説明

周期性パターンのムラ検査装置における検査条件設定方法および検査装置

【課題】回折光によるコントラストから正常部と変動部とを精度良く識別する為の画像を取得することによるムラ検査装置における、最適な検査条件設定方法を提供すること。
【解決手段】周期性パターンが形成された基板に照明光を複数の照射角度で斜め照射し、周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査するムラ検査装置における検査条件設定方法である。周期性パターンの形状に関する情報を入力する検査対象基板情報入力工程と、位置決め工程と、回折格子方程式による回折光強度ピーク角度算出工程と、回折光の測定を行う際の測定角度範囲を決定する回折光測定角度範囲決定工程と、回折光強度プロファイルを得る回折光強度取得工程と、得られた回折光強度プロファイルと、回折光強度ピーク角度算出工程において得られた回折光角度と回折光次数、照明光波長とを元に、照明光の照射角度、撮像倍率および照明光波長を設定する検査条件設定工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周期性パターンを有する被検査体においてパターンのムラを検査するための装置および方法に関する。周期性パターンとは、一定の間隔を有するパターンの集合体を称し、例えば、パターンが所定のピッチで配列したストライプ状の周期性パターン、または開口部のパターンが所定の周期で2次元的に配列したマトリクス状のパターン等が該当する。周期性パターンを有する被検査体としては特に、半導体装置、撮像デバイスおよび表示デバイス等を製造する際にフォトリソグラフィー処理の露光工程で用いられるフォトマスクが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置、撮像デバイスおよび表示デバイス等の製造工程で用いられるフォトマスクとしては、ガラス等の透明基板上にクロム等の遮光膜が一定のパターンに部分的に除去されて構成されたものが知られている。
【0003】
フォトマスクのような周期性パターンにおけるムラ欠陥は、通常微細なピッチズレや位置ズレが規則的に配列していることが原因であることが多いため、個々のパターン検査では発見することが困難であるが、周期性パターンを広い領域において観察した時に初めて認識される欠陥である。
【0004】
従来の周期性パターンにおけるムラ検査では、同軸の透過照明や平面照明を用いて透過率画像を撮像し、各々の画像での光強度を比較することによって正常部とムラ部の視認を行っている。しかし、正常部とムラ部における光の強度差は決して大きいわけではなく、得られる画像のコントラストは低い。そのため、コントラストの低い画像に対しその強度差の処理方法を工夫することでコントラストアップを図り、ムラ部を抽出し検査を行っている(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、上記従来技術においては、格子状周期性パターンのブラックマトリクスのムラ、特に開口部の大きいブラックマトリクスのムラの撮像において、正常部とムラ部でのコントラスト向上が期待されず、強度差の処理を工夫したとしても元画像のコントラストが低い画像の場合の検査では、目視での官能検査方法より低い検査能力しか達成できないという問題がある。
【0006】
一方、半導体の微細化や、微細な表示と明るい画面の電子部品の増加により、前記周期性パターンでは微細化、または開口部比率の増大傾向が進んでいる。将来的には、より開口部の大きい、より微細形状の周期性パターンのムラ検査装置およびその方法が必要となる。すなわち、従来の光の振幅による光の強度(明るさ)の強弱のみの出力では限界がある。
【0007】
そこで、周期性のあるパターン、例えばブラックマトリクスムラを安定的、高精度に撮像、検出可能な周期性パターンムラ検査装置を提供することを目的として、照明光が被検査体に照射され、周期性パターンによって生じる透過回折光を画像検査する、例えば特許文献2のような検査装置が提案された。周期性パターンの正常部では開口部の形状・ピッチが一定となるため互いに干渉し一定の方向に回折光を生じる。それに対し、ムラ部では開口部の形状、ピッチが不規則になるため、形状、ピッチに応じて種々の方向に、種々の強さで回折光が生じる。この検査装置では、正常部とムラ部における回折光強度コントラストの違いから、ムラ部を検出する方式をとっている。しかし、この装置において、所望の欠陥検査感度を満たす画像を得るためには被検査物の種類毎に最適な検査条件の設定が必要であり、その最適な検査条件設定には作業者の熟練や多大な時間が必要となる。また、作業者間によって検査精度にばらつきが生じるという官能検査的要素を含むため、検査方法の標準化という観点からは好ましくない。
