説明

味マスキング医薬組成物

本発明は、クラリスロマイシンなどの不快な味および/または苦味を有する活性物質を含む被覆粒子と、およびすぐ使用できる懸濁液剤内の水性懸濁媒体と懸濁液剤主成分との混合物が高い浸透圧重量モル濃度を得ることを可能にする浸透圧活性物質を含む懸濁液剤主成分とを含む、すぐ使用できる懸濁液剤の調製に適した経口投与のための医薬組成物に関する。前記すぐ使用できる懸濁液剤は、規定された浸透圧条件により長時間にわたってその嗜好性を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与時に不快な味および/または苦味を有する活性物質を含む被覆粒子を含む経口投与のための医薬組成物に関する。より詳細には、本発明は、定義された浸透圧条件により長時間にわたりその嗜好性を維持する懸濁液剤の形態であるマクロライド抗生物質、好ましくはクラリスロマイシンを含む、味マスキングされた被覆粒子を含む医薬組成物に関する。さらに、本発明は、前記組成物を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬学的に活性な物質を、錠剤またはカプセルなどの従来の固体形態で経口投与することは、前記固形物全部の嚥下が困難である特定の患者グループ(例えば子供および高齢の患者など)においてしばしば問題を生じさせる。これらの患者にとっての薬物の適した剤形は、例えば液体形態(例えば溶液、懸濁液、シロップもしくは乳濁液など)、または別の固体形態(チュアブル錠、発泡錠もしくは可溶性錠剤など)であってよい。これらの剤形は、知覚できる程度の活性物質が味蕾に触れることを通常防止せず、そのために活性物質が不快な味および/または苦味を有する場合、これは重要な問題である。この場合、活性物質は、製剤の口当たりが良くなるように味をマスキングする必要があり、これにより患者が薬物の服用を拒むリスクが、減少する。
【0003】
ひどく苦い味のする活性物質、例えばエリスロマイシンまたはクラリスロマイシンなどのマクロライド類を味マスキングすることは、特にそれらが懸濁液剤中に含まれる場合、重要な課題である。甘味料(砂糖、人工甘味料など)、フルーツの香り、増粘剤およびアミノ酸の添加などの従来の味マスキング技術では、許容できる味の医薬組成物を得られないことが多い。
【0004】
主に、このような剤形の活性物質の1部は、唾液および/または投与のための液体中に溶解して、不快な味を生じさせる。この問題を克服するため、懸濁液剤で、または口腔内で溶解するであろう前記活性物質を小部分のみとするかまたは溶解させないという方法で、前記活性物質の溶解性に影響を及ぼすことは、一般的である。これは、特別な包埋材で苦味を有する活性物質を包埋することにより、または前記薬剤をコーティングすることによりしばしば達成される。しかしながら、これらの技術には制限があり、および通常、中程度に苦い薬剤のみについて有効であることが、判明している。包埋および/またはコーティング技術は、活性物質が消化管に望ましく放出されて良好な生物学的利用能を達成することに悪影響を及ぼす可能性もある。
【0005】
活性物質の十分な生物学的利用能を確実にするため、短時間、活性物質の溶解を遅延させるコーティング(例えば脂質および/またはワックスコーティング)、またはわずかに遅延させる高分子膜などが、用いられ得る。しかしながら、これらのコーティングは、前記懸濁液剤が、その再構成の直後、すなわち水媒体への分散後に投与される場合のみに、十分な味マスキングを提供することが出来る。
【0006】
国際出願WO93/12771には、例えば穀物タンパク質由来のプロラミン分画(fraction)、好ましくはゼイン、および好ましくは脂肪酸である可塑剤を含む、高分子コーティング層を有するクラリスロマイシンを含む、核粒子をコーティングすることによる味マスキングに対する他の技術が開示され、ここにおいて、前記コーティング層は、比較的厚い。
【0007】
他の技術は、国際出願WO00/76479A1に記載されており、ここにおいて、苦い味のする活性物質は、2つの腸溶性高分子、すなわちメタクリル酸共重合体およびフタル酸高分子の組み合わせでできている味マスキングマトリックスで包埋され、これが場合によりコーティングされていてもよい。
【0008】
従来の味マスキング技術の大部分は、再構成された懸濁液剤としてその好ましい味を長期間、例えば少なくとも1から2週間にわたって維持することが必要とされる懸濁液剤において、十分な味マスキングを提供することができない。このような場合、pHに関連する溶解性を有するフィルムコーティングが、通常使用される。これは、懸濁液剤におけるpH値が、フィルムコーティングに含まれるフィルム形成成分(例えばフィルム形成高分子)が溶解しない値に調節されることを意味する。pH値は、投与に応じ、および用いたコーティング材料に依存して変化し、活性物質は、コーティングが酸溶解性である場合は胃に、または塩基に溶解する腸溶性もしくは胃で溶けない(gastro−resistant)コーティングの場合は腸(例えば小腸)に放出されるであろう。
【0009】
国際出願WO91/16043は、5またはそれより大きいpHでのみ溶解可能な高分子コーティングの核粒子への適用、および酸性化合物を製剤に添加することで、口腔内におけるコーティング膜の溶解を、減少または防止することを開示している。
【0010】
しかしながら、前記フィルムコーティングを釣り合いのよいものにすることが重要である。強すぎたりおよび/または厚すぎたりするフィルムコーティングは、従来の即放性製剤としては許容されないであろう程度まで、胃腸管における薬剤の放出速度を遅延させる可能性がある。
【0011】
もう1つの問題は、上記のフィルムコーティング、例えば高分子コーティングは、完全に「漏洩しない」ことはないということである。これは、損傷を受けていないフィルムコーティングを用いた場合でさえ、活性物質の1部が、懸濁液剤へ拡散することにより、被覆粒子から常時放出されることを意味する。本明細書において、これを「漏出」と呼ぶ。これにより摂取後に苦い味覚が引き起こされる可能性がある。
【0012】
