説明

噴霧装置、被覆膜の製造方法および被覆膜

【課題】施工時の乾燥性、低臭性に優れるとともに、硬化後の耐薬品性、強度、柔軟性に優れるビニルエステル樹脂系の被覆膜を作製可能な噴霧装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る噴霧装置10は、第1原料と第2原料とを混合して噴霧する噴霧器11と、噴霧器11に第1原料を供給する第1の供給ホース41と、噴霧器11に第2原料を供給する第2の供給ホース42と、第1の供給ホース41を加熱する第1のホースヒータ47と、第2の供給ホース42を加熱する第2のホースヒータ48と、第1および第2のホースヒータ47、48の加熱温度のそれぞれを独立して調節可能なホース温度調節器44と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧装置、被覆膜の製造方法および被覆膜に関し、特に、アスファルト舗装道路等の対象物にビニルエステル樹脂から作製された被覆膜を形成するのに用いられる噴霧装置、被覆膜の製造方法および被覆膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルト舗装道路や工場のコンクリート床等の対象物に耐久性、撥水性等の機能を付与するために、対象物の表面に高分子材料の被覆膜を形成する技術が知られている。
【0003】
施工される対象物に乾燥性(硬化の速さ)や耐薬品性等が要求される場合、被覆膜を形成する高分子材料として、ビニルエステル樹脂が用いられることが多い。
【0004】
従来、ビニルエステル樹脂の被覆膜の作製方法として、ビニルエステル樹脂およびアミン等の硬化促進剤を含む第1原料と、ビニルエステル樹脂および有機過酸化物等の硬化剤を含む第2原料とを、噴霧装置中で混合して硬化性樹脂組成物を作製し、対象物に噴霧し、硬化させる方法が知られている。
【0005】
この方法では、第1原料中の硬化促進剤と、第2原料中の硬化剤とが噴霧装置中で接触してから硬化が開始される。このため、第1原料と第2原料とを予め混合して作製した硬化性樹脂組成物を噴霧装置に供給して噴霧する場合に比べて粘度が低い状態で噴霧することができ、噴霧装置内での樹脂の硬化を防止することができる。
【0006】
しかし、ビニルエステル樹脂を含む硬化性樹脂組成物は、一般的に、噴霧時に発生する臭気が強い。このため、ビニルエステル樹脂を含む硬化性樹脂組成物を住宅街のアスファルト舗装道路や食品工場のコンクリート床等に施工する場合には、周囲に臭気を発散するという問題があった。
【0007】
これに対し、特許文献1(特開2005−97523号公報)には、ビニルエステル樹脂、アミン等の硬化促進剤、コバルト塩等の促進助剤および有機過酸化物等の硬化剤を含む硬化性樹脂組成物を対象物に塗布し、硬化させる方法が開示されている。この方法で得られる被覆膜は、施工時の乾燥性、低臭性に優れるとともに、硬化後の耐薬品性、強度、柔軟性に優れる。
【特許文献1】特開2005−97523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1にはビニルエステル樹脂、アミン等の硬化促進剤、コバルト塩等の促進助剤および有機過酸化物等の硬化剤を混合した1液タイプの硬化性樹脂組成物を塗布する施工方法が記載されているにすぎず、第1原料と第2原料とからなる2液タイプの原料を用い噴霧器で噴霧する施工方法は記載されていない。
【0009】
このため、特許文献1に開示された硬化性樹脂組成物をこのまま従来の噴霧装置で施工すると、粘度が高くなって噴霧が困難になり、施工性が悪くなりやすい。
【0010】
すなわち、特許文献1に開示された硬化性樹脂組成物を、ビニルエステル樹脂、硬化促進剤および促進助剤を含む第1原料と、ビニルエステル樹脂および硬化剤を含む第2原料とに便宜的に分けて施工する場合において、第1原料および第2原料のいずれかに酸化チタン等の塗料原料を配合するときは、塗料原料が配合された方の粘度が高くなり、第1原料と第2原料との混合不良により硬化物の特性が不十分になるおそれがある。
【0011】
また、これら第1原料と第2原料とは、十分に混合された後は硬化が速やかに進行しやすいという問題がある。
【0012】
すなわち、特許文献1に開示された硬化性樹脂組成物を便宜的に分けて作製した第1原料と第2原料とは、混合が困難である一方で、混合された後は硬化が速やかに進行しやすいため、2液に分けて噴霧する施工が困難であるという問題があった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、施工時の乾燥性、低臭性に優れるとともに、硬化後の耐薬品性、強度、柔軟性に優れるビニルエステル樹脂系の被覆膜を作製可能な噴霧装置、この噴霧装置を用いたビニルエステル樹脂系の被覆膜の製造方法、およびこの製造方法で作製された被覆膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る噴霧装置は、上記問題点を解決するものであり、第1原料と第2原料とを混合して噴霧する噴霧器と、この噴霧器に前記第1原料を供給する第1の供給ホースと、前記噴霧器に前記第2原料を供給する第2の供給ホースと、前記第1の供給ホースを加熱する第1のホースヒータと、前記第2の供給ホースを加熱する第2のホースヒータと、前記第1および第2のホースヒータの加熱温度のそれぞれを独立して調節可能なホース温度調節器と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る被覆膜の製造方法は、上記問題点を解決するものであり、前記噴霧装置を用いる被覆膜の製造方法であって、第1原料と第2原料とを混合して得られる硬化性樹脂組成物を対象物に噴霧し、未硬化塗膜を形成する噴霧工程と、前記未硬化塗膜を硬化させて、前記硬化性樹脂組成物の硬化物である被覆膜を形成する硬化工程とを備え、前記第1原料は、液状のビニルエステル樹脂、三級アミンおよび還元剤を含み、前記第2原料は、液状のビニルエステル樹脂および有機過酸化物を含むことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明に係る被覆膜は、上記問題点を解決するものであり、前記被覆膜の製造方法で作製されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る噴霧装置および被覆膜の製造方法によれば、施工時の乾燥性、低臭性に優れるとともに、硬化後の耐薬品性、強度、柔軟性に優れるビニルエステル樹脂系の被覆膜を作製することができる。
【0018】
本発明に係る被覆膜によれば、耐薬品性、強度、柔軟性に優れる被覆膜が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[本発明に係る噴霧装置]
本発明に係る噴霧装置につき、図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る噴霧装置を含む噴霧システムを示す図である。
【0020】
(噴霧システム)
図1に示すように、噴霧システム1は、エアコンプレッサ61と、トランスファーポンプ63と、第1原料容器64aと、第2原料容器64bと、原料容器ヒータ65と、原料容器温度調節器66と、油圧圧送器70と、溶剤ポンプ76と、噴霧装置10とを備える。
【0021】
エアコンプレッサ61は、エアホース62a、62bを介してトランスファーポンプ63、63に接続され、トランスファーポンプ63、63にエアを供給する。
【0022】
トランスファーポンプ63、63は、それぞれ、第1原料容器64aと、第2原料容器64bとに接続される。トランスファーポンプ63、63は、エアコンプレッサ61から供給されたエアを駆動源として、第1原料容器64aや第2原料容器64bから、原料供給ホース67を介して第1原料や第2原料を油圧圧送器70に供給する。
【0023】
第1原料容器64aは、第1原料が装入され、第2原料容器64bは、第2原料が装入される。
【0024】
第1原料容器64aおよび第2原料容器64bには、それぞれ、第1原料または第2原料を加熱する原料容器ヒータ65、65が設けられる。原料容器ヒータ65には、原料容器ヒータ65の温度を制御する原料容器温度調節器66が接続される。
【0025】
油圧圧送器70は、エアを供給する油圧モータ73を備える。油圧圧送器70は、上流側が原料供給ホース67を介して第1原料容器64aおよび第2原料容器64bに接続されるとともに、下流側が噴霧装置10の供給ホース集合体40に接続される。
【0026】
油圧圧送器70は、エアにより第1原料容器64aおよび第2原料容器64bから輸送された第1原料および第2原料を、それぞれ所定の流量で、噴霧装置10の供給ホース集合体40に供給する。
【0027】
溶剤ポンプ76は、溶剤ホース77を介して噴霧装置10の供給ホース集合体40に接続される。溶剤ポンプ76は、必要により、供給ホース集合体40や噴霧器11内の洗浄のために溶剤を供給する。
【0028】
(噴霧装置)
噴霧装置10は、噴霧器11と、第1の供給ホース41と、第2の供給ホース42と、第1のホースヒータ47と、第2のホースヒータ48と、ホース温度調節器44と、温度検知器50と、を備える。
【0029】
噴霧器11は、後端部に第1の供給ホース41と第2の供給ホース42とが接続される。噴霧器11は、第1の供給ホース41から供給される第1原料と、第2の供給ホース42から供給される第2原料とをミキサー部17内で混合してノズル部18から噴霧する。
