説明

喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患の診断および治療のための組成物および方法

本発明は、喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患を検出または治療するのに有用な組成物および方法を提供する。一の態様において、本発明の方法は、喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患によって冒されている組織におけるアルギニン代謝経路の要素の活性または発現を阻害することを含む。多くの実施態様において、阻害される要素は、カチオンアミノ酸輸送体、アルキナーゼ、またはアルギナーゼの下流にある要素である。多くの他の実施態様において、該要素の活性または発現は、該要素と結合する薬剤によって阻害される。また多くの他の実施態様において、該要素の活性または発現は、該要素をコードするポリヌクレオチドと結合する薬剤によって阻害される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患の診断または治療のために有用な組成物および方法に関する。
【0002】
(背景技術)
喘息は、可逆性気道閉塞および気道過敏症(AHR)の反復エピソードにより特徴付けられる気道の慢性炎症性疾患である。典型的な臨床症状としては、息切れ、喘鳴、咳嗽、および生命を危うくするようになるかまたは致死的となり得る胸部の圧迫感(chest tightness)が挙げられる。現行療法は症候性の気管支痙攣および肺の炎症を軽減することに集中しているが、喘息患者の肺の加速化衰退における長期気道リモデリングの役割の認識が大きくなってきている。気道リモデリングは、上皮平滑筋および筋線維芽細胞過形成および/または異形成、上皮下線維症およびマトリックス沈着を含む数多くの病理学的特徴をいう。該プロセスは、集合的に、致死的喘息のケースにおいて約300%までの気道の肥厚を引き起こす。喘息の病態生理学の解明が相当に進歩してきたにもかかわらず、該疾患の有病率、罹患率および死亡率はここ20年間の間に増加してきている。1995年には、米国だけで、180万人の緊急治療室来診者、466,000人の入院患者および5,429人の死者が喘息に直接起因していた。
【0003】
アレルギー性喘息が風媒アレルゲンに対する不適当な炎症反応により始まることは一般的に受け入れられている。喘息患者の肺は、リンパ球、マスト細胞および好酸球の著しい浸潤を示す。証拠の大多数は、この免疫応答がTH2サイトカインプロフィールを発現するCD4+ T細胞により駆動されることを示している。一の喘息のネズミモデルは該動物のオボアルブミン(OVA)に対する感作、次いで、OVAチャレンジの気管内送達を含む。この方法は、マウスの肺においてTH2免疫反応を引き起こし、アップレギュレートされた血清IgE(アトピー)、好酸球増多、過剰な粘液分泌、およびAHRを含むヒト喘息において見られる4つの主要な病態生理学的応答を模倣する。好塩基球、マスト細胞、活性T細胞およびNK細胞によって発現されるサイトカインIL−13は、マウスの肺におけるOVAに対する炎症反応において中心的な役割を果たす。ネズミIL−13の直接肺点滴注入は、4つの喘息関連病理学の全てを誘発し、対照的に、可溶性のIL−13アンタゴニスト(sIL−13Rα2−Fc)の存在は、OVAチャレンジ誘発性杯状細胞粘液合成およびアセチルコリンに対するAHRの両方を完全にブロックした。かくして、IL−13媒介シグナリングは、4つの喘息関連病態生理学的表現型の全てを誘発するのに十分であり、マウスモデルにおける粘液の分泌過多およびAHRの誘導に必要とされる。
【0004】
生物学的に活性なIL−13は、低親和性結合鎖IL−13Rα1、ならびにIL−13Rα1およびIL−4シグナリング複合体の共有要素であるIL−4Rからなる高親和性多量体複合体と特異的に結合する。高親和性複合体は、単球−マクロファージ集合体、好塩基球、好酸球、マスト細胞、内皮細胞、線維芽細胞、気道平滑筋および気道上皮細胞を含む広範囲に及ぶ種々の細胞型内で発現される。機能的受容体複合体のIL−13媒介ライゲーションは、JAK1およびJAK2またはTyk−2キナーゼおよびIRS1/2タンパク質のリン酸化依存性活性化を生じる。IL−13経路カスケードの活性化は、転写活性化因子Stat6の動員、リン酸化および究極的な核トランスロケーションの引き金を引く。肺OVAチャレンジがStat6-/-ヌル対立遺伝子にとって同種接合のマウスにおける好酸球浸潤、粘液分泌過多および気道過敏症を含む主要な病理学関連表現型を誘発することができないことを数多くの生理学的研究が示している。最近の遺伝子研究は、IL−13の特異的ヒト対立遺伝子と喘息およびアトピーに関するそのシグナリング要素との間のリンケージを示しており、ヒトの疾患におけるこの経路の重要な役割を立証している。
【0005】
IL−13はまた、未だ同定されていない生物学的機能でもってヒトおよびネズミの両方において発現されるさらなる受容体鎖IL−13Rα2と結合する。ネズミIL−13Rα2はIL−13Rα1と比較すると約100倍大きい親和性(0.5〜1.2nMのKd)でIL−13と結合し、強力な可溶性IL−13アンタゴニストであるsIL−13Rα2−Fcの構築を可能にする。sIL−13Rα2−Fcは、住血吸虫症誘発肝線維症および肉芽腫形成、腫瘍免疫監視、ならびにOVAチャレンジ喘息モデルにおけるIL−13の役割を立証するために種々の疾患モデルにおいてアンタゴニストとして使用されている。
【0006】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は主に肺気腫および慢性気管支炎に付随する気流閉塞を述べるために用いられる包括的な用語である。肺気腫は、肺内の肺嚢胞を衰弱させるかまたは破壊することにより不可逆性肺障害を引き起こす。その結果、肺組織の弾力が失われ、それにより気道を虚脱させ、気流の閉塞を生じさせる。慢性気管支炎は、肺内の小さな気道で始まり、徐々に大きな気道に進む炎症性疾患である。それは気道における粘液を増加させ、気管支における細菌感染を増加させ、次に、気流を妨害する。
【0007】
COPDは、数千万人のアメリカ人が罹っており、アメリカ合衆国における重大な健康問題である。1998年の有病率調査は、300万人のアメリカ人が肺気腫であると診断され、900万人が慢性気管支炎に罹っていることを示唆している。COPDは1998年にはアメリカ合衆国において4番目に多い死亡原因であり、1998年には112,584件の死因であった。1998年にはCOPDはまた推定668,362人の退院の原因であった。
【0008】
喘息およびCOPDの現行療法としては、気管支拡張薬、コルチコステロイド、およびロイコトリエン阻害剤の使用が挙げられる。該治療は、気管支拡張、炎症を軽減させること、喀痰を促進することという同一の気管支拡張の治療目的をもっている。しかしながら、かかる治療の多くは望ましくない副作用を含んでおり、一定の期間使用した後、有効性を失う。また、治療行為のための限定された薬剤だけが喘息において生じる気道リモデリングプロセスを減少させるために利用可能である。したがって、依然として、喘息およびCOPDの分子的理解の拡大およびこれらの複雑な疾患と戦うための新しい治療戦略の同定が必要とされている。
【0009】
(発明の概要)
本発明は、非喘息性肺組織と比べると喘息性肺組織において特異的に発現される多くの遺伝子を同定する。かくして同定された遺伝子としては、カチオンアミノ酸輸送体2遺伝子(CAT2)およびアルギナーゼI型遺伝子(ARG1)のようなアルギニン代謝経路のメンバーが挙げられる。これらの遺伝子は、喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患の治療のための潜在的な薬物標的である。
【0010】
一の態様において、本発明は、アレルギー性または炎症性疾患の治療方法を提供する。当該方法は、アレルギー性または炎症性疾患に罹っている哺乳動物に、該疾患により冒されている組織におけるアルギニン代謝経路の要素の活性または発現を阻害する薬剤の治療上有効量を投与することを含む。阻害される要素は一酸化窒素シンターゼ(NOS)以外のものである。多くの実施態様において、阻害される要素は、アルギナーゼ(例えば、アルギナーゼI型)またはその下流にあるタンパク質である。下流にあるタンパク質の例としては、オルニチンデカルボキシラーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、スペルミジンシンターゼ、およびスペルミンシンターゼが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一例としては、ポリアミンの生合成に関与するS−アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼもまた阻害され得る。別の実施態様において、阻害される要素はカチオンアミノ酸輸送体(例えば、カチオンアミノ酸輸送体2)である。
【0011】
本発明に受け入れられるアレルギー性または炎症性疾患としては、喘息、気道過敏症、慢性気道リモデリング、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および関節炎が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルギニン代謝における機能障害または異常性に付随する他の疾患もまた本発明により治療することができる。多くの実施態様において、アレルギー性または炎症性疾患は呼吸器疾患である。本発明の治療薬の投与は、肺組織におけるアルギニン代謝経路の要素の活性または発現を阻害し、それによって該疾患に付随する症候群を寛解または排除する。
【0012】
本発明のために適当な治療薬としては、RNA干渉またはアンチセンスメカニズムにより標的要素の発現を阻害する能力を有するポリヌクレオチド、標的要素と反応する抗体、標的要素の生物学的機能の阻害物質、または標的要素またはそれをコードするポリヌクレオチドと結合することができる他のモジュレーター(例えば、3'または5'非翻訳制御配列を含むmRNAまたはゲノム配列)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。多くの実施態様において、該活性または発現は、転写レベル、転写後レベル、翻訳レベル、または翻訳後レベルで阻害される。多くの他の実施態様において、阻害剤は、最初の活性または発現レベルと比較すると標的要素の活性または発現を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上減少させることができる。
【0013】
一の実施態様において、本発明の治療薬は、CAT2、ARG1、またはアルギナーゼの下流にある要素をコードする他の遺伝子に向けられるsiRNA配列をコードするかまたは含む。別の実施態様において、治療薬は、遺伝子療法ベクターから発現される。多くの場合、該遺伝子療法ベクターは組織特異的または細胞特異的プロモーターの制御下にある。一例としては、該プロモーターは肺特異的である。肺特異的プロモーターの例としては、肺上皮細胞特異的サーファクタントプロテインB遺伝子プロモーターおよびクラーラ細胞特異的プロモーターCC10が挙げられるがこれらに限定されるものではない。別の例において、該プロモーターは単球特異的またはマクロファージ特異的である。マクロファージ特異的プロモーターの例としては、ヒトアセチル−LDL受容体(SRA)遺伝子の近位プロモーターおよびRoss et al., J. Biol. Chem., 273:6662-6669, 1998に記載されているものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0014】
さらに別の実施態様において、本発明の治療薬は、リシン、ポリ−L−リシン、ポリ−L−アルギニン、またはカチオンアミノ酸輸送体を阻害することができる他のカチオンポリペプチドから選択される。さらなる実施態様において、該治療薬は、オルニチンデカルボキシラーゼの機能を阻害するα−ジフルオロメチルオルニチンである。さらなる実施態様において、該治療薬は、IL−13アンタゴニストまたはアンタゴニスト的抗−IL−13抗体である。一例としては、当該治療薬は可溶性IL−13受容体である。
【0015】
本発明の治療薬は、それらの意図される投与経路と適合するように処方することができる。投与経路の例としては、非経口投与、経腸投与および局所投与が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、本発明の治療薬は、皮内(intracutaneous)経路、皮膚上経路、吸入経路、経口経路、直腸経路、静脈内経路、動脈内経路、筋肉内経路、皮下経路、皮内(intradermal)経路、経皮経路、経粘膜経路、または他の適当な経路により投与することができる。一の実施態様において、該治療薬は、吸入により投与される。例えば、該治療薬は、適当な噴射剤(例えば、二酸化炭素)を含有する加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからのエアゾールスプレー剤の剤形で送達することができる。
【0016】
一の実施態様において、治療される哺乳動物は喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患に罹っているヒトである。
【0017】
他の態様において、本発明は、喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患の治療のための薬物を同定または評価するのに有用な方法を提供する。該方法は、喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患によって冒されている組織を候補分子と接触させること、および該候補分子が組織における疾患症候群または表現型を寛解または排除することができるかを判定することを含む。該候補分子は、組織におけるアルギニン代謝経路の非NOS要素の活性または発現を阻害する。非NOS要素の例としては、アルギナーゼまたはカチオンアミノ酸輸送体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明において使用するのに適当な組織としては、該疾患の動物モデルにおける組織/細胞、該疾患の動物モデルから単離した組織/細胞、または疾患に冒されている組織/細胞の特定の特徴(例えば、発現プロフィール)を模倣する細胞培養物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一例としては、候補分子の治療効果はヒトの臨床試験により評価される。
【0018】
一の実施態様において、候補分子は、構造に基づくラショナルドラッグデザインに基づいて選択または作成される。アルギニン代謝経路の非NOS要素と相互作用する能力を有する分子を同定する。次いで、これらの分子を喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患によって冒されている組織と接触させて、それらが疾患症候群または表現型を寛解または排除することができるかを判定する。別の実施態様において、高処理スクリーニング法または化合物ライブラリーを用いて薬物候補を同定する。
【0019】
本発明はまた、喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患の検出、診断またはモニターリングのために有用な方法を提供する。当該方法は、哺乳動物の生物学的試料における少なくとも1つの遺伝子の発現プロフィールを検出すること、および該発現プロフィールを該遺伝子の参照発現プロフィールと比較して、哺乳動物がアレルギー性または炎症性疾患に罹っているかまたはそのリスクがあるかを判定することを含む。多くの場合、該遺伝子はアルギニン代謝経路の非NOS要素をコードしている。
【0020】
一の実施態様において、アレルギー性または炎症性疾患は、喘息またはCOPDである。生物学的試料は、肺試料であり得る。粘液、血液または他のタイプの試料を使用することもできる。別の実施態様において、参照発現プロフィールは無疾患組織におけるアルギニン代謝遺伝子の平均発現プロフィールである。参照発現プロフィールはまた、患部組織におけるアルギニン代謝遺伝子の発現プロフィールであり得る。別の実施態様において、アルギニン代謝遺伝子はARG1またはCAT2から選択される。喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患の検出または診断のために用いられる物質をキットに含むことができる。
【0021】
別の態様において、本発明は、喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患の治療のために有用な医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、医薬上許容される担体およびアルギニン代謝経路の非NOS要素の活性または発現を阻害する能力を有する薬剤の治療上有効量を含む。多くの実施態様において、該薬剤は、非NOS要素、またはそれをコードするポリヌクレオチドと結合することができる。一例としては、非NOS要素はARG1またはCAT2によってコードされる。
【0022】
本発明の他の目的、特徴および有利な点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明および特定の実施例は、好ましい実施態様を示しているが、当業者にはこの詳細な説明から種々の変更および改変が明らかになるので、単なる例示として記載されている。また、実施例は本発明の原理を立証するものであり、明らかに従来技術において熟練を要するものに有用である感染の例の全てに対する本発明の適用を詳細に説明すると考えられるべきではない。
【0023】
(図面の簡単な説明)
図面は説明のために提供されるものであり、限定のためではない。本願は、2004年3月4日に出願された、「喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患を診断または治療するための組成物および方法」なる発明の名称の米国特許出願(Michael R. Bowman, et al.)の図1、6、8および9を引用して取りこむ。
【0024】
図1は、CAT2およびアルギナーゼI型(ARG1)がBalb/cマウスにおいてアレルゲン(OVA)および組換えネズミIL−13(IL−13)のどちらによっても同時誘導されることを示すグラフである。簡単に言えば、0日目に腹腔内注射によりBalb/cマウスをOVAに対して感作させ、14日目および25日目にビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水(PBS))またはOVAのいずれかの気管内(IT)注射によりチャレンジし、28日目に肺を回収した。加えて、連続3日間、ナイーブBalb/cマウスをPBSまたはIL−13のいずれかでIT処理し、72時間目に肺を回収した。全肺RNAを単離し、実施例1に記載したようにGeneChip技術(Affymetrix)を用いてmRNA発現について分析した。mRNA頻度は100万分率として表される。
【0025】
図2は、ARG1発現がBalb/cマウスにおいてアレルゲン(OVA)および組換えネズミIL−13(IL−13)のどちらによっても誘導されることを示すグラフである。簡単に言えば、0日目に腹腔内注射によりOVAに対してBalb/cマウスを感作し、14および25日目にビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水(PBS))またはOVAのいずれかの気管内(IT)注射によりチャレンジし、28日目に肺を回収した。加えて、連続3日間、ナイーブBalb/cマウスをPBSまたはIL−13のいずれかでIT処理し、72時間目に肺を回収した。全肺RNAを単離し、実施例1に記載したようにGeneChip技術(Affymetrix)を用いてmRNA発現について分析した。mRNA頻度は100万分率として表される。
【0026】
図3は、ARG1遺伝子がBalb/cマウスにおけるOVAまたはIL−13のアデノウイルス媒介発現によって誘導されることを示すグラフである。簡単に言えば、0日目に組換えアデノウイルス発現ネズミIL−13またはネズミ分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)をBalb/cマウスに気管内接種し、3日目に肺を回収した。図1に記載されるように対照マウスをPBS、OVAまたはIL−13で処理した。mRNA頻度は100万分率として表される。
【0027】
図4は、ARG1遺伝子がC57b1/6マウスにおいてIL−13のアデノウイルス媒介発現によって誘導されることを示すグラフである。簡単に言えば、0日目に組換えアデノウイルス発現ネズミIL−13またはネズミ分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)をC57b1/6マウスに気管内接種し、3日目に肺を回収した。mRNA頻度は百万分率として表される。
【0028】
図5は、アルギニン取り込みがネズミマクロファージ細胞系RAW264.7においてLPS/IL−13により最適に誘導されることを示すグラフである。簡単に言えば、LPSおよび/またはIL−13で24時間処理することによりRAW264.7マクロファージを誘導して種々のレベルのCAT2を発現させた。実施例3に記載したように、競合するL−リシンの存在下または不在下でのアルギニン輸送を400μMの最終アルギニン濃度にて3分間にわたって評価した。特異的アルギニン摂取量(タンパク質溶解産物1mgあたりのCPM)は非刺激細胞において測定したものの百分率として表される。
【0029】
図6は、CAT2およびARG1がネズミマクロファージ細胞系RAW264.7においてリポ多糖(LPS)/IL−13により同時誘導されることを示すグラフである。簡単に言えば、RAW264.7細胞を10ng/mlのIL−13および/または1μg/mlのLPSで処理した。処理の24時間後に細胞から単離した全RNAを、実施例2に記載したようにTaqManリアルタイム定量RT−PCRを用いてARG1およびCATアイソフォーム特異的mRNA発現について分析した。Fink et al.(Fink et al., Nat. Medicine, 4:1329-1333, 1998)の方法を用いて閾サイクル数からグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)規準化mRNA頻度を推定し、GAPDHの1コピーあたりのコピー数として表した。
【0030】
図7は、アルギニン取り込みがLPS/IL−13処理RAW264.7ネズミマクロファージ細胞において20mMリシンにより阻害されることを示すグラフである。簡単に言えば、RAW264.7細胞を培地単独(対照)またはCAT2誘導条件(LPS/IL−13)に24時間暴露し、次いで、100μMの最終アルギニン濃度において3分間にわたってアルギニン輸送について評価した。競合的CAT阻害剤である20mMリシンの輸送バッファーへの添加は対照およびLPS/IL−13処理細胞における全ての飽和性アルギニン輸送を無効にした。
【0031】
図8は、ネズミマクロファージ細胞系RAW264.7における尿素産生が20mMリシンによって阻害されることを示すグラフである。簡単に言えば、培地単独(対照)またはCAT2誘導条件(LPS/IL−13)に24時間暴露したRAW264.7マクロファージを次にアルギニン輸送バッファー中にて2時間平衡化させた。最終アルギニン濃度400μMを含有するアルギニン輸送バッファー中にて競合するL−リシンの存在下または不在下にて24時間インキュベートした後、実施例4に記載したように尿素の産生を評価した。尿素産生は細胞溶解産物タンパク質1mgあたりの上清中の尿素のμgで表される。
【0032】
図9は、カルバコール誘導ラット気管収縮が100mMリシンによって阻害されることを示すグラフである。簡単に言えば、ラット気管外植片を培地または100mM L−リシンを含有する培地と一緒に15〜20時間プレインキュベートした。次いで、該気管を洗浄し、100mM L−リシンの存在下または不在下にてKrebs−Henseleit溶液中にて収縮を測定した。気管1mgあたりの張力のmgとして張力を算出し、最大収縮(すなわち、リシンの不在下にて10-5Mカルバコールによって誘発された収縮)の%の平均および標準誤差として表した。
【0033】
図10は、ARG1発現の誘導がIL−4受容体を必要とすることを示すグラフである。簡単に言えば、図1に記載したようにIL−4受容体ノックアウトマウス(IL4R−/−)およびIL−4ノックアウトマウス(IL4−/−)をOVAに対して感作させるか、またはPBSまたはIL−13で処理した。全肺RNAを単離し、実施例1に記載したようにGeneChip技術(Affymetrix)を用いてmRNA発現について分析した。mRNA頻度は百万分率として表される。
【0034】
図11は、CAT−2ノックアウトマウスにおける気管収縮を野生型マウスにおけるものと比較する。CATS2−KOはCAT2ノックアウトマウスを示す。
【0035】
図12は、ARG1 mRNA発現がrIL−13の直接肺点滴注入または気管内オボアルブミンアレルゲンチャレンジの後に増加することを示すグラフである。sIL13Rα2.Fcの投与によるIL−13シグナリングの遮断は誘導されるArg1 mRNA発現の67%を阻害する。可溶性受容体sIL13Rα2.Fcを用いるIL−13の遮断はアレルゲン誘導粘液産生および気道過敏症(AHR)を阻害する。
【0036】
(発明の詳細な説明)
