説明

周波数分割多重無線システムにおける送信電力較正の方法および装置

周波数分割多重無線システム100における送信電力較正の方法および装置。本方法は、ユーザ装置120でアップリンクスケジューリング許可信号を受信すること(315)、少なくともこの許可信号に基づいて所望電力レベルを確立すること(320)、所望電力レベルに基づきハードウェア電力設定値を設定すること(325)を含む。また本方法は、ハードウェア電力設定値に基づく第1電力レベルにて第1サブフレームでデータを送信すること(330)、第1サブフレームにおける第1電力レベルを測定すること(335)、所望電力レベルと測定された第1電力レベルとの差を判定すること(340)を含む。更に本方法は、差に基づいてハードウェア電力設定値を修正すること(345)、第1サブフレームの送信に対応する次送信において、修正されたハードウェア電力設定値に基づく第2電力レベルで送信を行うこと(350)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線システムにおける送信電力較正の方法および装置を対象とし、具体的には、所望電力レベルに基づいて送信電力設定値を修正することを対象とする。
(関連出願の相互参照)
本出願は、本出願と同日付で出願され、本出願の譲受人に共通に譲渡された「周波数分割多重無線システムにおける送信電力較正の方法および装置」の出願に関し、この出願は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
現在、EUTRA(Evolved Universal Terrestrial Radio Access)とも呼ばれる第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)ロング・ターム・エボリューション(LTE)に関するアップリンク電力制御を標準化する取組みが進行中である。正確な実施詳細はまだまとまってはいないが、EUTRAネットワーク内のユーザ装置(UE)などの端末は、特定電力制御規則によって判定される明確な電力レベルで送信する必要があるものと一般に理解される。また、各端末において、電力制御規則は、基地局において所望レベルで受信される信号の電力スペクトル密度(PSD)など、副搬送波当たりの電力を維持しようとするものであると一般に理解される。受信されたPSDが特定レベルに維持されてUEに割り当てられる副搬送波の数が各サブフレームで著しく異なる場合、各EUTRA_UEの全送信電力がサブフレームによってかなり相違し得る。別々の副搬送波が異なるサブフレームでUEに割り当てられる場合など、送信帯域幅および周波数が急激に変化している状態において、送信電力精度を維持することは、UEハードウェアの実現にとって重要な課題である。緩和機構がなければ、EUTRAネットワーク内のUEはスペクトル効率にかなりの損失をもたらす重大な誤差を送信電力に生じることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、周波数分割多重無線システムにおける送信電力較正の方法および装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示において、周波数分割多重無線システムにおける送信電力較正の方法および装置が記載される。方法は、周波数分割多重無線システムにおけるユーザ装置においてアップリンクスケジューリング許可信号を受信すること、少なくともアップリンクスケジューリング許可信号に基づいて所望電力レベルを確立すること、所望電力レベルに基づきハードウェア電力設定値を設定することを含み得る。また方法は、ハードウェア電力設定値に基づく第1の電力レベルにて第1のサブフレームでデータを送信すること、第1のサブフレームにおける第1の電力レベルを測定すること、所望電力レベルと測定された第1の電力レベルとの差を判定することを含み得る。更に方法は、判定された差に基づいてハードウェア電力設定値を修正すること、第1のサブフレームの送信に対応する次の送信において、修正されたハードウェア電力設定値に基づく第2の電力レベルで送信を行うことを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本開示の一実施形態によるシステムの例示的な概略図を示す。
【図2】本開示の一実施形態による無線通信デバイスの例示的なブロック図を示す。
【図3】本開示の一実施形態による無線通信デバイスの動作を示す例示的なフローチャートである。
【図4】本開示の一実施形態による端末較正シナリオの例示的な説明図である。
【図5】本開示の別の実施形態による端末較正シナリオの例示的な説明図である。