【0030】
第1の供給ホース41は油圧圧送器70と噴霧器11とに接続され、第1原料を油圧圧送器70から噴霧器11に供給する。
【0031】
第2の供給ホース42は油圧圧送器70と噴霧器11とに接続され、第2原料を油圧圧送器70から噴霧器11に供給する。
【0032】
第1の供給ホース41は、外側表面が第1の供給ホース41を加熱する第1のホースヒータ47で被覆される。第1のホースヒータ47は、ニクロム線等の電熱材料で形成される。第1のホースヒータ47は、第1の供給ホース用のホース温度調節器44aに接続される。
【0033】
第2の供給ホース42は、外側表面が第2の供給ホース42を加熱する第2のホースヒータ48で被覆される。第2のホースヒータ48は、ニクロム線等の電熱材料で形成される。第2のホースヒータ48は、第2の供給ホース用のホース温度調節器44bに接続される。
【0034】
第1の供給ホース41および第2の供給ホース42は、共に塩化ビニル等の被覆剤で被覆され、供給ホース集合体40を形成する。
【0035】
第1の供給ホース41および第2の供給ホース42は、油圧圧送器70に絶縁部材43aを介して接続される。
【0036】
ホース温度調節器44は、第1の供給ホース用のホース温度調節器44aと、第2の供給ホース用のホース温度調節器44bとからなる。
【0037】
第1の供給ホース用のホース温度調節器44aは、第1のホースヒータ47に接続され、第1のホースヒータ47の加熱温度を調節する。第2の供給ホース用のホース温度調節器44bは、第2のホースヒータ48に接続され、第2のホースヒータ48の加熱温度を調節する。
【0038】
ホース温度調節器44は、第1のホースヒータ47の加熱温度と第2のホースヒータ48の加熱温度とをそれぞれ独立して調節可能になっている。
【0039】
ホース温度調節器44は、温度検知器50で測定される第1の供給ホース41の温度および第2の供給ホース42の温度に基づいて、第1のホースヒータ47および第2のホースヒータ48の加熱温度のそれぞれを独立して調節可能になっている。
【0040】
供給ホース集合体40は、途中に温度検知器50または絶縁部材43bが設けられる。隣接する供給ホース集合体40、40は、温度検知器50または絶縁部材43bを介して接続される。
【0041】
温度検知器50は、第1の供給ホース41の温度および第2の供給ホース42の温度をそれぞれ検知する。検知した温度情報は、図示しない線を介してホース温度調節器44に送られる。
【0042】
絶縁部材43bは、温度検知器50と噴霧器11との間の供給ホース集合体40に設けられ、温度検知器50と噴霧器11とが絶縁されるようになっている。
【0043】
温度検知器50または絶縁部材43bが設けられた部分では、供給ホース集合体40、40に収納されたホースヒータ用コード46、46が、コネクタ49で接続される。
【0044】
ホースヒータ用コード46は、第1のホースヒータ47および第2のホースヒータ48のうち、第1の供給ホース41または第2の供給ホース42を加熱する電熱線部分以外のコード部分が統合されたものである。
【0045】
(噴霧器)
噴霧器11について、図面を参照して詳細に説明する。図2は、噴霧器11の正面図である。図3は、噴霧器11の平面図である。図4は、図2をA−A方向に一部切欠した部分断面図である。
【0046】
図2に示すように、噴霧器11は、本体部12と、ミキサー部17と、ノズル部18と、を備える。
【0047】
噴霧器11は、本体部12の下流側の先端部にミキサー部17が設けられ、ミキサー部17の下流側の先端部にノズル部18が設けられる。
【0048】
本体部12は、第1の胴体部材13と、第2の胴体部材14と、第3の胴体部材15と、キャップ16とを備える。
【0049】
第1の胴体部材13と、第2の胴体部材14と、第3の胴体部材15とは、長手方向に組み合わされて1本の筒状の本体部12を形成している。
【0050】
第1の胴体部材13には、作業者が把持可能なグリップ部19が設けられる。
【0051】
図4に示すように、第1の胴体部材13の後端部には、第1の供給ホース41と第2の供給ホース42とが接続される。
【0052】
第1の胴体部材13中には、第1の供給ホース41に接続される第1の供給バルブ21、および第2の供給ホース42に接続される第2の供給バルブ22が設けられる。
【0053】
第1の胴体部材13には、第1の供給バルブ21および第2の供給バルブ22のそれぞれの開度を調節する弁操作部81が設けられる。
【0054】
弁操作部81は、円柱状の弁操作ドラム82の曲面部に設けられる。弁操作ドラム82の中心には、弁操作ドラム82の回動に連動して第1の供給バルブ21および第2の供給バルブ22の開度を制御する軸部83、84が設けられる。作業者は、弁操作部81を操作して、第1の供給バルブ21および第2の供給バルブ22の開度を制御することができるようになっている。
【0055】
第1の供給バルブ21の下流側には第1の供給管23が接続され、第2の供給バルブ22の下流側には第2の供給管24が接続される。第1の供給管23および第2の供給管24は、下流側の端部が第2の胴体部材14内に達するように設けられる。
【0056】
第2の胴体部材14中では、第1の供給管23の下流側の端面に継手25が設けられ、第2の供給管24の下流側の端面に継手26が設けられる。
【0057】
第2の胴体部材14の側面には、外部から内部に貫通する溶剤供給管56が設けられる。溶剤供給管56は、上流側に、溶剤供給管55、継手54、溶剤供給管53および溶剤供給バルブ52を介して溶剤ホース77が接続される。溶剤供給管56は、下流側に、継手57が設けられる。
【0058】
第2の胴体部材14の下流側の端部には、第1の供給管23の継手25、第2の供給管24の継手26および溶剤供給管56の継手57が設けられる。継手25、継手26および継手57は、ミキサー部17側からみて略三角形の頂点に位置するように配置される。
【0059】
第3の胴体部材15は、第2の胴体部材14に接続される。第3の胴体部材15は、下流側の端部15aが絞り込まれた形状になっている。
【0060】
第3の胴体部材15中では、第1の供給管23の継手25の下流側に第1の屈曲管27が接続され、第2の供給管24の継手26の下流側に第2の屈曲管28が接続され、溶剤供給管56の継手57の下流側に溶剤用屈曲管58が接続される。第1の屈曲管27、第2の屈曲管28および溶剤用屈曲管58は、銅製になっている。
【0061】
第3の胴体部材の下流側の端部15a中では、第1の屈曲管27、第2の屈曲管28および溶剤用屈曲管58は、束ねられてシール部32に被覆される。シール部32は、下流側の第2部分32bが上流側の第1部分32aよりも細くなっている。シール部32は、ゴム等の弾性材料で作製される。
【0062】
図5は、シール部32の下流側(ミキサー部17側)の端面を示す図である。図5に示すように、シール部32の下流側の第2部分32bは、上流側の第1部分32aよりも径が小さくなるように絞り込まれている。
【0063】
第1の屈曲管27、第2の屈曲管28および溶剤用屈曲管58は、シール部32の下流側の第2部分32bの端面に開口して、それぞれ第1の排出口29、第2の排出口30および溶剤排出口59を形成する。第1の排出口29、第2の排出口30および溶剤排出口59は、略三角形の頂点に位置するように配置される。
【0064】
第3の胴体部材の下流側の端部15aの外側には、キャップ16が取り付けられる。キャップ16は、先細で開口した先端部16aが下流側に形成される。シール部32は、キャップ16の第3の胴体部材への取り付けにより、キャップの先端部16aの内壁がシール部32の外側表面に当接して固定される。
【0065】
ミキサー部17は、筒状体であり、内部にチャンバー38を有し、チャンバー38の長手方向の一部にスタティックミキサー39が設けられる。ミキサー部17は、一方の端部17aに、シール部32の下流側の第2部分32bがはめ込まれる。ミキサー部の端部17aの周囲にはキャップの先端部16aに嵌合する嵌合部17bが設けられる。
【0066】
スタティックミキサー39は、シール部32の第1の排出口29および第2の排出口30から排出された第1原料および第2原料を十分に混合することができるようになっている。スタティックミキサー39は、長さ(図4中、符号L)が、通常、20cm〜35cmである。
【0067】
スタティックミキサー39の長さがこの範囲内にあると、ビニルエステル樹脂、硬化促進剤および促進助剤を含む第1原料と、ビニルエステル樹脂および硬化剤を含む第2原料とを十分に混合可能であるとともに、硬化が開始して粘度が高くなりすぎることなく噴霧施工を良好に行うことができる。
【0068】
スタティックミキサー39の長さが20cm未満であると、上記第1原料および上記第2原料の混合不足が生じ易く、スタティックミキサー39の長さが35cmを超えると、硬化が始まり噴霧が困難になるおそれがある。
【0069】
ノズル部18は、ミキサー部17の先端部に設けられ、第1原料と第2原料との混合物を噴霧する。
【0070】
[本発明に係る被覆膜の製造方法]
次に、本発明に係る被覆膜の製造方法について説明する。本発明に係る被覆膜の製造方法は、特定の第1原料と特定の第2原料とを上記噴霧装置10で混合して対象物に噴霧し、対象物の表面に被覆膜を製造する方法である。
【0071】
