説明

四方切換弁

【課題】冷凍機器、空調機器等の可逆冷凍サイクルを利用した機器等に用いた場合でも、冷凍サイクルの効率の低下を最小限に抑えることができる四方切換弁を提供する。
【解決手段】密閉空間を有する弁本体2と、弁本体の一側部に連結され、密閉空間と連通する第1導管25と、弁本体の他側部に連結され、密閉空間と連通する第2導管12と、第2導管を挟んで両側に各々隣接して配置され、密閉空間と連通する第3及び第4導管11、13と、弁本体内において第2乃至第4導管の各々に連通する開口部を有する弁座4と、弁座に摺動可能に配置された弁体3とを備え、弁体を一方向又は他方向に摺動させることにより、第1導管と第3導管との間、又は第1導管と第4導管との間の連通状態が選択的に切り換えられる四方切換弁1において、第2導管、第3導管及び第4導管を樹脂又はセラミックで形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機器、空調機器等の可逆冷凍サイクルを利用した機器等に用いられる四方切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクルの冷媒通路に四方切換弁を配置して冷媒通路を切り換え、室内の冷房と暖房とを切り換えることが行なわれている。このような四方切換弁として、特許文献1等において種々のものが提案されている。
【0003】
上記四方切換弁の1つとして、例えば、図2に記載の四方切換弁41は、密閉中空のシリンダ状の弁本体43に、圧縮機44の吐出管45に連通する接続口46と、圧縮機44の吸入管47に連通する接続口48を設け、この接続口48を挟んで両側に、熱交換機49、50への導管51、52に連通する2つの接続口53、54を配置し、椀状の弁体42を弁座56に摺動自在に設け、この弁体42を摺動させ、中央の接続口48と両側の接続口53、54のいずれか一方との間を選択的に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−38320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の四方切換弁41等は、冷凍機器、空調機器等の可逆冷凍サイクルを利用した機器等に用いられた場合、図2に示した状態で、圧縮機44から吐出された高温の気体状の冷媒が吐出管45を介して導管51の内部を流れるとともに、熱交換機50から排出された低温の気体状の冷媒が導管52及び吸入管47の内部を流れる。
【0006】
ここで、導管51、導管52及び吸入管47は、弁座56にろう付けされているが、導管51と吸入管47は、互いに近接するとともに、これらの配管及び弁座56は金属製であるため熱伝導率が高く、導管51を流れる高温の気体状冷媒と、吸入管47を流れる低温の気体状冷媒との間で活発に熱交換が行われ、その結果、冷凍サイクルの効率が低下するという問題があった。この点については、弁体42が弁座56上を右方へ移動し、圧縮機44から吐出された高温の気体状冷媒が吐出管45を介して導管52の内部を流れ、熱交換機49から排出された低温の気体状冷媒が導管51及び吸入管47の内部を流れる場合でも同様である。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、冷凍機器、空調機器等の可逆冷凍サイクルを利用した機器等に用いた場合でも、冷凍サイクルの効率の低下を最小限に抑えることができる四方切換弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、密閉空間を有する弁本体と、該弁本体の一側部に連結され、前記密閉空間と連通する第1導管と、前記弁本体の他側部に連結され、前記密閉空間と連通する第2導管と、該第2導管を挟んで両側に各々隣接して配置され、前記密閉空間と連通する第3及び第4導管と、前記弁本体内において前記第2乃至第4導管の各々に連通する開口部を有する弁座と、該弁座に摺動可能に配置された弁体とを備え、該弁体を一方向又は他方向に摺動させることにより、前記第1導管と前記第3導管との間、又は前記第1導管と前記第4導管との間の連通状態が選択的に切り換えられる四方切換弁において、前記第2導管、第3導管及び第4導管を樹脂又はセラミックで形成したことを特徴とする。
【0009】
そして、本発明によれば、第2導管、第3導管及び第4導管を熱伝導率の低い樹脂又はセラミックで形成したため、近接する導管内を高温流体と低温流体が流れても両者間で熱交換され難く、この四方切換弁を可逆冷凍サイクル等に利用した場合でも、冷凍サイクルの効率の低下を最小限に抑えることが可能となる。
【0010】
上記四方切換弁において、前記第2導管、第3導管及び第4導管の各々を、金属製フランジ継手に圧入して前記弁本体に固定することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、冷凍機器、空調機器等の可逆冷凍サイクルを利用した機器等に用いた場合でも、冷凍サイクルの効率の低下を最小限に抑えることができる四方切換弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる四方切換弁の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】従来の四方切換弁の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、本発明にかかる弁体を備えた四方切換弁を空調機器に用いる場合を例にとって説明する。
【0014】
図1は、本発明にかかる四方切換弁の一実施の形態を示し、この四方切換弁1は、円筒状の弁本体2と、弁本体2の内部に設けられ、椀状の弁体3が摺動する弁座4とを備え、弁体3が弁座4上を摺動することで、圧縮機34の吐出管25と、熱交換機38、39への導管31又は導管32のいずれか一方を選択的に接続する。
【0015】