【図6】本開示の別の実施形態による端末較正シナリオの例示的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の前述およびその他の長所と特徴を得るための方法を説明するために、添付図面に示される本開示の具体的な実施形態を参照して、先に略述した本開示のさらに具体的な説明を行なう。これらの図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示すものであり、したがって、本開示の範囲を制限するものと考えられるべきではない。
【0007】
図1は、一実施形態によるシステム100の例示的な概略図を示す。システム100は、ネットワーク110、端末120、および基地局130を含む。端末120は、無線通信デバイス、ユーザ装置、無線電話、携帯電話、携帯情報端末、ポケットベル、パソコン、選択呼出しレシーバ、または無線ネットワーク上で通信信号を送受信できるその他のデバイスなどの装置であってもよい。
【0008】
ネットワーク110は、無線信号などの信号を送受信できる任意のタイプのネットワークを含む。たとえば、ネットワーク110は、無線遠隔通信ネットワーク、携帯電話ネットワーク、時分割多重アクセス(TDMA)ネットワーク、コード分割多重アクセス(CDMA)ネットワーク、衛星通信ネットワーク、およびその他同様の通信システムを含み得る。たとえば、ネットワーク110は、周波数分割多重無線システムである。周波数分割多重無線システムでは、複数のシンボルを備えるサブフレームが使用されることにより、端末の複数のユーザが様々な周波数にて単一サブフレームで送信を行うことができる。さらに、ネットワーク110は、複数のネットワークを含んでいてもよく、複数の様々なタイプのネットワークを含んでいてもよい。したがって、ネットワーク110は、複数のデータネットワーク、複数の遠隔通信ネットワーク、データネットワークおよび遠隔通信ネットワークの組合せ、ならびに通信信号を送受信できる他の同様の通信システムを含んでいてもよい。
【0009】
動作中、端末120は、基地局130からアップリンクスケジューリング許可信号を受信する。次いで、端末120は、少なくともアップリンクスケジューリング許可信号に基づいて所望電力レベルを確立する。次いで、端末120は、所望電力レベルに基づいてハードウェア電力設定値を設定する。次いで、端末120は、特定の電力較正波形に基づく較正なしで、ハードウェア電力設定値に基づく第1の電力レベルにて第1のサブフレームでデータを送信する。すなわち、端末は、特定の電力較正波形を使用しなくてもよい。次いで、端末120は、第1のサブフレームにおける第1の電力レベルを測定する。端末120は、第1の電力レベルに関連するハードウェア電力設定値を保存し得る。次いで、端末120は、所望電力レベルと測定された第1の電力レベルとの差を判定する。次いで、端末120は、保存されたハードウェア電力設定値を、差に基づいて修正する。次いで、端末120は、所望電力レベルに対応した実質的に同様な特性に基づくことによって第1のサブフレームの送信に対応している次の送信において、上記修正されたハードウェア電力設定値に基づく第2の電力レベルで送信することができる。
【0010】
たとえば、端末120は、サブフレームの全持続時間において較正なしで、新たな電力レベルで送信することができる。較正がないため、そのサブフレームに対する送信電力は誤りがある可能性がある(実際の電力レベルは所望電力レベルP+差電力Δに等しく、ここで、本明細書でデルタとも呼ばれるΔは、正または負でありうる)。しかし、送信を行なっている間、端末120ハードウェアは、使用される実際の(P+Δ)を測定して対応するハードウェア設定値を保存する。端末120が後続のサブフレームで再送信する必要がある場合、端末120は、保存されたハードウェア設定値を使用してそれに若干の修正を加えて誤差(Δ)を補正することで、所望電力レベルPまたは関連電力レベルに近い電力で再送信することができる。これは、再送信に割り当てられる資源が初期送信に割り当てられた資源と全く一致しているかまたは密接に関わっている場合に有効である可能性がある。これはたとえば、ハイブリッド自動要求(HARQ)動作が同期しておりかつ非適応であるときに行なわれる可能性がある。この方法では、端末120は少なくとも再送信中にはより正確な電力レベルで送信しているので、システム性能は較正を採用せずに実現される性能よりも優れている可能性がある。
【0011】
