説明

回収カテーテル・アセンブリ

【解決手段】 回収カテーテル・アセンブリの1実施例は、アクチュエータ要素(138)と、前記アクチュエータ要素に動作可能に接続された、機械的に径方向に拡張および収縮自在な回収装置(130)とを有する。前記回収装置は、近位遮断部(131)および遠位遮断部(132)と、その間の中央部とを有する。前記回収装置は、前記アクチュエータ要素を操作することにより、第1の径方向に畳み込まれた形状および第2の径方向に拡張された形状に少なくとも部分的に配置可能である。前記第2の径方向に拡張された形状であるとき、前記近位遮断部および前記遠位遮断部は、中央部の半径寸法よりも大きい半径寸法となり、これにより、前記中央部で回収チャンバを少なくとも部分的に画成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍またはその他の重篤な状態を1若しくはそれ以上の高用量療用物質で局部的に臓器灌流し、静脈血流を分離、回収、およびろ過し、高用量療用物質を除去してから身体に戻すシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手術、化学療法、様々な形態のエネルギーを送る局所アブレーション、放射線などを含め、癌性腫瘍の治療法は数々ある。腫瘍は、周辺組織や、肝臓、肺、脳などの遠い組織に広がることにより、手術で切除することが不可能となることがしばしばある。これらの臓器への転移性疾病の治療は、化学療法、病変の数がごくわずかな場合は局所的な外科的切除および局所アブレーションにより、また、時には放射線により行われる。しばしば、 転移性疾病は広がっており、手術、放射線や局所アブレーションに反応できないことがある。これにより、化学療法が唯一の代替法となるが、化学療法の効果は、骨髄抑制、好中球減少、吐き気、下痢、食欲不振、衰弱、カヘ
キシー、細菌またはウィルスの過剰繁殖などを含む、薬剤による全身毒性により制限される。
【0003】
非常に高用量の化学療法剤で臓器を分離灌流し、その臓器から流出する静脈血を、これが全身循環系に入る前に回収し、回収された血液から化学療法剤をろ過し、化学療法剤のない、ろ過された血液を全身循環系に戻すシステムおよび方法が米国特許第5,817,046号、第5,893,841号、第5,897,533号、第5,919,163号、第7,022,097号の各明細書でGlickmanにより、また、米国特許第5,069,662号明細書でBoddenにより、説明されている。このシステムは現在、ニューヨーク州New YorkのDelcath,Inc.により、転移性疾病や肝臓の原発腫瘍の治療の目的で経皮的肝灌流(Percutaneous Hepatic Perfusion:PHP)装置として販売されている。本質的に、非常に高用量の化学療法剤を経時的に、通常は30分から1時間、肝動脈に注入する。この高用量化学療法剤は肝臓を灌流するが、従来の経静脈的な全身用投与よりもはるかに効果的である。この薬剤は腫瘍に取込まれ、残りは、肝臓から下大静脈(inferior vena cava:IVC)の上側に流出する一連の静脈である肝静脈に流れ込む。毒性レベルの化学療法剤をまだ含んでいるこの血液は、この特殊な装置(PHP)の一部である分離装置により回収される。肝静脈血分離装置は、下大静脈内で展開する2連バルーンシステムであって、このバルーンは、肝静脈の上側と下側で膨張され、肝静脈血流はカテーテル内へ回収され、化学療法剤を除去する体外のフィルタを通してポンプで送出され、別のカテーテルを介して上大静脈へ戻される。リターン・チャネルとも呼ばれるスルー・リターン・ルーメンが設けられており、バルーンが大静脈を閉塞しているときに、下半身および腎臓からの下大静脈血が心臓に流れ戻るようになっている。
【0004】
本先行技術の装置は肝腫瘍の治療において効果的であるが、使用するのがやや煩わしい。2連バルーンが腎静脈および/または副腎静脈を閉塞することがあり、バルーンは下大静脈内で好ましくないほどスペースをとる傾向があるからである。さらに、下大静脈の下側から心臓への血液を通すスルー・ルーメンは、心臓に戻る血液の量に十分対応できるほど大きくない。これは、患者の突然の血圧降下につながることが多く、ショック様状態につながることも時々ある。患者は少なくとも何らかのレベルの蘇生法を必要とすることが期待されるので、これらの問題に対処するために麻酔医が付き添っている。先行技術のこれらの問題の故に、明らかに、患者にとってのリスクや処置のコストが劇的に増加する。このことは、患者にとってのリスク上のみでなく、インターベンショナリストがこの治療戦略を患者やその紹介医のために遂行することを妨げるので、重大である。先行技術の装置および技術のこれらの問題により、この非常に効果的な治療システムが医学界で十分採用されず、そうでなければ治療の恩恵を受けているはずの何千人もの患者から治療の機会を奪うことになるというリスクがある。基礎疾患の故に既に易感染性となった患者において、腎および副腎静脈血栓症、心臓、脳、および腎臓の不安定な灌流により、心臓発作、脳卒中、肝障害などの合併症を起こすなど、これらの医原性の合併症による大きな問題がある。これらの合併症は、旧式のバルーン技術および血流の閉塞、改変、または迂回方法を人体内で使用する結果として起こる。
【0005】
先行技術の装置のバルーンにより、スルー・ルーメンの寸法が制限される。肝静脈を効果的に分離するために、拡張したバルーンは下大静脈の大部分を塞がなければならないからである。これにより、下大静脈から右心房へ戻ることができる血液の量が制限され、前のパラグラフで述べた問題につながる。拡張したバルーン、特に尾側バルーンの下大静脈内の設置面積に問題がある。より尾側の肝静脈と腎/副腎静脈との間の距離が、拡張したバルーンの設置面積よりも短いことが多いからである。
【0006】
50例を超える一連の腹部CTスキャンを検討する中で、発明者は大静脈・心房ジャンクションから左腎静脈の開口部までを測定し、Glickmanの本先行技術の装置が症例の1/3以上において左腎静脈を部分的に閉塞する可能性が高いことがわかった。曲率およびその他の測定誤差について15mmという補正係数を用いても、症例の20%以上において、左腎静脈の少なくとも一部が本装置の尾側バルーンで覆われる可能性が高い。
【0007】
また、IVCの前後方向(anteroposterior:AP)および横方向の寸法の測定により、これらの測定値に大きなばらつきがあることがわかったため、直径の異なる装置が必要となるかもしれない。上側IVC、中央肝後面IVC、および中間副腎静脈IVCの平均的なAPおよび横方向の寸法は各々、23.6mm、30.4mm、20.0mm、22.7mm、20.2mm、28.3mmであった。わずか8mmという最小のAP寸法が1名の被検者に見られ、他方、36mmという最大のAP寸法が別の被検者で発生した。横方向の寸法は、異なる被検者において10.2mm〜40mmのばらつきがあった。測定値は、民族が異なる母集団には当てはまらない可能性があり、そのような異なる母集団や年齢群においてはばらつきがさらに大きくなるかもしれない。さらに、同一の患者において、IVC測定値から、大きくて楕円形の横隔膜上IVC、小さくて丸みのある中央肝後面IVC、および腎静脈のすぐ上のIVCの傾いた楕円形構成が何度も明らかになった。実際、腎静脈のすぐ上のこの傾いた楕円形構成は、横隔膜上IVCの傾いた楕円形構成に対向する方向に傾いていることが多かった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施例は、現行の2連バルーンシステムによる問題を発生することなく、肝静脈血流を全身循環系から分離し、これをうまく効果的に回収する。幾つかの実施例によると、分離は、副腎または腎静脈を閉塞することなく行われ、バルーンを用いずに、血液が妨げられることなく下大静脈から心臓へ流れる大きな経路を提供する。
【0009】
回収カテーテル・アセンブリの第1実施例は、アクチュエータ要素と、前記アクチュエータ要素に動作可能に接続され、機械的に径方向に拡張および収縮自在な回収装置とを有する。前記回収装置は、近位端部および遠位端部とを有し、前記近位端部および前記遠位端部に近位遮断部と遠位遮断部とを有する。前記回収装置はまた、前記近位遮断部と前記遠位遮断部との間の中央部を有する。前記回収装置は、前記アクチュエータ要素を操作することより、第1の径方向に畳み込まれた形状および第2の径方向に拡張された形状に少なくとも部分的に配置可能である。前記第2の径方向に拡張された形状であるとき、前記近位遮断部および前記遠位遮断部は、前記中央部の半径寸法よりも大きい半径寸法となり、これにより、前記中央部で回収チャンバを少なくとも部分的に画成する。幾つかの実施例において、前記回収装置は、前記アクチュエータ要素を操作することにより、前記第1の径方向に畳み込まれた形状および前記第2の径方向に拡張された形状に完全に配置可能である。幾つかの実施例において、前記回収装置は、前記回収装置の近位端部および遠位端部に近位ドーナツ形状遮断バルーンと遠位ドーナツ形状遮断バルーンとを有する。幾つかの実施例は、側壁を有し、回収ルーメンを画成する中空の回収カテーテルを含む。幾つかの実施例は、さらに、前記回収装置の前記中央部および前記回収カテーテルの前記側壁を貫通して延在する外側通路を有し、前記回収チャンバを少なくとも部分的に画成する、前記近位遮断部および前記遠位遮断部の一部、および前記中央部は、前記通路を除いて液体不浸透性であり、これにより、前記回収チャンバ内の液体は前記通路を通って前記回収ルーメン内に流入し、当該ルーメンを通過することができる。幾つかの実施例において、前記回収カテーテルは、近位部と、中間部と、遠位部とを有し、前記外側通路は、前記回収カテーテルの前記中間部に沿って配置され、血液ポンプは、前記回収カテーテルの前記遠位部に沿って配置され、フィルタ要素は、前記回収カテーテルの前記遠位部に沿って配置されて前記回収カテーテルのルーメンを通過する液流から少なくとも1つの薬剤をろ過して取り除く。幾つかの実施例において、第1の圧力センサは前記回収チャンバに備えられ、第2の圧力センサは前記回収装置の遠位に配置され、フィルタ要素およびポンプは、前記回収カテーテルに動作可能に連結されて前記回収カテーテルを通る液体を送出およびろ過し、前記ポンプは前記第1および第2の圧力センサに動作可能に連結されて、使用中の前記回収チャンバ内の圧力の制御を可能にする。幾つかの実施例において、フィルタ要素およびポンプは、前記回収カテーテルに動作可能に連結されて、前記回収カテーテルを通る液体を送出し、前記回収カテーテルを通る液体をろ過し、圧力センサは前記ポンプの遠位に配置され、前記ポンプは、前記圧力センサに動作可能に連結されて、使用中の前記回収チャンバ内の圧力の制御を可能にする。幾つかの実施例において、前記アクチュエータ要素は、第1および第2のアクチュエータ要素を有し、前記回収装置は、前記第1のアクチュエータ要素に動作可能に接続された近位端部と、前記第2のアクチュエータ要素に動作可能に接続された遠位端部とを有し、前記回収装置は、前記第1および第2のアクチュエータ要素を操作することにより、第1の径方向に畳み込まれた形状および第2の径方向に拡張された形状に少なくとも部分的に配置可能である。
【0010】
小孔(ostium)における身体通路内での使用のための回収カテーテルの第2の実施例は、遠位部を有する外側アクチュエータ・シースと、側壁を有する内側中空回収カテーテルとを含む。前記回収カテーテルは、回収ルーメンを画成し、遠位端部を有する。前記回収カテーテルは、アクチュエータ・シース内に収納されている。アクチュエータ・ワイヤは回収カテーテルに沿って延在しており、先端部が前記回収カテーテルの遠位端部の遠位に位置する。機械的に径方向に拡張および収縮自在な回収装置は、近位端部が近位拡張要素によりアクチュエータ・シースの遠位部に固定され、遠位端部が遠位拡張要素により前記アクチュエータ・ワイヤの先端部に固定されている。前記回収装置は、前記近位端部および前記遠位端部に位置する近位遮断部および遠位遮断部と、前記近位遮断部と前記遠位遮断部との間の中央部と、前記近位端部と前記遠位端部との間に延在するリターン・ルーメンとを有する。前記回収装置は、前記アクチュエータ・ワイヤが前記回収装置に対して遠位方向に、遠位アクチュエータ・ワイヤ位置まで押動され、前記アクチュエータ・シースが回収装置に対して近位方向に、近位アクチュエータ・シース位置まで引張られたときに、第1の径方向に畳み込まれた形状に配置可能である。前記回収装置は、前記アクチュエータ・ワイヤが回収装置に対して近位方向に、近位アクチュエータ・ワイヤ位置まで引張られ、前記アクチュエータ・シースが回収装置に対して遠位方向に、遠位アクチュエータ・シース位置まで押動されたときに、第2の径方向に拡張された形状に配置可能である。前記第2の径方向に拡張された形状であるとき、前記近位遮断部および前記遠位遮断部は、中央部の半径寸法よりも大きい半径寸法となり、これにより、前記中央部で回収チャンバを少なくとも部分的に画成し、前記近位拡張要素および前記遠位拡張要素は、回収装置のリターン・ルーメンを通って液体の流入を可能にする開口領域を有する。外側通路は、前記回収装置の中央部および前記回収カテーテルの側壁を通って延在する。前記回収チャンバを画成する、前記近位遮断部および前記遠位遮断部の一部、および前記中央部は、前記通路を除いて液体不浸透性であり、これにより、液体移送血管の開口部の小孔から前記回収チャンバ内へ流れる液体は、前記通路を通って前記回収ルーメン内に流入し、当該ルーメンを通過することができる。
【0011】