一般に、懸濁液剤などの医薬組成物の液体成分のpH値は、コーティングが溶解および/または腐食しないであろうことを確実にするであろう値に調整される。しかしながら、味マスキングされた活性物質が、このpH範囲で良好な溶解性を有する場合、これは、更に不快な味の活性物質の拡散を増大させ、これにより懸濁液剤中へのおよび/または経口投与後の口腔内における漏出を引き起こすであろう。
【0013】
更に、不快な味および/または苦い味のする薬剤を含む口当たりのよい液状剤形を調製するための従来技術は、高価で複雑な調製方法を含み得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、不快な味および/または苦い味のする、薬学的に活性な物質を含む被覆粒子を含む液状製剤、特に懸濁液剤を提供することであり、これは口当たりがよく、およびこれは、例えば水の添加により再構成された後、長時間にわたりその嗜好性を維持する。さらに、前記懸濁液剤は、十分な生物学的利用能、すなわち、経口投与後の活性物質の消化管における迅速な放出を示すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の概要)
本発明者らは、懸濁液剤の味を、再構成された懸濁液剤の中の浸透圧重量モル濃度を調節することを通じて大幅に改善することが可能であることを、驚くべきことに、見いだした。より具体的に、懸濁液剤主成分の水性懸濁媒体との混合物の浸透圧重量モル濃度を、懸濁媒体の1kg当たり、例えば1リットルの水当たり約2000ミリオスモル以上の高い濃度に調節し、および浸透圧重量モル濃度を指定範囲内に維持する。これは、本明細書に記載する「浸透圧活性」物質を、懸濁液剤主成分へ加えることにより達成することができる。前記懸濁液剤主成分を水性懸濁媒体と混合する場合、それにより得られる高い浸透圧重量モル濃度は、再構成を例えば水で行った後、すぐ使用できる(ready−to−use)懸濁液剤に懸濁した被覆粒子からの活性物質の漏出をおそらく減少させる。
【0016】
従って、1つの態様において、本発明は、
a)不快な味および/または苦味を有する少なくとも1つの薬学的に活性な物質および場合により少なくとも1つの賦形剤を含む被覆粒子、ならびに
b)すぐ使用できる懸濁液剤中の水性懸濁媒体と懸濁液剤主成分の混合物に、高い浸透圧重量モル濃度を提供することを可能にする、少なくとも1つの浸透圧活性物質を含む前記懸濁液剤主成分、ならびに
c)場合により、少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤、
を含み、ここにおいて、前記高い浸透圧重量モル濃度が懸濁媒体の1kg当たり2000ミリオスモル以上である、すぐ使用できる懸濁液剤の調製に適した経口投与のための医薬組成物を提供する。
【0017】
好ましくは、前記被覆粒子は、味マスキングされる。
【0018】
好ましくは、前記水性懸濁媒体は、水である。
【0019】
好ましくは、前記懸濁液剤主成分と水性懸濁媒体との混合物の浸透圧重量モル濃度は、懸濁媒体の1kg当たり、例えば1リットルの水当たり2500ミリオスモル以上である。
【0020】
好ましくは、前記懸濁液剤主成分と水性懸濁媒体との混合物の浸透圧重量モル濃度は、懸濁媒体の1kg当たり、例えば1リットルの水当たり約2500から約3500ミリオスモルである。
【0021】
好ましくは、前記浸透圧活性物質は、ショ糖、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルトデキストリン、シクロデキストリン、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、「浸透圧活性」物質は、ショ糖である。
【0022】
好ましくは、前記被覆粒子は機能的コーティングを含み、より詳細には、半透性である機能的コーティングを含む。好ましくは、前記コーティングは、腸溶コーティング、すなわち胃で溶けないコーティングである。
【0023】
被覆粒子に含まれる活性物質は、好ましくはエリスロマイシンおよびその誘導体、クラリスロマイシン、アジスロマイシンまたはロキシスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質であり、最も好ましくはクラリスロマイシンである。
【0024】
本発明はさらに、上述のように、酸性または塩基性添加剤を、好ましくは本質的に含まない、すぐ使用できる懸濁液剤の形態における経口投与のための医薬組成物を提供する。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、
a)不快な味および/または苦味を有する少なくとも1つの薬学的に活性な物質および場合により少なくとも1つの賦形剤を含む被覆粒子と、ショ糖、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルトデキストリン、シクロデキストリン、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの浸透圧活性物質を含む懸濁液剤主成分と、ならびに場合により少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤とを混合して乾燥懸濁混合物を得る工程であって、ここにおいて、前記浸透圧活性物質の量は、すぐ使用できる懸濁液剤中の水性懸濁媒体と前記懸濁液剤主成分との混合物が、高い浸透圧重量モル濃度を得るのに十分であり、
b)場合により、工程a)で得た懸濁混合物を容器に充填する
工程を含む、すぐ使用できる懸濁液剤の調製に適した経口投与のための医薬組成物を調製するための方法を提供する。
【0026】
他の態様において、本発明は、
a)不快な味および/または苦味を有する少なくとも1つの薬学的に活性な物質および場合により少なくとも1つの賦形剤を含む被覆粒子と、ショ糖、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルトデキストリン、シクロデキストリン、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの浸透圧活性物質を含む懸濁液剤主成分、ならびに場合により少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤とを混合して乾燥懸濁混合物を得る工程であって、ここにおいて、前記浸透圧活性物質の量は、すぐ使用できる懸濁液剤中の水性懸濁媒体と前記懸濁液剤主成分との混合物が、高い浸透圧重量モル濃度を得るのに十分であり、および