別の例として、端末120は、サブフレームの第1のスロット中に較正なしで送信することができ、この場合、サブフレームは複数のスロットを備えていてもよいが、典型的には2スロットである。較正がないため、そのスロットに対する送信電力は誤りのある可能性がある。この後、第1のスロット中に得られた測定値を用いて、端末120は、残りのサブフレーム(すなわち、第2または後続のスロット中)に対する送信電力を補正することができる。端末120はサブフレームの後半に対してより正確な送信電力を使用するので、システム性能は較正を全く使用しない場合よりも優れている可能性がある。したがって、端末120は、較正に対して任意の新たなシステム資源を利用せずにより正確な電力レベルで送信することができる。より一般的には、端末120は、特定サブ時間間隔またはある時間間隔にわたる事前観察に基づいて、1つまたは複数の後続のサブ時間間隔にわたってその送信電力レベルを調整してもよい。
【0012】
図2は、一実施形態による端末120などの無線通信デバイス200の例示的なブロック図である。無線通信デバイス200は、ハウジング210、ハウジング210に結合されたコントローラ220、ハウジング210に結合されたオーディオ入力および出力回路230、ハウジング210に結合されたディスプレイ240、ハウジング210に結合されたトランシーバ250、ハウジング210に結合されたユーザインタフェース260、ハウジング210に結合されたメモリ270、ならびにハウジング210およびトランシーバ250に結合されたアンテナ280を含む。また、無線通信デバイス200は、電力レベル確立モジュール290、電力レベル測定モジュール292、および電力レベル差判定モジュール294を含む。電力レベル確立モジュール290、電力レベル測定モジュール292、および電力レベル差判定モジュール294は、コントローラ220に結合されていてもよいし、コントローラ220内にあってもよいし、メモリ270内にあってもよいし、自律モジュールであってもよいし、ソフトウェアであってもよいし、ハードウェアであってもよいし、または無線通信デバイス200のモジュールにとって有用な他の形態で実現されてもよい。
【0013】
ディスプレイ240は、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、または情報を表示する他の任意の手段でありうる。トランシーバ250は、トランスミッタおよび/またはレシーバを含む。オーディオ入力および出力回路230は、マイクロフォン、スピーカー、トランスデューサ、または他の任意のオーディオ入力および出力回路を含みうる。ユーザインタフェース260は、キーパッド、ボタン、タッチパッド、ジョイスティック、追加ディスプレイ、またはユーザと電子デバイスとのインタフェースを提供するのに有用な他の任意のデバイスを含みうる。メモリ270は、ランダム・アクセス・メモリ、読取り専用メモリ、光メモリ、加入者識別モジュールメモリ、または無線通信デバイスに結合されうる他の任意のメモリを含んでいてもよい。
【0014】
動作中、コントローラ220は、無線通信デバイス200の動作を制御する。トランシーバ250は、周波数分割多重無線システム内のユーザ装置でアップリンクスケジューリング許可信号を受信する。電力レベル確立モジュール290は、少なくともアップリンクスケジューリング許可信号に基づいて所望電力レベルを確立し、所望電力レベルに基づいてハードウェア電力設定値を設定する。所望電力レベルは、電力制御機能と、ネットワークまたは基地局から受信された命令(たとえば、スケジューリング許可信号)とから決定することができる。無線通信デバイス200は、所望電力レベルを実現し得ると判定されるトランスミッタ利得レベルを設定し得るが、制約(温度、負荷インピーダンス、搬送波帯域幅内の帯域幅変動および周波数位置、電源電圧など)があるため、実際の電力レベルは有意な量、たとえば、±5dBだけ相殺され得る。次いで、トランシーバ250は、ハードウェア電力設定値に基づく第1の電力レベルにて第1のサブフレームでデータを送信する。電力レベル測定モジュール292は、第1のサブフレームにおける第1の電力レベルを測定する。電力レベル差判定モジュール294は、所望電力レベルと測定された第1の電力レベルとの差を判定する。次いで、電力レベル確立モジュール290は、その差に基づいてハードウェア電力設定値を修正する。次いで、トランシーバ250は、第1のサブフレームの送信に対応する次の送信において、上記修正されたハードウェア電力設定値に基づく第2の電力レベルで送信することができる。
【0015】
所望電力レベルは、アップリンクスケジューリング許可信号に関連する経路損失送信電力制御命令に基づいていることによって、少なくともアップリンクスケジューリング許可信号に基づいている。たとえば、端末120は、所望電力レベルを、部分的に経路損失測定値に基づくものとし、さらにスケジューリング許可信号で送出される電力制御命令を使用する開ループ電力制御アルゴリズムから決定してもよい。さらに、スケジューリング許可信号で指示される割当周波数帯域幅も端末の所望送信電力レベルを決定するために使用することができる。
【0016】