【0008】
ところで、周期性パターン、例えばフォトマスクにおいては、パターンの微細化が急速に進んでおり、特にCCD/CMOSイメージャー用フォトマスクにおいては、ウエハ転写時におけるセルピッチが1μmに迫るほどの勢いで世代が進んでいる。
【0009】
一方で、CCD/CMOSイメージャーマスクでは数10μm程度のセルピッチを有するような既存製品に対するムラ検査ニーズも依然として高いのが現状であり、検査対象となる製品におけるセルピッチは多岐に渡ることとなる。従って、このような非常に多岐に渡る被検査物の種類毎に、フレキシブルに検査条件を自動設定することが可能である機能を具備している検査装置が要求される。
【0010】
また、適切な検査条件の選定を容易に行える欠陥検査装置を提供することを目的として、複数の中心波長並びに入射角度で測定された被検体の欠陥を有してない部位での反射率データを取得し、この反射率データに基づいて、欠陥の検出に用いる画像の撮像時の中心波長と入射角度とを設定する欠陥検査装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この装置においても反射率データより中心波長と入射角度とを決定する工程は作業者の感覚に依存する所が大きく、精度面の問題や、作業者間によって検査精度にばらつきが生じる可能性はなお存在する。
【0011】
以下に公知文献を記す。
【特許文献1】特開2002−148210号公報
【特許文献2】特開2006−208084号公報
【特許文献3】特開2005−274156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、周期性のあるパターン、特にCCD/CMOSイメージャー用フォトマスクのようにセルピッチやパターンの方向性が多岐にわたるような被検査体に対し、回折光によるコントラストから正常部と変動部とを精度良く識別する為の画像を取得する際における、最適な検査条件設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために為された請求項1に記載の発明は、基板面に周期性パターンが形成された基板を検査対象とし、前記基板に照明光を複数の照射角度で斜めに照射し、前記周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査するムラ検査装置における検査条件設定方法であって、前記周期性パターンの形状に関する情報を入力する検査対象基板情報入力工程と、前記基板面上の直交する2方向であるX軸Y軸方向における位置決め、および前記基板面と直交する基板面法線回りの回転方向における位置決めを行う位置決め工程と、前記検査対象基板情報入力工程において入力された前記周期性パターンに関する情報を元に、所定の波長の光源からの光を、前記周期性パターンに対して前記基板面法線方向から照射した場合に生じうる回折光のうち、回折した光強度の極大値が得られる回折光角度とその時の回折光次数を理論計算により取得する回折光強度ピーク角度算出工程と、前記回折光強度ピーク角度算出工程において得られた回折光角度と回折光次数を元に、前記周期性パターンに対し前記照明光を複数の照射角度で照射して回折光強度の測定を行う際の、測定角度範囲を決定するための回折光測定角度範囲決定工程と、前記回折光強度の測定を、前記回折光測定角度範囲決定工程にて決定された測定角度範囲において、前記複数の照射角度について行い、各照射角度に対する回折光強度からなる回折光強度プロファイルを得る回折光強度取得工程と、前記回折光強度取得工程において得られた回折光強度プロファイルと、前記回折光強度ピーク角度算出工程において得られた回折光角度と回折光次数、照明光波長とを元に導出された、照明光の照射角度、撮像倍率および照明光波長を含む検査条件を設定する検査条件設定工程とを含むことを特徴とするムラ検査装置における検査条件設定方法としたものである。
【0014】
また請求項2に記載の発明は、前記検査対象基板情報入力工程は、前記周期性パターンに対して、前記基板面法線回りの回転方向における任意の角度で、照明光を照射した場合の回折光強度の取得、検査条件の設定ができるように、前記基板面法線回りの回転方向における角度に関する条件入力が可能であることを特徴とする、請求項1に記載のムラ検査装置における検査条件設定方法としたものである。
【0015】
