説明

回収コンベア

【課題】組み付け工数、製造コストを抑えた上で、小型軽量化ができる回収コンベアを提供する。
【解決手段】高低差を有する場所に搬送物を運搬する急傾斜コンベア10の下方に配置され、急傾斜コンベア10から落下する搬送物を回収して急傾斜コンベア10にリターンする回収コンベア30において、プーリ31にコンベアベルト32が巻回され、このコンベアベルト32が急傾斜コンベア10のベルト本体15を形成する材料よりも軟らかい材料の熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば急傾斜コンベアに用いられる回収コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高低差のある場所に粒体、粉体等を搬送する急傾斜コンベアが用いられている。この急傾斜コンベアは、プーリにベルト本体が巻回されており、通常、30°〜90°の傾斜しているものである。また、ベルト本体には、その長手方向の両側に波形状の波桟が立設されるとともに、両波桟の間には、ベルト本体の長手方向を、所定間隔をもって区分する横桟が設けられている。そして、波桟と横桟とに区分された空間に形成される収容部に粒体、粉体等の搬送物が収容され、所定の搬出位置まで搬送されるものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、上述の急傾斜コンベアにあっては、粘度の高い搬送物を搬送する場合、搬送物が波桟や横桟に付着してしまい、所定の搬出位置で完全に搬出されず収容部内に残存してしまうという問題がある。搬送物が収容部内に残存したままリターン側まで搬送されると、そのリターン側において、収容部の開口が下方に向いた時に落下してしまう。その結果、所定量の搬送物が搬送できず、搬送物のロスになるとともに、落下した搬送物の回収作業が必要とされるため、搬送効率が低下してしまう。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、急傾斜コンベアの下方に、落下した搬送物を回収して急傾斜コンベアにリターンする回収コンベアが配置されているものがある。この回収コンベアは、プーリにゴム等の弾性材料からなるコンベアベルトが巻回されたものであり、急傾斜コンベアにおけるベルト本体の波桟との摩擦接触により、コンベアベルトの回転に従動して回転するものである。
【特許文献1】実開昭57−3719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の回収コンベアにあっては、ゴム製のコンベアベルトを用いているため、肉厚を薄く形成することで柔軟性を確保することができるが、その一方で、コンベアベルトが伸縮しないように、ある程度の剛性を確保しなければならない。コンベアベルトの剛性を確保するためには、ゴムを厚く形成しなければならず、その結果、コンベアベルトの柔軟性が損なわれてしまうという問題がある。したがって、コンベアベルトを巻回する際に、大径のプーリを用いらなければならないため、装置の大型化及び重量増加に繋がってしまい、配置スペースを大きく確保しなければならない。
また、コンベアベルトは、その形成材料をプーリに巻回した後、コンベアベルトの端部同士を接続して無端状に加工する、いわゆるエンドレス加工を施すものである。この時、ゴム製のコンベアベルトでは、その端部同士を加硫接着しなければならならず、複雑な工程が必要となる。その結果、組み付け工程数が多く、製造コストが高いという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、組み付け工数、製造コストを抑えた上で、小型軽量化ができる回収コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の回収コンベアは、高低差を有する場所に搬送物を運搬する急傾斜コンベアの下方に配置され、該急傾斜コンベアから落下する前記搬送物を回収して前記急傾斜コンベアにリターンする回収コンベアにおいて、プーリにコンベアベルトが巻回され、このコンベアベルトが前記急傾斜コンベアを形成する材料よりも軟らかい材料の熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴とする。
本発明では、コンベアベルトを、急傾斜コンベアを形成する材料よりも軟らかい材料の熱可塑性樹脂で形成することで、従来のゴム製のコンベアベルトに比べ薄く形成しても剛性を維持することができるため、コンベアベルトを軽くしなやかに形成することが可能になる。したがって、小径のプーリにも容易に巻回することができるため、装置の小型軽量化を図ることができる。これにより、配置スペースを縮小し、レイアウト性を向上させることができる。すなわち、配置スペースの限られた場所にも容易に設置することが可能となる。