b)工程a)で得た乾燥懸濁混合物に水を加え、すぐ使用できる懸濁液剤を形成する工程、ならびに
c)場合により前記すぐ使用できる懸濁液剤を容器に充填する
工程を含む、すぐ使用できる懸濁液剤を調製するための方法を提供する。
【0027】
本発明のすぐ使用できる懸濁液剤は、少なくとも1週間以上、好ましくは少なくとも2週間、味がよい。
【0028】
さらに、本発明の医薬組成物、例えばすぐ使用できる懸濁液剤は、消化管で見られるような環境状態における活性物質の迅速および量的に十分な放出(これは、良好な生物学的利用能を意味する)を示す。
【0029】
本発明の医薬組成物のさらなる利点は、酸性成分を省くことで芳香化のための選択のより多くの自由を提供することである。なぜならば、それは、そうでなければ酸味と不適合である多くの芳香が、例えば、本発明の懸濁液剤に使用できることを意味するからである。
【0030】
さらに、酸性媒体に溶解できるフィルムコーティングが被覆粒子において使用される場合、芳香化をよりいっそう困難にする塩基性(すなわちアルカリ)添加物を懸濁液剤主成分および/または乾燥懸濁混合物に添加する必要もない。
【0031】
最後に、本発明の懸濁液剤は、簡単な製造方法で調製することができ、それにより従来技術の味マスキング組成物のための高価で複雑な調製方法を回避することができる。
【0032】
(発明の詳細な説明)
本明細書において用いる「懸濁液剤」は、特に指定のない限り、経口投与のための液状製剤を指し、それは、少なくとも1つの薬学的に活性な物質、および少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤を含む、被覆された、例えば味マスキングされた粒子を含み、ならびにそれが、経口投与のための使用の前、本明細書に記載のような乾燥懸濁混合物(例えば、乾燥粉末の形態)を、本明細書において「懸濁媒体」と呼ぶ水性媒体中に溶解または懸濁させることにより調製される。好ましくは、該懸濁媒体は、水である。
【0033】
本明細書において用いる「懸濁液剤主成分」という用語は、例えば、少なくとも1つの浸透圧活性物質および場合により少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤を含む成分の乾燥混合物を意味する、と理解され、これはそれ自体が例えば味マスキングされた、不快な味および/または苦い味のする活性成分を含む被覆粒子と混合されて「乾燥懸濁混合物」を形成することができる。前記「乾燥懸濁混合物」は、続いて懸濁媒体中に溶解または懸濁され得る。本明細書において用いる「懸濁媒体」という用語は、乾燥懸濁混合物に加えて、その後患者に投与できる、すぐ使用できる懸濁液剤を得る媒体を意味する。好ましくは、懸濁媒体は、水性であり、最も好ましくは水である。本明細書において「再構成された懸濁液剤」という用語は、「すぐ使用できる」懸濁液剤と同義であると理解される。
【0034】
本明細書において「機能的コーティング」および「機能的フィルムコーティング」という用語は、規定されたpH値で溶解することができる、すなわち酸性、または中性もしくは塩基性pH値を有する環境において溶解することができるコーティングを包含する、と理解される。このような機能的コーティングは、腸溶コーティングまたは胃で溶けないコーティングを含み、およびさらに味マスキング特性を有し得る。前記機能的コーティングは半透性であってよく、ここで本明細書において用いる「半透性」という用語は、選択的に透過性であること、すなわち、特定の分子が拡散によりコーティングを通過することを意味する、と理解される。
【0035】
本明細書において用いる「粒子」という用語は、粉体より大きい任意の形状の自由に流動することができる物質、例えば結晶、ビーズ(滑らかな円形または球形粒子)、ペレット、球状物および顆粒などを指す。
【0036】
本明細書において用いる「味マスキングされた」という用語は、口当たりを良くするために処理された不快な味の薬学的に活性な物質を含み、および/または薬学的に活性な物質を実質的に口腔内に放出せずに、むしろ例えば胃または腸管に放出する、任意の物質もしくは粒子、または経口医薬組成物を指す。
【0037】
本明細書において用いる「不快な味および/または苦味」は、ヒトの患者の大部分が、前記医薬組成物またはその中に含まれる活性物質が、摂取後に不快な味および/または苦味および/またはひどく苦い味を有する、と判断することを意味する。
【0038】
本発明の懸濁液剤に含まれる被覆粒子は、公知の方法に従って、例えば従来の造粒技術または押出しおよびローラー圧縮技術(例えば、高せん断ミキサー、強制ミキサー、例えばDiosna Collet Gralタイプのもの、ローラー圧縮機、例えばAlexander Huttタイプのもの、または押出し成形機、例えばWerner&PfleidererもしくはTheysonタイプのものを利用する)により調製され得、および次いでコーティングされ得る。あるいは、前記粒子を、ローラー圧縮または溶融押し出しなどの公知の包埋技術を利用することにより、得ることができる。
【0039】
前記粒子は、不快な味および/または苦味を有する少なくとも1つの薬学的に活性な物質を含む。前記活性物質は、マクロライド類(例えば、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、ロキシスロマイシンもしくはアジスロマイシン)などの抗生物質、フルオロキノロン(シプロフロキサシンおよびノルフロキサシンなど)、セファロスポリン(例えば、セフロキシム、セフトリアキソン)または四環系抗生物質(クロラムフェニコールもしくはクロルプロマジンなど)、または他の抗菌剤(ペニシリンもしくはアンピシリンなど)、鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、鬱血除去薬、抗炎症剤、催眠剤、鎮静剤、精神安定剤、ビタミン、酵素、栄養補給剤、ホルモンなどならびにその薬学的に許容できる塩およびエステルを含むが、これらに限定されるものではない。マクロライド系抗生物質、特にエリスロマイシンおよびクラリスロマイシンなどのひどく苦い味を有するそれらは、特に本発明に適している。従って、前記活性物質は、好ましくはエリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質またはその誘導体の1つである。最も好ましくは、活性物質は、クラリスロマイシンである。