本発明では、上記第1原料と第2原料との混合により得られる硬化性樹脂組成物が硬化して、硬化物を形成する。硬化性樹脂組成物を、アスファルト舗装面、コンクリート面等の対象物に噴霧すると、対象物の表面に硬化性樹脂組成物の硬化物からなる被覆膜が形成される。
【0072】
(第1原料)
本発明で用いられる第1原料は、液状のビニルエステル樹脂、三級アミンおよび還元剤を含む。
【0073】
(液状のビニルエステル樹脂)
本発明で用いられるビニルエステル樹脂は、液状のビニルエステル(A)と、重合性不飽和モノマー(B)と、の混合物である。
【0074】
(液状のビニルエステル(A))
本発明で用いられる液状のビニルエステル(A)は、エポキシ樹脂と、飽和一塩基酸、多塩基酸および不飽和一塩基酸とを反応させて得られるものである。
【0075】
(エポキシ樹脂)
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アラルキルジフェノール型エポキシ樹脂、ジグリシジル型エポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0076】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびテトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類とエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂、ビスフェノールAのグリシジルエーテルと前記ビスフェノール類の縮合物とエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0077】
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェノールとエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0078】
ナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば、ジヒドロキシナフタレンとエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0079】
アラルキルジフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、アラルキルフェノールとエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0080】
ジグリシジル型エポキシ樹脂としては、例えば、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルが挙げられる。
【0081】
脂環式型エポキシ樹脂としては、例えば、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカルボキシレートが挙げられる。
【0082】
オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂としては、上記のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アラルキルジフェノール型エポキシ樹脂、ジグリシジル型エポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂とジイソシアネートとを反応して得られるエポキシ樹脂が用いられる。オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂としては、例えば、旭化成エポキシ製アラルダイトAER4152が挙げられる。
【0083】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラックまたはクレゾールノボラックとエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0084】
トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、トリスフェノールメタン、トリスクレゾールメタンとエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0085】
(飽和一塩基酸)
本発明で用いられる飽和一塩基酸としては、公知のものが挙げられ、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、オクチル酸等のアルキル鎖を有する一塩基カルボン酸;安息香酸、α−トルイル酸、サリチル酸等の芳香族一塩基カルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸、シクロヘプタンカルボン酸等の脂環族一塩基カルボン酸;2フランカルボン酸、テトラヒドロフランカルボン酸、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン-6-カルボン酸等のヘテロ環を有する一塩基カルボン酸が挙げられる。
【0086】
これらの飽和一塩基酸のうち、2フランカルボン酸は、乾燥性が高いため好ましい。
【0087】
本発明では、エポキシ基への飽和一塩基酸の付加量が20当量%以下であり、且つ残りのエポキシ基への不飽和一塩基酸および多塩基酸の付加量が不飽和一塩基酸:多塩基酸の当量の比率で90〜10:10〜90の範囲内にある場合に、複数種の飽和一塩基酸を併用することができる。
【0088】
(多塩基酸)
本発明で用いられる多塩基酸は、エポキシ樹脂の分子量を増大させるために用いられる。
【0089】
本発明で用いられる多塩基酸としては、公知のものを用いることができ、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸、ダイマー酸の水素化物(水添ダイマー酸)、エチレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、ポリエチレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、プロピレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、ポリプロピレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、ドデカン二酸、トリデカン二酸、オクタデカン二酸、1,16−(6−エチルヘキサデカン)ジカルボン酸、1,12−(6−エチルドデカン)ジカルボン酸、カルボキシル基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合体(商品名Hycar CTBN)が挙げられる。
【0090】
これらの多塩基酸のうち、ダイマー酸は、対象物に塗布して乾燥させた硬化性樹脂組成物の硬化物の伸び率が高くなるため好ましい。
【0091】
ダイマー酸としては、脂肪族タイプ、単環タイプ、複環タイプ、水素化物のいずれも用いることができる。ダイマー酸は、単量体、三量体、四量体等が含まれた混合物であってもよい。
【0092】
ダイマー酸の具体例としては、ハリマ化成株式会社製ハリダイマー270S、岡村製油株式会社製ULB−20、コグニスジャパン株式会社製エンポール1061、エンポール1008が挙げられる。
【0093】
(不飽和一塩基酸)
本発明で用いられる不飽和一塩基酸としては、公知のものが挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、一個のヒドロキシル基と一個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と多塩基酸無水物との反応物が挙げられる。
【0094】
本発明で用いられる液状のビニルエステル(A)は、上記のエポキシ樹脂と、飽和一塩基酸、多塩基酸および不飽和一塩基酸とを反応させて得られる。液状のビニルエステル(A)は、エポキシ樹脂に、飽和一塩基酸、多塩基酸および不飽和一塩基酸をこの順番に反応させたものが好ましい。
【0095】
本発明で用いられる液状のビニルエステル(A)は、エポキシ樹脂のエポキシ基の数の20%以下、好ましくは0.1〜19%に飽和一塩基酸を付加したものである。飽和一塩基酸の付加比率が上記範囲内であるとビニルエステル骨格中に十分な不飽和基が存在し、良好な物性を有する硬化物が得られる。
【0096】
本発明で用いられる液状のビニルエステル(A)は、残りのエポキシ基に付加させる不飽和一塩基酸:多塩基酸の当量比率が、通常90:10〜10:90、好ましくは80:20〜20:80である。不飽和一塩基酸:多塩基酸の当量比率が上記範囲内にあると、柔軟性と強度のバランスが取れた硬化物が得られる。
【0097】
(重合性不飽和モノマー(B))
本発明で用いられる重合性不飽和モノマー(B)は、樹脂の粘度を下げ、硬度、強度、耐薬品性、耐水性等を向上させるために、液状のビニルエステル(A)に配合される。
【0098】
本発明で用いられる重合性不飽和モノマー(B)としては、たとえば、スチレン;スチレンのα−、o−、m−およびp−位のアルキル誘導体、ニトロ誘導体、シアノ誘導体、アミド誘導体およびエステル誘導体;クロルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー;(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0099】
