四輪駆動車のトルク配分制御装置
【課題】タイトコーナーブレーキング現象を効果的に抑制しつつ、発進時加速性能を向上させる。
【解決手段】トルク配分制御装置は、車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように目標配分値(目標伝達トルク)を小さい値に設定し(ステップS24)、アクセル開度が大きくなるほど、その設定した目標配分値を大きくする補正をする(ステップS27)。
【解決手段】トルク配分制御装置は、車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように目標配分値(目標伝達トルク)を小さい値に設定し(ステップS24)、アクセル開度が大きくなるほど、その設定した目標配分値を大きくする補正をする(ステップS27)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後輪のトルク配分を制御する四輪駆動車のトルク配分制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジントルクを前輪と後輪とに分配する駆動系に設けられたトルク配分用アクチュエータと、車両状態に応じた前後輪トルクとなるように前後輪の一方への目標伝達トルクを演算し、演算した目標伝達トルクを得る指令を前記トルク配分用アクチュエータに対し指令するトルク配分コントローラと、を備えた4輪駆動車のトルク配分制御装置において、車体速を検出する車体速検出手段を設け、前記トルク配分コントローラは、車体速が所定値以下の極低速領域での目標伝達トルクを、車体速が上昇するほど減少させるように設定している。
【0003】
これにより、車体速が所定値以下の極低速領域で、車体速が上昇するほど目標伝達トルクを低下させることで、発進時の加速性能向上と、タイトコーナーブレーキング現象の発生との両立を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−314689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の技術では、車両の発進状態に関係なく、極低速領域内では車体速の上昇に応じて一律に目標伝達トルクを減少させている。すなわち、極低速領域内で車体速の上昇に応じて目標伝達トルクを減少させることとしつつも、目標伝達トルクが大きければ、やはりタイトコーナーブレーキング現象が発生しまう可能性が残るということで、目標伝達トルクの設定を十分に制限し、車体速の上昇に応じて一律に目標伝達トルクを低下させていると言える。
【0006】
これにより、前記特許文献1の技術のままでは、タイトコーナーブレーキング現象が発生し難い発進状態、例えば直進状態(操舵していない状態)でも、車体速が大きければ目標伝達トルクを小さい値に設定するため、発進時加速が不必要に制限されてしまうといった課題がある。例えば、路面が凍結路面等の低摩擦路面では、それが顕著になる。
本発明の課題は、タイトコーナーブレーキング現象を効果的に抑制しつつ、発進時加速性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1記載の本発明に係る四輪駆動車のトルク配分制御装置は、エンジントルクにより前輪及び後輪を駆動する駆動系に配置され、目標配分値に基づいてエンジントルクを前輪と後輪とに分配するトルク分配手段と、車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前記トルク分配手段による前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように前記目標配分値を小さい値に設定する目標配分値設定手段と、前記車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合にも操舵角を検出する操舵角検出手段と、前記操舵角検出手段が検出した操舵角が小さくなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をする補正手段と、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、を備え、前記目標配分値設定手段は、車体速が前記所定の速度領域内で速度が低い極々低速領域にある場合、該車体速に依らず、前記目標配分値を一定値に設定し、車体速が前記所定の速度領域内で速度が高い極低速領域にある場合、該車体速の増加に対する前記目標配分値の減少割合が多くなるように該目標配分値を設定することで、車体速が大きくなるほど目標配分値が大となる方向に凸となるようにし、前記補正手段は、前記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が高くなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をするようにした。
【0008】
また、請求項2記載の本発明に係る四輪駆動車のトルク配分制御装置は、エンジントルクを目標配分値に基づいて前輪と後輪とに分配する四輪駆動車のトルク配分制御装置において、車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように前記目標配分値を小さい値に設定するとともに、そのときの操舵角に基づいて前記設定した目標配分値を増加補正して、前記目標配分値をタイトコーナーブレーキング現象が発生しない範囲内で変化させるものであって、車体速が前記所定の速度領域内で速度が低い極々低速領域にある場合、該車体速に依らず、前記目標配分値を一定値に設定し、車体速が前記所定の速度領域内で速度が高い極低速領域にある場合、該車体速の増加に対する前記目標配分値の減少割合が多くなるように該目標配分値を設定することで、車体速が大きくなるほど目標配分値が大となる方向に凸となるようにするとともに、アクセル開度が高くなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をするようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アクセル開度に基づいて、車体速に基づいて設定した目標配分値を大きくする補正をすることで、タイトコーナーブレーキング現象を効果的に抑制しつつ、発進時加速性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態の四輪駆動車の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態におけるトルク分配コントローラによる目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態におけるトルク分配コントローラによる極低速領域用の目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】車速と目標伝達トルクとの関係を示す図であり、極低速領域の目標伝達トルクを操舵角δに基づいて補正したものを示す図である。
【図5】車速と目標伝達トルクとの関係を示す図であり、目標伝達トルクをアクセル開度θに基づいて補正したものを示す図である。
【図6】車速と目標伝達トルクとの関係を示す図であり、極々低速領域の目標伝達トルクを操舵角δに基づいて補正したものを示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の四輪駆動車の構成を示すブロック図である。
【図8】第2の実施形態におけるトルク分配コントローラによる極低速領域用の目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】車速と目標伝達トルクとの関係を示す図であり、目標伝達トルクを路面摩擦係数μに基づいて補正したものを示す図である。
【図10】本発明の第3の実施形態の四輪駆動車の構成を示すブロック図である。
【図11】第3の実施形態におけるトルク分配コントローラによる極低速領域用の目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】車速と目標伝達トルクとの関係を示す図であり、目標伝達トルクを道路勾配αに基づいて補正したものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態を説明する。
(構成)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態の四輪駆動車の構成を示す。
図1に示すように、1はエンジンであり、2は自動変速機であり、3はフロントディファレンシャルであり、4はリアディファレンシャルであり、5は右前輪であり、6は左前輪であり、7は右後輪であり、8は左後輪であり、9はトルク配分クラッチ(トルク配分アクチュエータ)である。この車両は、トルク配分コントローラ10、右前車輪速センサ11、左前車輪速センサ12、右後車輪速センサ13、左後車輪速センサ14、アクセル開度センサ15及び舵角センサ16を備えている。
【0012】
この構成において、左右前輪5,6へは、エンジン1からのエンジン駆動力が直接伝達され、左右後輪7,8へはトルク配分クラッチ9を介してエンジン駆動力が伝達される。すなわち、トルク配分クラッチ9の締結解放状態であれば、前輪:後輪=100:0のトルク配分比となり、トルク配分クラッチ9がエンジントルクの1/2トルク以上にて締結されていれば、前輪:後輪=50:50のトルク配分比となる。このようなトルク配分比が、トルク配分コントローラ10からの目標伝達トルク(指令値)により制御されている。例えば、トルク配分クラッチ9は、電磁多板クラッチや油圧多板クラッチ等が適用されて構成されている。
【0013】
トルク配分コントローラ10は、各車輪速センサ11〜14、アクセル開度センサ15及び舵角センサ16からの検出信号に基づいて目標伝達トルクを設定、さらに、場合によっては補正をし、そのように設定等した目標伝達トルクを指令値等としてトルク配分クラッチ9に出力する。
ここで、目標伝達トルクが大きくなるほど、トルク配分クラッチ9の締結力が大きくなり、左右前輪11,12と左右後輪13,14との差動が制限され、すなわち、より4輪駆動傾向が強くなり、目標伝達トルクが小さくなるほど、トルク配分クラッチ9の締結力が小さくなり、左右前輪11,12と左右後輪13,14との差動が許容され、すなわち、より2輪駆動(本実施形態では前輪駆動)傾向が強くなる。
【0014】
図2は、トルク分配コントローラ5による目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示す。
図2に示すように、処理を開始すると、ステップS1において、車輪速センサ11〜14により各輪の車輪速を検出する。
