説明

回動レバーの位置保持装置

【課題】回動レバーの回動に伴って、スプリングのコイル部が支持部に当接することによって生じる異音発生を防止する。
【解決手段】スプリング4は、コイル部41及び当該コイル部から接線方向へ延出する第1、2アーム42、43を有する。コイル部41は、ベース部材2の支持部23回りに支持される。第1アーム42は、回動レバー1の回動に伴う係合突部11の移動軌跡に沿うように延出すると共に、回動レバー1の回動に伴って係合突部11が摺動し、回動レバー1が第1位置にあるとき回動レバー1を第1ストッパ部21に当接する方向へ付勢し、回動レバー1が第2位置にあるとき回動レバー1を第2ストッパ部22に当接する方向へ付勢可能な凸部45を有する。第2アーム43は、コイル部41の内周面を、支持部23の外周面のうち係合突部11に対向する側に押し付けるように、コイル部41を巻き込む方向に負荷をかけた状態でベース部材2に設けられたスプリング用ストッパ部24に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動レバーを2つの位置で保持する回動レバーの位置保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の回動レバーの位置保持装置においては、特許文献1に開示されているように、回動レバーに対して回動方向へ付勢力を付与するためのスプリングは、ベース部材に立設された支持部(ボス部)周りに挿入支持されるコイル部と、コイル部から延在し回動レバーに形成された係合部を挟んで互いに対向し合う対の腕部と、対の腕部に形成され回動レバーの回転に伴う円弧軌跡で係合部が乗り越えながら係合して対の腕部を押し広げると共に回転レバーが第1位置にある時に対の腕部を撓ませて回動レバーをベース部材の第1ストッパ部と当接する方向に付勢し、回動レバーが第2位置にある時に対の腕部を撓ませて回動レバーをベース部材の第2ストッパ部と当接する方向に付勢する凸部を有して構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4277441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記回動レバーの位置保持装置は、回動レバーの係合部がスプリングの凸部を乗り越えて回動レバーに付与する付勢方向が反転する際、スプリングに作用する反力の影響により、コイル部が支持部回りにおいて回動レバーの回動方向と反対方向へ挙動して支持部に当接し、回動レバーの回動に伴って異音(こつこつ音)が発生する虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、回動レバーの回動に伴って、スプリングのコイル部が支持部に当接することによって生じる異音発生を防止した回動レバーの位置保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために第1の発明は、第1ストッパ部及び第2ストッパ部を有するベース部材と、前記ベース部材に枢支され、前記第1ストッパ部に当接する第1位置及び前記第2ストッパ部に当接する第2位置間を回動可能な回動レバーと、前記ベース部材に支持されると共に、コイル部及び当該コイル部から接線方向へ延出する第1、2アームを有するスプリングとを備え、前記ベース部材は、前記回動レバーの第2位置から第1位置への回動に際し前記回動レバーに設けられた係合突部が接近する方向に突状の支持部を立設し、前記コイル部は、前記支持部回りに支持され、前記第1アームは、前記回動レバーの回動に伴う前記係合突部の移動軌跡に沿うように延出すると共に、前記回動レバーの回動に伴って前記係合突部が摺動し、前記回動レバーが第1位置にあるとき前記回動レバーを前記第1ストッパ部に当接する方向へ付勢し、前記回動レバーが第2位置にあるとき前記回動レバーを前記第2ストッパ部に当接する方向へ付勢可能な凸部を有し、前記第2アームは、前記コイル部の内周面を、前記支持部の外周面のうち前記係合突部に対向する側に押し付けるように、前記コイル部を巻き込む方向に負荷をかけた状態で前記ベース部材に設けられたスプリング用ストッパ部に当接することを特徴とする。
【0007】