これら重合性不飽和モノマー(B)のうち、(メタ)アクリレート系モノマーは、臭気が少なく、他環境に与える影響が小さいため好ましい。
【0100】
(メタ)アクリレート系モノマーとしては、たとえば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0101】
これらの(メタ)アクリレート系モノマーのうち、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、および2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートは、臭気がより少なく、乾燥性が高く、伸び等の物性が優れるため特に好ましい。
【0102】
重合性不飽和モノマー(B)は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0103】
また、本発明で用いられる重合性不飽和モノマー(B)では、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル化合物を、上記モノマーと併用してもよい。
【0104】
分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、公知のものを用いることができ、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の各種グリコール類の(メタ)アクリル酸エステルや下記の一般式(1)で表される化合物などがある。
【化1】

【0105】
上記一般式(1)で表される化合物としては、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業株式会社製:BPE−100)、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業株式会社製:BPE−200)、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業株式会社製:BPE−500)、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業株式会社製:A−BPE−4)、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業株式会社製:A−BPE−10)などが挙げられる。
【0106】
本発明で用いられるビニルエステル樹脂は、上記の液状のビニルエステル(A)と、重合性不飽和モノマー(B)と、の混合物である。ビニルエステル樹脂は、通常、重合性不飽和モノマー(B)に液状のビニルエステル(A)を溶解したものが用いられる。
【0107】
ビニルエステル樹脂は、重合性不飽和モノマー(B)が、ビニルエステル100重量部に対して、通常10〜250重量部、好ましくは20〜200重量部配合されたものである。重合性不飽和モノマー(B)の配合量が10重量部以上であると、硬化物が適度の粘度を有し、作業性、繊維や骨材への濡れ性、被着体への濡れ及び浸透性が良好となる。重合性不飽和モノマー(B)の配合量が250重量部以下であると、硬化物が充分な硬度になり、耐薬品性、耐水性等が良好となる。
【0108】
(酸化重合基含有ポリマー(C))
本発明で用いられるビニルエステル樹脂は、上記のビニルエステル(A)および重合性不飽和モノマー(B)に加えて、アリルエーテル基(アリルオキシ基)またはベンジルエーテル基(ベンジルオキシ基)を有する酸化重合基含有ポリマー(C)を含んでいてもよい。
【0109】
酸化重合基含有ポリマー(C)は、酸化重合(空気硬化)を行う官能基を有するポリマーであり、硬化性樹脂組成物の乾燥性を大幅に向上させ、また塗膜、成形面の仕上げを均一にする効果がある。ここで、酸化重合(空気硬化)とは、例えばアリルエーテル基(アリルオキシ基)などに見られる、エーテル結合と二重結合との間にあるメチレン結合の酸化によるパーオキシドの生成と分解に伴う架橋を指す。
【0110】
酸化重合基含有ポリマー(C)に含まれる酸化重合(空気硬化)基としては、アリル基、ベンジル基を有するものなどが挙げられるが、特に乾燥性に優れるためアリルエーテル基(アリルオキシ基)、ベンジルエーテル基(ベンジルオキシ基)を有するものが好ましい。
【0111】
酸化重合基含有ポリマー(C)は、酸化重合基を含有するモノマーを重合したものでもよいし、ポリマーに酸化重合基を導入したものでもよい。
【0112】
酸化重合基を含有するモノマーとしては、アリルエーテル基(アリルオキシ基)やベンジルエーテル基(ベンジルオキシ基)等を有する不飽和化合物が挙げられる。酸化重合基を含有するモノマーの具体例としては、アリルメタクリレート、ビニルベンジルブチルエーテル、ビニルベンジルヘキシルエーテル、ビニルベンジルオクチルエーテル、ビニルベンジル−(2−エチルヘキシル)エーテル、ビニルベンジル(β−メトキシメチル)エーテル、ビニルベンジル(n−ブトキシプロピル)エーテル、ビニルベンジルシクロヘキシルエーテル、ビニルベンジル−(β−フェノキシエチル)エーテル、ビニルベンジルジシクロペンテニルエーテル、ビニルベンジルジシクロペンテニルオキシエチルエーテル、ビニルベンジルジシクロペンテニルメチルエーテル、ジビニルベンジルエーテルが挙げられる。
【0113】
酸化重合基含有ポリマー(C)は、上記モノマーにジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のモノマーを加えて重合したものであると、硬化性樹脂組成物の乾燥性を向上させることができる。
【0114】
また、ポリマーに酸化重合基を導入して酸化重合基含有ポリマー(C)を作製する方法としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ基を有するポリマーと、カルボキシル基およびアリルエーテル基(アリルオキシ基)を有する化合物とを反応させる方法、カルボキシル基及び/またはアミノ基を有するポリマーと、エポキシ基およびアリルエーテル基(アリルオキシ基)を有する化合物とを反応させる方法が挙げられる。
【0115】
エポキシ基とアリルエーテル基(アリルオキシ基)を有する化合物の具体例としてはアリルグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルアリルエーテル等が挙げられる。カルボキシル基とアリルエーテル基(アリルオキシ基)を有する化合物の具体例としては、水酸基とアリルエーテル基(アリルオキシ基)を有する化合物に酸無水物を付加させたものが挙げられる。
【0116】
エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基を有するポリマーは、市販品でもよいし合成したものであってもよい。市販品の具体例としては、モディパーA4200、モディパーA4100、ブレンマーCP-30、ブレンマーCP-50M(日本油脂株式会社)、ゼオンF301(日本ゼオン株式会社)等がある。エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基を有するポリマーを合成する場合は、例えばそれぞれの官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも含む(メタ)アクリレートモノマー組成物を共重合させる。重合方法は、溶液重合でもエマルジョン重合でもよい。
【0117】
ビニルエステル樹脂において、酸化重合基含有ポリマー(C)は、ビニルエステル100重量部に対し、通常0.01重量部〜50重量部、好ましくは0.1重量部〜30重量部配合される。酸化重合基含有ポリマー(C)の配合量が0.01重量部以上であると硬化性樹脂組成物の乾燥性改善の効果が発揮され、50重量部以下であると適度の樹脂粘度を有し、硬化性樹脂組成物の噴霧の作業性及び硬化性樹脂組成物の乾燥性が良好になる。
【0118】
本発明で用いられる第1原料は、上記の液状のビニルエステル樹脂に加え、三級アミンおよび還元剤を含む。
【0119】
(三級アミン)
本発明で用いられる三級アミンは硬化促進剤であり、硬化剤である有機過酸化物と接触することにより常温ラジカル重合を行い、硬化性樹脂組成物の硬化を実質的に開始するものである。
【0120】
本発明で用いられる三級アミンとしては、たとえば芳香族三級アミンが挙げられる。
【0121】
本発明で用いられる芳香族三級アミンとしては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N−メチル−N−β−ヒドロキシエチルアニリン、N−ブチル−N−β−ヒドロキシエチルアニリン、N−メチル−N−β−ヒドロキシエチル−p−トルイジン、N−ブチル−N−β−ヒドロキシエチル−p−トルイジン、N−メチル−N−β−ヒドロキシプロピルアニリン、N−メチル−N−β−ヒドロキシプロピル−p−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N,N−ジイソプロピロール−p−トルイジン、が挙げられる。
【0122】
