説明

呼接続時に発呼端末に対してリングバックコンテンツを返信する発呼方法及び電話システム

【課題】各符号化方式に応じたコンテンツを予め蓄積することなく、発呼端末に対してリングバックコンテンツを返信することができる発呼方法及び電話システムを提供する。
【解決手段】電話システムは、発呼端末へ配信すべきコンテンツを蓄積するコンテンツ蓄積機能と、コンテンツに対して符号化方式及び/又はレートを変換する符号化/レート変換機能とを有する配信サーバを備えている。発呼端末が、発呼要求を、発呼側電話交換装置へ送信する。次に、発呼側電話交換装置が、発呼要求を、着呼側電話交換装置へ転送し、当該発呼要求を受信したアクセスネットワークに基づく符号化情報及び/又は転送品質情報を、配信サーバへ送信する。そして、配信サーバは、符号化情報及び/又は転送品質情報に応じてコンテンツの符号化方式及び/又はレートを変換し、そのコンテンツをリングバックとして発呼端末へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP網を介して端末間を接続する電話システムにおける発呼方法に関する。特に、発呼時における電話付加サービスの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配信データをストリーミング方式で端末へ配信するコンテンツ配信システムの技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、コンテンツ配信サーバは、電話端末から電話回線網を介して送信信号を受信する。そして、その送信信号に基づく音声データを生成し且つ記憶する。送信信号に電話端末からのトーン信号が含まれていることを検出した場合、トーン信号に基づく付加情報を作成し且つ記憶する。ここで、音声データ及び付加情報は、対応付けて記憶される。コンテンツ配信サーバは、対応付けて記憶した音声データ及び付加情報を含む配信データを、端末へ送信する。
【0003】
また、端末へ送信するコンテンツを変換するコンテンツサーバの技術がある(例えば特許文献2参照)。この技術によれば、コンテンツ登録装置が、コンテンツと、当該コンテンツを構成する要素毎にコンテンツ製作者のポリシによって設定された再生品質の許容範囲情報とを、送信する。端末は、利用者によって所望されるコンテンツの要求信号と共に、当該端末におけるコンテンツの再生能力情報とを、送信する。コンテンツ変換/配信サーバ装置は、コンテンツ登録装置から受信した許容範囲情報と、端末から受信した再生能力情報とを比較し、両方を包括する最大条件でコンテンツを変換する。変換されたコンテンツは、端末へ送信される。
【0004】
更に、近年、大規模に構築されたIP網に、種々異なるアクセスネットワークが接続されている。そのために、異なる機種及び異なる処理能力の端末同士が、多様なアクセスネットワークを介して呼接続されることとなる。
【0005】
図1は、電話システムの構成図である。
【0006】
図1によれば、1つのIP網に接続するアクセスネットワークとして、携帯電話網、無線LAN、光電話網及び固定電話網が表されている。アクセスネットワークは、電話交換装置2を介してIP網に相互接続する。即ち、IP網に、固定網及び移動網が混在した環境となっている。勿論、端末から見て、移動網の中で異なるアクセスネットワークに切り替わる環境であってもよい。このようなシステムによれば、呼接続のための端末同士は、異なる機種及び異なる処理能力となる場合がある。従って、各端末におけるコンテンツ(例えば音声データ)の符号化方式及び/又はレートも異なったものとなっている。
【0007】
更に、他の電話交換技術として、電話交換設備が、呼接続中の発呼端末に対して、リンギング音などのリングバックトーンに代えて、音楽やアナウンス、ビデオのようなリングバックコンテンツを返信するものもある。「リングバックコンテンツ」とは、発信端末が、着呼端末を呼び出し中に、当該発信端末に対して返信されるマルチメディアコンテンツをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−179985号公報
