説明

噴射器制御用または燃料高圧アキュムレータの圧力調整用の電磁弁

【課題】ケーシングと、ヨーク及びその中に収納された電磁コイルで形成される電磁石と、1つもしくは複数の部品における電機子とを備える、特に燃料噴射器を制御するための、または燃料高圧アキュムレータの圧力を調整するための電磁弁を提供すること。
【解決手段】当接ディスク28が、ヨーク24の方に向いた電機子22の横断面とヨーク24に面する横断面との間に設けられ、この当接ディスク28は、磁化材料または磁化可能な材料、特に強磁性材料で作られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関し、特に燃料噴射器を制御するための、または燃料高圧アキュムレータの圧力を調整するためのものであり、当該電磁弁は、ケーシングと、ヨーク及びその中に収納された電磁コイルで形成される電磁石と、1つもしくは複数の部品における電機子とを備える。
【0002】
本発明はまた、上記に定義したような電磁弁が取り付けられた燃料噴射器または燃料高圧アキュムレータに関する。
【背景技術】
【0003】
かかる電磁弁は、中でも特に、燃料噴射器の、例えばコモンレール噴射システムの噴射器の制御チャンバ内にある燃料の圧力を制御するのに使用される。かかる電磁弁によって、電磁弁の制御チャンバ内にある燃料の圧力を用いて、燃料噴射器の噴射ノズルを開閉する弁閉鎖部材(噴射ニードル(injector needle))の動きを制御する。
【0004】
独国特許出願公開第19832826号によれば、燃料噴射器を制御する電磁弁が知られている。電磁弁は、電磁石を収容するケーシングと、弁ばねによって生じる力を受けて作用する可動の電機子と、電機子上に作られるか、またはそれと相互作用し、弁ばねによって生じる力によって電磁弁の弁座に押し付けられる閉鎖部材とを備える。電磁石によって、制御チャンバからの燃料の排出を調整するため、電磁弁を開閉することが可能になる。
【0005】
上記独国特許出願公開第19832826号による既知の電磁弁の場合、電機子は、電磁石の方に向いた面上にカラーの形状が浮き彫りになった、電磁石が引力を受けたときの最終位置における電磁石を取り囲むケーシング部分に接して位置する部分を有し、このカラーの高さは、電磁石と電機子の横断面との間に残留エアギャップ(residual air gap)を規定する。
【0006】
米国特許第5295627号は、電機子と電磁石との間に薄いディスクを有する電磁弁について記載している。この薄いディスクは、それに沿って電機子が電磁石に近づくことができる移動量を制限し、それによって残留エアギャップを規定する。このディスクは、磁化不能な材料で作られ、残留エアギャップディスクと呼ばれる。
【0007】
独国特許出願公開第10131199号は、電機子の横断面またはそれに対応する形で該横断面の方に向いた電磁石の極性面が、非磁気伝導材料で作られた浮き彫り部分を、例えば、電磁石の磁気伝導面と電機子との間の最小距離を規定するコーティングを備える、電磁弁について記載している。
【0008】
これらの例示的実施形態はすべて、「残留エアギャップ」を有するという共通点を有し、つまり、電機子が電磁石に付着することを防ぐ非磁気伝導距離を電機子と電磁石との間に規定する。電機子と電磁石との間のギャップ内にある燃料は、液圧ダンパの場合のように要素が相互に接近すると機能する。電磁石の横断面とそれに対向する電機子の横断面との間に残留エアギャップを形成するディスクによっても、この液圧ダンピングを調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第19832826号(米国特許第6119966号)
【特許文献2】米国特許第5295627号
【特許文献3】独国特許出願公開第10131199号(国際公開第03/002868号)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ヨークの方に向いた電機子の横断面とヨークに面する横断面との間に当接ディスク(abutment disk)が設けられ、該当接ディスクが、磁化材料または磁化可能な材料、特に強磁性材料で作られることを特徴とする、上記に定義したタイプの電磁弁に関する。
【0011】
本発明はまた、かかる電磁弁が取り付けられた燃料噴射器、または圧力調整器としてかかる電磁弁が取り付けられた燃料高圧アキュムレータに関する。
【0012】