これら芳香族三級アミンのうち、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N,N−ジイソプロピロール−p−トルイジンは、硬化性(乾燥性)が良好、すなわち硬化が速いため好ましい。芳香族三級アミンは、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0123】
芳香族三級アミンは、ビニルエステル樹脂100重量部に対して、通常0.1〜5重量部、好ましくは1〜2重量部配合される。芳香族三級アミンの配合量が上記範囲内にあると、可使時間が適度な長さになるため好ましい。
【0124】
(還元剤)
本発明で用いられる還元剤は促進助剤として機能し、硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進するものである。
【0125】
本発明で用いられる還元剤としては、たとえば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト等のコバルト塩類、五酸化バナジウム等のバナジウム化合物が挙げられる。これらのうち、コバルト塩類を用いると、ポットライフが長くなるため好ましい。
【0126】
還元剤は、還元剤がコバルト塩である場合、ビニルエステル樹脂100重量部に対して、通常、コバルト含有率が5〜10%程度のものに換算した配合量で0.1〜5重量部、金属換算で0.005〜1重量部配合されることが好ましい。配合量が0.1〜5重量部の範囲内であると、酸化重合速度が適度であり、硬化に悪影響を与えにくい。
【0127】
また、還元剤がコバルト塩類である場合の還元剤の配合量は、有機過酸化物と還元剤であるコバルト塩類との重量比(有機過酸化物:コバルト塩類)が、通常、10:1〜1:10である。
【0128】
(第2原料)
本発明で用いられる第2原料は、液状のビニルエステル樹脂および有機過酸化物を含む。第2原料に用いられる液状のビニルエステル樹脂は、第1原料に用いられるビニルエステル樹脂と同じであるため、説明を省略する。
【0129】
(有機過酸化物)
本発明で用いられる有機過酸化物は硬化剤であり、硬化促進剤である三級アミンと接触することにより常温ラジカル重合を行い、硬化性樹脂組成物の硬化を実質的に開始するものである。
【0130】
本発明で用いられる有機過酸化物としては、たとえば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物が挙げられる。
【0131】
有機過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド(過酸化ベンゾイル)、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、3−イソプロピルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミドが挙げられる。これらのうち、過酸化ベンゾイルは、反応性が高いため好ましい。
【0132】
第2原料において、有機過酸化物は、ビニルエステル樹脂100重量部に対して、通常2〜10重量部、好ましくは3〜7重量部配合される。有機過酸化物の配合量が上記範囲内にあると、硬化が十分に進行し、硬化物の物性が良好になる。
【0133】
(ワックス類(D))
本発明では、第1原料および第2原料の少なくともいずれかに、塗膜面から空気を遮断するために、さらにワックス類(D)を配合してもよい。
【0134】
本発明で用いられるワックス類(D)としては、公知のものが挙げられ、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリン等の石油ワックス;キャンデリラワックス、ライスワックス、木蝋等の植物系ワックス;蜜蝋、鯨蝋等の動物系ワックス;モンタンワックス等の鉱物系ワックス;ポリエチレンワックス、アミドワックス等の合成ワックス;BYK−S−750、BYK−S−740、BYK−LP−S6665(ビックケミー株式会社製)等の特殊ワックスが挙げられる。
【0135】
これらのワックス類(D)は単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0136】
第1原料、第2原料等にワックス類(D)が配合される場合、ワックス類(D)は、第1原料および第2原料に含まれる全ビニルエステル樹脂100重量部に対して、通常0.05〜5.0重量部配合される。第1原料および第2原料の少なくともいずれかには、ワックスの塗膜面から空気を遮断する作用をより効果的に活用するため、溶剤等を併用してもよい。併用される溶剤としては、たとえばn−ドデカンが挙げられる。
【0137】
(光重合開始剤)
本発明では、第1原料および第2原料の少なくともいずれかに、さらに光重合開始剤を配合してもよい。
【0138】
本発明で用いられる光重合開始剤としては、紫外線ないし近赤外線領域のいずれかに感光性を有するものが挙げられる。
【0139】
紫外線重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンジルケタール系、(ビス)アシルホスフィンオキサイド系等の公知の重合開始剤が用いられる。
【0140】
紫外光から可視光領域まで感光性を有する開始剤は、光透過性を高めるために有効である。紫外光から可視光領域まで感光性を有する開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキサイド系等の紫外線重合開始剤が好ましい。
【0141】
光重合開始剤の具体例としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア−819、チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(商品名Lucirin TPO、BASF(株)製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名:Darocur1173、チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)と2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(商品名Lucirin TPO、BASF(株)製)を50%/50%の割合で混合された商品名Darocur4265が挙げられる。
【0142】
光重合開始剤のうち可視光重合開始剤は、380nm〜780nmの波長域(可視光領域)に感光性を有する光重合開始剤であればよく、それらを組み合わせて使用してもよい。
【0143】
可視光領域に感光性を有する可視光重合開始剤としては、例えば山岡等、「表面」、27(7)、548(1989)、佐藤等、「第3回ポリマー材料フォーラム要旨集」、IBP18(1994)に記載の、カンファーキノン、ベンジルトリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、メチルチオキサントン、ジシクロペンタジエニルチタニウムージ(ペンタフルオロフェニル)等の単独の可視光重合開始剤の他、有機過酸化物/色素系、ジフェニルヨードニウム塩/色素、イミダゾール/ケト化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物/水素供与性化合物、メルカプトベンゾチアゾール/チオピリリウム塩、金属アレーン/シアニン色素など特公昭45―37377号公報に記載のヘキサアリールビイミダゾール/ラジカル発生剤等の公知の複合開始剤系が挙げられる。
【0144】
また、500nm以上の波長の可視光あるいは近赤外光領域に感光性を有する光重合開始剤としては、有機ホウ素化合物と陽イオン色素の組み合わせが挙げられる。この有機ホウ素化合物と可視光あるいは近赤外光領域に感光波長を有するカチオン色素とを組み合わせることで、感光領域の波長の光照射を受けた色素が励起され、有機ホウ素化合物と電子授受を行うことで色素が消色すると共にラジカルが発生し、共存する重合性不飽和化合物の重合反応が起こる。この重合反応では、従来の紫外線重合反応などと異なり、発生ラジカルをコントロールしやすく、樹脂中の不飽和基の一部をラジカル重合したところで容易に止めることが出来る。また、可視光あるいは近赤外光領域の長波長を使用するため、充填材や顔料など添加された系でも容易に反応を進めることができるという特徴を持っている。
【0145】
上記の、紫外線ないし近赤外線領域のいずれかに感光性を有するものが紫外線ないし近赤外線領域のいずれかに感光性を有する開始剤の例は、特開2000−297127号公報、特開2001−139643号公報などに詳細な記載がある。
【0146】
光重合開始剤は、ビニルエステル樹脂100重量部に対して、通常0.01〜15重量部、好ましくは0.05〜10重量部配合される。光重合開始剤の配合量が0.01〜15重量部の範囲にあると重合が十分に進行し、良好な物性を有する硬化物が得られる。
【0147】
有機過酸化物と光重合開始剤を併用する場合、ビニルエステル樹脂100重量部に対して有機過酸化物と光重合開始剤の合計量が、通常0.02〜30重量部、好ましくは0.1〜20重量部配合される。
【0148】
また、有機過酸化物と光重合開始剤を併用する場合、有機過酸化物と光重合開始剤の重量比率(有機過酸化物/光重合開始剤)は、通常5/0.1〜0.1/5、好ましくは1/0.1〜0.1/1である。
【0149】
(塗料原料)