【特許文献2】特開2002−328831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された技術によれば、コンテンツは、所定の符号化方式で予め蓄積されている。サーバは、そのコンテンツを、その端末が接続されるアクセスネットワークに適用される符号化方式に基づいて、再度、エンコードする。エンコードされたコンテンツは、サーバから端末へ送信され、端末は、そのコンテンツをデコードし、再生する。ここで、サーバは、端末の機種(処理能力)に応じた複数の符号化方式でエンコードした、複数のコンテンツを予め蓄積しておく必要がある。このような方法では、図1のようなシステムの場合、サーバは、異なる符号化方式に対応した大量のコンテンツを予め蓄積しなければならない。また、特許文献2に記載された技術であっても同様である。
【0010】
また、呼接続中の発呼端末に対してリングバックコンテンツを返信する場合であっても、異なる符号化方式に対応した大量のコンテンツを予め蓄積しなければならない。一方で、端末が直接的に接続するアクセスネットワークの種類に応じて、端末の符号化方式は、ほぼ一致する。即ち、端末の機種まで特定できなくても、当該発呼要求を受信したアクセスネットワークに基づく符号化情報及び/又は転送品質情報によって、端末へ送信すべきコンテンツの符号化方式もほぼ一致する。
【0011】
そこで、本発明は、各符号化方式に応じたコンテンツを予め蓄積することなく、発呼端末に対してリングバックコンテンツを返信することができる発呼方法及び電話システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、発呼端末が、複数の電話交換装置を含むネットワークを介して着呼端末に接続する電話システムにおける発呼方法において、
電話システムは、発呼端末へ配信すべきコンテンツを蓄積するコンテンツ蓄積機能と、コンテンツに対して符号化方式及び/又はレートを変換する符号化/レート変換機能とを有する配信サーバを備えており、
発呼端末が、発呼要求を、発呼側電話交換装置へ送信する第1のステップと、
発呼側電話交換装置が、発呼要求を、着呼側電話交換装置へ転送する第2のステップと、
発呼側電話交換装置が、当該発呼要求を受信したアクセスネットワークに基づく符号化情報及び/又は転送品質情報を、配信サーバへ送信する第3のステップと、
配信サーバは、符号化情報及び/又は転送品質情報に応じてコンテンツの符号化方式及び/又はレートを変換し、そのコンテンツをリングバックとして発呼端末へ送信する第4のステップと
を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の発呼方法における他の実施形態によれば、
配信サーバは、発呼端末へ配信すべきコンテンツを蓄積したコンテンツ蓄積サーバと、コンテンツに対して符号化方式及び/又はレートを変換する符号化/レート変換サーバとを、ネットワークを介して接続することによって構成されており、
第3のステップについて、発呼側電話交換装置が、当該発呼要求を受信したアクセスネットワークに基づく符号化情報及び/又は転送品質情報を、コンテンツ蓄積サーバへ送信し、
第4のステップについて、
コンテンツ蓄積サーバが、符号化情報及び/又は転送品質情報を、符号化/レート変換サーバへ転送し、
コンテンツ蓄積サーバが、当該発呼端末へ配信すべきコンテンツを、符号化/レート変換サーバへ送信し、
符号化/レート変換サーバが、符号化情報及び/又は転送品質情報に応じてコンテンツの符号化方式及び/又はレートを変換し、
符号化/レート変換サーバが、変換されたコンテンツを、リングバックとして発呼端末へ送信することも好ましい。
【0014】
本発明の発呼方法における他の実施形態によれば、コンテンツは音声コンテンツであり、符号化情報は音声符号化情報であることも好ましい。
【0015】
本発明の発呼方法における他の実施形態によれば、符号化/レート変換機能又はサーバは、音声符号化情報及び/又は転送品質情報に応じて、周波数帯域毎のイコライジング又はラウドネスを更に変換することも好ましい。
【0016】
本発明の発呼方法における他の実施形態によれば、発呼端末と発呼側電話交換装置との間のネットワークは、固定網及び移動網が混在した環境、又は、異なるアクセスネットワークに切り替わる環境であって、符号化方式及び/又はレートが切り替わる可能性があることも好ましい。
【0017】
本発明の発呼方法における他の実施形態によれば、着呼側電話交換装置は、発呼側電話交換装置から発呼要求を受信した際に、直ぐに当該発呼要求を着呼端末へ送信することなく、所定時間経過後に、当該発呼要求を着呼端末へ送信することも好ましい。
【0018】
本発明の発呼方法における他の実施形態によれば、
発呼側電話交換装置が、着呼端末から着呼側電話交換装置を介して受信した着呼応答を、発呼端末へ転送し、
