成され、そのうちRTVグレードの重量含有率はシースのエラストマーよりも高いが、上述した2.5wt%から12.5wt%の範囲内である。
【0060】
以下に説明するが、本実施形態では、シースに牽引力をかけてステントの直径を狭め、軸方向に伸ばすことにより、腸からステントを引き離し、前記アンカー部材を開放して、吻合部を移動しやすくしている。
【0061】
また、既知の「ラッソ(lasso)」という細長い糸状の部材をその端部に備えた、ステント・タイプのアンカー部材を使用すると有利である。このような部材を使用すると、当業者にとって既知のやり方で、場合によっては結腸鏡といった器具を用いて、ステント・タイプのアンカー部材の端部に牽引力をかけることができるため、必要に応じてアンカー部材を容易に開放および/または吻合部位を通って移動させ、その領域での詰まりを防止することができる。
【0062】
前記シースのポリマー材料は、チューブの長手方向に配置した、X線を通さない、特に硫酸バリウム製のフィラメントを複数含んでいると有利である。
【0063】
このようなフィラメントにより、シースの排出時に、その初期位置や移動過程をモニタしたり、シースの移動を追跡したりすることができる。また、このようなフィラメントを長手方向に配置すると、シースは伸びが抑えられると同時に、例えば大腸と比べて長手方向の弾性が高すぎるかもしれない場合に、その弾性を低下させる(上記参照)。
【0064】
シースの上流端から昇順に目盛りが付けられていると有利である。
【0065】
より具体的には、その一方の端部にハンドルを備え、その内部に、収縮した状態の前記アンカー部材と前記シースとを、好ましくは長手方向に展開した状態で、収容することのできる内径と長さを有した、既知のカテーテル・タイプの半硬質ガイドチューブで、前記導入管が構成されていてもよい。
【0066】
しかしながら、前記装置は、
(1)筒状の外被であって、その遠位端の内部に、前記収縮状態に圧縮されたアンカー部材を収容、保持できるようになっており、前記シースをも収容するのに十分なほど長く、好ましくは少なくとも110cm、好ましくは少なくとも150cmの長さを有する筒状外被と、
(2)前記導入管の遠位端を、肛門外口から吻合部の上流側にある腸内の前記留置位置まで送り込む手段と、
(3)好ましくは、前記外被から前記アンカー部材を取り外すための手段であって、好ましくは、前記アンカー部材の長手方向の端部と必要に応じて接触しているストッパーを、その遠位端に備えた緩衝チューブから構成され、前記アンカー部材の下流側の前記シースが、その外被の内部の前記緩衝チューブをとり囲んでいる、手段
とを含む導入管をさらに含むことが好ましい。
【0067】
外被が収縮し、次に緩衝チューブが収縮することにより、シースを展開するのに追加の外科手術を必要とせずに、アンカー部材の下流側にシースを完璧に展開することができる。
【0068】
本発明の装置は、以下の保護チューブを備えることがさらに好ましい。すなわち、好ましくは20mmから40mmの外径と、10cmから25cmの長さを有する保護チューブであって、仙椎後彎に応じた彎曲形状の部分を含み、前記導入管の外被よりも硬く、前記保護チューブが肛門外口から挿入され、肛門外口から前記吻合部の上流まで延びるような外径と長さを有し、前記保護チューブが前記導入管を収容して、肛門外口から前記吻合部まで送り込むことができるような、前記仙椎後彎に応じた内径と彎曲を有する保護チューブを備える。
【0069】
本発明によれば、以下の連続した工程を実行することにより、吻合部の瘻孔のリスクを防止または軽減するために、大腸もしくは結腸、直腸、または肛門の吻合部を一時的に保護するための本発明の外科用装置を用いた外科的治療を採用することができる。すなわち、
1)前記外科用装置を肛門から挿入し、吻合部位上流の留置位置まで送りこむ。前記アンカー部材は、径方向に収縮して直径D’1の状態で保持され、導入管と呼ばれる器具を使用して送り込まれ、前記エラストマー・シースの長さは、留置位置と肛門外口との距離以上である。
2)導入管が前記留置位置まで送り込まれたら、前記アンカー部材から切り離し、前記アンカー部材が径方向に最大限拡張した状態で、腸壁に対して留置姿勢をとれるようにする。
【0070】
前記留置位置と前記吻合部との距離は、腸管輸送の再開によりアンカー部材が腸壁から開放されて移動し始めてから、少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間進む距離以上であることが好ましい。
【0071】
より具体的には、吻合部と留置位置との距離は、少なくとも50cm、好ましくは少なくとも1mである。
【0072】
さらに具体的には、腸管輸送が再開しない場合、前記アンカー部材は、留置されてから少なくとも3日間、好ましくは5日間、前記留置位置に留置されたままとなる。
【0073】