従来技術に対して、電磁弁は、寸法が同一の場合に、より大きな磁力を提供し、電磁弁が応答すべき要件に対してより良好に液圧ダンピングを適応させることができるという利点を有する。ヨーク、当接ディスク、及び電機子の材料の選択によって磁気付着を防ぐことが可能になり、または、少なくとも弁ばねの選択によって、磁気付着の影響を低減することが可能になる。さらに、当接ディスクによって覆われない極性面及びその距離は、磁気付着の影響を調節するためのパラメータとして利用可能である。ヨークの内極もしくは外極が当接ディスクによって、例えば当接ディスクの適切な幾何学寸法によって完全にまたは部分的に覆われている場合、磁気短絡が防止される。これは、例えば、当接ディスクの厚さまたはそれに付与される形状によって行うことができる。本発明による電磁弁の別の利点は、ソレノイド弁による要件に対して磁力及び性能をより良好に適応させるように、当接ディスクの形状における程度が異なる影響を提供することである。
【0013】
1つの有利な特徴によれば、電磁弁の少なくとも1つの事前定義された動作状態において、電機子は、電磁弁の当接ディスクに接して、エアギャップを残すことなく少なくとも表面の一部分に適用される。
【0014】
これによって、電機子上の、及び電磁弁を閉じるための電機子に接続された部材上の磁力に対抗して作用する、弁ばねによって生じる力を上回るため、最適なやり方で、特に最終位置で磁力を用いることが可能になり、具体的には、電機子とヨークとの間に存在するような残留エアギャップに対する付加的なエネルギーが不要である。特に保留段階では、つまり電磁弁が開いており、電機子が当接ディスクに接してその移動終了位置に適用されているとき、電磁弁を保持するための電流を低減することができ、それによって、制御装置の電子部品に適用される応力が低減される。さらに、従来技術による同じ寸法の電磁弁に比べて磁力が大きいことにより、電磁弁全体の寸法を低減させることができ、それを用いることで、電磁弁の性能を向上させ、及び/またはスペースの要件を低減することができる。このことによって、エンジンの出力密度を高め、及び/または透過係数を向上させ、及び/または事故に対する保護を、特に衝突してボンネットに人が乗り上げた場合の安全性を向上させることができる。同時に、電磁弁の材料消費が低減され、結果として電磁弁のコストが低減される。
【0015】
別の有利な展開例によれば、電磁弁は、当接ディスクがヨークを越えて側方(横)に突出し、少なくとも1つの動作状態において、ケーシングに接して適用され、したがって衝撃力を少なくとも部分的にケーシングに伝達することを特徴とする。
【0016】
したがって、電機子の衝突時の運動エネルギーは少なくとも部分的にケーシングに伝達される。この展開例によって、ヨークに掛かる機械的力を低減することが可能になり、したがって、ヨークは当接ディスクよりも軟質の材料で作ることができ、ヨークに対する磁気特性の観点から最適化することができる。このことは、ヨークの早すぎる摩耗を防ぐか少なくとも大幅に低減し、これによって、電機子の衝突時の力を当接ディスクを介してケーシングに少なくとも部分的に伝達する。
【0017】
別の有利な展開例によれば、電磁弁は、当接ディスクがヨークの内極と電機子との間に配置されることを特徴とする。
【0018】
一個片の当接ディスクの場合にヨークの内極と磁気電機子との間に配置することは、また、当接ディスクの直径がより小さく、その結果、一方ではヨークの小さな表面のみが覆われ、それによって磁気付着を大幅に低減し、他方ではこのディスクが少ない材料で作られ、そのことが低コストの解決策に相当するという利点を有する。
【0019】
別の有利な展開例によれば、電磁弁は、当接ディスクがヨークの外極と電機子との間に配置されることを特徴とする。この解決策は、電機子と弁閉鎖部材との間を接続する時点で、またはこの場所に追加の部品を作成する時点で追加の部品が設置されないという利点を有する。これによって、電機子と弁閉鎖部材との組合せを得ることがより容易になり、また、電磁弁の取付けが単純化される。
【0020】
別の有利な展開例によれば、電磁弁は、当接ディスクがヨークの隣接した内極または外極を、当接ディスクの方に向いたその横断面に関して部分的にのみ覆うことを特徴とする。
【0021】
ヨークの一方または両方の極がこのように部分的にのみ重なり合うことによって、当接ディスクとヨークとの間の接触面が減らされる。このことは、起こり得る残留磁気付着を低減し、さらに、ヨークの一方または両方の極が部分的にのみ重なり合うことによって、より強い局所的な磁気飽和及びより高いエネルギー密度を得るために磁力線が当接ディスク上に集束される。これによって、磁力をさらに最適化することが可能になる。
【0022】
別の有利な展開例によれば、電磁弁は、当接ディスクの支承面が少なくとも1つの開口部または切抜部(カットアウト)によって減らされることを特徴とする。そのような開口部または切抜部は、単純かつ経済的なやり方で、当接ディスクとヨークとの間に結果として得られる接触面を減らす。
【0023】