電力レベル確立モジュール290、電力レベル測定モジュール292、および電力レベル差判定モジュール294は、無線通信デバイス200の電力を較正するために特定の電力較正波形を送信するトランシーバに代わって、無線通信デバイス200の電力を較正する働きをすることができる。電力レベル確立モジュール290は、電力レベル測定モジュール292が第1の電力レベルを測定した後、第1の電力レベルに関連するハードウェア電力設定値を保存し、電力レベル差判定モジュールが差を判定した後、その差に基づいて、保存されたハードウェア電力設定値を修正することができる。次の送信は、所望電力レベルに対応する実質的に同様の条件下での送信であることによって、前回のサブフレームの送信に対応しうる。
【0017】
図3は、別の実施形態による無線通信デバイス200の動作を示す例示的なフローチャート300である。ステップ310において、フローチャートが開始する。ステップ315において、無線通信デバイス200は、周波数分割多重無線システムにおけるアップリンクスケジューリング許可信号を受信する。アップリンク信号伝達許可信号は、前回の送信で得られた測定値に基づいて端末がそのアップリンク送信を修正可能な電力較正ビットを含んでいてもよい。
【0018】
ステップ320において、無線通信デバイス200は、少なくともアップリンクスケジューリング許可信号に基づいて(たとえば、アップリンクスケジューリング許可信号によって指示されるような送信電力制御命令および資源割当周波数帯域幅に基づいて)所望電力レベルを確立する。所望電力レベルは、アップリンクスケジューリング許可信号に関連する経路損失送信電力制御命令に基づくことによって少なくともアップリンクスケジューリング許可信号に基づく。たとえば、電力制御機能は、無線通信デバイス200が既知のダウンリンク共通参照シンボル電力レベルに基づいて測定する経路損失推定値と、資源割当周波数帯域幅とを使用し、電力制御(ステップ)命令を指示することで所望電力レベルを決定してもよい。所望電力レベルを確立した後のステップは、特定の電力較正波形を送信せずに実行される。
【0019】
ステップ325において、無線通信デバイス200は、所望電力レベルに基づいてハードウェア電力設定値を設定する。ステップ330において、無線通信デバイス200は、ハードウェア電力設定値に基づく第1の電力レベルにて第1のサブフレームでデータを送信する。ステップ335において、無線通信デバイス200は、第1のサブフレームにおける第1の電力レベルを測定する。第1の電力レベルを測定するとき、無線通信デバイス200は第1の電力レベルに関連するハードウェア電力設定値を保存してもよい。ステップ340において、無線通信デバイス200は、所望電力レベルと測定された第1の第1の電力レベルとの差を判定する。ステップ345において、無線通信デバイス200は、その差に基づいて、ハードウェア電力設定値を修正する。無線通信デバイス200は、差を判定した後、その差に基づいて、保存されたハードウェア電力設定値を修正する。
【0020】
ステップ350において、無線通信デバイス200は、第1のサブフレームの送信に対応する次の送信に関し、修正されたハードウェア電力設定値に基づく第2の電力レベルにて送信を行うことができる。次の送信は様々な方法で前回の送信に対応しうることが想定される。たとえば、次の送信は、第1のサブフレームの送信に使用される搬送波帯域幅においてほぼ同じ周波数位置(すなわち、同じ周波数帯域)を有するものであることによって第1のサブフレームの送信に対応しうる。つまり、次の送信の資源割当の中心は、第1の送信の資源割当の中心に比較的近い。次の送信は、第1のサブフレームの送信の資源割当帯域幅内に入る周波数帯域で行われるものであることによって、第1のサブフレームの送信に対応しうる。たとえば、無線通信デバイスが1.08MHzの帯域幅を有する資源割当(すなわち、各々が180kHzに及ぶ6つの資源ブロック)を受信しているものと仮定して、無線通信デバイスが5MHz搬送波の低い1.08MHz帯で送信する場合、パケットの後続の送信または再送信は、次の数個のサブフレームで生じるか、あるいはNチャネル停止および待機プロトコルに基づく所与のHARQプロセスのHARQチャネルが発生すると生じ、かつ新たな送信または再送信資源割当帯域幅が前回の1.08MHz送信と実質的に重なるかまたはこの送信内に含まれる場合、新たな送信または再送信は1.08MHzに対応する。次の送信は、第1のサブフレームの送信からの次のスロットにあることによって、第1のサブフレームの送信に対応しうる。サブフレームは2スロットからなりうることに留意されたい。次の送信は、第1のサブフレームの送信後にN個のサブフレームが送信されるように、同じハイブリッド自動反復要求(HARQ)プロセスを有することによって第1のサブフレームの送信に対応しうる。