さらに、熱可塑性樹脂からなるコンベアベルトは、エンドレス加工を施す際に、その端部同士を融着するのみで無端状のコンベアベルトを形成することができるため、従来のゴム製のコンベアベルトに比べ、組み付け工数を削減して、製造コストを低減することができる。
【0008】
また、前記コンベアベルトには、補強層が埋設されていることを特徴とする。
この場合、コンベアベルトに補強層を埋設することで、コンベアベルトの耐久性を向上させることができるため、コンベアベルトをより薄く形成することが可能となる。
【0009】
ここで、前記熱可塑性樹脂には、エラストマーが混在されていることを特徴とする。
この場合、熱可塑性樹脂にエストラマーを混在させることで、プーリに巻回する際の屈曲耐久性を向上させることができるため、より小径のプーリを用いて、小型軽量化をはかることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来のゴム製のコンベアベルトに比べ、組み付け工数を削減して、製造コストを低減することができる。
また、小径のプーリにも容易に巻回することができるため、装置の小型軽量化を図ることができる。これにより、配置スペースを縮小し、レイアウト性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、急傾斜コンベア10は、高低差のある場所に粒体、粉体等の搬送物W(図2,3参照)を搬送するものであり、複数(例えば、6つ)のプーリ11に回転可能に巻回されたベルト本体15を備えている。
【0012】
ベルト本体15は、ゴム等からなる無端状の部材であり、図中下側に水平面と略平行に移動する上流部16と、ベルト本体15の外部に隣接配置されたガイドローラ24により略90°に折り返され上方に延びる直線部17と、ガイドローラ25により折り返され上流部16と略平行に移動する下流部18とを備えている。
なお、本実施形態において、各プーリ11は時計回りに回転しており(図中矢印参照)、急傾斜コンベア10の搬送方向で上流部16から下流部18に至るまでを搬送側とし、下流部18から上流部16に至るまでをリターン側とする。
【0013】
図2,3に示すように、ベルト本体15の長手方向の両側縁には、その全周に亘ってベルト本体15から垂直に立ち上がり、平面視波形状の波桟20,21が設けられている。両波桟20,21の間には、ベルト本体15の長手方向を、所定間隔をもって区分する複数の横桟22が設けられている。そして、波桟20,21と横桟22との間に区分された空間には、図示しない供給源から粒体、粉体等の搬送物Wが供給される収容部23が形成される。
【0014】
急傾斜コンベア10の上流部16には、回収コンベア30が設けられている。この回収コンベア30は、その一端が搬送側の上流部16を覆うとともに、他端がリターン側まで回りこみ、側面視で下流部18の先端と略同位置まで延出するように配置されている。この回収コンベア30は、複数のプーリ31に回転可能に巻回されたコンベアベルト32を備えている。
【0015】
ここで、コンベアベルト32は、急傾斜コンベア10のベルト本体15の形成材料よりも軟らかい材料、例えばポリ塩化ビニルやシリコン樹脂等の熱可塑性樹脂から構成された無端状の部材である。コンベアベルト32の内部には、ポリエステルや帆布等からなる図示しない補強層が埋設されている。コンベアベルト32表面は、上述した急傾斜コンベア10の波桟20,21の上端と接触するように配置されており、コンベアベルト32と波桟20,21との接触摩擦により、急傾斜コンベア10の回転に従動して回転するようになっている。
【0016】
次に、作用を説明する。
まず、図1に示すように、急傾斜コンベア10の上流部16に図示しない供給源から搬送物Wが供給され、波桟20,21と横桟22との間に形成された収容部23に収容される。収容部23に収容された搬送物Wは、プーリ11の回転により搬送側の直線部17を通り下流部18まで搬送され、図示しない搬出位置で排出される。
【0017】
ところで、急傾斜コンベア10により粘度の高い搬送物Wを搬送する際、搬送物Wが所定の搬出位置で完全に搬出されず、波桟20,21や横桟22に付着し、収納部23内に残存してしまう。そして、急傾斜コンベア10が下流部18の先端を折り返してリターン側まで移動すると、収容部23の開口が下方を向いてしまうため、収容部23内に残存した搬送物Wが下方に落下する。
【0018】
この時、落下した搬送物Wは、急傾斜コンベア10の上流部16側に配置された回収コンベア30のコンベアベルト32上で受け止められるようになっている。コンベアベルト32上に落下した搬送物Wは、急傾斜コンベア10に従動して回転する回収コンベア30により搬送され、上流部16の搬送側まで搬送される。
【0019】