小孔における身体通路内で使用される回収カテーテルの第3の実施例は、遠位部を有する外側アクチュエータ・シースと、側壁を有する内側中空回収カテーテルとを有する。前記回収カテーテルは、回収ルーメンおよび遠位端部を画成する。前記回収カテーテルは、アクチュエータ・シース内に収納されている。前記回収カテーテルは、アクチュエータ・ワイヤが回収カテーテルに沿って延在しており、先端部が回収カテーテルの遠位端部の遠位に位置する。機械的に径方向に拡張および収縮自在な回収装置は、近位端部が近位拡張要素によりアクチュエータ・シースの遠位部に固定され、遠位端部が遠位拡張要素によりアクチュエータ・ワイヤの先端部に固定されている。前記回収装置は、前記近位端部および前記遠位端部に位置する近位ドーナツ形状遮断バルーンおよび遠位のドーナツ形状遮断バルーンと、前記近位遮断部と前記遠位遮断部との間の中央部と、前記近位端部と前記遠位端部との間に延在するリターン・ルーメンとを有する。前記回収装置は、(1)遮断バルーンが収縮した状態にあり、(2)前記アクチュエータ・ワイヤが回収装置に対して遠位方向に、遠位アクチュエータ・ワイヤ位置まで押動され、前記アクチュエータ・シースが回収装置に対して近位方向に、近位アクチュエータ・シース位置まで引張られたときに、第1の径方向に畳み込まれた形状に配置可能である。前記回収装置は、(1)前記遮断バルーンが膨張した状態にあり、(2)前記アクチュエータ・ワイヤが回収装置に対して近位方向に、近位アクチュエータ・ワイヤ位置まで引張られ、前記アクチュエータ・シースが回収装置に対して遠位方向に、遠位アクチュエータ・シース位置まで押動されたときに、第2の径方向に拡張された形状に配置可能である。前記第2の径方向に拡張された形状であるとき、(1)前記近位遮断バルーンおよび前記遠位遮断バルーンは、前記中央部の半径寸法よりも大きい半径寸法となり、これにより、前記中央部で回収チャンバを画成し、(2)前記近位拡張要素および前記遠位拡張要素は、回収装置のリターン・ルーメンを通って液体の流入を可能にする開口領域を有する。外側通路は、前記回収装置の中央部および前記回収カテーテルの側壁を通って延在する。前記回収チャンバを画成する、前記近位遮断部および前記遠位遮断部の一部、および前記中央部は、前記通路を除いて液体不浸透性である。これにより、液体移送血管の開口部の小孔から前記回収チャンバ内へ流れる液体は、前記通路を通って前記回収ルーメン内に流入し、当該ルーメンを通過することができる。
【0012】
小孔を通って身体通路へ入る液体を液体回収装置へ導く方法の例は、次のように実施される。近位端部と遠位端部とを有し、小孔において、径方向に拡張および収縮自在な回収装置を、第1の径方向に畳み込まれた形状で身体通路内に配置する。前記回収装置を第2の径方向に拡張された形状に配置する工程であって、当該配置する工程の少なくとも一部は、少なくとも1つの機械的アクチュエータ要素を機械的に操作することより実行され、これにより、前記近位遮断部および前記遠位遮断部が機械的に拡張される。前記回収装置が第2の径方向に拡張された形状であるとき、前記近位遮断部および前記遠位遮断部は、中央部の半径寸法よりも大きい半径寸法となり、これにより、前記中央部で回収チャンバを少なくとも部分的に画成する。前記回収チャンバからの液体は、回収装置の中へ導かれる。幾つかの実施例においては、前記回収装置の近位端部および遠位端部に動作可能に連結された第1および第2の機械的アクチュエータ要素を用いて、前記径方向に拡張された形状に配置する工程が実行される。幾つかの実施例において、少なくとも1つの前記アクチュエータ要素を機械的に操作することより、前記径方向に拡張された形状に配置する工程を完全に実行する。幾つかの実施例において、径方向に拡張された形状に配置する工程は、さらに、前記回収装置の近位端部および遠位端部で、近位ドーナツ形状遮断バルーンおよび遠位ドーナツ形状遮断バルーンを膨張する工程を有する。
【0013】
遠位の静脈と流出静脈とを有する臓器から静脈血流を回収する方法の例は、次のように実施される。回収カテーテル・アセンブリのファンネル(漏斗)装置を治療する臓器の静脈口において管状の体内血管内に配置する。当該ファンネル装置は開口端を有する。前記ファンネル装置の開口端は、静脈口で臓器の遠位の静脈内に配置される。前記ファンネル装置は、静脈壁に向かって押圧され、前記ファンネル装置と流出静脈との間を密閉状態にすることにより、前記ファンネル装置と臓器との間に画成される回収チャンバを形成する。薬剤が患者に注入される。前記臓器からの液体は、前記回収チャンバ内に回収される。回収された液体をろ過する。前記ろ過および回収された液体を患者に戻す。
【0014】
回収カテーテル・アセンブリの回収装置と液体が回収される臓器との間で形成される回収チャンバの密閉状態の効果を決定する方法の例は、以下のように実施される。指示薬および治療薬を患者に注入する。臓器の小孔を通って身体通路に流入する液体は、回収カテーテル・アセンブリの液体回収装置と臓器との間で画成される回収チャンバ内に回収される。前記回収された液体を処理する。前記処理する工程は、前記回収された液体から指示薬および治療薬を除去する工程を有する。処理された液体を患者に戻す。全身液を患者から採取する。前記指示薬の存在を確認するため採取された全身液を検査する。
【0015】
患者から治療薬を除去する方法の例は、次のように実施される。治療薬を患者に注入する。臓器からの液体を回収する。親和性物質を有する結合剤を前記回収された液体に追加する。前記回収された液体内の治療薬を親和性物質と結合させる。前記回収された液体および結合剤を処理する。処理工程は、前記回収された液体から治療薬が結合した結合剤を除去する工程を有する。処理された液体を患者に戻す。
【0016】
本発明のその他の特徴、態様、および効果は、以下に続く図面、詳細な説明、および特許請求の範囲を検討しながら見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、先行技術の分離装置で治療されている患者を示す。
【図2】図2は、バルーンが収縮した状態の、先行技術の分離装置を示す。
【図3】図3は、バルーンが膨張した状態の、図2の先行技術の装置を示す。
【図4】図4〜8は、本発明により作られた、機械的支援による拡張機構を含む回収カテーテルの図示例である。図4は、本発明により作られた、機械的支援による拡張装置の第1実施例を示す。
【図4A】図4Aは、畳み込まれた状態にある、図4の構造を示す。
【図4B】図4Bは、図4の構造の断面透視図である。
【図5A】図5A、5B、および5Cは各々、図4の線5A?5A、5B?5B、および5C?5Cに沿って切った断面図である。
【図5B】図5A、5B、および5Cは各々、図4の線5A?5A、5B?5B、および5C?5Cに沿って切った断面図である。
【図5C】図5A、5B、および5Cは各々、図4の線5A?5A、5B?5B、および5C?5Cに沿って切った断面図である。
【図6】図6は、機械的支援による拡張装置に関連して用いるドーナツ形状バルーンを含む、図4の実施例の代替を示す。
【図7】図7は、斜めのドーナツ形状バルーンを用いる、図6のものと似た、さらなる代替を示す。
【図8】図8は、ポンプおよびフィルタが回収カテーテルの延在部内に配置されている、図6のものと似た代替例を示す。
【図9】図9〜16は、回収カテーテル・アセンブリの別の実施例を示す。図9は、ファンネルカテーテルを含む回収装置を示す。
【図10A】図10Aおよび10Bは、図9のファンネルカテーテルをより詳しく示す。
【図10B】図10Aおよび10Bは、図9のファンネルカテーテルをより詳しく示す。
【図11A】図11A、11B、および11Cは、3つの異なる状態にある、回収可能なテンポラリ・バルーン拡張可能ストラットを示す。
【図11B】図11A、11B、および11Cは、3つの異なる状態にある、回収可能なテンポラリ・バルーン拡張可能ストラットを示す。
【図11C】図11A、11B、および11Cは、3つの異なる状態にある、回収可能なテンポラリ・バルーン拡張可能ストラットを示す。
【図12】図12は、図11Cの線7?7に沿って切った断面図である。
【図13A】図13Aは、ファンネルカテーテルを示す。
【図13B】図13Bは、拡張可能メッシュグレード構造を含む、回収可能な分離装置を示す。
【図13C】図13Cは、使用中の図13Bの構造を示す。
【図14】図14、15、および16は、回収可能な分離装置のさらなる実施例を示す。
【図15】図14、15、および16は、回収可能な分離装置のさらなる実施例を示す。
【図16】図14、15、および16は、回収可能な分離装置のさらなる実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明は典型的に、具体的な構造上の実施形態および方法に関する。発明は、具体的に開示した実施形態および方法に制限する意図はなく、発明は、別の特徴、要素、方法、および実施形態を用いて実施可能であることを理解されたい。好適な実施形態は、本発明を図示するために説明しており、その範囲を制限するためのものではない。範囲については、特許請求の範囲で定義してある。通常の当業者であれば、以下の説明に関して様々な均等な変形を認めるであろう。様々な実施形態の同一の要素は一般的に、同一の符号で言及している。
【0019】
図1は、先行技術の装置で治療を受けている患者2を示す図である。薬剤または薬物がシリンジ4またはポンプ(図示せず)で肝動脈5内へ注入され、肝臓3を灌流する。肝静脈血流は2連バルーンカテーテル9で上側下大静脈7内に回収され、接続チューブ17からポンプ21に向って移動し、次に、ポンプ21とフィルタ43との間にある接続チューブ41を通ってフィルタ43へ移動し、次に、血液を内頚静脈へ戻す接続チューブ44により、ろ過された血液は患者2の全身循環系へ戻される。
【0020】
図2は、先行技術の分離装置139であり、膨張していないバルーン143、144および外部カテーテル140の穴部141を示しており、前記穴部を通って肝静脈血流が外部に位置するルーメン内に流れ込む。下大静脈血を右心房に送るリターン・チャネルすなわちスルー・ルーメン(through lumen)(図示せず)は、中央ルーメン(図示せず)内にあり、前記中央ルーメンは、カテーテル142が肝静脈血流用の回収ルーメンと、バルーン用の膨張チャネルと、IVC血を右心房に通過させるスルー・リターン・ルーメンとを収納しなければならないため必要以上に小さい。
【0021】
図3は、バルーン143および144が拡張した先行技術の分離装置139であり、この拡張により、当該バルーン143と144との間の下大静脈(図示せず)部分が分離される。尾側バルーン143は肝静脈(図示せず)の最尾側部の下に配置され、頭側バルーン144は下大静脈(図示せず)と右心房(図示せず)との接合部付近に配置される。肝静脈からこの分離された下大静脈部分へ流れる血液は、カテーテルの壁の開口141を介して外部ルーメン内に回収され、図1のように、チューブ17、41、44を介してポンプ21およびフィルタへ43に移送された後、身体2に戻される。IVCからの血液を右心房に移送するリターン・スルー・チャネルとして機能する中央の溝(図示せず)がある。分離装置の外部回収チャネル、2つのバルーン用の膨張チャネル、およびこれらのチャネルの壁があるため、中央リターン・スルー・チャネルの環状空間は、前記IVCから右心房に十分な血液を移送するためには不十分である。先行技術の装置の設計上この狭窄部が必要となるが、前述のように問題である。さらに、拡張したバルーン143、144の設置面積が非常に大きいことが明らかであり、他の重要な静脈が容易に誤って閉塞される可能性がある。本発明は、後述する幾つかの構成のうちの1つによりこれらの問題を回避する。
【0022】
本発明の装置は、容易に挿入できるよう比較的小型であり、下大静脈内で拡張して機能し、次に、取外すために再び小さいサイズに収縮することが理想的である。実際、前述の種々の実施形態の説明は、膨張性、拡張性、自己拡張性、バルーン拡張性、自己収縮性などの材料の使用を説明しているが、50名の患者のCTスキャンを検討したところ、下大静脈のサイズおよび形状の大きなばらつき、肝静脈口を閉鎖する一方、副腎静脈および腎静脈閉塞しないために必要な臨界長さ、尾側方向における小さい設置面積の必要性、および適切なスルー・リターン・ルーメンの必要性のため、脈管系の肝静脈以外の場所で用いられている先行技術の技法(自己拡張、バルーン拡張など)を単に肝静脈血流回収カテーテルに適用するだけでは満足することができない、通常ならぬ要求が装置に求められていると発明者は結論付けている。このため、図4および図5A〜5Cを参照して以下に説明する好適な1実施形態、およびその他の実施形態は機械的支援による拡張システムを用いることにより最適に機能する。当該機械的支援による拡張システムは、近位および遠位の張出し部(flares)131、132に追加的張力を与えてこれらの拡張および収縮を向上および支援する近位方向の機構(例えば、外側アクチュエータ・シース73)および遠位方向の機構(例えば、アクチュエータ・ロッド154)を用いる。実施形態の幾つかはバルーン拡張を用い、1実施形態は自己拡張ブレード(braid)を用いているが、現時点で好適な構成は、図4および図5A〜5Cの回収装置138など、非バルーン式の機械的支援による拡張を用いるものである。
【0023】
下大静脈内で機械的支援による拡張が自己拡張設計に比べより好適に作用する理由には、以下が含まれる。
【0024】
1.予短縮:自己拡張では、装置の拡張時に大量の予短縮があり、予短縮の量は、IVCのサイズおよび形状に依存する。IVCの直径が小さい場合、これが大きい場合よりも予短縮の量は少なくなる。肝静脈の全て(典型的に、上から下まで6.5〜7cmの範囲である)を覆うが、副腎静脈または腎静脈を閉塞しない必要がある。従って、展開したときの装置の長さは重要である。一般的に、自己拡張性装置では長さを制御できず、このことは、腎および副腎静脈の閉塞につながる。あるいは、機械的支援による拡張では、張出し部(図4に関して後述する張出し部131、132)の張力を各患者の解剖学的構造に合わせて調節できるので、長さを制御することができる。この故に、IVCが小さい患者においては、張出し部の張力を増大して、この追加的な機械的支援がない場合よりも短い長さにし、純粋な自己拡張システムにはない制御要素を追加する。この理由だけでも、自己拡張のみの設計を用いず、機械的支援による拡張の設計を用いる強い動機となる。
【0025】
2.本当に効果的にするためには、自己拡張ブレードを特大とし、膜によりブレードが収縮しないよう、エラストマー膜を特大状態で適用しなければならない。自己拡張装置(典型的に、特大状態で完全に拡張したときに約45mm)を15Fr.(5mm)カテーテルから取外そうとするとき、この追加の膜材料に対応しなければならない。ブレードが収縮すると、前記膜材料は不均等に畳まれ、塊になる。これは、遠位の環状張出し部を取外す場合に特にそうである。ブレードの中央部が回収チューブに取付けられており、近位のブレード張力により完全に収縮できないからである。換言すれば、近位環状張出し部および中央部をブレードの引張により取外すことはできるかもしれないが、自己拡張構成において余分な膜材料で意図的に特大になっている、遠位環状張出し部を取外す場合には困難を予期すべきである。機械的支援による拡張・縮小は、この問題を回避することができる。