また請求項3に記載の発明は、前記回折光強度ピーク角度算出工程は、ブラッグの回折条件に基づいて計算が実行され、かつ算出される回折光角度は回折光次数が20次以下の回折光に関するものであることとし、回折光角度の値は少なくとも10度以上であることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載のムラ検査装置における検査条件設定方法としたものである。
【0016】
また請求項4に記載の発明は、前記回折光測定角度範囲決定工程において、決定される測定角度範囲は、少なくとも10度以上60度以下の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のムラ検査装置における検査条件設定方法としたものである。
【0017】
また請求項5に記載の発明は、前記回折光強度取得工程は、前記周期性パターンからの回折光の測定を、光電変換素子を利用した光強度測定手段によって実施するものであり、かつ前記光強度測定手段は、前記周期性パターンにより生じる回折光のうち、前記基板面に対して垂直な回折光のみを抽出する光学系を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のムラ検査装置における検査条件設定方法としたものである。
【0018】
また請求項6に記載の発明は、前記検査条件設定工程は、前記回折光強度取得工程において得られた回折光強度プロファイルの極大値のうち、前記回折光強度ピーク角度算出工程にて算出された回折光角度の値とほぼ一致する照射角度における極大値の中で、光強度値が最も小さい極大値をとる場合の照射角度を検査条件として設定することを特徴とした、請求項1〜5のいずれかに記載のムラ検査装置における検査条件設定方法としたものである。
【0019】
また請求項7に記載の発明は、基板面に周期性パターンが形成された基板を検査対象とし、前記基板に照明光を複数の照射角度で斜めに照射し、前記周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査するムラ検査装置であって、前記周期性パターンの形状に関する情報を入力する検査対象基板情報入力手段と、前記基板面上の直交する2方向であるX軸Y軸方向における位置決め、および前記基板面と直交する基板面法線回りの回転方向における位置決めを行う位置決め手段と、前記検査対象基板情報入力手段において入力された前記周期性パターンに関する情報を元に、所定の波長の光源からの光を、前記周期性パターンに対して前記基板面法線方向から照射した場合に生じうる回折光のうち、回折した光強度の極大値が得られる回折光角度とその時の回折光次数を理論計算により取得する回折光強度ピーク角度算出手段と、前記回折光強度ピーク角度算出手段において得られた回折光角度と回折光次数を元に、前記周期性パターンに対し前記照明光を複数の照射角度で照射して回折光強度の測定を行う際の、測定角度範囲を決定するための回折光測定角度範囲決定手段と、前記回折光強度の測定を、前記回折光測定角度範囲決定手段にて決定された測定角度範囲において、前記複数の照射角度について行い、各照射角度に対する回折光強度からなる回折光強度プロファイルを得る回折光強度取得手段と、前記回折光強度取得手段において得られた回折光強度プロファイルと、前記回折光強度ピーク角度算出手段において得られた回折光角度と回折光次数、照明光波長とを元に導出された、照明光の照射角度、撮像倍率および照明光波長を含む検査条件を設定する検査条件設定手段とを有することを特徴とするムラ検査装置としたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の周期性パターンのムラ検査装置および方法によれば、周期性のあるパターン、特にCCD/CMOSイメージャー用フォトマスクのようにセルピッチやパターンの方向性が多岐にわたるような被検査体に対し、回折光によるコントラストから正常部と変動部とを精度良く識別する為の画像を取得する際における、最適な検査条件設定を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の適用する周期性パターンのムラ検査装置における検査条件設定方法の第1の実施形態について説明する。
【0022】
図1は本発明に係る第1の実施形態の方法を適用するムラ検査装置1の一部を概略的に示した構成図である。図1では透過回折光を得るための装置構成例を示している。なお、本装置は外乱光や迷光を極力低減させた暗環境かつ被検査基板への異物付着を防止するクリーン環境で稼動されることが望ましい。