そして、回収コンベア30の一端で自重により急傾斜コンベア10の上流部16に落下し、供給源から供給される新しい搬送物Wとともに再び搬出位置まで搬送されることとなる。以上の工程を繰り返すことにより、急傾斜コンベア10から落下した搬送物Wは、その下方で滞留することがなくなるため、搬送物Wのロスを抑え、搬送効率を向上させることができる。
【0020】
ここで、回収コンベア30の設置、交換時等における組付け方法ついて説明する。
まず、ロール状に巻回されたコンベアベルト32の形成材料をプーリ31に巻回し、適切な長さに切断する。この時、切断する両端部をテーパ形状に切断することが好ましい。そして、切断したコンベアベルト32の形成材料にエンドレス加工を施す。具体的には、テーパ状に切断したコンベアベルト32の形成材料の両端部同士を融着させる。これにより、本実施形態の回収コンベア30が完成する。
【0021】
このように、上述の実施形態によれば、コンベアベルト32を急傾斜コンベア10のベルト本体15の形成材料よりも軟らかい熱可塑性樹脂で形成することで、エンドレス加工を施す際に、その端部同士を融着するのみで無端状のコンベアベルト32を形成することができるため、従来のゴム製のコンベアベルトに比べ、組み付け工数を削減して、製造コストを低減することができる。
【0022】
さらに、熱可塑性樹脂からなるコンベアベルト32は、従来のゴム製のコンベアベルトに比べ薄く形成しても剛性を維持することができるため、コンベアベルト32を軽くしなやかに形成することが可能になる。したがって、小径のプーリ31にも容易に巻回することができるため、回収コンベア30の小型軽量化を図ることができる。これにより、回収コンベア30の配置スペースを縮小し、レイアウト性を向上させることができる。すなわち、配置スペースの限られた場所にも容易に設置することが可能となる。
【0023】
また、コンベアベルト32に補強層を埋設することで、コンベアベルト32の耐久性を向上させることができるため、コンベアベルト32をより薄く形成することが可能となる。
【0024】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、本実施形態において、回収コンベアのコンベアベルトには、熱可塑性樹脂を用いたが、上述した熱可塑性樹脂にエラストマーを混在してもよい。熱可塑性樹脂にエストラマーを混在することで、プーリに巻回する際の屈曲耐久性を向上させることができるため、より小径のプーリを用いることができ、小型軽量化を図ることができる。
【0025】
さらに、急傾斜コンベアの傾斜角は、適宜設計変更可能である。また、本実施形態において、回収コンベアを急傾斜コンベアの下流部を覆うように配置したが、回収コンベアの距離、設置場所は適宜設計変更が可能であり、回収コンベアを複数設けてもよい。
【0026】
さらに、本実施形態において、回収コンベアの回転を急傾斜コンベアの回転に従動させて回転させたが、回転コンベアを独立駆動させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
小型軽量化を図った上で、配置スペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態における急傾斜コンベアの全体構成図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図2のB−B線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 急傾斜コンベア
30 回収コンベア
31 プーリ
32 コンベアベルト
W 搬送物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高低差を有する場所に搬送物を運搬する急傾斜コンベアの下方に配置され、該急傾斜コンベアから落下する前記搬送物を回収して前記急傾斜コンベアにリターンする回収コンベアにおいて、
プーリにコンベアベルトが巻回され、このコンベアベルトが前記急傾斜コンベアを形成する材料よりも軟らかい材料の熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴とする回収コンベア。
【請求項2】
前記コンベアベルトには、補強層が埋設されていることを特徴とする請求項1記載の回収コンベア。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂には、エラストマーが混在されていることを特徴とする請求項1記載の回収コンベア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−23795(P2009−23795A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189438(P2007−189438)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】