本発明は、喘息またはアレルギー性もしくは炎症性疾患の診断および治療のために有用な組成物および方法に関する。一の態様において、本発明の方法は、喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患によって冒されている組織におけるアルギニン代謝経路の要素の活性または発現を阻害することを含む。多くの実施態様において、阻害される要素は、カチオンアミノ酸輸送体、アルギナーゼ、またはアルギナーゼの下流にある要素である。これらの要素の活性または発現の阻害は患部組織における疾患症候群または表現型を軽減するかまたは排除する。本発明はまた、喘息または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患を治療するための治療薬を同定するための方法を提供する。
【0037】
本発明の種々の態様は、以下のサブセクションにさらに詳細に記載される。サブセクションの使用は本発明を限定しようとするものではなく、サブセクションは本発明の如何なる態様にも適用され得る。本明細書において、「または」の使用は特記しない限り「および/または」を意味する。
【0038】
CAT2、ARG1および炎症性疾患
感作されたマウスにおける気管内OVAチャレンジは、ヒトアレルギー性喘息のいくつかの生理学的な特徴を模倣する肺においてTH2免疫反応を引き起こす。この動物疾患モデルにおけるIL−13媒介シグナル伝達の中心的な役割を立証した重要な証拠がある。オリゴヌクレオチドアレイを使用して気管内OVAチャレンジまたはIL−13の直接肺点滴注入のいずれかの後にマウス肺組織における転写の変化をプロファイルした。図1〜4に示されるように、CAT2および/またはARG1のmRNA頻度は、マウスがOVAまたはIL−13のいずれかで処置された場合に有意に増加する。同様に、CAT2およびARG1はまた、リポ多糖(LPS)およびIL−13の組み合わせで処理されたネズミマクロファージ細胞RAW264.7において同時誘導される(図5および6)。誘導されたCAT2およびARG1発現は、アルギニン輸送の増大に付随するが(図7)、RAW264.7細胞における尿素産生の増加にも付随しており(図8)、アルギナーゼ経路の活性化を示唆している。さらなる研究は、アルギニン取り込みおよび尿素産生の増加がCAT2の競合阻害剤であるリシンを使用して阻害され得ることを明らかにした(図7および8)。加えて、カルバコール誘発気管収縮もまた、リシンによって(図9)またはCAT2遺伝子の遺伝子欠失によって(図11)阻害され、炎症性疾患の病態生理学におけるCAT2の関与を示唆している。さらにまた、ARG1発現の誘導がIL−4を必要とすることが図10に示されている。最後に、可溶性IL13Rα2.Fc.の投与は、IL−13シグナリングを遮断し、次に、ARG1 mRNA発現を阻害する。
【0039】
アルギニンは、重要な調節分子へと代謝される半必須アミノ酸である。アルギニンは、カチオンアミノ酸輸送体(CAT)ファミリーのタンパク質によって血管平滑筋細胞(SMC)中に輸送され、そこで一酸化窒素(NO)、ポリアミンまたはプロリンへと代謝される。炎症メディエーター、成長因子および血行力学的な力はCAT遺伝子発現を誘導することによって血管SMCにおけるアルギニンの輸送を刺激する。炎症性サイトカインはまた、誘導性NOシンターゼ(iNOS)の発現を誘導し、アルギニンの代謝を抗増殖性ガスNOへと方向づける。対照的に、循環的機械的歪みは、iNOSおよびODC活性を遮断し、アルギナーゼI遺伝子発現を刺激し、アルギニンの代謝をL−プロリンおよびコラーゲンの形成へと方向づける。
【0040】
アルギニンを再循環させることができない肝臓外組織において、アップレギュレートしたCAT2輸送体は、基質アルギニンの十分な供給と共に増加したアルギナーゼ活性を供給する。このアルギナーゼ活性の増加は、炎症性疾患において一般的に見られる、線維症、気道過敏症、杯状細胞過形成、酸化ストレス関連アポトーシスおよび気道炎症のような病原プロセスにとって重大な意味をもつ生化学的経路の一部である。したがって、アルギニンのCAT2輸送の阻害は、アルギナーゼを利用するがアルギニンを基質として再循環させることができる肝臓尿素回路に害を与えないようにしながら、誘導された肝臓外アルギナーゼ経路を遮断する。
【0041】
CAT2の生化学的および生物学的特徴
ヒトCAT2(SLC7A2としても知られている)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列はそれぞれ配列番号1および2に示されている。ネズミCAT2のヌクレオチドおよびアミノ酸配列はそれぞれ配列番号3および4に示されている。
【0042】
ヒトCAT2 cDNA(配列番号1)は、ヒト腸cDNAライブラリーから単離された。コード領域のヌクレオチド配列は、計算された分子量71,669をもつ658アミノ酸タンパク質(配列番号2)を推定する。残基の91%がマウスCAT2のものと同一であるので、ヒトCAT2は、マウスCAT2のヒトカウンターパートであると考えられる。ノーザンブロット分析において、単一の(9.0kb)ヒトCAT2 mRNA転写物が種々の組織中に存在していた。骨格筋において最高レベルの発現が観察され、腎臓において最低レベルの発現が観察された。ヒドロパシープロットは、翻訳タンパク質が、3つの潜在的なN−グリコシル化部位をもつ14個の膜貫通ドメインを有すると推定されることを示した。ヒトCAT2遺伝子は、ヒト染色体8p21.3−p22と称された。
【0043】
ゲノム解析機構の分析により、ヒトCAT2が12個の翻訳エキソンおよび高い可能性の2個の未翻訳エキソンからなることが明らかになった。CAT2遺伝子は、相互に排他的な選択的スプライシングから生じる2つのタンパク質アイソフォーム、CAT2AおよびCAT2Bをコードする(CAT2Aに対するエキソン7およびCAT2Bに対するエキソン6)。ヒトCAT2遺伝子構造は、ヒトCAT1の構造と密接に関係しており、それらが共通の遺伝子ファミリーに属することを示唆している。
【0044】
マウスにおいて、CAT2遺伝子は、18kbのスペースにわたって分散している5つの異なるプロモーターから転写され、異なるプロモーターでの転写開始のためにいくつかの異なるCAT2 mRNAアイソフォームを生じる。最も遠位のプロモーターに隣接するアイソフォームは、マウスCAT2を発現することが予め示されている全ての組織および細胞型において見られ、他の5'UTRアイソフォームはそれらの発現においてより組織特異的である。5つの推定プロモーターのいくつかまたは全ての使用は、リンパ腫細胞クローン、肝臓および骨格筋において立証された。TATA含有および(G+C)リッチなTATA無しプロモーターは、マウスCAT2遺伝子発現を制御すると考えられる。CAT2 mRNAの複数のアイソフォームは、このカチオンアミノ酸輸送体遺伝子の柔軟な転写調節を可能にする。
【0045】
CAT2は癌を含む種々の疾患と付随している非常に反応性のフリーラジカルであるNOの産生において重要な役割を果たすので、CAT2の阻害は、望ましくないNOレベルにより特徴付けられる疾患のための治療として提案されている。例えば、MacLeodの米国特許第5,866,123号には、マウスCAT2タンパク質に対して産生される抗体によってCAT発現を阻害する方法が記載されている。国際公開WO 00/44766にはまたアンチセンスおよび抗体技術の両方によってCAT2発現を阻害する方法が記載されている。
【0046】
ARG1の生化学的および生物学的特徴
ヒトARG1のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号5および6に示されている。ネズミARG1のヌクレオチドおよびアミノ酸配列はそれぞれ配列番号7および8に示されている。
【0047】
アルギナーゼは、アルギニンのオルニチンおよび尿素への加水分解を触媒する。組織分布、細胞下位置、免疫学的交差反応性および生理学的機能が異なる哺乳動物アルギナーゼの少なくとも2つのアイソフォームが存在する(I型およびII型)。ARG1は、サイトゾル酵素であり、尿素回路の要素として肝臓内で主に発現される、I型アイソフォームをコードする。ARG1は、3つの同一サブユニットの三量体として機能する。遺伝によって受け継がれたこの酵素の欠乏は、高アンモニア血症により特徴付けられる常染色体劣性遺伝疾患であるアルギニン血症を引き起こす。
【0048】
三量体ラットARG1の構造は2.1−A解像度で測定された(Kanyo et al., Nature 383:554-55, 1996)。該構造の重要な特徴は、単量体間接触の約54%を媒介するタンパク質のカルボキシル末端での新しいS字オリゴマー形成モチーフである。このオリゴマー形成モチーフ内に位置するArg−308は、一連の単量体内および単量体間塩結合の核となる。三量体野生型酵素と対照的に、ラットARG1のR308A、R308EおよびR308K変種は、ゲル濾過および分析用限外濾過により測定されるように単量体種として存在し、Arg−308の変異が少なくとも105のファクターによって三量体解離についての平衡をシフトすることを示している。これらの単量体アルギナーゼ変種は、野生型酵素についての値の13〜17%であるkcat/Km値をもって触媒的に活性である。ラットARG1変種は、野生型酵素に比べて低下した温度安定性によって特徴付けられる。ヒトアルギナーゼとL−アルギニンのホウ酸アナログ、2(S)−アミノ−6−ボロノヘキサン酸(ABH)との間での複合体の結晶構造は、1.7A解像度で測定された(Cox et al., Nat. Struct. Biol. 6:1043-1047, 1999)。変異分析はまた、アミノ酸残基Lys−141、Glu−256、およびGly−235がヒトARG1の機能にとって重大な意味をもつことを明らかにした。
【0049】
ヒトARG1遺伝子は、クローン化されており、該構造は決定されている。ヒトARG1遺伝子は11.5キロベース長であり、8つのエキソンに分割されている。キャップ部位はヌクレアーゼS1マッピングおよびプライマー伸長によって決定された。「TATAボックス」様配列は該キャップ部位から28塩基上流に位置しており、転写因子CTF/NF1の結合部位と類似の配列である「CAATボックス」結合タンパク質は72塩基上流に位置する。5'末端領域には、グルココルチコイド応答要素、cAMP応答要素およびエンハンサー核配列に似ている配列が存在する。−105位までのヒトARG1遺伝子のすぐの5'フランキング領域はラット遺伝子の対応するセグメントと84%同一である。ヒトARG1遺伝子のこの領域において、フットプリント分析により1つのDNase I保護領域およびいくつかの高感受性切断部位が検出された。保護された領域は、CTF/NF1の結合部位に類似する配列を含んでおり、グルココルチコイド応答要素に似ている配列と重複する。
【0050】
アルギナーゼ活性を測定するために多くのアッセイ方法が開発された。例えば、Greenbergは、Arginase, The Enzymes 4, edited by P. Boyer, H. Lardy, and K.Myrback, Academic Press, NY, 257, 257, 1960において酵素アッセイを記載した。Geyer et al.は、組織ホモジネートにおけるアルギナーゼのアッセイを記載した(Geyer et al. Anal. Biochem. 39:412, 1971)。NishibeおよびMakinoは、赤血球アルギナーゼについての自動化アッセイ法を報告した(Nishibe et al., Anal. Biochem. 43: 357, 1971)。マイクロアッセイもまた記載された(Hirsch-Kolb et al., Anal. Biochem. 35: 60, 1970)。ほとんどの方法は、アルギニンの加水分解の間に放出される尿素窒素の比色測定に基づいてている。
【0051】
アルギナーゼの過剰発現は直腸結腸癌に罹っている患者において検出された(Porembska et al., Cancer 94: 2930-2934, 2002)。増加したアルギナーゼ活性は、cNOS由来一酸化窒素のアレルゲン誘発性欠乏症および気道過敏症に関連している(Meurs et al., Br. J. Pharmacol. 136; 391-398, 2002)。
【0052】
アルギナーゼ活性の阻害
アルギナーゼ活性は、バリン、リシン、ロイシン、イソロイシン、プロリンおよびスレオニン、ならびにL−カナバニン(Can)およびL−オルニチン(Orn)のようなアルギニンアナログおよび誘導体のような多くのアミノ酸によって阻害され得る。これらのアミノ酸は全て競合阻害物質として機能する。アルギナーゼによって触媒される反応の生成物であるオルニチンおよび尿素はまたアルギナーゼの競合阻害物質として機能する。該生成物であるオルニチンおよび尿素による競合阻害は、酵素に対する急速−平衡ランダムメカニズムを示す。
【0053】
アルギナーゼ活性は、より緩く結合したMn++の付加によりその触媒作用が刺激され得る堅固に結合したMn++に関連していて、十分に活性化された酵素型を生成する。しかしながら、アルギナーゼの活性化において加えられた二価の陽イオンのこの必要条件にもかかわらず、EDTAおよびシトラートのような金属キレート剤は該酵素を阻害しない。かくして、該金属結合部位は溶媒に容易にアクセスできないと考えられる。他方、アルギナーゼ活性は、S−双曲線I−双曲線非競合阻害物質のようにふるまい、該酵素と競合阻害物質L−オルニチン(Ki=2+/−0.5mM)、L−リシン(Ki=2.5+/−0.4mM)および塩化グアニジニウム(Ki=100+/−10mM)との相互作用に対して影響を及ぼさなかったボラートによって阻害される。ボラートが緩く結合したMn++のすぐ近くに結合し、その刺激作用を妨げることが提唱されている。また、ボラート阻害が二核性Mn++中心におけるMn++のキレート形成の結果として生じ、かくして、グアニジウム炭素上で求核攻撃を引き起こす金属結合水分子に取って代わることが示唆された(Carvajal et al., J. Inorg. Biochem. 77: 163-167, 1999)。他の実験はまた、ボラートおよび尿素は相互に排他的な方法で結合するが、L−オルニチンおよびボラートは同時に該酵素と結合することができることを示している。
【0054】
ラット肝アルギナーゼ(RLA)によるL−アルギニン(L−Arg)の加水分解に対するN3-、NO2-、BO43-、SCN-、CH3COO-、SO42-、ClO4-、H2PO4-、CN-、I-、Br-、Cl-およびF-のような陰イオンの阻害効果が研究された(Pethe et al., J. Inorg. Biochem. 88:397-402, 2002)。これらの陰イオンの全てのうち、F-だけがmMレベルで明瞭な阻害効果を示した。F-によるRLAの阻害は可逆的であり、pH7.4で1.3+/−0.5mMのK(i)値をもって結合しているL−Argに対して不競合的である。pHが7から10に上昇した場合にRLAに対するF-のIC50値が1.2から19mMに増加するようにこの効果はpHに依存する。別の研究では、フルオライドがラット肝アルギナーゼの不競合阻害物質であることが確認された。この研究はまた、フルオライドが4mM以上の基質濃度でラット肝アルギナーゼの基質阻害を引き起こすことを示した(Tormanen CD, J. Inorg. Biochem. 93:243-246, 2003)。
【0055】
N(オメガ)−ヒドロキシ−L−アルギニン(L−NOHA)は、これまでに報告された最も強力なアルギナーゼ阻害物質の1つである(Ki=150μM)。NOシンターゼの他の生成物は、効果がないもの(NO2-、NO3-)またはアルギナーゼの非常に弱い阻害物質(L−CitおよびNO)である。L−Argの起こりうる加水分解に由来する生成物(L−Ornおよび尿素)またはL−NOHAの起こりうる加水分解に由来する生成物(L−Cit、ヒドロキシ尿素およびヒドロキシルアミン)はまた、2mMまでの濃度でアルギナーゼに対して不活性である。D−NOHAの活性は非常に低いのでL−NOHAの立体配置は重要であり、その遊離−COOHおよびα−NH2機能は、肝アルギナーゼの認識のために必要とされる。L−NOHAはまた、ラット肝ホモジネートおよびネズミマクロファージのアルギナーゼ活性の強力な阻害物質である(それぞれ、150および450μMのIC50)(Buga et al., Am. J. Physiol., 271:H1988-1998, 1996)。
【0056】
アルギナーゼの別の特異的な阻害物質、N(オメガ)−ヒドロキシ−L−ノル−アルギニン(nor−NOHA)は、非刺激ネズミマクロファージにより触媒されるL−アルギニンのL−オルニチンへの加水分解の阻害においてL−NOHAよりも約40倍強い(それぞれ、IC50値12+/−5および400+/−50μM)。インターフェロン−ガンマおよびリポ多糖(IFN−ガンマ+LPS)によるネズミマクロファージの刺激は、誘導性NOS(iNOS)の明瞭な発現を引き起こし、アルギナーゼ活性を増大させた。nor−NOHAはまたIFN−ガンマ+LPS刺激マクロファージにおけるアルギナーゼの強力な阻害物質でもある(IC50値10+/−3μM)。NOHAと対照的に、norNOHAは、iNOSに対する基質でも阻害物質でもなく、アルギナーゼとNOSとの相互作用を研究するために有用な手段であると考えられる(Tenu et al., Nitric Oxide, 3:427-438, 1999)。
【0057】
ここ数年間に見出された他のアルギナーゼ阻害物質としては、肝アルギナーゼおよび肺胞マクロファージにおけるアルギナーゼの両方を阻害するNオメガ−ヒドロキシ−D,L−インドスピシンおよび4−ヒドロキシアミジノ−D,L−フェニルアラニン(Hey et al., Br. J. Pharmacol. 121:395-400, 1997);内部肛門括約筋におけるアルギナーゼ活性の阻害においてL−NOHAよりも約250倍強力であることが見出された2(S)−アミノ−6−ボロノヘキサン酸(ABH)(Baggio et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 290:1409-1416, 1999);ならびに特異的なオルニチンデカルボキシラーゼ可逆的阻害物質として一般的に用いられるが、無傷細胞におけるL−アルギニンのアルギナーゼを通る流れに対する阻害効果を示すα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)(Selamnia et al., Biochem. Pharmacol. 55:1241-1245, 1998)が挙げられる。これらのアルギナーゼ阻害物質は、上昇したアルギナーゼ活性を含む疾患において重要な病態生理学的および治療的な意味を持ち得る。
【0058】
アルギナーゼ活性の直接的阻害に代わるものは、アルギナーゼ活性またはアルギナーゼ発現の活性化を引き起こすシグナル伝達経路の阻害である。例えば、上昇したアルギナーゼ活性に関係する発病は、IL−13受容体(IL−13R)の投与によって寛解し得る。初めの方に記載したように、IL−13は、主に活性化したTH2細胞により分泌される免疫調節性サイトカインである。この数年の間にわたって、IL−13はアレルギー性炎症の発生における重要なメディエータであることが明らかになってきた。マウスにおいて、IL−13媒介シグナリングは、4つ喘息関連病態生理学的表現型の全てを誘発するのに十分であり、粘液の過剰分泌および誘発されたAHRのために必要とされる。エフェクター分子としてのIL−13の重要性を考慮すれば、その受容体のレベルでの調節はIL−13応答の調節の、かくして、アレルギー反応の伝播の重要なメカニズムである。
【0059】
IL−13は、IL−4と共通の受容体サブユニット、すなわち、IL−4受容体のアルファサブユニット(IL−4Rα)を共有する。IL−13欠損マウス、IL−4欠損マウスおよびIL−4受容体アルファ欠損(IL−4Rα(−/−))マウスの特徴付けは、IL−13について非重複性の役割を示した。IL−13は、IL−4Rαおよび2つのIL−13結合タンパク質IL−13Rα1およびIL−13Rα2からなる複雑な受容体系と相互作用することによりその効果を媒介する。IL−13受容体は、ヒトB細胞、好塩基球、好酸球、マスト細胞、内皮細胞、線維芽細胞、単球、マクロファージ、呼吸器上皮細胞、および平滑筋細胞上で発現される。
【0060】
しかしながら、機能的IL−13受容体は、ヒトまたはマウスT細胞上では示されなかった。IL−4とは異なって、IL−13は、CD4 T細胞のTH2型細胞への初期分化において重要であると考えられず、むしろ、アレルギー性炎症のエフェクター期において重要であると考えられる。この評価は、また、IL−13の投与がアレルギー性炎症を引き起こしたこと、トランスジェニックマウスの肺におけるIL−13の組織特異的過剰発現が気道炎症および粘液過剰分泌を引き起こしたこと、IL−13遮断がIL−4に関係なくアレルギー性炎症を消失させたことを含む多くのインビボ観察結果によって支持されており、IL−13は、粘液過剰分泌においてIL−4よりも重要であると考えられる。したがって、IL−13は、アレルギー性障害における薬理的治療介入のための魅力的な新規治療標的である。IL−13Rの投与は、IL−13シグナリング経路を潜在的に阻害することができるか、または遮断することさえもでき、IL−13誘発ARG1発現を予防することができ、喘息関連病態を寛解することができる。
【0061】
炎症性疾患についてのマーカーとしてのARG1およびCAT2
本発明は、CAT2およびARG1が喘息の動物モデルの肺組織において過剰発現されることを同定する。したがって、これらの遺伝子またはそれらの発現産生物は、喘息またはCOPDのような炎症性疾患についてのマーカーとして使用することができる。これらの遺伝子の発現レベルは、例えば、RT−PCR、核酸アレイ、またはイムノアッセイを用いることによって検出することができる。イムノアッセイフォーマットの例としては、ラテックスまたは他の粒子凝集、エレクトロケミルミネッセンス、ELISA、RIA、サンドイッチまたは免疫測定法、時間分解型蛍光、ラテラルフローアッセイ、蛍光偏光、フローサイトメトリー、免疫組織化学的アッセイ、ウエスタンブロット、およびプロテオミクスチップが挙げられるが、それらに限定されるものではない。CAT2およびARG1タンパク質またはmRNAレベルは、体液または組織試料において検出することができる。
【0062】
マーカーは、特定の対象試料における診断または予後情報を提供するため、または炎症性疾患の処置もしくは治療の有効性を評価するために使用することができる。例えば、疾患進行の様々なステージでのCAT2およびARG1の発現レベルの比較は、生存を含む長期予後のための方法を提供する。CAT2およびARG1遺伝子多型はまた、炎症性疾患に対する対象体の感受性を示すことができる。
【0063】
別の例としては、特定の薬物が特定の患者において長期予後を改善するように作用するかどうかを含む特定の治療方針の有効性を評価することができる。喘息、COPDおよび関節炎は、臨床症状が多様かつ不定である複雑な疾患である。患者は、疾患経過および利用可能な治療に対する反応の両方に関して様々であり、これらのバリエーションは、該疾患のタイプにおける差異を最もよく反映している。したがって、本発明のさらなる有用性は、治療方針に最もよく応答すると思われる患者を同定する方法を提供することである。
【0064】
初期分化発現分析はマウスモデルにおいて行われたが、動物において疾患を引き起こす機能障害性遺伝子はまた、ヒトにおいて機能障害性である場合、ヒトにおいても類似の症候群を引き起こし得るということが十分に理解される。かくして、本発明が詳細にはヒトCAT2およびARG1遺伝子を包含することは本発明によって詳細に意図されている。他の生物からのCAT2およびARG1ホモログもまた、喘息、COPD、または他の炎症性疾患の研究のための動物モデルの使用において有用であり得る。他の生物からのARG1およびCAT2ホモログは当該技術分野で知られているいずれもの方法を用いることにより得ることができる。
【0065】
CAT2またはARG1活性を阻害することによる炎症性疾患の治療
CAT2またはARG1ゲノム配列、プロモーター、エキソン、イントロン、RNA転写物またはコード化されたタンパク質は処置または治療薬のための標的であり得る。それらはまた、CAT2および/またはARG1発現またはCAT2および/またはARG1タンパク質活性を阻害する遺伝子療法ベクターを作成するために使用することができる。
【0066】
メカニズムに関する制限なしで、本発明は、部分的には、CAT2および/またはARG1発現または活性の阻害が喘息またはCOPDのような炎症性疾患を寛解することができるという原理に基づいている。CAT2および/またはARG1阻害物質はまた、線維症、気道過敏症、杯状細胞過形成、気道炎症、および酸化ストレスの治療において効果的であり得る。該阻害は、転写レベル、転写後レベル、翻訳レベルまたは翻訳後レベルで生じ得る。例えば、CAT2またはARG1プロモーターまたはmRNAは、それぞれ、転写または翻訳を阻害するための標的とされ得る。グリコシル化および二量体化のようなCAT2またはARG1タンパク質の翻訳後プロセシングもまた標的とされ得る。
【0067】
喘息のマウスモデルにおけるCAT2およびARG1発現パターンの発見は、CAT2および/またはARG1発現またはCAT2および/またはARG1活性を調節するという目的をもつ試験薬のスクリーニングを可能にする。該試験薬は、mRNAまたはタンパク質レベルでのCAT2および/またはARG1発現に対するそれらの効果によって、または、CAT2および/またはARG1遺伝子産物の活性に対するそれらの効果によってスクリーニングすることができる。
【0068】
別の実施態様において、CAT2および/またはARG1発現またはCAT2および/またはARG1活性のモジュレーターは、喘息、COPDおよび他の炎症性疾患についての治療薬として使用され得る。該モジュレーターは、リボザイムまたはRNAiのようなポリヌクレオチド、野生型CAT2および/またはARG1の活性に対してドミナントネガティブ効果を有するCAT2および/またはARG1変異体のようなポリペプチド、ウイルスもしくは非ウイルス遺伝子療法ベクター、またはCAT2および/またはARG1活性またはCAT2および/またはARG1遺伝子発現を阻害する能力を有するいずれもの他の小分子もしくは生体分子であり得る。かかるモジュレーターは、本発明において使用するための医薬組成物に処方することができる。