【0026】
3.自己拡張管状メッシュブレードは典型的に、レーザーカットステント(これは極度に高価である)よりも、働かせる径方向の力が小さく、従って、特に下大静脈内での多くの異なる形状および角度を考慮すると、固い密閉状態を作るために、機械的支援による拡張、すなわち、自己拡張にはない余分な径方向の引張力が必要となろう。実際、前述のCT検査でしばしば実証された中間副腎下大静脈の鋭角により、自己拡張装置に特定の問題が発生する。この位置での鋭角により、ブレードの座りが不適切になり、この故に、装置の座りも不適切になるからである。純粋な自己拡張システムで可能な力よりも大きい力でブレードを駆動するために、能動的な拡張、すなわち、機械支援が必要である。
【0027】
4.ワイヤのサイズおよびワイヤの数のトレードオフ。装置は、少ない数の細いワイヤで小型に作ることができるが、自己拡張のみを用いる場合、径方向力は小さくなり、固い密閉状態を作る可能性は少なくなる。確実な密閉状態を提供するために機械的支援による拡張があれば、小型な装置を構成することができる。
【0028】
5.後で詳しく述べるように、図4のブレードの腹側面にのみ取付けられた回収カテーテルがある場合、回収カテーテルは、実際に偏心的に配置されたときに、血管内で中央に位置付けされる傾向がある。自己拡張機構を用いると、特にIVCの様々な形状を考慮すれば、張出し部によりIVCの壁に対して不均等な圧力がかかり、この故に、密閉状態が確実とは言えなくなる可能性がある。機械支援機構を用いれば、余分な環状の張力を与えることができ、これにより、この問題を克服することができる。
【0029】
6.管状ブレード構造の別の特性は、径方向の強度を与えるために実現する必要がある臨界ブレード角があることである。この臨界角が実現されると、ブレード管がより強くなり、ブレードを畳み込むために必要な内向きの力が劇的に増大する。この臨界ブレード角は、純粋な自己拡張システムで可能な直径よりも大きい直径にブレードを駆動する傾向がある能動的な拡張、すなわち、機械的支援による拡張で、より容易に実現できる。実際、ブレード構造に最適なブレード角を与え、この故に、最適な径方向強度を与える臨界角は、純粋な自己拡張装置では全く実現できない可能性がある。さらに、純粋な自己拡張システムでこの臨界ブレード角が実現できたとしても、回収のためにブレードを畳み込むことはさらに問題がある。
【0030】
7.自己拡張システムは、挿入および回収のために装置を抑える外側シースが必要である。装置の拡張・収縮を制御する能動的なシステムでは、純粋な自己拡張システムで実現できる外形よりも小さい全体的な外形を作るのに、この外側シースは必要ない。
【0031】
図4〜8で後述する機械的支援による拡張機構が、先行技術の装置の中で本発明の実施形態の幾つかにおいて示したバルーンのみによる拡張機構よりもうまく作用する理由は、以下の通りである。
【0032】
1.バルーンの使用を回避することにより、装置が簡単になる。
【0033】
2.バルーンのみによる支援拡張では、バルーンをしぼませてIVC血が心臓に戻るようにするときに、固い密閉状態を作るのに必要な力が与えられず、また、長さを制御できない。
【0034】
3.幾つかの状況では、機械的支援による拡張と関連してバルーン拡張機構を用いることができ、本発明の実施形態の幾つかはこれを反映している。
【0035】
この故に、前記の理由により、新規の機械的支援による拡張は、既に説明したバルーンのみの拡張や自己拡張などの単独型の技術および方法よりも優れている。本出願で用いる機械的支援による拡張は、好適な実施形態において拡張を支援するために、バルーンを使用して、または使用せずに機械的拡張構造により実施する。
【0036】
回収カテーテル・アセンブリ136の1実施形態を図4〜4Bおよび5A〜5Cに示す。当該アセンブリは、エラストマー・カバー97を有する、拡張可能または膨張可能、および収縮可能なメッシュブレード130を用いた回収装置138を含む。前記回収カテーテル・アセンブリ136は自己拡張性および自己収縮性を有しても良いが、後述する機械的拡張構造によって拡張可能であることが好ましい。
【0037】
当該実施形態の形状において、回収装置138は、各端部に突出して遮断要素を形成する張出し部131、132を有する「犬の骨」形状を有し、これにより、肝静脈血流回収チャンバ94(hepatic venous effluent collection chamber:HVECC)によって肝静脈52の小孔51がどの程度覆われるかが画成される。装置138の形状は、ブレード技術、ニチノール(商標)(またはブレード130を作るその他の材料)の熱処理、ブレード130の回収カテーテル76への取付け、回収ルーメンの画成、および潜在的にはブレード内のレイ・イン(lay?ins)により決定される。装置138のメッシュブレード130は、近位端部および遠位端部以外は全てエラストマー物質97で覆われているか、コーティングされており、管状の当該メッシュブレード130内には変形円筒形状の経路が形成されている。エラストマー・カバーは典型的には、化学療法剤やその他の薬剤による劣化に対して耐性があるシリコーン組成またはその他の何らかの生体適合性材料でできており、近位張出し部131に対して近位に、また、遠位張出し部131に対して遠位に延在するが、装置138の両端を覆わない。これにより、血液が下側IVCルーメン99から右心房(図示せず)に流れる非常に大きなスルー・リターン・チャネル124が可能となる。
【0038】
拡張構造100は、メッシュブレード、レーザーカット材料、またはその他の任意の基本的に管状の、径方向に拡張可能な機械的構造によって作製することができ、当該機械的構造は。管状性がより高い、またはより低い(more or less tubular)形状に拡張可能で、IVC血が大きな障害や妨害なしに右心房に戻るのに適切なスルー・チャネルを可能にする。本発明はまた、基本的に管状の、径方向に拡張可能な機械的構造を用いて、腎静脈付近の領域からのIVC血を横隔膜上IVCまたは右心房へ送る一方で、肝静脈血流を回収する方法、および上記およびその他の部分で説明した体外ろ過システムを使用して、または使用せずに当該方法を迅速化する全ての装置に関する。
【0039】
図4〜8の好適な実施形態において、拡張構造100は、メッシュブレード130の近位ワイヤセット146と遠位ワイヤセット147とに各々取付けられた、近位アクチュエータ・シース73および遠位アクチュエータ・ワイヤ154により拡張される。回収ルーメン76に関連して外側アクチュエータ・シース73に前向きの圧力をかけることにより、近位張出し部131は下大静脈の壁まで拡張して密閉状態を作り、アクチュエータ・シャフト73とエラストマー・コーティング・メッシュブレード130との間で画成されるスルー・リターン・チャネル124の近位部124が拡張される。アクチュエータ・ワイヤ154に引圧をかけることにより、遠位張出し部132は下大静脈の壁まで拡張して遠位の密閉状態を作り、スルー・リターン・チャネル124の遠位部が拡張される。肝静脈血流回収チャンバ94は、装置のこれらの2つの張出し端の間に形成される。機械的拡張構造100には、回収チャンバ94に加えて、以下により詳しく説明するリターン・チャネル124も形成される。
【0040】
血液および化学療法剤をHVECC94から回収し、これを体外ポンプ(図示せず)に送る回収カテーテル76は、コーティングされた拡張可能メッシュブレード130の腹側面に接合される。少なくとも1つの穴部95、好ましくは幾つかの穴部95が、ブレード130およびブレードを覆う材料97を貫通して回収カテーテル76のルーメン68内へ配置される。図5A〜5Cを参照のこと。これにより、回収カテーテル76のルーメン68とHVECC94との連通が可能になり、肝静脈血流がHVECC94から穴部95を通り、回収カテーテル76内へ流れ、次いで、ろ過のために体外に送られてから、身体に戻される。
【0041】
前記カテーテルとブレード構造との接合は、破損点となる可能性があるため、特に注意が必要である。ブレードを有する装置130の壁の穴部および回収カテーテル76の穴部95の周りの簡単な円周接合(図示せず)でも十分であるが、カテーテル表面とブレード構造との広領域における接合(図示せず)、および局所円周接合が必要なこともあり、この場合、さらに高い安全性が提供されることが理解されよう。前記接合に加え、ワイヤなど、その他の部材(図示せず)を用いて回収カテーテル76を取囲み、コーティング・メッシュブレード構造130を嵌合させて、回収カテーテルをメッシュブレード構造に固定しても良い。毒性の肝静脈血流が全身循環系に漏れるのを防止することは、優先的に行われる。
【0042】
コーティング・ブレード構造130は略中央部で回収カテーテル76に接合されているため、近位機構によりブレード構造の遠位面が畳み込まれないという意味で、ブレードの畳み込み(collapsing)は接合されていない場合と比べるとより困難となる。従って、この特定の実施形態においては、第2の畳み込み機構が回収カテーテル76の壁内で溝69を占有する硬いプッシュ/プル式ロッドまたはアクチュエータ・ワイヤ154(図5A〜5Cを参照)の形態で提供される。ブレード構造130の遠位ワイヤセット147は、カシメ、ハンダ付け、またはその他の適切な手段により、このロッドまたはワイヤ154に取付けられている。ワイヤ154を引戻すと、ブレード構造130は血管壁155に向かって拡張し、HVECC94の周りに密閉部が形成される。ワイヤ/ロッド154を前進させると、ブレード構造130は畳み込まれ、挿入および取外しができるようになる。ブレード構造130の近位部131は、回収カテーテル76に対するアクチュエータ・シース73の動きにより、拡張したり畳み込まれたりする。
【0043】
特記すべきことは、図4および4Aにおける回収カテーテル76の偏心性である。近位ワイヤセット146で近位方向にアクチュエータ・シース73に取付けられているブレード130は、血管IVCのルーメン99内で回収カテーテル76を中央に位置付ける傾向がある。理想的には、血液が妨げられることなく流れるよう、リターン・チャネル124をできる限り大きく保つため、回収カテーテル76は血管のルーメン内に偏心的に配置されたままとする必要がある。この偏心性の故に、ブレードは、張出し端131、132で血管の壁155に対して均等な圧力を与えない可能性があり、これは、HVECC94の密閉の不均等性に寄与することになる。これらのマイナスの特徴は、様々なブレード技術、ヒートセット技術、およびブレード130の追加のレイ・インなどの技術により、部分的に克服できる。また、ブレード130の部材、すなわち、アクチュエータ・シース73に取付けられた近位ワイヤセット146は、装置の腹側面で短くなっており、これが、この難点をいくらか解決するのに役に立ち、また、ブレード130の遠位ワイヤセット147は、血管ルーメン99内で実際に中央に位置付けされている遠位テンショナ・ワイヤ154に取付けられている。換言すれば、アクチュエータ・シース上の前向きの圧力により、近位張出し部131へ環状径方向の力を与えるように、近位ブレード146をアクチュエータ・シース73に取付けることは、IVCの壁に対して確実な密閉状態提供するために必須である。特にIVCのサイズおよび形状はそれぞれの患者により異なり、また、同一患者内においても異なるため、この追加の圧力がなければ、張出し部131の偏心性により、IVC155の壁に対する均等または適切な圧力は妨げられる可能性がある。
【0044】
図6に示した別の実施形態も、図4に示した機械的支援による拡張装置を用いているが、機械支援はリターン・チャネル124の拡張にのみ用いている。HVECC94は、スルー・リターン・チャネル124の近位端部および遠位端部のバルーン180、181により画成され、前記バルーンはドーナツ形状バルーンとすることができる。機械的支援による拡張装置があることにより、本明細書に挙げた自己拡張装置に固有の問題の多くが克服され、容易な配置および再配置、容易な展開、そしてより重要なことに、管状回収装置138の容易な回収が可能になる。機械的支援による拡張はまた、より大きい圧力を径方向に働かせることが可能であり、バルーン180、181が膨張しているときにリターン・チャネル124のつぶれを防ぐ。別の実施形態のブレード張出し部131、132よりも柔軟性が高いバルーンは、ブレードワイヤ構造よりも、下大静脈内の鋭角に良くフィットし、一貫した、予測可能な密閉状態を作る。バルーンを用いる、現在使用されている先行技術の装置にあった漏れは問題にならない。肝静脈血流を抑えるために、バルーンは良く機能する。先行技術の装置の問題は、バルーンが大き過ぎ、腎および副腎静脈を閉塞する場合があること、また、スルー・リターン・チャネルが小さ過ぎ、肝臓および下半身からの十分な量の血液を、下大静脈経由で心臓へ運べないことである。この後者の問題は、患者にショックや、既に列挙した無数のその他の問題を生じる。この故に、バルーンは現在使用されている先行技術の装置で問題ない。問題なのは、バルーンのサイズおよびスルー・リターン・ルーメンのサイズである。これらの欠点は、図6および図7のものを含め、様々な実施形態で取扱う。
【0045】
ブレード管状構造は、先の実施形態のように、化学療法コンパウンドに対して耐性のある、不浸透性の弾性物質97で覆われている。これは、図4にあるような張出し部131、132または拡張端を有するのではなく、本質的に管状である。リターン・ルーメン124を表す管状構造は、内側の回収カテーテル76に取付けられており、前記回収カテーテルは、1若しくはそれ以上の小孔95により肝静脈血流回収チャンバ(hepatic venous effluent collection chamber:HVECC)94と連通している。外側のアクチュエータ・シース73は、管状リターン・チャネル124の拡張および畳み込みを支援するために、内側の回収カテーテル76に対してスライド自在である。ブレード130は、外側アクチュエータ・シース73を内側回収カテーテル76に対して前進させることにより、ブレードを拡張するため、またはブレードの拡張を支援するために張力を与えるように、また、外側アクチュエータ・シース73を内側回収カテーテル76に対して引戻すことにより、ブレードを畳み込むか、ブレードのより完全な畳み込みを支援するために張力を与えるように、この回収カテーテル76に取付けられている。