【0023】
図1に示すように、本装置は透過照明部10と、被検査基板60の位置決め動作および基板搬送動作が可能なX−Y−θステージ部20と、被検査基板60の位置決めを実施するためのアライメント用撮像部30と、被検査基板60からの回折光強度を取得するための回折光強度測定部40と、処理・制御部100から構成されている。
ここで、被検査基板60の基板面には周期性パターンが形成されている。ここで基板面とは被検査基板60の厚さ方向の一方に位置する面である。
【0024】
処理・制御部100は、透過照明部10、X−Y−θステージ部20、アライメント用撮像部30、回折光強度測定部40を構成する機器類の動作制御を行い、アライメント用撮像部30および回折光強度測定部40からの出力を画像情報、あるいは信号情報として入力を行い、演算処理を行う。さらにその処理結果や処理画像を、表示手段104に表示する。
【0025】
透過照明部10では、円弧レール11が設置されており、円弧レール11には照明ヘッド12が設けられており、光源13からはライトガイド14を用いて導光している。円弧レール11上で照明ヘッド12を駆動することによって被検査基板60の基板面に対して垂直方向の照射角度調整を可能としている(なお、この駆動軸をφ軸と定義する)。円弧レール11上のどの位置にあっても照明ヘッド12は、X−Y−θステージ部20上の所定位置に照明光を照射することができるように調整されており、これによって、X−Y−θステージ部20上の被検査基板60の基板面に対して、様々な照射角度からの透過照明が可能となっている。
【0026】
なお、照明ヘッド12には平行光学系が設けられている。光源13にはフィルターチェンジャー機構が設けられており、複数の波長選択フィルタを用いることが可能となっている。また、本実施形態では光源13にはメタルハライドランプを用いており、動作時間に対する光量変動幅が1%以下で光量安定度が高いものを選定していることが特徴である。
【0027】
図2は、X−Y−θステージ部20を模式的に示したものである。被検査基板60は、X−Y−θステージ部20の所定の位置に載置される。被検査基板60載置部は、中空であることが特徴である。
【0028】
X−Y−θステージ部20は、被検査基板60を図2のX軸方向およびY軸方向に平行移動する機能と、被検査基板60をその基板面と直交する基板面法線周りの回転方向に360°回転させる機能を有する(この回転中心の軸をθ軸とする。)。これによって、予め設定した動作手順に従って被検査基板60をX軸およびY軸方向に駆動する。また、θ軸を中心として被検査基板60を面内回転させることにより、被検査基板60の基板面内への照明照射方向の調整が可能である。
【0029】
アライメント用撮像部30は、カメラ31、レンズ32、照明33、そして照明制御装置34から構成される。被検査基板60上のアライメントマークを含む領域に対して同軸落射形式で照明光が照射され、その観察画像がカメラ31により撮像される。なお、照明制御装置34により、照明は点灯/消灯制御および照明光強度の調節ができるようになっており、実際の制御動作は処理・制御部100により実施される。なお、本実施例ではカメラ31にはエリアCCDカメラを、レンズ32には同軸落射形式の固定倍率テレセントリックレンズを、そして照明33には高輝度スポット型の白色LEDを用いている。
【0030】
回折光強度測定部40は、光電センサー41と、平行光学系42から構成される。光電センサー41としては、可視光域に分光感度特性を有している光電変換素子を具備していることが望ましい。
【0031】
処理・制御部100では、情報処理手段101にて透過照明部10、X−Y−θステージ部20、アライメント用撮像部30、および回折光強度測定部40の動作管理および制御を行う。
【0032】
図3は、本発明に係る第1の実施形態による方法を示すフローチャート図である。本発明に係る第1の実施形態による方法は、S1〜S7という一連のステップによって行われる。以下、各ステップの内容をステップ順に説明する。なお、被検査基板60の着脱等のオペレーション操作についてはフローから割愛する。
【0033】
被検査基板60におけるピッチ、チップレイアウト、管理No.等の製品情報を、情報処理手段101へ入力する(S1)。またこの段階で、前述したθ軸の種類も入力する。
情報処理手段101は周期性パターンの形状に関する情報を入力する検査対象基板情報入力手段を構成している。
ここで、図4に被検査基板60とθとの対応関係を示す(この場合は、例としてθ=0゜、45゜、90゜、135゜の4種類について定義してある)。