特に有利な展開例によれば、電磁弁は、少なくとも1つの開口部または切抜部が特に円形のオリフィスの形態で作られることを特徴とする。そのようなオリフィスは、例えば成形機上で当接ディスクに切抜部を作ることによって、経済的かつ単純に作られ、それらは結果として得られる接触面を減らし、かつそれによって磁気付着を低減する。
【0024】
別の特に有利な展開例によれば、開口部または切抜部は、好ましくは中心にあるスロットの形態で作られる。このスロットは、当接ディスクの円形オリフィスの一変形例を構成するか、または少なくとも1つのかかる円形オリフィスに加えて設けられ、このスロットは、好ましくは、当接ディスクの直径の大部分にわたって延在する長さを有する。このスロットはさらに、当接ディスクの区画内の渦電流を低減し、電磁弁の動的な整流挙動(dynamic commutation behavior)を改善する。
【0025】
別の有利な発展例によれば、当接ディスクは、ヨークの隣接した内極または外極を、当接ディスクの方に向いたその横断面において完全に覆うか、あるいはその極を超えて延在する。当接ディスクの区画に付与されるこの形状は、当接ディスク上における磁力線が、電機子と、当接ディスクと、ヨークとの間の遷移部分の外形をより良好に追随できるようにし、その結果、電磁弁全体の磁力がより高くなる。さらに、電機子の衝突の間に生じる運動エネルギーの一部分をケーシング内で分散させることができ、したがって、磁心を放電することができる。
【0026】
本発明による電磁弁が取り付けられた燃料噴射器は、燃料噴射器の整流及びシーリングの速度を従来技術に対して向上させるという利点を有し、このことによって、制御に必要な電流を低減させることも可能になる。また、噴射量をより良好に計量するとともに、燃料噴射器の制御精度を向上させることが可能である。整流速度の向上と消費される電流の低減によって、かかる燃料噴射器の適用の可能性も増加する。
【0027】
圧力を調整するために本発明による電磁弁が取り付けられた燃料高圧(コモンレール)アキュムレータは、より高い磁力によって、電磁弁を閉止するための部材に対するより高い閉止保持力(hold−closed force)を調整することを可能にするので、特に高圧において、バルブのシールを改善するという利点を提供する。2000バールを越える圧力に対して設計されるであろう将来の燃料高圧アキュムレータに関して、これは特定の利点を有する。同時に、電磁弁は粒子に対して機能的に非常に堅牢になる。本発明による電磁弁によって、燃料高圧アキュムレータ内の圧力の調整精度を向上させることが可能になる。
【0028】
本発明が、添付図面に示される電磁弁の例示的実施形態を用いて、以下により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】燃料噴射器の例に適用された従来技術による電磁弁を示す縦断面図である。
【図2】図1の電磁弁の細部を示す拡大図である。
【図3a】本発明による磁化可能な当接ディスクを備えた電磁弁の細部を示す拡大図である。
【図3b】本発明による磁化可能な当接ディスクを備えた電磁弁の細部を示す拡大図である。
【図3c】本発明による磁化可能な当接ディスクを備えた電磁弁の細部を示す拡大図である。
【図4a】図3a及び3bによる磁化可能な当接ディスクを有する電磁弁の細部の他の例示的実施形態を示す図である。
【図4b】図3a及び3bによる磁化可能な当接ディスクを有する電磁弁の細部の他の例示的実施形態を示す図である。
【図5a】本発明による磁化可能なディスクの他の例示的実施形態を示す図である。
【図5b】本発明による磁化可能なディスクの他の例示的実施形態を示す図である。
【図5c】本発明による磁化可能なディスクの他の例示的実施形態を示す図である。
【図6】本発明による磁化可能な当接ディスクを備えた圧力調整弁を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、燃料噴射器内で多数回使用されるような電磁弁の例示的一実施形態を示す。電磁弁はケーシング1、2から成り、その下側部分1は燃料噴射器の本体と一体の単一要素の形である。一変形例として、電磁弁はまた、燃料噴射器に設置される、または燃料噴射器に組み込まれる独立モジュールを形成してもよい。ケーシングの下側部分1の横断面は、電磁弁の長手方向軸線に平行なスペーサ11によって区切られたポット状の空洞を備える。このポット状の空洞は、ケーシングの上側部分2の横断面上に作られた他の2つの平行なスペーサ12を収容し、これらスペーサは係合されて、結果としてチャンバ10を形成する。チャンバ10の底面側は弁部5を収容する空洞を備える。ケーシングの下側部分1の側面は、環状容積14を有するチャネル13に接続される高圧接続部6を備える。
【0031】