従って、麻痺性イレウスと呼ばれる術後の腸管麻痺期が3日から5日続くことを考えると、アンカー部材がいったん開放されて、吻合部上流の留置位置から吻合部位に移動するのにかかる期間をその3日から5日に足した期間、このようにして吻合部を保護することが可能になる。ただし、この移動時間は、留置位置から吻合部までの通過距離による。実際的には、50cmから1mの距離は、3日から6日の移動時間を反映しているため、吻合部が造設されてから、合計で6日から11日間保護されることになる。
【0074】
前記導入管は、半硬質の保護チューブの中に押し込むようにして挿入することが好ましい。前記保護チューブは、好ましくは20mmから40mmの外径と、10cmから25cmの長さを有するチューブであって、仙椎後彎に応じた彎曲形状の部分を含み、前記導入管の外被よりも硬い。また、前記保護チューブは、肛門外口から導入され、肛門外口から前記吻合部の上流地点まで延びるような外径と長さを有しているとともに、前記導入管を収容して、肛門外口から前記吻合部まで送り込むことができるような、前記仙椎後彎に応じた内径と彎曲を有し、前記吻合部から肛門外口にかけて延びている。
【0075】
アンカー部材がいったん前記腸壁から開放されると、腸管輸送によって、保護チューブ内に回収されることがさらに好ましい。前記保護チューブは、好ましくは20mmから40mmの外径と、10cmから25cmの長さを有するチューブであって、仙椎後彎に応じた半硬質の彎曲形状の部分を含み、前記導入管の外被よりも硬い。また、前記保護チューブは、肛門外口から導入され、肛門外口から前記吻合部の上流まで延びるような外径と長さを有しているとともに、前記導入管を収容して、肛門外口から前記吻合部まで送り込むことができるような、前記仙椎後彎に応じた内径と彎曲を有し、前記吻合部から肛門外口にかけて延びている。
【0076】
本発明の他の特徴および利点は、図1から11を参照して以下に詳細に説明することによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、本発明に係る装置を概略的に示している。
【図2】本発明に係る装置の一実施形態の縦断面図であり、円筒状の主部より小径の、特定形状のアンカー部材の下流終端部2bを示している。
【図3】図3は、消化器系の概略図であり、吻合部5を示している。
【図4】図4は、導入管4を介して設置位置まで送り込まれた本発明に係る装置の概略図であり、アンカー部材2は、導入管の外に出て、径方向に収縮した状態にあり、シース3は、まだ導入管の中に収容されている。
【図5】図5は、留置位置にある本発明に係る装置を示しており、アンカー部材は、径方向に最大限拡張した状態で腸壁に固定されている。
【図6】図6は、留置位置にあって吻合部を保護する本発明の装置を概略的に示しており、シース3は、アンカー部材2の下流側に展開している。
【図7】図7Aおよび7Bは、排出蠕動により移動中(図7A)、および排出終了時点(図7B)の、本発明に係る装置を示している。
【図8】図8は、本発明に係る導入管を示している。
【図9】図9は、本発明に係る保護チューブを示している。
【図10】図10は、仙椎後彎部において保護チューブに通された、本発明に係る導入管を示している。
【図11】図11は、本発明に係る装置の好ましい実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1は、
・径方向に最大限拡張した状態にある、以下に説明するタイプの経腸プロテーゼからなるアンカー部材2と、
・円筒形の経腸プロテーゼの下流端に取り付けられ、アンカー部材2の少なくとも2倍の長さL3にわたって延びる柔軟なシリコーン製シース3、
とを備える本発明に係る外科用装置を示している。
【0079】
プロテーゼ2は、特にニチノールからできた「ステント」という既知の装置であり、その物性は、当業者にとって既知である。ステントとは、温度に応じて制御された径方向の拡張特性を持つ小さなチューブである。より正確には、約20℃を上回る温度になると、徐々に径方向に拡張する。この部材は、1つまたは複数のシリコーン層で全体をコートされた、らせん状のニチノールワイヤーのメッシュにより形成されている。
【0080】
図2は、アンカー部材または「ステント」2の好ましい変形例を示している。このアンカー部材において、前記第1壁の主部2aは、その第1壁の長手方向の上流端21から、円筒状の主部より小径の特定形状の下流終端部2bまで延びている。径方向に最大限拡張した状態の円筒状の主部の直径D1は、約32mmである。経方向に最大限拡張した状態の第1壁の下流端22の直径D2は、約24mmである。円筒状の主部の長さL1は、約70mmである。特定形状の終端部2bの長さL2は、約20mmである。前記終端部2bの直径は、前記主部2aの下流端22から第1壁の下流端22にかけて徐々に小さくなっている。
【0081】
より正確には、特定形状の下流終端部2bの直径は、径方向に最大限拡張した状態の前記主部の直径よりも小径のエラストマー材料のリング31を周りにはめることにより、狭められている。