弁本体2は、両端部に栓体2a、2bが固着された円筒状に形成され、弁本体2の上側に、吐出管25が連結されるフランジ継手6が固着され、弁本体2の下側に、圧縮機34の吸入管28と、熱交換機38、39への導管31、32が各々連結されるフランジ継手7〜9が固着される。フランジ継手6〜9は金属製で、これらに上記圧縮機34の吐出管25等がろう付けされる。
【0016】
弁本体2内の底面に固定された金属製の弁座4と、フランジ継手7〜9の各々との間には、樹脂製又はセラミック製の導管11〜13が介装される。これらの導管11〜13は、例えばPPSからなり、弁座4及びフランジ継手7〜9に圧入固定される。
【0017】
また、弁本体2の内部には、弁座4と栓体2aとの間にピストン14が、弁座4と栓体2bとの間にピストン15が設けられ、ピストン14、15の間に、高圧室16が形成される。ピストン14、15は、各々ボルト20、21によって連結板17に連結され、連結板17によって一体的に移動可能に構成される。
【0018】
ピストン14と栓体2aとの間に形成された作動室18と、ピストン15と栓体2bとの間に形成された作動室19とは、導管23、24を介して四方切換パイロット弁35に連結されている。四方切換パイロット弁35が、作動室18、19の間に介在することにより、作動室18、19のいずれか一方が、導管26を介して弁本体2の内部に連通するとき、他方の作動室が導管27によって吸入管28に連通するように構成される。
【0019】
弁座4上には、連通用凹部(流体通路)3aと、環状の鍔部3bとを有する椀状の弁体3が設けられる。弁体3は、連結板17の孔17a内に緩く嵌合されている。これにより、弁体3は、ピストン14、15が図1において左右方向に移動することに伴って弁座4上を摺動し、圧縮機34に接続された吸入管28に連通する導管12を、その両側の導管11、13のいずれか一方と連通させるとともに、他方の導管を高圧室16に開放する。
【0020】
尚、上記導管11〜13と、フランジ継手7〜9の弁本体2への組み込みにあたっては、まず、フランジ継手7〜9に導管31、28、32をろう付けし、その後、フランジ継手7〜9に導管11〜13を装着し、最後にフランジ継手7〜9を弁本体2に装着する。
【0021】
上記構成を有する四方切換弁1は、図1に示すように、空調機器において冷媒の流れを冷房と暖房に切り換える場合に使用される。このとき、圧縮機34から吐出された高温の気体状の冷媒が吐出管25を介して導管11の内部を流れて導管31から熱交換機38に至るとともに、熱交換機39から排出された低温の気体状の冷媒が導管32を介して導管13及び導管12の内部を流れ、吸入管28を通って圧縮機34に至る。
【0022】
ここで、導管11と導管12は、互いに近接しているが、導管11〜13は、樹脂又はセラミックからなるため、熱伝導率が低く、導管11を流れる高温の気体状冷媒と、導管12を流れる低温の気体状冷媒との熱交換を最小限に抑えることができ、冷凍サイクルの効率の低下を回避することができる。
【0023】
また、弁体3が弁座4上を左方へ移動し、圧縮機34から吐出された高温の気体状の冷媒が吐出管25を介して導管13の内部を流れて導管32から熱交換機39に至るとともに、熱交換機38から排出された低温の気体状の冷媒が導管31を介して導管11及び導管12の内部を流れ、吸入管28を通って圧縮機34に至る場合も、上記と同様に、導管12と導管13は互いに近接しているが、導管11〜13は樹脂又はセラミックからなるため、熱伝導率が低く、導管13を流れる高温の気体状冷媒と、導管12を流れる低温の気体状冷媒との熱交換を最小限に抑えることができ、冷凍サイクルの効率の低下を回避することができる。
【0024】
尚、上記実施の形態においては、本発明にかかる四方切換弁1を空調機器に用いる場合を例にとって説明したが、空調機器以外にも、冷凍機器等他の可逆冷凍サイクルを利用した機器、さらには、冷凍サイクルを利用した機器以外にも、流体を四方に切り換える必要がある機器に使用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 四方切換弁
2 弁本体
2a、2b 栓体
3 弁体
3a 連通用凹部
3b 鍔部
4 弁座
6〜9 フランジ継手
11〜13 導管
14、15 ピストン
16 高圧室
17 連結板
17a 孔
18、19 作動室
20、21 ボルト
23、24 導管
25 吐出管
26〜28 導管
34 圧縮機
35 四方切換パイロット弁
38、39 熱交換機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉空間を有する弁本体と、該弁本体の一側部に連結され、前記密閉空間と連通する第1導管と、前記弁本体の他側部に連結され、前記密閉空間と連通する第2導管と、該第2導管を挟んで両側に各々隣接して配置され、前記密閉空間と連通する第3及び第4導管と、前記弁本体内において前記第2乃至第4導管の各々に連通する開口部を有する弁座と、該弁座に摺動可能に配置された弁体とを備え、該弁体を一方向又は他方向に摺動させることにより、前記第1導管と前記第3導管との間、又は前記第1導管と前記第4導管との間の連通状態が選択的に切り換えられる四方切換弁において、
前記第2導管、第3導管及び第4導管を樹脂又はセラミックで形成したことを特徴とする四方切換弁。
【請求項2】
前記第2導管、第3導管及び第4導管の各々は、金属製フランジ継手に圧入されて前記弁本体に固定されることを特徴とする請求項1に記載の四方切換弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−159101(P2012−159101A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17374(P2011−17374)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】