説明

呼接続信号処理方法及び装置及びプログラム

【課題】 ユーザの発呼による発信側の呼接続信号処理装置の輻輳を防ぎ、再呼による発信側の呼接続信号処理装置の処理能力低下を防ぎ、効率的に短期間で輻輳を沈静化する。
【解決手段】 本発明は、発信要求を受信し、呼接続信号処理装置の発信処理の負荷状態を計測し、輻輳状態であるかを検知し、輻輳状態である場合に、発信要求を受信した時刻に基づいて発信可能な端末の番号を決定し、発信可能な端末からの発信要求は受け付け、発信不可能な端末からの発信要求に対しては、現在発信可能な端末番号と、現在発信可能な端末がいつまで発信可能であるか、次の時間対に発信可能な番号はどの端末の番号であるかがわかるようなトーキを送信することで発信を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼接続信号処理方法及び装置及びプログラムに係り、特に、ユーザの発呼による発信側の呼接続信号処理装置の輻輳を防ぎ、再呼による発信側の呼接続信号処理装置の処理能力の低下を防ぎ、効率的に短期間で輻輳を沈静化するための呼接続信号処理方法及び装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
輻輳制御技術を説明する前に輻輳発生がネットワークに与える影響について説明する。
【0003】
災害等が発生すると被災地の知り合いの安否を確認するために多くの人が被災地の知り合いに電話をかける。これにより、ネットワーク設備量を超えた発呼が発生し、ネットワークの混雑状態、すなわち、輻輳が発生してしまう。単に需要が供給を上回っているだけであれば特に制御などをする必要はなく、終話により需要が減少するのを待てばよい。しかし、輻輳状態は単に需要が供給を上回っているだけではなく、ネットワーク設備量が減少しないにもかかわらず、その処理能力が減少してしまうという問題がある。これは、相手に電話が繋がらない場合にもネットワーク設備が使用されるため設備が無駄に使用されてしまうためである。
【0004】
従来の輻輳制御技術では、この問題を解決するために被災地等の輻輳ノード(公衆電話交換網であればノードは交換機に相当)の処理能力を各発側ノード(交換機)に加わる被災地等の輻輳ノード(交換機)への発呼の数に応じて、1分当りの輻輳交換機への発呼数(呼数密度)を配分する。図1のように、着信側交換機の処理能力を各発信側ノード(交換機)に分配し、各発信側ノード(交換機)では端末からの発呼を規制し分配された分のみを着信側ノード(交換機)へ接続させる。これにより、着信側輻輳ノード(交換機)の処理能力分の発呼しかネットワーク内に流入しないため、再呼の発生が抑えられネットワーク全体の処理能力低下を防ぐことができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この制御では、発信側ノードに発呼要求が集中し、発信側ノードが輻輳状態になることを防げない。公衆電話交換網では通話を要求する利用者(発呼者)が端末機器の受話器を上げると加入者線に電流が流れ、交換機はこれを検出し通話を要求している発呼者を識別する。これを発呼検出と呼ぶ。発呼要求が集中し、発側ノード(交換機)の負荷が上昇すると、この発呼検出を行わないことで、発信要求を一時的に受信しないことになり、これにより輻輳状態を回避している(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】下垣、小林、頭川:電話網の輻輳を防ぐオペレーション・システム−機能高度化したトラヒック制御システム(TCS-V2), NTT技術ジャーナル, 1-8 (1989) 61-65.