【0034】
X、Y、θ軸の調整とアライメント用撮像部30により、被検査基板60に対するアライメント動作を実施する(S2)。
すなわち、X−Y−θステージ部20とアライメント用撮像部30と処理・制御部100により、基板面上の直交する2方向であるX軸Y軸方向における位置決め、および基板面と直交する基板面法線回りの回転方向における位置決めを行う位置決め手段を構成している。
【0035】
式(1)に示す回折格子方程式に基づき、S1にて入力されたピッチの値から回折光強度のピークが得られる角度φ(m)を、各回折光次数mについて計算する(S3)。
本実施例では、10゜≦φ(m)≦60゜かつm≦20を満たす全ての角度φ(m)を計算する。ここで、φ(m)、およびmを上記範囲としたのは、次の理由による。φ(m)が10°より小さい場合は、照明ヘッド12からの直接光(0次回折光)が回折光強度測定部40に入射する可能性があるため、光強度が強い直接光により光電センサー41が損傷するのを回避する必要があるとともに、0次回折光はもともと検査対象物のムラの有無を判断するのに寄与しないため、なるべく入射させないほうがよい。また、φ(m)が60°より大きいか、mが20より大きい場合は、回折光の強度が弱くなるので、その回折光強度プロファイルが検査条件を決定するのに有用なデータとは言えなくなる。
以上の理由により、φ(m)およびmを上記範囲とした。
また、(1)式による計算は、R、G、B3色の光学フィルタを利用した場合における照明光中心波長λそれぞれについて実施する。Rフィルタを利用する場合は、λ=670nm、Gフィルタを利用する場合は、λ=540nm、Gフィルタを利用する場合は、λ=435nmとする。本実施例においては、Gフィルタを利用した場合について説明する。但し、S1にて決定したθに応じて光の照射方向に対応した見かけ上のピッチの値が変化するので、各θ軸における見かけ上のピッチdiを導出する必要がある。0゜≦θ≦45゜、および90゜≦θ≦135゜のときは、di=(ピッチ)/cosθとして導出され、45゜≦θ≦90゜、135゜≦θ≦180゜のときは、di=(ピッチ)/cos(90゜−θ)として導出される。図5に、Gフィルタ利用時において、di=15μmとして計算を実施した場合における、回折光次数mと回折角φ(m)との関係を示す。

【0036】
S3にて計算された、10゜≦φ(m)≦60゜かつm≦20を満たす全ての回折角φ(m)のうち、最小角度をφs、最大角度をφeとし、回折光強度測定を実施する角度範囲をφs≦φ(m)≦φeと定義する(S4)。本実施例では、Δφ(m)=0.5゜とする。
【0037】
回折光強度測定実施対象パターンが光電センサー41の中心位置にくるように、X−Y−θステージ部20を駆動させる(S5)。
【0038】
回折光強度測定部40、および透過照明部10を活用して、S1にて設定した所定のθ軸において、S4にて設定された回折光測定角度範囲φs≦φ(m)≦φeにおいて、一定の刻み角度幅(本実施例では0.5゜刻み)にて被検査基板60における回折光強度を測定し、回折光強度プロファイルを得る(S6)。
【0039】
φs≦φ(m)≦φeの範囲で円弧レール11を一定刻み角度で駆動させ、被検査基板60へ照明光を投光する。その際、被検査基板60上の周期性パターンにおいて発生する回折光強度は連続的に変化することとなる。この回折光強度変化を、光電センサー41にて光強度として取得する。この時、被検査基板60は固定したままである。本実施例における測定方法模式図を図6に、また測定により得られた回折光強度プロファイルの例を図7に示す。
【0040】
S6にて取得された回折光強度プロファイルにおいて、S3にて得られた回折角φ(m)に対応する極大値に着目し、そのうち最も光強度値が小さい極大値における角度φ(m)の値を、検査角度φIとして決定する。決定された照明角度において、所望の光量値が確保されるように照明光量を調整した後、検査条件が設定される(S7)。図8に、回折光強度プロファイルと、算出された回折角φ(m)から条件設定する方法について模式的に示す。
【0041】
図8中に示した評価値Cというパラメータは、実際に検出されたムラ欠陥画像における正常部と変動部における輝度値のコントラスト比を取った値である。Cの値が照明角度に応じて変動し、検査角度φIにおいてその値が最も大きくなっていることが示される。つまり、この照明角度において最も良く正常部と変動部とのコントラストが識別可能であることを示している。
【0042】
S3〜S7までのフローは、S1にて設定したθ軸分だけ繰り返し実施する。