【0040】
前記粒子は、場合により、さらに少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤を含む。本明細書において用いる「賦形剤」という用語は、例えば、湿潤剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香料および甘味剤ならびに当技術分野で公知の他のものを含む好都合な剤形を調製するために活性成分と組み合わせることができる任意の物質をいう。
【0041】
湿潤剤の例は、例えばPoloxamerなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック重合体である。
【0042】
本発明の製剤における使用に適した結合剤として、限定されるものではないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびメチルセルロースなどの人工ガム、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、糖類(例えば、糖蜜)および天然ゴム(例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、パンワーゴム(panwar gum)が挙げられる。好ましくは、ポビドン(特に、ポビドンUSP)は、結合剤として使用される。
【0043】
本明細書に記載される粒子は、コーティングで、好ましくは機能的コーティングで、例えば、酸性、または中性もしくは塩基性pH値を有する環境で溶解することができる機能的フィルムコーティングで覆われ得る。好ましくは、前記コーティングは、例えば腸溶または胃で溶けないコーティングであり、例えば、フィルムコーティングは、約4.5を越えるpH値で溶け始めるであろう。
【0044】
あるいは、前記コーティング、例えばフィルムコーティングは、pH非依存性であり得る。
コーティングは、従来の方法で、例えば、コーティング混合物を粒子に噴霧することによって、前記コーティング混合物を粒子に塗布することにより行うことができる。コーティング(および場合により乾燥)は、好ましくは流動層塗布装置、例えばGlatt WursterまたはHuttlin Coaterタイプのもので実施される。
【0045】
コーティング混合物は、水または有機溶媒中に溶解、分散または懸濁させたコーティング成分、および場合により少なくとも1つの賦形剤を含み得る。好ましくは、コーティング成分は機能的フィルム成形成分であり、好ましくはフタル酸セルロースなどのフタル酸類、例えば、ヒドロキシプロピルメチルフタル酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースもしくはヒドロキシプロピルメチル酢酸コハク酸セルロースなどの化学修飾フタル酸セルロース、またはポリメタクリル酸類、例えば登録商標Eudragitで市販のものなどのメタクリル酸ポリマーまたはコポリマー(Roehm GmbH&Co KG(ドイツ、ダルムシュタット市)により製造および販売されている)を含む群から選択される腸溶性フィルム成形成分である。このようなメタクリル酸コポリマーの例は、メタクリル酸のコポリマーおよびアクリル酸エチルが1:1の比率である、市販の登録商標EudragitL30D55(以前Eudragit(登録商標)L30Dという名前も付けられた)などの「メタクリル酸コポリマーA型」としてUSP/NFに記載されている。
【0046】
機能的フィルムコーティングは、酸性pH値で溶解することができる、すなわち酸性pH値で溶解することができるフィルム成形成分、例えば、Eudragit(登録商標)EおよびEudragit(登録商標)EPOで市販のものなどのアクリルポリマーを含み得る。
【0047】
場合により、コーティング混合物は、さらに少なくとも1つの賦形剤、例えば可塑剤、例えば、クエン酸トリエチルを含み得る。
【0048】
本発明の具体的な実施形態において、被覆粒子は、以下の方法に従って調製される。
粒子は、クラリスロマイシンおよびポロキサマーのスプレー凝集(spray agglomeration)方法、例えば、the Encyclopedia of Pharmaceutical Technology第7巻中、「Fluidized Bed Granulators」の章(James Swarbrick,James C. Boylan編、1993年、136から140頁)に記載される方法に従って製造した。コーティングのための平均粒径は、200から400μmの間、例えば250から350μmの間、例えば280から320μmの間、例えば290から310μmの間の範囲であり得、例えば約300μmであり得る。あるいは、コーティングのための平均粒径は、約500μmまでであり得、例えば、200から500μmの間の範囲であり得る。コーティングは、従来方法、例えば、水性分散系からの流動層法に従って適用され得る。
【0049】
被覆粒子の典型的な組成物を、以下の表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
本発明の懸濁液剤の調製のための前記粒子の調製およびその使用を、下記の実施例に記載する。
【0052】
本発明の組成物において使用される被覆粒子は、薬学的有効量の活性物質を含み得、ここで前記薬学的有効量は、使用される活性物質に依存するであろう。本明細書において「薬学的に有効な」という用語は、望ましい薬理学的な効果をもたらす前記活性物質の用量を含む、と理解される。
【0053】
