説明

呉汁加熱装置

【課題】 バッチ式の問題点である加熱むらと泡の発生を抑制させ、連続式の問題点である臭気を逃がし、かつ釜(バッファータンク)に蒸気発射管を設けずに管路内に蒸気発射管を設けることによって、釜(バッファータンク)の構造を簡素にしながら効率の良い加熱を行なうことができるようにした呉汁加熱装置の提供。
【解決手段】 大気開放穴12が形成されたバッファータンク1と、このバッファータンクの呉汁流出口10から呉汁流入口11に至るように配管された循環管路2と、この循環管路の途中に設けられた循環ポンプ20と、前記循環管路の途中において管内に設けられた蒸気発射管4を備え、前記バッファータンクと循環管路で形成される呉汁循環回路3内で呉汁を循環ポンプにより循環させながら循環管路に設けた前記蒸気発射管から蒸気を吹き出して加熱させるように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に浸漬した大豆を水と一緒に擂り潰して作った呉汁を加熱するための加熱装置に関する。
なお、本発明において、呉汁には、この呉汁を生で絞ったもの(生豆乳)を含むものとする。
【背景技術】
【0002】
豆腐原料となる豆乳は、水に浸漬した大豆を水と一緒に擂り潰して呉汁を作り、この呉汁を加熱装置で加熱したのち絞り機でおからを分離させることにより作られる。
又、呉汁を生で絞った生豆乳を加熱して作る豆乳もある。
【0003】
呉汁加熱装置はバッチ式と連続式とに大きく分けることができる。
バッチ式は一釜ごとに炊き上げていく方式で、少量生産向きで、通常、煮釜の形状は円筒形をしており、煮釜内部の下部に多数の小孔を有するドーナッツ状の蒸気発射管を設け、蒸気を直接呉汁に吹き出して直接加熱するようになっている(特許文献1参照)。
また、バッチ式では、蒸気及び加熱過程で生じる臭気を逃がすための大気開放穴が煮釜に形成され、かつ均一に加熱する工夫として羽根をモーター等で回転させる攪拌装置が取り付けられている。
【0004】
連続式は大量生産向きで、円筒形に形成された煮釜筒の内部に呉汁流入口からポンプで呉汁を流入させ、煮釜筒内に蒸気を入れて直接加熱したり、熱交換器で加熱したりさせ、加熱後の呉汁を呉汁流出口から流出させるようになっている(特許文献2参照)。
連続式の基本は密閉構造で、密閉構造の釜は管内の圧力を高くすることができるため泡の発生を極力抑えることができるが、加熱過程で発生する臭気を途中で逃がすことは構造上難しい。
【0005】
従来、連続式で使用する円筒形の煮釜筒を用いた密閉循環式が提案されている(特許文献3参照)。
この密閉循環式は、円筒形に形成された煮釜筒の呉汁流入口から呉汁流出口に至るように循環管路を配管させ、煮釜筒と呉汁循環管路で形成される呉汁循環回路内で呉汁を循環ポンプにより循環させながら煮釜筒に設けた蒸気発射管から蒸気を吹き付けるによって加熱させるように形成されている。
【特許文献1】特開2002−233320号公報
【特許文献2】特開2000−189092号公報
【特許文献3】特開2003−334015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バッチ式は前記したように、煮釜内部において蒸気発射管から蒸気を呉汁に吹き出して直接加熱させるようになっているため、熱効率は良いが、羽根による攪拌装置しかないので加熱ムラを生じ易い。
また、大気開放穴が形成されているため、呉汁が100℃付近になると沸騰し、泡の発生を増長させるという問題があった。
【0007】
連続式は煮釜筒内の圧力を高くすることができ、沸点を上げることができるので、泡の発生を極力抑えることは可能だが、加熱過程で発生する臭気を途中で逃がすことは構造上難しい。
また連続式である為、煮釜筒の長さやポンプ回転数によって加熱時間や加熱温度等が規制されるなど、能力が固定される。
したがって、必要とする豆乳の状態に対応させるため、加熱時間・加熱温度等を変更するにしても、煮釜筒の長さを追加するなどの加工が必要になるという問題が生じる。
【0008】
前記密閉循環式は、連続式で用いた煮釜筒と呉汁循環管路で形成される循環回路内で呉汁を循環ポンプにより循環させながら蒸気発射管からの蒸気によって加熱させるもので、この循環回路が密閉回路であるため、泡の発生を極力抑えながら加熱することができるし、循環によって加熱ムラを無くすことができる。