【0069】
プローブ、プライマー、アンチセンスおよびRNAi配列
本発明の一の態様は、生物学的試料においてCAT2またはARG1遺伝子産物を検出または定量するためのポリヌクレオチドプローブまたはプライマーに関する。CAT2またはARG1プローブ/プライマーはCAT2またはARG1遺伝子のいずれもの部分に由来することができる。該プローブ/プライマーは、いずれもの所望の長さをもつことができる。例えば、該プローブは、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、400またはそれ以上の連続したヌクレオチドを有することができる。多くの実施態様において、該プローブは、ストリンジェントな条件下または非常にストリンジェントな条件下にて、CAT2またはARG1遺伝子のRNA転写物またはその相補物とハイブリダイズすることができる。
【0070】
異なるハイブリダイゼーションストリンジェンシーの条件の例を表1に示す。非常にストリンジェントな条件は、少なくとも条件A〜Fと同じくらいストリンジェントであるものである;ストリンジェントな条件は、少なくとも条件G〜Lと同じくらいストリンジェントであり;低いストリンジェンシー条件は、少なくとも条件M〜Rと同じくらいストリンジェントである。表1において用いられる場合、ハイブリダイゼーションは、所定のハイブリダイゼーション条件下で約2時間行われ、次いで、対応する洗浄条件下で15分間の洗浄が2回行われる。
【0071】
【表1】

【0072】
1:ハイブリッド長は、ハイブリダイジングポリヌクレオチドのハイブリダイズした領域について予測されるものである。ポリヌクレオチドを未知の配列の標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズした場合、ハイブリッド長は、ハイブリダイジングポリヌクレオチドのものであると想定される。既知の配列のポリヌクレオチドがハイブリダイズした場合、該ハイブリッド長は、該ポリヌクレオチドの配列を整列させ、最適な配列相補性をもつ領域を同定することにより決定することができる。
H:ハイブリダイゼーションバッファーおよび洗浄バッファーにおいて、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウムである)に代えてSSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaH2PO4および1.25mM EDTA、pH7.4である)を用いることができる。
B*〜TR*:長さが50塩基対未満であると予測されるハイブリッドについてのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(Tm)よりも5〜10℃低くあるべきであり、この場合、Tmは、以下の方程式に従って決定される。18塩基対未満の長さのハイブリッドについて、Tm(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。18〜49塩基対の長さのハイブリッドについて、Tm(℃)=81.5+16.6(log10Na+)+0.41(%G+C)−(600/N)(ここで、Nはハイブリッド中の塩基の数であり、Na+はハイブリダイゼーションバッファー中のナトリウムイオンのモル濃度である(1×SSCについてのNa+=0.165M)。
【0073】
本発明の別の態様は、アミノ酸残基の変化を含むCAT2およびARG1をコードしているポリヌクレオチドに関する。かかる変異体は、野生型CAT2およびARG1タンパク質と競合し、野生型CAT2およびARG1タンパク質の活性を阻害することができる。変異体CAT2およびARG1遺伝子をコードしている単離されたポリヌクレオチド分子は、1つまたはそれ以上のヌクレオチド置換、付加または欠失を該ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に導入することによって作成することができ、その結果、このコードされたタンパク質に1個またはそれ以上のアミノ酸置換、付加または欠失が導入される。かかる技術は当該技術分野において周知である。変異は、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発のような標準的な技術によってCAT2およびARG1遺伝子に導入することができる。別法として、変異は、飽和変異誘発によるようなCAT2およびARG1遺伝子またはcDNAのコード配列の全てまたは一部に沿ってランダムに導入することができ、得られた変異体は、野生型タンパク質活性を阻害する能力を有する変異体(ドミナントネガティブな変異体)を同定するために生物学的活性についてスクリーニングすることができる。変異誘発の後、コード化されたタンパク質を組換えで発現させることができ、該タンパク質の活性を測定することができる。
【0074】
ポリヌクレオチドは、さらにインビボでの安定性を増加させるように修飾され得る。可能な修飾としては、5'および/または3'末端でのフランキング配列の付加;バックボーンにおけるホスホジエステラーゼ結合よりもむしろホスホロチオエートまたは2−o−メチルの使用;および/またはイノシン、キューオシンまたはワイブトシンのような非伝統的な塩基、ならびにアデニン、シチジン、グアニン、チミンおよびウリジンのアセチル−、メチル−、チオ−および他の修飾形態の包含が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
本発明の他の態様は、CAT2またはARG1遺伝子またはそれらの転写物に対してアンチセンスである単離されたポリヌクレオチド分子に関する。「アンチセンス」ポリヌクレオチドは、タンパク質をコードする「センス」ポリヌクレオチドに対して相補的な、例えば、二本鎖cDNA分子のコーディング鎖に対して相補的な、またはmRNA配列に対して相補的な、ヌクレオチド配列を含む。したがって、アンチセンスポリヌクレオチドは、センスポリヌクレオチドとの水素結合を形成することができる。アンチセンスポリヌクレオチドは、本発明のCAT2またはARG1遺伝子のコーディング鎖全体に対して、またはその一部だけに対して相補的であり得る。一の実施態様において、アンチセンスポリヌクレオチド分子は、本発明のヌクレオチド配列のコーディング鎖の「コード領域」に対してアンチセンスである。別の実施態様において、該アンチセンスポリヌクレオチド分子は、本発明のヌクレオチド配列のコーディング鎖の「非コード領域」に対してアンチセンスである。
【0076】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、ワトソン・クリック型塩基対の規則に従って設計され得る。該アンチセンスポリヌクレオチド分子は、本発明の遺伝子に対応するmRNAのコード領域全体に対して相補的であり得る。また、それは、コードまたは非コード領域の一部だけに対してアンチセンスであるオリゴヌクレオチドでもあり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50ヌクレオチド長であり得る。本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、当該技術分野で知られている方法を用いる化学合成および酵素的ライゲーション反応を用いて構築され得る。例えば、アンチセンスポリヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、自然発生のヌクレオチド、または分子の生物学的安定性を増大させるようにもしくはアンチセンスポリヌクレオチドとセンスポリヌクレオチドとの間で形成される二本鎖の物理的安定性を増大させるように設計された様々に修飾されたヌクレオチドを使用して化学的に合成され得る。例えば、ホスホロチオエート誘導体とアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。アンチセンスポリヌクレオチドを作成するために使用することができる修飾ヌクレオチドの例としては、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキューオシン、5'−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトシン、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンが挙げられる。別法として、該アンチセンスポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドがアンチセンス配向でサブクローニングされた発現ベクターを使用して生物学的に生成することができる(すなわち、挿入されたポリヌクレオチドから転写されたRNAは、以下のサブセクションでさらに記載される目的の標的ポリヌクレオチドに対してアンチセンス配向のものである)。
【0077】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチド分子は、典型的には、対象体に投与されるか、または、それらがCAT2およびARG1タンパク質をコードしている細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズするかまたは結合して、それにより、例えば転写および/または翻訳を阻害することによって、タンパク質の発現を阻害するようにインサイツで産生される。該ハイブリダイゼーションは、安定な二本鎖を形成するための慣用的なヌクレオチド相補性によるものであるか、または、例えば、DNA二本鎖と結合するアンチセンスポリヌクレオチド分子の場合、二重らせんの主溝における特異的な相互作用を介するものである。本発明のアンチセンスポリヌクレオチド分子の投与の経路の一例としては、組織部位(例えば、腸または血液)での直接注射が挙げられる。別法として、アンチセンスポリヌクレオチド分子は、選択された細胞を標的とするように修飾され得、次いで、全身投与され得る。例えば、全身投与については、アンチセンス分子は、例えば、アンチセンスポリヌクレオチド分子を細胞表面受容体または抗原と結合するペプチドまたは抗体と結合させることによって、それらが選択された細胞表面上で発現される受容体または抗原と特異的に結合するように修飾され得る。アンチセンスポリヌクレオチド分子はまた、本明細書に記載したベクターを使用して細胞に送達され得る。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するために、アンチセンスポリヌクレオチド分子が強いpol IIまたはpol IIIプロモーターの制御下に置かれるベクター構築物を使用することができる。
【0078】
本発明の別の態様は、α−アノマーポリヌクレオチド分子に関する。α−アノマーポリヌクレオチド分子は、通常のβ−ユニットとは対照的に鎖がお互いに平衡に走っているCAT2およびARG1 RNAとの特異的な二本鎖ハイブリッドを形成する能力を有する。α−アノマーポリヌクレオチド分子はまた、2−o−メチルリボヌクレオチドまたはキメラRNA−DNAアナログを含むこともできる。
【0079】
別の実施態様において、単離されたポリヌクレオチドはリボザイムである。リボザイムは、それらが相補領域を有するmRNAのような一本鎖ポリヌクレオチドを切断する能力を有するリボヌクレアーゼ活性をもつ触媒的RNA分子である。かくして、リボザイムを使用して、CAT2および/またはARG1遺伝子のmRNA転写物を触媒的に切断し、それによって、該mRNAの翻訳を阻害することができる。CAT2およびARG1遺伝子に対する特異性を有するリボザイムは、CAT2およびARG1遺伝子のヌクレオチド配列に基づいて設計され得る。CAT2およびARG1遺伝子から転写されたmRNAを使用して、RNA分子のプールから特異的なリボヌクレアーゼ活性をもつ触媒的RNAを選択することができる。別法として、CAT2およびARG1遺伝子の発現は、標的細胞における遺伝子の転写を防止する三重らせん構造を形成するようにこれらの遺伝子の調節領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)に対して相補的なヌクレオチド配列を標的とすることによって阻害することができる。
【0080】
CAT2およびARG1遺伝子の発現は、RNA干渉(RNAi)を使用して阻害することもできる。これは、標的遺伝子活性が同族の二本鎖RNA(「dsRNA」)を用いて特異的に消失させられる翻訳後遺伝子サイレンシング(「PTGS」)についての技術である。多くの実施態様において、標的遺伝子と相同的な約21ヌクレオチドのdsRNAが細胞に導入され、遺伝子活性の配列特異的減少が観察される。RNA干渉は、mRNAレベルでの遺伝子サイレンシングのメカニズムをもたらす。それは、遺伝子ノックアウトのためにおよび治療目的のために有効かつ幅広く適用可能な方法を提供する。
【0081】
RNA干渉により遺伝子発現を阻害する能力を有する配列は、いずれもの所望の長さを有することができる。例えば、該配列は、少なくとも15、20、25またはそれ以上の連続したヌクレオチドを有することができる。該配列は、dsRNAまたはいずれもの他のタイプのポリヌクレオチドであり得、ただし、該配列は、機能的サイレンシング複合体を形成して標的mRNA転写物を分解することができる。
【0082】
一の実施態様において、配列は、短い干渉RNA(siRNA)を含むかまたはそれからなる。siRNAは、例えば、19〜25ヌクレオチドを有するdsRNAであり得る。siRNAは、ダイサーと呼ばれるRNase III関連ヌクレアーゼによる長いdsRNA分子の分解によって内因的に生産され得る。siRNAはまた、内因的に、または、発現構築物の転写によって細胞に導入することができる。一旦形成されると、siRNAは、タンパク質成分と集合して、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)として知られているエンドリボヌクレアーゼ含有複合体を構築する。siRNAのATPによって作成される巻き戻しはRISCを活性化し、次に、ワトソン・クリック塩基対によって相補mRNA転写物を標的とし、それにより該mRNAを切断し破壊する。mRNAの切断は、siRNA鎖によって結合される領域の中央付近で行われる。この配列特異的mRNA分解は、遺伝子サイレンシングを引き起こす。
【0083】
siRNA媒介遺伝子サイレンシングを成し遂げるために少なくとも2つの方法を用いることができる。第一には、siRNAをインビトロで合成し、細胞に導入して、一時的に遺伝子発現を抑制することができる。合成siRNAは、RNAiを達成するための容易かつ有効な方法を提供する。siRNAは、例えば対称的なジヌクレオチド3'オーバーハングをもつ19ヌクレオチドを含むことができる、二本鎖の短い混合オリゴヌクレオチドである。合成21bp siRNA二本鎖(例えば、19RNA塩基に続いてUUまたはdTdT3'オーバーハング)を使用して、配列特異的な遺伝子サイレンシングが哺乳動物細胞において達成され得る。これらのsiRNAは、多くのタンパク質の翻訳の非特異的抑圧を引き起こし得る長いdsRNAによるDNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性化なしで哺乳動物細胞における標的とされる遺伝子翻訳を特異的に抑制することができる。
【0084】
第二に、siRNAは、ベクターからインビボで発現され得る。この方法は、細胞またはトランスジェニック動物においてsiRNAを安定に発現させるために使用することができる。一の実施態様において、siRNA発現ベクターは、ポリメラーゼIII(pol III)転写ユニットからのsiRNA転写を駆動するように操作される。pol III転写ユニットは、siRNA機能に役立つ特徴であるヘアピン型siRNAへの2bpオーバーハング(例えば、UU)の付加を引き起こす短いATリッチ転写終止部位をうまく使うので、ヘアピン型siRNA発現に対して適当である。pol III発現ベクターはまた、siRNAを発現するトランスジェニックマウスを作成するために使用することができる。
【0085】
別の実施態様において、siRNAは、組織特異的な方法で発現され得る。この方法の下では、長い二本鎖RNA(dsRNA)をまず選択された細胞系またはトランスジェニックマウスの核において組織特異的プロモーターから発現させる。この核中にて長いdsRNAをsiRNAに(例えば、ダイサーにより)処理する。siRNAは核から出て、遺伝子特異的サイレンシングを媒介する。同様の方法を組織特異的プロモーターと組み合わせて使用して組織特異的ノックダウンマウスを作成することができる。UUのようないずれもの3'ジヌクレオチドオーバーハングはsiRNAデザインのために使用することができる。いくつかの場合、オーバーハングにおけるG残基は、siRNAが一本鎖G残基でRNaseにより切断される可能性のために回避される。siRNA配列自体に関しては、30〜50%GC含有率をもつsiRNAは、高いG/C含有率をもつものよりも活性であり得ることが見出された。さらにまた、4〜6ポリヌクレオチドポリ(T)トラクトは、RNA pol IIIに対して終止シグナルとして作用し得るので、標的配列における>4のTまたはAの伸長は、RNA pol IIIプロモーターから発現されるように配列を設計する場合に回避され得る場合がある。加えて、mRNAのいくつかの領域は、調節タンパク質によって高度に構築され得るかまたは、結合され得る。かくして、遺伝子配列の長さに沿った様々な位置でsiRNA標的部位を選択するのに役立ち得る。最後に、潜在的な標的部位を適当なゲノムデータベース(ヒト、マウス、ラットなど)と比較することができる。他のコード配列との相同性をもつ16〜17を超える連続した塩基対をもついずれもの標的配列も考慮から除くことができる場合がある。
【0086】
一の実施態様において、siRNAは、短いスペーサー配列によって分けられた2つの逆方向反復をもち、転写終止部位として役立つTのストリングで終わるように設計される。このデザインは、短いヘアピン型siRNAに折り畳むことが予想されるRNA転写物を生じる。siRNA標的配列の選択、推定ヘアピンの基部をコードする逆方向反復の長さ、逆方向反復の順序、ヘアピンのループをコードするスペーサー配列の長さおよび組成、ならびに5'オーバーハングの存在または不在は、所望の結果を達成するために変えることができる。
【0087】
siRNA標的は、AAジヌクレオチドについてmRNA配列をスキャンし、このAAのすぐ下流にある19ヌクレオチドを記録することによって選択され得る。siRNA標的を選択するために他の方法を使用することもできる。一例としては、siRNA標的配列の選択は、標的配列がGGで始まり、BLAST検索によって分析されるように他の遺伝子と有意な配列相同性を共有しない限りは、純粋に経験的に決定される(例えば、Sui et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 5515-5520, 2002を参照)。別の例としては、siRNA標的配列を選択するためにより複雑な方法が用いられる。この方法は、内因性mRNAにおけるアクセス可能な部位が合成オリゴデオキシリボヌクレオチド/RNase H法による分解のための標的とされ得るという観察結果を活用する(Lee et al., Nature Biotechnol. 20:500-505, 2002)。
【0088】
別の実施態様において、ヘアピン型siRNA発現カセットは、標的のセンス鎖、その後に短いスペーサー、標的のアンチセンス鎖、および転写ターミネーターとしての5〜6個のTを含むように構築される。siRNA発現構築物内でのセンス鎖およびアンチセンス鎖の順序は、ヘアピン型siRNAの遺伝子サイレンシング活性に影響を及ぼさずに変更することができる。この順序の逆転により遺伝子サイレンシング活性の部分的な低下が引き起こされ得る場合がある。
【0089】
siRNA発現カセットの基部として使用されるヌクレオチド配列の長さは、例えば、19〜29の範囲であり得る。ループサイズは、3〜23ヌクレオチドの範囲であり得る。他の長さおよび/またはループサイズもまた使用することができる。
【0090】
別の実施態様において、ヘアピン型siRNA構築物における5'オーバーハングを使用することができる。ただし、該ヘアピン型siRNAは、遺伝子サイレンシングにおいて機能的である。一例としては、この5'オーバーハングは約6ヌクレオチド残基を含む。
【0091】
さらに別の実施態様において、RNAiのための標的配列は、配列番号1および5のようなCAT2およびARG1コード配列から選択される約21−mer配列フラグメントである。標的配列は、ORF領域または非ORF領域のいずれかから選択することができる。核標的配列の5’末端は、ジヌクレオチド「NA」を有する。ここで、「N」は、いずれかの塩基であり得、「A」はアデニンを表す。残りの19−mer配列は、30%〜65%のGC含有率を有する。多くの例において、残りの19−mer配列は、4個の連続したAまたはT(すなわち、AAAAまたはTTTT)、3個の連続したGまたはC(すなわち、GGGまたはCCC)、または連続した7個の「GC」のいずれかを含まない。上記基準(「関連基準」)を使用して調製した標的配列の例を表2に示す。表2における各標的配列は、配列番号3nを有し、対応するsiRNAセンスおよびアンチセンス鎖はそれぞれ配列番号3n+1および配列番号3n+2を有する(ここで、nは正の整数である)。各CAT2およびARG1コード配列(例えば、それぞれ、配列番号1および5)について、複数の標的配列を選択することができる。
【0092】
さらなる基準は、RNAi標的配列デザインのために使用することができる。一例としては、残りの19−mer配列のGC含有率は35%〜55%に限定され、3個の連続したAまたはT(すなわち、AAAまたはTTT)を有する19−mer配列または5個もしくはそれ以上の塩基をもつパリンドローム配列が排除される。加えて、19−mer配列は、他のヒト遺伝子に対して低い配列相同性を有するように選択される。一の実施態様において、潜在的な標的配列は、NCBIのヒトUniGeneクラスター配列データベースに対してBLASTNによって検索される。ヒトUniGeneデータベースは、遺伝子志向クラスターの非重複セットを含む。各UniGeneクラスターは、特有の遺伝子を表す配列を含む。BLASTN検索下で他のヒト遺伝子に対するヒットを生じない19−mer配列を選択することができる。この検索の間、e値は、ストリンジェントな値(例えば、「1」)でセットされ得る。さらにまた、標的配列は、ORF領域から選択することができ、開始および終止コドンから少なくとも75bpである。これらの基準(「ストリンジェント基準」)を用いて調製された標的配列の例を表2に示す(配列番号3n、ここで、nは正の整数である)。各標的配列(配列番号3n)についてのsiRNAセンスおよびアンチセンス配列(それぞれ、配列番号3n+1および配列番号3n+2)もまた提供される。
【0093】
【表2】

【0094】
siRNA配列の有効性は、当該技術分野で知られている種々の方法を使用して評価することができる。例えば、本発明のsiRNA配列は、CAT2またはARG1遺伝子を過剰発現する細胞に導入され得る。該細胞におけるCAT2またはARG1のポリペプチドまたはmRNAレベルを検出することができる。siRNA配列の導入の前後でのLRGの発現レベルの実質的な変化は、CAT2またはARG1遺伝子の発現の抑制におけるsiRNA配列の有効性を示している。一例としては、他の遺伝子の発現レベルもまたsiRNA配列の導入の前後にモニターされる。CAT2またはARG1発現に対する阻害効果を有するが、他の遺伝子の発現には有意に影響を及ぼさないsiRNA配列を選択することができる。別の例としては、複数のsiRNAまたは他のRNAi配列を同標的細胞に導入することができる。これらのsiRNAまたはRNAi配列は、CAT2またはARG1遺伝子発現を特異的に阻害するが、他の遺伝子の発現は阻害しない。別の例としては、CAT2またはARG1遺伝子および他の遺伝子の両方の発現を阻害するsiRNAまたは他のRNAi配列を使用することができる。
【0095】
別の実施態様において、本発明のポリヌクレオチド分子は、塩基部分、糖部分またはリン酸バックボーンで修飾されて、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーションまたは可溶性を改良することができる。例えば、ポリヌクレオチド分子のデオキシリボースリン酸バックボーンを修飾してペプチドポリヌクレオチドを作成することができる。本明細書で使用する場合、「ペプチドポリヌクレオチド」または「PNA」なる用語は、デオキシリボースリン酸バックボーンがプソイドペプチドバックボーンによって置き換えられ、4つの天然核酸塩基だけが保持されているポリヌクレオチド模倣物、例えば、DNA模倣物を表す。PNAの天然バックボーンが低いイオン強度の条件下でDNAおよびRNAとの特異的なハイブリダイゼーションを可能にすることが示されている。標準的な固相ペプチド合成プロトコールを用いてPNAオリゴマーの合成を行うことができる。
【0096】
PNAは治療用途および診断用途において使用することができる。例えば、PNAは、例えば、転写または翻訳を誘導することによるかまたは複製を阻害することによるCAT2またはARG1発現の配列特異的阻害のためのアンチセンス剤として使用することができる。本発明のポリヌクレオチド分子のPNAはまた、他の酵素(例えば、S1ヌクレアーゼ)と組み合わせて使用した場合の人工制限酵素として、または、DNA配列決定またはハイブリダイゼーションのためのプローブもしくはプライマーとして、例えば、PNA特異的PCRクランピングによって、遺伝子における一塩基対変異の分析において使用することができる。
【0097】
