説明

回折光学素子、積層型回折光学素子及びその製造方法

【課題】 光硬化樹脂材料によって成形される樹脂層を有する回折光学素子において、屈折率分布によって回折効率が悪化するのを防ぐ。
【解決手段】 ガラス基板1、2の間に積層された2つの樹脂層3、4によって形成される回折格子10を有する回折光学素子において、樹脂層4は、酸化金属微粒子を分散させたフッ素系樹脂からなる。この材料は、紫外光の照射による硬化中に屈折率分布を発生しやすいため、回折格子形状10の格子斜面111に対して垂直に紫外光を照射することで、格子斜面111に対して垂直な厚み方向に屈折率分布を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系等に使用する回折光学素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、光学系の色収差を補正する方法の1つとして、分散の異なる2つの材質の硝材からなるレンズを組み合わせる方法が知られている。これに対して、レンズ面に回折作用を有する回折光学素子を用いて色収差を減じる方法も知られている。これは光学系中の屈折面と回折面とでは、ある基準波長の光線に対する色収差の出方が逆方向になると言う物理的現象を利用したものである。
【0003】
また、回折光学素子の屈折率やアッベ数を調整するため、特許文献1(特開2001−74901号)には、ITO、ATO、SnO2、ZnO等の透明導電性金属酸化物からなる微粒子を、紫外光硬化性のバインダー樹脂に混合・分散させた複合材料が開示されている。また、特許文献1には、2種類の樹脂を積層して形成した積層構造の回折光学素子も開示されている。積層構造の回折光学素子は、色収差の補正効果を有する光学系において、使用波長の領域内で設計次数近傍の回折効率が大幅に低減することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−74901号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、回折光学素子をカメラ用レンズとして使用する場合、回折格子の形状精度にはナノレベルが要求されている。しかしながら、光硬化性の樹脂を使用する場合、樹脂は紫外光等の照射された箇所から反応が始まるため、硬化速度の差により、硬化した樹脂に密度差が生じ屈折率が不均一な状態となる。
【0006】
本発明は、屈折率分布に起因する光学性能の悪化を抑制できる回折光学素子及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回折光学素子は、ガラス基板と、前記ガラス基板に積層された、複数の格子斜面と格子壁面からなる回折格子形状を有する光硬化樹脂からなる樹脂層とを備え、前記樹脂層の屈折率が、前記回折格子形状の格子斜面から前記樹脂層の厚み方向に変化しており、前記屈折率が変化する方向が前記格子斜面に対して垂直方向であることを特徴とする。
【0008】
本発明の回折光学素子の製造方法は、ガラス基板に、複数の格子斜面と格子壁面からなる回折格子形状を有する樹脂層が積層された回折光学素子の製造方法において、前記回折格子形状を有する成形型に光硬化樹脂材料を供給する工程と、前記成形型に供給された光硬化樹脂材料の上から前記ガラス基板を接触させ、前記光硬化樹脂材料を前記成形型と前記ガラス基板の間に充填させる工程と、前記成形型の前記回折格子形状の格子斜面に対して、垂直もしくは垂直方向よりも前記樹脂層の同一の格子斜面の薄肉側に傾斜している方向から光を照射して前記光硬化樹脂材料を硬化させることで、前記ガラス基板と回折格子形状を有する樹脂層とを一体化する工程と、前記一体化した前記ガラス基板と樹脂層とを前記成形型から離型する工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
光照射により樹脂材料を硬化する工程において、光照射方向に依存する屈折率分布を回折格子形状の格子斜面に垂直な厚み方向に発生させることにより、屈折率分布による回折効率の劣化を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の原理を説明する回折格子の断面図
【図2】本発明の原理を説明する回折格子の断面図
【図3】本発明の回折光学素子を示す断面図
【図4】本発明の回折光学素子の成形方法を示す断面図
【図5】本発明の回折光学素子の成形方法を示す断面図
【図6】第1の実施の形態における回折光学素子の照射方法を示す断面図