発呼側電話交換装置が、発呼端末に対するコンテンツの配信停止を、配信サーバへ送信することも好ましい。
【0019】
本発明によれば、発呼端末が、複数の電話交換装置を含むネットワークを介して着呼端末に接続する電話システムであって、
発呼端末へ配信すべきコンテンツを蓄積したコンテンツ蓄積機能と、コンテンツに対して符号化方式及び/又はレートを変換する符号化/レート変換機能とを有する配信サーバを備え、
発呼側電話交換装置は、
発呼端末から受信した発呼要求を、着呼側電話交換装置へ転送する発呼要求転送手段と、
当該発呼要求を受信したアクセスネットワークに基づく符号化情報及び/又は転送品質情報を、配信サーバへ送信する符号化/品質情報送信手段または品質情報と、
を有し、
配信サーバは、
符号化情報に応じてコンテンツの符号化方式及び/又はレートを変換する符号化/レート変換手段と、
変換されたコンテンツを、リングバックとして発呼端末へ送信するコンテンツ送信手段と
を有することを特徴とする。
【0020】
本発明の電話システムにおける他の実施形態によれば、
配信サーバは、発呼端末へ配信すべきコンテンツを蓄積したコンテンツ蓄積サーバと、コンテンツに対して符号化方式及び/又はレートを変換する符号化/レート変換サーバとを、ネットワークを介して接続することによって構成されており、
発呼側電話交換装置の符号化/品質情報送信手段は、当該発呼要求を受信したアクセスネットワークに基づく符号化情報及び/又は転送品質情報を、コンテンツ蓄積サーバへ送信し、
コンテンツ蓄積サーバは、
符号化情報及び/又は転送品質情報を、符号化/レート変換サーバへ転送する符号化/品質情報転送手段と、
当該発呼端末へ配信すべきコンテンツを、符号化/レート変換サーバへ送信するコンテンツ送信手段と
を有し、
符号化/レート変換サーバは、
符号化情報及び/又は転送品質情報に応じてコンテンツの符号化方式及び/又はレートを変換する符号化/レート変換手段と、
変換されたコンテンツを、リングバックとして発呼端末へ送信するコンテンツ送信手段と
を有することも好ましい。
【0021】
本発明の電話システムにおける他の実施形態によれば、コンテンツは音声コンテンツであり、符号化情報は音声符号化情報であることも好ましい。
【0022】
本発明の電話システムにおける他の実施形態によれば、符号化/レート変換手段は、音声符号化情報に応じて、周波数帯域毎のイコライジング又はラウドネスを更に変換することも好ましい。
【0023】
本発明の電話システムにおける他の実施形態によれば、発呼端末と発呼側電話交換装置との間のネットワークは、固定網及び移動網が混在した環境、又は、異なるアクセスネットワークに切り替わる環境であって、符号化方式及び/又はレートが切り替わる可能性があることも好ましい。
【0024】
本発明の電話システムにおける他の実施形態によれば、着呼側電話交換装置は、発呼側電話交換装置から発呼要求を受信した際に、直ぐに当該発呼要求を着呼端末へ送信することなく、所定時間経過後に、当該発呼要求を着呼端末へ送信することも好ましい。
【0025】
本発明の電話システムにおける他の実施形態によれば、
発呼側電話交換装置は、
着呼端末から着呼側電話交換装置を介して受信した着呼応答を、発呼端末へ転送する着呼応答転送手段と、
発呼端末に対するコンテンツの配信停止を、配信サーバへ送信する配信停止送信手段と
を有することも好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の発呼方法及び電話システムによれば、各符号化方式に応じたコンテンツを予め蓄積することなく、発呼端末に対してリングバックコンテンツを返信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】電話システムの構成図である。
【図2】本発明におけるシステム構成図である。
【図3】本発明におけるシーケンス図である。
【図4】できる限り長い時間、音声コンテンツを送信するためのシーケンス図である。
【図5】本発明における配信サーバ及び発呼側交換装置の機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0029】
図2は、本発明におけるシステム構成図である。
【0030】
図2のシステムによれば、発呼端末31(例えば携帯電話機)が、ユーザ操作に応じて、アクセスネットワーク(例えば携帯電話網)に対して発呼している。その発呼要求は、発呼側電話交換装置21によって受信され、IP網を介して着呼側電話交換装置22へ転送される。この間、呼接続中であって、発呼端末に対して、通常、リングバックトーンがIP網から返信される。