続いてステップS2において、前記ステップS1で検出した車輪速に基づいて、車体速Vを算出する。例えば、4輪の各輪の車輪速をセレクトロー処理して、最小値の車輪速を選択し、その車輪速に基づいて車体速Vを算出する。
【0015】
なお、全輪の車輪速に基づいて、車体速Vを算出(全輪の車輪速の平均値として車体速Vを算出)することもでき、予め決めた特定の車輪(例えば駆動輪)の車輪速に基づいて、車体速Vを算出することもできる。
続いてステップS3において、車体速が所定値(例えば2.75km/h)以上か否かを判定する。ここで、車体速Vが所定値V1以上の場合(V≧V1)、通常制御域(通常速度域)にあるとして、ステップS4に進み、車体速Vが所定値V1未満の場合(V<V1)、ステップS7に進む。
ステップS4では、舵角センサ16から得た操舵角δが所定値δ1(例えば180°)以上か否かを判定する。ここで、操舵角δが所定値δ1以上の場合(δ≧δ1)、ステップS5に進み、操舵角δが所定値δ1未満の場合(δ<δ1)、ステップS6に進む。
【0016】
ステップS5では、アクセル開度及び前後輪速度差に基づいて目標伝達トルクを設定する。例えば、前記特許文献1に開示されているように、車輪速センサ11〜14により得た各輪の車輪速を基に、前後輪速度差が大きくなるほど、目標伝達トルクを大きい値に設定する、すなわち、トルク配分クラッチ9の締結力を大きくして、左右前輪11,12と左右後輪13,14との差動を制限する。また、アクセル開度センサ15から得たアクセル開度θが大きくなるほど、目標伝達トルクを大きい値に設定する。これにより、発進時や加速時に4輪に分配するトルク配分により駆動スリップの発生を未然に抑えて、加速性能を向上させることができる。そして、当該図2に示す処理を終了する。
【0017】
ステップS6では、操舵角及びアクセル開度に基づいて目標伝達トルクを設定する。例えば、舵角センサ16により得た操舵角δが大きくなるほど、目標伝達トルクを小さい値に設定する、すなわち、トルク配分クラッチ9の締結力を小さくして、左右前輪11,12と左右後輪13,14との差動を許容する。また、アクセル開度センサ15から得たアクセル開度θが大きくなるほど、目標伝達トルクを大きい値に設定する。
一方、前記ステップS3で車体速が所定値未満であるとして進むステップS7では、極低速領域の目標伝達トルクの設定をする。
【0018】
図3は、極低速領域用の目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示す。
図3に示すように、処理を開始すると、先ずステップS21において、4輪の各輪の車輪速をセレクトロー処理して、最小値の車輪速を選択し、その車輪速に基づいて車体速Vを算出する。
なお、全輪の車輪速に基づいて、車体速Vを算出(全輪の車輪速の平均値として車体速Vを算出)することもでき、予め決めた特定の車輪(例えば駆動輪)の車輪速に基づいて、車体速Vを算出することもできる。
【0019】
続いてステップS22において、前記ステップS21で算出した車体速Vが所定値V2(<V1、例えば1km/h)以上か否かを判定する。ここで、車体速Vが所定値V2以上の場合(V1>V≧V2)、車体速が極低速領域(極低速領域における高速領域、以下、単に極低速領域という。)にあるとして、ステップS23に進み、車体速Vが所定値未満V2の場合(V<V2)、車体速が極低速領域(極低速領域における低速領域、以下、極々低速領域という。)にあるとして、ステップS28に進む。
【0020】
ステップS23では、舵角センサ16から得た操舵角δが所定値δ1(例えば180°)以上か否かを判定する。ここで、操舵角δが所定値δ1以上の場合(δ≧δ1)、ステップS24に進み、操舵角δが所定値δ1未満の場合(δ<δ1)、ステップS28に進む。
ステップS24では、車体速Vに基づいて目標伝達トルクを設定する。具体的には、車体速Vが大きくなるほど、目標伝達トルクを小さくする。
【0021】
続いてステップS25において、前記ステップS24で設定した目標伝達トルクを操舵角δ(≧δ1)に基づいて補正する。具体的には、タイトコーナーブレーキング現象の発生しない範囲でできる限り目標伝達トルクが大きくなるように補正する。
図4は、車速(同図(a))と目標伝達トルク(同図(c))との関係の一例を示す。なお、同図(b)は、従来技術において設定される目標伝達トルクの例を示す。
【0022】
同図(a)及び(c)に示すように、極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)において、目標伝達トルクは、全般的な傾向として、車体速が大きくなるほど、小さくなる。そして、詳細には、目標伝達トルクは、極低速領域内で速度が低い領域では、車体速の増加に対して減少割合は少なく、極低速領域内で速度の高い領域では、車体速の増加に対して減少割合は多くなる。すなわち、極低速領域において、目標伝達トルクを、車体速が大きくなるほど、該目標伝達トルクが大となる方向に凸となる2次関数となるように変化させる。そして、操舵角δが小さくなるほど、タイトコーナーブレーキング現象の発生しない範囲でできる限り、このような傾向を強くしていく。
【0023】
また、例えば、極々低速領域での目標伝達トルクと通常制御域での目標伝達トルクの間を多項式で補完して、極低速領域の目標伝達トルクを設定したり、極低速領域での目標伝達トルクを転舵角と車体速により設定したりする。また、例えば、目標伝達トルクの値は、経験値、実験値又は車両諸元を基に決定する。
続いてステップS26において、アクセル開度θが所定値θ1(例えば5%)以上か否かを判定する。ここで、アクセル開度θが所定値θ1以上の場合(θ≧θ1)、ステップS27に進み、アクセル開度センサ15から得たアクセル開度θが所定値θ1未満の場合(θ<θ1)、当該図3(ステップS7)の示す処理を終了する。
【0024】
ステップS27では、アクセル開度θ(≧θ1)に基づいて目標伝達トルクを補正する。具体的には、アクセル開度θに基づいて補正ゲインを設定し、設定した補正ゲインと、前記ステップS25で転舵角δに基づいて補正した目標伝達トルクとの積により、目標伝達トルクを設定する。このようにして、アクセル開度θが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。そして、当該図3(ステップS7)の示す処理を終了する。
【0025】
図5は、車速(同図(a))と目標伝達トルク(同図(c))との関係の一例を示す。なお、同図(b)は、従来技術において設定される目標伝達トルクの例を示す。
同図(c)に示す目標伝達トルクは、前記図4の場合(同図(c))と比較してわかるように、極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)において、アクセル開度が大きくなるほど大きくなる。例えば、目標伝達トルクは、極低速領域内で速度の高い領域では、車体速の増加に対して減少割合が極力抑えられる。
【0026】
一方、前記ステップS22で車体速Vが所定値V2未満であると判定された場合、又は前記ステップS23で操舵角δが所定値δ1未満であると判定された場合に進むステップS28では、転舵角δ(<δ1)に基づいて目標伝達トルクを設定する。具体的には、転舵角δが小さくなるほど、目標伝達トルクを大きくする。また、例えば、車体速Vが所定値V2未満である場合には、該車体速Vに依らず、転舵角δを基に目標伝達トルクをある一定の所定値に設定する。そして、当該図3(ステップS7)の示す処理を終了する。
【0027】
図6は、車速(同図(a))と目標伝達トルク(同図(c))との関係の一例を示す。なお、同図(b)は、従来技術において設定される目標伝達トルクの例を示す。
同図(c)に示す目標伝達トルクは、前記図4や図5の場合(同図(c))と比較してわかるように、極々低速領域(例えば1km/h未満の車速領域)において、操舵角が小さくなるほど、予め大きい値となるように目標伝達トルクを設定する。例えば、操舵角が小さい領域では、低摩擦路面において駆動輪が初期空転しないような値として目標伝達トルクを設定し(目標伝達トルクが大きくなる傾向)、操舵角が大きい領域では、タイトコーナーブレーキング現象が発生しないような値として目標伝達トルクを設定する(目標伝達トルクが小さくなる傾向)。
【0028】
(動作)
動作は次のようになる。
トルク分配コントローラ5では、車輪速センサ11〜14により各輪の車輪速を検出し、検出した車輪速に基づいて、車体速Vを算出する(前記ステップS1→ステップS2)。そして、車体速Vが所定値V1以上で、かつ操舵角δが所定値δ1以上であれば、アクセル開度及び前後輪速度差に基づいて目標伝達トルクを設定する(前記ステップS3→ステップS4→ステップS6)。また、車体速Vが所定値V1以上で、かつ操舵角δが所定値δ1未満であれば、操舵角及びアクセル開度に基づいて目標伝達トルクを設定する(前記ステップS3→ステップS4→ステップS5)。
【0029】
また、車体速Vが所定値V1未満であれば、極低速領域にあるとして、極低速領域用の目標伝達トルクの設定を行う(前記ステップS3→ステップS7)。すなわち、4輪の車輪速のうちの最小値の車輪速に基づいて算出した車体速Vが所定値V2未満であれば、又は車体速Vが所定値V2以上であっても、操舵角δが所定値δ1未満であれば、転舵角δに基づいて目標伝達トルクを設定する(前記ステップS21→ステップS22→ステップS28又は前記ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS28)。
【0030】
そして、車体速Vが所定値V2以上であり、かつ操舵角δが所定値δ1以上であれば、車体速Vに基づいて目標伝達トルクを設定し、設定した目標伝達トルクを操舵角δに基づいて補正する(前記ステップS22→ステップS23→ステップS24→ステップS25)。さらに、アクセル開度θが所定値θ1以上であれば、アクセル開度θに基づいて目標伝達トルクを補正する(前記ステップS26→ステップS27)。
以上のように設定、さらには補正した目標伝達トルクによりトルク配分クラッチ9による締結力が制御される。すなわち、所望の4輪傾向又は2輪傾向となるように各輪の駆動力が制御される。
【0031】
(作用及び効果)
作用及び効果は次のようになる。
前述のように、車体速が極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)にある場合、車体速Vに基づいて目標伝達トルクを設定し、設定した目標伝達トルクを、舵角センサ16で検出した操舵角δに基づいて補正している(前記ステップS24、ステップS25)。具体的には、車体速Vが大きくなるほど、目標伝達トルクを小さくなるように設定し、そのように設定した目標伝達トルクをタイトコーナーブレーキング現象の発生しない範囲でできる限り大きくなるように補正している。
【0032】