環状容積14は、ケーシングの下側部分1によって、かつ弁部5によって区切られ、この容積は、絞り吸込路(throttled inlet passage)15を介して制御チャンバ16に連結される。制御チャンバ16は、弁部5によって、かつ弁ピストン17によって区切られる。制御チャンバ16を区切る弁ピストン17の横断面の反対側で、弁部は絞り排出路18を備える。この絞り排出路18は、電磁弁が作動していないとき、弁を形成するボール19によって閉じられる。弁を形成するボール19は、ボールガイド20によって、かつ弁ばね23によって生じる力によって、また弁部5に押し付けるための弁閉鎖部材21によってその位置で係止されるので、燃料は、絞り排出路18を通過することによって制御チャンバ16から出ることができない。一代替例として、ボールガイド20と弁を形成するボール19とは、弁閉鎖部材21上に作成することもできる。同様に、弁ボール19の代わりにハーフボール(半球体)を用いて弁閉鎖部材21の一方の側を案内し、それによってボールの付加的なガイド20を除去することも想到できる。一変形例として、電磁弁は圧力均衡型の電磁弁であることもできる。
【0032】
チャンバ10は、磁心またはヨーク24と電磁コイル25とから成る電磁石24、25を収納する。電磁コイル25は、シーリング要素26を用いてチャンバ10の外側に対してシールする形でケーシングの上側部分2から出る接点ピン27を備える。接点ピン27は、接点ピン27によってソレノイド弁の電気接点8、27を形成する接点要素8に接続される。電気接点8、27を隔離するため、ケーシングの上側部分2は、好ましくは圧入されたキャップの形態で作られたキャップ3によって閉じられる。ケーシングの上側部分2は、その中心に、弁ばね23に対する当接部として役立つスリーブ9を受け入れ、弁ばねの圧縮応力の調節を可能にするドリル穴28を備える。一変形例として、ばねを、例えば適切な調節シム(はさみ金)を使用して調節することができる。スリーブ9によって、ソレノイド弁からの漏れを、返し7にある別のフード(フード状覆い部材)4に流すことによって迂回させることが可能になる。
【0033】
電磁石24、25が電気接点8、27によって制御されると、ヨーク24と電機子22との間に磁力が生じる。この磁力は電機子22を引き付け、その電機子が弁閉鎖部材21と直接相互作用し、それによって弁部の絞り排出路18が解放されて、噴射器が既知のやり方で燃料を噴射できるようになる。一変形例として、噴射器閉鎖部材21を電機子22上に形成することができる。
【0034】
図2に示されるように、電機子22がヨーク24に付着することを防ぐため、電機子22はその外側にカラー32を有し、電磁弁が制御されると、カラーに接して電機子がケーシングの上側部分2のスペーサ12に突き当たる。その結果、ヨーク24と電機子22との間に残留エアギャップ33が形成される。この残留エアギャップは電機子22がヨーク24に磁気付着するのを防ぐ。
【0035】
一変形例として、磁気付着を防ぐため、非磁性材料または磁化不能な材料で作られ、電機子22とヨーク24との間に設置されるスペーシング要素も知られている。
【0036】
図3aは、磁性のまたは磁化可能な当接ディスク28、特に強磁性シムを備えた本発明による電磁弁の第1の例示的実施形態を示す。当接ディスクは電機子22とヨーク24の内極29との間に配置される。
【0037】
電磁弁が動作する際、それが閉じられたとき、電磁電機子22と支承シム(bearing shim)28との間に、または当接ディスク28とヨーク24との間にギャップがある。通常、この距離は電磁弁の最大移動量を規定する。電磁弁が完全に開いたその動作位置では、電機子22と当接ディスク28、及び当接ディスク28とヨーク24は、少なくとも表面部分を介して接触している。したがって、電磁弁が開いているとき、ヨーク24の内極29と電機子22との間には、当接ディスク28を介して連続した磁束がある。この連続した磁束は、同一のスペース要件に対して、より強い磁力を本発明による電磁弁に付与する。結果として、ヨーク24と当接ディスク28との間、または当接ディスク28と電機子22との間に残る接触面は十分に小さいので、電磁石(24、25)に対する電力供給が終了したとき、残留磁力は弁ばね23の力よりも大幅に小さく、これによって、電機子22と支承シム28との間、または支承シム28とヨーク24との間の迅速かつ急速な中断が可能になる。
【0038】