第1原料および第2原料の少なくともいずれかは、塗料原料をさらに含んでいてもよい。本発明で用いられる塗料原料としては、たとえば、酸化チタン等の顔料や、Cr、CuCr、(Co,Fe)(Fe,Cr)等の赤外線反射顔料が挙げられる。
【0150】
塗料原料は、第1原料および第2原料の両方に配合される場合、第1原料および第2原料の合計量100重量部に対して、通常10〜50重量部、好ましくは20〜25重量部配合される。
【0151】
また、塗料原料は、第1原料または第2原料のいずれかに配合される場合、第1原料または第2原料100重量部に対して、通常20〜100重量部、好ましくは40〜50重量部配合される。
【0152】
次に、本発明に係る被覆膜の製造方法をより具体的に説明する。
【0153】
本発明に係る被覆膜の製造方法は、上記の第1原料と第2原料とを噴霧装置10の噴霧器11で混合して対象物に噴霧し、硬化させて、対象物の表面に被覆膜を形成する。
【0154】
(原料粘度調整工程)
はじめに、原料粘度調整工程として、原料容器ヒータ65および原料容器温度調節器66を用いて、第1原料容器64aおよび第2原料容器64b内の第1原料および第2原料の温度を調節することにより、第1原料および第2原料の粘度を調節する。
【0155】
また、第1のホースヒータ47、第2のホースヒータ48およびホース温度調節器44は、第1原料および第2原料が第1の供給ホース41および第2の供給ホース42内に供給されたときに第1原料および第2原料の温度調節が可能なように準備しておく。
【0156】
第1原料および第2原料は、噴霧器11のミキサー部17での混合の際に、それぞれの粘度を、通常0.3〜2.0Pa・s、好ましくは0.5〜1.2Pa・sにする。粘度を上記範囲内にすると、第1原料および第2原料の混合が十分に行われるとともに、混合して得られた硬化性樹脂組成物が噴霧に適した粘度になるため好ましい。
【0157】
第1原料および第2原料の粘度の差異は、たとえば、第1原料および第2原料の一方のみに塗料原料を配合したり、一方に塗料原料を多く配合したりする場合に発生する。例えば、塗料原料は第2原料に配合されることが多いため、第2原料は第1原料よりも粘度が高くなりやすい。
【0158】
また、第1原料および第2原料は、噴霧器11のミキサー部17での混合の際に、第1原料および第2原料の粘度の差を、通常1.0Pa・s以内、好ましくは0.5Pa・s以内にする。
【0159】
第1原料および第2原料の粘度の差を上記範囲内にする方法としては、たとえば、粘度が高い原料を粘度が低い原料よりも高温にする方法が挙げられる。
【0160】
第1原料および第2原料の粘度の調節は、第1原料および第2原料の温度の調節により行う。第1原料および第2原料の温度調節は、たとえば、第1のホースヒータ47、第2のホースヒータ48、ホース温度調節器44、原料容器ヒータ65、原料容器温度調節器66等の使用により行う。
【0161】
(噴霧工程)
原料粘度調整工程の後、噴霧工程として、第1原料と第2原料とを混合して得られる硬化性樹脂組成物を噴霧器11から対象物に噴霧し、対象物の表面に未硬化塗膜を形成する。
【0162】
具体的には、はじめに、噴霧器11のグリップ部19を把持してノズル部18を対象物の表面に向け、弁操作部81を図示しない開方向に操作して第1の供給バルブ21および第2の供給バルブ22を同時に開放する。
【0163】
第1の供給バルブ21および第2の供給バルブ22を同時に開放することにより、第1原料および第2原料は、第1原料容器64aおよび第2原料容器64bから、トランスファーポンプ63および油圧圧送器70により、第1の供給ホース41および第2の供給ホース42を介して噴霧器11内に一定量で供給される。
【0164】
次に、噴霧器11内に供給された第1原料および第2原料は、本体部12の第1の排出口29および第2の排出口30からミキサー部17に供給され、ミキサー部17内のスタティックミキサー39で混合されて硬化性樹脂組成物を作製する。
【0165】
さらに、ミキサー部17内で作製された硬化性樹脂組成物は、ノズル部18から所望の形に、例えば、扇状、円錐状等の形状で射出される。
【0166】
対象物の表面に噴霧された硬化性樹脂組成物は、噴霧された後、所定時間は硬化せず、未硬化塗膜になっている。
【0167】
本発明で用いられる対象物としては、たとえば、アスファルト舗装面、コンクリート面が挙げられる。
【0168】
噴霧工程を終了する場合には、弁操作部81を図示しない閉方向に操作して第1の供給バルブ21および第2の供給バルブ22を同時に閉じ、ミキサー部17への第1原料および第2原料の供給を停止する。
【0169】
噴霧工程を終了した後は、必要により、溶剤供給バルブ52を開放し、溶剤等の洗浄流体を所定の圧力でミキサー部17のチャンバー38に送入し、チャンバー38を洗浄することにより、第1原料、第2原料または硬化性樹脂組成物の固着を防止する。
【0170】
対象物の表面に硬化性樹脂組成物を噴霧する場合、硬化性樹脂組成物の噴霧の前に、対象物の表面を下地処理したり、下地処理した対象物の表面にプライマーを塗布したりして、硬化性樹脂組成物の対象物の表面への定着性を高めることが好ましい。
【0171】
(硬化工程)
噴霧工程の後、硬化工程として、未硬化塗膜を硬化させて、対象物の表面に硬化性樹脂組成物の硬化物である被覆膜を形成する。
【0172】
具体的には、対象物の表面に噴霧された硬化性樹脂組成物を、常温硬化、光硬化、または光硬化と常温硬化とを併用する方法により乾燥し硬化させて被覆膜を形成する。光硬化や、光硬化と常温硬化とを併用する方法を用いると、短時間で乾燥し硬化させることができるため好ましい。
【0173】
光硬化または光硬化併用常温硬化を行う場合の光源としては、光重合開始剤の感光波長域に分光分布を有する光源であればよく、例えば、近赤外ランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、メタルハライドランプ、水銀灯、高圧水銀灯、太陽光が用いられる。これらの光源のうち、作業現場の安全性の観点から、可視光から近赤外光の光源が好ましい。ここで、可視光とは380〜780nm、近赤外光とは780〜1200nmの波長領域の光線を指す。また、紫外光とは280〜380nmの波長領域の光線を指す。
【0174】
対象物の表面に形成された被覆膜は、耐薬品性、強度、柔軟性に優れる。
【0175】
対象物の表面に形成された被覆膜は、対象物がアスファルト舗装面である場合、アスファルト舗装面の滑り止め舗装、排水性舗装等の用途に使用することができる。また、対象物の表面に形成された被覆膜は、対象物がコンクリート面である場合、プライマー、ライニング、トップコート、床版(コンクリートスラブ)防水等の用途に使用することができる。
【0176】
本発明では、被覆膜中に防滑骨材を埋め込むことにより被覆膜に防滑性を付与してもよい。被覆膜中に防滑骨材を埋め込む方法としては、たとえば、上記噴霧工程で得られた未硬化塗膜に対し、以下の骨材散布工程、第2噴霧工程および第2硬化工程を行う方法が挙げられる。以下、上記噴霧工程を第1噴霧工程、上記硬化工程を第1硬化工程ともいう。
【0177】
(骨材散布工程)
上記噴霧工程(第1噴霧工程)の後、骨材散布工程では、未硬化塗膜の表面に防滑骨材を散布して、防滑骨材の少なくとも一部が埋設した骨材埋設未硬化塗膜を形成する。ここで、防滑骨材の少なくとも一部が埋設するとは、防滑骨材粒子の少なくとも一部が未硬化塗膜に埋設されることを意味する。
【0178】
本発明で用いられる防滑骨材としては、たとえば、スピネル(MgO・Al)型構造を有するもの、フォルステライト(2MgO・SiO)の結晶構造を有するもの、硅砂(SiO)、アルミナ(Al)等が挙げられる。
【0179】
防滑骨材の粒径は、通常0.1mm〜40mm、好ましくは0.1mm〜20mmである。防滑骨材の粒径が40mmを超えると、滑り止めの効果が高くなりすぎて、歩行時の不快感や車両用タイヤの早期磨耗を招くおそれがある。防滑骨材の粒径が0.1mm未満であると、十分な滑り止め効果を得ることが困難になる。
【0180】
防滑骨材を散布する方法としては、機械や人力で散布する等の公知の方法を用いることができる。骨材埋設未硬化塗膜の表面に余剰の防滑骨材がある場合には、防滑骨材をほうき等で除去すると被覆膜の厚さのばらつきが小さくなるため好ましい。
【0181】
防滑骨材の散布量は、防滑骨材を内包する被覆膜の総重量に対し、通常10重量%〜90重量%、好ましくは30重量%〜70重量%である。
【0182】
散布量が10重量%未満であると防滑作用が小さくなるおそれがあり、90重量%を超えると被覆膜の耐久性が十分でなくなるおそれがある。
【0183】
(第2噴霧工程)
骨材散布工程の後、第2噴霧工程では、骨材埋設未硬化塗膜の表面に硬化性樹脂組成物をさらに噴霧して、防滑骨材を内包する骨材含有未硬化塗膜を形成する。
【0184】
第2噴霧工程における硬化性樹脂組成物の噴霧作業は、上記噴霧工程(第1噴霧工程)と同じであるため、説明を省略する。
【0185】
本工程を行うと、散布した防滑骨材が被覆膜に強固に固着し、被覆膜の防滑性が長期間にわたり維持されやすいため好ましい。
【0186】
(第2硬化工程)
第2噴霧工程の後、第2硬化工程では、骨材含有未硬化塗膜を硬化させて、防滑骨材を内包する硬化性樹脂組成物の硬化物である被覆膜を形成する。
【0187】
第2硬化工程における硬化作業は、上記硬化工程(第1硬化工程)と同じであるため、説明を省略する。
【0188】