これにより、車体速が大きくなるほど、目標伝達トルクを小さくすることで、発進時の加速性能向上と、タイトコーナーブレーキング現象の発生との両立を図ることができる。さらに、本発明では、舵角センサ16で検出した操舵角δに基づいて目標伝達トルクを補正して、タイトコーナーブレーキング現象の発生しない範囲でできる限り目標伝達トルクを大きくしている。これにより、転舵時発進後におけるタイトコーナーブレーキング現象の発生を確実に抑制することを実現しつつも、極低速領域での目標伝達トルクを従来技術よりも大きい値に設定することができるので、転舵発進する路面が凍結路面等の低摩擦路面であっても、駆動輪の初期空転を抑えて、発進時加速性能を向上させることができる。
【0033】
また、前述のように、車体速が極々低速領域(例えば1km/h未満の車速領域)にある場合、舵角センサ16で検出した操舵角δに基づいて目標伝達トルクを設定している(前記ステップS28)。具体的には、転舵角δが小さくなるほど、目標伝達トルクを大きくしている。
これにより、転舵角δが小さくなっている状態で発進するとき、すなわち、より直進に近い状態で発進するときには、目標伝達トルクが大きくなり、転舵角δが大きくなっている状態で発進するとき、すなわち、転舵状態で発進するときには、目標伝達トルクが小さくなる。このようにすることで、直進発進時には、大きい値に設定した目標伝達トルクにより、円滑に発進でき、転舵発進時には、小さい値に設定した目標伝達トルクにより、タイトコーナーブレーキング現象の発生を抑制できる。
【0034】
なお、低速領域の場合と異なり、極々低速領域では、車体速Vに依らず、目標伝達トルクを一定値にしている。すなわち、極々低速領域の方が、目標伝達トルクが大きくなっている。これは、極々低速領域は、タイトコーナーブレーキング現象を吸収し易い領域であり、極低速領域は、タイトコーナーブレーキング現象の吸収が困難な領域になるからである。
また、前述のように、車体速が極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)にある場合、アクセル開度センサ15で検出したアクセル開度θに基づいて目標伝達トルクをさらに補正している(前記ステップS27)。具体的には、アクセル開度θが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるような補正をしている。
【0035】
ここで、極低速領域では、駆動輪の駆動トルクが大きくなると、もともとタイトコーナーブレーキング現象の発生がし難くなる。その一方で、駆動トルクが大きいときに目標伝達トルクが小さいままだと、駆動輪の初期空転が顕著になり、発進時加速性能が悪くなる。このようなことから、アクセル開度θが大きくなるほど、目標伝達トルクを大きくすることで、転舵発進直後などの極低速領域で、タイトコーナーブレーキング現象の発生を抑制しつつも、発進時加速性能を向上させることができる。
【0036】
なお、前記第1の実施形態を次のような構成として実現することもできる。
すなわち、前記第1の実施形態では、通常速度域と極低速領域との境界を示す所定値V1を2.75km/hとし、極低速領域と極々低速領域との境界を示す所定値V2を1km/hとしている。しかし、所定値V1,V2は他の値とすることもでき、例えば実験値や経験値を基に所定値V1,V2を設定する。
【0037】
なお、前記第1の実施形態の説明において、トルク配分クラッチ9は、エンジントルクにより前輪及び後輪を駆動する駆動系に配置され、目標配分値に基づいてエンジントルクを前輪と後輪とに分配するトルク分配手段を実現しており、トルク配分コントローラ10のステップS24の処理は、車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前記トルク分配手段による前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように前記目標配分値を小さい値に設定する目標配分値設定手段を実現しており、舵角センサ16は、操舵角を検出する操舵角検出手段を実現しており、トルク配分コントローラ10のステップS27の処理は、前記操舵角検出手段が検出した操舵角が小さくなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をする補正手段を実現している。
【0038】
また、トルク配分コントローラ10のステップS28の処理は、操舵角検出手段が検出した操舵角が小さくなるほど、目標配分値設定手段が車体速が所定の速度領域内の最小領域にある場合に設定した目標配分値を大きくする補正をする補正手段を実現している。
また、アクセル開度センサ15は、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段を実現しており、トルク配分コントローラ10のステップS26及びステップS27の処理は、前記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が高くなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をする補正手段を実現している。
【0039】
また、前記第1の実施形態では、エンジントルクを目標配分値に基づいて前輪と後輪とに分配する四輪駆動車のトルク配分制御装置において、車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように前記目標配分値を小さい値に設定するとともに、操舵角に基づいて前記設定した目標配分値を増加補正して、前記目標配分値をタイトコーナーブレーキング現象が発生しない範囲内で変化させることを実現している。
【0040】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態を説明する。
(構成)
図7は、本発明を適用した第2の実施形態の車両の構成を示す。
図7に示すように、第2の実施形態の車両の基本的構成は、前記図1に示した第1の実施形態の車両の構成と同一であるが、第2の実施形態の車両では、舵角センサ16に換えて、走行路の路面摩擦係数を検出する路面摩擦センサ17を備えている。以下の説明では、第2の実施形態の車両において、前記第1の実施形態の車両の構成と同一符号を付してある構成については、特に言及しない限りは同一である。
第2の実施形態でも、トルク分配コントローラ5による目標伝達トルクの設定処理に特徴がある。その目標伝達トルクの設定処理については、前記第1の実施形態と同様、前記図2に示す処理手順となる。そして、第2の実施形態は、前記ステップS7の極低速領域の目標伝達トルクの設定に特徴がある。
【0041】
図8は、その極低速領域の目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示す。
図8に示す第2の実施形態における処理手順の基本的な部分は、前記図3に示した第1の実施形態における処理手順と同一であるが、第2の実施形態における処理では、特に、前記ステップS27の後に、ステップS31及びステップS32を設け、さらに、ステップS28の後に、ステップS33を設けている。以下の説明では、第2の実施形態における処理において、前記第1の実施形態における処理と同一符号を付してあるものについては、特に言及しない限りは同一である。
【0042】
図8に示すように、ステップS31では、路面摩擦センサ17により検出した路面摩擦係数μが所定値μ1以下か否かを判定する。例えば、車両加減速時の前後加速度から路面摩擦係数μを算出する。ここで、路面摩擦係数μが所定値μ1以下の場合(μ≦μ1)、ステップS32に進み、路面摩擦係数μが所定値μ1よりも大きい場合(μ>μ1)、当該図8(ステップS7)に示す処理を終了する。
【0043】
ステップS32では、目標伝達トルクについて、路面摩擦係数に基づく補正を行う。具体的には、路面摩擦係数μに基づいて補正ゲインを設定し、設定した補正ゲインと、転舵角δに基づいて補正した目標伝達トルク(前記ステップS25)との積により、目標伝達トルクを設定する。このようにして、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。そして、当該図8(ステップS7)の示す処理を終了する。
【0044】
また、ステップS33では、前記ステップS28で転舵角δに基づいて設定した目標伝達トルクを、路面摩擦係数μに基づいて補正する。具体的には、前記ステップS32と同様に、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。そして、当該図8(ステップS7)の示す処理を終了する。
図9は、車速(同図(a))と目標伝達トルク(同図(c))との関係の一例を示す。なお、同図(b)は、従来技術において設定される目標伝達トルクの例を示す。
同図(c)に示す目標伝達トルクは、前記図3の場合と比較してわかるように、極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)において、路面摩擦係数μが小さくなるほど大きくなる。
【0045】
(動作)
以上のように、特に第2の実施形態では、極低速領域用の目標伝達トルクの設定において(前記ステップS7)、路面摩擦係数μが所定値μ1以下であれば、路面摩擦係数μに基づいて目標伝達トルクを補正する(前記ステップS31→ステップS32)。具体的には、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。
【0046】
また、4輪の車輪速のうちの最小値の車輪速に基づいて算出した車体速Vが所定値V2未満であれば、又は車体速Vが所定値V2以上であっても、操舵角δが所定値δ1未満であれば、転舵角δに基づいて設定した目標伝達トルクを、路面摩擦係数μに基づいて補正する(前記ステップS21→ステップS22→ステップS28→ステップS33又は前記ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS28→ステップS33)。具体的には、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。
【0047】
(作用及び効果)
これにより、車体速が極々低速領域(例えば1km/h未満の車速領域)又は極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)にある場合、路面摩擦係数μに基づいて目標伝達トルクを補正している(前記ステップS32又はステップS33)。具体的には、いずれの車速領域でも、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるような補正をしている。
ここで、路面摩擦係数μが小さくなると、もともとタイトコーナーブレーキング現象の発生がし難くなる。このようなことから、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクを大きくすることで、タイトコーナーブレーキング現象の発生を抑制しつつ、低摩擦路面における発進時加速性能を向上させることができる。