【0082】
収縮した状態では、このプロテーゼ2は、直径が3mmから8mmの範囲となってもよい。
【0083】
シース3は、弾性リング31同様、シリコーンまたはポリウレタン・ベースの生体適合性エラストマー材料でできている。
【0084】
図2に示された実施形態において、シースの上流端は、シースを構成するエラストマーに埋め込まれたアンカー部材2を、その長さ全体にわたって覆っており、これにより、シースとアンカー部材2とを確実に連結しつつ、前記アンカー部材2の外面全体をコートできる。
【0085】
前記シースは、静止時において、前記アンカー部材の下流側に少なくとも50cm、好ましくは少なくとも1mの長さと、26mmから33mmの直径D2と、0.1mmから0.5mmの壁厚とを有している。
【0086】
この少なくとも50cm、好ましくは1mという長さによって、吻合部5から上流側に、それぞれ少なくとも50cmの位置、または少なくとも約1mの位置に、アンカー部材2の配置場所7を置くことを想定することが可能になる。
【0087】
上述したように、シース3は、「LSR」、「RTV」、「ゲル」という違ったタイプのシリコーンの混合物を使って得られる。
【0088】
外科医は、一般的な手法、多くの場合ステープラーを用いて、吻合をおこなう。吻合が完了したら、助手が導入管を挿入する。
【0089】
図3は、腸の様々な部分、すなわち、直腸11、肛門管10、下行結腸12、横行結腸13、上行結腸14、小腸15、胃16,および食道17を示している。
【0090】
腸の摘出部分の2つの端部6aおよび6bと、吻合部を構成するこれら2つの端部の接合部5が示されている。
【0091】
図4は、本発明に係る装置の挿入の様子を示している。直径3mmから8mmで長さ70cmから220cmの変形可能な半硬質プラスチック製チューブからなり、アンカー部材が収縮状態で挿入されている導入管4を介して、この装置は、収縮状態2Aで挿入される。前記シースは、導入管のガイドチューブ内において、アンカー部材の下流に位置している。いったん導入管のガイドチューブが配置位置7、例えば吻合部5の上流約1mの地点に到達すると、アンカー部材は、導入管の端部から外に出て、図5に示す拡張状態2Bになる。なお、アンカー部材を導入管に挿入してから、配置位置7まで送りこむのに必要な時間は、実際的には、その後体内で受ける温度上昇によって、前記アンカー部材が径方向に拡張する時間より短い。
【0092】
図6は、導入管4を引き抜いた後にシース3を展開した、完全な状態の装置を示している。シース3は、配置位置7から肛門外口10まで延びている。
【0093】
ステントは、最初は導入管の中で閉じた状態で収容されており、その直径は非常に小さく、特に3mmから8mmである。ステントは、吻合部5を通過した後、腸の上流12へと入っていく。外科医は、腸壁越しに導入管を触診し、ステントの拡張を視覚的に確認しながら、導入管4の進み具合と適切な配置場所とを判断する。腸管内に開放されたステントは、徐々に最終的な直径になる。外科医が腸壁越しにステントを手で挟むことによって、ステントをしかるべき場所で一時的に保持してもよい。その後、導入管を引き抜く。導入管4を引き抜くと、シース3は自然と徐々に展開していく。導入管が吻合部、肛門外口10へと順方向に戻ってゆき、シース3を完全に開放する。平均4日から6日が過ぎると、腸の収縮効果により、このステント/スリーブ・アセンブリは、上流の留置位置から肛門外口10に向かって徐々に移動する。この留置位置は、吻合部より十分に上流、好ましくは、腸の長さにして少なくとも1m上流で、ステントが、腸管輸送の再開後5日から6日後に肛門外口に到達し、その後、図7Aおよび図7Bに示すように、装置が便と共に排出されるような位置である。
【0094】
図8は、導入管4の一例を示している。その導入管4は、以下を含む。
・まっすぐな筒状の外被41であって、導入管を肛門外口から腸内に送り込む際に、腸の輪郭に沿って彎曲するように、半硬質の材料でできている、外被。この外被は、吻合部における腸壁よりも小さい20mmから40mmの外径を有し、また、収縮状態に圧縮されている前記アンカー部材2と、アンカー部材の後ろに、実際的には100mmから150mmの長さで延びている前記シースとを収容できるような内径と長さを有している。
・前記外被内に軸方向に配置された緩衝チューブ44であって、その遠位端が、径方向の拡張によって前記外被41の遠位端に固定されている前記アンカー部材に接触しているストッパー45を備えている、緩衝チューブ。この緩衝チューブは、アンカー部材の下流端に固定されているシース3を収容するよう、外被の内径よりもやや小さい直径を有し、前記シースは前記緩衝チューブ41を取り囲んでいる。外被を引き抜くと、緩衝チューブがアンカー部材を保持するため、アンカー部材が外被と一緒に引き抜かれることはなく、アンカー部材は外に出て、腸壁に対して径方向に展開する。