【0031】
着呼側電話交換装置22は、その発呼要求を、固定電話網を介して着呼端末(例えば固定電話機)32へ送信する。着呼端末32は、ユーザ操作に応じたオフフックによって、着呼応答を、固定電話網を介して着呼側電話交換装置22へ返信する。その着呼応答は、IP網を介して、発呼側電話交換装置21によって受信される。発呼側電話交換装置21は、その着呼応答を、携帯電話網を介して発呼端末31へ送信する。これによって、発呼端末31と着呼端末32との間で、呼接続が完了する。
【0032】
図2によれば、リングバックコンテンツを返信するために、配信サーバ1が、IP網に接続されている。配信サーバ1は、発呼端末へ配信すべき音声コンテンツを蓄積するコンテンツ蓄積サーバ11と、音声コンテンツに対して符号化方式及び/又はレートを変換する符号化/レート変換サーバ12とが、ネットワークを介して接続されて構成されてもよい。勿論、配信サーバ1は、コンテンツ蓄積機能と、符号化/レート変換機能とを一体として備えたものであってもよい。尚、「レート変換」とは、通信中における動的な符号化レートの変換を含む。
【0033】
ここで、「リングバックコンテンツ」とは、発信端末が、着呼端末を呼び出し中に、当該発信端末に対して返信されるマルチメディアコンテンツをいう。電話交換設備が、呼接続中の発呼端末に対して、リンギング音などのリングバックトーンに代えて、音楽やアナウンス、ビデオのようなマルチメディアコンテンツを返信する。
【0034】
発呼側電話交換装置21は、発呼要求を、着呼側電話交換装置22へ転送すると共に、発呼要求を受信したアクセスネットワークに基づく符号化情報及び/又は転送品質情報を、配信サーバ1へ送信する。符号化情報及び/又は転送品質情報は、配信サーバ1のコンテンツ蓄積サーバ11によって受信される。コンテンツ蓄積サーバ11は、符号化情報及び/又は転送品質情報を、符号化/レート変換サーバ12へ転送すると共に、発呼端末31へ配信すべきコンテンツも、符号化/レート変換サーバ12へ送信する。符号化/レート変換サーバ12は、符号化情報及び/又は転送品質情報に応じてコンテンツの符号化方式及び/又はレートを変換し、変換されたコンテンツを、発呼端末31へ送信する。
【0035】
図3は、本発明におけるシーケンス図である。
【0036】
(S311)発呼端末31には、ユーザ操作に応じて相手先電話番号が入力される。そして、発呼端末31は、発呼を開始し、その発呼要求をアクセスネットワークを介して発呼側電話交換装置21へ送信する。
(S312)発呼側電話交換装置21は、受信した発呼要求をIP網へ送信し、電話交換機能によって着呼側電話交換装置22へ転送される。
(S313)発呼要求を受信した着呼側電話交換装置22は、その発呼要求を着呼端末32へ送信する。
【0037】
(S321)発呼側電話交換装置21は、その発呼要求を受信したアクセスネットワークに基づく符号化情報(音声符号化情報)及び/又は転送品質情報を、コンテンツ蓄積サーバ11へ送信する。
(S322)コンテンツ蓄積サーバ11は、受信した符号化情報及び/又は転送品質情報を、符号化/レート変換サーバ12へ転送する。
(S323)コンテンツ蓄積サーバ11は、発呼端末31へ配信すべきコンテンツを選択する。選択されるコンテンツは、発呼端末を操作する発呼者に対するリングバックコンテンツであって、例えば着呼先電話番号に応じて異なるものであってもよい。リングバックコンテンツが音声コンテンツである場合、発呼者は、受話部からその音声を聞かされることとなる。
(S324)コンテンツ蓄積サーバ11は、選択したコンテンツを、符号化/レート変換サーバ12へ送信する。
【0038】
(S325)コンテンツを受信した符号化/レート変換サーバ12は、先に受信した符号化情報及び/又は転送品質情報に応じてそのコンテンツの符号化方式及び/又はレートをリアルタイムに変換する。音声コンテンツの場合、符号化/レート変換サーバ12は、符号化情報及び/又は転送品質情報に応じて、周波数帯域毎のイコライジング又はラウドネスを更に変換するものであってもよい。
【0039】
ここで、「イコライジング」とは、音声信号の周波数特性を変更することをいう。狭義の意味では、周波数特性の均一化(equalize)をいう。具体例として、マイクロフォンやスピーカやレコーダの周波数特性の補正や、マスタリングにおける曲毎の音質的差異の平均化をいう。これに対して、広義の意味では、音声信号の特定の周波数帯域(倍音成分、高調波成分又はノイズ成分)の強調や減少による、全体的な音質の補正、音の明確化又は積極的な音作りをいう。