【0048】
また、車体速が極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)で転舵状態にある場合には、路面摩擦係数μに基づく目標伝達トルクの補正を、路面摩擦係数μが所定値μ1以下であることを条件に実施している。これにより、転舵発進していることでタイトコーナーブレーキング現象が発生する可能性が高くなっている状況下で、路面摩擦係数μが大きい路面で目標伝達トルクを大きくしてしまいタイトコーナーブレーキング現象が発生する可能性をさらに高めてしまうことを防止しつつ、低摩擦路面における発進時加速性能を向上させることができる。
【0049】
なお、前記第2の実施形態の説明において、路面摩擦センサ17は、走行路の路面摩擦係数を検出する路面摩擦係数検出手段を実現しており、トルク配分コントローラ10のステップS31及びステップS32又はステップS33の処理は、前記路面摩擦係数検出手段が検出した路面摩擦係数が小さくなるほど、目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をする補正手段を実現している。
【0050】
(第3の実施形態)
次に第3の実施形態を説明する。
(構成)
図10は、本発明を適用した第3の実施形態の車両の構成を示す。
図10に示すように、第3の実施形態の車両の基本的構成は、前記図1に示した第1の実施形態の車両の構成と同一であるが、第3の実施形態の車両では、舵角センサ16に換えて、走行路の道路勾配を検出する勾配センサ18を備えている。以下の説明では、第3の実施形態の車両において、前記第1の実施形態の車両の構成と同一符号を付してある構成については、特に言及しない限りは同一である。
第3の実施形態でも、トルク分配コントローラ5による目標伝達トルクの設定処理に特徴がある。その目標伝達トルクの設定処理については、前記第1の実施形態と同様、前記図2に示す処理手順となる。そして、第3の実施形態は、前記ステップS7の極低速領域の目標伝達トルクの設定に特徴がある。
【0051】
図11は、その極低速領域の目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示す。
図11に示す第3の実施形態における処理手順の基本的な部分は、前記図3に示した第1の実施形態における処理手順と同一であるが、第3の実施形態における処理では、特に、前記ステップS27の後に、ステップS41及びステップS42を設け、さらに、ステップS28の後に、ステップS43を設けている。以下の説明では、第3の実施形態における処理において、前記第1の実施形態における処理と同一符号を付してあるものについては、特に言及しない限りは同一である。
【0052】
図11に示すように、ステップS41では、勾配センサ18により検出した道路勾配α(°又は傾斜度合い)が所定値α1以上か否かを判定する。ここで、所定値α1は、上り勾配側の所定の角度(傾斜度合い)に相当する。このステップS41において、道路勾配αが所定値α1以下と判定した場合(α≧α1)、ステップS42に進み、道路勾配αが所定値α1よりも大きいと判定した場合(α<α1)、当該図11(ステップS7)に示す処理を終了する。
【0053】
ステップS42では、目標伝達トルクについて、道路勾配α(上り勾配)に基づく補正を行う。具体的には、道路勾配αに基づいて補正ゲインを設定し、設定した補正ゲインと、転舵角δに基づいて補正した目標伝達トルク(前記ステップS25)との積により、目標伝達トルクを設定する。このようにして、道路勾配αが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。そして、当該図11(ステップS7)の示す処理を終了する。
【0054】
また、ステップS43では、前記ステップS28で転舵角δに基づいて設定した目標伝達トルクを、道路勾配αに基づいて補正する。具体的には、前記ステップS42と同様に、道路勾配α(上り勾配)が大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。そして、当該図11(ステップS7)の示す処理を終了する。
図12は、車速(同図(a))と目標伝達トルク(同図(c))との関係の一例を示す。なお、同図(b)は、従来技術において設定される目標伝達トルクの例を示す。
同図(c)に示す目標伝達トルクは、前記図3の場合と比較してわかるように、極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)において、道路勾配αが大きくなるほど大きくなる。
【0055】
(動作)
以上のように、特に第3の実施形態では、極低速領域用の目標伝達トルクの設定において(前記ステップS7)、道路勾配αが所定値α1以上であれば、道路勾配αに基づいて目標伝達トルクを補正する(前記ステップS41→ステップS42)。具体的には、道路勾配αが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。
また、4輪の車輪速のうちの最小値の車輪速に基づいて算出した車体速Vが所定値V2未満であれば、又は車体速Vが所定値V2以上であっても、操舵角δが所定値δ1未満であれば、転舵角δに基づいて設定した目標伝達トルクを、道路勾配αに基づいて補正する(前記ステップS21→ステップS22→ステップS28→ステップS43又は前記ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS28→ステップS43)。具体的には、道路勾配αが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。
【0056】
(作用及び効果)
これにより、車体速が極々低速領域(例えば1km/h未満の車速領域)又は極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)にある場合、道路勾配αに基づいて目標伝達トルクを補正している(前記ステップS42又はステップS43)。具体的には、道路勾配αが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるような補正をしている。
【0057】
ここで、道路勾配α(上り勾配)が大きくなると、後輪側に車重が移動するため、上り側の車輪である前輪では路面との摩擦係数が減少し、下り側の車輪である後輪では路面との摩擦係数が増加することで、もともとタイトコーナーブレーキング現象は発生し難くい状況になる。このようなことから、道路勾配αが大きくなるほど、目標伝達トルクを大きくしても、タイトコーナーブレーキング現象の発生が抑制され、その一方で、目標伝達トルクが大きくなることで、発進時加速性能を向上させることができる。
【0058】
また、車体速が極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)で転舵状態にある場合には、道路勾配αに基づく目標伝達トルクの補正を、道路勾配αが所定値α1以上であることを条件に実施している。これにより、転舵発進していることでタイトコーナーブレーキング現象が発生する可能性が高くなっている状況下で、道路勾配αが小さい道路で目標伝達トルクを大きくしてしまいタイトコーナーブレーキング現象が発生する可能性をさらに高めてしまうことを防止しつつ、発進時加速性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 エンジン、2 自動変速機、3 フロントディファレンシャル、4 リアディファレンシャル、5〜8 車輪、9 トルク配分クラッチ、10 トルク配分コントローラ、11〜14 車輪速センサ、15 アクセル開度センサ、16 舵角センサ、17 路面摩擦センサ、18 勾配センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後輪のトルク配分を制御する四輪駆動車のトルク配分制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジントルクを前輪と後輪とに分配する駆動系に設けられたトルク配分用アクチュエータと、車両状態に応じた前後輪トルクとなるように前後輪の一方への目標伝達トルクを演算し、演算した目標伝達トルクを得る指令を前記トルク配分用アクチュエータに対し指令するトルク配分コントローラと、を備えた4輪駆動車のトルク配分制御装置において、車体速を検出する車体速検出手段を設け、前記トルク配分コントローラは、車体速が所定値以下の極低速領域での目標伝達トルクを、車体速が上昇するほど減少させるように設定している。
【0003】
これにより、車体速が所定値以下の極低速領域で、車体速が上昇するほど目標伝達トルクを低下させることで、発進時の加速性能向上と、タイトコーナーブレーキング現象の発生との両立を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−314689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の技術では、車両の発進状態に関係なく、極低速領域内では車体速の上昇に応じて一律に目標伝達トルクを減少させている。すなわち、極低速領域内で車体速の上昇に応じて目標伝達トルクを減少させることとしつつも、目標伝達トルクが大きければ、やはりタイトコーナーブレーキング現象が発生しまう可能性が残るということで、目標伝達トルクの設定を十分に制限し、車体速の上昇に応じて一律に目標伝達トルクを低下させていると言える。
【0006】
これにより、前記特許文献1の技術のままでは、タイトコーナーブレーキング現象が発生し難い発進状態、例えば直進状態(操舵していない状態)でも、車体速が大きければ目標伝達トルクを小さい値に設定するため、発進時加速が不必要に制限されてしまうといった課題がある。例えば、路面が凍結路面等の低摩擦路面では、それが顕著になる。