しかしながら、この密閉循環式は、蒸気発射管が煮釜筒内に設けられているため、呉汁に満遍なく蒸気を吹き付けるには、煮釜筒に小径部分を形成して、この小径部分に蒸気発射管を配設させるといった特別の加工が必要になるし、循環回路が密閉回路であるため、加熱過程で発生する臭気を逃がすことは構造上難しく、大豆特有の青臭い臭いが残ってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、バッチ式の問題点である加熱むらと泡の発生を抑制させ、連続式の問題点である臭気を逃がし、かつ釜(バッファータンク)に蒸気発射管を設けずに管路内に蒸気発射管を設けることによって、釜(バッファータンク)の構造を簡素にしながら効率の良い加熱を行なうことができるようにした呉汁加熱装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の呉汁加熱装置は、
大気開放穴が形成されたバッファータンクと、このバッファータンクの呉汁流出口から呉汁流入口に至るように配管された循環管路と、この循環管路の途中に設けられた循環ポンプと、前記循環管路の途中において管内に設けられた蒸気発射管を備え、
前記バッファータンクと循環管路で形成される呉汁循環回路内で呉汁を循環ポンプにより循環させながら循環管路に設けた前記蒸気発射管から蒸気を吹き出して加熱させるように形成した。
【発明の効果】
【0011】
本発明の呉汁加熱装置は、大気開放穴が形成されたバッファータンクと循環管路で形成される呉汁循環回路内で呉汁を循環ポンプにより循環させながら循環管路に設けた前記蒸気発射管から蒸気を吹き出して加熱させるもので、バッチ式の釜(バッファータンク)を用いた開放循環式ということができる。
【0012】
呉汁は呉汁循環回路内を循環しながら加熱されるため、加熱むらと泡の発生を抑制させることができる。
又、バッファータンクに大気開放穴が形成されているため、この大気開放穴を通して臭気を逃がすことができ、呉汁に大豆特有の青臭い臭いが残るといった問題を解消できる。
又、バッファータンクに蒸気発射管を設けずに循環管路内に蒸気発射管を設けたので、バッファータンクの構造が簡素になるし、循環管路内という狭い流路内において蒸気を吹き出すので、呉汁に満遍なく蒸気を吹き付けることができ、効率の良い加熱を行なうことができる。
又、循環管路内は、圧力を高くすることができるので、呉汁を100℃以上に加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明実施例の呉汁加熱装置を示す全体説明図である。
図において、1はバッファータンクで、円筒タンク状に形成され、下端部に呉汁流出口10が形成され、上端部に呉汁流入口11が形成されている。
なお、前記呉汁流入口11は、バッファータンク1内への呉汁の流入に際し、泡の発生を抑えるためには、バッファータンク1の側壁を伝って流入させるようにするのが好ましい。
【0014】
又、バッファータンク1の上端には大気開放穴12が形成され、この大気開放穴12を通して蒸気及び臭気を逃がすようになっている。
【0015】
なお、図中13は攪拌羽根で、バッファータンク1の上端面に取り付けたシリンダ14によりバッファータンク1内部を昇降して呉汁を攪拌させ、加熱むらを解消させる。
又、15は二流体ノズルで、水と圧縮空気をバッファータンク1内部に吹き込んで泡を消すためのもので、水又は圧縮空気を単独で吹き込むことも可能である。
16はレベル計で、バッファータンク1内の泡を検知する。
前記攪拌羽根13、二流体ノズル15、レベル計16は必ずしも必要でない。
【0016】
そして、前記バッファータンク1の呉汁流出口10から呉汁流入口11に至るように循環管路2が配管され、この循環管路2とバッファータンク1で呉汁循環回路3が形成されている。
前記循環管路2の途中には循環ポンプ20が設けられ、この循環ポンプ20よりも上流側管路2aに開閉バルブ21が取り付けられ、循環ポンプ20より下流側管路2bに複数(実施例では6個)の蒸気発射管4が設けられている。
又、この実施例では、循環管路2として直径25〜80mmのステンレス管を用い、この管内に呉汁の流動方向に対向して蒸気を吹き出すように蒸気発射管4を設けている。なお、循環管路2として用いる管体の直径は、前記した直径25〜80mmに限らず、これ以下の直径でも、これ以上の直径でもよく、ただ大径にすると加熱むらを起こしやすくなる。
【0017】
前記各蒸気発射管4は、循環管路2の管内に設けられ、図示省略した蒸気ボイラにそれぞれ蒸気供給管40を介して接続され、各蒸気供給管40にはそれぞれ電磁弁41が設けられている。
なお、図中、50は入口側温度センサで、蒸気発射管4で加熱される前の呉汁温度を検出する。51は出口側温度センサで、蒸気発射管4で加熱された後の呉汁温度を検出する。
60は圧力調整バルブで、必要に応じて循環管路2を絞り調節することにより管内を流動する呉汁の内圧を調整して泡の発生を抑える機能を有する。なお、この圧力調整バルブ60にモーターバルブ等を使用して圧力を自動調整するようにしてもよい。
【0018】
前記循環ポンプ20には、呉汁供給管70を介して呉汁タンク7が接続され、前記呉汁供給管70に開閉バルブ71が取り付けられている。