好ましくは、前記被覆粒子は、マクロライド系抗生物質を、最も好ましくはクラリスロマイシンを、被覆粒子に対して、約10%から約50%w/wなどの約5%から約60%w/w、約20%から約40%w/wなどの例えば約15%から約45%w/wの量で、含む。
【0054】
本発明の懸濁液剤を、以下のようにして調製することができる。被覆粒子を、少なくとも1つの浸透圧活性物質および場合により少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤を含む懸濁液剤主成分と混合し、乾燥混合物、すなわち乾燥懸濁混合物を形成する。
【0055】
本明細書において用いる「浸透圧活性物質」という用語は、例えば、水性懸濁媒体(例えば水と)と混合して浸透圧活性粒子を形成する場合、溶液中で解離する物質を意味する、と理解される。本発明に対して使用される浸透圧活性物質は、薬学的に許容できるものである。
【0056】
好ましくは、前記浸透圧活性物質は、例えば水において高い溶解性を有すること、生理学的、薬理学的および経口的に許容できること、および被覆粒子からの活性物質分子の拡散を減少させることができることを特徴とする。
【0057】
好ましくは、前記浸透圧活性物質は、炭水化物、例えば多糖類、例えばマルトデキストリン、または例えば環状多糖類、例えばシクロデキストリン(例えばγ−シクロデキストリンなど)、オリゴ糖、二糖類(例えばショ糖)、単糖類(例えば、フルクトースもしくはグルコース)、炭水化物関連化合物(テトリトールなど)、例えばエリスリトール、五価アルコール(例えば、キシリット)、または六価アルコール(例えば、ソルビトール)、または無機塩類(リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムもしくは塩化ナトリウム、もしくはそれらの混合物など)を含み得る。最も好ましくは、浸透圧活性物質は、ショ糖である。
【0058】
好ましくは、前記浸透圧活性物質は、懸濁媒体に対し、約6%から100%w/w、例えば20%から90%%w/w、例えば40%から80%w/w、例えば50%から60%w/wの量で存在する。好ましくは、前記浸透圧活性物質は、懸濁媒体に対して約85%から約95%w/w、最も好ましくは約89%w/wの量で存在する。
【0059】
好ましくは、前記浸透圧活性物質は、乾燥懸濁混合物に対し、約3%から約90%、約20%から約70%などの例えば約15%から約80%、約40%から約50%w/wなどの例えば約30%から約60%の量で存在し得る。より好ましくは、前記浸透圧活性物質は、炭水化物類の場合、約70%から約80%w/w、および無機塩の場合、約3%から約30%の量で存在する。
【0060】
場合により、懸濁液剤主成分および/または乾燥懸濁混合物は、
−糖類(例えば化学修飾されたもの、例えばフルクトース、グルコース、糖アルコールを含む)、
−甘味料(例えば、栄養および人工のもの、例えばサッカリンナトリウム、アスパルテームを含む)、
−流動促進剤(例えば二酸化ケイ素(例えばアエロジル(aerosils)(登録商標)などのコロイド)を含む)、
−増粘剤(例えば、グァーフラワー、キサンタンガム、メチルセルロース)、
−結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、セルロース)、
−着香剤(有機酸(例えばクエン酸など)、NaCl、天然および人工香料など)、
−防腐剤(ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウムなど)、
−色素(着色材)(TiOなど)、ならびに
−充填剤、界面活性剤、緩衝物質、または他の薬学的に許容できる賦形剤、などの少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤をさらに含み得る。
【0061】
例えば粉末形態の乾燥懸濁混合物は、次に場合により瓶または容器に充填され得る。
【0062】
乾燥懸濁混合物は、懸濁媒体に懸濁または溶解され得る。好ましくは、懸濁媒体は水性であり、最も好ましくは水である。得られる再構成された懸濁液剤、すなわちすぐ使用できる懸濁液剤は、場合により容器に、例えば瓶に充填され得る。
【0063】
すぐ使用できる懸濁液剤に含まれる被覆粒子に組み込まれている活性物質の量は、すぐ使用できる懸濁液剤に対し、約1%から約20%w/w、約3%から約10%w/wなどの例えば約2%から約15%w/w、例えば約4%から約8%w/wであり得る。
【0064】
すぐ使用できる懸濁液剤、より詳細には、懸濁液剤主成分と水性懸濁媒体(例えば水)との混合物は、懸濁媒体の1kg当たり、好ましくは1リットルの水当たり約2000ミリオスモル以上の高い浸透圧重量モル濃度を示す。
【0065】
本明細書において用いる「高い浸透圧重量モル濃度」は、懸濁媒体の1kg当たり、例えば1リットルの水当たり2000ミリオスモルより大きい浸透圧重量モル濃度を意味する、と理解される。
【0066】
好ましくは、懸濁液剤主成分と水性懸濁媒体との前記混合物の浸透圧重量モル濃度は、懸濁媒体の1kg当たり、例えば1リットルの水当たり約2200ミリオスモル以上であり、例えば約2300ミリオスモルより大きく、例えば約2400ミリオスモルより大きい。最も好ましくは、浸透圧重量モル濃度は、懸濁媒体の1kg当たり、例えば1リットルの水当たり2500ミリオスモルより大きい。
【0067】
好ましくは、懸濁液剤主成分と水性懸濁媒体との前記混合物の浸透圧重量モル濃度は、懸濁媒体の1kg当たり、例えば1リットルの水当たり、約2200から3800ミリオスモルなどの約2000から約4000ミリオスモル、より好ましくは、約2500から約3500ミリオスモルである。
【0068】
あるいは、浸透圧重量モル濃度は、懸濁媒体の1kg当たり4500ミリオスモルまでかまたはそれ以上であり得る。
【0069】