・緩衝チューブの軸、および外被に収容され、収縮した状態のアンカー部材の軸に沿って挿入された柔軟性のあるガイドワイヤー42。このガイドワイヤーの遠位端は、挿入時に外傷をつけないよう「J」字型になっている。ガイドワイヤーは、金属または合成材料でできていてもよい。
・ガイドワイヤー42を通すために軸方向に孔をあけた外傷防止コーン43。このコーン43は、外被の内径よりも大きな直径を有し、導入管が腸内を進みやすいように、外被の下流側に配置されている。
【0095】
プロテーゼは以下のように配置される。
1)ガイドワイヤーをアンカー部材の留置位置まで腸内に挿入する。
2)肛門外口の外で、外傷防止コーンの孔、アンカー部材の軸管、そして導入管の軸上の緩衝チューブへと、プロテーゼの近位端を挿入していく。
3)腸内のガイドワイヤーに沿って、導入管の外被の遠位端を押すと、外傷防止コーンが押されて吻合部の上流側の留置位置に到達する。
4)ガイドワイヤー42を引き抜く。
5)アンカー部材が開放されないよう緩衝チューブ44を保持しながら、外被41を部分的に引き抜く。
6)緩衝チューブおよび外傷防止コーン43と一緒に、外被を完全に引き抜く。
【0096】
本発明によれば、本装置は、瘻孔の生じない吻合のための予防策として用いられる。しかしながら、導入管4を用いた装置1の配置には、装置の挿入時に吻合部を傷つけてしまうという潜在的危険性がある操作を伴う。この危険性を回避するため、保護チューブと呼ばれる半硬質チューブ8の使用が有利である。
【0097】
保護チューブ8は、装置を配置している間、すなわち導入管4を挿入している間一時的に吻合部を保護するものである。従って、保護チューブ8は、導入管4の配置、操作の前に配置される。いったん吻合がおこなわれると、まず最初に保護チューブが挿入される。
【0098】
この保護チューブ8は、導入管4より硬く、導入管4を挿入中に腸壁を変形させることがないよう、腸壁を保護する。
【0099】
保護チューブ8の彎曲形状により、腸の曲線に合致させることができる。この保護チューブは、当業者が仙椎後彎と言う、脊柱下端の彎曲と似た彎曲中央部8aを有している。このような彎曲は、ステープラー装置に見ることができる。このチューブ8の両端は開口している。保護チューブ8の近位端84はラッパ状に広がっており、肛門外口の外縁の解剖学的形状と合致させることができる。同じく近位端は、その外面に、チューブをつかむのに用いるやや傾斜したまっすぐな棒85を備えている。チューブ8の遠位端は、肛門外口への挿入後、吻合部5の上流地点まで送りこめるように、ラッパ状にはなっていない。この目的のために、チューブ8のラッパ状になっていないほうの端部は、保護チューブ内腔に置かれた棒83に付いている外傷防止コーン82により、可逆的に塞がれていることが好ましい。この外傷防止コーン82は、保護チューブ8の挿入時に腸を傷つけないようにするためのものである。
【0100】
保護チューブ8は、肛門外口と吻合部との距離に少なくとも対応する長さ、実際的には少なくとも5cmから25cmの長さと、吻合部における腸の外径以下の外径を有し、実際的には吻合のために用いられるステープラーの直径以下の外径、すなわち10mmから40mm、好ましくは20mmから30mmの外径を有する。保護チューブの内径は、導入管4が貫通できるように、導入管の直径以上である。
【0101】
実際的には、吻合には、結腸と結腸、結腸と直腸、および結腸と肛門管、の3種類がある。吻合の種類にもよるが、腸の2つの端部をつなぐ接合部位は、(この場合、基準点としての)肛門外口から多少離れた位置にある。つまり、肛門外口から上流方向に向かって、結腸と肛門の吻合は、肛門外口から1cmから3cmの距離、結腸と直腸の吻合は、4cmから10cmの距離、結腸と結腸の吻合は、肛門外口から11cmから20cmの距離になる。このため、肛門外口から最も遠い位置にあるタイプの、結腸と結腸との吻合部まで到達させるために、チューブ8の長さを最長25cmとしている。より肛門外口に近い吻合の場合、チューブ全体を挿入する必要はない。チューブ8の正確な位置決めは、常にオペレータが視覚的に制御しながらおこなわれる。
【0102】
いったん保護チューブの遠位端を、吻合部の上流数センチの地点まで送りこんだら、外傷防止コーンを引き抜いて、保護チューブの内腔を空にする。その後、導入管4を保護チューブの内腔に挿入する。保護チューブ8は、その半硬質性により、吻合部が導入管4と擦れるのを防止する。導入管が腸内の上流側に深く入れば入るほど、腸壁への摩擦が大きくなり、オペレータによって導入管に加えられる圧力が大きくなる。消化管腔の抵抗係数は、その内壁により、さらに腸の収縮により、無視できない程度のものである。このことは、導入管4の引き抜きにも同様に当てはまる。
【0103】