【0046】
硬いプッシュ・ワイヤまたはアクチュエータ・ワイヤ154を遠位ワイヤセット147に取付け、先に図4で示したように、管状ブレード構造を拡張し、または畳み込み、あるいは拡張または畳み込みの支援をすることができる。拡張または拡張支援は、ワイヤ154を内側回収カテーテル76に対して引戻すことにより実現される。管状ブレード付きリターン・チャネル124の畳み込みまたは畳み込み支援は、ワイヤ154を内側カテーテル76に対して前進させることにより実現される。ワイヤ154は好ましくは、図5A、5B、および5C通りに、内側カテーテル76の壁のルーメン69内に収納する。
【0047】
近位バルーンおよび遠位バルーンは、管状ブレード付きスルー・リターン・ルーメンの外面に取付けられ、図5A、5B、および5Cに示したように、膨張ルーメン66、67経由で膨張される。ただし、膨張ルーメンは、内側カテーテル76の壁内で、これらの図示と異なる位置にしても良い。これらの2つのバルーン180、181は、拡張可能スルー・リターン・チャネル124に対して幾分垂直の向きにあり、ドーナツ形状で拡張可能スルー・リターン・ルーメン124を取り囲む。最頭側位置のバルーン181は、装置の頭側端および頭側バルーンを右心房に着座させる際に有利であるので、これよりも尾側のバルーン180よりも大きくても良い。下大静脈の右心房と肝静脈52との間の部分は、典型的に、(前記の発明者が実施したCT検査からわかったように)副腎下大静脈よりも大きく、この故に、大きいバルーンまたはその他のシーリング装置を頭側方向に設ける必要がある。近位および遠位バルーンの両方とも、スルー・リターン・ルーメンの軸に対して幾分垂直の向きにあるので、設置面積は、現在の先行技術の装置の球形バルーンよりもかなり小さく、従って、副腎および腎静脈の閉塞は、現在の先行技術の装置と比べると、それほど問題とならない。
【0048】
あるいは、エラストマー・カバー97は、図14で説明するように、メッシュブレードの一部のみを覆っても良い。この場合、バルーン構造(図示せず)は、本質的にHVECC94を取り囲んで、図6の2つのドーナツ形状バルーン180、181ではなく、これを画成する。
【0049】
さらに、CT検査から、左腎静脈182(前方または冠状断によるIVC内の装置の図である図7)は常に、右腎静脈183よりも頭側方向に位置することが実証された。また、副肝静脈184は、腹側方向または右側のいずれかでIVCに入ることも実証された。この故に、図7で示したように角度を付けて尾側ドーナツ形状バルーン180を配置することが有利である。これは、HVECC94が右側ではより尾側方向に延在して、副肝静脈184の閉塞を回避し、HVECC94からの副肝静脈血流を捉えるが、左側ではより頭側方向に延在して、最尾側の副肝静脈184とほぼ同じ軸レベルで位置することがある左腎静脈182の不慮の閉塞に対する安全マージンを与えるようにするためである。また、大静脈・心房ジャンクションは非対称なことも多く、近位および副腎IVCの独特な解剖学的構造により良く対応するために、両端で傾斜バルーンを用いることができる。図7の斜めのドーナツ形状バルーン810を用いることにより、現実として非対称形の解剖学的構造が存在する場合に、拡張可能ブレードであろうが、球形バルーンであろうが、近位および遠位の閉塞機構を対称形にする必要性が克服される。
【0050】
ポンプおよびフィルタが体外にあることは不便であり、追加の工程が作られることにもなる。ポンプおよびフィルタを回収カテーテル内に配置し、ろ過された血液を体外位置に送ることなく全身循環系に戻すことは、ポンプおよびフィルタ部品を小型化することにより実現できる。図8は、カテーテル76の延在部内にフィルタ43およびポンプ21がある、図6に似た回収カテーテル76の簡略図を示す。この延在部は、右心房200を通り抜け、上大静脈201へ入る。ポンプ21が肝静脈血流回収領域94付近にあるので、肝静脈血流回収領域94内に負圧領域を作ることの利点は高く、IVC99よりも肝静脈血流回収領域94内の方が低圧であれば、IVCの高圧の中へ漏れる可能性がないので、全身循環系へのいかなる漏れをもさらに防ぐことができる。ポンプ21は、血液を推進することができる3種類の一般的なポンプのうちの1つとすることができる。すなわち、ローラ、遠心、および軸流ポンプである。これらの種類のうち、遠心ポンプがこの用途に最も適している可能性が高い。これらは一般的に、他の種類よりも溶血を起こしにくく、小型化が容易であるからである。遠心ポンプは、非閉塞ヘッドと、通常電磁的に駆動される、バルブレス・ポンプ・ハウジング内に配置された様々な数のインペラブレードとから成る。ポンプの回転により渦巻きが発生し、その結果、非拍動の1方向の血流が生まれ、高流量が実現できる。ただし、遠心ポンプが乗り越えることができる圧力差には限界がある。本発明の本来の用途において、大きな圧力差を必要としない静脈〜静脈流がある。Medtronic、Sarns、およびSt.Jude Medicalなどを含む、幾つかの会社が現在遠心ポンプを生産している。新生児用に開発されたポンプを本出願の用途に改変しても良い。軸流ポンプは、小型のケーシングに収納されたロータ・タイプのインペラから成り、機械的動作は電磁的に駆動されるロータ・システムにより駆動される。1例は、Impella Cardiotechnik AGのImpellaポンプであり、MicroMed DeBakey VAD(登録商標)もある。別の実施形態(図示せず)においては、フィルタ43を体外に残した状態で、ポンプ21のみをカテーテル内に配置することができる。
【0051】
図8の実施例のフィルタ43は、これに限定されるものではないが、電子的、カートリッジ、膜、微小管、微小流体、磁気的、化学的、活性炭、正または負電荷のフィルタ部品などを含む、幾つかの種類の1つとすることができる。フィルタ要素は、吸着、または薬剤の分子の多孔質構造への結合、アニオン交換、微粒子ろ過、凝集塊ろ過などにより薬剤を血液から抽出することができる、カーボンベースまたは合成の媒体など、任意の適切な媒体とすることができる。フィルタ構造は、中空糸膜、半透膜、粒状媒質、織布または不織布のフィルタ布、またはその他の適切な形態とすることができる。フィルタは、特に、フィルタの効率がフィルタの表面積に依存している場合、好ましくは、上大静脈201または右心房200内に挿入した後、拡張可能(図示せず)とし、ろ過された血液が体外に運ばれることなく上大静脈201または右心房201に戻るようにすることができる。活性炭フィルタの場合、吸収効率は活性炭の幾つかの異なる種類、すなわち、ROX、UKR、CLAなどや、形状や表面の形態によって異なる。粒子は、ポリメチルメタクリレート共重合体またはその他の何らかの材料で様々な厚さに、様々な方法でコーティングし、赤血球やその他の血液成分への影響を低減させることができる。コーティング厚と吸収効率との間には、トレードオフがあることが多い。用いることができる別の種類のフィルタは、多孔質の中空糸を含むものであり、これは親和性物質をコーティングしても良いし、また、親和性物質は中空糸の内・外のいずれにあっても良い。血液は、多孔質中空糸経由でポンプ送出し、除去する薬物を選択的に中空糸の外側の空間に運ぶか、逆に、血液を、糸の外側の空間経由でポンプ送出し、除去する薬物を選択的に中空糸の内側に運ぶことができる。
【0052】
別の種類の血液フィルタは、微小流体血液フィルタである。現行の装置と併用し、図8で前述したように化学療法剤を注入し、回収するが、回収ルーメン76に入ったとき、化学療法剤を含む血液は、親和性物質でコーティングされたコーティング酸化鉄ビーズと混ぜられる。化学療法剤はコーティング・ビーズに凝着し、血液と一緒にフィルタ43へポンプで送出され、ここで電磁石(図示せず)がビーズおよび化学療法剤を血液から分離する。カテーテル内フィルタのスペース上の制約を考慮すれば、このシステムは、従来の設計で必要となるかさばりを回避できるという利点がある。同一装置内で様々な種類のフィルタを1若しくはそれ以上用いる、ハイブリッド・フィルタを用いても良い。
【0053】
フィルタ43は、ポンプ21の圧力で、またはその他の手段で拡張することができる。肝静脈血流チャンバ94からの血液は、幾つかの別の実施形態のように、小孔95経由で回収カテーテル76に入り、ポンプ21およびフィルタ43を介して回収ルーメン76の延在部を頭側方向に進み、装置の遠位端部を通って上大静脈201または右心房200へ出る。硬いアクチュエータ・ロッド154が出るように、回収カテーテル76に側孔を設けることができる。あるいは、アクチュエータ・ロッド154を、回収カテーテル76の外側に位置し、この位置で管状ブレードに取付けられ、回収カテーテル76に対してスライド自在な別個のアクチュエータ・スリーブ(図示せず)に取付け、アクチュエータ・ロッド154を引戻すと、ブレードを拡張するように別個のアクチュエータ・スリーブ(図示せず)が動き、アクチュエータ・ロッド154を前進させると、ブレードを畳み込むように別個のアクチュエータ・スリーブ(図示せず)が動くようにしても良い。
【0054】
さらに別の実施形態(図示せず)は、図6のように自己拡張リターン・チャネル124およびドーナツ形状バルーン180、181を用いるが、図6および7のような能動的拡張システムは用いていない。能動的機械拡張支援により、純粋な自己拡張システムにない制御が与えられるが、バルーン膨張により与えられる拡張支援とスルー・リターン・ルーメンの自己拡張機構を組合わせれば、本実施形態のスルー・リターン・ルーメンの開存性を維持するのに十分な径方向強度が与えられる。密閉機能はバルーンにより与えられるので、前述した自己拡張システムの好ましくない質の一部は、自己拡張部品がこの特定の実施形態のようにスルー・リターン・ルーメンのみであれば、直接関係がない。これ以外については、本実施形態の機能および部品は、図6および7と本質的に同一である。
【0055】
その他の回収カテーテル・アセンブリ
図9は、回収装置138を含む回収カテーテル・アセンブリ136の別の実施例を示す。回収装置138は、肝静脈52の小孔51を覆い、肝静脈血流を分離し、肝静脈血をカテーテル53またはチューブに回収して、図1のようにフィルタ43にポンプ送出し、身体に戻す、ファンネルカテーテル50を含む。ファンネルカテーテル50は、肝静脈口51上でこれを固定する別個の静脈カテーテル55上に設けられた、回収可能なテンポラリ・バルーン拡張可能ストラット54で所定位置に保持する。バルーン拡張可能ストラット54は、開口構造79を画成するストラットのメッシュ77を含む。回収可能なテンポラリ・ストラット54の長さは、設計により、ファンネルカテーテル50よりも長くなっている。こうすることにより、ファンネルカテーテルの両端を腹側下大静脈へさらに確実に固定できるからである。ストラット54はまた、ファンネル50の周辺を圧迫し、下大静脈の腹側面に対する固い密閉状態を確実化する。ファンネル50を圧迫するストラット54の表面は、ファンネル50を妨害しないよう、ぎざぎざが付いていても良いし、凹部58を有しても良い。ストラット54の開口構造79は、腎または副腎静脈を覆ったとしても、これらからの静脈流入を妨げない。この設計により、前述の先行技術の装置の2つの問題、すなわち、腎/副腎静脈の閉塞、およびIVC血のための適切なスルー・リターン・チャネルの欠如が解決される。テンポラリ・ストラット54は、ファンネルカテーテル50(斜め形状となっている)を近位IVC56の腹側面に押付け、腎/副腎静脈を閉塞することなくこれを肝静脈口51上で固定する。ファンネルカテーテル50が占有するIVC56の環状スペースはごくわずかであり、テンポラリ・ストラット54上のバルーン60がしぼんでいるときには、血液がテンポラリ・ストラット54の空間または間隙59経由で中央および遠位IVC56から右心房へ自由に流れることができる。
【0056】
図10Aおよび10Bは、ファンネルカテーテル50をより詳しく示す。これは、2本のシャフト61、62と、シリコーン・エラストマー(図示せず)またはその他の膨張可能で化学療法剤による劣化に対して耐性がある物質で覆われた、ニチノール(商標)(または、その他の適切な生体適合性材料)のメッシュブレード63とから成る。しかし、この用途について独特なのは、ファンネルカテーテル50の2本のシャフト61、62が遠位端部64で斜角になっており、ファンネル50が、先行技術のファンネルカテーテルのように遠位方向に向けられるのではなく、カテーテルの側面に突出することである。図10Aにおいて、内側シャフト61は外側シャフト62に対して引戻されている。これにより、ファンネル50のメッシュブレード63が外側シャフト62のルーメン内に保たれる。メッシュブレード63は、内側シャフト61および外側シャフト62の両方に接合されている。内側シャフト61が引戻されると、メッシュブレード63は、外側シャフト62により形成された溝と平行に、これの内部に、円筒形の溝を形成する。10Bに示したように、内側シャフト61が遠位方向に両シャフトの両端に向かって前進すると、メッシュブレード63は、外側シャフト62の遠位端部から推進され、ファンネル50を形成する。さらに、長さ方向、横方向、および斜めのレイ・インを追加することにより、ファンネルカテーテル50の形状および強度に影響が出る可能性がある。ニチノール(商標)の形状記憶特性、および特定の特性を持つこれらのレイ・インをブレード内の特定位置に配置できる能力により、ブレード構成装置を特定の用途に合わせて調整することができる。ニチノール(商標)とブレード技術の組合せにより、本質的に確実に大抵の形状が可能となる。実際、肝静脈の開口部を覆うための本パラグラフの形状の形成についての説明は、先の諸方法とは異なり、前記諸方法は全て、カテーテル端の遠位に突出するファンネルである。この構造は、本明細書で説明する別の実施例で用いることができる。
【0057】