図3bは、磁性のまたは磁化可能な、特に強磁性の当接ディスク28を備える、本発明による電磁弁の別の例示的実施形態を示す。当接ディスク28は電機子22とヨーク24の外極30との間に配置される。一変形例として、図3cに示されるように、当接ディスク28はケーシング1、2の部分の方向に外向きに動かすこともでき、したがって、内極の方に向いた外極30の横断面の部分はそれを覆わなくなるので、支承シム28は、その横断面を介してヨークから離れて電機子22に接して、かつヨーク24の方に向いたその横断面を介して適用され、それはケーシング1、2に重なるとともに、動作位置ではソレノイド弁を開き、ケーシングの上側部分2のスペーサ12に接して、かつヨーク24に接して置かれる。一変形例として、当接ディスク28はまた、外極30を完全に覆い、それを越えてケーシング1、2の方向に突出するように形作られてもよい。この配置はまた、ヨーク24のそばでスペーサ12を通過し、それによってヨーク24の機械的応力を低減するため、当接力(abutment forces)を非常に高い程度まで迂回させる可能性を提供する。
【0039】
図4aは、電磁弁の開放動作状態では当接ディスク28がヨーク24の内極29と電機子22との間に位置し、ただし、電機子22の動く方向に沿って当接ディスク28がヨーク24の内極29の表面の一部分のみを覆う、図3aに示される例示的実施形態の有利な展開例を示す。この文脈では、重なり合いについての概念は、ヨーク24の表面上で当接ディスク28が最大限突出することに相当する。この配置によって、ヨーク24の部分における磁力線のより稠密な結合が得られ、そのことが、ヨーク24の部分的区域における早期の磁気飽和を防ぎ、全体としてより高い最大磁力が得られる。それに加えて、電機子22と、当接ディスク28と、ヨーク24との間の接触面の区域が結果として減らされ、それによって同様に不便な磁気付着のリスクが低減される。
【0040】
重なり合う区域が小さいそのような当接ディスク28はまた、ヨーク24の外極30と電機子22との間に配置し、結果として外極を越えることもできるので、当接ディスクは、ケーシングの上側部分2のスペーサ12に少なくとも部分的に接して位置する。
【0041】
図5aは、当接ディスク28の別の例示的実施形態を示す。この例では、当接ディスク28とヨーク24との間、または当接ディスク28と電機子22との間の接触面は、好ましくは円形オリフィス34の形態の開口部(切抜部)によって減らされる。一変形例として、単に成形機上で当接ディスク28から切り抜くことによって得られるこれらのオリフィス34は、また、他の任意の幾何学形状、特に楕円形、四角形、六角形、ダイヤモンド形、または星形を有してもよい。これらのオリフィス34はまた、電磁石24、25のコイル25を接続する接点ピン27にアクセスするためのドリル穴の一変形例としても役立つことがある。さらに、当接ディスク28は、電磁弁を閉じるための部材21がそこを通って動く中心ドリル穴36を備える。
【0042】
図5bは、一変形例として多数のオリフィス34を有する当接ディスクを示し、電機子22及びヨーク24に接する当接ディスク28の支承面はより一層減少され、それによって残留する磁気付着がさらに低減される。
【0043】
図5cは、当接ディスク28の別の好ましい例示的実施形態を示し、円形オリフィス34に加えて、このディスクは細長いスロット35の形態の別の開口部も備える。このスロットは、好ましくは当接ディスク28の中心にある。つまり、スロットは、好ましくは、当接ディスク28を同じ寸法の二等分に分割し、したがって当接ディスク28における渦電流を低減するため、当接ディスク28の軸線を通り、それによって、電磁弁において磁力を確立し低減する性能を改善する。
【0044】
図4bは、図3bの例示的実施形態の有利な展開例を示し、この例は、ヨーク24の外極30と電機子22との間に設置されて、外極30の表面を完全に覆い、及び/または外極30の横断面を越えて突出する当接ディスク28を備える。この場合の「重なり合い」は、当接ディスクがヨークの横断面の上で最大限突出することを意味する。当接ディスク28のこの配置によって、ヨーク24の部分において磁力線をより広範囲に広げることが可能になり、それによって、特にヨーク24と、当接ディスク28と、電機子22との間の磁束が最大限になる。それに加えて、ケーシング1、2内へと、特にケーシングの上側部分2内へと突出する当接ディスク28によって機械的力が方向付けられるので、電機子22の衝突時にヨーク24に掛かる機械的応力を低減することが可能になる。ヨーク24の隣接した極29、30の表面よりも大きな表面を覆うそのような当接ディスク28は、電機子22と内極29との間の区域における磁束を最適化するため、または電機子22がケーシング1、2に、特にケーシングの上側部分2に衝突したときの機械的力を取り除くため、電機子22と内極29との間に設置することもできる。
【0045】