【図7】第2の実施の形態における回折光学素子の照射方法を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の実施に伴う基本原理を説明する。本発明者は鋭意検討の結果、光硬化樹脂を硬化させる場合、その硬化速度の差により、樹脂に屈折率分布が生ずる事を見出した。これは、硬化中の未硬化樹脂の流動により、樹脂の密度に差が生ずることに起因する。また、この屈折率分布は、微粒子が分散した樹脂の場合より顕著になる。これは、硬化中の未硬化の樹脂の流動にともない微粒子も流動し、微粒子の含有率に差が生ずるためである。これにより、硬化の早い部分の微粒子の含有率は低く、硬化の遅い部分の微粒子含有率は高くなる。また特にフッ素系樹脂の場合、他の光硬化性樹脂に比べて粘度が低いため流動性が高く、更に屈折率分布が顕著になることも確認されている。
【0012】
図1(a)は一般的な回折格子100の断面図である。回折格子形状は、光学有効面である格子斜面111と、格子の高さを形成する格子壁面112からなっている。回折光学素子は、この回折格子100が、金属酸化物からなる微粒子が分散した光硬化樹脂材料により形成されている場合、前述したように硬化速度の差により、硬化した回折格子に屈折率分布が生ずる。
【0013】
図1(b)〜(d)は、回折格子の屈折率分布の状態を示した模式図であり、それぞれ回折格子に対する光照射方向を矢印で示している。図1(b)は、回折格子101の格子斜面111に対してほぼ垂直に光が照射された場合を示している。この時の屈折率分布は、格子斜面11から垂直方向に徐々に屈折率が変化する。また、図1(c)は、回折格子102の格子斜面111に対して垂直な方向よりも格子壁面112側から光が照射された場合を示している。この時の屈折率分布は、屈折率分布は、格子斜面111と格子壁面112により形成される頂点から、格子斜面111と格子壁面112から垂直方向に徐々に屈折率が変化する。すなわち図4(c)の各格子の左から右に向かって屈折率分布が形成されている。また、図1(d)は、回折格子103の格子斜面111に対して垂直な方向よりも格子壁面112と逆側から光が照射された場合を示している。この時の屈折率分布は、図1(d)の各格子の右から左に向かって形成される。
【0014】
なお、硬化が進むに連れ光硬化樹脂材料の流動性は低下するため、光源から離れるに従って屈折率の変化量は小さくなる。また、実際には照射された光が紫外光等の場合、回折格子103の内部屈折率の変化により光が屈折するが、ここでは説明を容易にするため、屈折しないものとして説明した。
【0015】
次に、図2(a)〜(c)に、前述の図1(b)〜(d)の回折格子101から103を、複数のレンズからなる光学系に組み込んだ際の光の行路を示す。
【0016】
図2(a)は、図1(b)の回折格子を使った場合の光の行路を示している。図2(a)からわかるように、平行に入射した入射光101a、101bは、ともに同じ屈折率の領域を通過している。従って回折格子を通過した入射光101a、101bは、ほぼ同様に屈折し平行な状態を維持したまま出射することとなる。従ってあらかじめ光学設計値にこの屈折した値を考慮しておくことで、高い回折効率を実現することができる。
【0017】
図2(b)は、図1(c)の回折格子を使った場合の光の行路を示している。図2(c)からわかるように、平行に入射した入射光102aと102bは、全く異なる屈折率の領域を通過している。特に格子壁面112からの屈折率の差により、回折格子を通過した入射光102a、102bは全く異なる方向に出射される。現実的には、入射光102aはどのように屈折するのかを特定するのは非常に困難であり、光学設計値を補正することができず、回折効率が低下することとなる。
【0018】
図2(c)は、図1(d)の回折格子を使った場合の光の行路を示している。図2(c)からわかるように、平行に入射した入射光103a、103bは、屈折率の異なる領域を通過している。しかしながら、この屈折率の差は僅かであり、入射光103a、103bは、ほぼ同じ様に屈折し平行な状態を維持したまま出射することとなる。従って図2(a)と同様に、あらかじめ光学設計値にこの屈折した値を考慮しておくことで、高い回折効率を実現することができる。
【0019】
以上のことから、実際に成形する回折格子は、図1(b)及び図2(a)に示した回折格子101が最も好ましい。また、図1(d)及び図2(c)に示した回折格子103は、回折格子101には劣るものの、屈折率分布を光学設計で十分に対処可能な範囲に収めることが可能である。しかしながら図1(c)及び図2(b)に示した回折格子102の場合は、入射光102aの行路を特定することが困難であり、回折効率が低下することとなる。従って、照射する紫外光の入射角度は、格子斜面111と垂直であることが好ましく、少なくとも格子斜面111垂直方向よりも同一の格子斜面における樹脂層の薄肉側に傾斜していることが必要となる。