図11A、11B、および11Cは、回収可能なテンポラリ・バルーン拡張可能ストラット(retrievable temporary ballloon expandable strut:RTBES)54を表す。図11Aにおいて、ストラット54は膨張したバルーン71の上で拡張している。カテーテルは、2本のシャフト、すなわち外側のもの73と内側のもの76とを含む。バルーンは内側シャフト76に、RTBESは外側シャフト73に、接合77により取付けられている。バルーン71の遠位で、ストラット72のブレード77は、図示の通り、内側シャフト76に接合69されている。
【0058】
図11Bは、ストラット54が拡張しているときの、しぼめるバルーン71を表す。外側シャフト73における、内側シャフト76に対して前向きの力(矢印)は、ストラット54がIVC(図示せず)の壁およびファンネルカテーテル(図示せず)に対して拡張された状態であり続けるように支援する。ストラット54の間隙79は、血液がIVCから右心房へ流れるのに非常に適したスペースを提供する。ストラット54からの圧力は、ファンネルカテーテル50を腹側IVCに押付け、肝静脈口51上でこれを所定位置に固定する。RTBES54は、ファンネルカテーテル50と同様に、内頚静脈または大腿静脈経由で挿入することができるが、通常、この2つは別個の静脈経由で挿入する。さらに、RTBES54のシャフト76は、肝臓注入の実施中には他の目的を果たさないので、肝静脈血がフィルタを通った後にリターン経路として用いることができる。このように用いる場合、好ましくは、内頚静脈経由で挿入する。また、RTBES54のシャフト73、76は、シャフト73、76に沿ってルーメンへの開口(図示せず)を有するので、戻る血液の一部は上大静脈へ導かれる。
【0059】
図11Cにおいて、外側シャフト73は近位方向にストラット54に接合77され、内側シャフト76は遠位方向にストラット54に接合69されているので、外側シャフト73は内側シャフト76に対して引戻され(矢印)、ストラット54をバルーン71上で畳み込む。これにより、小さい外形での装置55の挿入および取外しが可能になる。
【0060】
図12は、バルーン71およびストラット54に対して近位の装置55の2本のシャフト73、76の断面図である。これは、内側シャフト76および外側シャフト73を図示している。内側シャフト76は、大きいルーメン68と、バルーン膨張用の少なくとも1つの小さいルーメン67とから成る。ガイドワイヤ(図示せず)の挿入または造影剤の注入用に、別のルーメン66があっても良い。造影剤は、内側シャフト76と外側シャフト73との間のスペース65から注入しても良い。
【0061】
図13Bおよび13Cは、回収可能な自己拡張またはバルーン拡張メッシュブレード構造80を開示している。これは、図10のファンネルカテーテル50とは異なる可能性が高いファンネルカテーテル81(図13Aを参照)を介して送り、回収することができる。ファンネルカテーテル81は、この構成のファンネルカテーテルに閉塞または分離が不要であり、カテーテルの遠位端部のファンネル82がカテーテルのシャフトの軸に沿って導かれるという点で、より簡単な設計とすることができる。実際、ファンネルカテーテルは必要でさえないかもしれない。
【0062】
図13Bにおいて、分離装置は、これに限定されるものではないが、シリコーンなどの、濃縮された化学療法剤の化学薬品性に対して耐性のあるエラストマー材料(図示せず)で覆われた、回収可能な自己拡張またはバルーン拡張メッシュブレード構造80である。エラストマー・カバー(図示せず)は、この管状構造80の全てを覆っても良いし、好適な実施形態においては、腹側の半分のみを覆っても良い。この後者の構成は、腎または副腎静脈の閉塞を防止する。この特定の構成において、分離チャンバ装置は、サイドアーム83が逆さに構造80のメイン・ルーメン84内へ入る、管状のメッシュブレード構造80である。この倒立サイドアーム83は、肝静脈血流を体外に運び、そこでフィルタ経由でポンプ送出する、回収チューブ86に接合85されている。あるいは、回収チューブ86は、図4の回収ルーメン76と同様に取付けても良い。また、ファンネルカテーテル81内へ引戻して取外せるように構造80に取付けられたテザー・ワイヤ88も図示されている。あるいは、倒立サイドアームの代わりに、メッシュブレード構造80を図4で前述したように回収ルーメン76に取付けても良い。
【0063】
図13Cで示したように、倒立サイドアーム83を含む、回収可能な肝静脈80の腹側面は、肝静脈52の小孔51を十分に覆うことができ、肝静脈血流を開口部88経由で倒立サイドアーム83および体外への回収チューブ86内へ導く小さいリザーバとして作用する大きさの凹部87を含む。この構成により、効果的な肝静脈分離、およびIVC血が右心房に流れるための非常に大きなスルー・リターン・チャネルが与えられ、先行技術の装置の大きな問題が解決される。
【0064】
図14は、回収可能な分離装置90を示し、図12のより柔軟な倒立サイドアーム83ではなく、体外へのチューブ91が装置90の壁に直接接合(図示せず)されている。回収可能な分離装置90の壁は、肝静脈口51を覆い、血液を開口部95経由でチューブ91内へ導く小さいリザーバ94として作用する凹部93を有する。その他の特性は、図8Bおよび8Cのそれらと同様である。図8B、8C、および9の両発明において、密閉状態を向上させるために、回収チャンバの周りに追加のエラストマー材料96の層、またはバルーン構造(図示せず)さえをも設けることができる。ブレード(図示せず)の特別なブレード技術も、これらの位置で密閉状態を向上させることができる。肝静脈は腹側方向または右側でIVCに入るので、エラストマー・コーティングは、円周ではなく、これらの位置に制限される場合がある。また、エラストマー材料97が装置の腹側および右側面のみを覆う、図8および9の実施例において、前述の追加の密閉方法96で前述の凹部を本質的に取り囲み、より効果的な密閉を行うことができる。テザー・ワイヤ99も図示している。
【0065】
また、エラストマー・コーティング97を有する拡張可能なメッシュブレードは、両端にファンネル形の構造(図示せず)を含み、肝静脈血の分離を行うようにしても良い。両端は、大量の力で両端を張り出させ、IVCの壁と接触させ、追加の密閉特性を与える、ニチノール(商標)などの自己拡張性材料(図示せず)から成る。
【0066】
図15は、回収可能なテンポラリ・バルーン拡張可能ストラット(retrievable temporary balloon expandable strut:RTBES)98を用いるという点で、構造上、図11A、11B、および11Cと似た、別の構成を示す。しかし、この特定の構成においては、RTBES98は、ファンネルカテーテル50をIVCの腹側面に対して圧迫するためには用いない。RTBES98は、ファンネルカテーテル50が先の例で機能したように機能する、回収チャンバ101を含む。RTBES98は、図6A、6B、および6Cに示したように、バルーン71を膨張させることにより拡張し、内側シャフト76および外側シャフト73を操作することにより縮小する。少なくともストラット98の腹側面は、エラストマー材料97で覆われているが、エラストマー材料は、遠位端部および近位端部以外の構造全体を覆っても良く、また、図14のように、エラストマー材料の余分な層96が回収チャンバ94を少なくとも部分的に囲んでも良い。この構成や、その他の構成の形状は、ブレード技術、レイ・インの使用などにより制御できる。肝静脈回収チューブ91は、先の例のように、体外に導くことができるが、あるいは、図示したように、内側ルーメン76の遠位面に導き、これに接合することもできる。図12の断面図はこの場合に当てはまり、肝静脈血は、大きい中央ルーメン68を通って導かれる。
【0067】
図16は、エラストマー・カバー113を有する回収可能な自己拡張メッシュブレード装置110を用いる、さらに別の構成を示す。この2連ファンネル114構成において、装置110の両端114は中央部よりも張出している。装置110の中央部は、回収カテーテル112の少なくとも1つの、好ましくは幾つかの開口部111で回収カテーテル112に接合されている。両端での追加圧力により、効果的な密閉状態を作り、肝静脈血流を分離し、これを回収カテーテル112に接続する開口部111へ導く。装置110の近位端部のテザー・ワイヤ115を回収カテーテル112のシャフトに取付けても良いし、一緒に接合して、装置110の取外しのための単一のテザー・ワイヤ(図示せず)を形成しても良い。この実施例において、回収カテーテル112は装置110の全長にわたって延在し、配置、操作、および取外しの目的で、装置に幾分の剛性および押動能力を与える。しかし、装置110の全長にわたって延在しないこともある。
【0068】
ブレード技術は典型的に、構造の両端では拡張性がより高いブレードを作り、中央部では拡張性をより低くする。ブレード中央のフィラメントの溶接部を用いて、横方向のレイ・インの挿入のために、遠位端部よりも小さい中央部を作る。装置110の腹側面の開口部114の接合はまた、肝静脈血流のために中央部に小さいリザーバを作るのに役に立つ。ファンネル形の両端は、図1、2、3の先行技術の装置の拡張したバルーンよりも設置面積が小さく、腎静脈を閉塞しない。しかし、装置110の背側面の周りで、ブレード123の一部がエラストマー・コーティング113でコーティングされていない。これにより、腎または副腎静脈からの血液が開口メッシュ経由でリターン・スルー・チャネル内に流れるようになる。
【0069】
回収カテーテル112の端部117、装置118の遠位端部、および装置110の近位端部119に放射線不透過性マーカーがある場合も、ない場合もある、あるいは、マーカー(図示せず)は、装置110上にあっても良い。
【0070】
装置110は典型的には、外側シース121内に収納されたエラストマー・コーティング113を有するメッシュブレード122であるファンネルカテーテル120を介して送り、取外す。展開時には、前記の部品を全て含む外側シース121を大腿静脈または内頚静脈に挿入し、内頚静脈への挿入の場合には、先端部を最尾側肝静脈のすぐ下に配置する。回収カテーテル112上で前向きの圧力を保ちながら、図16に示すように装置110を展開しながら、外側シースおよびファンネルカテーテル120を一緒に引戻す。近位端部は、最頭側肝静脈に対して頭側となる。肝動脈に選択薬を注入し、肝静脈血を開口部113経由で回収カテーテル112に回収して、図1のように体外のフィルタを介してポンプ送出し、身体に戻す。あるいは、ろ過された血液は、ファンネルカテーテル120を介して身体に戻しても良い。処置の終了時点で、外側シース121をファンネルカテーテル120上から引戻し、ファンネル120を露出させる。次いで、回収カテーテル112を引戻すことにより、装置110をファンネルカテーテル120経由で引戻す。装置110がファンネルカテーテル120内にあるとき、装置110を含むファンネル120を外側シース121内へ引戻し、装置全体を取外す。再び言うが、大きなスルー・リターン・ルーメンができ、効果的な回収チャンバが存在し、腎および副腎静脈の閉塞を防止する手段が提供されるようになる。
【0071】
本装置のさらに別の構成(図示せず)は、拡張ファンネルを用いて図16のように最尾側肝静脈に対して尾側のIVCを閉塞し、バルーンを用いて上側IVCを右心房のすぐ下で閉塞する。換言すれば、図16の張出し部114は尾側端、すなわち図16では左側にあり、バルーン構造(図示せず)は頭側端にある。IVC血を右心房に戻すリターン・スルー・チャネルとして機能する中央ルーメンは、図16のものと似たエラストマー・コーティングを有する自己拡張ブレード部とすることができる。肝静脈回収チューブに流れ込む肝静脈血のためは、図1、2、および3の先行技術の装置のように分離部内に別個の溝がない。肝静脈血流は、拡張スルー・リターン・チャネルの外側の空間にたまり、回収カテーテル内に導かれ、頭側端のバルーンを介して1回の反復で導かれる。バルーン膨張ルーメンは、前述のように、肝静脈回収チューブのシャフトの壁に含めることができる。右心房の中央リターン・ルーメンの頭側端は、IVC血がこの中央ルーメンから出るように、開口を有するか、または、エラストマー・コーティングのないメッシュブレードから成り、IVC血がブレードの間隙を通って流れる。この構成において、ファンネルは遠位方向にIVCの閉塞、およびIVCの肝静脈部の効果的な分離を非常に小さい設置面積で行い、腎および副腎静脈の閉塞を回避すると共に、スルー・リターン・チャネルの拡張可能部の尾側開口部のファンンネル形状と、拡張されたスルー・リターン・チャネルとの組合せにより、血液がIVCから右心房へ自由に流れるための非常に適切な経路ができる。この構成は、先行技術の装置の現実的な代替である。バルーンを使用するのは、大抵の場合、即時オン/即時オフ能力、はるかに小さい設置面積、大きいスルー・ルーメンなどを含む、幾つかの理由の故に、ファンネル形の閉塞器の方がバルーン閉塞器よりもうまく動作する一方、実際、IVCと右心房とのジャンクションで大きい設置面積で閉塞する必要性がある可能性があるという事実を認めたからである。
【0072】
前記方法は、上側IVC内で中程度の閉塞を作る利点もあり、これにより、IVC内で、肝静脈血流回収領域と比べて高い圧力が作られる。戻る血液への閉塞を回避することは、本発明の主な目的の1つである。閉塞が多すぎると、前述のように、血圧降下などが生じるからである。しかし、制御された、中程度の閉塞を作ることは、肝静脈血流のIVCへの漏れを防止するよう、IVC圧を肝静脈血流回収領域の圧力を上回るように上昇させるためには好ましい。これは、バルーンにより、または、例えば、オペレータが制御するバッフル・タイプの装置など、装置の設計に組込まれたその他の手段により実施することができよう。圧力センサを上側IVC内および肝静脈血流回収チャンバ内に設けて、バッフル装置があってもなくても、2つの領域の圧力を監視することができる。これは、カテーテル・シャフトに沿ってワイヤを設けることにより、または、ワイヤレスの圧力センサを用いることにより実施する。この特定の構成においては、肝静脈血流回収チャンバの周りの密閉により、このチャンバからIVCまたは全身系の血液への漏れだけでなく、IVCからこのチャンバへの漏れも防止することが肝要である。
【0073】