実際的には、いったん吻合がおこなわれると、棒83を使って、外傷防止コーン82を備えたチューブ8をつかみ、肛門外口を通してチューブ全体を腸内に挿入する。保護チューブ8を、吻合部5の先の腸12の上流側まで押し込む。チューブ8の遠位端が8の位置に来ると、棒83が肛門外縁に接触し、オペレータが手でその位置に保持する。チューブ8よりやや小径の外傷防止コーン82を引き抜く。その後、保護チューブのラッパ状の開口84を介して導入管4を挿入し、保護チューブ内に押し込む。これに続く工程は、導入管4の使用に関して上述したのと同じようにおこなわれる。導入管4の操作中におこなわれる一連の操作はすべて、保護チューブ8を介しておこなわれ、その際、保護チューブは、吻合部を保護する防壁となって、損傷を回避する。導入管4を完全に引き抜いた後、今度は保護チューブを引き抜く。
【0104】
特定形状の終端部2bのおかげで、ステント2は腸管腔を容易に進むことができる。しかし、吻合領域では、腸の2つの端部の接合部において狭窄を生じることが多いため、その両側にある腸よりも小径になっている。この狭窄は吻合部の治癒により起こる。このように狭窄が起こると、ステント2が吻合部を通過するのを妨げる可能性があり、極端な場合、この部位でのステントの閉塞を引き起こすことになる。シース3の近位部に牽引力をかけるという操作によって、常にステントを移動しやすくすることはできるが、時にはこれだけでは不十分な場合もある。このような場合は、1つの保護チューブ8の助けを借りて、ステントを通過しやすくしたり、極端な場合は、ステントを再び開通させることもできる。
【0105】
これは、上述した保護チューブ8と同様、仙椎や腸と同様に彎曲した半硬質の円筒形チューブであるが、肛門外口から吻合部5の上流側まで延びている。その一端、すなわち近位端は、肛門外縁の構造に合わせてラッパ状になっている。しかし、その内径は、径方向に収縮した状態のアンカー部材またはステントより少なくとも大きい。その長さは、導入管4を配置するための保護チューブの長さと同じである。
【0106】
このチューブの操作には、X線透視による制御下での吻合部位の特定が必要である。吻合をおこなうために使用したクリップの存在と、X線不透過マークを付けたステントの存在によって、この部位を簡単に見つけることができる。
【0107】
シース3の下流端が吻合部5の下流側に到達すると、シース3の下流端は、チューブ8の遠位端からチューブの内腔に挿入される。シースは、保護チューブの近位端から外に引き出される。保護チューブ8は、ガイドワイヤーとして機能するシース3に沿って徐々に滑っていく。保護チューブ8は、肛門管を通って大腸へと入る。オペレータは、ステントの下流端に接触するまでチューブを押して、そこに固定する。シースの下流端を徐々に引く。ステントにつながれたシースの上流端は、チューブの遠位側の内腔に入る。シースの下流端に牽引力をかけ続ける。ステントの下流端は、シースの上流端に従って引っ張られる。ステントには収縮性があるため、チューブの内径に合わせて、チューブの遠位端側の内腔に入ることができる。チューブの内径は、導入管の内径以上である。下流側のシースを牽引し続けることにより、ステントをチューブ8内に完全に入れることができる。その後、ステントとシースを収容したチューブ8全体を、肛門管を通じて引き抜く。
【0108】
図11は、本発明に係る装置の好ましい形態を示している。この装置において、シース3は、部分的にしかステント2を覆っていないが、その円錐形の下流端部全体を覆っており、シース3とステント2との連結は、特定形状の領域2bの上流端より上流側の、長さ約3mmから30mm、好ましくは5mmから15mmの領域2cを含む、円錐形端部の上流から始まっている。
【0109】
らせん状のワイヤーメッシュでできているステント2は、シリコーン・コーティング24で覆われており、そのシリコーン・コーティング24は、前記シースより薄いとともに、前記シースより大きな径方向および長手方向の変形性を前記ステントに付与する。従って、ステントが吻合部の上流側で動かなくなり、ステントの展開、および/または吻合部を通る移動ができなくなった場合は、前記シースの近位端を手で牽引して、その直径を小さくし、ステントの残りの部分を延ばすよう変形させることで、吻合部を通過しやすくすることができる。
【0110】
ステント2は、その両端それぞれに、長さ約10mmの、好ましくはステントと同じ材料からできた、「ラッソ(lasso)」という糸状の延長部材を有していることがより好ましい。その場合、既知の方法、すなわち、結腸鏡や直腸鏡といった市販されている器具を使って、ステントの下流端のラッソを牽引することにより、容易にステントの直径を小さくし、軸方向に延ばすことができる。
【0111】
一方、ステントが詰まって動かなくなった場合、やはり既知の方法でステントの上流端のラッソを牽引することにより、ステントの上流端21を上流から下流方向にステントの内部から引いて裏返しにして、ステントが入り込んだ可能性のある腸壁からステントを開放することができる。
【0112】