【非特許文献2】下垣、長谷川:トラヒック制御システム(TCS-V2)の機能拡充、NTT技術ジャーナル, 3-2 (1991) 40-43.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
着信側ノードの輻輳については、IP網についても同様の制御が可能である。しかし、発信側ノードの輻輳については、従来の公衆電話交換網では、発呼検出を行わないことで発信要求を一時的に受信しないことができたが、IP網における呼接続信号処理装置であるSIPサーバでは、SIPサーバで受信したパケットに対して処理を行う受身的な機能のみを持つため、発信要求パケット等SIPサーバでの処理を要求するパケットが大量に送られてくると輻輳状態になってしまう。輻輳状態にならないためには規制が必要だが、SIPサーバは、交換機のような発呼検出をしないことで発信要求を受け付けないということができない。そのため、規制を行うにもSIPサーバの処理能力が必要となり規制によりSIPサーバの負荷削減を行うのが困難であるという課題がある。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、発信側ノードが輻輳となるような無制限な再発呼を防止することが可能な呼接続信号処理方法及び装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明(請求項1)は、IP(Internet Protocol)網での発呼を規制する機能を有する呼接続信号処理装置であって、
発信要求を受信する要求受信手段と、
呼接続信号処理装置の発信処理の負荷状態を計測し、輻輳状態を検知する負荷測定手段と、
前記負荷測定手段で輻輳状態であることが検知された場合に、前記発信要求を受信した時刻に基づいて発信可能な端末の番号を決定する発信可能端末決定手段と、
前記発信可能な端末からの発信要求は受付、発信不可能な端末からの発信要求に対しては、トーキを送信することで発信を規制する発信規制手段と、を有する。
【0010】
また、本発明(請求項2)は、前記発信規制手段において、
前記トーキに、現在発信可能な端末番号と、現在発信可能な端末番号がいつまで発信可能であるか、次の時間帯に発信可能な番号がどの端末番号であるかが認識可能な内容を含む。
【0011】
また、本発明(請求項3)は、前記発信可能端末決定手段において、
前記時刻から発信可能な端末の番号を決定する際に、1時間を5分単位に12分割し、0番から9番までの番号及び偶数番号、奇数番号をそれぞれ12分割した5分に割り付け、発信者の番号の下4桁の番号に対して0番から9番の番号を割り付け、その割り付けられた番号と5分単位に付与された番号が一致する時間帯、及び下4桁の番号に対して割り付けられた番号の偶数、奇数が時間帯に割り当てられた偶数、奇数と一致する時間帯にのみ、または、発信者の局番(0A−BCDE−YYYYのBCDEの部分)のEの値と1時間を5分単位に12分割し0番から9番までの番号及び偶数番号、奇数番号を割り付けた番号とが一致する時間帯のみ、発信可能となる番号を割り当てる手段を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ユーザは自分の端末に応じた時間帯のみ被災地へ、あるいはあらゆる発呼を行うようになる。例えば、電話番号の末尾(0〜9)で時間帯を分ければ、これはある時間帯に限ってみたとき全国の端末数が1/10になったのと同じことになり、発信可能な端末数が減れば当然発呼そのものが減ることになり、発信側ノードの輻輳を防ぐことができる。
【0013】
さらに、ユーザは自分の端末の時間帯のみ輻輳ノードへの、あるいはあらゆる発信が可能であるため、その時間帯に多くの人に電話をかけようとするため通話時間を短めにしようとする効果も期待できる。通話時間の短縮により、より多くの通話が可能となるため輻輳の短期沈静化の効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の技術の輻輳制御技術を示す図である。
【図2】本発明を適用する簡単なネットワーク構成例である。
【図3】本発明の一実施の形態における呼接続信号処理装置の構成図である。
【図4】本発明の一実施の形態における呼接続信号処理装置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図2は、本発明を適用する簡単なネットワーク構成を示す。同図のシステムは、呼接続信号処理装置100と呼を発信する端末10からなる。同図では、呼接続信号処理装置100と呼を発信する端末10とが直接接続されているわけではなく、境界パケット転送装置200を介して接続されている。呼接続信号処理装置100と境界パケット転送装置200は必ずしも1対1に対応している必要はないが、説明の都合上、1対1に対応している場合で説明を行う。ここでは、図2に記載されている端末10がすべて呼接続信号装置100に収容されている。説明の都合上、実施例として端末10の末尾の番号による規制で説明を行うが、当然、この例に限られたものではなく、発信者の番号を基にユーザを分類し、その分類により規制を行えばよい。また、ここでは説明の都合上、図2にあるように末尾の番号により端末10を10の群に分けて説明を行う。