本発明の課題は、タイトコーナーブレーキング現象を効果的に抑制しつつ、発進時加速性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1記載の本発明に係る四輪駆動車のトルク配分制御装置は、エンジントルクにより前輪及び後輪を駆動する駆動系に配置され、目標配分値に基づいてエンジントルクを前輪と後輪とに分配するトルク分配手段と、車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前記トルク分配手段による前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように前記目標配分値を小さい値に設定する目標配分値設定手段と、前記車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合にも操舵角を検出する操舵角検出手段と、前記操舵角検出手段が検出した操舵角が小さくなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をする補正手段と、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、を備え、前記目標配分値設定手段は、車体速が前記所定の速度領域内で速度が低い極々低速領域にある場合、該車体速に依らず、前記目標配分値を一定値に設定し、車体速が前記所定の速度領域内で速度が高い極低速領域にある場合、該車体速の増加に対する前記目標配分値の減少割合が多くなるように該目標配分値を設定することで、車体速が大きくなるほど目標配分値が大となる方向に凸となるようにし、前記補正手段は、前記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が高くなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をするようにした。
【0008】
また、請求項2記載の本発明に係る四輪駆動車のトルク配分制御装置は、エンジントルクを目標配分値に基づいて前輪と後輪とに分配する四輪駆動車のトルク配分制御装置において、車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように前記目標配分値を小さい値に設定するとともに、そのときの操舵角に基づいて前記設定した目標配分値を増加補正して、前記目標配分値をタイトコーナーブレーキング現象が発生しない範囲内で変化させるものであって、車体速が前記所定の速度領域内で速度が低い極々低速領域にある場合、該車体速に依らず、前記目標配分値を一定値に設定し、車体速が前記所定の速度領域内で速度が高い極低速領域にある場合、該車体速の増加に対する前記目標配分値の減少割合が多くなるように該目標配分値を設定することで、車体速が大きくなるほど目標配分値が大となる方向に凸となるようにするとともに、アクセル開度が高くなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をするようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アクセル開度に基づいて、車体速に基づいて設定した目標配分値を大きくする補正をすることで、タイトコーナーブレーキング現象を効果的に抑制しつつ、発進時加速性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態の四輪駆動車の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態におけるトルク分配コントローラによる目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態におけるトルク分配コントローラによる極低速領域用の目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】車速と目標伝達トルクとの関係を示す図であり、極低速領域の目標伝達トルクを操舵角δに基づいて補正したものを示す図である。
【図5】車速と目標伝達トルクとの関係を示す図であり、目標伝達トルクをアクセル開度θに基づいて補正したものを示す図である。
【図6】車速と目標伝達トルクとの関係を示す図であり、極々低速領域の目標伝達トルクを操舵角δに基づいて補正したものを示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の四輪駆動車の構成を示すブロック図である。
【図8】第2の実施形態におけるトルク分配コントローラによる極低速領域用の目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】車速と目標伝達トルクとの関係を示す図であり、目標伝達トルクを路面摩擦係数μに基づいて補正したものを示す図である。
【図10】本発明の第3の実施形態の四輪駆動車の構成を示すブロック図である。
【図11】第3の実施形態におけるトルク分配コントローラによる極低速領域用の目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】車速と目標伝達トルクとの関係を示す図であり、目標伝達トルクを道路勾配αに基づいて補正したものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態を説明する。
(構成)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態の四輪駆動車の構成を示す。
図1に示すように、1はエンジンであり、2は自動変速機であり、3はフロントディファレンシャルであり、4はリアディファレンシャルであり、5は右前輪であり、6は左前輪であり、7は右後輪であり、8は左後輪であり、9はトルク配分クラッチ(トルク配分アクチュエータ)である。この車両は、トルク配分コントローラ10、右前車輪速センサ11、左前車輪速センサ12、右後車輪速センサ13、左後車輪速センサ14、アクセル開度センサ15及び舵角センサ16を備えている。
【0012】
この構成において、左右前輪5,6へは、エンジン1からのエンジン駆動力が直接伝達され、左右後輪7,8へはトルク配分クラッチ9を介してエンジン駆動力が伝達される。すなわち、トルク配分クラッチ9の締結解放状態であれば、前輪:後輪=100:0のトルク配分比となり、トルク配分クラッチ9がエンジントルクの1/2トルク以上にて締結されていれば、前輪:後輪=50:50のトルク配分比となる。このようなトルク配分比が、トルク配分コントローラ10からの目標伝達トルク(指令値)により制御されている。例えば、トルク配分クラッチ9は、電磁多板クラッチや油圧多板クラッチ等が適用されて構成されている。
【0013】
トルク配分コントローラ10は、各車輪速センサ11〜14、アクセル開度センサ15及び舵角センサ16からの検出信号に基づいて目標伝達トルクを設定、さらに、場合によっては補正をし、そのように設定等した目標伝達トルクを指令値等としてトルク配分クラッチ9に出力する。
ここで、目標伝達トルクが大きくなるほど、トルク配分クラッチ9の締結力が大きくなり、左右前輪11,12と左右後輪13,14との差動が制限され、すなわち、より4輪駆動傾向が強くなり、目標伝達トルクが小さくなるほど、トルク配分クラッチ9の締結力が小さくなり、左右前輪11,12と左右後輪13,14との差動が許容され、すなわち、より2輪駆動(本実施形態では前輪駆動)傾向が強くなる。
【0014】
図2は、トルク分配コントローラ5による目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示す。
図2に示すように、処理を開始すると、ステップS1において、車輪速センサ11〜14により各輪の車輪速を検出する。
続いてステップS2において、前記ステップS1で検出した車輪速に基づいて、車体速Vを算出する。例えば、4輪の各輪の車輪速をセレクトロー処理して、最小値の車輪速を選択し、その車輪速に基づいて車体速Vを算出する。
【0015】
なお、全輪の車輪速に基づいて、車体速Vを算出(全輪の車輪速の平均値として車体速Vを算出)することもでき、予め決めた特定の車輪(例えば駆動輪)の車輪速に基づいて、車体速Vを算出することもできる。
続いてステップS3において、車体速が所定値(例えば2.75km/h)以上か否かを判定する。ここで、車体速Vが所定値V1以上の場合(V≧V1)、通常制御域(通常速度域)にあるとして、ステップS4に進み、車体速Vが所定値V1未満の場合(V<V1)、ステップS7に進む。
ステップS4では、舵角センサ16から得た操舵角δが所定値δ1(例えば180°)以上か否かを判定する。ここで、操舵角δが所定値δ1以上の場合(δ≧δ1)、ステップS5に進み、操舵角δが所定値δ1未満の場合(δ<δ1)、ステップS6に進む。
【0016】
ステップS5では、アクセル開度及び前後輪速度差に基づいて目標伝達トルクを設定する。例えば、前記特許文献1に開示されているように、車輪速センサ11〜14により得た各輪の車輪速を基に、前後輪速度差が大きくなるほど、目標伝達トルクを大きい値に設定する、すなわち、トルク配分クラッチ9の締結力を大きくして、左右前輪11,12と左右後輪13,14との差動を制限する。また、アクセル開度センサ15から得たアクセル開度θが大きくなるほど、目標伝達トルクを大きい値に設定する。これにより、発進時や加速時に4輪に分配するトルク配分により駆動スリップの発生を未然に抑えて、加速性能を向上させることができる。そして、当該図2に示す処理を終了する。
【0017】
ステップS6では、操舵角及びアクセル開度に基づいて目標伝達トルクを設定する。例えば、舵角センサ16により得た操舵角δが大きくなるほど、目標伝達トルクを小さい値に設定する、すなわち、トルク配分クラッチ9の締結力を小さくして、左右前輪11,12と左右後輪13,14との差動を許容する。また、アクセル開度センサ15から得たアクセル開度θが大きくなるほど、目標伝達トルクを大きい値に設定する。
一方、前記ステップS3で車体速が所定値未満であるとして進むステップS7では、極低速領域の目標伝達トルクの設定をする。
【0018】
図3は、極低速領域用の目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示す。
図3に示すように、処理を開始すると、先ずステップS21において、4輪の各輪の車輪速をセレクトロー処理して、最小値の車輪速を選択し、その車輪速に基づいて車体速Vを算出する。
なお、全輪の車輪速に基づいて、車体速Vを算出(全輪の車輪速の平均値として車体速Vを算出)することもでき、予め決めた特定の車輪(例えば駆動輪)の車輪速に基づいて、車体速Vを算出することもできる。
【0019】
続いてステップS22において、前記ステップS21で算出した車体速Vが所定値V2(<V1、例えば1km/h)以上か否かを判定する。ここで、車体速Vが所定値V2以上の場合(V1>V≧V2)、車体速が極低速領域(極低速領域における高速領域、以下、単に極低速領域という。)にあるとして、ステップS23に進み、車体速Vが所定値未満V2の場合(V<V2)、車体速が極低速領域(極低速領域における低速領域、以下、極々低速領域という。)にあるとして、ステップS28に進む。
【0020】
ステップS23では、舵角センサ16から得た操舵角δが所定値δ1(例えば180°)以上か否かを判定する。ここで、操舵角δが所定値δ1以上の場合(δ≧δ1)、ステップS24に進み、操舵角δが所定値δ1未満の場合(δ<δ1)、ステップS28に進む。
ステップS24では、車体速Vに基づいて目標伝達トルクを設定する。具体的には、車体速Vが大きくなるほど、目標伝達トルクを小さくする。
【0021】