【0040】
また、「ラウドネス」とは、音圧レベルに対する感覚的な音の大きさをいう。音圧レベルが等しくても、周波数が異なれば、耳に聞こえる音の大きさは変化する。一般に、低周波音(低音)の感度は鈍くなる。
【0041】
(S326)符号化/レート変換サーバ12は、変換したコンテンツを、ストリーミング方式で、発呼側電話交換装置21へ送信する。
(S327)発呼側電話交換装置21は、受信したコンテンツを、アクセスネットワーク(例えば携帯電話網)を介して発呼端末31へ送信する。これによって、発呼端末31は、そのコンテンツを再生し、音声コンテンツの場合、発呼者は、リングバックトーンとして聞かされることとなる。
【0042】
(S331)着呼端末32は、ユーザ操作に応じたオフフックによって、着呼応答を着呼側電話交換装置22へ送信する。
(S332)着呼側電話交換装置22は、受信した着呼応答を、発呼側電話交換装置21へ転送する。
(S333)発呼側電話交換装置21は、その着呼応答を発呼端末31へ送信する。これによって、発呼端末31と着呼端末32との間で、呼接続が完了する。
【0043】
(S341)発呼側電話交換装置21は、発呼端末31に対するコンテンツの配信停止を、配信サーバ1へ送信する。これによって、発呼端末に対するコンテンツのストリーミング配信が停止される。
【0044】
図4は、できる限り長い時間、音声コンテンツを送信するためのシーケンス図である。
【0045】
図4によれば、着呼側電話交換装置22は、発呼側電話交換装置21から発呼要求を受信した際に、直ぐに発呼要求を着呼端末32へ送信することなく、所定時間経過後に、その発呼要求を着呼端末32へ送信する。着呼端末32が応答するまでの時間を長くすることにより、配信サーバ1への配信停止の送信を遅らせることができ、発呼端末31へ音声コンテンツを発信する時間を長くすることができる。
【0046】
図5は、本発明における配信サーバ及び発呼側交換装置の機能構成図である。
【0047】
発呼側電話交換装置21は、アクセスネットワークに接続する端末側インタフェース部210と、IP網に接続する網側インタフェース部211と、発呼要求転送部212と、符号化/品質情報送信部213と、配信サーバから受信したコンテンツを発呼端末へ転送するコンテンツ転送部214と、着呼側電話交換装置22から受信した着呼応答を発呼端末へ転送する着呼応答転送部215と、電話交換装置間のIP網の品質を収集するIPパケット転送品質管理部216とを有する。
【0048】
発呼要求転送部212は、端末側インタフェース部210を介して、発呼端末31から発呼要求を受信する。そして、発呼要求転送部212は、網側インタフェース部211を介して、その発呼要求を着呼側電話交換装置22へ転送する。また、発呼要求を受信した旨は、符号化/品質情報送信部213へ出力される。
【0049】
符号化/品質情報送信部213は、網側インタフェース部211を介して、発呼要求を受信したアクセスネットワークに基づく符号化情報及び/又は転送品質情報を、配信サーバ1へ送信する。IP電話における符号化情報及び/又はレートとしては、例えば以下のようなものがある。
(1)G.711:PCM (Pulse Code Modulation)
[電話網、企業内IP網]、帯域3.4kHz、64kbps
(2)G.726:ADPCM (Adaptive Differential Pulse Code Modulation)
[PHS、企業内IP網]、帯域3.4kHz、32kbps
(3)G.723.1:MP-MLQ (Multi-Pulse Maximum Likelihood Quantization)
ACELP (Algebraic Code Excited Linear Prediction)
[IP電話、企業内IP網]、帯域3.4kHz、6.3kbps/5.3kbps
(4)G.729:CS-ACELP (Conjugate-Structure Algebraic Code Excited
Linear Prediction)
[携帯電話、企業内IP網]、帯域3.4kHz、8kbps
(5)G.722:SB-ADPCM:(Sub-Band Adaptive Differential Pulse Code Modulation)
[企業内IP網]、帯域7kHz、64k/56k/48kbps
(6)AMR (Adaptive Multi-Rate)、[携帯電話網]、帯域3.4kHz、