次の送信は、第1のサブフレームの送信に関連する制御チャネルに使用される後続のサブフレームであることによって第1のサブフレームの送信に対応しうる。次の送信は、第1のサブフレームの送信からの所定時間間隔内に送信されるものであることによって第1のサブフレームの送信に対応しうる。次の送信は、所望電力レベルに対応する実質的に同様の条件下で送信されるものであることによって第1のサブフレームの送信に対応しうる。実質的に同様の条件は、温度条件、電圧条件、負荷インピーダンス条件、全電力条件、割当帯域幅条件、および/または周波数帯域条件を含みうる。たとえば、無線通信デバイス200は、諸条件が実質的に同様であると判断すると、次の送信が第1にサブフレームの送信に対応すると判断することができる。次の送信は、第1のサブフレームの送信に関連する探測基準信号(sounding reference signal )に使用される次のシンボルであることによって第1のサブフレームの送信に対応しうる。
【0021】
図4は、一実施形態による端末較正のシナリオ400の例示的な説明図である。シナリオ400は、時間に関して様々な端末に割り当てられるシステム帯域幅410を示す。帯域幅は、アップリンク制御信号伝達420に割り当てられる。時間周期はサブフレーム430に分割され、このサブフレーム430はスロット440に分割される。たとえば、各サブフレームは1msであってよく、各スロットは0.5msであってよいが、当業者は各スロットのサイズおよび関係が種々のシステムで必要な種々の値を有することを認識し得る。
【0022】
典型的に、前回の送信に対して決定される測定電力は現在の送信を調整するために使用されるものと想定される。しかし、現在の送信の条件が前回の送信の条件に対してあまりにも類似していなければ(たとえば、前回の送信からの経過時間が閾値を超えている、あるいは温度が著しく変化している)、前回の測定値に基づいて電力調整が行なわれないようにデフォルト設定値を現在の送信に使用してもよい。また、端末120は送信内に単一の分離されたサブフレームまたは複数のサブフレームを送信できるものと想定される。さらに、資源ブロック(RB)割当は、サブフレームが分離されているかそれとも連続的であるかに関わらず、サブフレームによって異なるものと想定される。出力、RBの数、および周波数帯内のRB位置はサブフレームによって大きく変わるが、端末120は、送信において一定のパターンまたは類似のパターンを利用して電力レベルを制御することができる。
【0023】
ロング・ターム・エボリューション(LTE)アップリンクでは、同期非適応HARQ再送信が使用される。このため、再送信の周波数資源割当を初期送信に使用される周波数資源割当と完全に一致させることができる。HARQ送信を使用するとき、各送信間に往復遅延450があってもよい。この例では、往復遅延は8msであると例示されているが、遅延はネットワークおよび条件に応じて変化し得る。
【0024】
動作中、端末120は、サブフレームの全持続期間にわたって電力レベル(PT1)で初期送信460を較正なしで送信することができる。較正がないため、そのサブフレームに関する送信電力は誤りがある可能性がある。しかし、送信を行なっている間、端末ハードウェアは、使用される実際の電力を測定して対応するハードウェア設定値を保存する。これにより、サブフレームの後続の再送信470において、端末は、保存されたハードウェア設定値を使用してそれに若干の修正を加えて誤差(Δlarge)を補正することにより、最小限の誤差(Δsmall)を有する所望電力(P)に近い電力で送信することができる。
【0025】
図5は、別の実施形態による端末較正のシナリオ500の例示的な説明図である。シナリオ500は、時間に関して様々な端末に割り当てられるシステム帯域幅510を示す。帯域幅は、アップリンク制御信号伝達520に割り当てられる。時間周期はサブフレーム530に分割され、このサブフレーム530はさらにスロット540に分割される。
【0026】
動作中、無線ボイス・オーバー・インターネット・プロトコル(VoIP)アップリンク送信は、固定帯域幅送信の反復パターンを特徴とする。また、アップリンク肯定応答/否定応答(ACK/NACK)およびチャネル品質指標(CQI)送信は、アップリンクVoIPアクティビティで組み入れられ、これらの送信はアップリンク制御信号伝達520用に確保された比較的狭い周波数帯域端領域で行なわれる。
【0027】