本明細書において用いる「浸透圧重量モル濃度」という用語は、浸透圧活性物質(すなわち溶液中、すなわちすぐ使用できる懸濁液剤の液相中の溶質(例えば分子またはそのイオンなど))の浸透圧活性粒子の濃度を意味する、と理解され、前記液相は、本質的に、本明細書に記載のように懸濁媒体に混合した、すなわち溶解または分散した懸濁液剤主成分から成る。浸透圧重量モル濃度は、一般に、溶媒媒体の1kg当たりの、例えば本願の場合は懸濁媒体の1kg当たりの、好ましくは水1リットル当たりの前記溶質のモルで表される。浸透圧重量モル濃度の単位は1オスモルであり、溶液中で解離して1モルの浸透圧活性粒子を形成する物質の量を示す。浸透圧重量モル濃度は、Physikalische Chemie, Martin et al., ed. H. Stricker, Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft(1987)に記載のような方法に従い、公知の方法、例えば蒸気圧浸透圧計、凝固点降下浸透圧計、またはコロイド浸透圧計を使用する方法などに従って測定され得る。浸透圧重量モル濃度はまた、以下の計算スキームに従って計算され得る。
浸透圧重量モル濃度[ミリオスモル]=溶媒媒体の1000gに溶解している物質のg数を前記物質の分子量で割り、得られた商に、最初に溶質が解離する粒子の数を掛け、そして次に1000を掛ける。
【0070】
本発明において、溶質は、懸濁液剤主成分を懸濁媒体(例えば水)と混合した後、得られる液相に溶解する全ての物質を意味する。すなわち、本明細書において定義される浸透圧活性物質および場合により他の溶質、例えば本明細書において記載の賦形剤から誘導されるようなものを含む。
【0071】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、水性懸濁液剤もしくは分散剤の調製に使用される乾燥懸濁混合物として、またはすぐ使用できる懸濁液剤として提供される。しかしながら、乾燥懸濁混合物が、チュアブル調製物、溶けやすい錠剤もしくは発泡錠など他の剤型または1回用量のサシェ剤の調製に使用することもできることは、本発明の範囲内であると認識される。
【0072】
本発明のすぐ使用できる懸濁液剤は、味が良く、およびその嗜好性を、例えば水で再構成された後、長時間にわたり、すなわち少なくとも1週間以上、好ましくは少なくとも2週間、例えば4週間、好ましくは例えば、全治療期間を通して維持する。
【0073】
懸濁液剤の嗜好性の程度は、室温で懸濁液剤に溶解している活性物質の量、例えばクラリスロマイシンの量を、HPLCを使用する公知の方法、例えばEuropean Pharmacopoea第3版、1997、およびSupplement 2000に記載のような方法に従って測定することにより、間接的に計測することができる。例えば、WO93/12771に、溶解している活性物質の前記量は、懸濁液剤の苦味と直接、関連していることが記載されている。あるいは、嗜好性は、例えば上記の特許出願に記載されるように、訓練を受けたフレーバースペシャリストにより判断され得る。
【0074】
理論により限定することを意図せず、本発明者らは、本発明の懸濁液剤で認められた味の大幅な改善は、活性物質の、懸濁液剤主成分と懸濁媒体との混合物への拡散を減少させる、すなわち活性物質の漏出の減少および/または排除を導くと思われる、液状媒体に囲まれた懸濁粒子の高い浸透圧重量モル濃度に起因する、と考える。
【0075】
酸性および/または塩基性添加剤などの特定の従来の添加剤を、被覆粒子、例えば腸溶コーティングされた粒子の懸濁液剤から省くことにより、拡散の減少を原因とすると思われる、前記粒子を含む懸濁液剤の味を大幅に改善することができるということを、本発明者らは、驚くべきことに見いだした。
【0076】
懸濁液剤中の高水準の浸透圧重量モル濃度は、味マスキングコーティングを溶解から保護するための酸、塩基および/または酸性塩もしくは塩基性塩(使用する機能的コーティングの種類による)を添加する方法による懸濁液剤のpH値の調整を必要としない。コーティングは懸濁液剤のpH値において実際に溶けやすいという事実にもかかわらず、それは溶解しない。再び、理論により限定することを意図せず、これは、溶解に必要な塩の形成に有効であるイオンが無い、という事実に起因すると考えられる。従って、上記のような本発明の医薬組成物は、有機酸、例えばクエン酸などの酸性または塩基性添加剤を本質的に含まなくてもよい。本発明の医薬組成物における酸性または塩基性添加剤の欠如は、前記添加剤を含む従来の組成物と比較して、良好な芳香化のためのよりよい状態を可能にする。
【0077】
好ましくは、本発明の懸濁液剤は、pH値6.8で迅速な溶解を示し、これは、US Pharmacopoea USP 27−NF22 S2,2004による溶出試験による測定で、活性物質の80%が15分以内に溶解することを意味する。これは、活性物質が消化管において許容できる速度で十分な量を放出されることを意味し、これは一般に、良好な生物学的利用能を示す。
【0078】
以下の表2は、浸透圧重量モル濃度が、上述のように異なる浸透圧活性物質の混合物を用いることによりどのように調節され得るか(浸透圧重量モル濃度は上述のように計算する)を示す。
【0079】
【表2】

【0080】
本発明の医薬組成物は、医薬として使用され得る。
【0081】
1つの態様において、本発明の医薬組成物は、感染症の治療および/または予防用医薬の調製において使用され得る。
【0082】
さらなる態様において、本発明は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物における感染症、特に、細菌性疾患およびクラミジア症などの微生物病、およびその特定の合併症の治療および/または予防のための方法を提供し、それは本発明の医薬組成物に含まれる活性物質の、治療的に有効で無毒性の量を、これらを必要とするヒトまたは非ヒト哺乳動物へ投与することを含む。前記活性物質は、好ましくはマクロライド、最も好ましくはクラリスロマイシンである。本明細書において用いる「治療的に有効」という用語は、望ましい治療的効果を提供する前記活性物質の量を含む、と理解される。
【0083】
感染症およびその特定の合併症の治療および/または予防において、本発明の懸濁液剤は、本明細書に記載のように、薬学的有効量の活性物質、好ましくはクラリスロマイシンを、感染症の予防および/または治療用に通常使用される用量範囲内において含み得る。
【0084】
本発明の懸濁液剤は、嚥下が困難である、子供および高齢の患者などの患者にとって特に適する。
【0085】
本発明は、