続いてステップS25において、前記ステップS24で設定した目標伝達トルクを操舵角δ(≧δ1)に基づいて補正する。具体的には、タイトコーナーブレーキング現象の発生しない範囲でできる限り目標伝達トルクが大きくなるように補正する。
図4は、車速(同図(a))と目標伝達トルク(同図(c))との関係の一例を示す。なお、同図(b)は、従来技術において設定される目標伝達トルクの例を示す。
【0022】
同図(a)及び(c)に示すように、極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)において、目標伝達トルクは、全般的な傾向として、車体速が大きくなるほど、小さくなる。そして、詳細には、目標伝達トルクは、極低速領域内で速度が低い領域では、車体速の増加に対して減少割合は少なく、極低速領域内で速度の高い領域では、車体速の増加に対して減少割合は多くなる。すなわち、極低速領域において、目標伝達トルクを、車体速が大きくなるほど、該目標伝達トルクが大となる方向に凸となる2次関数となるように変化させる。そして、操舵角δが小さくなるほど、タイトコーナーブレーキング現象の発生しない範囲でできる限り、このような傾向を強くしていく。
【0023】
また、例えば、極々低速領域での目標伝達トルクと通常制御域での目標伝達トルクの間を多項式で補完して、極低速領域の目標伝達トルクを設定したり、極低速領域での目標伝達トルクを転舵角と車体速により設定したりする。また、例えば、目標伝達トルクの値は、経験値、実験値又は車両諸元を基に決定する。
続いてステップS26において、アクセル開度θが所定値θ1(例えば5%)以上か否かを判定する。ここで、アクセル開度θが所定値θ1以上の場合(θ≧θ1)、ステップS27に進み、アクセル開度センサ15から得たアクセル開度θが所定値θ1未満の場合(θ<θ1)、当該図3(ステップS7)の示す処理を終了する。
【0024】
ステップS27では、アクセル開度θ(≧θ1)に基づいて目標伝達トルクを補正する。具体的には、アクセル開度θに基づいて補正ゲインを設定し、設定した補正ゲインと、前記ステップS25で転舵角δに基づいて補正した目標伝達トルクとの積により、目標伝達トルクを設定する。このようにして、アクセル開度θが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。そして、当該図3(ステップS7)の示す処理を終了する。
【0025】
図5は、車速(同図(a))と目標伝達トルク(同図(c))との関係の一例を示す。なお、同図(b)は、従来技術において設定される目標伝達トルクの例を示す。
同図(c)に示す目標伝達トルクは、前記図4の場合(同図(c))と比較してわかるように、極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)において、アクセル開度が大きくなるほど大きくなる。例えば、目標伝達トルクは、極低速領域内で速度の高い領域では、車体速の増加に対して減少割合が極力抑えられる。
【0026】
一方、前記ステップS22で車体速Vが所定値V2未満であると判定された場合、又は前記ステップS23で操舵角δが所定値δ1未満であると判定された場合に進むステップS28では、転舵角δ(<δ1)に基づいて目標伝達トルクを設定する。具体的には、転舵角δが小さくなるほど、目標伝達トルクを大きくする。また、例えば、車体速Vが所定値V2未満である場合には、該車体速Vに依らず、転舵角δを基に目標伝達トルクをある一定の所定値に設定する。そして、当該図3(ステップS7)の示す処理を終了する。
【0027】
図6は、車速(同図(a))と目標伝達トルク(同図(c))との関係の一例を示す。なお、同図(b)は、従来技術において設定される目標伝達トルクの例を示す。
同図(c)に示す目標伝達トルクは、前記図4や図5の場合(同図(c))と比較してわかるように、極々低速領域(例えば1km/h未満の車速領域)において、操舵角が小さくなるほど、予め大きい値となるように目標伝達トルクを設定する。例えば、操舵角が小さい領域では、低摩擦路面において駆動輪が初期空転しないような値として目標伝達トルクを設定し(目標伝達トルクが大きくなる傾向)、操舵角が大きい領域では、タイトコーナーブレーキング現象が発生しないような値として目標伝達トルクを設定する(目標伝達トルクが小さくなる傾向)。
【0028】
(動作)
動作は次のようになる。
トルク分配コントローラ5では、車輪速センサ11〜14により各輪の車輪速を検出し、検出した車輪速に基づいて、車体速Vを算出する(前記ステップS1→ステップS2)。そして、車体速Vが所定値V1以上で、かつ操舵角δが所定値δ1以上であれば、アクセル開度及び前後輪速度差に基づいて目標伝達トルクを設定する(前記ステップS3→ステップS4→ステップS6)。また、車体速Vが所定値V1以上で、かつ操舵角δが所定値δ1未満であれば、操舵角及びアクセル開度に基づいて目標伝達トルクを設定する(前記ステップS3→ステップS4→ステップS5)。
【0029】
また、車体速Vが所定値V1未満であれば、極低速領域にあるとして、極低速領域用の目標伝達トルクの設定を行う(前記ステップS3→ステップS7)。すなわち、4輪の車輪速のうちの最小値の車輪速に基づいて算出した車体速Vが所定値V2未満であれば、又は車体速Vが所定値V2以上であっても、操舵角δが所定値δ1未満であれば、転舵角δに基づいて目標伝達トルクを設定する(前記ステップS21→ステップS22→ステップS28又は前記ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS28)。
【0030】
そして、車体速Vが所定値V2以上であり、かつ操舵角δが所定値δ1以上であれば、車体速Vに基づいて目標伝達トルクを設定し、設定した目標伝達トルクを操舵角δに基づいて補正する(前記ステップS22→ステップS23→ステップS24→ステップS25)。さらに、アクセル開度θが所定値θ1以上であれば、アクセル開度θに基づいて目標伝達トルクを補正する(前記ステップS26→ステップS27)。
以上のように設定、さらには補正した目標伝達トルクによりトルク配分クラッチ9による締結力が制御される。すなわち、所望の4輪傾向又は2輪傾向となるように各輪の駆動力が制御される。
【0031】
(作用及び効果)
作用及び効果は次のようになる。
前述のように、車体速が極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)にある場合、車体速Vに基づいて目標伝達トルクを設定し、設定した目標伝達トルクを、舵角センサ16で検出した操舵角δに基づいて補正している(前記ステップS24、ステップS25)。具体的には、車体速Vが大きくなるほど、目標伝達トルクを小さくなるように設定し、そのように設定した目標伝達トルクをタイトコーナーブレーキング現象の発生しない範囲でできる限り大きくなるように補正している。
【0032】
これにより、車体速が大きくなるほど、目標伝達トルクを小さくすることで、発進時の加速性能向上と、タイトコーナーブレーキング現象の発生との両立を図ることができる。さらに、本発明では、舵角センサ16で検出した操舵角δに基づいて目標伝達トルクを補正して、タイトコーナーブレーキング現象の発生しない範囲でできる限り目標伝達トルクを大きくしている。これにより、転舵時発進後におけるタイトコーナーブレーキング現象の発生を確実に抑制することを実現しつつも、極低速領域での目標伝達トルクを従来技術よりも大きい値に設定することができるので、転舵発進する路面が凍結路面等の低摩擦路面であっても、駆動輪の初期空転を抑えて、発進時加速性能を向上させることができる。
【0033】
また、前述のように、車体速が極々低速領域(例えば1km/h未満の車速領域)にある場合、舵角センサ16で検出した操舵角δに基づいて目標伝達トルクを設定している(前記ステップS28)。具体的には、転舵角δが小さくなるほど、目標伝達トルクを大きくしている。
これにより、転舵角δが小さくなっている状態で発進するとき、すなわち、より直進に近い状態で発進するときには、目標伝達トルクが大きくなり、転舵角δが大きくなっている状態で発進するとき、すなわち、転舵状態で発進するときには、目標伝達トルクが小さくなる。このようにすることで、直進発進時には、大きい値に設定した目標伝達トルクにより、円滑に発進でき、転舵発進時には、小さい値に設定した目標伝達トルクにより、タイトコーナーブレーキング現象の発生を抑制できる。
【0034】
なお、低速領域の場合と異なり、極々低速領域では、車体速Vに依らず、目標伝達トルクを一定値にしている。すなわち、極々低速領域の方が、目標伝達トルクが大きくなっている。これは、極々低速領域は、タイトコーナーブレーキング現象を吸収し易い領域であり、極低速領域は、タイトコーナーブレーキング現象の吸収が困難な領域になるからである。
また、前述のように、車体速が極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)にある場合、アクセル開度センサ15で検出したアクセル開度θに基づいて目標伝達トルクをさらに補正している(前記ステップS27)。具体的には、アクセル開度θが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるような補正をしている。
【0035】
ここで、極低速領域では、駆動輪の駆動トルクが大きくなると、もともとタイトコーナーブレーキング現象の発生がし難くなる。その一方で、駆動トルクが大きいときに目標伝達トルクが小さいままだと、駆動輪の初期空転が顕著になり、発進時加速性能が悪くなる。このようなことから、アクセル開度θが大きくなるほど、目標伝達トルクを大きくすることで、転舵発進直後などの極低速領域で、タイトコーナーブレーキング現象の発生を抑制しつつも、発進時加速性能を向上させることができる。
【0036】
なお、前記第1の実施形態を次のような構成として実現することもできる。
すなわち、前記第1の実施形態では、通常速度域と極低速領域との境界を示す所定値V1を2.75km/hとし、極低速領域と極々低速領域との境界を示す所定値V2を1km/hとしている。しかし、所定値V1,V2は他の値とすることもでき、例えば実験値や経験値を基に所定値V1,V2を設定する。
【0037】
なお、前記第1の実施形態の説明において、トルク配分クラッチ9は、エンジントルクにより前輪及び後輪を駆動する駆動系に配置され、目標配分値に基づいてエンジントルクを前輪と後輪とに分配するトルク分配手段を実現しており、トルク配分コントローラ10のステップS24の処理は、車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前記トルク分配手段による前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように前記目標配分値を小さい値に設定する目標配分値設定手段を実現しており、舵角センサ16は、操舵角を検出する操舵角検出手段を実現しており、トルク配分コントローラ10のステップS27の処理は、前記操舵角検出手段が検出した操舵角が小さくなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をする補正手段を実現している。