別の実施態様において、PNAは、親油性または他のヘルパー基をPNAに付着させることによって、PNA−DNAキメラの形成によって、または、リポソームまたは当該技術分野で知られている薬物送達の他の技術の使用によって、(例えば、それらの安定性または細胞取り込みを増強するために)修飾することができる。例えば、PNAおよびDNAの有利な特性を合わせることができる本発明のポリヌクレオチド分子のPNA−DNAキメラを作成することができる。かかるキメラは、DNA認識酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)をDNA部分と相互作用させ、該PNA部分は高い結合アフィニティーおよび特異性をもたらす。PNA−DNAキメラは、塩基スタッキング、核酸塩基間の結合の数、および配向の点から選択される適当な長さのリンカーを用いて結合され得る。PNA−DNAキメラの合成を行うことができる。例えば、DNA鎖は、標準的なホスホラミダイトカップリング化学または修飾ヌクレオシドアナログ、例えば、5'−(4−メトキシトリチル)アミノ−5'−デオキシ−チミジンホスホラミダイトを用いて固体支持体上にて合成することができ、PNAとDNAの5'末端との間でスペーサーとして使用することができる。次いで、PNAモノマーを段階的な方法で結合して、5'PNAセグメントおよび3'DNAセグメントをもつキメラ分子を生成する。別法として、キメラ分子ハ、5'DNAセグメントおよび3'セグメントを用いて合成することができる。
【0098】
CAT2およびARG1ポリペプチド
本発明のいくつかの態様は、正常なCATまたはARG1ポリペプチド活性を阻害する能力を有する変異CAT2およびARG1ポリペプチド、および抗CAT2または抗ARG1抗体を生産させるための免疫原として使用するのに適当なポリペプチドフラグメントに関する。一の実施態様において、変異CAT2およびARG1ポリペプチド(例えば、ドミナントネガティブ変異体)は、組換えDNA技術によって生成される。別法として、変異CAT2およびARG1ポリペプチドは、標準的なペプチド合成技術を用いて化学的に合成することができる。
【0099】
本発明はまた、CAT2またはARG1ポリペプチドに対してアンタゴニストとして機能するCAT2またはARG1ポリペプチドの変種に関する。一の実施態様において、CAT2またはARG1ポリペプチドのアンタゴニストまたはアゴニストは、治療薬として使用される。例えば、CAT2またはARG1ポリペプチドに対するアンタゴニストは、CAT2またはARG1タンパク質の活性を低下させることができ、CAT2またはARG1タンパク質が過剰発現される対象体における炎症性疾患を寛解することができる。CAT2またはARG1ポリペプチドの変種は、変異誘発、例えば、CAT2またはARG1遺伝子の別々の点変異またはトランケーションによって作成され得る。
【0100】
実施態様によっては、CAT2またはARG1ポリペプチドのアンタゴニストは、例えばCAT2またはARGg1ポリペプチドの活性を競合的にモジュレートすることによって、CAT2またはARG1ポリペプチドの自然発生形態の1つまたはそれ以上の活性を阻害することができる。かくして、特異的な生物学的効果は、制限された機能をもつ変種で処理することによって誘発することができる。
【0101】
CAT2もしくはARG1ポリペプチドアゴニストまたはCAT1もしくはARG1ポリペプチドアンタゴニストのいずれかとして機能するCAT2またはARG1ポリペプチドの変異体は、変異体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。実施態様によっては、かかる変種を、例えば本発明の治療タンパク質として、使用することができる。潜在的なCAT2またはARG1ポリペプチド配列のデジェネレートセットが個々のポリペプチドとしてまたはそこにCAT2またはARG1ポリペプチド配列のセットを含有する(例えば、ファージデイスプレーための)大きな融合タンパク質のセットとして発現可能であるように、例えば合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列と酵素的に結合することによって、CAT2またはARG1ポリペプチド変種の多様なライブラリーを生成することができる。デジェネレートオリゴヌクレオチド配列から潜在的なCAT2またはARG1ポリペプチド変種のライブラリーを生成するために使用することができる種々の方法がある。デジェネレート遺伝子配列の化学合成は、自動DNAシンセサイザーにおいて行うことができ、次いで、合成遺伝子を適当な発現ベクターと結合させる。遺伝子のデジェネレートセットの使用は、1つの混合物において、所望のセットの潜在的なCAT2またはARG1ポリペプチド配列をコードする配列の全ての供給を可能にする。デジェネレートオリゴヌクレオチドを合成する方法は当該技術分野で知られている。
【0102】
加えて、CAT2またはARG1遺伝子に対応するタンパク質コード配列のフラグメントのラィブラリーを用いて、CAT2またはARG1ポリペプチドの変種のスクリーニングおよび次なる選択のためのCAT2またはARG1ポリペプチドフラグメントの多様な集団を作成することができる。一の実施態様において、コード配列フラグメントのライブラリーは、ニッキングが分子1個につき約1回だけ生じる条件下でCAT2またはARG1遺伝子コード配列の二本鎖PCRフラグメントをヌクレアーゼで処理し、二本鎖DNAを変性し、DNAを再生して異なるニック生成物からのセンス/アンチセンス対を誘発することができる二本鎖DNAを形成し、S1ヌクレアーゼでの処理により再形成された二本鎖から一本鎖部分を除去し、得られたフラグメントライブラリーを発現ベクターと結合させることによって作成することができる。この方法によって、CAT2またはARG1ポリペプチドの種々のサイズのN末端フラグメント、C末端フラグメントおよび内部フラグメントをコードする発現ライブラリーを誘導することができる。
【0103】
点変異またはトランケーションによって作成されるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、および選択された性質を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技術が当該技術分野において知られている。典型的には遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローンすること、得られたベクターのライブラリーで適当な細胞をトランスフォームすること、および所望の活性の検出が、産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を促進する条件下でコンビナトリアル遺伝子を発現することを含む大きい遺伝子ライブリーをスクリーニングするための、高処理量分析を受け入れられる最も幅広く使用される技術は、CAT2またはARG1ポリペプチド変種を同定するためのスクリーニングアッセイと組み合わせて使用することができる(Delgrave et al., Protein Enginerring 6:327-331, 1993)。
【0104】
約100個未満、一般的には約50個未満のアミノ酸を有するCAT2またはARG1ポリペプチドの部分またはCAT2またはARG1ポリペプチドの変種もまた、当業者に周知の技術を使用して、合成手段によって作成することができる。例えば、かかるポリペプチトードは、成長するアミノ酸鎖にアミノ酸を逐次的に添加するMerrifield固相合成法のような商業的に入手可能な固相技術のいずれかを用いて合成することができる。ポリペプチドの自動合成のための装置は、Perkin Elmer/Applied BioSystems Division(カリフォルニア州フォスターシティ)のような供給者から商業的に入手可能であり、製造者の指示に従って操作され得る。
【0105】
タンパク質阻害物質またはアクチベーターについてのスクリーニングのための方法および組成物は当該技術分野において知られている。米国特許第4,980,281号、第5,266,464号、第5,688,635号、および第5,877,007号を参照(出典明示により本明細書の記載とする)。
【0106】
抗体
別の態様によると、CAT2またはARG1タンパク質に対して特異的な抗体を調製することができる。多くの実施態様において、本発明の抗体は、105-1以上の結合アフィニティーをもってCAT2またはARG1タンパク質と結合することができる。該抗体は、限定なしで、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化、scFv、Fv、Fab'、Fab、またはF(ab')2であり得る。
【0107】
全長CAT2またはARG1タンパク質を使用することができるか、または別法として、本発明は、免疫原として使用するためのCAT2またはARG1タンパク質の抗原性ペプチドフラグメントを提供する。多くの実施態様において、CAT2またはARG1タンパク質の抗原性ペプチドは、少なくとも8個のアミノ酸残基を含んでおり、ペプチドに対して生じた抗体がCAT2またはARG1タンパク質との特異的な免疫複合体を形成するようにCATまたはARG1タンパク質のエピトープを包む。多くの他の実施態様において、抗原性ペプチドは、少なくとも8、12、16、20個またはそれ以上のアミノ酸残基を含む。
【0108】
免疫原性部分(エピトープ)は、一般的に周知の技術を使用して同定され得る。かかる技術は、抗原特異的抗体、抗血清および/またはT細胞系またはクローンと反応する能力についてポリペプチドをスクリーニングすることを含む。かかる血清および抗体は、本明細書に記載したように、および周知の技術を用いて調製することができる。CAT2またはARG1タンパク質のエピトープは、(例えば、ELISAおよび/またはT細胞活性アッセイにおいて)全長ポリペプチドの反応性よりも実質的に低くないレベルでかかる抗血清および/またはT細胞と反応する部分である。かかるエピトープは、全長ポリペプチドの反応性と同様またはそれよりも高いレベルでかかるアッセイ内で反応することができる。かかるスクリーンは、一般に、当業者に周知の方法を用いて行うことができる。例えば、ポリペプチドは、固体支持体上に固定され、患者の血清と接触させて、血清内の抗体と固定されたポリペプチドとの結合を可能にすることができる。次いで、未結合血清を除去し、例えば125I標識プロテインAを使用して、結合した抗体を検出することができる。
【0109】
抗原性ペプチドによって包含される典型的なエピトープは、ポリペプチドの表面に位置するCAT2またはARG1タンパク質の領域、例えば、親水性領域、および高い抗原性を有する領域である。
【0110】
CAT2またはARG1免疫原(例えば、CAT2もしくはARG1タンパク質、そのフラグメント、またはCAT2−もしくはARG1−融合タンパク質)は、典型的には、適当な対象体(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳動物)を該免疫原で免疫化することによって抗体を調製するために使用される。該調製は、さらに、完全または不完全フロイントアジュバントのようなアジュバント、または同様の免疫賦活剤を含む。免疫原性調製物での適当な対象体の免疫化は、抗CAT2またはARG1抗体応答を誘発する。モノクローナルおよびポリクローナル抗CAT2またはARG1抗体を調製し、単離し、使用する技術は、当該技術分野において周知である。
【0111】
したがって、本発明の別の態様は、モノクローナルまたはポリクローナル抗CAT2またはARG1抗体に関する。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性なタンパク質の例としては、該抗体をペプシンのような酵素で処理することによって作成することができるF(ab)およびF(ab')2フラグメントが挙げられる。本発明は、CAT2またはARG1タンパク質と結合するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を提供する。
【0112】
免疫化された対象体における抗CAT2またはARG1抗体力価は、固定されたCAT2またはARG1タンパク質またはCAT2またはARG1タンパク質のフラグメントを使用して酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いるような標準的な技術によって経時的にモニターすることができる。所望により、CAT2またはARG1タンパク質に対して作られた抗体分子を哺乳動物から(例えば、血液から)単離し、さらに、プロテインAクロマトグラフィーのような周知の方法によって精製して、IgGフラクションを得ることができる。免疫化後の適当な時点で、例えば、抗CAT1またはARG1抗体力価が
最高である場合、該対象体から抗体産生細胞を得ることができ、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、EBV−ハイブリドーマ技術、またはトリオーマ技術のような標準的な技術よってモノクローナル抗体を調製するために使用することができる。このモノクローナル抗体を産生するための技術は周知である。
【0113】
抗CAT2またはARG1モノクローナル抗体を作成する目的のために、リンパ球および不死化細胞系を融合するために使用される多くの周知プロトコールのいずれかを適用することができる。典型的には、不死細胞系(例えば、ミエローマ細胞系)は、リンパ球のような同一の哺乳動物種に由来する。例えば、ネズミハイブリドーマは、本発明の免疫原性調製物で免疫化されたマウスからのリンパ球を不死化マウス細胞系と融合することによって調製することができる。不死細胞系の例としては、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含有する培養培地(「HAT培地」)に対して感受性のあるマウスミエローマ細胞系が挙げられる。多くのミエローマ細胞系のいずれか、例えば、P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653またはSp210−Ag14ミエローマ系を標準的な技術に従って融合相手として使用することができる。これらのミエローマ系は、ATCCから入手可能である。典型的には、ポリエチレングリコール(「PEG」)を使用してHAT感受性マウスミエローマ細胞をマウス脾細胞と融合させる。次いで、該融合から得られるハイブリドーマ細胞を、HAT培地を使用して選択し、未融合ミエローマ細胞および非生産的に融合したミエローマ細胞(未融合脾細胞は形質転換されないので数日後に死ぬ)を死滅させる。CAT2またはARG1ポリペプチドと特異的に結合する抗体についてハイブリドーマ培養上清を、例えば標準的なRLISA法を用いて、スクリーニングすることによって、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を検出する。
【0114】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマの調製に代わるものとして、CAT2またはARG1タンパク質を用いて組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングしてCAT2またはARG1タンパク質と結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離することによって、モノクローナル抗AT2またはARG1抗体を同定し、単離することができる。ファージディスプレイライブラリーを産生しスクリーニングするためのキットは商業的に入手可能である(例えば、Parmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01;およびStratagene SurfZAPTM Phage Display Kit、カタログ番号240612)。
【0115】
抗CAT2またはARG1抗体はまた、「一本鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントを含む。該svFvフラグメントは、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含んでおり、ここで、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般的には、Fvポリペプチドは、さらに、scFvに抗原結合のための所望の構造を形成させることができるVHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを含む。
【0116】
加えて、標準的な組換えDNA技術を使用して作成することができる、ヒトおよび非ヒト部分を含む、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体のような組換え抗CAT2またはARG1抗体は、本発明の範囲内である。かかるキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野において知られている組換えDNA技術によって生成することさができる。
【0117】
ヒト化抗体は、ヒト対象体の治療的処置のために望ましい。非ヒト(例えば、ネズミ)抗体のヒト化形態は、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(例えば、抗体の、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2または他の抗原結合サブシーケンス)のキメラ分子であり、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む。ヒト化抗体は、レシピエントの相補的決定領域(CDR)を形成する残基が所望の特異性、アフィニティーおよび能力を有するマウス、ラットまたはウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基と置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は対応する非ヒト残基と置き換えられる場合がある。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においても移入されたCDRまたはフレームワーク配列においても見出されない残基を含むことができる。一般的に、ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものと一致しており、定常部の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体はまた、ヒト免疫グロブリンのもののような免疫グロブリン定常部(Fc)の少なくとも一部を含むことができる。
【0118】
かかるヒト化抗体は、内在性免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子を発現する能力がないが、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用して生成することができる。トランスジェニックマウスを選択された抗原、例えば、CATまたはARG1タンパク質の全てまたは一部で常法で免疫化する。該抗原に対して作成されたモノクローナル抗体は、慣用的なハイブリドーマ技術を使用して得ることができる。トランスジェニックマウスに宿されたヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再編成され、その後、クラススイッチおよび体細胞変異を受ける。かくして、このような技術を使用して、治療上有用なIgG、IgAおよびIgE抗体を生成することができる。
【0119】
選択されたエピトープを認識するヒト化抗体は、「ガイド選択」と称される技術を使用して作成することができる。この方法は、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えば、ネズミ抗体を使用して同一エピトープを認識するヒト化抗体の選択を引き起こす。
【0120】
一の実施態様において、CAT2またはARG1タンパク質に対する抗体は、CAT2またはARG1タンパク質の生物学的機能を低下させるかまたは排除する能力を有する。多くの場合、少なくとも25%の活性低下を得ることができる。他の多くの場合、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の活性低下を達成することができる。
【0121】
抗CAT2またはARG1抗体を使用して、アフィニティクロマトグラフィーまたは免疫沈降のような標準的な方法によってCAT2またはARG1タンパク質または該CATまたはARG1タンパク質の変異体を単離することができる。抗CAT2またはARG1抗体は、天然もしくは変異CAT2またはARG1タンパク質の細胞からの精製ならびに宿主細胞において発現される組換えにより生成されたCAT2またはARG1タンパク質の精製を促進することができる。さらにまた、CAT2またはARG1タンパク質の存在量および発現パターンを評価するために、抗CAT2またはARG1抗体を使用して、(例えば、細胞表面上での細胞溶解物または細胞上清において)CAT2またはARG1タンパク質を検出することができる。抗CAT2またはARG1抗体を診断に使用して、臨床試験法の一部として組織中のタンパク質レベルをモニターし、例えば、所定の治療方針の効力を判定することができる。検出可能な物質に対する抗体を結合(すなわち、物理的に結合)することによって検出を促進することができる。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、プロステーシスグループ、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質が挙げられる。適当な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適当なプロステーシスグループ複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;適当な蛍光物質としては、ウンベリフェロン、フルオロセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオロセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例としてはルミノールが挙げられ;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ;適当な放射性物質としては、125I、131I、35Sおよび3Hが挙げられる。
【0122】
本発明の抗CAT2またはARG1抗体はまた、上昇したCAT2またはARG1発現を有する細胞または組織を治療剤の標的とするために有用でもある。例えば、上昇したCAT2またはARG1発現をもつ細胞または組織を治療剤の標的とするために、小分子CAT2またはARG1アンタゴニストのような治療剤を抗CAT2抗体または抗ARG1抗体と結合させることができる。
【0123】
治療剤は適当なモノクローナル抗体と直接または間接的に(例えば、リンカー基を介して)結合(例えば、共有結合)させることができる。薬剤と抗体との直接反応は、それぞれが他方と反応する能力を有する置換基を有する場合に可能である。例えば、一方の上のアミノまたはスルフヒドリル基のような求核基が他方の上の酸無水物または酸ハロゲン化物のようなカルボニル含有基または良好な脱離基(例えば、ハライド)を含有するアルキル基と反応する能力を有することができる。
【0124】
別法として、治療剤と抗体とをリンカー基を介して結合させるのが望ましい。リンカー基は結合能の妨害を回避するために抗体を薬剤から引き離すためのスペーサーとして機能することができる。リンカー基はまた、薬剤または抗体上の置換基の化学的反応性を増大させ、かくして、結合効率を増大させるのに役立つことができる。化学的反応性の増大はまた、薬剤または薬剤上の官能基の使用を促進することができるが、他のものの使用を促進することはできない。
【0125】
ホモおよびヘテロ官能性の両方の種々の二官能性または多官能性試薬(例えば、イリノイ州ロックフォードのPierce Chemical Co.のカタログに記載されているもの)をリンカー基として使用することができる。結合は、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基または酸化された炭水化物残基を行うことができる。かかる方法を記載した多くの参考文献がある。例えば、Rodwell et alの米国特許第4,671,958号。
【0126】
治療薬が本発明の免疫複合体の抗体部分の障害がない場合により強力である場合、細胞中への内部移行の間またはその後に切断可能なリンカー基を使用するのが望ましい。多くの異なる切断可能なリンカー基が記載されている。これらのリンカー基からの薬剤の細胞内放出のためのメカニズムは、ジスルフィド結合の還元(例えば、Spitlerの米国特許第4,489,710号)、感光性結合の照射(例えば、Senter et al.の米国特許第4,625,014号)、誘導体化されたアミノ酸側鎖の加水分解(例えば、Kohn et al.の米国特許第4,638,045号)、血清相補物媒介加水分解(例えば、Rodwell et la.の米国特許第4,671,958号)および酸触媒加水分解(Blattler et al.の米国特許第4,569,789号)による切断が挙げられる。
【0127】
2個以上の薬剤を抗体と結合させるのが望ましい。一の実施態様において、薬剤の複数の分子が1つの抗体分子と結合する。別の実施態様において、2種類以上の薬剤が1つの抗体と結合することができる。特定の実施態様に関係なく、2つ以上の薬剤との免疫複合体は、様々な方法で調製することができる。例えば、2つ以上の薬剤は、抗体分子と直接、または結合のための複数の部位を使用することができる場合にはリンカーと結合することができる。
【0128】
ベクター
本発明の別の態様は、CAT2またはARG1ポリペプチドまたはその部分をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターに関する。ベクターはプラスミドまたはウイルスベクターであり得る。
【0129】