さらに、第2の発明は、第1の発明において、前記ベース部材は、前記回動レバーの前記ベース部材への未組付け状態において、前記スプリングの前記第1アームが前記コイル部を巻き込む方向に負荷をかけた状態で当接し、前記スプリングの前記支持部回りへの回動を阻止する組付用ストッパ部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、スプリングのコイル部の内周面がベース部材の支持部の外周面に常時押し付けられた状態に保持されるため、スプリングのコイル部の支持部回りでの挙動を抑止して、回動レバーの回動時に異音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係わる回動レバーの位置保持装置をドアラッチ装置に適用した例を示す正面図である。
【図2】本発明に係わる回動レバーの位置保持装置の回動レバーを第1位置に保持した状態の正面図である。
【図3】本発明に係わる回動レバーの位置保持装置の回動レバーを第2位置に保持した状態の正面図である。
【図4】本発明に係わる回動レバーの位置保持装置の回動レバーの作動状態を示す正面図である。
【図5】本発明に係わる回動レバーの位置保持装置の要部を拡大した正面図である。
【図6】本発明に係わる回動レバーの位置保持装置の回動レバーが未組付け状態の正面図である。
【図7】図1におけるA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
回動レバー1は、車両用ドアラッチ装置のベース部材2に軸3により回動自在に枢支され、ベース部材2に設けられた第1ストッパ部21に当接して反時計方向への回動が阻止される図2に示す第1位置(アンロック位置)と、第1位置から時計方向へ所定角度回動してベース部材2に設けられた第2ストッパ部22に当接して時計方向への回動が阻止される図3に示す第2位置(ロック位置)とを往復動可能である。回動レバー1には、回転中心(軸3)から左斜め下方へ所定距離離れた位置にあって、ベース部材2へ向けて円柱状に突出する係合突部11が設けられる。
【0011】
なお、本実施形態は、回動レバーの保持装置を車両用ドアラッチ装置に適用したものを説明するが、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、車両用ドアラッチ装置以外のものにも適用可能である。
【0012】
ベース部材2には、回動レバー1に対して回動方向へ付勢力を付与するためのスプリング4のコイル部41を支持するための突状の支持部23と、コイル部41を支持部23の外周面に強く押し付けるようにスプリング4の第2アーム43が当接するスプリング用ストッパ部24と、スプリング4の第1アーム42が当接可能な組付用ストッパ部25が設けられる。なお、スプリング4については、後で詳細に説明する。
【0013】
支持部23は、回動レバー1の回転中心(軸3)から下方へ所定距離離れた位置にあって、かつ図5に明示するように、回動レバー1の回動範囲の略中間位置にあるときの円弧軌跡S(回動レバー1の回動に伴う係合突部11の移動軌跡)の接線の方向ベクトルt(回動レバー1が反時計方向へ回動する際の方向ベクトル)の方向に設けられる。したがって、回動レバー1の係合突部11は、回動レバー1が第2位置から第1位置に回動することによって支持部23に接近する。
【0014】
スプリング用ストッパ部24は、回動レバー1の回転中心(軸3)と支持部23間の略中間位置にあって、係合突部11の円弧軌跡Sよりも回動レバー1の回転中心(軸3)寄り側に設けられる。
【0015】
組付用ストッパ部25は、回動レバー1の回動中心(軸3)からスプリング用ストッパ部24よりも離間した位置にあって、支持部23の左側近傍に設けられる。
【0016】
支持部23の先端部には、スプリング4のコイル部41を支持部23回りに支持した状態において、コイル部41が支持部23の先端から抜け出ないようにするための鍔部23aが設けられる。
【0017】
なお、本実施形態において、第1、2ストッパ部21、22、支持部23、スプリング用ストッパ部24及び組付用ストッパ部25をベース部材2に一体的に設けた例を説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものでなく、第1、2ストッパ部21、22、支持部23、スプリング用ストッパ部24及び組付用ストッパ部25の全てまたはこれらの少なくとも1つをベース部材2と別体に形成してベース部材2に固定するようにした構成としても良い。
【0018】
スプリング4は、線材により形成され、支持部23回りに支持されるコイル部41と、コイル部41から接線方向反時計回りに若干延出したあと、上方(係合突部11の円弧軌跡Sに沿う方向)へ延出する第1アーム42と、コイル部41から接線方向時計回りに延出する第2アーム43とを有する。