【0038】
また、トルク配分コントローラ10のステップS28の処理は、操舵角検出手段が検出した操舵角が小さくなるほど、目標配分値設定手段が車体速が所定の速度領域内の最小領域にある場合に設定した目標配分値を大きくする補正をする補正手段を実現している。
また、アクセル開度センサ15は、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段を実現しており、トルク配分コントローラ10のステップS26及びステップS27の処理は、前記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が高くなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をする補正手段を実現している。
【0039】
また、前記第1の実施形態では、エンジントルクを目標配分値に基づいて前輪と後輪とに分配する四輪駆動車のトルク配分制御装置において、車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように前記目標配分値を小さい値に設定するとともに、操舵角に基づいて前記設定した目標配分値を増加補正して、前記目標配分値をタイトコーナーブレーキング現象が発生しない範囲内で変化させることを実現している。
【0040】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態を説明する。
(構成)
図7は、本発明を適用した第2の実施形態の車両の構成を示す。
図7に示すように、第2の実施形態の車両の基本的構成は、前記図1に示した第1の実施形態の車両の構成と同一であるが、第2の実施形態の車両では、舵角センサ16に換えて、走行路の路面摩擦係数を検出する路面摩擦センサ17を備えている。以下の説明では、第2の実施形態の車両において、前記第1の実施形態の車両の構成と同一符号を付してある構成については、特に言及しない限りは同一である。
第2の実施形態でも、トルク分配コントローラ5による目標伝達トルクの設定処理に特徴がある。その目標伝達トルクの設定処理については、前記第1の実施形態と同様、前記図2に示す処理手順となる。そして、第2の実施形態は、前記ステップS7の極低速領域の目標伝達トルクの設定に特徴がある。
【0041】
図8は、その極低速領域の目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示す。
図8に示す第2の実施形態における処理手順の基本的な部分は、前記図3に示した第1の実施形態における処理手順と同一であるが、第2の実施形態における処理では、特に、前記ステップS27の後に、ステップS31及びステップS32を設け、さらに、ステップS28の後に、ステップS33を設けている。以下の説明では、第2の実施形態における処理において、前記第1の実施形態における処理と同一符号を付してあるものについては、特に言及しない限りは同一である。
【0042】
図8に示すように、ステップS31では、路面摩擦センサ17により検出した路面摩擦係数μが所定値μ1以下か否かを判定する。例えば、車両加減速時の前後加速度から路面摩擦係数μを算出する。ここで、路面摩擦係数μが所定値μ1以下の場合(μ≦μ1)、ステップS32に進み、路面摩擦係数μが所定値μ1よりも大きい場合(μ>μ1)、当該図8(ステップS7)に示す処理を終了する。
【0043】
ステップS32では、目標伝達トルクについて、路面摩擦係数に基づく補正を行う。具体的には、路面摩擦係数μに基づいて補正ゲインを設定し、設定した補正ゲインと、転舵角δに基づいて補正した目標伝達トルク(前記ステップS25)との積により、目標伝達トルクを設定する。このようにして、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。そして、当該図8(ステップS7)の示す処理を終了する。
【0044】
また、ステップS33では、前記ステップS28で転舵角δに基づいて設定した目標伝達トルクを、路面摩擦係数μに基づいて補正する。具体的には、前記ステップS32と同様に、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。そして、当該図8(ステップS7)の示す処理を終了する。
図9は、車速(同図(a))と目標伝達トルク(同図(c))との関係の一例を示す。なお、同図(b)は、従来技術において設定される目標伝達トルクの例を示す。
同図(c)に示す目標伝達トルクは、前記図3の場合と比較してわかるように、極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)において、路面摩擦係数μが小さくなるほど大きくなる。
【0045】
(動作)
以上のように、特に第2の実施形態では、極低速領域用の目標伝達トルクの設定において(前記ステップS7)、路面摩擦係数μが所定値μ1以下であれば、路面摩擦係数μに基づいて目標伝達トルクを補正する(前記ステップS31→ステップS32)。具体的には、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。
【0046】
また、4輪の車輪速のうちの最小値の車輪速に基づいて算出した車体速Vが所定値V2未満であれば、又は車体速Vが所定値V2以上であっても、操舵角δが所定値δ1未満であれば、転舵角δに基づいて設定した目標伝達トルクを、路面摩擦係数μに基づいて補正する(前記ステップS21→ステップS22→ステップS28→ステップS33又は前記ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS28→ステップS33)。具体的には、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。
【0047】
(作用及び効果)
これにより、車体速が極々低速領域(例えば1km/h未満の車速領域)又は極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)にある場合、路面摩擦係数μに基づいて目標伝達トルクを補正している(前記ステップS32又はステップS33)。具体的には、いずれの車速領域でも、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるような補正をしている。
ここで、路面摩擦係数μが小さくなると、もともとタイトコーナーブレーキング現象の発生がし難くなる。このようなことから、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクを大きくすることで、タイトコーナーブレーキング現象の発生を抑制しつつ、低摩擦路面における発進時加速性能を向上させることができる。
【0048】
また、車体速が極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)で転舵状態にある場合には、路面摩擦係数μに基づく目標伝達トルクの補正を、路面摩擦係数μが所定値μ1以下であることを条件に実施している。これにより、転舵発進していることでタイトコーナーブレーキング現象が発生する可能性が高くなっている状況下で、路面摩擦係数μが大きい路面で目標伝達トルクを大きくしてしまいタイトコーナーブレーキング現象が発生する可能性をさらに高めてしまうことを防止しつつ、低摩擦路面における発進時加速性能を向上させることができる。
【0049】
なお、前記第2の実施形態の説明において、路面摩擦センサ17は、走行路の路面摩擦係数を検出する路面摩擦係数検出手段を実現しており、トルク配分コントローラ10のステップS31及びステップS32又はステップS33の処理は、前記路面摩擦係数検出手段が検出した路面摩擦係数が小さくなるほど、目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をする補正手段を実現している。
【0050】
(第3の実施形態)
次に第3の実施形態を説明する。
(構成)
図10は、本発明を適用した第3の実施形態の車両の構成を示す。
図10に示すように、第3の実施形態の車両の基本的構成は、前記図1に示した第1の実施形態の車両の構成と同一であるが、第3の実施形態の車両では、舵角センサ16に換えて、走行路の道路勾配を検出する勾配センサ18を備えている。以下の説明では、第3の実施形態の車両において、前記第1の実施形態の車両の構成と同一符号を付してある構成については、特に言及しない限りは同一である。
第3の実施形態でも、トルク分配コントローラ5による目標伝達トルクの設定処理に特徴がある。その目標伝達トルクの設定処理については、前記第1の実施形態と同様、前記図2に示す処理手順となる。そして、第3の実施形態は、前記ステップS7の極低速領域の目標伝達トルクの設定に特徴がある。
【0051】
図11は、その極低速領域の目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示す。
図11に示す第3の実施形態における処理手順の基本的な部分は、前記図3に示した第1の実施形態における処理手順と同一であるが、第3の実施形態における処理では、特に、前記ステップS27の後に、ステップS41及びステップS42を設け、さらに、ステップS28の後に、ステップS43を設けている。以下の説明では、第3の実施形態における処理において、前記第1の実施形態における処理と同一符号を付してあるものについては、特に言及しない限りは同一である。
【0052】
図11に示すように、ステップS41では、勾配センサ18により検出した道路勾配α(°又は傾斜度合い)が所定値α1以上か否かを判定する。ここで、所定値α1は、上り勾配側の所定の角度(傾斜度合い)に相当する。このステップS41において、道路勾配αが所定値α1以下と判定した場合(α≧α1)、ステップS42に進み、道路勾配αが所定値α1よりも大きいと判定した場合(α<α1)、当該図11(ステップS7)に示す処理を終了する。
【0053】
ステップS42では、目標伝達トルクについて、道路勾配α(上り勾配)に基づく補正を行う。具体的には、道路勾配αに基づいて補正ゲインを設定し、設定した補正ゲインと、転舵角δに基づいて補正した目標伝達トルク(前記ステップS25)との積により、目標伝達トルクを設定する。このようにして、道路勾配αが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。そして、当該図11(ステップS7)の示す処理を終了する。
【0054】