又、循環ポンプ20には、絞り機(図示省略)に至る呉汁排出管80が接続され、この呉汁排出管80に開閉バルブ81が取り付けられている。
【0019】
従って、本実施例の呉汁加熱装置を使用するには、まず、開閉バルブ21,81を閉じ、開閉バルブ71を開いた状態で循環ポンプ20を作動させ、呉汁タンク7から循環ポンプ20を通して循環管路2の下流側管路2bを経て呉汁をバッファータンク1内に供給させる。
このとき、蒸気発射管4から蒸気を吹き出して呉汁を所定の温度(例えば、60℃)まで加熱させるようにしている。なお、呉汁を加熱させないでバッファータンク1内に供給させることも可能である。
【0020】
次に、開閉バルブ71,81を閉じ、開閉バルブ21を開いた状態で循環ポンプ20を作動させるもので、これにより前記バッファータンク1と循環管路2で形成される呉汁循環回路3内で呉汁が循環しながら前記蒸気発射管4から吹き出される蒸気によって加熱されていく。
【0021】
尚、前記循環管路2内で加熱された呉汁は、バッファータンク1内で大気圧に戻るが、このとき発生した泡はバッファータンク1の上部で分離破壊され、呉汁はバッファータンク1の下部に溜まる。
【0022】
このようにして呉汁を最終加熱温度まで加熱させるもので、このとき、入口側温度センサ50及び出口側温度センサ51で呉汁の温度を検出しながら使用する蒸気発射管4の数を制御して設定温度までの加熱に対し与える熱量を設定・変更できるようにすることで、好みの温度曲線で加熱できるようにしている。
例えば、出口側温度センサ51による検出温度が80℃に達するまでは6個全ての蒸気発射管4の電磁弁41を開放して加熱し、95℃になるまでは4個の蒸気発射管4の電磁弁41を開放して加熱するなどの制御ができる。
【0023】
なお、各蒸気発射管4に蒸気を送り込む手段として電磁弁41を用いているが、モーターバルブ等を使用し、設定温度に対しての比例制御を行っても良い。
また、呉汁の循環(搬送)に用いる循環ポンプ20を周波数制御し、流量調整することもできる。
【0024】
又、バッファータンク1内に泡が多く発生した場合、呉汁が吹きこぼれる危険性があり、この場合、前記レベル計16が泡を検知すると、蒸気発射管4からの蒸気の吹き出しをレベル計16による泡の検出がなくなるまで一時的に停止して、吹きこぼれを防止するようにしている。
なお、この間も温度むらが生じないように循環ポンプ20を運転させて呉汁を呉汁循環回路3内で循環させるようにしている。
【0025】
そして、上記のようにして呉汁を最終加熱温度まで加熱させた後は、所定の熟成時間を経たのち、開閉バルブ71を閉じ、開閉バルブ21,81を開いた状態で循環ポンプ20を作動させ、呉汁排出管80を経て呉汁を絞り機に供給させ、この絞り機でおからと豆乳に分離させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明実施例の呉汁加熱装置を示す全体説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 バッファータンク
10 呉汁流出口
11 呉汁流入口
12 大気開放穴
13 攪拌羽根
14 シリンダ
15 二流体ノズル
16 レベル計
2 循環管路
2a 上流側管路
2b 下流側管路
20 循環ポンプ
21 開閉バルブ
3 呉汁循環回路
4 蒸気発射管
40 蒸気供給管
41 電磁弁
50 入口側温度センサ
51 出口側温度センサ
60 圧力調整バルブ
7 呉汁タンク
70 呉汁供給管
71 開閉バルブ
80 呉汁排出管
81 開閉バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気開放穴が形成されたバッファータンクと、このバッファータンクの呉汁流出口から呉汁流入口に至るように配管された循環管路と、この循環管路の途中に設けられた循環ポンプと、前記循環管路の途中において管内に設けられた蒸気発射管を備え、
前記バッファータンクと循環管路で形成される呉汁循環回路内で呉汁を循環ポンプにより循環させながら循環管路に設けた前記蒸気発射管から蒸気を吹き出して加熱させるように形成したことを特徴とする呉汁加熱装置。


【図1】
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【公開番号】特開2007−275018(P2007−275018A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108774(P2006−108774)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000138288)株式会社ヤナギヤ (15)
【Fターム(参考)】