本発明の発現ベクターは、原核細胞または真核細胞におけるCAT2またはARG1ポリペプチドの発現のために設計することができる。例えば、CAT2およびARG1ポリペプチドは、イー・コリ(E. coli)のような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用する)、酵母細胞、または哺乳動物細胞中で発現することができる。実施態様には、かかるタンパク質を、例えば、本発明の治療タンパク質として使用することができるものがある。別法としては、該発現ベクターを、例えば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを使用して、インビトロで転写し、翻訳することができる。
【0130】
別の実施態様において、組織特異的調節要素を含む哺乳動物発現ベクターを使用して、目的のポリヌクレオチドを発現する。組織特異的調節要素は当該技術分野で知られており、上皮細胞特異的プロモーターを含むことができる。適当な組織特異的プロモーターの他の非限定的な例としては、肝臓特異的アルブミンプロモーター、リンパ特異的プロモーター、T細胞受容体のプロモーターおよび免疫グロブリン、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター)、膵臓特異的プロモーター、および哺乳乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター)が挙げられる。発生的に調節されたプロモーター、例えば、α−フェトプロテインプロモーターもまた含まれる。
【0131】
本発明また、アンチセンス配向で発現ベクター中にクローン化されたCAT2またはARG1ポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを提供する。すなわち、該DNA分子は、本発明のCAT2またはARG1遺伝子のいずれかに対応するmRNAに対してアンチセンスであるRNA分子の発現(DNA分子の転写による)を可能にする方法で調節配列と操作的に結合する。アンチセンス配向でクローン化されたポリヌクレオチドと操作的に結合する調節配列は、種々の細胞型におけるアンチセンスRNA分子の連続的な発現を指示するように選択することができる。例えば、ウイルスプロモーターもしくはエンハンサー、または調節配列は、アンチセンスRNAの、構成的な、組織特異的または細胞特異的発現を指示するように選択することができる。該アンチセンス発現ベクターは、アンチセンスポリヌクレオチドが高性能調節領域の制御下で産生される組換えプラスミド、ファージミドまたは弱毒ウイルスの形態であり得る。該プロモーター/エンハンサーの活性は、該ベクターが導入される細胞型によって決定することができる。
【0132】
本発明はまた、発現のために細胞、組織、または哺乳動物にポリヌクレオチドを送達するための遺伝子送達ビヒクルを提供する。例えば、本発明のポリヌクレオチド配列は、遺伝子送達ビヒクルにおいて局所的または全身系に投与することができる。これらの構築物は、インビボまたはエキソビボ様式でウイルスまたは非ウイルスアプローチを利用することができる。かかるコード配列の発現は、内在性哺乳動物プロモーターまたは異種性プロモーターを使用して誘発することができる。インビボでのコード配列の発現は、構成または調節され得る。本発明は、意図されるポリヌクレオチドを発現する能力を有する遺伝子送達ビヒクルを含む。遺伝子送達ビヒクルは、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルスまたはアルファウイルスベクターのようなウイスルベクターであり得る。該ウイルスベクターはまた、アストロウイルス、コロナウイルス、オルソミクソウイルス、パポバウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコナウイルス、ポックスウイスル、またはトガウイルスのウイルスベクターであり得る。
【0133】
本発明の遺伝子療法構築物の細胞への送達は、上記ウイルスベクターに限定されない。例えば、核酸発現ベクター、死滅アデノウイルス単独と結合したまたは結合しないポリカチオン縮合DNA、リガンド結合DNA、リポソーム−DNA複合体、真核細胞送達ビヒクル細胞、光重合ヒドロゲル物質の沈殿、ハンドヘルド遺伝子移入微粒子銃、電離放射線、核電荷中和、または細胞膜との融合のような他の送達方法補および媒体を使用することができる。粒子媒介遺伝子移入を使用することができる。簡単に言えば、該配列を、高レベル発現のための慣用的な調節配列を含む慣用的なベクターに挿入することができ、次いで、重合体DNA結合カチオン様ポリリシン、プロタミンおよびアルブミンのような合成遺伝子移入分子と一緒にインキュベートし、アシアロオロソムコイド、インスリン、ガラクトース、ラクトースまたはトランスフェリンのような細胞標的リガンドと結合することができる。裸のDNAを使用することもできる。取り込み効率は、生分解性ラテックスビーズを使用して向上させることができる。DNA被覆ラテックスビーズは、ビーズによるエンドサイトーシス開始後に細胞中に効率的に輸送される。該方法は、ビーズを処理して疎水性を増大させ、それによりエンドソームの破壊およびDNAの細胞質ヘの放出を促進することによって改良することができる。
【0134】
本発明の別の態様は、調節可能な発現系を使用するCAT2またはARG1遺伝子のいずれかの発現に関する。これらの系としては、Tet/on/off系、Ecdysone系、Progesterone系およびRapamycin系が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
本発明の別の態様は、CAT2またはARG1ポリペプチドまたはその部分をコードするかまたは含むベクターを用いて形質転換、形質移入または形質導入される宿主細胞の使用に関する。宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。これらの宿主細胞を使用して所望のCAT2またはARG1ポリペプチドを発現することができる。
【0136】
検出方法
上記のように、CAT2またはARG1遺伝子の発現レベルを炎症性疾患のマーカーとして使用し得る。CAT2またはARG1産物(ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)の相対量の検出および測定は、当該分野において公知のいずれかの方法によることができる。検出または測定は定性的または定量的であり得る。
【0137】
転写されたポリヌクレオチドの検出のための代表的な方法は、細胞または組織試料からのRNAの抽出、それに続く抽出したRNAへの標識プローブのハイブリダイゼーションおよび標識プローブの検出(例えば、ノーザンブロッティングまたは核酸アレイ)を含む。
【0138】
ペプチド検出のための代表的な方法は、細胞または組織試料からのタンパク質抽出、それに続く標的タンパク質に特異的な抗体のタンパク質試料への結合、および抗体の検出を含む。例えば、CAT2またはARG1ポリペプチドの検出は、抗CAT2または抗ARG1いずれかのポリクローナル抗体を使用して達成し得る。抗体は一般に標識二次抗体の使用により検出される。標識は放射性同位体、蛍光化合物、酵素、酵素補因子、またはリガンドであり得る。そのような方法は当該分野において周知である。
【0139】
別の実施態様において、CAT2またはARG1タンパク質発現の検出を、CAT2またはARG1タンパク質産物に対する高い結合親和性を有する小分子を使用することによって行う。多くに例において、小分子は容易に検出可能である。多くの他の例において、小分子を他の検出可能な物質で直接的または間接的に標識することができる。これらの検出可能な物質の例としては、限定するものではないが、酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、粒子性物質またはコロイド金属が挙げられる。
【0140】
特定の実施態様において、CAT2またはARG1遺伝子自体が炎症性疾患のマーカーとして作用し得る。例えば、CAT2またはARG1遺伝子のゲノムコピーの増加または減少(遺伝子の複製または欠失によるような)が炎症性疾患と相関し得る。
【0141】
特異的CAT2またはARG1ポリヌクレオチド分子の検出を、ゲル電気泳動、カラムクロマトグラフィーまたはダイレクトシーケンシング、定量的PCR,RT−PCR、ネステッドPCRまたは当該分野において公知のその他の技術によって評価してもよい。
【0142】
CAT2またはARG1遺伝子の全部または一部のコピーの存在または数の検出を、当該分野において公知のいずれかの方法を使用して実施してもよい。一の実施態様において、サザン分析を用いてCAT2またはARG1遺伝子のゲノムコピーの存在および/または量を評価する。DNAの検出および/または定量に有用な他の方法としては、限定するものではないが、ダイレクトシーケンシング、ゲル電気泳動、カラムクロマトグラフィー、定量的PCR、または当業者によって認められているその他の手段が挙げられる。
【0143】
スクリーニング方法
本発明はまた、モジュレーター、すなわち(a)CAT2またはARG1タンパク質に結合する、(b)CAT2またはARG12タンパク質の活性に対する阻害的効果を有する、またはより詳細には(c)CAT2またはARG1タンパク質とその天然基質(例えば、ペプチド、タンパク質、ホルモン、補因子もしくはポリヌクレオチド)の1つ以上との相互作用に対する調節効果を有する、あるいは(d)CAT2またはARG1遺伝子の発現に対する阻害効果を有する、治療部分(例えば、ペプチド、ペプチド模倣物、ペプトイド、ポリヌクレオチド、小分子またはその他の薬物)を含む候補または試験化合物または薬剤の同定方法(本明細書において「スクリーニングアッセイ」ともいう)を提供する。そのようなアッセイは、代表的には、CAT2またはARG1遺伝子と1つ以上のアッセイ成分との間の反応を含む。他の成分は試験化合物自体であってもよく、または試験化合物とCAT2もしくはARG1タンパク質の結合パートナーとの組み合わせであってもよい。
【0144】
本発明の試験化合物は、一般に、無機分子、小有機分子および生体分子である。生体分子としては、限定するものではないが、アミノ酸、核酸、脂質、糖質、ステロイド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、および哺乳動物において生物活性を有するいずれかの天然または合成有機化合物が挙げられる。一の実施態様において、試験化合物は小有機分子である。別の実施態様において、試験化合物は生体分子である。
【0145】
本発明の試験化合物を、いずれの利用可能な供給源(天然および/または合成化合物の系統的ライブラリーを含む)から得てもよい。試験化合物はまた、以下を含む当該分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチのいずれによって得てもよい:生物学的ライブラリー;ペプトイドライブラリー(酵素分解に対して耐性であるがなお生物活性のままである、ペプチドの機能性を有しているが、新たな非ペプチド骨格を有する分子のライブラリー;例えば、Zuckermann et al., J. Med. Chem. 37:2678-85, 1994参照);空間的アドレス可能並列固相または溶液相ライブラリー(spatially addressable parallel solid phase or solution phase library);デコンボリューションを要する合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物(one-bead one-compound)」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法。生物学的ライブラリーおよびペプトイドライブラリーのアプローチはペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは小分子ライブラリーに適用可能である(Lam, Anticancer Drug Des. 12:145, 1997)。
【0146】
本明細書において、用語「結合パートナー」は、CAT2またはARG1タンパク質の基質、あるいはCAT2またはARG1タンパク質に対する結合親和性を有するリガンドのいずれかとして作用する生物活性薬剤をいう。上記のように、生物活性薬剤は、種々の天然または合成化合物、アミノ酸、ポリペプチド、多糖、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのいずれであってもよい。
【0147】
CAT2またはARG1タンパク質のインヒビターのスクリーニング
本発明は、CAT2またはARG1タンパク質のインヒビターについて試験化合物をスクリーニングする方法および試験化合物を含む医薬組成物についてスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、CAT2またはARG1発現細胞試料のアリコートを複数の試験化合物の1つと接触させること、および各々のアリコートにおけるCAT2の発現を比較して、試験化合物のいずれかが、他の試験化合物を含む試料に比較しての、または未処理試料もしくはコントロール試料に比較してのCAT2またはARG1の発現または活性のレベルの実質的な低下をもたらすかどうかを決定することを含む。さらに、スクリーニング方法を、試験化合物をCAT2またはARG1タンパク質と合し、それにより試験化合物のCAT2またはARG1タンパク質に対する効果を決定することによって工夫してもよい。
【0148】
さらに、本発明は、試験化合物、CAT2またはARG1タンパク質、および結合パートナーを一緒に合し、結合パートナーとCAT2またはARG1タンパク質との結合が生じるかどうかを決定することによる、CAT2またはARG1タンパク質の結合パートナーへの結合を調節する能力を有する試験化合物のスクリーニング方法に関する。試験化合物は小分子または生体分子のいずれであってもよい。下記のように、試験化合物を当該分野において周知の種々のライブラリーから提供してもよい。
【0149】
タンパク質インヒビターのスクリーニングのためのその他の方法および組成物も当該分野において公知である。米国特許第4,980,281号、同第5,266,464号、同第5,688,635号および同第5,877,007号明細書(出典明示により本明細書の記載とする)を参照のこと。
【0150】
CAT2またはARG1の発現、活性または結合能のインヒビターは、本発明の治療用組成物として有用である。CAT2媒介アルギニン輸送のインヒビターの1つはリジンである。そのようなインヒビターを下記のような医薬組成物として処方してもよい。
【0151】
高スループットスクリーニングアッセイ
本発明は、CAT2またはARG1の活性または発現を阻害する能力を有する試験化合物の高スループットスクリーニングを実施する方法を提供する。一の実施態様において、高スループットスクリーニング方法は、試験化合物とCAT2またはARG1タンパク質とを合すること、および試験化合物のCAT2またはARG1タンパク質に対する効果を検出することを含む。下記にように、サイトセンサーミクロフィジオメーター(cytosensor microphysiometer)、FLIPR(登録商標)(Molecular Devices Corp, Sunnyvale, CA)のようなカルシウム流アッセイまたはTUNELアッセイを用いて細胞活性を測定してもよい。
【0152】
当該分野において周知の種々の高スループット機能アッセイを併用して、異なる種類の活性化試験化合物の反応性をスクリーニングおよび/または研究してもよい。共役系はしばしば予測困難であるので、いくつかのアッセイを、広範な共役機構を検出するために構成する必要があり得る。限定するものではないが、BRET(登録商標)またはFRET(登録商標)(いずれもPackard Instrument Co., Meriden, CT)を含む、種々の蛍光に基づく技術が当該分野において周知であり、活性の高スループットおよび超高スループットスクリーニングが可能である。治療標的の個々の成分との試験化合物の結合を検出するためにBIACORE(登録商標)システムを操作してもよい。
【0153】
試験化合物をCAT2またはARG1タンパク質と合し、それらの間の結合活性を測定することによって、診断分析を実施して、共役系を解明することができる。サイトセンサーミクロフィジオメーターを使用する一般的なアッセイを使用して代謝活性化を測定してもよく、一方カルシウム流動の変化をFLIPR(登録商標)(Molecular Devices Corp, Sunnyvale, CA)のような蛍光に基づく技術を使用することによって検出することができる。さらに、フローサイトメトリーを利用してアポトーシスの間のゲノムDNAの切断から生じる遊離の3−OH末端を検出するTUNELアッセイによって、アポトーシス細胞の存在を決定してもよい。上記のように、当該分野において周知の種々の機能アッセイを併用して、異なる種類の活性化試験化合物の反応性をスクリーニングおよび/または研究してもよい。一の実施態様において、本発明の高スループットスクリーニングアッセイは、BIACORE(登録商標)システム(Biacore International AB, Uppsala, Sweden)により提供されるような無標識プラズモン共鳴技術を利用する。プラズモン自由共鳴は、表面プラズモン波が金属/液体界面で励起されると生じる。試料との接触の結果としての表面からの指向光を反射させることによって、表面プラズモン共鳴は、表面層における屈折率の変化を引き起こす。表面層における質量集中の所定の変化に対する屈折率の変化は、多くの生物活性薬剤(タンパク質、ペプチド、脂質およびポリヌクレオチドを含む)について類似しており、BIACORE(登録商標)センサー表面は種々のこれら生物活性薬剤を結合するように官能性をもたせることができるので、試験化合物の広範な選択の検出を達成することができる。
【0154】
それゆえ、本発明は、BIACORE(登録商標)のような高スループットアッセイまたはBRET(登録商標)のような蛍光に基づくアッセイにおいてCAT2またはARG1タンパク質と試験化合物とを合することにより、CAT2またはARG1タンパク質の活性を阻害する能力についての試験化合物の高スループットスクリーニングを提供する。さらに、高スループットアッセイを利用して、CAT2またはARG1タンパク質に結合する特異的因子を同定するか、あるいはCAT2またはARG1タンパク質の結合パートナーへの結合を妨げる試験化合物を同定してもよい。さらに、高スループットスクリーニングアッセイを改変して、試験化合物がCAT2もしくはARG1タンパク質またはCAT2もしくはARG1タンパク質の結合パートナーのいずれかに結合できるかどうかを決定してもよい。
【0155】
診断アッセイ
生物試料中のCAT2もしくはARG1またはCAT2もしくはARG1をコードするポリヌクレオチドの存在を検出するための例示的な方法は、試験対象から生物試料を得ること、およびCAT2またはARG1をコードするポリヌクレオチド(例えば、mRNA、ゲノムDNA)またはタンパク質を検出する能力を有する化合物または薬剤と生物試料とを接触させることを含み、その結果、生物試料中のCAT2またはARG1ポリヌクレオチドの存在が検出される。CAT2もしくはARG1遺伝子またはCAT2もしくはARG1タンパク質に対応するmRNAまたはゲノムDNAを検出するための薬剤の一例は、CAT2またはARG1 mRNAまたはゲノムDNAにハイブリダイズする能力を有する標識ポリヌクレオチドプローブである。本発明の診断アッセイにおける使用に適切なプローブは本明細書に記載されている。CAT2またはARG1タンパク質を検出するための薬剤の一例は、CAT2またはARG1タンパク質を特異的に認識する抗体である。
【0156】
診断アッセイを使用して、生物試料中のCAT2またはARG1の発現または活性の量を定量してもよい。そのような定量は、例えば、喘息、COPDおよび関節炎などの炎症性疾患の進行または重篤度を決定するために有用である。そのような定量はまた、例えば、処置後の炎症性疾患の重篤度を決定するために有用である。
【0157】
本明細書に記載の方法は、例えば、本明細書に記載のプローブポリヌクレオチドまたは抗体試薬の少なくとも1つを含む事前包装した診断キットを利用することによって実施してもよく、これを喘息、COPDおよび関節炎などの炎症性疾患の症状または家族歴を示す対象を診断するための臨床設定で好適に使用し得る。
【0158】
さらに、CAT2またはARG1が発現されているいずれの細胞型または組織を本明細書に記載の予後または診断アッセイにおいて利用してもよい。
【0159】
炎症性疾患の重篤度の決定
診断アッセイの分野において、本発明はまた、対象から試料を単離し、正常試料またはコントロール試料由来の第2の試料に比較しての試料中のCAT2またはARG1の存在、量および/または活性を検出することによる、喘息、COPDおよび関節炎などの炎症性疾患の重篤度を決定するための方法を提供する。一の実施態様において、2つの試料中のCAT2またはARG1の発現レベルを比較し、試験試料中のCAT2またはARG1発現の増加が、喘息、COPDおよび関節炎などの炎症性疾患を示す。
【0160】
CAT2またはARG1を検出するための薬剤の一例は、CAT2またはARG1に結合する能力を有する抗体である。いくつかの場合に、抗体を、直接的または間接的のいずれかで、検出可能な標識にカップリングさせることができる。抗体はポリクローナルまたはモノクローナルであり得る。インタクトな抗体またはそのフラグメント(例えば、FabもしくはF(ab’))を使用することができる。プローブまたは抗体に関する用語「標識」は、検出可能な物質をプローブまたは抗体にカップリング(すなわち、物理的結合)することによるプローブまたは抗体の直接的標識、および直接的に標識された別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識を包含することが意図される。間接的標識の例としては、蛍光標識二次抗体を使用する一次抗体の検出、およびビオチンでのDNAプローブの末端標識(その結果、蛍光標識したストレプトアビジンを用いて検出することができる)が挙げられる。用語「生物試料」は、対象から単離された組織、細胞および生物液体ならびに対象内の組織、細胞および液体を含むことが意図される。すなわち、本発明の検出方法を使用して、インビトロおよびインビボにおいて生物試料中のCAT2またはARG1 mRNA、タンパク質またはゲノムDNAを検出することができる。例えば、CAT2またはARG1 mRNAの検出のためのインビトロ技術は、ノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイチュハイブリダイゼーションを含む。CAT2またはARG1の検出のためのインビトロ技術は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光を含む。CAT2またはARG1ゲノムDNAの検出のためのインビトロ技術は、サザンハイブリダイゼーションを含む。さらに、CAT2またはARG1の検出のためのインビボ技術は、対象への標識抗CAT2またはARG1抗体の導入を含む。例えば、対象におけるその存在および位置を標準的な画像技術によって検出できる放射性マーカーで抗体を標識することができる。
【0161】
一の実施態様において、生物試料は試験対象由来のタンパク質分子を含有する。あるいは、生物試料は、試験対象由来のmRNA分子または試験対象由来のゲノムDNA分子を含有し得る。一例において、生物試料は対象から従来の手段によって単離された組織試料(例えば、バイオプシー)である。
【0162】
予後アッセイ
本明細書に記載の診断方法をさらに、異常なCAT2またはARG1の発現または活性に関連する喘息、COPDおよび関節炎などの炎症性疾患を有するかまたはその発達の危険性がある対象を同定するために利用することができる。
【0163】
さらに、本明細書に記載の予後アッセイを使用して、薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、小分子、またはその他の薬物候補)を対象に投与して、異常なCAT2またはARG1の発現または活性に関連する炎症性疾患を処置または予防することができるかどうかを決定することができる。従って、本発明は、CAT2またはARG1の発現または活性の増加に関連する炎症性疾患のための薬剤を用いて対象を有効に処置できるかどうかを決定するための方法を提供する。
【0164】
炎症性疾患のための処置を受けている対象が長期生存の不良見通しまたは疾患進行を有するかどうかを決定するために予後アッセイを工夫することができる。一の実施態様において、診断のすぐ後に、すなわち数日以内に予後を決定することができる。炎症性疾患の異なる段階(発症から後期まで)のCAT2またはARG1発現プロフィールを確立することによって、発現パターンが見出され、特定の発現プロフィールを予後不良の可能性の増大に相関させ得る。次いで、予後を使用して、より積極的な処置プログラムを工夫し、長期生存および良好な生活状態の可能性を増強し得る。
【0165】
遺伝子変化の検出
本発明の方法を使用して、CAT2またはARG1遺伝子における遺伝子変化を検出し、それにより、CAT2またはARG1の活性またはポリヌクレオチド発現の異常な調節によって特徴付けられる障害の危険性が、変化した遺伝子を有する対象にあるかどうかを決定することもできる。多くの実施態様において、方法は、対象由来の細胞の試料における、CAT2またはARG1遺伝子の完全性に影響を及ぼす少なくとも1つの変化、またはCAT2またはARG1遺伝子の異常な発現によって特徴付けられる遺伝子変化の有無を検出することを含む。例えば、そのような遺伝子変化は、以下の少なくとも1つの存在を確認することによって検出することができる:1)CAT2またはARG1遺伝子からの1つ以上のヌクレオチドの欠失;2)CAT2またはARG1遺伝子への1つ以上のヌクレオチドの付加;3)CAT2またはARG1遺伝子の1つ以上のヌクレオチドの置換;4)CAT2またはARG1遺伝子の染色体再配列;5)CAT2またはARG1遺伝子のメッセンジャーRNA転写物のレベルの変化;6)CAT2またはARG1遺伝子の異常な修飾(例えば、ゲノムDNAのメチル化パターンの);7)CAT2またはARG1遺伝子のメッセンジャーRNA転写物の非野生型スプライシングパターンの存在;8)CAT2またはARG1の非野生型レベル;9)CAT2またはARG1遺伝子の対立遺伝子消失;および10)CAT2またはARG1の不適切な翻訳後修飾。本明細書に記載するように、CAT2またはARG1遺伝子における変化を検出するために使用できる、当該分野において公知の多数のアッセイが存在する。例示的な生物試料は、対象から従来の手段によって単離された血液試料である。