4.75k〜12.2kbpsまでの8種類の符号化レートを通信中に可変とする
(7)EVRC (Enhanced Variable Rate Codec)、[携帯電話網]、帯域3.4kHz、
1.2k〜9.6kbpsまでの4種類の符号化レートを通信中に可変とする
【0050】
また、転送品質情報としては、パケット損失率及び/又は遅延時間/ジッタがある。
【0051】
IPパケット転送品質管理部216は、IP網におけるIPパケットの転送品質情報を、周期的に収集し且つ管理する。転送品質情報は、RTP(Real-time Transport Protocol)/RTCP(RTP Control Protocol)パケットのヘッダ情報から得られるものであってもよい。
【0052】
配信サーバ1は、コンテンツ蓄積サーバ11と、符号化/レート変換サーバ12とからなる。
【0053】
コンテンツ蓄積サーバ11は、IP網に接続する通信インタフェース部110と、符号化/品質情報転送部111と、コンテンツ蓄積部112と、コンテンツ送信部113と、配信停止受信部114とを有する。
【0054】
符号化/品質情報転送部111は、発呼側電話交換装置21から通信インタフェース部110を介して、符号化情報及び/又は転送品質情報を受信する。そして、符号化/品質情報転送部111は、受信した符号化情報及び/又は転送品質情報を、通信インタフェース部110を介して符号化/レート変換サーバ12へ転送する。
【0055】
コンテンツ蓄積部112は、発呼端末31へ送信すべきリングバックコンテンツを蓄積する。ここで、コンテンツは、着呼先電話番号(又は発呼元電話番号)に対応付けて蓄積されるものであってもよい。
【0056】
コンテンツ送信部113は、コンテンツをコンテンツ蓄積部112から取得する。尚、着呼先電話番号(又は発呼元電話番号)に基づいて、コンテンツを取得するものであってもよい。コンテンツ送信部113は、通信インタフェース部110を介して符号化/レート変換サーバ12へ、そのコンテンツを送信する。
【0057】
配信停止受信部114は、発呼側電話交換装置21から通信インタフェース部110を介して、配信停止を受信する。配信停止を受信した際に、配信停止受信部114は、コンテンツ送信部113に対して配信停止を指示する。
【0058】
符号化/レート変換サーバ12は、IP網に接続する通信インタフェース部120と、符号化/品質情報判定部121と、符号化/レート変換部122と、コンテンツ送信部123とを有する。
【0059】
符号化/品質情報判定部121は、コンテンツ蓄積サーバ11から通信インタフェース部120を介して、符号化情報及び/又は転送品質情報を受信する。受信した符号化情報及び/又は転送品質情報に基づいて、最適な符号化方式及びレートを選択する。選択された符号化情報及びレートは、符号化/レート変換部122へ出力される。
【0060】
符号化情報は、アクセスネットワークに基づいて決定されたものである。また、転送品質情報は、例えばパケット損失率及び/又は遅延時間/ジッタである。このような転送品質情報から、主観評価値(MOS(Mean opinion score)値)を導出し、そのMOS値に基づいてレートを決定することもできる。例えば、以下のような決定することができる。
品質情報1(1から5までのMOS相当値)->12kbps
品質情報3->128kbps
品質情報5->512kbps
【0061】
符号化/レート変換部122は、発呼側電話交換装置21から通信インタフェース部120を介して、コンテンツを受信する。符号化/レート変換部122は、符号化情報に応じて音声コンテンツの符号化方式及び/又はレートをリアルタイムに変換する。符号化/レート変換部122は、変換したコンテンツをコンテンツ送信部123へ出力する。
【0062】
コンテンツ送信部123は、変換されたコンテンツを、通信インタフェース部120を介して発呼側電話交換装置21へ送信する。このコンテンツは、発呼側電話交換装置21を介して発呼端末31へ送信される。
【0063】
以上、詳細に説明したように、本発明の発呼方法及び電話システムによれば、各符号化方式に応じたコンテンツを予め蓄積することなく、発呼端末に対してリングバックコンテンツを返信することができる。
【0064】
特に、端末と電話交換装置との間のネットワークが、固定網及び移動網が混在した環境(又は新旧の電話システムが混在したマイグレーション環境)であっても、コンテンツを、アクセスネットワークに基づく符号化方式及び/又はレートに変換して配信することができる。また、端末は、異なるアクセスネットワークに切り替わる環境であっても、ネットワークに基づいて異なる符号化方式及び/又はレートのコンテンツを受信することができる。