信号対ノイズ比(SNR)性能要件は、端末120が各種送信(VoIPまたはACK/NACK)の副搬送波当たりほぼ同じ電力を生成するように規定することができるが、VoIP送信の総電力はこの規定のない他の信号タイプよりも大きくなる可能性があり、ACK/NACK送信に使用される電力からずれた電力を必要とする。送信は、制御資源またはデータ資源のいずれかで実行される可能性があるが、典型的にこれらの両方で実行される可能性はない。初期のサブフレームnで電力を測定することを試み、これを後のサブフレームn+1に対する特定の目標に設定すると、公称電力オフセットに加え、2つの異なる送信間の周波数オフセットにも起因する新たな誤差が生じ得る。サブフレームn(580)、サブフレームn+20(581)、およびサブフレームn+40(582)がすべて同じ送信タイプの場合には、サブフレーム580における測定電力(PT1)を所望電力(P)および誤差(Δlarge)として扱うことにより、その判定された誤差を使用してより一層正確な電力値(PTn)を設定し、対応する後続のサブフレームn+20(581)により小さい誤差(Δsmall)を生成することができる。同様に、後のサブフレームn+20(581)での測定値を使用することで、さらに後のサブフレームn+40(582)での送信電力精度をさらに改善することができる。電力、温度、電源電圧、周波数、および/または負荷など、送信利得に影響を与えるパラメータが対応するサブフレーム間で類似している限り、この方法によって電力設定精度をかなり改善することができる。したがって、電力制御に対応するサブフレームを採用すると、電力制御精度を大幅に改善することができる。送信は、この手法を採用するために連続的である必要はない。対応するサブフレーム間に送信のない間隔があり得るが、電力制御精度はそれでも改善されうる。
【0028】
図6は、別の実施形態による端末較正のシナリオ600の例示的な説明図である。シナリオ600は、時間に関して様々な端末に割り当てられるシステム帯域幅610を示す。帯域幅は、アップリンク制御信号伝達620に割り当てられる。時間周期はサブフレーム630に分割され、このサブフレーム630はさらにスロット640とスロット650とに分割される。
【0029】
動作中、端末120は、サブフレーム630の第1のスロット640中に較正なしで送信することができる。較正がないため、そのスロットの送信電力(PT1)は、所望送信電力(P)と異なる(Δlarge)可能性がある。第1のスロット640中に得られた測定値を用いて、端末120はサブフレーム630の残りのスロットに対する送信電力(PT2)を補正することができる。新たな送信電力(PT2)が依然小さい誤差(Δsmall)を含んでいる可能性があるので、後のサブフレームでさらなる補正が行われてもよい。端末120は後半のサブフレームに対してより正確な送信電力を使用するので、システム性能は較正を全く採用しない場合よりも優れている。
【0030】
別の実施形態において、端末120は、較正なしでランダム・アクセス・チャネル(RACH)送信を行なうことができる。較正がないため、その初期送信の送信電力(PT1)は所望送信電力(P)と(誤差Δlargeだけ)異なる可能性がある。初期送信中に得られた測定値を用いて、端末120は比較的小さい誤差(Δsmall)を有するように後続の送信の送信電力(PT2)を補正すことができるとともに、これら後続の送信に基づいてさらなる補正を行うこともできる。
【0031】
本開示の方法は、好ましくはプログラムプロセッサで実行される。しかし、コントローラ、フローチャート、およびモジュールは、汎用または専用コンピュータ、プログラムマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラおよび周辺集積回路素子、集積回路、個別素子回路などのハードウェア電子回路または論理回路、プログラム可能論理デバイスなどに実装されてもよい。一般に、本フローチャートの処理を実装できる有限状態機械を備えるデバイスは、本開示のプロセッサ機能を実現するために使用することができる。
【0032】
本開示はその特定の実施形態を用いて説明したものであるが、多くの代替、修正、および変形があることは当業者には明らかである。たとえば、実施形態の様々な構成部品が他の実施形態において置換、追加、または代用されてもよい。また、各図の素子のすべてが開示された実施形態の動作に必要ではない。たとえば、当業者は独立請求項の素子を利用するだけで本開示の教示を作成し利用することができる。したがって、本明細書に記載される本開示の好ましい実施形態は、説明を目的とするものであって制限を目的とするものではない。様々な変更が本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく可能である。
【0033】