【0166】
特定の実施態様において、変化の検出は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、アンカーPCRまたはRACE PCR)あるいはライゲーション連鎖反応(LCR)におけるプローブ/プライマーの使用を含み、後者をCAT2またはARG1遺伝子における点変異の検出に使用することができる。この方法は、対象から細胞の試料を収集する工程、試料の細胞からポリヌクレオチド(例えば、ゲノム、mRNAまたは両方)を単離する工程、CAT2またはARG1遺伝子(存在する場合)のハイブリダイゼーションおよび増幅が起こるような条件下でCAT2またはARG1遺伝子に特異的にハイブリダイズする1つ以上のプライマーとポリヌクレオチド試料とを接触させる工程、および増幅産物の有無を検出する工程、または増幅産物の大きさを検出し、コントロール試料に対して長さを比較する工程を含み得る。本明細書に記載の変異の検出のために使用される技術のいずれかと共同して予備的増幅工程としてPCRおよび/またはLCRを使用することが望ましくあり得ることが理解される。
【0167】
別の増幅方法は以下を含む:自己持続配列複製(self-sustained sequence replication)、転写増幅システム(transcriptional amplification system)、Qβレプリカーゼ、またはいずれかの他のポリヌクレオチド増幅方法、それに続く当業者に周知の技術を使用する増幅分子の検出。そのような分子が非常に少数存在する場合、これらの検出スキームはポリヌクレオチド分子の検出に有用である。
【0168】
別の実施態様において、試料細胞由来のCAT2またはARG1遺伝子における変異を、制限酵素切断パターンの変化によって同定することができる。例えば、試料およびコントロールDNAを単離し、増幅し(所望により)、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼで消化し、フラグメント長サイズをゲル電気泳動によって決定し、比較する。試料およびコントロールDNAの間のフラグメント長サイズの差異は試料DNAにおける変異を示す。さらに、配列特異的リボザイムの使用を用いて、リボザイム切断部位の発生または消失によって特異的変異の存在を評価することができる。
【0169】
他の実施態様において、CAT2またはARG1遺伝子における遺伝子変異を、試料およびコントロールポリヌクレオチド(例えば、DNAまたはRNA)を数百または数千のオリゴヌクレオチドプローブを含む高密度アレイにハイブリダイズさせることによって同定することができる。例えば、CAT2またはARG1遺伝子における遺伝子変異を、光生成DNAプローブを含む二次元アレイにおいて同定することができる。簡潔にいえば、連続的な重複プローブの直線アレイを作製することによって、プローブの第1のハイブリダイゼーションアレイを使用し、試料およびコントロール中のDNAの長範囲を走査して、配列間の塩基変化を同定することができる。この工程によって点変異の同定が可能となる。検出される全ての変種または変異に相補的なより小さな、特殊化されたプローブアレイを使用することによって特異的変異の特徴付けを可能にする第二のハイブリダイゼーションアレイがこの工程に続く。各々の変異アレイは、並列プローブセット(一方は野生型遺伝子に相補的であり、他方は変異遺伝子に相補的である)から構成される。
【0170】
さらに別の実施態様において、当該分野において公知の種々の配列決定反応のいずれかを使用して、CAT2またはARG1遺伝子を直接的に配列決定し、試料CAT2またはARG1遺伝子の配列を対応する野生型(コントロール)配列と比較することによって変異を検出することができる。診断アッセイを実施するときに、質量分析による配列決定を含む種々の自動化配列決定手順のいずれかを利用できることも意図される。
【0171】
CAT2またはARG1遺伝子における変異を検出するための他の方法としては、切断剤からの保護を使用してRNA/RNAまたはRNA/DNAヘテロ二重鎖におけるミスマッチした塩基を検出する方法が挙げられる(Myers et al., Science, 230:1242, 1985)。一般に、「ミスマッチ切断」の技術は、野生型CAT2またはARG1遺伝子配列を含む(標識)RNAまたはDNAと組織試料から得られた潜在的に変異体のRNAまたはDNAとをハイブリダイズさせることによりヘテロ二重鎖を提供することによって開始する。二本鎖の二重鎖を、コントロールおよび試料鎖の間の塩基対ミスマッチに起因して存在する二重鎖の一本鎖領域を切断する薬剤で処理する。例えば、RNA/DNA二重鎖をRNaseで処理することができ、DNA/DNAハイブリッドをS1ヌクレアーゼで処理してミスマッチ領域を酵素消化することができる。他の実施態様において、ミスマッチ領域を消化するために、DNA/DNAまたはRNA/DNAいずれかの二重鎖を、ヒドロキシアミンまたは四酸化オスミウムおよびピペリジンで処理することができる。ミスマッチ領域の消化の後、生じた材料を変性ポリアクリルアミドゲル上で大きさにより分離して、変異の部位を決定する。一の実施態様において、コントロールDNAまたはRNAを検出のために標識することができる。
【0172】
さらに別の実施態様において、細胞の試料から得られたCAT2またはARG1 cDNA中の点変異を検出しマッピングするために、規定された系において二本鎖DNA中のミスマッチした塩基対を認識する1つ以上のタンパク質(いわゆる「DNAミスマッチ修復」酵素)を、ミスマッチ切断反応に用いる。例えば、E.coliのmutY酵素はG/AミスマッチにおけるAを切断し、HeLa細胞由来のチミジンDNAグリコシラーゼはG/TミスマッチにおけるTを切断する。例示的な実施態様によれば、CAT2またはARG1遺伝子配列(例えば、野生型CAT2またはARG1遺伝子配列)に基づくプローブを、試験細胞(単数または複数)由来のcDNAまたはその他のDNA産物にハイブリダイズさせる。二重鎖をDNAミスマッチ修復酵素で処理し、切断産物(あれば)を電気泳動プロトコルなどで検出することができる。例えば、米国特許第5,459,039号参照。
【0173】
他の実施態様において、電気泳動移動度の変化を使用して、CAT2またはARG1遺伝子における変異を同定する。例えば、一本鎖高次構造多型(SSCP)を使用して、変異および野生型ポリヌクレオチドの間の電気泳動移動度の差異を検出してもよい。試料およびコントロールCAT2またはARG1ポリヌクレオチドの一本鎖DNAフラグメントを変性し、再結合させる。一本鎖ポリヌクレオチドの二次構造は配列によって変動する。結果として生じる電気泳動移動度の変化により、1塩基の変化でさえ検出が可能となる。DNAフラグメントを標識してもよく、または標識プローブを用いて検出してもよい。配列の変化に対して二次構造がより感受性であるRNA(DNAよりむしろ)を使用することによってアッセイの感度を増強してもよい。一の実施態様において、方法は、ヘテロ二重鎖分析を利用して、二本鎖の二重鎖分子を電気泳動移動度の変化に基づいて分離する(Keen et al., Trends Genet. 7:5-7, 1991)。
【0174】
さらに別の実施態様において、変性剤の濃度勾配を含有するポリアクリルアミドゲル中での変異体または野生型フラグメントの移動を、変性濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)を使用してアッセイする。DGGEを分析方法として使用する場合、DNAを、それが完全には変性されないことを保証するように、例えば約40bpの高融点GCリッチDNAのGCクランプをPCRによって付加することによって改変する。さらなる実施態様において、変性濃度勾配の代わりに温度勾配を使用して、コントロールおよび試料DNAの移動度の差異を同定する(Rosenbaum and Reissner, Biophys. Chem. 265:12753, 1987)。
【0175】
点変異を検出するためのその他の技術としては、限定するものではないが、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸長が挙げられる。例えば、既知の変異が中央に配置されたオリゴヌクレオチドプライマーを調製し、完全な一致が見出される場合にのみハイブリダイゼーションを可能にする条件下で標的DNAにハイブリダイズさせてもよい(Saiki et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:6230, 1989)。そのような対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドをPCR増幅した標的またはいくつかの異なる変異にハイブリダイズさせる。ここでオリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーションメンブレンに結合し、標識標的DNAとハイブリダイズさせる。
【0176】
あるいは、選択的PCR増幅に依存する対立遺伝子特異的増幅技術を、本発明と共同して使用してもよい。特異的増幅用のプライマーとして使用するオリゴヌクレオチドは、目的の変異を分子の中央(増幅が差次的なハイブリダイゼーションに依存するように)または一方のプライマーの3’末端に有し得、ここで、適切な条件下で、ミスマッチがポリメラーゼ伸長を妨げるかまたは低下させることができる。さらに、切断に基づく検出を生じるように変異の領域に新たな制限部位を導入することも所望され得る。特定の実施態様において増幅のためにTaqリガーゼを使用して増幅を実施し得ることも予期される。そのような場合、5’配列の3’末端に完全な一致が存在する場合にのみライゲーションが生じ、特定の部位における既知の変異の存在を、増幅の有無を調べることによって検出することが可能となる。
【0177】
臨床試験の間の効果のモニター
CAT2またはARG1の発現または活性に対する薬剤(例えば、薬物、小分子、タンパク質、ヌクレオチド)の影響のモニターは、基礎的な薬物スクリーニングのみならず、臨床試験においても適用できる。例えば、本明細書に記載のスクリーニングアッセイによって決定した薬剤が、CAT2またはARG1の発現、タンパク質レベルを低下させるかまたはCAT2またはARG1活性をダウンレギュレートすることの有効性を、増加したCAT2またはARG1の発現、タンパク質レベル、またはアップレギュレートされたCAT2またはARG1活性を示す対象の臨床試験においてモニターすることができる。そのような臨床試験において、CAT2またはARG1の発現または活性を、特定の組織の表現型の「読み出し」として使用できる。
【0178】
例えば、臨床試験においてCAT2またはARG1関連障害に対する薬剤の効果を調べるために、細胞を単離し、RNAを調製し、CAT2またはARG1の発現のレベルについて分析することができる。遺伝子発現のレベルを、本明細書に記載のようなノーザンブロット分析、RT−PCR、GeneChip(登録商標)またはTaqman分析によって、あるいは産生されたタンパク質の量を本明細書に記載のような方法の1つにより測定することによって、またはCAT2またはARG1の活性のレベルを測定することによって定量することができる。このようにして、遺伝子発現レベルを読み出し(薬剤に対する細胞の生理反応を示す)とすることができる。従って、この応答状態を処置前および薬剤での個体の処置の間の種々の時点で決定し得る。
【0179】
一の実施態様において、本発明は、以下の工程を含む薬剤(例えば、本明細書に記載のスクリーニングアッセイによって同定されたアンタゴニスト、ペプチド模倣物、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、小分子、またはその他の薬物候補)での対象の処置の有効性をモニターするための方法を提供する:(i)薬剤の投与前に対象から投与前試料を得る工程;(ii)投与前試料中のCAT2またはARG1タンパク質またはmRNAの発現のレベルを検出する工程;(iii)対象から1つ以上の投与後試料を得る工程;(iv)投与後試料中のCAT2またはARG1タンパク質またはmRNAの発現または活性のレベルを検出する工程;(v)投与前試料中のCAT2またはARG12タンパク質またはmRNAの発現または活性のレベルを、投与後試料(単数または複数)中のCAT2またはARG1タンパク質またはmRNAの発現または活性のレベルと比較する工程;および(vi)それに応じて対象への薬剤の投与を変更する工程。例えば、CAT2またはARG1の発現または活性を検出されたものより高いレベルに増加させるためには、すなわち薬剤の有効性を低下させるためには、薬剤の投与の減少が所望され得る。そのような実施態様によれば、観察可能な表現型応答がなくても、CAT2またはARG1の発現または活性を薬剤の有効性の指標として使用し得る。
【0180】
処置方法
本発明は、喘息、COPD、骨関節炎および関節リウマチのような炎症性疾患のリスクをもつかまたは該炎症性疾患に対して感受性が高いかまたは該炎症性疾患であると診断された対象体を処置する予防的方法および治療的方法の両方を提供する。処置の予防的方法および治療的方法の両方に関して、かかる処置は、薬理ゲノミクスの分野から得られる知識に基づいて、特異的に合わせるかまたは変更することができる。本明細書で使用される「薬理ゲノミクス」は、臨床的に開発中および市場に出ている薬物への、遺伝子配列決定、統計学的な遺伝学、および遺伝子発現分析のようなゲノム技術の適用を含む。より句欲しくは、該用語は、対象体の遺伝子が薬物に対する対象体の応答を決定する方法(例えば、対象体の「薬物応答表現型」または「薬物応答遺伝子型」)の研究をいう。かくして、本発明の別の態様は、個々の薬物応答に従ってCAT2またはARG1モジュレーターでの個々の予防的処置または治療的処置を合わせる方法を提供する。薬理ゲノミクスは、臨床士または医師に、処置によって最も大きな利益を得る対象体に対して予防的または治療的処置を標的とさせ、毒性のある薬物に関連する副作用を経験する対象体の処置を回避させる。
【0181】
予防的方法
一の態様において、本発明は、CAT2またはARG1発現または活性をモジュレートする薬剤を対象体に投与することにより対象体におけるCAT2またはARG1関連病原プロセスを予防するための方法を提供する。
【0182】
異常なCAT2またはARG1発現または活性と関連する喘息のような炎症性疾患のリスクがある対象体は、例えば、本明細書に記載したような診断アッセイまたは予後アッセイのいずれかまたはその組み合わせによって、同定することができる。
【0183】
予防薬の投与は増加したCAT2またはARG1タンパク質発現に特徴的な症状の出現前に行うことができ、その結果、疾患が予防されるかまたは別法としてその進行が遅延される。CAT2またはARG1異常(例えば、典型的には、正常な標準偏差の外側へのモジュレーション)のタイプに依存して、CAT2またはARG1変異タンパク質、CAT2またはARG1タンパク質アンタゴニスト剤、抗CAT2またはARG1抗体、またはCAT2またはARG1アンチセンスポリヌクレオチドは、例えば、対象体を処置するのに使用することができる。適当な薬剤は、本明細書に記載されるスクリーニングアッセイに基づいて決定することができる。
【0184】
治療的方法
本発明の別の態様は、治療目的のためにCAT2またはARG1タンパク質発現または活性をモジュレートする方法に関する。したがって、例示的実施態様において、本発明のモジュレートリー法は、細胞を、該細胞に関連するCAT2またはARG1発現または該CAT2またはARG1タンパク質の1つまたはそれ以上の活性を阻害する薬剤と接触させることを含む。CAT2またはARG1発現またはタンパク質活性をモジュレートする薬剤は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または多糖類、CAT2またはARG1タンパク質の自然発生的な標的分子(例えば、CAT2またはARG1タンパク質基質または受容体)、抗CAT2または抗ARG1抗体、CAT2またはARG1タンパク質アンタゴニスト、CAT2またはARG1タンパク質アンタゴニストのペプチド模倣物、または他の有機および無機小分子のような本明細書に記載した薬剤であり得る。
【0185】
これらのモジュレートリー法は、インビボで(例えば、該薬剤を対象体に投与することにより)行うことができる。本発明は、CAT2またはARG1の増強された発現または活性によって特徴付けられる炎症性疾患であると診断されたかまたは該炎症性疾患のリスクがある個体を治療する方法を提供する。一の実施態様において、該方法は、CAT2またはARG1発現または活性をダウンレギュレートする薬剤(例えば、本明細書に記載されたスクリーニングアッセイによって同定される薬剤)または該薬剤の組み合わせを投与することを含む。該処置はさらに、炎症性疾患に冒されている組織または細胞に局在化することができる。
【0186】
薬理ゲノミクス
CAT2またはARG1モジュレーターを使用する喘息、COPDおよび関節炎のような炎症性疾患の処置と合わせて、薬理ゲノミクス(すなわち、個々の遺伝子型と外来化合物または薬物に対する個々の応答との関係の研究)が考えられる。治療薬の代謝の差異は、薬理的に活性な薬物の投与量と血中濃度との関係を変えることによって重篤な毒性または治療不全を引き起こすことがある。かくして、医師または臨床士は、CAT2またはARG1モジュレーターを投与するかどうかを決定する際およびCAT2またはARG1モジュレーターでの処置の投薬および/または治療方針を合わせる際に関連する薬理ゲノミクス研究において得られた知識を適用することを考慮することができる。
【0187】
薬理ゲノミクスは、罹患したヒトにおける変更された薬物処分および以上な作用のために薬物に対する応答における臨床的に重大な遺伝的変異を取り扱う。一般に、2種類の遺伝薬理学的条件を区別することができる。薬物が身体に対して作用する方法を改変する単一因子として伝達される遺伝的条件(改変された薬物作用)または人体が薬物に対して作用する方法を改変する単一因子として伝達される遺伝的条件(改変された薬物代謝)。これらの遺伝薬理学的条件は、稀な遺伝子欠損症としてまたは自然発生の遺伝子多型として生じることがある。例えば、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ欠乏症(G6PD)は、主要な臨床的合併症がオキシダント薬物(抗マラリア薬、スルホナアミド、鎮痛薬、ニトロフラン)の摂取およびソラマメの消費の後の溶血である、一般的な遺伝的酵素異常症である。
【0188】
「ゲノム−ワイドアソシエーション」として知られている薬物応答を予想する遺伝子を同定するための一の薬理ゲノミクス法は、既に知られている遺伝子関連部位からなるヒトゲノムの高分解能マップ(例えば、ヒトゲノム上の60,000〜100,000の多型部位または可変部位からなる、それぞれ2つの変種を持つ「二対立遺伝子」遺伝子マーカーマップ)に頼るものである。かかる高分解能遺伝子マップは、フェーズII/III薬物試験において役割を果たす統計学的に相当数の対象体のそれぞれのゲノムのマップと比較して、特定の観察された薬物応答または副作用と関連する遺伝子を同定することができる。別法としては、かかる高分解能マップは、ヒトゲノムにおける数千万個の既知単一ヌクレオチド多型性(SNP)の組み合わせから作成することができる。本明細書で使用する場合、「SNP」は、DNAのストレッチにおける単一ヌクレオチド塩基において生じる一般的な改変である。例えば、SNPは、DNAの1000塩基ごとに1つ生じ得る。疾患プロセスに関与し得るSNPがある。しかしながら、SNPの大多数は、疾患に関連していない。かかるSNPの発生に基づいて遺伝子マップを考慮すれば、個体を、それらの個々のゲノムにおけるSNPの特定のパターンに依存して遺伝子カテゴリーに分類することができる。このような方法では、治療方針は、遺伝的に類似の個体の間で共通している形質を考慮して、遺伝的に類似の個体の群に合わせることができる。
【0189】
別法として、「候補遺伝子アプローチ」と称される方法は、薬物応答を予想する遺伝子を同定するために使用することができる。この方法に従って、薬物標的をコードする遺伝子がわかっている場合(例えば、CAT2またはARG1遺伝子)、該遺伝子の全ての一般的な変種を集団においてかなり容易に同定することができ、遺伝子の一のバージョン対別のバージョンを有することが特定の薬物応答に関連するかを決定することができる。
【0190】
例示的実施態様として、薬物代謝性酵素の活性は、薬物作用の強度および期間の両方の主要な決定因子である。薬物代謝性酵素(例えば、N−アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)およびチトクロムP450酵素CYP2D6およびCYPZC19)の遺伝的多型の発見は、いくつかの対象体が薬物の標準的な安全な投与量を摂取した後に予想される薬物効果を得ないかまたは誇張された薬物応答および重篤な毒性を示す理由に関する説明を提供した。これらの多型は、集団における2つの表現型、高代謝群および低代謝群において発現される。低代謝群の有病率は、種々の集団の間で異なる。例えば、CYP2D6をコードする遺伝子は、非常に多型性であり、低代謝群においていくつかの変異が同定された。これらは全て、機能的CYP2D6の不在を引き起こす。CYP2D6およびCYP2C19の低代謝群は、標準的な用量を投与された場合、誇張された薬物応答および副作用を非常な頻繁に経験する。そのCYP2D6形成代謝物モルヒネによって媒介されるコデインの鎮痛効果について立証されているように、代謝物が活性な治療薬部分である場合、低代謝群は治療応答を全く示さない。他の極端なものは、標準的な用量に対して反応しない、いわゆる超急速代謝群である。最近、超急速代謝の分子的基礎はCYP2D6遺伝子増幅のためであることが同定された。
【0191】
別法として、「遺伝子発現プロファイリング」と称される方法を使用して、薬物応答を予想する遺伝子を同定することができる。例えば、薬物を投与された動物の遺伝子発現(例えば、CAT2またはARG1モジュレーターに対して応答するCAT2またはARG1発現)は、毒性に関連する遺伝子経路が作動させられたかどうかの指標を与えることができる。
【0192】
上記薬理ゲノミクスアプローチの2つ以上から作成された情報を使用して、個々の予防的処置または治療的処置のための適当な用量および治療方針を決定することができる。この知識は、投薬または薬物選択に適用した場合、副作用または治療不全を回避することができ、かくして、CAT2またはARG1モジュレーターで対象体を処置した場合の治療効率または予防効率を増強することができる。
【0193】
医薬組成物
本発明は、さらに、CAT2またはARG1モジュレーターおよび医薬上許容される担体を含んでなる医薬組成物に向けられる。
【0194】
本明細書中で使用される場合、「医薬上許容される担体」なる語は、医薬的投与に適合するありとあらゆる溶媒、可溶化剤、増量剤、安定化剤、結合剤、吸収剤、基剤、緩衝化剤、滑沢剤、放出制御ビヒクル、希釈剤、乳化剤、湿潤剤、滑沢剤、分散媒、被覆剤、抗菌または抗真菌剤、等張化および吸収遅延剤などを包含することが意図される。医薬上活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当該分野でよく知られている。いずれかの従来の媒体または薬剤が活性な化合物と不適合性である場合を除き、該組成物中におけるその使用が意図される。補助剤もまた、該組成物中に配合することができる。
【0195】
本発明の医薬組成物は、その意図された投与経路に適合するように処方される。投与経路の例は、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入、舌下、気管支、および肺)、経皮(局所)、経粘膜、および直腸投与を包含する。非経口、経皮または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、下記の成分:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、セーライン溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン;プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または重硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;バッファー、例えば、酢酸、クエン酸またはリン酸バッファー、および等張性調節剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースを包含することができる。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てのシリンジまたは複数回投与用バイアルに封入することができる。
【0196】