【0065】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0066】
1 配信サーバ
11 コンテンツ蓄積サーバ
110 通信インタフェース部
111 符号化/品質情報転送部
112 コンテンツ蓄積部
113 コンテンツ送信部
114 配信停止受信部
12 符号化/レート変換サーバ
120 通信インタフェース部
121 符号化/品質情報判定部
122 符号化/レート変換部
123 コンテンツ送信部
2 電話交換装置
21 発呼側電話交換装置
210 端末側インタフェース部
211 網側インタフェース部
212 発呼要求転送部
213 符号化/品質情報送信部
214 コンテンツ転送部
215 着呼応答転送部
216 IPパケット転送品質管理部
22 着呼側電話交換装置
3 端末
31 発呼端末
32 着呼端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発呼端末が、複数の電話交換装置を含むネットワークを介して着呼端末に接続する電話システムにおける発呼方法において、
前記電話システムは、発呼端末へ配信すべきコンテンツを蓄積するコンテンツ蓄積機能と、前記コンテンツに対して符号化方式及び/又はレートを変換する符号化/レート変換機能とを有する配信サーバを備えており、
発呼端末が、発呼要求を、発呼側電話交換装置へ送信する第1のステップと、
発呼側電話交換装置が、前記発呼要求を、着呼側電話交換装置へ転送する第2のステップと、
前記発呼側電話交換装置が、当該発呼要求を受信したアクセスネットワークに基づく符号化情報及び/又は転送品質情報を、前記配信サーバへ送信する第3のステップと、
前記配信サーバは、前記符号化情報及び/又は転送品質情報に応じて前記コンテンツの符号化方式及び/又はレートを変換し、そのコンテンツをリングバックとして前記発呼端末へ送信する第4のステップと
を有することを特徴とする発呼方法。
【請求項2】
前記配信サーバは、発呼端末へ配信すべきコンテンツを蓄積したコンテンツ蓄積サーバと、前記コンテンツに対して符号化方式及び/又はレートを変換する符号化/レート変換サーバとを、ネットワークを介して接続することによって構成されており、
第3のステップについて、前記発呼側電話交換装置が、当該発呼要求を受信したアクセスネットワークに基づく符号化情報及び/又は転送品質情報を、前記コンテンツ蓄積サーバへ送信し、
第4のステップについて、
前記コンテンツ蓄積サーバが、前記符号化情報及び/又は転送品質情報を、前記符号化/レート変換サーバへ転送し、
前記コンテンツ蓄積サーバが、当該発呼端末へ配信すべき前記コンテンツを、前記符号化/レート変換サーバへ送信し、
前記符号化/レート変換サーバが、前記符号化情報及び/又は転送品質情報に応じて前記コンテンツの符号化方式及び/又はレートを変換し、
前記符号化/レート変換サーバが、変換されたコンテンツを、前記発呼端末へ送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の発呼方法。
【請求項3】
前記コンテンツは音声コンテンツであり、前記符号化情報は音声符号化情報であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発呼方法。
【請求項4】
前記符号化/レート変換機能又はサーバは、前記音声符号化情報に応じて、周波数帯域毎のイコライジング又はラウドネスを更に変換することを特徴とする請求項3に記載の発呼方法。
【請求項5】
前記発呼端末と前記発呼側電話交換装置との間のネットワークは、固定網及び移動網が混在した環境、又は、異なるアクセスネットワークに切り替わる環境であって、符号化方式及び/又はレートが切り替わる可能性があることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の発呼方法。
【請求項6】
前記着呼側電話交換装置は、前記発呼側電話交換装置から前記発呼要求を受信した際に、直ぐに当該発呼要求を着呼端末へ送信することなく、所定時間経過後に、当該発呼要求を着呼端末へ送信することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の発呼方法。
【請求項7】