−不快な味および/または苦味を有する少なくとも1つの薬学的に活性な物質および場合により少なくとも1つの賦形剤を含む被覆粒子を含む成分a)、ならびに
−すぐ使用できる懸濁液剤内の水性懸濁媒体と懸濁液剤主成分の混合物が高い浸透圧重量モル濃度を得ることを可能にする、少なくとも1つの浸透圧活性物質を含む前記懸濁液剤主成分を含む成分b)、ならびに場合により
−少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤を含む成分c)、
を含む、分離投与のため、連続投与のためまたは同時投与のための部品のキットも提供する。前記部品のキットは、さらに水性懸濁媒体(例えば水)である成分d)を含み得る。成分a)、b)、c)およびd)は、1つの容器または2つもしくはそれ以上の別々の容器に詰められ得る。別々の容器に保管する場合、成分a)、b)、c)およびd)は、投与前に混合され得る。
【0086】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために提供されるが、本発明を限定するものではない。
【0087】
(実施例)
被覆粒子を、クラリスロマイシンおよびポロキサマーのスプレー凝集方法により調製する。コーティングのための平均粒径の範囲は、200および400μmの間である。コーティングは、水性分散系からの流動層法によって塗布する。粒子の組成を表1に示す:
【0088】
【表3】

実施例1から6の懸濁液剤は以下のように調製する。
表1の被覆粒子を、以下の表3または表4に記載の成分と混合して乾燥懸濁混合物を形成し、次いで示された量の水を加えることにより懸濁する。
水性懸濁液剤に溶解する活性物質の部分を、HPLCにより異なる時間で測定する。前記溶解した部分の量は、前記懸濁液剤摂取後に患者が経験する苦味と関連する。
【0089】
(実施例グループA)
実施例1から4の懸濁液剤の組成を、以下の表3に示す。
【0090】
【表4】

【0091】
腸溶コーティング(すなわち表1の粒子の味マスキングコーティング)における浸透圧条件の効果を、室温で溶解したクラリスロマイシンの量を測定することにより調べる。これは、前記コーティングの堅固さの測定並びに懸濁液剤の苦味の間接的な測定である。結果を図1に示し、ここで、ショ糖を含まない懸濁液剤と比較した場合、懸濁液剤5mlあたり2.4gのショ糖の存在が、被覆粒子からのクラリスロマイシンの漏出を激減させることが分かる。溶解したクラリスロマイシンより少ないことは、懸濁液剤の苦味がより少ないこと、すなわち前記懸濁液剤の味がよいことを意味する。
【0092】
しかしながら、驚くべきことに、酸性pH値のみ(これは腸溶コーティングの溶解を防止すると一般に思われる)は、クラリスロマイシンの懸濁液剤への漏出を防止しない。しかしながら、図1に示す範囲におけるpH値にかかわらず、高い浸透圧重量モル濃度の存在(実施例1を参照)は、クラリスロマイシンの漏出の防止に十分である。
【0093】
(実施例グループB)
実施例5から7の懸濁液剤の組成を、以下の表4に示す。
【0094】
【表5】

【0095】
腸溶コーティング、すなわち味マスキングコーティングされた表1の粒子における浸透圧条件の効果を、室温で溶解したクラリスロマイシンの量を測定することにより再び調べる。結果は図2に示し、ここで、ショ糖、またはグルコースとフルクトースの混合物の添加が、クラリスロマイシンの被覆粒子からの漏出を防止することを示す。これは、対応する懸濁液剤の、より詳細には、懸濁液剤主成分と水との混合物の、1リットルの水当たり2500ミリオスモルより大きい、高い浸透圧重量モル濃度に起因するものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】すぐ使用できる懸濁液剤中の被覆された粒子からのクラリスロマイシンの漏出についてのすぐ使用できる懸濁液剤中の高い浸透圧重量モル濃度の効果を、pH値のみの効果と比較して示す。
【図2】懸濁液剤中のクラリスロマイシンの漏出に対する、異なる浸透圧活性物質の存在の効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
すぐ使用できる(ready−to−use)懸濁液剤の調製に適した経口投与のための医薬組成物であって、
a)不快な味および/または苦味を有する少なくとも1つの薬学的に活性な物質および場合により少なくとも1つの賦形剤を含む被覆粒子、ならびに
b)すぐ使用できる懸濁液剤中の水性懸濁媒体と懸濁液剤主成分の混合物に、高い浸透圧重量モル濃度を提供することを可能にする、少なくとも1つの浸透圧活性物質を含む懸濁液剤主成分、ならびに
c)場合により少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤、
を含み、ここにおいて、前記高い浸透圧重量モル濃度が、懸濁媒体の1kg当たり2000ミリオスモル以上である、医薬組成物。
【請求項2】
前記被覆粒子が、味マスキングされている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記高い浸透圧重量モル濃度が、懸濁媒体の1kg当たり2500ミリオスモル以上である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
乾燥粉末の形態である、請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物を水性懸濁媒体中に懸濁することにより調製される、すぐ使用できる懸濁液剤の形態における医薬組成物。
【請求項6】