全てのθ軸について検査条件が決定された後、実際の検査動作へ移行する。
S3〜S7までのフローは、処理・制御部100により実行される。
すなわち、処理・制御部100はS1で入力された前記周期性パターンに関する情報を元に、所定の波長λの光源からの光を、周期性パターンに対して基板面法線方向から照射した場合に生じうる回折光のうち、回折した光強度の極大値が得られる回折光角度とその時の回折光次数を理論計算により取得する回折光強度ピーク角度算出手段をも構成している(S3)。
また、処理・制御部100は、S3で得られた回折光角度と回折光次数を元に、周期性パターンに対し照明光を複数の照射角度で照射して回折光強度の測定を行う際の、測定角度範囲を決定するための回折光測定角度範囲決定手段をも構成している(S4)。
また、処理・制御部100は、回折光強度の測定を、S4で決定された測定角度範囲において、複数の照射角度について行い、各照射角度に対する回折光強度からなる回折光強度プロファイルを得る回折光強度取得手段をも構成している(S6)。
また、処理・制御部100は、S6で得られた回折光強度プロファイルと、S3で得られた回折光角度と回折光次数、照明光波長とを元に導出された、照明光の照射角度、撮像倍率および照明光波長を含む検査条件を設定する検査条件設定手段をも構成している(S7)。
【0043】
本発明に係る第1の実施形態の方法では、検査条件設定に際して、所望する検査感度が得られるまで検査条件を変更し、検査実行と検査結果の確認を繰り返す必要があるという従来必要とされていた工程を排し、検査条件設定に費やされる労力・タクトを削減することが可能となる。また定量的な手法を用いていることで、作業者間における検査精度のばらつきを解消することが可能となる。
【0044】
次に、本発明に係る第2の実施形態の方法について説明する。本発明に係る第2の実施形態の概略装置構成は図1と同様であり、また本発明に係る第2の実施形態による方法は同様に図3に示すフローチャートに則って行われる。但し、本発明に係る第2の実施形態の方法においては、光電センサー41としてラインセンサカメラを利用する。なお本発明に係る第2の実施形態による方法においては、カメラ41は4096画素のラインセンサカメラを用いているが、カメラ露光時間調整機能を用いても一定の輝度値を確保できない場合には、TDIラインセンサカメラを使用してもよい。また、複数台の性能の異なるカメラとカメラ切替機構を具備することにより、使用カメラの切替で測定毎に最適なものを選択できるようにしてもよい。また、照明ヘッド12は、ライン型照明ヘッドであっても良い。
【0045】
平行光学系42には、光学倍率可変の電動ズームレンズ、あるいは、ターレット、レボルバー等のレンズ切替機構を具備した、複数の単倍ラインセンサ用テレセントリックレンズを用いる。このとき、絞りの自動調整機能が備わっていてもよい。撮像倍率は、被検査基板60における周期性パターンのピッチにもよるが、0.2倍程度の低倍域から3倍程度の高倍域まで確保されていることが望ましい。本発明に係る第2の実施形態による方法においては、レンズ倍率1.4倍のラインセンサ用テレセントリックレンズを用いて測定を実施した。
【0046】
本発明に係る第2の実施形態の方法について、図3に示したフローを基に説明する。なお、S1〜S4までのステップは、本発明に係る第1の実施形態の方法と同様であるため割愛する。
【0047】
回折光強度測定実施対象パターンが光電センサー41であるラインセンサカメラの中心位置にくるように、X−Y−θステージ部20を駆動させる(S5)。
【0048】
回折光強度測定部40、および透過照明部10を活用して、S1にて設定した所定のθ軸において、S4にて設定された回折光測定角度範囲φs≦φ(m)≦φeにおいて、一定の刻み角度幅(本実施例では0.5°刻み)にて被検査基板60における回折光強度を測定し、回折光強度プロファイルを得る(S6)。
【0049】
φs≦φ(m)≦φeの範囲で円弧レール11を一定刻み角度で駆動させ、被検査基板60へ照明光を投光する。その際、被検査基板60上の周期性パターンにおいて発生する回折光強度は連続的に変化することになる。この回折光強度変化を、光電センサー41として使用しているラインセンサカメラにて、1LINE分の輝度情報として取得する。このとき取得する輝度値としては、1LINE分のピクセル数(本実施形態による方法では4096ピクセル)にて取得された輝度値の平均値を用いるが、1LINE分のピクセル数において取得された輝度値の最大値を用いてもよい。図9に、ラインセンサカメラを用いて取得した回折光強度プロファイルの例を示す。