本工程を行うと、対象物の表面に防滑骨材を内包する被覆膜を形成することができる。
【実施例】
【0189】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されて解釈されるものではない。
【0190】
なお、各例中の「部」および「%」は重量基準であり、「当量」とはエポキシと酸の反応に関する各成分の当量を示す。
【0191】
[合成例1](ビニルエステル樹脂:VE−1)
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた容器にビスフェノールAとエピクロルヒドリンの反応により得られたエポキシ当量189のアラルダイトAER2603(旭化成工業株式会社製エポキシ樹脂)567g(3.0当量)にオクチル酸22g(0.15当量)、メタクリル酸116g(1.35当量)、ハリダイマー270S(播磨化学工業株式会社製ダイマー酸)435g(1.5当量)、トリエチルアミン2.5g、メチルハイドロキノン0.25gを仕込み、空気を流しながら120℃で4時間反応させ、酸価が5mgKOH/gになったところで反応を終了させた。こうして得られたビニルエステル(A)に、重合性不飽和モノマー(B)であるジシクロペンテニルメタクリレート(商品名:QM-57T、ローム・アンド・ハース株式会社製)を1825g加え、ビニルエステル樹脂(VE−1)を得た。
【0192】
[実施例1](硬化性樹脂組成物−1のアスファルト舗装体への施工)
(第1原料−1の調製)
合成例1で得たビニルエステル樹脂VE−1の100gに対し、125Fパラフィンワックス(日本精蝋製)1.0g、白色顔料としてJR−1000(テイカ株式会社製、ルチル型酸化チタン)7.0g、青色顔料としてAA−200ブルー(川村化学株式会社製赤外線反射顔料)3.0g、茶色顔料としてAR−300ブラウン(川村化学株式会社製赤外線反射顔料)0.2g、黄色顔料としてAY−150イエロー(川村化学株式会社製赤外線反射顔料)0.2g、黒色顔料としてAG−235ブラック(川村化学株式会社製赤外線反射顔料)3.0g、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン(モーリン化学工業株式会社製PT−2HE)1.5g、8%オクチル酸コバルト2.0gを加え、第1原料−1を調製した。
【0193】
(第2原料−1の調製)
合成例1で得たビニルエステル樹脂VE−1の100gに対し、125Fパラフィンワックス(日本精蝋製)1.0g、白色顔料としてJR−1000(テイカ株式会社製、ルチル型酸化チタン)7.0g、青色顔料としてAA−200ブルー(川村化学株式会社製赤外線反射顔料)3.0g、茶色顔料としてAR−300ブラウン(川村化学株式会社製赤外線反射顔料)0.2g、黄色顔料としてAY−150イエロー(川村化学株式会社製赤外線反射顔料)0.2g、黒色顔料としてAG−235ブラック(川村化学株式会社製赤外線反射顔料)3.0g、純度40%のベンゾイルパーオキサイド(日本油脂株式会社製ナイパーNS)4.0gを加え、第2原料−1を調製した。
【0194】
(硬化性樹脂組成物−1の噴霧)
図1〜図5に示す噴霧器11を含む噴霧装置10を用いて噴霧試験を行った。噴霧器11は、スタティックミキサー39の長さを20cmとした。
【0195】
40℃で0.6Pa・sにした第1原料−1と、40℃で0.6Pa・sにした第2原料−1とを噴霧装置10に6.0l/minずつ供給し、第1原料−1と第2原料−1との混合物である硬化性樹脂組成物−1を、ノズル部18から対象物であるアスファルト舗装面に噴霧した。噴霧は良好に行うことができた。
【0196】
アスファルト舗装体表面の硬化性樹脂組成物−1が硬化する前に、平均粒径1.0mmの防滑骨材(岡崎ヒュッテナス・アルバータス化成株式会社製、商品名ネオ・エメリー)を1.0kg/m散布し、この上に硬化性樹脂組成物−1をさらに噴霧した。硬化性樹脂組成物−1の噴霧は、防滑骨材が露出しなくなるようにして行った。
【0197】
噴霧後に常温硬化を行ったところ、アスファルト舗装体上に組成が均一で厚さ1.5mmの被覆膜が形成された。被覆膜中の防滑骨材の含有量は、56重量%であった。
【0198】
(耐摩耗性の測定)
被覆膜を有するアスファルト舗装体について、簡易回転ラベリング試験により被覆膜の耐摩耗性を測定した。
【0199】
簡易回転ラベリング試験の方法は以下のとおりである。すなわち、はじめに、被覆膜を有するアスファルト舗装体を切断して縦300mm×横300mm×厚さ50mmの供試体を作製した。次に、供試体を被覆膜が上を向くようにして回転台に載せた後、被覆膜の表面に、トレッドにはしご型金属チェーンを巻いた自動車用タイヤを載せた。自動車用タイヤの輪荷重は50kgとした。さらに、室温を20℃とし、回転台を駆動して供試体を回転させ、自動車用タイヤのトレッド面が供試体の被覆膜の表面を回転半径125mmの円形の軌跡を描いて転がるようにした。供試体は、60回/分の速度で300回回転させた。回転半径は、タイヤのトレッド面の最も外側の部分での値を示す。
【0200】
試験前の供試体の重量(9189g)と、300回転の時点の供試体の重量とから、供試体の磨耗損失量を算出した。300回転の時点の供試体の重量は9180gであり、重量減少量は9gであった。
【0201】
(すべり抵抗値の測定)
被覆膜を有するアスファルト舗装体について、被覆膜のすべり抵抗値を測定した。
【0202】
すべり抵抗値の測定は、振子式スキッドレジスタンステスターを用いて以下のとおり行った。振子式スキッドレジスタンステスターは、振子の先端に取り付けられたゴム製のスライダーの縁が供試体表面を滑動するときの抵抗値を測定するものである。測定値は、BPN(British Pendulum Number)で表され、数値が大きいほど滑りにくいことを示す。測定は複数回行い、値が安定したときの数値を試験値として採用した。BPN値は72であった。
【0203】
(透水量の測定)
被覆膜を有するアスファルト舗装体について、被覆膜の透水量を測定した。透水量の測定は、以下のとおり行った。
【0204】
下方にコックが設けられ、上端が開放された直径50mmのシリンダ部と、底面の直径150mm、高さ25mmの略円錐状に凹設され、略円錐状の頂上部分がコックを介してシリンダ部内に連通する水流下室が設けられた底板部とを備える試験装置を準備した。コックが設けられた水路の最も細い部分は直径7mmとした。
【0205】
はじめに、試験装置の底板部の端面全体に油性粘土を付着させた後、底板部の端面を供試体の被覆膜に圧着させた。これにより、試験装置の水流下室に水が流下されると、被覆膜を通してのみ排水可能になるようにした。
【0206】
次に、シリンダ部内に水を入れた後、コックを全開にして水を流下させ、400mlの水が流下する時間を測定した。流下試験は3回行い、流下時間の平均値を求めた。この平均値から15秒当たりの流下水量を算出し、透水量とした。透水量は1222ml/15sであった。
【0207】
[実施例2](硬化性樹脂組成物−2のアスファルト舗装体への施工)
(第1原料−2の調製)
合成例1で得たビニルエステル樹脂VE−1の100gに対し、125Fパラフィンワックス(日本精蝋製)1.0g、白色顔料としてJR−1000(テイカ株式会社製、ルチル型酸化チタン)14g、青色顔料としてAA−200ブルー(川村化学株式会社製赤外線反射顔料)6.0g、茶色顔料としてAR−300ブラウン(川村化学株式会社製赤外線反射顔料)0.4g、黄色顔料としてAY−150イエロー(川村化学株式会社製赤外線反射顔料)0.4g、黒色顔料としてAG−235ブラック(川村化学株式会社製赤外線反射顔料)6.0g、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン(モーリン化学工業株式会社製PT−2HE)1.5g、8%オクチル酸コバルト2.0gを加え、第1原料−2を調製した。
【0208】
(第2原料−2の調製)
合成例1で得たビニルエステル樹脂VE−1の100gに対し、125Fパラフィンワックス(日本精蝋製)1.0g、純度40%のベンゾイルパーオキサイド(日本油脂株式会社製ナイパーNS)4.0gを加え、第2原料−2を調製した。
【0209】
(硬化性樹脂組成物−2の噴霧)
図1〜図5に示す噴霧器11を含む噴霧装置10を用い、実施例1と同様にして噴霧試験を行った。
【0210】
50℃で0.7Pa・sにした第1原料−2と、40℃で0.6Pa・sにした第2原料−2とを噴霧装置10に6.0l/minずつ供給し、第1原料−2と第2原料−2との混合物である硬化性樹脂組成物−2を、ノズル部18から対象物であるアスファルト舗装面に噴霧した。噴霧は良好に行うことができた。
【0211】
アスファルト舗装面表面の硬化性樹脂組成物−2が硬化する前に、平均粒径1.0mmの防滑骨材(岡崎ヒュッテナス・アルバータス化成株式会社製、商品名ネオ・エメリー)を1.0kg/m散布し、この上に硬化性樹脂組成物−2をさらに噴霧した。硬化性樹脂組成物−2の噴霧は、防滑骨材が露出しなくなるようにして行った。
【0212】
噴霧後に常温硬化を行ったところ、アスファルト舗装面上に組成が均一で厚さ1.5mmの被覆膜が形成された。被覆膜中の防滑骨材の含有量は、56重量%であった。
【0213】
被覆膜を有するアスファルト舗装体について、実施例1と同様にして耐摩耗性を測定した。
【0214】