【0017】
図3に本発明の一実施の形態における呼接続信号処理装置の構成を示す。また、図4に呼接続信号処理装置の処理のフローチャートを示す。これらの構成図とフローチャートを用いて本発明の呼接続信号処理装置について説明する。
【0018】
呼接続信号処理装置100は、接続要求受信部110、規制部120、処理負荷測定部130、時計140、アドレス解決部150、トーキ部160、DB170、送信部180から構成される。なお、当該呼接続信号処理装置100は、上記以外に、規制部120で参照するための時刻と発信可能番号が対応付けられている発信可能番号テーブルを有する。
【0019】
まず、端末10が呼の接続要求のパケットを当該端末10を収容している呼接続信号処理装置100に発信する。接続要求パケットは境界パケット転送装置200を介して呼接続信号処理装置100に送られ、呼接続信号処理装置100の接続要求受信部110で発信要求受信を行う(ステップ1)。
【0020】
処理負荷測定部130では、常時呼接続信号処理装置の発信に伴う処理の負荷を計測し、処理負荷が予め決められた閾値を超えた(輻輳状態である)ことを規制部120に通知する。規制部120では、呼接続信号処理装置100が輻輳状態であるかを確認し(ステップ2)、輻輳状態でなければ規制せずに規制処理は終了となる(ステップ2、No)。
【0021】
規制部120は、処理負荷測定部130で輻輳状態であると判定された場合(ステップ2、Yes)、時計140から時刻を取得し、その時点での発信可能番号を、発信可能番号テーブル(図示せず)から取得する(ステップ3)。規制部120で発信者の発番号が発信可能番号と一致するかを確認し(ステップ4)、一致した場合にはアドレス解決部150において、DB170を用いてアドレス解決を行い、接続要求送信部180から着信側の呼接続信号処理装置、あるいは、着信側の呼接続信号処理装置へと中継する呼接続信号処理装置に接続要求が送信される(ステップ6)。
【0022】
発信者の発番号が発信可能番号でなかった場合は(ステップ4、No)、トーキ部160でトーキが作成され、発信者に対して接続要求送信部180を通してトーキが送信される(ステップ5)。トーキの内容は、現在発信可能な番号がどういう番号であるか、その番号で発信可能なのはいつまでか、それ以降はどの番号が発信可能か、その時間の継続時間はどのくらいかの情報が流される。
【0023】
発信可能番号テーブルに設定される発信可能番号は、時刻から容易に想像できるものである。例えば、X時5分以上10分未満であれば末尾1番(短針がこの範囲である場合1時台に相当するため)、X時10分以上15分未満であれば末尾2番(短針がこの範囲である場合2時台に相当するため)、以下、同様にX時50分以上55分未満であれば末尾0番(短針がこの範囲である場合10時台に相当するため)とする。X時55分以上X+1時0分未満であれば、末尾が奇数番号(短針がこの範囲である場合11時台に相当し、奇数であるため)、X+1時0分以上X+1時5分未満であれば、末尾が偶数番号(短針がこの範囲である場合12時台に相当し、偶数であるため)というように発信者自身が時計を見て自分自身の端末から発信が可能かどうかを識別できるようにする。
【0024】
つまり、1時間を5分単位に12分割し、0番から9番までの番号、偶数番号、奇数番号を、それぞれ12分割した5分に割り付け、発信者の番号の下4桁の番号FGHJのいずれかの桁かもしくはそれらの桁の組み合わせ(0A−BCDE−FGHJのFGHJ)に対して0から9番の番号を割り付け、その割り付けられた番号と5分単位に付与された番号が一致する時間帯、及び下4桁の番号に対して割り付けされた番号の偶数、奇数が時間帯に割り当てられた偶数、奇数と一致する時間帯のみ発信可能とする。また、発信者の番号の下4桁以外に、発信者の局番の任意の桁(例えば、0A−BCDE−YYYYのBCDEの部分のE)の値と、1時間を5分単位に12分割し、0番から9番までの番号及び偶数番号、奇数番号を割り付けた番号が一致する時間帯のみ発信可能とする。
【0025】
なお、発信可能番号テーブルにおける、時間から発信可能番号の割り当てについては、上記の方法に限定されるものではなく、時刻から発信可能番号が容易にわかるように割り当てればよい。
【0026】
トーキ部160は、時刻からどの番号が発信可能かを発信者に接続要求送信部180を介して通知し、発信不可能な時間帯での発信を抑制するようにする。
【0027】
これにより、「TT:ttまでの間(TTは時、ttは分を表す)は、例えば、電話番号の末尾がXの端末のみから被災地への、あるいは全ての発信が可能です。TT:tt以降のA分間は、電話番号の末尾がYの端末のみとなります」といったトーキを流すことが可能となり、発信側ノードが輻輳となるような無制限な再発呼を防止することが可能となる。
【0028】