【0050】
S6にて取得された回折光強度プロファイルにおいて、S3にて得られた回折角φ(m)に対応する極大値に着目し、そのうち最も光強度値が小さい極大値における角度φ(m)の値を、検査角度φIとして決定する。決定された照明角度において、所望の光量値が確保されるように照明光量を調整した後、検査条件が設定される(S7)。
【0051】
本発明に係る第2の実施形態の方法においても、S3〜S7までのフローは、S1にて設定したθ軸分だけ繰り返し実施する。全てのθ軸について検査条件が決定された後、検査撮像部としてラインセンサカメラを使用して、実際の検査動作へ移行する。
【0052】
本発明に係る第2の実施形態の方法においては、光電センサー41としてラインセンサカメラを用いるため、本発明に係る第2の実施形態の方法において設定された検査条件を活用し、実際の検査撮像による画像取得動作にも、光電センサー41のラインセンサカメラを撮像手段として用いることができる。つまり、回折光強度測定部40と検査撮像部とを共通化することが可能となり、機構部・機材削減によるコスト低減化へも寄与できる。
【0053】
以上説明したように、本発明に係る実施形態の方法によれば、フォトマスクやブラックマトリックス等の周期性パターンを有する製品における検査装置において、検査条件設定作業の労力削減が可能であり、精度良く欠陥検査に最適な照明角度を理論に基づいて設定することができる。また、作業者間の検査精度ばらつきを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る周期性パターンのムラ検査装置構成の一部を概略的に示した模式図である。
【図2】本発明に係る周期性パターンのムラ検査装置おける、X−Y−θステージ部20の模式図である。
【図3】本発明に係る第1、2の実施形態の方法を示すフローチャート図である。
【図4】本発明に係る第1、2の実施形態の方法における、被検査基板60と投光方向θ軸との対応関係を示す図である。
【図5】本発明に係る第1、2の実施形態の方法における、式(1)による計算例を示した図である。
【図6】本発明に係る第1、2の実施形態の方法における、回折光強度プロファイル取得手段例の模式図である。
【図7】本発明に係る第1、2の実施形態の方法における、回折光強度プロファイル取得例である。
【図8】本発明に係る第1、2実施形態の方法における、検査角度φIの決定方法を表した模式図である。
【図9】本発明に係る第2の実施形態の方法における、回折光強度プロファイル取得例である。
【符号の説明】
【0055】
10 透過照明部
11 円弧レール
12 照明ヘッド
13 光源
14 ライトガイド
20 X−Y−θステージ部
30 アライメント用撮像部
31 カメラ
32 レンズ
33 照明
34 照明制御装置
40 回折光強度測定部
41 光電センサー
42 平行光学系
60 被検査基板
100 処理・制御部
101 情報処理手段
102 信号入力装置
103 信号入力装置
104 表示手段
105 対人操作手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板面に周期性パターンが形成された基板を検査対象とし、前記基板に照明光を複数の照射角度で斜めに照射し、前記周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査するムラ検査装置における検査条件設定方法であって、
前記周期性パターンの形状に関する情報を入力する検査対象基板情報入力工程と、
前記基板面上の直交する2方向であるX軸Y軸方向における位置決め、および前記基板面と直交する基板面法線回りの回転方向における位置決めを行う位置決め工程と、
前記検査対象基板情報入力工程において入力された前記周期性パターンに関する情報を元に、所定の波長の光源からの光を、前記周期性パターンに対して前記基板面法線方向から照射した場合に生じうる回折光のうち、回折した光強度の極大値が得られる回折光角度とその時の回折光次数を理論計算により取得する回折光強度ピーク角度算出工程と、
前記回折光強度ピーク角度算出工程において得られた回折光角度と回折光次数を元に、前記周期性パターンに対し前記照明光を複数の照射角度で照射して回折光強度の測定を行う際の、測定角度範囲を決定するための回折光測定角度範囲決定工程と、
前記回折光強度の測定を、前記回折光測定角度範囲決定工程にて決定された測定角度範囲において、前記複数の照射角度について行い、各照射角度に対する回折光強度からなる回折光強度プロファイルを得る回折光強度取得工程と、