本明細書において、「第1の」「第2の」などの関連用語は、1つの実在物または作用を別の実在物または作用と区別するためにのみ使用されており、このような実在物間または作用間の実際の関係または順序を必ずしも要求または意味するものではない。用語「備える」、「備えている」、またはこれらの用語の他の変形は、一連の素子を備えるプロセス、方法、製品、または装置がこれらの素子のみを含むのではなく、明示的に記載されていない他の素子、あるいはこのようなプロセス、方法、製品、または装置に固有の他の素子も含むものとして、非排他的包含を対象とすることを意図する。「一つの」などで始まる素子は、素子を備えるプロセス、方法、品目、または装置における追加的な同一素子の存在を除外するものではない。また、用語「別の」は、少なくとも第2またはそれ以上として定義される。本明細書で使用される用語「含む」、「有する」などは、「備えている」と定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数分割多重無線システムにおけるユーザ装置でアップリンクスケジューリング許可信号を受信すること、
少なくとも前記アップリンクスケジューリング許可信号に基づいて所望電力レベルを確立すること、
前記所望電力レベルに基づいてハードウェア電力設定値を設定すること、
前記ハードウェア電力設定値に基づく第1の電力レベルにて第1のサブフレームでデータを送信すること、
前記第1のサブフレームにおける前記第1の電力レベルを測定すること、
前記所望電力レベルと前記測定された第1の電力レベルとの差を判定すること、
前記差に基づいて前記ハードウェア電力設定値を修正すること、
前記第1のサブフレームの送信に対応する次の送信において、前記修正されたハードウェア電力設定値に基づく第2の電力レベルで送信を行うこと、
を備える方法。
【請求項2】
前記所望電力レベルは、前記アップリンクスケジューリング許可信号に関連する経路損失送信電力制御命令に基づいていることによって、少なくとも前記アップリンクスケジューリング許可信号に基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の電力レベルを測定した後、前記第1の電力レベルに関連するハードウェア電力設定値を保存することをさらに備え、
前記修正することは、前記差を判定した後、前記保存されたハードウェア電力設定値を前記差に基づいて修正することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記次の送信の前記所望電力レベルは、前記第1の送信の前記所望電力レベルと同一であるか、またはそのレベルに対して既知の差を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記次の送信は、前記第1のサブフレームの送信に使用される周波数帯域と同じ周波数帯域で行われることによって前記第1のサブフレームの送信に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記次の送信は、前記第1のサブフレームの送信の資源割当帯域幅に入る周波数帯域で行われることによって前記第1のサブフレームの送信に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記次の送信は、前記第1のサブフレームの送信からの次のスロットであることによって、前記第1のサブフレームの送信に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記次の送信は、前記第1のサブフレームの送信に関連するハイブリッド自動反復要求プロセスに対応する後続のサブフレームであることによって、前記第1のサブフレームの送信に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記次の送信は、前記第1のサブフレームの送信に関連する制御チャネルに使用される後続のサブフレームであることによって、前記第1のサブフレームの送信に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記次の送信は、前記第1のサブフレームの送信から所定時間内に送信されるものであることによって、前記第1のサブフレームの送信に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記次の送信は、前記所望電力レベルに対応する実質的に同様の条件下で送信されるものであることによって、前記第1のサブフレームの送信に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記実質的に同様の条件は、温度条件、電圧条件、負荷インピーダンス条件、全電力条件、割当周波数帯域幅条件、および周波数帯域条件の組から選択される少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記次の送信は、前記第1のサブフレームの送信に関連する探測基準信号に使用される次のシンボルであることによって、前記第1のサブフレームの送信に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アップリンクスケジューリング許可信号を受信することは、周波数分割多重無線システムにおけるユーザ装置で、電力較正ビットを含むアップリンクスケジューリング許可信号を受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