前記水性懸濁媒体が、水である、請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記浸透圧活性物質が、ショ糖、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルトデキストリン、シクロデキストリン、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記浸透圧活性物質の量が、前記懸濁媒体に対し約6%から約100%w/wである、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記浸透圧活性物質の量が、前記懸濁媒体に対し約85%から約95%w/wである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記浸透圧活性物質の量が、前記懸濁媒体に対し約89%w/wである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記水性懸濁媒体が、水であり、および懸濁液剤主成分と水との混合物の浸透圧重量モル濃度が、2000ミリオスモル/リットル以上である、請求項6から10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記懸濁液剤主成分と水との混合物の浸透圧重量モル濃度が、2500ミリオスモル/リットル以上である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記被覆粒子のコーティングが、機能的コーティングである、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記機能的コーティングが、腸溶コーティングである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記すぐ使用できる懸濁液剤が、好ましい味である、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記すぐ使用できる懸濁液剤が、その嗜好性を少なくとも2週間以上維持する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
不快な味および/または苦味を有する薬学的に活性な物質が、マクロライド抗生物質である、請求項1から16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記マクロライド抗生物質が、クラリスロマイシンである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
酸性および/または塩基性添加剤を本質的に含まない、請求項1から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項1から4のいずれかで定義されるような医薬組成物を調製するための方法であって、
a)前記被覆粒子と、ショ糖、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルトデキストリン、シクロデキストリン、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの浸透圧活性物質を含む前記懸濁液剤主成分と、ならびに場合により少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤とを混合して乾燥懸濁混合物を得る工程、ここにおいて、前記浸透圧活性物質の量はすぐ使用できる懸濁液剤の水性懸濁媒体と前記懸濁液剤主成分との混合物に高い浸透圧重量モル濃度を提供するために十分であり、および
b)場合により、工程a)で得た懸濁混合物を容器に充填する工程、
を含む、方法。
【請求項21】
請求項1から5のいずれかで定義されるような医薬組成物を調製するための方法であって、
a)前記被覆粒子と、ショ糖、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルトデキストリン、シクロデキストリン、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの浸透圧活性物質を含む前記懸濁液剤主成分と、ならびに場合により少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤とを混合して乾燥懸濁混合物を得る工程、ここにおいて、前記浸透圧活性物質の量はすぐ使用できる懸濁液剤の水性懸濁媒体と前記懸濁液剤主成分との混合物に高い浸透圧重量モル濃度を提供するために十分であり、および
b)工程a)で得た乾燥懸濁混合物に水を加えて、すぐ使用できる懸濁液剤を形成する工程、ならびに
c)場合により前記すぐ使用できる懸濁液剤を容器に充填する工程
を含む、方法。
【請求項22】
薬学的に活性な物質が、クラリスロマイシンである、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
医薬としての使用のための、請求項1から19のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項24】
感染症の治療および/または予防のための医薬の調製において使用するための、請求項1から19のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項25】
請求項1から19のいずれかに記載の医薬組成物を、これを必要とするヒトまたは非ヒト哺乳動物に投与することを含む、感染症の治療および/または予防のための方法。
【請求項26】
前記ヒト哺乳動物が、子供または高齢の患者である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
分離投与のため、連続投与のためまたは同時投与のための、請求項1で定義されるような成分a)および成分b)および場合により成分c)を含む部品のキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−515946(P2008−515946A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536065(P2007−536065)
【出願日】平成17年10月10日(2005.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010890
【国際公開番号】WO2006/040112
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(305008042)サンド・アクチエンゲゼルシヤフト (54)
【Fターム(参考)】