前記発呼側電話交換装置が、前記着呼端末から前記着呼側電話交換装置を介して受信した前記着呼応答を、前記発呼端末へ転送し、
前記発呼側電話交換装置が、前記発呼端末に対するコンテンツの配信停止を、前記配信サーバへ送信する
を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の発呼方法。
【請求項8】
発呼端末が、複数の電話交換装置を含むネットワークを介して着呼端末に接続する電話システムであって、
発呼端末へ配信すべきコンテンツを蓄積したコンテンツ蓄積機能と、前記コンテンツに対して符号化方式及び/又はレートを変換する符号化/レート変換機能とを有する配信サーバを備え、
発呼側電話交換装置は、
発呼端末から受信した発呼要求を、着呼側電話交換装置へ転送する発呼要求転送手段と、
当該発呼要求を受信したアクセスネットワークに基づく符号化情報及び/又は転送品質情報を、前記配信サーバへ送信する符号化/品質情報送信手段と、
を有し、
前記配信サーバは、
前記符号化情報に応じて前記コンテンツの符号化方式及び/又はレートを変換する符号化/レート変換手段と、
変換されたコンテンツを、リングバックとして発呼端末へ送信するコンテンツ送信手段と
を有することを特徴とする電話システム。
【請求項9】
前記配信サーバは、発呼端末へ配信すべきコンテンツを蓄積したコンテンツ蓄積サーバと、前記コンテンツに対して符号化方式及び/又はレートを変換する符号化/レート変換サーバとを、ネットワークを介して接続することによって構成されており、
前記発呼側電話交換装置の前記符号化/品質情報送信手段は、当該発呼要求を受信したアクセスネットワークに基づく符号化情報及び/又は転送品質情報を、前記コンテンツ蓄積サーバへ送信し、
前記コンテンツ蓄積サーバは、
前記符号化情報及び/又は転送品質情報を、前記符号化/レート変換サーバへ転送する符号化/品質情報転送手段と、
当該発呼端末へ配信すべき前記コンテンツを、前記符号化/レート変換サーバへ送信するコンテンツ送信手段と
を有し、
前記符号化/レート変換サーバは、
前記符号化情報及び/又は転送品質情報に応じて前記コンテンツの符号化方式及び/又はレートを変換する符号化/レート変換手段と、
変換されたコンテンツを、前記発呼端末へ送信するコンテンツ送信手段と
を有することを特徴とする請求項8に記載の電話システム。
【請求項10】
前記コンテンツは音声コンテンツであり、前記符号化情報は音声符号化情報であることを特徴とする請求項8又は9に記載の電話システム。
【請求項11】
前記符号化/レート変換手段は、前記音声符号化情報に応じて、周波数帯域毎のイコライジング又はラウドネスを更に変換することを特徴とする請求項10に記載の電話システム。
【請求項12】
前記発呼端末と前記発呼側電話交換装置との間のネットワークは、固定網及び移動網が混在した環境、又は、異なるアクセスネットワークに切り替わる環境であって、符号化方式及び/又はレートが切り替わる可能性があることを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の電話システム。
【請求項13】
前記着呼側電話交換装置は、前記発呼側電話交換装置から前記発呼要求を受信した際に、直ぐに当該発呼要求を着呼端末へ送信することなく、所定時間経過後に、当該発呼要求を着呼端末へ送信することを特徴とする請求項8から12のいずれか1項に記載の電話システム。
【請求項14】
前記発呼側電話交換装置は、
前記着呼端末から前記着呼側電話交換装置を介して受信した前記着呼応答を、前記発呼端末へ転送する着呼応答転送手段と、
前記発呼端末に対するコンテンツの配信停止を、前記配信サーバへ送信する配信停止送信手段と
を有することを特徴とする請求項8から13のいずれか1項に記載の電話システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−250052(P2011−250052A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120044(P2010−120044)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人情報通信研究機構「次世代ネットワーク(NGN)基盤技術の研究開発 課題イ−1 FMCシームレス制御技術」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(599108264)株式会社KDDI研究所 (233)
【Fターム(参考)】