図6は、本発明による当接ディスク28を備える燃料高圧アキュムレータ内の圧力を調整するための電磁弁の縦断面図である。磁化されたまたは磁化可能な当接ディスク28を磁気弁に使用することは、電機子22とヨークとの間の液圧エアギャップも並行して低減することなく、電機子22とヨーク24との間のエアギャップを低減する。このことは、粒子に対する電磁弁の脆弱性を低減することなく、電磁弁によって生じる電磁力を増加させる。磁力の増加は、電磁弁の閉鎖部材21を保持するための力を増加させ、結果として電磁弁のさらなるシールをもたらす。それに加えて、ケーシングの上側部分2は電機子22の移動を制限するインサート37を収容することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ケーシングの下側部分
2 ケーシングの上側部分
5 弁部
6 高圧接続部
10 チャンバ
11 スペーサ
12 スペーサ
13 チャネル
14 環状容積
15 絞り吸込路
16 制御チャンバ
17 弁ピストン
18 絞り排出路
19 弁を形成するボール
20 ボールガイド
21 閉鎖部材
22 電機子
23 弁ばね
24 ヨーク
25 電磁コイル
26 シーリング要素
27 接点ピン
28 当接ディスク
29 内極
30 外極
34 オリフィス
35 細長いスロット
36 中心ドリル穴
37 インサート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁であって、特に燃料噴射器を制御するための、または燃料高圧アキュムレータの圧力を調整するためのものであり、前記電磁弁は、ケーシング(1、2)と、ヨーク(24)及びその中に収納された電磁コイル(25)で形成される電磁石(24、25)と、1つもしくは複数の部品である電機子(22)とを備える、電磁弁において、
当接ディスク(28)が、前記ヨーク(24)の方に向いた前記電機子(22)の横断面と前記ヨーク(24)に面する横断面との間に設けられ、この当接ディスク(28)が、磁化材料または磁化可能な材料、特に強磁性材料で作られ、前記当接ディスク(28)の支承面が、少なくとも1つの切抜部(34、35)によって、減らされることを特徴とする、電磁弁。
【請求項2】
前記電磁弁の少なくとも1つの事前定義された動作状態において、前記電機子(22)が、前記電磁弁の前記当接ディスク(28)に接してエアギャップを残すことなしに、少なくとも表面の一部分に適用されることを特徴とする、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記当接ディスク(28)が前記ヨーク(24)を越えて側方に突出し、少なくとも1つの動作状態において、前記ケーシング(1、2)に接して適用され、したがって衝撃力を少なくとも部分的に前記ケーシング(1、2)に伝達することを特徴とする、請求項1または2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記当接ディスク(28)が、前記ヨーク(24)の内極(29)と前記電機子(22)との間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記当接ディスク(28)が、前記ヨーク(24)の外極(30)と前記電機子(22)との間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記当接ディスク(28)が、前記ヨークの隣接した内極(29)または外極(30)を、前記当接ディスク(28)の方に向いた前記ヨークの横断面に関して、部分的にのみ覆うことを特徴とする、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項7】
前記切抜部(34、35)が、特に円形オリフィス(34)の形態で作られることを特徴とする、請求項6に記載の電磁弁。
【請求項8】
前記切抜部(34、35)が、好ましくは中心にあるスロット(35)の形態で作られることを特徴とする、請求項6に記載の電磁弁。
【請求項9】
前記当接ディスク(28)が、前記ヨーク(24)の前記隣接した内極(29)もしくは前記外極(30)の前記当接ディスク(28)の方に向いた横断面、及び/または該極(29、30)の横断面の縁部を完全に覆うことを特徴とする、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電磁弁が取り付けられた燃料噴射器。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電磁弁が圧力調整のために取り付けられた燃料高圧アキュムレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−117445(P2011−117445A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−255696(P2010−255696)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】