圧力センサは肝静脈血流の圧力、およびIVCまたは右心房の少なとも1つの圧力読み値を検知することに留意されたい。圧力センサをコントローラに、そして、コントローラを体外ポンプに接続することにより、ポンプは、IVCよりも肝静脈血流内で圧力が常に低くなるように制御することができる。肝静脈血流内の圧力がIVC内の圧力に近づいたり、さらには、IVC内の圧力を超えた場合、コントローラがポンプの速度を増加させることにより、より多くの血液が肝静脈血流回収チャンバから引抜かれ、回収チャンバ内の圧力がIVC内の圧力を安全に下回るレベルまで下げられる。これにより、肝静脈血流(低圧)が全身系IVC(高圧)へ漏れることは絶対になくなる。漏れが少しでもある場合、これは、IVCから肝静脈血流回収チャンバへのものであり、これは危険ではない。ポンプの速度および出力を制御することによる圧力の調節は、コントローラにより自動的に、あるいはオペレータ、または肝静脈血流回収チャンバおよびIVCおよび/または右心房(right atrium:RA)の圧力を手動で監視している助手がポンプ速度を手動調節することにより、実施することができる。あるいは、ポンプは、ある速度で動作するようにプログラムするか、単一の圧力センサを用いてコントローラで制御し、HVECCの圧力を、直接測定、外挿測定のいずれであれ、1〜2mmHg(右心房の正常圧力)またはその付近よりも低くなるよう効果的に保つことができる。これにより、HVECCの圧力が必ずIVC/RAの圧力よりも低くなるようになり、この故に、低圧システムから高圧システムへの漏れはなくなる。幾つかの実施例において、IVCの圧力は処置の前に手動で測定されるので、ポンプに対して近位の圧力センサが1つしか必要でなく、ポンプ速度を制御し、このセンサの位置での圧力を、処置の初めに調べたIVC圧よりも低く保つ。
【0074】
さらに別の代替方法(図示せず)は、2個のバルーンを尾側方向および頭側方向の両方で閉塞要素として用いるが、スルー・リターン・チャネルは、図11A、B、Cのようにカテーテルにより拡張可能である。これは、バルーンの実証された閉塞機能を利用するものであるが、拡張性のスルー・リターン・チャネルは、現行装置のむしろ不十分なルーメンがなくてもIVC血を右心房に十分戻せるほど大きい溝を提供する。図11A、B、Cのカテーテル上のストラットは、バルーンの内周および内壁を外向きに圧迫し、バルーンの中央の開口部内にさらなる環状のスペースおよびルーメンを作っている。肝静脈血流は、2つのバルーン閉塞要素で分離されるスペース内に回収されてから、体外へ運ばれる。これは、別個のカテーテル・ルーメン、または図11A、B、Cのカテーテルのメイン・ルーメンにより実施できる。
【0075】
前記パラグラフの実施形態の改変版(図示せず)は、自己拡張装置を用いて、バルーンの中央すなわち「ドーナツ穴」内に拡張性スルー・リターン・チャネルを作るものである。前記パラグラフの実施形態と似ているが、ストラットは、第3のバルーンを用いずに拡張する。閉塞バルーンは、内周から圧迫され、適切なスルー・チャネルを作るようにこれを拡張する。拡張された中央チャネルを有するバルーン構成を、ドーナツ形状バルーンと呼んできた。肝静脈血流回収チャンバ(hepatic venous effluent collection chamber:HVECC)の限界を画成する装置の各端のドーナツ形状バルーン構造を、メッシュブレードなどの自己拡張構造やその他の自己拡張構造と組合わせ、図4および図6に示したようにカテーテル上に取付けることができる。バルーン(図示せず)は、図4の張出し部131、132を補うか、これの代替となるか、図6または図7のように配置する。それ以外は、この改変版は図6と基本的に同様である。
【0076】
血流を与えながら毒性物質で臓器灌流を行い、静脈血流を回収する、その他の全く別個の方法は、適切なスルー・リターン・ルーメンを有さない先行技術の装置または類似装置を用いるが、第2の追加カテーテルシステム、および、必要であれば、下側IVCまたは他の何らかの領域からの血液を体外に輸送してから、静脈血流回収地点を越えて、通常は上大静脈で全身循環系に戻すポンプを追加するものである。これは本質的に、体外バイパス回路を作るもので、追加のカテーテル、穿刺、ポンプ、機器などの故に問題ではあるが、機能的となる可能性が高い。特殊リターン・カテーテル(図示せず)は、2つのリターン・ルーメンを有し、1つは、ろ過された肝静脈血流のためのもので、もう1つは、先行技術タイプの装置の使用により作られた閉塞の周りを体外に導く、全身系IVC血のためのものである。これにより、2本のリターン・カテーテルの必要性を回避することができる。本発明は、適切なスルー・リターン・チャネルの欠如と言う問題を、この比較的煩わしい方法に頼らずに解決する。
【0077】
注入時の装置の動きや移動を防止するために、皮膚挿入位置の、またはその付近の取付け機構(図示せず)を設けることができる。構成は、組織に付けられた縫い目から、皮膚レベルのクリップ、アンカー装置、またはその他のカテーテルの動きを防止する手段まで、様々である。
【0078】
前記の例の全てを用いる方法は、非常に似ている。CTスキャン、MRI、その他などの画像検査を用いて、大静脈・心房ジャンクションであろうと、横隔膜上IVCであろうと、張出した遮断要素の最頭側配置と腎静脈のすぐ上の地点との間の距離を測定する。IVCのサイズも測定する。本発明の図4〜8の装置138など、適切なサイズの回収装置を選択する。典型的に、濃縮された高用量物質で肝臓を灌流するために、大腿穿刺部分からカテーテルを固有肝動脈に配置する。1つの構成であれ、別の構成であれ、本発明の装置をIVC内に配置し、分離装置が肝静脈口を覆うように展開する。装置のより頭側の端部は右心房内に、または長さが通常1〜3cmである横隔膜上IVC内に配置することができる。実施形態の幾つかにおいて張出し構造がある場合、遠位張出し部は、装置が右心房内に配置され、密閉状態を作るのに大静脈・心房ジャンクションでの装置の引張を用いる場合よりも、横隔膜上IVCの壁に対してより大きい力を径方向に、また、IVCの壁に向けられた密閉する環状の力をかける。配置が適切かどうかを調べるために、造影剤を回収カテーテル経由でHVECC内へ、逆方向に注入し、分離部からの漏れがないことを実証する形で検査を行う。右心房への良好なリターン・スルー流があることを調べるために、造影剤を遠位IVC内へ注入する。検査により、腎静脈および副腎静脈の状態も評価し、これらの静脈からの流れに対応するよう、装置を調節する。肝静脈血流を回収し、肝動脈注入を開始する。静脈血流を体外でポンプ送出し、ろ過し、先行技術の装置と同様に一定の時間、身体に戻す。動脈注入の完了後も、濃縮された高用量物質が肝臓から全身循環系へ遅れて血流する事態を防止するため、決められた時間、静脈血流回収および処理を続行する。一定の時間後、選択した装置を畳み込み、引戻し、身体から回収する。
【0079】
アプローチを好ましくは内頚静脈から実施する場合、解剖学的構造のロードマップを作るために、大腿静脈にあるろ過血液リターン・カテーテルを介する投影剤のフラッシュ注入を行うことが予期され、血液は心臓に向かって中心的に流れるので、これは、装置の配置と同時に行うことができる。このカテーテルのサイドアームは、ろ過された戻る血流を維持しながら造影剤を注入する手段を提供する。これは、処置時に装置の配置を監視するのに貴重であり、現行の先行技術の装置では実行不能である。
【0080】
前述の特定の構成の特徴は、IVC内で分離チャンバのより小さい設置面積を提供し、IVC血が右心房に戻るのに適切なリターン・スルー・ルーメンを設けるために、その他の構成と互換的に併用しても良いことに留意されたい。ここで説明した装置は下大静脈内で特定の用途を持つが、体内の他の箇所で用いることも予期される。さらに、肝静脈血流の回収を説明してきたが、薬剤またその他の物質を肝静脈またはその他の組織経由で肝臓へ逆方向に送達するために、回収カテーテル装置を通る流れを逆にすることも可能である。
【0081】
ファンネルカテーテルおよび分離装置およびスルー・リターン・ルーメンの前記説明は、メッシュブレードを特定の構成の支持・拡張部品として用いることを説明しているが、クロスリンク、スパイラルサポート構成、ストラット様構成、幾分平行なワイヤまたは支持部材、非平行ワイヤまたは支持構造、畳まれた構成、円周形バルーン、部分的に円周形のバルーン、スパイラルバルーン、接触構造など、その他の選択肢も本特許出願でカバーするものである。
【0082】
癌、腫瘍、感染症、またはその他の臓器が関与する状態であって、その臓器から排出する静脈が1本または2本若しくは少ししかない前記状態の治療の場合、大静脈を閉塞させる必要はない。単にファンネルカテーテルをその特定の臓器の静脈口に直接挿入すれば、その臓器からの静脈血を回収・分離する役目を果たす。メッシュブレードで構成されていようと、その他の材料で構成されていようと、ファンネルカテーテルは、バルーンベースのカテーテルよりも簡単、容易、安全で、安定し、また迅速な静脈血流の分離・回収方法であり、静脈血流の回収・分離のためのファンネルカテーテルによる静脈の閉塞は、本特許出願で明示的にカバーしている。
【0083】
実際、四肢、腹部、胸部、頚部、または頭部領域であろうが、その他の軟組織または骨領域であろうが、局所解剖学的領域を、身体のそれ以外の領域に毒性効果を引き起こすような濃度の任意の物質で灌流し、バルーンを用いないか、拡張スルー・チャネルを設けないシステムでその物質をおよび回収することは、本出願の一部である。例えば、この物質は、局所感染を治療する抗生物質、抗腫瘍剤、血餅を溶かす血栓溶解剤、脆弱プラークを安定プラークに変換したり、プラークを溶かしたり、細胞増殖を刺激したり、細胞増殖を遅らせたり、苦痛を緩和したり、組織の萎縮や細胞アポトーシスを起こしたり、脂肪分解を起こしたり、発毛または脱毛を起こしたり、聴力、視力、味覚、嗅覚、および触覚を向上させたり変化させる物質などとすることができる。例えば、局所領域や臓器は、脳、唾液腺、甲状腺、リンパ節、軟組織、肺、心臓、脊柱、骨、腎臓、卵巣子宮、乳房、四肢、消化管、鼻腔領域および鼻洞、眼、耳、および喉とすることができる。
【0084】
腫瘍領域を高濃度物質で局所灌流することは、実際、腫瘍を除去とはいかなくとも縮小させる、局所疾患の治療のための将来の第1選択療法となるであろう。実際、腫瘍が少しでも残っていれば、次いで、はるかに小さい腫瘍に手術を行うことができる。
【0085】
静脈が1本または2本しかない臓器の場合、または小孔に直接配置した数本のカテーテルで静脈排液を行う臓器の場合、図16に示したファンネルカテーテル113の設計を用いることができる。ファンネルカテーテルの別の設計を図13Aに示す。高濃度物質を臓器の動脈内に灌流し、ファンネルカテーテルを静脈血流の回収に用いる。静脈血流をフィルタ経由でポンプ送出し、前述のように全身循環系に戻す。この特定の実施形態におけるファンネルの作用は、図10Aおよび10Bのように、内側および外側アクチュエータ・シース61および62を動かすことにより制御することができる。2つのアクチュエータ・シース61、62の端部は、図10Aおよび10Bでは角度が付いており、図示されたファンネルが一方の側に突出するようになっている。角度の付いていない端部を有するアクチュエータ・シースでは、ファンネルは、図13Aおよび16に示した形状で、2つのアクチュエータ・シースの端部から真っ直ぐに突出する。これにより、ファンネルカテーテルは、治療する臓器の小孔内に配置できるようになる。図10Aおよび10Bのような2つのアクチュエータ・シースにより引き起こされるファンネルの機械的作用の故に、ファンネルは小孔のすぐ内側で静脈壁に対して径方向の力を働かせ、ブレードは静脈内でファンネをさらに固定する。
【0086】
本アプローチに敏感に反応する臓器は、腎臓、骨盤臓器、四肢、脳、肺、乳房、および様々な腹部臓器を含み、ファンネルカテーテルを門脈内などに配置する。その臓器に供給する動脈にカテーテルを入れ、薬物を注入する。問題の静脈を閉塞または遮断するために端部のバルーンを用いて静脈血を回収するカテーテルはかなりうまく作用するが、球形であるため、望まれるほどは安定していない。バルーンは血管内で摺動する傾向があり、バルーン閉塞回収カテーテルが摺動して静脈口から出る確率は、前述のファンネルカテーテルの場合よりもはるかに高い。メッシュブレードは、わずかにむらのある表面をファンネル上に作り、前記表面は、内膜を損傷することなく、静脈壁沿いのすべりに抵抗する。
【0087】
さらに、ファンネルの形状は、別の理由からも利点がある。典型的なバルーンカテーテルは、バルーンに対してすぐ遠位の真っ直ぐな円筒形カテーテルの端部に開口を有する。静脈血流をこの端部穴から抜かなければならず、血流静脈の圧力をこれの流入先の静脈よりも低くすることが好ましいので、この回収カテーテル内で吸引力を作るポンプで吸引力をかける。単一の端部穴の場合、吸引力により乱流およびその結果としての溶血が引き起こされる可能性があるのみでなく、吸引力により静脈壁で単一の端部穴を閉塞する可能性もある。ファンネルカテーテルは、直径の大きい静脈からはるかに小さいカテーテルへとスムーズな移行を行い、乱流や溶血を最低限に抑え、吸引によるカテーテルの閉塞を回避することにより、これらの問題を克服する。また、これらの静脈が1本しかない臓器からの静脈血流を回収する際、側副血行路からの排出を最低限に抑えるか、完全に排除することが肝要である。静脈側副血行路は多いが、何らかの理由により臓器内の静脈圧が増加している場合にのみ流れる。この故に、血流静脈および臓器内の静脈圧を低く保つために大量の吸引力を維持できるカテーテルを有することは、回収システムの周りの側副血行路および全身循環系への漏れを防止する上で重要である。
【0088】