既知のように、「ラッソ」と呼ばれるステントの糸状端部23は、前記ステントの下流端22または上流端21を構成する周縁部から延びている。
【0113】
別の実施形態では、上述した「ラッソ」と呼ばれる糸状の下流端に加え、または代わりに、ラッソと同様の特性を持つ柔軟性のあるストランドが、ステントの近位(下流)端の周囲に取り付けられ、メッシュの隙間に通されている。この場合、このストランドを牽引すると、シースの始まりとなるステントの近位下流端をほぼ完全に閉鎖することができる。このストランドは、前記シースの中を通って、肛門にある前記シースの近位端まで延びているため、このストランドをつかむのに、必ずしも大腸鏡や直腸鏡を使う必要がない。万一ステントが没入した場合は、ストランドを牽引してステントの近位端を閉鎖すれば、ステントは容易に吻合部を通過できるようになる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸(12、13、14)、直腸(11)、または肛門管(10)の吻合部(5)を一時的に保護するための外科用装置(1)であって、
a)一時アンカー部材(2)と呼ばれる半硬質の縦長中空部材であって、その第1壁が、長手方向の軸XXを中心とする回転面を定義し、実質的に円形の断面を有する実質的に円筒形の主部(2a)を備え、前記第1壁が、制御下で、
・前記第1壁が径方向に収縮した状態で、最大10mmの縮小外径(D1’)と、
・前記第1壁の主部が径方向に最大限拡張した状態で、20mmから40mm、好ましくは25mmから33mmの最大外径(D1)と、の間で、変動可能な外径を有する、一時アンカー部材と、
b)前記アンカー部材(2)の第1壁に対して、好ましくは前記第1壁の回りに固定された、柔軟性のある筒状壁を有するシース(3)、とを備え、
1)前記一時アンカー部材(2)の前記第1壁が、少なくとも50mm、好ましくは70mmから150mmの長さ(L1)を有する、直径の大きい前記主部(2a)を含み、
2)前記シース(3)が、静止時において、前記アンカー部材(2)の下流側に少なくとも50cm、好ましくは少なくとも1mの長さ(L3)と、20mmから40mm、好ましくは25mmから33mmの外径とを有するとともに、0.05mmから1mmの壁厚を有する生体適合性エラストマー材料からできていることを特徴とする、外科用装置。
【請求項2】
前記第1壁の主部(2a)が、前記第1壁の長手方向の上流端(2−1)から、前記円筒形の主部より小径の、特定形状の下流終端部(2b)まで延び、前記第1壁の下流端(2−2)の外径(D2)が、径方向に最大限拡張した状態で20mmから35mmであり、前記第1壁の特定形状の終端部(2b)の長さ(L2)が、10mmから30mm、好ましくは15mmから25mmであり、前記終端部(2b)の直径が、好ましくは、前記第1壁の主部から前記第1壁の下流端にかけて徐々に小さくなることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記特定形状の下流終端部(2b)の直径が、前記径方向に最大限拡張した状態の前記主部の直径(D1)よりも小径のエラストマー材料のリング(31)を周りにはめることにより、狭められていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
・前記アンカー部材(2)が、(直径D’1の)前記径方向に収縮した状態に圧縮され、その径方向の圧縮から開放されると、(直径D1の)前記径方向に最大限拡張した状態をとることができるように、径方向の弾性特性を付与する材料でできており、
・前記シース(3)が、0.1mmから0.5mmの壁厚を有し、径方向および長手方向の弾性特性、形状記憶特性、および非粘着特性を有しているシリコーンまたはポリウレタン・タイプのエラストマー・ベースの生体適合性ポリマー材料でできていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記一時アンカー部材(2)が、ステント・タイプの経腸プロテーゼであり、その前記第1壁が、らせん状のエラストマーまたは金属製のワイヤーメッシュにより形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記シースと前記アンカー部材との連結が、少なくとも前記アンカー部材の下流端の外面を覆う前記シースによってなされていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記シースは、以下の特性、すなわち、
・ショアA硬度5から95、好ましくは50から70と、
・圧縮時残留変形度(DRC)10%から35%、好ましくは17%から23%と、
・摩擦係数0.30から0.90、好ましくは0.35から0.45、