【0019】
第1アーム42は、根本部分に組付用ストッパ部25に当接可能な湾曲当接部44を有し、係合突部11の円弧軌跡Sに沿って延出する部分に回動レバー1の回転中心(軸3)へ向けて山形状に突出する凸部45を有している。係合突部11は、回動レバー1の回動に伴って、第1アーム42を左方(コイル部41を反時計方向へ巻き込む方向)へ撓ませながら凸部45に設けられた第1、2傾斜部45a、45bを摺動する。
【0020】
第1アーム42の湾曲当接部44は、図6に示すように、回動レバー1のベース部材2への未組付状態において、コイル部41を反時計方向へ巻き込む方向に負荷をかけた状態で組付用ストッパ部25に当接し、回動レバー1がベース部材2に枢支されて係合突部11がスプリング4の凸部45に当接した状態で組付用ストッパ部25から離れる。
【0021】
第2アーム43は、係合突部11の円弧軌跡Sを反時計方向へ延長した延長線と交差するように右斜め上方へ真直ぐに延出し、コイル部41を時計方向へ巻き込む方向に負荷をかけた状態でスプリング用ストッパ部24に当接する。これにより、コイル部41は、スプリング用ストッパ部24と第2アーム43との当接点を支点として反時計方向へ付勢され、コイル部41の内周部分は、支持部23の外周部分のうち、方向ベクトルtの方向に対向する側の外周面、すなわち係合突部11に対向する側の外周面に常時押し付けられることとなる。
【0022】
次に、本実施形態に係わる組付け順序の要領について説明する。
スプリング4は、回動レバー1をベース部材2に枢支する前に、図6に示すように、コイル部41を支持部23回りに支持すると共に、第1アーム42の湾曲当接部44を組付用ストッパ25に当接させ、第2アーム43をスプリング用ストッパ24に当接させた状態で、ベース部材2に予め組み付けられる。このようにスプリング4をベース部材2に予め組み付けることによって、スプリング4は、支持部23回りへの回動が阻止され、組付け位置に確実に保持することができる。次に、図7に示すように、回動レバー1の係合突部11の斜面部11aを、スプリング4の凸部45の第1傾斜部45aに当接させて第1アーム42を左方へ若干撓ませた状態で、回動レバー1を軸3によりベース部材2に枢支する。この結果、回動レバー1をベース部材2に枢支した状態においては、スプリング4の第1アーム42の湾曲当接部44は、組付用ストッパ部25から僅かに離間する。
【0023】
次に本実施形態の作動について説明する。
図2は、回動レバー1が第1位置にある際の状態を示し、回動レバー1の係合突部11は、スプリング4の第1アーム42の凸部45の第1傾斜部45aに当接し、回動レバー1は、反時計方向へ付勢されると共に、第1ストッパ部21に当接した第1位置に保持されている。また、スプリング4のコイル部41の内周面は、スプリング用ストッパ部24に当接している第2アーム43の付勢力によって、支持部23の方向ベクトルtに対向する側の外周面に押し付けられている。
【0024】
回動レバー1が第1位置に保持されている状態から、回動レバー1を図2において時計方向へ回動させると、係合突部11は、第1アーム42を左方(コイル部41を巻き込む方向)へ撓ませながら第1傾斜部45aを摺動し、第1位置及び第2位置間(回動範囲)の略中間位置において図4に示すように係合突部11が凸部45の頂上部に当接する。この状態からさらに回動レバー1が時計方向へ回動して、係合突部11が凸部45を乗り越えて第2傾斜部45bに移動すると、これを機に、回動レバー1に作用するスプリング4の付勢方向が反時計方向から時計方向へ反転し、回動レバー1は、図3に示すように、第1アーム42の付勢力によって時計方向へ付勢されると共に、第2ストッパ部22に当接した第2位置に保持される。なお、スプリング4のコイル部41の内周面は、上記作動最中においても支持部43に常時押し付けられている。
【0025】
図3は、回動レバー1が第2位置にある際の状態を示し、回動レバー1の係合突部11は、スプリング4の第1アーム42の凸部45の第2傾斜部45bに当接し、回動レバー1は、時計方向へ付勢されると共に、第2ストッパ部22に当接した第2位置に保持されている。また、スプリング4のコイル部41の内周面は、スプリング用ストッパ部24に当接している第2アーム43の付勢力によって、回動レバー1が第1位置にあるときと同様に、支持部23の方向ベクトルtの方向に対向する側の外周面に押し付けられている。