試験前の供試体の重量(9242g)と、300回転の時点の供試体の重量(9232g)とから、供試体の磨耗損失量を算出したところ、重量減少量は10gであった。
【0215】
被覆膜を有するアスファルト舗装体について、実施例1と同様にしてすべり抵抗値を測定した。BPN値は74であった。
【0216】
被覆膜を有するアスファルト舗装体について、実施例1と同様にして透水量を測定した。透水量は1220ml/15sであった。
【0217】
[比較例1](硬化性樹脂組成物−1のアスファルト舗装体への施工)
噴霧装置10に供給する第1原料−1を25℃で2.5Pa・s、第2原料−1を25℃で2.5Pa・sとなるようにした調製した以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物−1をアスファルト舗装面に噴霧した。
【0218】
第1原料−1および第2原料−1は粘度が高いため混合不良を生じ、噴霧は困難であった。噴霧後に常温硬化を試みたが、硬化性樹脂組成物−1は硬化しなかった。
【0219】
[比較例2](被覆膜を形成しないアスファルト舗装体の耐摩耗性の測定)
被覆膜を施工しないアスファルト舗装体について、実施例1と同様にして耐摩耗性を測定した。試験前の供試体の重量(9076g)と、300回転の時点の供試体の重量(9064g)とから、供試体の磨耗損失量を算出したところ、重量減少量は12gであった。
【0220】
被覆膜を施工しないアスファルト舗装体について、実施例1と同様にしてすべり抵抗値を測定した。BPN値は60であった。
【0221】
被覆膜を施工しないアスファルト舗装体について、実施例1と同様にして透水量を測定した。透水量は1224ml/15sであった。
【0222】
上記結果より、第1原料および第2原料を加温して低粘度化した場合に、組成の均一な被覆膜が形成されることが分かった。
【0223】
上記結果より、被覆膜を形成すると耐摩耗性が向上し、滑りにくくなることが分かった。また、被覆膜を形成しても透水性はほぼ同じであることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0224】
本発明に係る噴霧装置、被覆膜の製造方法および被覆膜は、アスファルト舗装道路等のアスファルト舗装面や、公園、工場、駐車場等のコンクリート面の被覆に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】本発明に係る噴霧装置を含む噴霧システムを示す図。
【図2】本発明に係る噴霧装置を構成する噴霧器の正面図。
【図3】本発明に係る噴霧装置を構成する噴霧器の平面図。
【図4】図2をA−A方向に一部切欠した部分断面図。
【図5】シール部のミキサー部側の端面を示す図。
【符号の説明】
【0226】
1 噴霧システム
10 噴霧装置
11 噴霧器
12 本体部
13 第1の胴体部材
14 第2の胴体部材
15 第3の胴体部材
15a 第3の胴体部材の下流側の端部
16 キャップ
16a キャップの先細部
17 ミキサー部
18 ノズル部
19 グリップ
21 第1の供給バルブ
22 第2の供給バルブ
23 第1の供給管
24 第2の供給管
25、26、54、57 継手
27 第1の屈曲管
28 第2の屈曲管
29 第1の排出口
30 第2の排出口
32 シール部
32a シール部の第1部分
32b シール部の第2部分
38 ミキサー部のチャンバー
39 スタティックミキサー
40 供給ホース集合体
41 第1の供給ホース
42 第2の供給ホース
43a、43b 絶縁部材
44 ホース温度調節器
44a 第1の供給ホース用のホース温度調節器
44b 第2の供給ホース用のホース温度調節器
46 ホースヒータ用コード
47 第1のホースヒータ
48 第2のホースヒータ
49 ホースヒータ用コードのコネクタ
50 温度検知器
52 溶剤供給バルブ
53、55、56 溶剤供給管
58 溶剤用屈曲管
59 溶剤排出口
61 エアコンプレッサ
62a、62b エアホース
63 トランスファーポンプ
64 原料容器
64a 第1原料容器
64b 第2原料容器
65 原料容器ヒータ
66 原料容器温度調節器
67 原料供給ホース
70 油圧圧送器
71 油圧圧送器の出口側の第1の供給ホース
72 油圧圧送器の出口側の第2の供給ホース
73 油圧モータ
76 溶剤ポンプ
77 溶剤ホース
81 弁操作部
82 弁操作ドラム
83、84 弁操作ドラムの軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1原料と第2原料とを混合して噴霧する噴霧器と、
この噴霧器に前記第1原料を供給する第1の供給ホースと、
前記噴霧器に前記第2原料を供給する第2の供給ホースと、
前記第1の供給ホースを加熱する第1のホースヒータと、
前記第2の供給ホースを加熱する第2のホースヒータと、
前記第1および第2のホースヒータの加熱温度のそれぞれを独立して調節可能なホース温度調節器と、
を備えたことを特徴とする噴霧装置。
【請求項2】
前記第1および第2の供給ホースの温度を検知する温度検知器をさらに備え、
前記ホース温度調節器は、前記第1および第2の供給ホースの温度に基づいて、前記第1および第2のホースヒータの加熱温度のそれぞれを独立して調節可能であることを特徴とする請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項3】
前記第1のホースヒータは、前記第1の供給ホースの少なくとも一部を被覆する電熱材料であり、
前記第2のホースヒータは、前記第2の供給ホースの少なくとも一部を被覆する電熱材料であることを特徴とする請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項4】
前記噴霧器は、
前記第1の供給ホースから供給された前記第1原料を排出する第1の排出口と、前記第2の供給ホースから供給された前記第2原料を排出する第2の排出口と、を備えた本体部と、
この本体部の前記第1の排出口と第2の排出口とに接続され、内部に、前記第1原料と第2原料とを混合するスタティックミキサーが設けられたミキサー部と、
このミキサー部の先端に設けられたノズル部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項5】
前記ミキサー部は、スタティックミキサーの長さが20cm〜35cmであることを特徴とする請求項4に記載の噴霧装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載された噴霧装置を用いる被覆膜の製造方法であって、
第1原料と第2原料とを混合して得られる硬化性樹脂組成物を対象物に噴霧し、未硬化塗膜を形成する噴霧工程と、
前記未硬化塗膜を硬化させて、前記硬化性樹脂組成物の硬化物である被覆膜を形成する硬化工程とを備え、
前記第1原料は、液状のビニルエステル樹脂、三級アミンおよび還元剤を含み、
前記第2原料は、液状のビニルエステル樹脂および有機過酸化物を含むことを特徴とする被覆膜の製造方法。
【請求項7】
前記液状のビニルエステル樹脂は、エポキシ樹脂、飽和一塩基酸、多塩基酸および不飽和一塩基酸を反応させて得られる液状のビニルエステル(A)と、重合性不飽和モノマー(B)と、の混合物であることを特徴とする請求項6に記載の被覆膜の製造方法。
【請求項8】
前記有機過酸化物は、過酸化ベンゾイルであることを特徴とする請求項6に記載の被覆膜の製造方法。
【請求項9】
前記多塩基酸は、ダイマー酸であることを特徴とする請求項7に記載の被覆膜の製造方法。
【請求項10】
前記重合性不飽和モノマー(B)は、(メタ)アクリレート系モノマーであることを特徴とする請求項7に記載の被覆膜の製造方法。
【請求項11】
前記三級アミンは、芳香族三級アミンであることを特徴とする請求項6に記載の被覆膜の製造方法。
【請求項12】
前記第1原料および第2原料の少なくともいずれかは、塗料原料をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の被覆膜の製造方法。
【請求項13】
前記未硬化塗膜の表面に防滑骨材を散布して、前記防滑骨材の少なくとも一部が埋設した骨材埋設未硬化塗膜を形成する工程と、
前記骨材埋設未硬化塗膜の表面に前記硬化性樹脂組成物を噴霧して、前記防滑骨材を内包する骨材含有未硬化塗膜を形成する工程と、
前記骨材含有未硬化塗膜を硬化させて、前記防滑骨材を内包する硬化性樹脂組成物の硬化物である被覆膜を形成する工程とを備えることを特徴とする請求項6に記載の被覆膜の製造方法。
【請求項14】
前記対象物は、アスファルト舗装面またはコンクリート面であることを特徴とする請求項6または請求項13に記載の被覆膜の製造方法。
【請求項15】
請求項6〜請求項14のいずれか1項に記載された被覆膜の製造方法で作製されたことを特徴とする被覆膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−72690(P2009−72690A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243864(P2007−243864)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(304016022)東建工業株式会社 (1)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】