とを有するエラストマー・ベースの生体適合性ポリマー材料からできていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記アンカー部材(2)が、少なくともその外面がシリコーンまたはポリウレタン・タイプの合成エラストマー材料のコーティング(24)で覆われた、ステント・タイプの経腸プロテーゼであり、前記エラストマーのコーティングが、前記シースのエラストマー材料よりも柔軟性があり、前記シースと前記アンカー部材との連結が、徐々に径が縮小する特定形状の下流終端部(2b)を少なくとも含む前記アンカー部材の長さの一部分(2b、2c)のみを覆っている前記シースによってなされていることを特徴とする、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
導入管(4)と呼ばれる器具であって、
・筒状の外被(41)であって、その遠位端の内部に、前記収縮状態に圧縮された前記アンカー部材を収容、保持できるようになっており、前記シース(3)をも収容するのに十分なほど長く、好ましくは少なくとも110cm、好ましくは少なくとも150cmの長さを有する筒状外被と、
・前記導入管の遠位端を、肛門外口(10)から吻合部(5)の上流側にある腸内の前記留置位置まで送り込む手段(42、43)と、
・好ましくは、前記外被(41)から前記アンカー部材を取り外すための手段(44、45)であって、好ましくは、前記アンカー部材の長手方向の端部と必要に応じて接触しているストッパー(45)を、その遠位端に備えた緩衝チューブ(44)から構成され、前記アンカー部材の下流側の前記シースが、前記外被内部の前記緩衝チューブ(44)をとり囲んでいる、手段と、
を備えた導入管をさらに備えていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
好ましくは20mmから40mmの外径と、10cmから25cmの長さを有する保護チューブ(8)であって、仙椎後彎に応じた彎曲形状の部分(8a)を含み、前記導入管(4)の外被よりも硬く、前記保護チューブが肛門外口から挿入され、肛門外口から前記吻合部の上流地点まで延びるような外径と長さを有し、前記保護チューブが前記導入管を収容して、前記肛門外口から前記吻合部まで送り込むことができるような、前記仙椎後彎に応じた内径と彎曲を有する保護チューブをさらに備えていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の装置。
【請求項1】
結腸(12、13、14)、直腸(11)、または肛門管(10)の吻合部(5)を一時的に保護するための外科用装置(1)であって、
a)一時アンカー部材(2)と呼ばれる半硬質の縦長中空部材であって、その第1壁が、長手方向の軸XXを中心とする回転面を定義し、実質的に円形の断面を有する実質的に円筒形の主部(2a)を備え、前記第1壁が、制御下で、
・前記第1壁が径方向に収縮した状態で、最大10mmの縮小外径(D1’)と、
・前記第1壁の主部が径方向に最大限拡張した状態で、20mmから40mm、好ましくは25mmから33mmの最大外径(D1)と、の間で、変動可能な外径を有する、一時アンカー部材と、
b)前記アンカー部材(2)の第1壁に対して、好ましくは前記第1壁の回りに固定された、柔軟性のある筒状壁を有するシース(3)、とを備え、
1)前記一時アンカー部材(2)の前記第1壁が、少なくとも50mm、好ましくは70mmから150mmの長さ(L1)を有する、直径の大きい前記主部(2a)を含み、
2)前記シース(3)が、静止時において、前記アンカー部材(2)の下流側に少なくとも50cm、好ましくは少なくとも1mの長さ(L3)と、20mmから40mm、好ましくは25mmから33mmの外径とを有するとともに、0.05mmから1mmの壁厚を有する生体適合性エラストマー材料からできていることを特徴とする、外科用装置。
【請求項2】
前記第1壁の主部(2a)が、前記第1壁の長手方向の上流端(2−1)から、前記円筒形の主部より小径の、特定形状の下流終端部(2b)まで延び、前記第1壁の下流端(2−2)の外径(D2)が、径方向に最大限拡張した状態で20mmから35mmであり、前記第1壁の特定形状の終端部(2b)の長さ(L2)が、10mmから30mm、好ましくは15mmから25mmであり、前記終端部(2b)の直径が、好ましくは、前記第1壁の主部から前記第1壁の下流端にかけて徐々に小さくなることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記特定形状の下流終端部(2b)の直径が、前記径方向に最大限拡張した状態の前記主部の直径(D1)よりも小径のエラストマー材料のリング(31)を周りにはめることにより、狭められていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
・前記アンカー部材(2)が、(直径D’1の)前記径方向に収縮した状態に圧縮され、その径方向の圧縮から開放されると、(直径D1の)前記径方向に最大限拡張した状態をとることができるように、径方向の弾性特性を付与する材料でできており、