前記回折光強度取得工程において得られた回折光強度プロファイルと、前記回折光強度ピーク角度算出工程において得られた回折光角度と回折光次数、照明光波長とを元に導出された、照明光の照射角度、撮像倍率および照明光波長を含む検査条件を設定する検査条件設定工程と、
を含むムラ検査装置における検査条件設定方法。
【請求項2】
前記検査対象基板情報入力工程は、前記周期性パターンに対して、前記基板面法線回りの回転方向における任意の角度で、照明光を照射した場合の回折光強度の取得、検査条件の設定ができるように、前記基板面法線回りの回転方向における角度に関する条件入力が可能であることを特徴とする、請求項1に記載のムラ検査装置における検査条件設定方法。
【請求項3】
前記回折光強度ピーク角度算出工程は、ブラッグの回折条件に基づいて計算が実行され、かつ算出される回折光角度は回折光次数が20次以下の回折光に関するものであることとし、回折光角度の値は少なくとも10度以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のムラ検査装置における検査条件設定方法。
【請求項4】
前記回折光測定角度範囲決定工程において、決定される測定角度範囲は、少なくとも10度以上60度以下の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のムラ検査装置における検査条件設定方法。
【請求項5】
前記回折光強度取得工程は、前記周期性パターンからの回折光の測定を、光電変換素子を利用した光強度測定手段によって実施するものであり、かつ前記光強度測定手段は、前記周期性パターンにより生じる回折光のうち、前記基板面に対して垂直な回折光のみを抽出する光学系を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のムラ検査装置における検査条件設定方法。
【請求項6】
前記検査条件設定工程は、前記回折光強度取得工程において得られた回折光強度プロファイルの極大値のうち、前記回折光強度ピーク角度算出工程にて算出された回折光角度の値とほぼ一致する照射角度における極大値の中で、光強度値が最も小さい極大値をとる場合の照射角度を検査条件として設定することを特徴とした、請求項1〜5のいずれかに記載のムラ検査装置における検査条件設定方法。
【請求項7】
基板面に周期性パターンが形成された基板を検査対象とし、前記基板に照明光を複数の照射角度で斜めに照射し、前記周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査するムラ検査装置であって、
前記周期性パターンの形状に関する情報を入力する検査対象基板情報入力手段と、
前記基板面上の直交する2方向であるX軸Y軸方向における位置決め、および前記基板面と直交する基板面法線回りの回転方向における位置決めを行う位置決め手段と、
前記検査対象基板情報入力手段において入力された前記周期性パターンに関する情報を元に、所定の波長の光源からの光を、前記周期性パターンに対して前記基板面法線方向から照射した場合に生じうる回折光のうち、回折した光強度の極大値が得られる回折光角度とその時の回折光次数を理論計算により取得する回折光強度ピーク角度算出手段と、
前記回折光強度ピーク角度算出手段において得られた回折光角度と回折光次数を元に、前記周期性パターンに対し前記照明光を複数の照射角度で照射して回折光強度の測定を行う際の、測定角度範囲を決定するための回折光測定角度範囲決定手段と、
前記回折光強度の測定を、前記回折光測定角度範囲決定手段にて決定された測定角度範囲において、前記複数の照射角度について行い、各照射角度に対する回折光強度からなる回折光強度プロファイルを得る回折光強度取得手段と、
前記回折光強度取得手段において得られた回折光強度プロファイルと、前記回折光強度ピーク角度算出手段において得られた回折光角度と回折光次数、照明光波長とを元に導出された、照明光の照射角度、撮像倍率および照明光波長を含む検査条件を設定する検査条件設定手段と、
を有するムラ検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−78514(P2010−78514A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248753(P2008−248753)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】