注射使用に適当な医薬組成物は、滅菌水性溶液(水溶性である)または分散液および滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を包含する。静脈内投与の場合、適当な担体は、生理学的セーライン、静菌性水、Cremophor ELTM(登録商標)(BASF, Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝化セーライン(PBS)を包含する。全ての場合において、注射可能な組成物は、滅菌性であるべきであり、容易に通針可能な程度に流動性であるべきである。それは、製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびその適当な混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる。適当な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤の使用によって、分散液の場合、適した粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、塩化ナトリウム、糖類、またはポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)を組成物中に含有させることができる。注射可能な組成物の長時間吸収は、該組成物中に、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含ませることによってもたらすことができる。
【0197】
滅菌注射溶液は、活性なCAT2またはARG1モジュレーターを所望の量で適当な溶媒中、上記の成分の1つまたは組み合わせと共に配合し、必要に応じて、次いでフィルター滅菌することによって調製できる。一般に、分散液は、塩基性分散媒および上記の必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に活性な化合物を配合することによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、例示される調製法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、それにより、活性成分およびいずれかの付加的な所望の成分が予めフィルター滅菌したその溶液から生じる。
【0198】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を包含する。それらは、ゼラチンカプセル中に封入することができるか、または打錠することができる。経口治療的投与の目的の場合、活性な化合物を賦形剤と共に配合して、錠剤、トローチまたはカプセルの形態で使用することができる。経口組成物は、また、口内洗浄剤として有用な液体担体を用いて調製することができ、ここに、該液体担体中の該化合物を経口的に与え、グチュグチュやり、次いで、吐き出すか、または飲み込む。医薬上適合性の結合剤、および/またはアジュバンド材料を組成物の一部として含ませることができる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、下記の成分、または類似の性質を有する化合物のいずれかを含有することができる:結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンまたはラクトース;崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、またはコーンスターチ;滑沢剤(lubricant)、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステルテス(Stertes);潤滑剤(glidant)、例えば、コロイド状二酸化珪素;甘味料、例えば、シュークロースまたはサッカリン;または風味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバー。
【0199】
吸入による投与の場合、化合物は、適当なプロペラント、例えば、二酸化炭素などのガスを含有する加圧容器またはディスペンサー由来のエーロゾルスプレー、ネブライザー、気管支吸入器または点鼻剤の形態で送達することができる。さらに、化合物は、液体溶液、ゲル、または乾燥産物の形態であることができる。吸入処方は、例えば、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココール酸塩、およびデオキシコール酸塩を含有する水性溶液であってもよい。吸入処方は、また、必要に応じて、ラクトースなどの賦形剤を含有していてもよい。ネブライザーは、pHおよび/または等張性を調整するための担体または賦形剤を含む水性懸濁液または溶液であってもよい。
【0200】
一の具体例において、生物活性化合物を含有していてもよい治療的部分は、身体からの迅速な排泄に対して該化合物を保護するであろう担体、例えば、インプラントおよびミクロカプセル化デリバリーシステムを包含する放出制御処方と共に調製される。生物分解性生物適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などを用いることができる。かかる処方の調製法は、当業者に明らかであろう。該原料は、例えば、Alza Corporationから商業上入手可能であり、Nova Pharmaceuticals, Inc. リポソーム(Liposomal)懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞を標的とするリポソームを含む)もまた、医薬上許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に既知の方法、例えば、米国特許第4,522,811号に記載の方法にしたがって調製できる。
【0201】
一の具体例において、投与の容易性または投与量の均一性のために、投与単位形態に処方された経口または非経口組成物を用いる。本明細書中で使用される場合、投与単位形態は、治療されるべき対象のために単一投与量として適応させた物理的に分離した単位を包含し;各単位は、所望の治療効果を生じるために計算された予め決定された量の活性化合物を必要な医薬担体と共に含有する。本発明の投与単位形態のための詳細は、活性化合物特有の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の治療のための活性化合物などの配合の分野に固有の制限によって決定され、それらに直接的に依存する。
【0202】
かかる化合物の毒性および治療的効力は、標準的な医薬的手法によって、細胞培養または実験動物において、例えば、LD50(集団の50%までの致死投与量)およびED50(集団の50%において治療上効果的な投与量)を決定するための手法によって、決定できる。毒性と治療効果との間の投与比率は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指数を示す化合物を選択することができる。毒性の副作用を示す化合物を用いてもよいが、非感染細胞への損傷の可能性を最小限にし、それにより、副作用を減少させるために、罹患組織の部位をかかる化合物の標的とするデリバリーシステムを設計するのに注意が必要である。
【0203】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲を処方するのに使用できる。多くの例において、かかる化合物の投与量は、ほとんど毒性がないか、または毒性のないED50を包含する血中濃度範囲内にある。該投与量は、使用される投与形態および利用される投与経路に依存して、該範囲内で変更してもよい。本発明の方法において使用されるいずれの化合物の場合も、治療上有効な投与量は、最初に、細胞培養アッセイから概算することができる。投与量は、細胞培養において決定したIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて処方してもよい。かかる情報は、ヒトにおいて有用な投与量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定してもよい。
【0204】
本発明の医薬組成物の投与のための投与量計画は、疾患の種類、病変部位、疾患の重篤度、患者の年齢、性別および食事、炎症の重篤度、投与時間および他の臨床的な因子などの種々の因子に基づいて、担当の内科医によって決定することができる。一の具体例において、吸入、全身または注射による投与は、最小限に効果のある投与量で開始することができ、正の効果が観察されるまで、予め選択した時間経過にわたって該投与量を増量する。次いで、投与量の付加的な増加を行い、それにより、出現しうる有害な効果を考慮しつつ、対応する効果増加をもたらすレベルに特定する。最終的な組成物への他の既知因子の添加もまた、投与量に影響を及ぼしうる。標準的な方法を用いる疾患進行の周期的な評価によって、進行をモニターすることができる。
【0205】
本発明の医薬組成物は、一回投与または複数回投与において投与することができる。該投与量は、いずれか所望の間隔で投与することができる。一の具体例において、各投与量は、約0.1μg−100mg、1μg−10mg、10μg−1mg、または100μg−500μgの活性治療剤を含む。0.1μg未満または100mgよりも大きい投与量もまた、使用することができる。各投与量の容量は、例えば、0.1ml〜5ml、0.1ml〜1mlまたは0.2ml〜0.5mlの範囲にあることができる。
【0206】
本発明の医薬組成物は、投与説明書を伴う容器、パックまたはディスペンサー中に入れることができる。
【0207】
キット
本発明は、また、生物学的試料中においてCAT2またはARG1遺伝子産物の存在を検出するためのキットを包含する。該キットは、ヌクレオチドまたは蛋白質レベルでCAT2またはARG1の発現を評価するための試薬を含んでいてもよい。一の具体例において、該試薬は、抗体またはそのフラグメントであってもよく、ここに、該抗体またはそのフラグメントは、CAT2またはARG1に特異的に結合する。例えば、目的の抗体は、当該分野で既知の方法によって調製されうる。所望により、該キットは、CAT2またはARG1遺伝子に対応する転写されたポリヌクレオチドに特異的に結合するポリヌクレオチドプローブを含んでいてもよい。該キットは、試料中のCAT2またはARG1蛋白質またはmRNAの量を決定するための手段および試料中のCAT2またはARG1蛋白質またはmRNAの量を対照または標準と比較するための手段を含んでいてもよい。該化合物または薬剤は、適当な容器中にパッケージすることができる。該キットは、さらに、CAT2またはARG1蛋白質またはポリヌクレオチドを検出するために該キットを使用するための説明書を含んでいてもよい。
【0208】
本発明は、さらに、対象において炎症性疾患を阻害するための複数の化合物の各々の適当性を評価するためのキットを提供する。かかるキットは、試験されるべき複数の化合物、およびCAT2またはARG1の発現を評価するための試薬(すなわち、対応する蛋白質に特異的な抗体、または対応するポリヌクレオチドに特異的なプローブまたはプライマー)を含む。
【実施例】
【0209】
実施例1:アレルギー反応と関連したマウス肺における遺伝子発現変化
Balb/cマウス(6−8週齢)をJackson Lavoratoriesから入手した。該研究に用いられた全ての動物は、層流フード下で環境的に調節された無菌施設に収容した。全実験は、動物の実験的使用のためのthe Animal Welfare Act and the Department of Health, Education and Welfare (NIH) ガイドラインに概説される研究室動物研究のための原則に従った。
【0210】
Balb/cマウスは、0日目に、200μlのPBS中における10μgのOVA(Sigma, St. Louis, MO)の腹腔内(i.p.)注射によって免疫した。14および25日目に、ケタミンおよびキシラジン(各々、45および8mg/kg)の混合物でマウスを麻酔し、50μlの1.5%OVA溶液または等量のPBSで気管内により攻撃した。24、25および27日目に、100μlのPBS、hIgG(400μg/ml)またはsIL−13α2−Fc(400μg/ml)のいずれかをマウスにi.p.注射した。hIgGの精製は、Urbanら、Immunity 8(2): 255-645, 1998にしたがって行った。28日目に、RNA単離のために、肺を収集し、即座に凍結させた。
【0211】
IL−13媒介性シグナル変換に依存するmRNA濃度の変化を同定するために、OVA−攻撃マウスのうち2匹を、アレルギー性攻撃過程の前および間に、可溶性IL−13受容体融合蛋白質、sIL−13Rα2−Fcの腹腔内注射で3回処理した。該受容体融合蛋白質のFc−部分に関する対照として、2匹のOVA−攻撃マウスを同様に、hIgGの腹腔内投与で処理した。6匹の対照マウスからなる第2セットを同様に、OVAに感作し、その後の攻撃を行わず、同一の時間経過で、PBSバッファーを単独(n=2)で、またはhIgG(n=2)もしくはsIL−13Rα2−Fc(n=2)の腹腔内注射と共に気管内投与した。第2の肺抗原攻撃の78時間後に、OVA−攻撃およびバッファー単独対照マウスの肺組織を採取した(28日目)。
【0212】
組み換えネズミIL−13(mIL−13;最終容量50μl中5μg)を3日間毎日、気管内注入によって、ケタミンおよびキシラジン(各々、45および8mg/kg)の混合物で麻酔した未投薬のBalb/cマウスまたはStat6欠損マウスに投与した。最初のIL−13投与の72時間後に、肺を収集し、ドライアイス中で即座に凍結させた。
【0213】
即座に凍結させたマウスの肺組織を、液体窒素で冷やした乳鉢および乳棒を用いて粉砕し、6mlの4Mイソチオシアン酸グアニジニウム/0.7%β−メルカプトエタノール(GTC/ME)中に懸濁し、2分間パルス超音波処理した。該組織懸濁を酸平衡化フェノール(Promega Total RNAキット)で2回抽出し、等量のイソプロパノールで核酸沈殿させた。該ペレットを0.8ml GTC/ME中に再懸濁し、等量の酸フェノールで2回再抽出し、クロロホルムで1回再抽出した。RNAをエタノール沈殿し、I DEPC処理したHOに懸濁し、OD280によって定量した。
【0214】
以前に詳述されたように修飾した(Byrneら、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc. (New York), 2000)Superscriptキット(BRL)を用いて、10μgの全RNAからcDNAを合成した。第1鎖合成は、リボソームRNAからのミスプライミングを防ぐために50℃で行われ、その後のイン・ビトロアンチセンスRNA(cRNA)増幅およびビオチン標識のために、ポリ−Tプライマーを含有するT7 RNAポリメラーゼプロモーター(T7T24)を用いた。cDNAは、BioMagカルボキシ末端ビーズ(Polysciences)を用い、製造者の指示に従って精製し、48μlの10mM酢酸ナトリウムpH7.8中に溶出した。
【0215】
アンチセンスcRNAの合成およびビオチン標識のためのイン・ビトロT7ポリメラーゼによって駆動される転写反応、Quiagen Rneasyスピンカラム精製およびcRNA断片化は、記載の通りに行われた(上掲)。GeneChipハイブリダイゼーション混合物は、製造者の指示により、全量で200μl中、10μg断片化cRNA、0.5mg/mlアセチル化BSA、0.1mg/mlニシン精子DNAを1xMESバッファー中に含有した。反応混合物は、45℃で18時間、Affymetrix Mu11KsubAおよびMu11KsubBオリゴヌクレオチドアレイにハイブリダイズさせた。該ハイブリダイゼーション混合物を除去し、該アレイを洗浄し、GeneChip Fluiditics Station 400(Affymetrix)を用いて、ストレプトアビジンR−フィコエリトリン(Molecular Probes)で染色し、Hewlett Packard GeneArray Scannerを製造者の指示に従って用いてスキャンした。蛍光データを収集し、MicroArray Suite 4.0ソフトウェアを用いて、遺伝子特異的差平均に変換した。
【0216】
クローン化細菌およびバクテリオファージ配列由来の遺伝子フラグメントを2kbの平均転写産物サイズと想定する約3.3〜1000ppmのRNA頻度を示す0.5pM〜150pM濃度範囲で各ハイブリダイゼーション混合物中にスパイクして11メンバー標準曲線を作成した。該ビオチン化標準曲線フラグメントは、T7−ポリメラーゼにより駆動されるIVT反応によって、プラスミドに基づく鋳型から合成した(上掲)。スパイクされたビオチン化RNAフラグメントは、チップ感受性を評価するための内部標準、および個々の遺伝子から測定した蛍光差平均をRNA頻度(ppm)に変換するための標準曲線の両方として作用する。遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを含有する完全合致プローブセットと単不一致(single mismatch)プローブセットとの間の平均蛍光差を用いて、スパイク標準曲線(spiked standard curve)に関する頻度値を決定した。さらに、個々の正または負の応答性プローブ対のフラクションに主として基づくアルゴリズムの第2セットが、遺伝子産物の絶対的な存在または不在を評価するために用いられる(Lockhartら、Nat. Biotechnol. 14: 1850-1856, 1996)。個々のマイクロアレイチップの感受性は、鋳型中のいずれか3つの隣接する標準曲線スパイクのうち2つの存在がコールされる最低濃度の2分の1で設定される。標準曲線直線回帰は0にされ、最少の報告される遺伝子頻度は、個々のGeneChipR(登録商標)の感受性に設定される。
【0217】
処理または対照実験条件の各々のための複数の独立したレプリカを測定し、偽陽性を除去するために、発現データをルーチンな統計学的分析に付した。所定の実験セットに関する個々の測定値から決定された頻度値は最初、Excelソフトウェアを用いて比較した。平均倍変化(average fold change: AFC)を得るために、処理および対照動物の平均値を比較した。未処理の頻度値を用いる等しくない共分散または対数変換した頻度値を用いる等しい共分散のいずれかを用いて、両側スチューデントt検定を計算した。該研究において、実験条件の少なくとも1つにおいて、スチューデントt検定P<0.05と共役した2倍より大きいAFC変化のある遺伝子だけが報告される。次いで、AFC>2倍およびt−検定P<0.05という二重の基準によって確立された該遺伝子セットは、多くの試験ファイルにおいて不在がコールされる遺伝子を除去するために、およびMu11KsubAおよびsubBオリゴヌクレオチドアレイ上で複数回タイル(tiled)された遺伝子に帰因する重複を除去するために編集(edit)された。最後に、処理動物の平均発現頻度が実験間バッファー単独処理対照の平均よりも2倍未満で高い遺伝子が排除された。
【0218】
ネズミ11KsubAおよびsubB GeneChipRは、13,000を越えるネズミ遺伝子、ESTおよび対照配列の呼びかけ(interrogation)を許容した。該オリゴヌクレオチドアレイは、Mu11KsubAおよびsubBオリゴヌクレオチドアレイの場合、各々、13ppmおよび12ppmの平均感度で応答した。精製RNAおよび誘導cDNA産物の質は、各遺伝子の5’末端を示す独立したプローブセット由来のアクチンおよびグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼに関して算出された頻度の3’末端由来のそれらに対する比率を比較することによってモニターされた。対照および処理動物の異なるセットから単離されたRNAに関する測定された5’/3’比は、バランスがとれており、表3に示されるように、0.77〜0.90範囲で平均0.81を示す。合わせたMu11KsubAおよびsubB GeneChipR上の全13,179個のタイル配列のうち、平均5294(+/−533)遺伝子が個々の分析ファイルにおいて(表3)存在がコールされ、全体で10.1%の変動係数を有した。さらに、少なくとも1つのファイルにおいて存在がコールされた全遺伝子について計算された頻度の合計は、サブグループの各々について報告され、全変動係数20.9%を有する485000の平均を示した。個々のGeneChipR実験のチップ感受性およびRNA品質の類似性は、個々のファイルを標準化するための一般的なスパイク標準曲線の使用のための支持を提供する測定された遺伝子発現における全体のバランスに反映していた(Hill, A.A.ら、Genome Biol. 2(12) 2001)。
【0219】
アレルゲン攻撃誘導性遺伝子発現を同定するために使用された3つの処理群の各々について測定された全体的な遺伝子発現(表3に示されるような)は、mRNA無欠性、存在がコールされた遺伝子の数および種々の対照および処理ファイルにわたって計算された全mRNA頻度に関して、よくバランスがとれていた。
【表3】

少なくとも1ファイルにおいて存在がコールされた全遺伝子の平均全頻度(x10
【0220】
PBSで処理された対照マウスについて測定された遺伝子発現プロファイルは、ヒトIgGまたはsIL−13Rα2−Fcの腹腔内同時投与によって有意に変化せず、かくして、6匹の対照マウス由来の頻度値は、平均非処理ベースライン発現値の計算において単一セットとして合わせられた。同様に、バッファーまたはhIgGのいずれかの腹腔内同時投与で処理した4匹のOVA−攻撃マウスは、肺アレルゲン−攻撃mRNA頻度についての平均頻度値の計算において単一セットとして合わせられた。6匹のPBS−処理対照マウスと4匹のOVA−攻撃マウスと間の平均肺mRNA頻度の比較により、AFCが2倍以上である246個のタイル配列が同定された。該遺伝子セットのうち132個が、P<0.05の二次選択基準を満たし、下記表4に示される。
【表4】

13,179タイル配列のうち存在がコールされたmRNA転写産物の全数
少なくとも1ファイルにおいて存在がコールされた全遺伝子の平均全頻度(x10
2倍以上の平均倍変化の基準を満たす遺伝子の数
§ P<0.05のスチューデントt検定基準を満たす遺伝子の数
2倍AFCおよびスチューデントt検定P<0.05の二重の基準を満たす遺伝子の数
【0221】
次いで、該アレルゲン誘導性遺伝子セットを、試験測定の大部分において不在がコールされた遺伝子ならびにオリゴヌクレオチドアレイに重複してタイルされるいくつかの遺伝子を除去するために、フィルターにかけた。平均mRNA頻度値は、バッファー単独対照マウス、OVA−攻撃マウス、およびIL−13アンタゴニストを同時投与されたOVA−攻撃マウスについて報告される。該遺伝子は、背景色によって明示されるOVA−誘導性発現と対照肺発現との間の相対的AFCを用いて、機能的アノテーションによって分類された。肺アレルギー応答がたった3つの統計学的に有意な減少を伴う遺伝子の異なるセットの発現をアップレギュレートすることが見出された。誘導されたアレルギー反応遺伝子セットのメンバーの多くは、Fc受容体、プロテアーゼ、プロテアーゼ阻害剤、補体、キチナーゼ−関連蛋白質、免疫グロブリン、およびケモカインおよびトレフォイル因子を包含するいくつかの分泌シグナリング蛋白質を包含する関連する機能的ファミリーに由来する。該遺伝子および遺伝子ファミリーのいくつかは、上皮細胞化生および粘液過分泌の喘息病理生物学、好酸球増加症、気道レモデリングおよび気道過敏性(AHR)に関連づけることができる。
【0222】
生理学的研究は、Stat6−/−ヌル対立遺伝子を有するマウスにおけるOVA攻撃によって顕在化された肺好酸球浸潤、粘液過剰産生およびAHRの阻害を明らかにした(Kuperman, D.ら、J. Exp. Med. 187: 939-948, 1998; Akimoto, T.ら、J. Exp. Med. 187: 1537-1542, 1998; Miyata, S.ら、Clin. Exp. Allergy 29: 114-123, 1999)。Stat6−/−ヌル対立遺伝子は、Balb/C遺伝的背景に戻し交配され、Balb/C野生型マウスに関する同一のプロトコールおよび計画を用いて、mIL−13(n=5)またはPBSバッファー対照(n=4)のいずれかの肺注入で処理された。複数回投与mIL−13肺注入後の肺組織の発現プロファイリングは、Stat6−/−マウスにおいて2〜3.2倍の範囲のAFCを有する28個の遺伝子を同定し、また、これらの遺伝子のどれも、T−検定基準(p<0.05)を満たさず、統計学的に有意であるとみなされなかった(表4)。さらに、これら28個の遺伝子のどれも、Balb/C野生型背景におけるmIL−13誘導性遺伝子に対応しない。トップの25個の、Balb/C背景においてAFCによって選択された統計学的に有意な遺伝子は、OVA−攻撃ネズミ肺組織における発現によって分類され、Stat−/−対立遺伝子を有する同様に処理したマウスについて得られた頻度値と比較した。これらのデータは、Balb/C野生型における測定されたmIL−13媒介性遺伝子誘導の全てについて、Stat機能の必要を明らかにし、それは、Stat−/−ヌルマウスにおけるアレルゲン攻撃に対する生理学的応答の欠如に一致する。
【0223】
対照として、PBS−バッファー処理したBalb/C野生型(n=4)における測定された肺遺伝子発現を、Stat−/−ヌル対立遺伝子を有するバッファー単独処理マウス(n=4)と比較した。該比較は、2倍以上のAFCを有する43個の遺伝子およびスチューデントt検定P<0.05を有する54個の遺伝子を同定した(表4)。しかしながら、これらの遺伝子頻度比較において、たった1つの遺伝子のみが二重の選択基準を満たした。血清アルブミンD−ボックス結合性蛋白質は、Stat−/−ヌルマウスにおいて3.2倍減少した(P=0.03)。アルブミンD−ボックス結合性蛋白質だけを除外すると、これらのデータは、免疫刺激の不在下で、Stat−/−ヌル対立遺伝子を有に由来するマウス肺における全遺伝子発現において、非常に限られた差しか存在しないことを明らかにした。Stat−/−mIL−13処理およびバッファー対照マウスの比較の他に、これらの結果はさらに、データをフィルターにかけるために用いられた二重のAFCおよび統計学的基準が偽陽性コールを排除するのに有効であることを示唆した。
【0224】
実施例2:IL−13肺注入によって誘導されるマウス肺における遺伝子発現変化