確かに、分離装置として作用する回収装置の周りの密閉状態の有効性は、高濃度の有害物質が全身循環系に入るのを防止する上で優れている。自由な肝静脈の圧力は上側IVCまたは右心房内での圧力よりも1〜5mmHgしか高くないので、密閉部は、動脈流を閉塞する圧力(圧力差100〜200mmHg)と同一にする必要はない。しかし、肝静脈血流チャンバからIVCへ漏れが発生しないことが肝要である。密閉状態の有効性を検査するには、造影剤を何度も注入することが必要であるが、これは時間がかかり、あまり正確ではない。毒性物質の漏れを検知する代替方法は、毒性物質のリアルタイム・アッセイを開発し、全身系の血液を周期的に検査するものである。あるいは、容易にアッセイできる物質を毒性物質と一緒に肝動脈に注入することもできる。次いで、これを肝静脈血流および毒性物質と共に回収し、体外へ運び、ここで別個のフィルタ(毒性物質をろ過するフィルタと直列につなぐ)または同一のフィルタで、容易にアッセイできる物質を身体へ戻す血液からろ過して取り除く。従って、容易にアッセイできる物質の全身系血液アッセイにより、分離装置の周りの密閉状態が適切に機能しているかどうかを調べることができる。容易にアッセイできる物質を戻る血液からろ過して取り除くので、全身循環系に何らかの動きがあれば、これは、次いで、毒性物質が全身循環系に漏れている可能性が高いことを担当医に警告することになる。容易にアッセイできる物質は、メトヘモグロビンまたは一酸化炭素の性質を持ち、または、単純、迅速で簡単なアッセイがあるその他の任意の物質、若しくは容易にろ過できる物質とすることができる。
【0089】
装置を構成する材料は、完全な密閉状態をもたらすために十分な環状方向力で同一の患者において異なる形状およびサイズにフィットする能力を含め、柔軟性、拡張性、収縮性などの特性を有する必要があることが明瞭である。IVC内で遭遇する様々な形状は、典型的な動脈内よりもはるかにばらつきが大きく、前記動脈は、幾分丸形で、直径は治療・操作する領域にわたって通常一貫しているが、わずかにテーパ状となっていることもある。HVECCを密閉するのに必要な圧力は確かに動脈系よりも低いが、装置が同一患者の様々なサイズおよび形状にフィットする必要性は、肝後面IVCで用いる装置を構成する際に非常に重要である。本発明の様々な実施形態の構成は、静脈用に特に合わせて採用された設計、材料、および技術を用い、典型的に動脈内で用いる装置とは異なる。
【0090】
先行技術の装置と比較して、回収装置138は小さい設置面積および大きいスルー・リターン・ルーメンを実現することができる。回収装置138の幾つかの実施例は、調節可能な長さで作ることができ、または長さが異なる装置を用いることもできる。
【0091】
前記で言及した全ての特許、特許出願、および刊行物は、引用によって本明細書に加える。
【0092】
以下の特許出願の範囲で定義された本発明の対象を逸脱しない限り、開示した実施形態および実施例に改変および変形を行うことができる。例えば、前述の実施例および実施形態は別個の機械的アクチュエータを用いて近位および遠位遮断要素を拡張しているが、幾つかの場合では、同じ趣旨で単一の機械的アクチュエータを用いることができ、このような機械的アクチュエータの1つは、拡張時に近位端部および遠位端部が拡張される回収装置内に収納されたバルーンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収カテーテル・アセンブリであって、
アクチュエータ要素と、
前記アクチュエータ要素に動作可能に接続され、機械的に径方向に拡張および収縮自在な回収装置であって、
近位端部および遠位端部と、
前記近位端部および前記遠位端部にある近位遮断部および遠位遮断部と、
前記近位遮断部と前記遠位遮断部との間の中央部と
を有するものである、前記回収装置と
を有し、
前記回収装置は、前記アクチュエータ要素を操作することにより、第1の径方向に畳み込まれた形状および第2の径方向に拡張された形状に少なくとも部分的に配置可能であり、前記第2の径方向に拡張された形状にあるとき、前記近位遮断部および遠位遮断部は、前記中央部の半径寸法よりも大きい半径寸法となり、これにより、前記中央部で回収チャンバを少なくとも部分的に画成するものである
回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項2】
請求項1記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、前記回収装置は、前記アクチュエータ要素を操作することにより、前記第1の径方向に畳み込まれた形状および前記第2の径方向に拡張された形状に完全に配置可能である回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項3】
請求項1または2記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、前記回収装置はメッシュブレードを有するものである回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項4】
請求項3記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、近位拡張要素は複数の径方向および軸方向に延長する要素を有し、当該径方向および軸方向に延長する要素は前記メッシュブレードの延長部である回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項5】
請求項3記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、前記近位拡張要素および遠位拡張要素の各々は複数の径方向および軸方向に延長する要素を有し、当該径方向および軸方向に延長する要素は前記メッシュブレードの延長部である回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項6】
請求項3〜5のうちのいずれか1つに記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、前記回収チャンバは前記近位遮断部および前記遠位遮断部で画成され、前記中央部は前記メッシュブレード上にエラストマー材料を有するものである回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、
前記回収装置は、当該回収装置の前記近位端部および前記遠位端部に近位ドーナツ形状遮断バルーンと遠位ドーナツ形状遮断バルーンとを有し、
前記回収装置は、(1)前記遮断バルーンが収縮した状態、且つ(2)前記アクチュエータ要素が畳み込まれた作動状態にあるときに、前記第1の径方向に畳み込まれた形状に配置可能であり、
前記回収装置は、(1)前記遮断バルーンが膨張した状態、且つ(2)前記アクチュエータ要素が拡張された作動状態にあるときに、前記第2の径方向に拡張された形状に配置可能である回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか1つに記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、さらに、
側壁を有し、回収ルーメンを画成する中空の回収カテーテルを有するものである回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項9】
請求項8記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、さらに、
前記回収装置の前記中央部および前記回収カテーテルの前記側壁を貫通して延在する外側通路であって、前記回収チャンバを少なくとも部分的に画成する、前記近位遮断部と遠位遮断部の一部、および前記中央部は、前記通路を除いて液体不浸透性である、前記外側通路を有し、
これにより、前記回収チャンバ内の液体は、前記通路を通って前記回収ルーメン内に流入し、当該ルーメンを通過することができるものである回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項10】
請求項9記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、
前記回収カテーテルは近位部と、中間部と、遠位部とを有し、
前記外側通路は、前記回収カテーテルの前記中間部に沿って配置され、
血液ポンプは、前記回収カテーテルの前記遠位部に沿って配置され、
フィルタ要素は、前記回収カテーテルの前記遠位部に沿って配置されて前記回収カテーテルのルーメンを通過する液流から少なくとも1つの薬剤をろ過して取り除くものである回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項11】
請求項8〜10のうちのいずれか1つに記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、さらに、
前記回収チャンバに備えられた第1の圧力センサと、
前記回収装置の遠位に配置された第2の圧力センサと、
前記回収カテーテルに動作可能に連結され、前記回収カテーテルを通る液体を送出し、前記回収カテーテルを通過した液体をろ過するフィルタ要素およびポンプと
を有し、
前記ポンプは前記第1および第2の圧力センサに動作可能に連結され、使用中の前記回収チャンバ内の圧力の制御を可能とするものである
回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項12】
請求項8〜10のうちのいずれか1つに記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、さらに、
前記回収カテーテルに動作可能に連結され、前記回収カテーテルを通る液体を送出し、前記回収カテーテルを通過した液体をろ過するフィルタ要素およびポンプと、
前記ポンプの近位に備えられた圧力センサと
を有し、
前記ポンプは前記圧力センサに動作可能に連結され、使用中の前記回収チャンバ内の圧力の制御を可能とするものである
回収カテーテル・アセンブリ
【請求項13】
請求項1〜12のうちのいずれか1つに記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、
前記アクチュエータ要素は、第1および第2のアクチュエータ要素を有し、
前記回収装置は、前記第1のアクチュエータ要素に動作可能に接続された近位端部と、前記第2のアクチュエータ要素に動作可能に接続された遠位端部とを有し、
前記回収装置は、前記第1および第2のアクチュエータ要素を操作することにより、前記第1の径方向に畳み込まれた形状および前記第2の径方向に拡張された形状に少なくとも部分的に配置可能である回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項14】
請求項13記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、前記回収装置は、前記第1および第2のアクチュエータ要素を操作することにより、前記第1の径方向に畳み込まれた形状および前記第2の径方向に拡張された形状に完全に配置可能である回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項15】
請求項13または14記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、前記第2のアクチュエータ要素はアクチュエータ・ワイヤを有するものである回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項16】
請求項13〜15のうちのいずれか1つに記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、さらに、
側壁を有する中空の回収カテーテルであって、回収ルーメンを画成し、遠位端部を有するものである、前記回収カテーテルを有し、
前記第1のアクチュエータ要素は遠位部を有し、
前記第2のアクチュエータ要素は前記回収カテーテルに沿って延在し、前記回収カテーテルの前記遠位端部の遠位に位置する先端部を有するものである
回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項17】
請求項16記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、前記第1のアクチュエータ要素は外側アクチュエータ・シースを有し、前記回収カテーテルは当該アクチュエータ・シース内でスライド自在に収納されているものである回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項18】
請求項16または17記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、さらに、
前記回収装置の前記中央部および前記回収カテーテルの前記側壁を貫通して延在する外側通路であって、前記回収チャンバを少なくとも部分的に画成する、前記近位遮断部と遠位遮断部の一部、および前記中央部は、前記通路を除いて液体不浸透性である、前記外側通路を有し、
これにより、前記回収チャンバ内の液体は、前記通路を通って前記回収ルーメン内に流入し、当該ルーメンを通過することができるものである回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項19】
請求項16〜18のうちのいずれか1つに記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、前記回収装置の前記近位端部は、近位拡張要素により前記第1のアクチュエータ要素の前記遠位部に固定され、前記遠位端部は、遠位拡張要素により前記第2のアクチュエータ要素の前記先端部に固定されているものである回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項20】
請求項19記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、前記近位拡張要素は複数の径方向および軸方向に延長する要素を有するものである回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項21】
請求項19または20記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、
前記回収装置は、前記回収装置の前記近位端部と前記遠位端部との間に延在するリターン・ルーメンを有し、