また、ステップS43では、前記ステップS28で転舵角δに基づいて設定した目標伝達トルクを、道路勾配αに基づいて補正する。具体的には、前記ステップS42と同様に、道路勾配α(上り勾配)が大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。そして、当該図11(ステップS7)の示す処理を終了する。
図12は、車速(同図(a))と目標伝達トルク(同図(c))との関係の一例を示す。なお、同図(b)は、従来技術において設定される目標伝達トルクの例を示す。
同図(c)に示す目標伝達トルクは、前記図3の場合と比較してわかるように、極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)において、道路勾配αが大きくなるほど大きくなる。
【0055】
(動作)
以上のように、特に第3の実施形態では、極低速領域用の目標伝達トルクの設定において(前記ステップS7)、道路勾配αが所定値α1以上であれば、道路勾配αに基づいて目標伝達トルクを補正する(前記ステップS41→ステップS42)。具体的には、道路勾配αが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。
また、4輪の車輪速のうちの最小値の車輪速に基づいて算出した車体速Vが所定値V2未満であれば、又は車体速Vが所定値V2以上であっても、操舵角δが所定値δ1未満であれば、転舵角δに基づいて設定した目標伝達トルクを、道路勾配αに基づいて補正する(前記ステップS21→ステップS22→ステップS28→ステップS43又は前記ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS28→ステップS43)。具体的には、道路勾配αが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。
【0056】
(作用及び効果)
これにより、車体速が極々低速領域(例えば1km/h未満の車速領域)又は極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)にある場合、道路勾配αに基づいて目標伝達トルクを補正している(前記ステップS42又はステップS43)。具体的には、道路勾配αが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるような補正をしている。
【0057】
ここで、道路勾配α(上り勾配)が大きくなると、後輪側に車重が移動するため、上り側の車輪である前輪では路面との摩擦係数が減少し、下り側の車輪である後輪では路面との摩擦係数が増加することで、もともとタイトコーナーブレーキング現象は発生し難くい状況になる。このようなことから、道路勾配αが大きくなるほど、目標伝達トルクを大きくしても、タイトコーナーブレーキング現象の発生が抑制され、その一方で、目標伝達トルクが大きくなることで、発進時加速性能を向上させることができる。
【0058】
また、車体速が極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)で転舵状態にある場合には、道路勾配αに基づく目標伝達トルクの補正を、道路勾配αが所定値α1以上であることを条件に実施している。これにより、転舵発進していることでタイトコーナーブレーキング現象が発生する可能性が高くなっている状況下で、道路勾配αが小さい道路で目標伝達トルクを大きくしてしまいタイトコーナーブレーキング現象が発生する可能性をさらに高めてしまうことを防止しつつ、発進時加速性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 エンジン、2 自動変速機、3 フロントディファレンシャル、4 リアディファレンシャル、5〜8 車輪、9 トルク配分クラッチ、10 トルク配分コントローラ、11〜14 車輪速センサ、15 アクセル開度センサ、16 舵角センサ、17 路面摩擦センサ、18 勾配センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジントルクにより前輪及び後輪を駆動する駆動系に配置され、目標配分値に基づいてエンジントルクを前輪と後輪とに分配するトルク分配手段と、
車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前記トルク分配手段による前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように前記目標配分値を小さい値に設定する目標配分値設定手段と、
前記車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合にも操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記操舵角検出手段が検出した操舵角が小さくなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をする補正手段と、
アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
を備え、
前記目標配分値設定手段は、車体速が前記所定の速度領域内で速度が低い極々低速領域にある場合、該車体速に依らず、前記目標配分値を一定値に設定し、車体速が前記所定の速度領域内で速度が高い極低速領域にある場合、該車体速の増加に対する前記目標配分値の減少割合が多くなるように該目標配分値を設定することで、車体速が大きくなるほど目標配分値が大となる方向に凸となるようにし、
前記補正手段は、前記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が高くなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をすることを特徴とする四輪駆動車のトルク配分制御装置。
【請求項2】
エンジントルクを目標配分値に基づいて前輪と後輪とに分配する四輪駆動車のトルク配分制御装置において、
車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように前記目標配分値を小さい値に設定するとともに、そのときの操舵角に基づいて前記設定した目標配分値を増加補正して、前記目標配分値をタイトコーナーブレーキング現象が発生しない範囲内で変化させるものであって、
車体速が前記所定の速度領域内で速度が低い極々低速領域にある場合、該車体速に依らず、前記目標配分値を一定値に設定し、車体速が前記所定の速度領域内で速度が高い極低速領域にある場合、該車体速の増加に対する前記目標配分値の減少割合が多くなるように該目標配分値を設定することで、車体速が大きくなるほど目標配分値が大となる方向に凸となるようにするとともに、アクセル開度が高くなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をすることを特徴とする四輪駆動車のトルク配分制御装置。
【請求項1】
エンジントルクにより前輪及び後輪を駆動する駆動系に配置され、目標配分値に基づいてエンジントルクを前輪と後輪とに分配するトルク分配手段と、
車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前記トルク分配手段による前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように前記目標配分値を小さい値に設定する目標配分値設定手段と、
前記車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合にも操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記操舵角検出手段が検出した操舵角が小さくなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をする補正手段と、
アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
を備え、
前記目標配分値設定手段は、車体速が前記所定の速度領域内で速度が低い極々低速領域にある場合、該車体速に依らず、前記目標配分値を一定値に設定し、車体速が前記所定の速度領域内で速度が高い極低速領域にある場合、該車体速の増加に対する前記目標配分値の減少割合が多くなるように該目標配分値を設定することで、車体速が大きくなるほど目標配分値が大となる方向に凸となるようにし、
前記補正手段は、前記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が高くなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をすることを特徴とする四輪駆動車のトルク配分制御装置。
【請求項2】
エンジントルクを目標配分値に基づいて前輪と後輪とに分配する四輪駆動車のトルク配分制御装置において、
車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように前記目標配分値を小さい値に設定するとともに、そのときの操舵角に基づいて前記設定した目標配分値を増加補正して、前記目標配分値をタイトコーナーブレーキング現象が発生しない範囲内で変化させるものであって、
車体速が前記所定の速度領域内で速度が低い極々低速領域にある場合、該車体速に依らず、前記目標配分値を一定値に設定し、車体速が前記所定の速度領域内で速度が高い極低速領域にある場合、該車体速の増加に対する前記目標配分値の減少割合が多くなるように該目標配分値を設定することで、車体速が大きくなるほど目標配分値が大となる方向に凸となるようにするとともに、アクセル開度が高くなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をすることを特徴とする四輪駆動車のトルク配分制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−162265(P2012−162265A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−101664(P2012−101664)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【分割の表示】特願2006−204955(P2006−204955)の分割
【原出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【分割の表示】特願2006−204955(P2006−204955)の分割
【原出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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