肺遺伝子発現におけるIL−13媒介性変化を同定するために、6匹のBalb/cマウス(Jackson Labpratories, Bar Harbor, ME)を組み換えマウスIL−13(mIL−13)の肺注入による複数回の5μg投与(0時間、24時間および48時間)で処理した。対照Balb/Cマウス(n=4)の第2セットに、バッファーのみを同一計画で注入した。さらに、Stat6−/−ヌルマウスのセットを、複数回投与mIL13(n=4)またはPBSバッファー(n=5)肺注入で同様に処理した後、発現プロファイリングのために、78時間目に全ての肺を採取した。mIL−13の気管内注入によって処理したBalb/cマウスの遺伝子発現プロファイルデータとバッファー単独対照との比較により、個々のファイルにおいて存在がコールされた平均5306個の遺伝子内で平均倍差が2倍以上である279個の遺伝子が同定された。これらの279個の遺伝子のうち136個が、スチューデントt検定P<0.05の第2の基準を満たした(上記表4)。
【0225】
アレルゲン攻撃および直接的なIL−13注入によって媒介された遺伝子発現において、顕著な重複が存在した。OVA−誘導性モデルにおいて同定されないIL−13によりアップレギュレートされる遺伝子の観察は、おそらく、サイトカインの直接的な注入によって提供されるシグナルの強度差を反映する。気管内IL−13投与またはIL−13の肺特異的トランスジェニック過剰発現のいずれかは、アレルギー性喘息のマウスモデルにおいて見られる病理生理学的応答の全てをもたらすので、IL−13により調節される遺伝子は、おそらく、疾患関連遺伝子の拡大されたセットを反映する。図1は、CAT2およびARG1遺伝子がOVAまたはIL−13処理を受けたBalb/cマウスにおいてアップレギュレートされることを示す。図2は、OVAまたはIL−13処理Balb/cマウスにおけるmRNA頻度を示す。
【0226】
実施例3:Balb/cマウスにおけるOVAまたはIL−13のアデノウイルス媒介性発現によるARG1遺伝子の誘導
簡単に言うと、Balb/cマウスに、5x1010粒子の組み換えアデノウイルス発現ネズミIL−13(Ad−IL13)またはネズミ分泌性アルカリホスファターゼ(Ad−SEAP)を鼻腔内から接種した。対照マウスは、実施例1に記載のように、PBS、OVA、またはIL−13で処理した。接種後72時間で、該動物を殺し、RNA抽出のために肺を採取した。RN−easy Miniキット(Qiagen)を用いて、製造者の推奨にしたがい、肺組織からRNAを調製した。ARG1発現は、Affymetrix Mu U74Av2オリゴヌクレオチドアレイを用いて測定した。結果を図3に示す。mRNA頻度は、ppmで表す。
【0227】
実施例4:C57bl/6マウスにおけるIL−13のアデノウイルス媒介性発現によるARG1遺伝子の誘導
簡単に言うと、Balb/cマウスに、5x1010粒子のAd−IL13またはAd−SEAPを鼻腔内から接種した。対照マウスは、実施例1に記載のように、PBSで処理した。接種後72時間で、該動物を殺した。実施例2に記載のように、全肺RNAを単離し、ARG1発現について分析した。結果を図4に示す。mRNA頻度はppmで表す。
【0228】
実施例5:LPSおよびIL−13で処理したネズミマクロファージ細胞系統RAW264.7におけるCAT2またはARG1発現
コンフルエントなRAW264.7細胞を、4mM L−グルタミン(CTS)、10%胎仔ウシ血清(JRH Biosciences)、非必須アミノ酸(Gibco)および10mM HEPES(Gibco)を補足した20ml完全ダルベッコ(Dulbecco's)修飾イーグル培地(cDME)中に1:5で希釈した。次いで、サブコンフルエントな細胞を24時間後に、100ng/ml組み換えマウスIL13(R & D Systems)および/または緑農菌(Pseudomonas aeruginosa)セロタイプ10由来の1μg/mlリポポリサッカライド(LPS)(Sigma)で刺激した。刺激から24時間後、細胞をフラスコからはぎ取り、冷PBSで1回洗浄し、細胞ペレットを10μl/mlβ−メルカプトエタノールを含有する600μlのバッファーRLT(RN-easy Mini kit, Qiagen)中に溶解した。ライゼートを−80℃で保管した。
【0229】
RNAは、RN-easy Miniキット(Qiagen)を用いて、製造者の推奨にしたがい、処理したRAW264.7細胞から調製した。RNAは、260nmの吸光度によって定量し、1:6標準曲線は、150ng/反応で開始するLPS/IL−13処理試料から調製した。全ての残りの試料は、50ng/反応にて、TaqMan EZ RT-PCRキット(Applied Biosystems)を用い、Arg1、CAT1、CAT2A、CAT2B、CAT3およびCAT4について、および標準化のためのGAPDH mRNA発現についてアッセイした。プライマーは、Primer Express ソフトウェア(Applied Biosystems)を用いて設計された。Arg1、CAT1、CAT3およびCAT4に関する入力は、GenBank由来の全mRNAコーディング配列であり、一方、CAT2A−およびCAT2B−特異的エキソンだけがCAT2の場合に用いられた。公共のデータベースを、特異性を保証するためのプライマー配列でBLAST検索した。下記の配列(5’−>3’)におけるプライマーおよびFAM−標識化/TAMRA−クエンチプローブオリゴヌクレオチドをWyethで合成した。
【表5】

PCR増幅は、EZ RT−PCRキットにおいて推奨される標準的な40サイクルパラメーターを用いてABI7700シークエンス・デテクター(Applied Biosystems)において行った。Finkらの方法を用い、閾値サイクル数を用いて発現表示をもたらした(Finkら、Nat. Medicine, 4: 1329-1333, 1998)。レーザーにより補助される細胞ピッキング後、実時間定量RT−PCR。
【0230】
図5は、CAT2A、CAT2BおよびARG1発現が、LPS単独によってわずかに誘導されるが、LPSおよびIL−13の組み合わせによって有意に誘導されることを示す。
【0231】
実施例6:LPSおよびIL−13で処理されたRAW264.7細胞におけるアルギニン取込
1x10個のRAW264.7細胞を0.5ml cDME中、24−ウェル組織培養プレート上に置いた。2時間付着後、LPS(Sigma)および/またはrhIL13(R&D Systems)を含有する0.5mlの培地を各々、最終濃度1μg/mlおよび10ng/mlで加えた。5%COおよび95%空気雰囲気下、37℃で20時間インキュベーション後、細胞をArg洗浄バッファー#1(Arg Wash Buffer #1)(140mM塩化コリン、5mM KCl、0.9mM CaCl、1mM MgSO、5.6mMグルコース、および25mM HEPES、pH7.4)で3回洗浄し、次いで、Argトランスポートバッファー(Arg Transport Buffer)(137mM塩化コリン、5.4mM KCl、1.8mM CaCl、1.2mM MgSO、10mM HEPES、pH7.4に調整)でさらに4回洗浄した。トランスポートバッファー(0.5ml)を5mM L−ロイシン(Sigma)および最終濃度400μM L−アルギニンまたは100μM L−アルギニンになるまでL−アルギニン(Sigma)と混合した38nM L−[2,3,4,5−H]アルギニン(Amersham)と共に加え、周囲温度で3分間インキュベートした。各処理の複製ウェルを5mM L−アルギニンを含有するトランスポートバッファーと共にインキュベートすることによって、不可飽和結合を定量した。CAT2阻害は、20mM L−リジン(Sigma)をトランスポートバッファーに加えることによって、付加的な複製において行われた。トランスポートは、氷冷したArg洗浄バッファー#2(137mM NaCl、10mM Tris、10mM HEPES、pH7.4)で4回洗浄することによって停止した。細胞を10mM HEPES,pH7.4中における500μlの1.0%SDSで溶解した。蛋白質定量は、ミクロ−BCAキット(Pierce)および10mlシンチレーション液中に懸濁した400μlライゼートを用いて行われ、ガラスシンチレーションバイアル中に負荷し、発光を1分間カウントした。特異的アルギニン取込は、可飽和結合(CPM/mg蛋白質400μM Arg)−不可飽和結合(CPM/mg蛋白質5mM Arg)として計算された。
【0232】
図6に示されるように、アルギニン取込は、RAW264.7細胞をLPSおよびIL−13の組み合わせで処理することによって、最適に誘導される。しかしながら、アルギニン取込の増加は、CAT2のアルギニントランスポートに対する拮抗阻害剤であるリジンによって阻害される(図7)。
【0233】
実施例7:LPSおよびIL−13で処理したRAW264.7細胞における尿素産生
アルギニントランスポート研究に関しては、RAW264.7マクロファージを24−ウェルプレート中で刺激した(上記)。刺激から20時間後、細胞をArg洗浄バッファー#1で3回洗浄し、次いで、Argトランスポートバッファーでさらに4回洗浄した。細胞を、5mM L−ロイシン、400μM L−アルギニン、+/−20mM L−リジンを含有するArgトランスポートバッファー中、5%COおよび95%空気雰囲気下、37℃で24時間インキュベートした。上清を12,000rpmで10分間の遠心分離によって清浄化し、100μlを、UV吸光度キット法(R-Biopharma)を用い、全容量300μl/ウェルを有する96−ウェルアッセイプレート中において1/10スケールで実施したことを除いて製造者の指示に従って、尿素について3連でアッセイした。細胞を10mM HEPES,pH7.4中における500μlの1.0%SDSで溶解し、ミクロ−BCAキット(Pierce)を用いて蛋白質を定量した。尿素産生は、μg尿素/mg蛋白質ライゼートとして表された。
【0234】
図8は、LPS/IL−13処理がRAW264.7細胞において尿素産生を増加することを示す。図6および7に示されるアルギニン取込データと一致して、尿素産生の増加は、CAT2のアルギニントランスポートに対する拮抗阻害剤であるリジンによって阻害される。
【0235】
実施例8:ARG1発現の誘導にはIL−4受容体が必要である
IL−4受容体ノックアウトマウス(IL4R−/−)およびIL−4ノックアウトマウス(IL4−/−)をOVAに感作するか、または図1に記載のように、PBSもしくはIL−13で処理した。実施例2に記載のように、全肺RNAを単離し、ARG1発現について分析した。結果を図10に示す。mRNA頻度は、ppmで表す。
【0236】
実施例9:カルバコール−誘導性気管収縮に対するリジンの影響
8−10週齢のラットを該実験に用いた。気管を迅速に摘出し、付着結合組織を取り除いた。各気管を3−4mm長に切断し、次いで、ビヒクル、ロイシン(25mM)、リジン(100mM)またはその両方を含有するRPMI−1640およびDMEM(v/v)培地の混合物中、15−20時間培養した。培地の組成(mM)は、0.1非必須アミノ酸、4%FBS、2.0グルタミン、0.05β−メルカプトエタノール、100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシンを含んだ。
【0237】
気管は、下記の組成(mM):118 NaCl;4.7 KCl;1.2 KHPO;11.1デキストロース;1.2 MgSO;2.8 CaCl;および25 NaHCOを有する15mlのKrebs-Henseleit(K−H)溶液(37℃)で満たされたダブルジャケット付きのガラス臓器浴の底にステンレンススチールピンを有する棒で縦に維持された。該溶液は、各実験の期間、5%COおよび95%Oで混合物で連続的にガス処理した。上部サポートは、絹糸のループによってTSD125力変換器に取り付けられた。気管リングの張力変化は、MP150システム(BIOPAC Systems, Inc.)で同調して記録され、PCコンピューター上に示された。
【0238】
薬物で処理した気管を、K−H溶液で10分間隔で3回洗浄した。カルバコール(10−8〜10−5M)−応答曲線を構築した。薬剤濃度は、前の濃度に対する収縮性応答が安定化したときにだけ上げた。
【0239】
各実験の最後に、全気管をガーゼパッド上にブロットし、重量を測定した。張力は、mg重量あたりのmg張力(mg/mg)として計算され、薬剤の不在下における気管の10−5Mカルバコールにより誘発される力の個々のパーセンテージ(%)として表された。全値は、平均±SEとして表された。対応のあるスチューデントt検定を該効果に用いた。0.05未満のp値は、有意であると見なされた。
【0240】
図9に示されるように、カルバコール−誘導性ラット気管収縮は、リジンによって阻害される。
【0241】
実施例10:カルバコール−誘導性気管収縮は、CAT2遺伝子の欠失によって減少する
CAT2ノックアウトマウス(CAT2−/−)を実施例9に記載のように処理した。図11に示されるように、カルバコール−誘導性気管収縮は、また、CAT2遺伝子の欠失によって阻害され、さらに、そのことは、炎症性疾患の病態生理学におけるCAT2の関与を示唆する。
【0242】
実施例11:IL−13シグナリング阻害とARG1 mRNA発現の阻害の関連
Balb/C−処理および非処理マウスを、図1に記載のように、OVAに感作、PBS、rIL−13またはsIL13Ra2.Fcで処理した。実施例2に記載のように、全肺RNAを単離し、ARG1発現について分析した。結果を図12に示す。mRNA頻度は、ppmとして表す。
【0243】
本発明は、図面および上記の記載において詳細に説明および記述されるが、それらは、説明であって、それらに制限するものとして考えられるべきではなく、当然のことながら、好ましい具体例だけが示され、記述されているのであって、本発明の範囲内で行われる全ての変更および修飾が保護されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1】図1は、CAT2およびアルギナーゼI型(ARG1)がBalb/cマウスにおいてアレルゲン(OVA)および組換えネズミIL−13(IL−13)のどちらによっても同時誘導されることを示すグラフである。簡単に言えば、0日目に腹腔内注射によりBalb/cマウスをOVAに対して感作させ、14日目および25日目にビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水(PBS))またはOVAのいずれかの気管内(IT)注射によりチャレンジし、28日目に肺を回収した。加えて、連続3日間、ナイーブBalb/cマウスをPBSまたはIL−13のいずれかでIT処理し、72時間目に肺を回収した。全肺RNAを単離し、実施例1に記載したようにGeneChip技術(Affymetrix)を用いてmRNA発現について分析した。mRNA頻度は100万分率として表される。
【図2】図2は、ARG1発現がBalb/cマウスにおいてアレルゲン(OVA)および組換えネズミIL−13(IL−13)のどちらによっても誘導されることを示すグラフである。簡単に言えば、0日目に腹腔内注射によりOVAに対してBalb/cマウスを感作し、14および25日目にビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水(PBS))またはOVAのいずれかの気管内(IT)注射によりチャレンジし、28日目に肺を回収した。加えて、ナイーブBalb/cマウスをPBSまたはIL−13のいずれかでIT処理し、72時間目に肺を回収した。全肺RNAを単離し、実施例1に記載したようにGeneChip技術(Affymetrix)を用いてmRNA発現について分析した。mRNA頻度は100万分率として表される。
【図3】図3は、ARG1遺伝子がBalb/cマウスにおけるOVAまたはIL−13のアデノウイルス媒介発現によって誘導されることを示すグラフである。簡単に言えば、0日目に組換えアデノウイルス発現ネズミIL−13またはネズミ分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)をBalb/cマウスに気管内接種し、3日目に肺を回収した。図1に記載されるように対照マウスをPBS、OVAまたはIL−13で処理した。mRNA頻度は100万分率として表される。
【図4】図4は、ARG1遺伝子がC57b1/6マウスにおいてIL−13のアデノウイルス発現によって誘導されることを示すグラフである。簡単に言えば、0日目に組換えアデノウイルス発現ネズミIL−13またはネズミ分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)をC57b1/6マウスに気管内接種し、3日目に肺を回収した。mRNA頻度は百万分率として表される。
【図5】図5は、アルギニン取り込みがネズミマクロファージ細胞系RAW264.7においてLPS/IL−13により最適に誘導されることを示すグラフである。簡単に言えば、LPSおよび/またはIL−13で24時間処理することによりRAW264.7マクロファージを誘導して種々のレベルのCAT2を発現させた。実施例3に記載したように、競合するL−リシンの存在下または不在下でのアルギニン輸送を400μMの最終アルギニン濃度にて3分間にわたって評価した。比アルギニン摂取量(タンパク質溶解産物1mgあたりのCPM)は非刺激細胞において測定したものの百分率として表される。
【図6】図6は、CAT2およびARG1がネズミマクロファージ細胞系RAW264.7におけるリポ多糖(LPS)/IL−13により同時誘導されることを示すグラフである。簡単に言えば、RAW264.7細胞を10ng/mlのIL−13および/または1μg/mlのLPSで処理した。処理の24時間後に、実施例2に記載したようにTaqManリアルタイム定量RT−PCRを用いて細胞から単離した全RNAをARG1およびCATアイソフォーム特異的mRNA発現について分析した。Fink et al.(Fink et al., Nat. Medicine, 4:1329-1333, 1998)の方法を用いて閾値循環数からグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)規準化mRNA頻度を推定し、GAPDHの1コピーあたりのコピー数として表した。
【図7】図7は、アルギニン取り込みがLPS/IL13処理RAW264.7ネズミマクロファージ細胞において20mMリシンにより阻害されることを示すグラフである。簡単に言えば、RAW264.7細胞を培地単独(対照)またはCAT2誘導条件(LPS/IL−13)に24時間暴露し、次いで、100μMの最終アルギニン濃度において3分間にわたってアルギニン輸送について評価した。競合的CAT阻害剤である20mMリシンの輸送バッファーへの添加は対照およびLPS/IL−13処理細胞における全ての飽和性アルギニン輸送を無効にした。
【図8】図8は、ネズミマクロファージ細胞系RAW264.7における尿素産生が20mMリシンによって阻害されることを示すグラフである。簡単に言えば、培地単独(対照)またはCAT2誘導条件(LPS/IL−13)に24時間暴露したRAW264.7マクロファージを次にアルギニン輸送バッファー中にて2時間平衡化させた。400μMを含有するアルギニン輸送バッファー中にて競合するL−リシンの存在下または不在下にて24時間インキュベートした後、実施例4に記載したように尿素の産生を評価した。尿素産生は細胞溶解産物タンパク質1mgあたりの上清中の尿素のμgで表される。
【図9】図9は、カルバコール誘導ラット気管収縮が100mMリシンによって阻害されることを示すグラフである。簡単に言えば、ラット気管外植片を培地または100mM L−リシンを含有する培地と一緒に15〜20時間プレインキュベートした。次いで、該気管を洗浄し、100mM L−リシンの存在下または不在下にてKrebs−Henseleit溶液中にて収縮を測定した。気管1mgあたりの張力のmgとして張力を算出し、最大収縮(すなわち、リシンの不在下にて10-5Mカルバコールによって誘発された収縮)の%の平均および標準誤差として表した。
【図10】図10は、ARG1発現の誘導がIL−4受容体を必要とすることを示すグラフである。簡単に言えば、図1に記載したようにIL−4受容体ノックアウトマウス(IL4R−/−)およびIL−4ノックアウトマウス(IL4−/−)をOVAに対して感作させるか、またはPBSまたはIL−13で処理した。全肺RNAを単離し、実施例1に記載したようにGeneChip技術(Affymetrix)を用いてmRNA発現について分析した。mRNA頻度は百万分率として表される。
【図11】図11は、CAT−2ノックアウトマウスにおける気管収縮を野生型マウスにおけるものと比較する。CATS2−KOはCAT2ノックアウトマウスを示す。
【図12】図12は、ARG1 mRNA発現がrIL−13の直接的な肺点滴注入または気管内オボアルブミンアレルゲンチャレンジの後に増加することを示すグラフデアル。sIL13Rα2.Fcの投与によるIL−13シグナリングの遮断は誘導されたArg1 mRNA発現の67%を阻害する。可溶性受容体sIL13Rα2.Fcを用いるIL−13の遮断はアレルゲン誘導粘液産生および気道過敏症(AHR)を阻害する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルギー性または炎症性疾患に罹っている哺乳動物に薬剤の治療上有効量を投与することを含む方法であって、該薬剤が該疾患によって冒されている組織におけるアルギニン代謝経路の要素の活性または発現を阻害するものであり、該要素が一酸化窒素シンターゼ(NOS)以外のものである、方法。
【請求項2】
疾患が呼吸器疾患である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
呼吸器疾患が喘息、慢性気道リモデリング、または慢性閉塞性肺疾患(COPD)である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
薬剤が要素または要素をコードしているポリヌクレオチドと結合する能力を有するものである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
要素がアルギナーゼである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
要素がカチオンアミノ酸輸送体である、請求項4記載の方法。
【請求項7】
要素が経路においてアルギナーゼの下流にある、請求項4記載の方法。
【請求項8】
薬剤がRNA干渉またはアンチセンスメカニズムによって要素の発現を阻害する、請求項2記載の方法。
【請求項9】
薬剤がRNA干渉によって組織中でのARG1の発現を阻害する能力を有するsiRNAをコードするかまたは該siRNAを含むものである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
薬剤がRNA干渉により組織中のCAT2の発現を阻害する能力を有するsiRNAをコードするかまたは該siRNAを含むものである、請求項8記載の方法。
【請求項11】
薬剤がα−ジフルオロメチルオルニチンである、請求項2記載の方法。
【請求項12】
薬剤がリシンまたはカチオンポリペプチドである、請求項2記載の方法。
【請求項13】
哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
ヒトが喘息またはCOPDに罹っており、要素がアルギナーゼまたはカチオンアミノ酸輸送体であり、薬剤が該要素または該要素をコードしているポリヌクレオチドと結合する能力を有するものである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
アレルギー性または炎症性疾患を治療するための薬剤を同定するための方法であって、
分子を喘息または別のアレルギー性もしくは炎症性疾患によって冒されている組織と接触させること、ここで、分子はアルギニン代謝経路の非NOS要素または該要素をコードしているポリヌクレオチドと結合する能力を有する;および
分子が喘息または疾患に付随する症候群または表現型を寛解または排除する能力を有するかを判定すること
を含む方法。
【請求項16】
分子が構造に基づくラショナルドラッグデザインに基づいてまたは化合物ライブラリーのスクリーニングに基づいて選択または生成される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
要素がアルギナーゼまたはカチオンアミノ酸輸送体である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
哺乳動物の生物学的試料における少なくとも1つの遺伝子の発現プロフィールを検出すること;および
この発現プロフィールとこの少なくとも1つの遺伝子の参照発現プロフィールとを比較して、該哺乳動物がアレルギー性または炎症性疾患に罹っているかまたはそのリスクがあるかを判定すること
を含む方法であり、ここで、この1つの遺伝子はアルギニン代謝経路の非NOS要素をコードするものである、方法。
【請求項19】
疾患が喘息である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
医薬上許容される担体、およびアルギニン代謝経路の非NOS要素の活性または発現を阻害する能力を有する薬剤を含む医薬組成物。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2007−537984(P2007−537984A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532310(P2006−532310)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/006470
【国際公開番号】WO2005/003164
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】