・前記シース(3)が、0.1mmから0.5mmの壁厚を有し、径方向および長手方向の弾性特性、形状記憶特性、および非粘着特性を有しているシリコーンまたはポリウレタン・タイプのエラストマー・ベースの生体適合性ポリマー材料でできていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記一時アンカー部材(2)が、ステント・タイプの経腸プロテーゼであり、その前記第1壁が、らせん状のエラストマーまたは金属製のワイヤーメッシュにより形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記シースと前記アンカー部材との連結が、少なくとも前記アンカー部材の下流端の外面を覆う前記シースによってなされていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記シースは、以下の特性、すなわち、
・ショアA硬度5から95、好ましくは50から70と、
・圧縮時残留変形度(DRC)10%から35%、好ましくは17%から23%と、
・摩擦係数0.30から0.90、好ましくは0.35から0.45、
とを有するエラストマー・ベースの生体適合性ポリマー材料からできていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記アンカー部材(2)が、少なくともその外面がシリコーンまたはポリウレタン・タイプの合成エラストマー材料のコーティング(24)で覆われた、ステント・タイプの経腸プロテーゼであり、前記エラストマーのコーティングが、前記シースのエラストマー材料よりも柔軟性があり、前記シースと前記アンカー部材との連結が、徐々に径が縮小する特定形状の下流終端部(2b)を少なくとも含む前記アンカー部材の長さの一部分(2b、2c)のみを覆っている前記シースによってなされていることを特徴とする、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
導入管(4)と呼ばれる器具であって、
・筒状の外被(41)であって、その遠位端の内部に、前記収縮状態に圧縮された前記アンカー部材を収容、保持できるようになっており、前記シース(3)をも収容するのに十分なほど長く、好ましくは少なくとも110cm、好ましくは少なくとも150cmの長さを有する筒状外被と、
・前記導入管の遠位端を、肛門外口(10)から吻合部(5)の上流側にある腸内の前記留置位置まで送り込む手段(42、43)と、
・好ましくは、前記外被(41)から前記アンカー部材を取り外すための手段(44、45)であって、好ましくは、前記アンカー部材の長手方向の端部と必要に応じて接触しているストッパー(45)を、その遠位端に備えた緩衝チューブ(44)から構成され、前記アンカー部材の下流側の前記シースが、前記外被内部の前記緩衝チューブ(44)をとり囲んでいる、手段と、
を備えた導入管をさらに備えていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
好ましくは20mmから40mmの外径と、10cmから25cmの長さを有する保護チューブ(8)であって、仙椎後彎に応じた彎曲形状の部分(8a)を含み、前記導入管(4)の外被よりも硬く、前記保護チューブが肛門外口から挿入され、肛門外口から前記吻合部の上流地点まで延びるような外径と長さを有し、前記保護チューブが前記導入管を収容して、前記肛門外口から前記吻合部まで送り込むことができるような、前記仙椎後彎に応じた内径と彎曲を有する保護チューブをさらに備えていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−517255(P2012−517255A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548760(P2011−548760)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050210
【国際公開番号】WO2010/092291
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511192296)
【氏名又は名称原語表記】KHOSROVANINEJAD,Charam
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050210
【国際公開番号】WO2010/092291
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511192296)
【氏名又は名称原語表記】KHOSROVANINEJAD,Charam
【Fターム(参考)】
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