【0026】
回動レバー1が第2位置に保持されている状態から、回動レバー1を図3にいて反時計方向へ回動させると、係合突部11は、第1アーム42を左方(コイル部41を巻き込む方向)へ撓ませながら第2傾斜部45bを摺動し、第1位置及び第2位置間(回動範囲)の略中間位置において図4に示すように係合突部11が凸部45の頂上部に当接する。この状態からさらに回動レバー1が反時計方向へ回動して、係合突部11が凸部45を乗り越えて第1傾斜部45aに移動すると、これを機に、回動レバー1に作用するスプリング4の付勢方向が時計方向から反時計方向へ反転し、回動レバー1は、図2に示すように、第1アーム41の付勢力によって時計方向へ付勢されると共に、第1ストッパ部22に当接した第1位置に保持される。この場合においても、スプリング4のコイル部41の内周面は、支持部43に常時押し付けられている。
【0027】
従来技術にあっては、付勢方向が反転する際のスプリング4に作用する反力によって、コイル部41が支持部23の回りにおいて方向ベクトルtの方向及びその反対方向へ挙動し、その結果、支持部23の外周面に勢いよく当接し、回動レバー1の回動時に当接音が発生する虞がある。
【0028】
しかし、本発明に係わる実施形態においては、コイル部41の内周部分は、スプリング用ストッパ部24に当接している第2アーム43の付勢力によって支持部23の外周面に常時押し付けられているため、回動レバー1に作用するスプリング4の付勢方向が反転する際に、コイル部41は支持部23の回りで方向ベクトルtの方向及びその反対方向へ挙動するようなことない。これにより、回動レバー1の回動時に異音が発生することを防止することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 回動レバー
2 ベース部材
3 軸
4 スプリング
11 係合突部
11a 斜面部
21 第1ストッパ部
22 第2ストッパ部
23 支持部
23a 鍔部
24 スプリング用ストッパ部
25 組付用ストッパ部
41 コイル部
42 第1アーム
43 第2アーム
44 湾曲当接部
45 凸部
45a 第1傾斜部
45b 第2傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ストッパ部及び第2ストッパ部を有するベース部材と、
前記ベース部材に枢支され、前記第1ストッパ部に当接する第1位置及び前記第2ストッパ部に当接する第2位置間を回動可能な回動レバーと、
前記ベース部材に支持されると共に、コイル部及び当該コイル部から接線方向へ延出する第1、2アームを有するスプリングとを備え、
前記ベース部材は、前記回動レバーの第2位置から第1位置への回動に際し前記回動レバーに設けられた係合突部が接近する方向に突状の支持部を立設し、
前記コイル部は、前記支持部回りに支持され、
前記第1アームは、前記回動レバーの回動に伴う前記係合突部の移動軌跡に沿うように延出すると共に、前記回動レバーの回動に伴って前記係合突部が摺動し、前記回動レバーが第1位置にあるとき前記回動レバーを前記第1ストッパ部に当接する方向へ付勢し、前記回動レバーが第2位置にあるとき前記回動レバーを前記第2ストッパ部に当接する方向へ付勢可能な凸部を有し、
前記第2アームは、前記コイル部の内周面を、前記支持部の外周面のうち前記係合突部に対向する側に押し付けるように、前記コイル部を巻き込む方向に負荷をかけた状態で前記ベース部材に設けられたスプリング用ストッパ部に当接することを特徴とする回動レバーの位置保持装置。
【請求項2】
前記ベース部材は、前記回動レバーの前記ベース部材への未組付け状態において、前記スプリングの前記第1アームが前記コイル部を巻き込む方向に負荷をかけた状態で当接し、前記スプリングの前記支持部回りへの回動を阻止する組付用ストッパ部を有することを特徴とする請求項1記載の回動レバーの位置保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−221752(P2011−221752A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89599(P2010−89599)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000148896)三井金属アクト株式会社 (127)
【Fターム(参考)】