上記の図3に示す呼接続信号処理装置100の各構成要素の動作をプログラムとして構築し、呼接続信号処理装置として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0029】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0030】
100 呼接続信号処理装置
110 接続要求受信部
120 規制部
130 処理負荷測定部
140 時計
150 アドレス解決部
160 トーキ部
170 DB
180 接続要求送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP(Internet Protocol)網での発呼を規制する機能を有する呼接続信号処理装置であって、
発信要求を受信する要求受信手段と、
呼接続信号処理装置の発信処理の負荷状態を計測し、輻輳状態を検知する負荷測定手段と、
前記負荷測定手段で輻輳状態であることが検知された場合に、前記発信要求を受信した時刻に基づいて発信可能な端末の番号を決定する発信可能端末決定手段と、
前記発信可能な端末からの発信要求は受付、発信不可能な端末からの発信要求に対しては、トーキを送信することで発信を規制する発信規制手段と、
を有することを特徴とする呼接続信号処理装置。
【請求項2】
前記発信規制手段は、
前記トーキに、現在発信可能な端末番号と、現在発信可能な端末番号がいつまで発信可能であるか、次の時間帯に発信可能な番号がどの端末番号であるかが認識可能な内容を含む
請求項1記載の呼接続信号処理装置。
【請求項3】
前記発信可能端末決定手段は、
前記時刻から発信可能な端末の番号を決定する際に、1時間を5分単位に12分割し、0番から9番までの番号及び偶数番号、奇数番号をそれぞれ12分割した5分に割り付け、発信者の番号の下4桁の番号に対して0番から9番の番号を割り付け、その割り付けられた番号と5分単位に付与された番号が一致する時間帯、及び下4桁のいずれかの桁の番号もしくはそれらの桁の組み合わせの番号に対して割り付けられた番号の偶数、奇数が時間帯に割り当てられた偶数、奇数と一致する時間帯にのみ、または、発信者の局番(0A−BCDE−YYYYのBCDEの部分)のEの値と1時間を5分単位に12分割し0番から9番までの番号及び偶数番号、奇数番号を割り付けた番号とが一致する時間帯のみ、発信可能となる番号を割り当てる手段を含む
請求項1記載の呼接続信号処理装置。
【請求項4】
IP(Internet Protocol)網での発呼を規制する機能を有する呼接続信号処理方法であって、
要求受信手段が、発信要求を受信する要求受信ステップと、
負荷測定手段が、呼接続信号処理装置の発信処理の負荷状態を計測し、輻輳状態を検知する負荷測定ステップと、
発信可能端末決定手段が、前記負荷測定ステップで輻輳状態であることが検知された場合に、前記発信要求を受信した時刻に基づいて発信可能な端末の番号を決定する発信可能端末決定ステップと、
発信規制手段が、前記発信可能な端末からの発信要求は受付、発信不可能な端末からの発信要求に対しては、トーキを送信することで発信を規制する発信規制ステップと、
を行うことを特徴とする呼接続信号処理方法。
【請求項5】
前記発信規制ステップにおいて、
前記トーキに、現在発信可能な端末番号と、現在発信可能な端末番号がいつまで発信可能であるか、次の時間帯に発信可能な番号がどの端末番号であるかが認識可能な内容を含む
請求項4記載の呼接続信号処理方法。
【請求項6】
前記発信可能端末決定ステップにおいて、
前記時刻から発信可能な端末の番号を決定する際に、1時間を5分単位に12分割し、0番から9番までの番号及び偶数番号、奇数番号をそれぞれ12分割した5分に割り付け、発信者の番号の下4桁の番号に対して0番から9番の番号を割り付け、その割り付けられた番号と5分単位に付与された番号が一致する時間帯、及び下4桁のいずれかの桁の番号あるいはそれらの桁の組み合わせの番号に対して割り付けられた番号の偶数、奇数が時間帯に割り当てられた偶数、奇数と一致する時間帯にのみ、または、発信者の局番(0A−BCDE−YYYYのBCDEの部分)のEの値と1時間を5分単位に12分割し0番から9番までの番号及び偶数番号、奇数番号を割り付けた番号とが一致する時間帯のみ、発信可能となる番号を割り当てる
請求項4記載の呼接続信号処理方法。
【請求項7】
コンピュータを、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の呼接続信号処理装置の各手段として機能させるための呼接続信号処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−30854(P2013−30854A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163715(P2011−163715)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】