前記近位拡張要素および前記遠位拡張要素は、前記回収装置が前記第2の径方向に拡張された形状であるとき、前記回収装置のリターン・ルーメンを通って液体の流入を可能にする開口領域を有するものである回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項22】
請求項13記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、
前記回収装置は、当該回収装置の前記近位端部および前記遠位端部に近位ドーナツ形状遮断バルーンと遠位ドーナツ形状遮断バルーンとを有し、
前記第1のアクチュエータ要素はアクチュエータ・シースを有し、前記第2のアクチュエータ要素はアクチュエータ・ワイヤを有し、
前記回収装置は、(1)前記遮断バルーンが収縮した状態にあり、且つ(2)前記アクチュエータ・ワイヤが前記回収装置に対して遠位方向に、遠位アクチュエータ・ワイヤ位置まで押動され、前記アクチュエータ・シースが前記回収装置に対して近位方向に、近位アクチュエータ・シース位置まで引張られたときに、前記第1の径方向に畳み込まれた形状に配置可能であり、
前記回収装置は、(1)前記遮断バルーンが膨張状態にあり、(2)前記アクチュエータ・ワイヤが前記回収装置に対して近位方向に、近位アクチュエータ・ワイヤ位置まで引張られ、前記アクチュエータ・シースが前記回収装置に対して遠位方向に、遠位アクチュエータ・シース位置まで押動されたときに、前記第2の径方向に拡張された形状に配置可能である回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項23】
請求項22記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、前記回収装置は長手方向の軸を画成し、前記ドーナツ形状遮断バルーンは、前記長手方向の軸に対して鋭角に配置された傾斜バルーンであり、これにより、小孔の不慮の閉塞の防止が促進されるものである回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項24】
請求項1〜23のうちのいずれか1つに記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、前記回収装置は、前記第2の径方向に拡張された形状であるとき、前記近位端部と前記遠位端部との間にリターン・チャネルを画成するものである回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項25】
小孔における身体通路内で使用される回収カテーテル・アセンブリであって、
遠位部を有する外側アクチュエータ・シースと、
側壁を有する内側中空回収カテーテルであって、回収ルーメンを画成し、前記アクチュエータ・シース内に収納されており、遠位端部を有するものである、前記回収カテーテルと、
前記回収カテーテルに沿って延在し、先端部が前記回収カテーテルの前記遠位端部の遠位に位置するアクチュエータ・ワイヤと、
近位端部が近位拡張要素により前記アクチュエータ・シースの前記遠位部に固定され、遠位端部が遠位拡張要素により前記アクチュエータ・ワイヤの前記先端部に固定されている、機械的に径方向に拡張および収縮自在な回収装置であって、
前記近位端部および前記遠位端部にある近位遮断部および遠位遮断部と、
前記近位遮断部と前記遠位遮断部との間の中央部と、
前記近位端部と遠位端部との間に延在するリターン・チャネルと
を有するものであり、
前記回収装置は、前記アクチュエータ・ワイヤが前記回収装置に対して遠位方向に、遠位アクチュエータ・ワイヤ位置まで押動され、前記アクチュエータ・シースが前記回収装置に対して近位方向に、近位アクチュエータ・シース位置まで引張られたときに、第1の径方向に畳み込まれた形状に配置可能であり、
前記回収装置は、前記アクチュエータ・ワイヤが前記回収装置に対して近位方向に、近位アクチュエータ・ワイヤ位置まで引張られ、前記アクチュエータ・シースが前記回収装置に対して遠位方向に、遠位アクチュエータ・シース位置まで押動されたときに、第2の径方向に拡張された形状に配置可能であり、
前記第2の径方向に拡張された形状にあるとき、
前記近位遮断部および遠位遮断部は、前記中央部の半径寸法よりも大きい半径寸法となり、これにより、前記中央部で回収チャンバを画成し、
前記近位拡張要素および遠位拡張要素は、前記回収装置の前記リターン・チャネルを通って液体の流入を可能にする開口領域を有するものである、
前記回収装置と、
前記回収装置の前記中央部および前記回収カテーテルの前記側壁を貫通して延在する外側通路であって、前記回収チャンバを画成する、前記近位遮断部と遠位遮断部の一部、および前記中央部は、前記通路を除いて液体不浸透性である、前記外側通路と
を有し、
これにより、液体移送血管の開口部の小孔から前記回収チャンバ内へ流れる液体は、前記通路を通って前記回収ルーメン内に流入し、当該ルーメンを通過することができるものである
回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項26】
小孔における身体通路内で使用される回収カテーテル・アセンブリであって、
遠位部を有する外側アクチュエータ・シースと、
側壁を有する内側中空回収カテーテルであって、回収ルーメンを画成し、前記アクチュエータ・シース内に収納されており、遠位端部を有するものである、前記回収カテーテルと、
前記回収カテーテルに沿って延在し、先端部が前記回収カテーテルの前記遠位端部の遠位に位置するアクチュエータ・ワイヤと、
近位端部が近位拡張要素により前記アクチュエータ・シースの前記遠位部に固定され、遠位端部が遠位拡張要素により前記アクチュエータ・ワイヤの前記先端部に固定されている、機械的に径方向に拡張および収縮自在な回収装置であって、
前記近位端部および前記遠位端部にある近位ドーナツ形状遮断バルーンおよび遠位ドーナツ形状遮断バルーンと、
前記近位遮断部と前記遠位遮断部との間の中央部と、
前記近位端部と前記遠位端部との間に延在するリターン・チャネルと
を有するものであり
前記回収装置は、(1)前記遮断バルーンが収縮した状態にあり、(2)前記アクチュエータ・ワイヤが前記回収装置に対して遠位方向に、遠位アクチュエータ・ワイヤ位置まで押動され、前記アクチュエータ・シースが前記回収装置に対して近位方向に、近位アクチュエータ・シース位置まで引張られたときに、第1の径方向に畳み込まれた形状に配置可能であり、
前記回収装置は、(1)前記遮断バルーンが膨張状態にあり、(2)前記アクチュエータ・ワイヤが前記回収装置に対して近位方向に、近位アクチュエータ・ワイヤ位置まで引張られ、前記アクチュエータ・シースが前記回収装置に対して遠位方向に、遠位アクチュエータ・シース位置まで押動されたときに、第2の径方向に拡張された形状に配置可能であり、
前記第2の径方向に拡張された形状にあるとき、
前記近位遮断バルーンおよび前記遠位遮断バルーンは、前記中央部の半径寸法よりも大きい半径寸法となり、これにより、前記中央部で回収チャンバを画成し、
前記近位拡張要素および遠位拡張要素は、前記回収装置の前記リターン・チャネルを通って液体の流入を可能にする開口領域を有するものである、
前記回収装置と、
前記回収装置の前記中央部および前記回収カテーテルの前記側壁を貫通して延在する外側通路であって、前記回収チャンバを画成する、前記近位遮断部および前記遠位遮断部の一部、および前記中央部は、前記通路を除いて液体不浸透性である、前記外側通路と
を有し、
これにより、液体移送血管の開口部の小孔から前記回収チャンバ内へ流れる液体は、前記通路を通って前記回収ルーメン内に流入し、当該ルーメンを通過することができるものである
回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項27】
請求項26記載の回収カテーテル・アセンブリにおいて、前記回収装置は長手方向の軸を画成し、前記ドーナツ形状遮断バルーンは、前記長手方向の軸に対して鋭角に配置された傾斜バルーンであり、これにより、小孔の不慮の閉塞の防止が促進されるものである回収カテーテル・アセンブリ。
【請求項28】
小孔を通って身体通路へ流れる液体を液体回収装置へ導く方法であって、
近位端部と遠位端部とを有し、小孔において、径方向に拡張および収縮自在な回収装置を第1の径方向に畳み込まれた形状で身体通路内に配置する工程と、
前記回収装置を第2の径方向に拡張された形状に配置する工程であって、当該配置する工程の少なくとも一部は、少なくとも1つの機械的アクチュエータ要素を機械的に操作することにより実行され、これにより、前記近位遮断部および前記遠位遮断部が機械的に拡張されるものであり、前記回収装置が前記第2の径方向に拡張された形状であるとき、前記近位遮断部および前記遠位遮断部は、前記中央部の半径寸法よりも大きい半径寸法となり、これにより、前記中央部で回収チャンバを少なくとも部分的に画成するものである、前記配置する工程と、
前記回収チャンバからの液体を前記回収装置の中へ流入させる工程と
を有する方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法において、前記回収装置の近位端部および遠位端部に動作可能に連結された第1および第2の機械的アクチュエータ要素を用いて、前記径方向に拡張された形状に配置する工程を実行するものである方法。
【請求項30】
請求項28または29記載の方法において、少なくとも1つの前記アクチュエータ要素を機械的に操作することにより、前記径方向に拡張された形状に配置する工程を完全に実行するものである方法。
【請求項31】
請求項28記載の方法において、前記径方向に拡張された形状に配置する工程は、さらに、前記回収装置の前記近位端部および前記遠位端部で、近位ドーナツ形状遮断バルーンおよび遠位ドーナツ形状遮断バルーンを膨張する工程を有するものである方法。
【請求項32】
請求項28〜31のうちのいずれか1つに記載の方法において、前記液体を流入させる工程は、前記回収装置の中央部の外側通路を通過して、前記回収装置内に延在する回収カテーテル内へ前記液体を流入させる工程を有するものである方法。
【請求項33】
請求項28〜32のうちのいずれか1つに記載の方法において、さらに、
液体が前記身体通路から、前記回収装置の前記近位端部および前記遠位端部のうちの一方、および前記回収装置内で画成されるリターン・ルーメンを通り、前記回収装置の前記近位端部および前記遠位端部の他方を通って前記身体通路内に戻るように液体を流動させる工程を有するものである方法。
【請求項34】
遠位の静脈と流出静脈とを有する臓器から静脈血流を回収する方法であって、
回収カテーテル・アセンブリのファンネル装置を治療する臓器の静脈口において管状の体内血管内に配置する工程であって、前記ファンネル装置は開口端部を有するものである、前記配置する工程と、
前記ファンネル装置の開口端部を前記静脈口において前記臓器の前記遠位の静脈内に配置する工程と、
前記ファンネル装置を前記静脈壁に向かって押圧して前記ファンネル装置と前記流出静脈との間を密閉状態にすることにより、前記ファンネル装置と前記臓器との間に画成される回収チャンバを形成する工程と、
薬剤を患者に注入する工程と、
前記臓器からの液体を前記回収チャンバ内に回収する工程と、
前記回収された液体をろ過する工程と、
前記ろ過および回収された液体を前記患者に戻す工程と
を有する方法。
【請求項35】
請求項34記載の方法において、前記押圧する工程は、拡張要素を前記ファンネル装置に向かって拡張する工程を有するものである方法。
【請求項36】
請求項34または35記載の方法において、前記配置する工程は、肝臓である前記臓器において実行されるものである方法。
【請求項37】
請求項34〜36のうちのいずれか1つに記載の方法において、前記ろ過する工程は前記患者の体外で実行されるものである方法。
【請求項38】
請求項34〜37のうちのいずれか1つに記載の方法において、前記液体を回収する工程は血液と前記薬剤とを含む液体を回収し、前記ろ過する工程は前記薬剤をろ過して除去するものである方法。
【請求項39】
回収カテーテル・アセンブリの回収装置と液体が回収される臓器との間で形成される回収チャンバの密閉状態の効果を決定する方法であって、
指示薬および治療薬を患者に注入する工程と、
臓器の小孔を通って身体通路に流入する液体を、回収カテーテル・アセンブリの液体回収装置と当該臓器との間に画成される回収チャンバ内に回収する工程と、
前記回収された液体を処理する工程であって、前記回収された液体から前記指示薬および前記治療薬を除去する工程を有するものである、前記処理する工程と、
前記処理された液体を前記患者に戻す工程と、
全身液を前記患者から採取する工程と、
前記指示薬の存在を確認するために前記採取された全身液を検査する工程と
を有する方法。
【請求項40】
患者から治療薬を除去する方法であって、
治療薬を患者に注入する工程と、
臓器から流出する液体を回収する工程と、
親和性物質を有する結合剤を前記回収された液体に追加する工程と、
前記回収された液体内の前記治療薬を前記親和性物質と結合させる工程と、
前記回収された液体および前記結合剤を処理する工程であって、前記回収された液体から前記治療薬が結合した結合剤を除去する工程を有するものである、前記処理する工程と、
前記処理された液体を前記患者に戻す工程と、
を有する方法。
【請求項41】
請求項40記載の方法において、前記液体回収工程は、臓器の小孔を通って身体通路に入る液体を回収カテーテル・アセンブリの液体回収装置と前記臓器との間で画成される回収チャンバ内に回収する工程を有するものである方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−521100(P2013−521100A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−557130(P2012−557130)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/027254
【国際公開番号】WO2011/112463
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(512231761)エヌヒュージョン ヴァスキュラー システムズ、エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】