周波数分割多重無線システムにおけるユーザ装置でアップリンクスケジューリング許可信号を受信するように構成されたトランシーバと、
前記トランシーバに結合され、装置動作を制御するように構成されたコントローラと、
少なくとも前記アップリンクスケジューリング許可信号に基づいて所望電力レベルを確立し、前記所望電力レベルに基づいてハードウェア電力設定値を設定するように構成された電力レベル確立モジュールであって、前記トランシーバが前記ハードウェア電力設定値に基づく第1の電力レベルにて第1のサブフレームでデータを送信するように構成されている、前記電力レベル確立モジュールと、
前記第1のサブフレームにおける前記第1の電力レベルを測定するように構成された電力レベル測定モジュールと、
前記所望電力レベルと前記測定された第1の電力レベルとの差を判定するように構成された電力レベル差判定モジュールであって、前記電力レベル確立モジュールが前記差に基づいて前記ハードウェア電力設定値を修正するように構成されている、前記電力レベル差判定モジュールと、
を備え、
前記トランシーバは、前記第1のサブフレームの送信に対応する次の送信において、前記修正されたハードウェア電力設定値に基づく第2の電力レベルで送信を行うように構成されている、装置。
【請求項16】
前記所望電力レベルは、前記アップリンクスケジューリング許可信号に関連する経路損失送信電力制御命令に基づいていることによって、少なくとも前記アップリンクスケジューリング許可信号に基づいている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記電力レベル確立モジュール、前記電力レベル測定モジュール、および前記電力レベル差判定モジュールは、前記装置の電力を較正するために特定の電力較正波形を送信する前記トランシーバに代って前記装置の電力を較正するように動作する、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記電力レベル確立モジュールは、前記第1の電力レベルが測定された後、前記第1の電力レベルに関連するハードウェア電力設定値を保存し、前記差が判定された後、前記保存されたハードウェア電力設定値を前記差に基づいて修正するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記次の送信は、前記所望電力レベルに対応する実質的に同様の条件下で送信されるものであることによって、前記第1のサブフレームの送信に対応する、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
周波数分割多重無線システムにおけるユーザ装置でアップリンクスケジューリング許可信号を受信すること、
少なくとも前記アップリンクスケジューリング許可信号に基づいて所望電力レベルを確立すること、
前記所望電力レベルに基づいてハードウェア電力設定値を設定すること、
特定の電力較正波形に基づく較正なしで、前記ハードウェア電力設定値に基づく第1の電力レベルにて第1のサブフレームでデータを送信すること、
前記第1のサブフレームにおける前記第1の電力レベルを測定すること、
前記第1の電力レベルに関連するハードウェア電力設定値を保存すること、
前記所望電力レベルと前記測定された第1の電力レベルとの差を判定すること、
前記差に基づいて前記保存されたハードウェア電力設定値を修正すること、
前記所望電力レベルの特性に対応する実質的に同様な特性に基づいた、前記第1のサブフレームの送信に対応している次の送信において、前記修正されたハードウェア電力設定値に基づく第2の電力レベルで送信を行うこと、
を備える方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−537498(P2010−537498A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521140(P2010−521140)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/073042
【国際公開番号】WO2009/023726
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(390009597)モトローラ・インコーポレイテッド (649)
【氏名又は名称原語表記】MOTOROLA INCORPORATED
【Fターム(参考)】