【0020】
(第1の実施の形態)
図3は、第1の実施形態による積層型回折光学素子10を示す断面図である。図中1はメニスカス形状の第1のガラス基板であり、2は凸形状の第2のガラス基板である。第1、第2のガラス基板1、2の間には、第1のガラス基板1側から、第1の樹脂層3と第2の樹脂層4が形成されておいる。第1の樹脂層3と第2の樹脂層4は、紫外光等の光により硬化する光硬化樹脂であり、第2の樹脂層4には、金属微粒子が分散している。第1の樹脂層3と第2の樹脂層4の境界面は鋸歯状断面の回折格子形状をなしており、この回折格子形状の境界面により積層型回折光学素子10は回折作用を発現する。回折格子形状の境界面は、光学有効面である格子斜面11と、格子の高さを形成する格子壁面112から形成されている。
【0021】
図3における積層型回折光学素子10の格子斜面11の角度は一定ではなく、積層型回折光学素子10の中心から外周に向かうに従って徐々に変化している。通常の光学設計では、格子斜面11をつなげると非球面形状となるため、格子斜面11の傾斜角は積層型回折光学素子10の中心から外周に向かうに従ってなだらかになる。
【0022】
次に、積層型回折光学素子10の製造方法を図4、図5を用いて説明する。まず、図4(a)に示すように、NiPなどのめっき層を切削加工した金型5の上に、第1の樹脂層3となる光硬化樹脂材料3aを滴下により適量供給する。第1の樹脂層3には光硬化するように反応開始剤を添加してある。次に、図4(b)に示すように、光硬化樹脂材料3aの上に第1のガラス基板1を配置する。次に、図4(c)に示すように、ガラス基板1を徐々に下降させることにより、供給した光硬化樹脂材料3aとガラス基板1を接触させ、泡を巻き込まないようにガラス基板1と金型5間に光硬化樹脂材料3aを充填する。なお、ガラス基板1には、あらかじめ光硬化樹脂材料3aとの密着性を高めるため、表面にシランカップリング剤をスピンナーで塗布の後、オーブンで乾燥さておく。
【0023】
次に、図4(d)に示すように、第1のガラス基板1を介して紫外光を照射して樹脂材料3a(第1の光硬化樹脂材料)を硬化させ、第1のガラス基板1と一体化する。次に、図4(e)に示すように、第1のガラス基板1の周囲を引き上げることにより、金型5から一体化した第1のガラス基板1と第1の樹脂層3を離型させる。この時点で、第1のガラス基板1と樹脂層3からなる回折光学素子となる。
【0024】
樹脂層を複数層有する積層型回折光学素子の場合は、図4の各工程の後に、さらに次の工程を行う。図5(a)に示すように、第2のガラス基板2の上に第2の樹脂層4となる樹脂材料4a(第2の光硬化樹脂材料)を滴下する。次に、図5(b)に示すように、図4(e)で成形した一体化した第1のガラス基板1と第1の樹脂層3を、第1の樹脂層3を下にして、光硬化樹脂材料4aの上に配置する。光硬化樹脂材料4aは、フッ素系樹脂材料に、酸化金属微粒子を分散させたもので、光硬化するように反応開始剤を添加してある。次に、図5(c)に示すように、第1のガラス基板1を徐々に下降させることにより、滴下により供給した光硬化樹脂材料4aと第1の樹脂層3を接触させ、泡を巻き込まないように第2のガラス基板2と第1の樹脂層3の間に光硬化樹脂材料4aを充填する。
【0025】
次に、図5(d)に示すように、第1のガラス基板1を介して紫外光を照射して光硬化樹脂材料4aを硬化させ、第1のガラス基板1、第1の樹脂層3、第2の樹脂層4、第2のガラス基板2を一体化する。その後、ガラス基板の外周部を封止材で内部の材料を密閉することにより、図3に示した積層型回折光学素子10は成形される。
【0026】
前述したように、積層型回折光学素子10の各格子斜面11の傾斜角は積層型回折光学素子10の中心から外周に向かうに従ってなだらかになっている。従って、図4(d)および図5(d)における紫外光照射を、一定方向から行うと、格子斜面11のうちのいずれかは、図1(c)および図2(b)に示したような屈折率分布が発生する可能性が高くなる。
【0027】
図6(a)は、本発明の第1の実施の形態における、図5(d)に示した光硬化樹脂材料4aに紫外光を照射する工程を詳細に示した断面図であり、図6(b)はその要部詳細図である。第2のガラス基板2の上部に、レンズ群6が配置されている。照射される紫外光は、レンズ群6により屈折し、回折格子形状全域の格子斜面11に対して垂直な方向から回折格子10に入射する。図6(b)中の20a、20bは紫外光の行路を示しており、それぞれ異なる格子斜面11に対して、垂直方向から入射している。レンズ群6の設計は、あらかじめ図1で説明した屈折率分布を考慮して行う。本実施の形態における積層型回折光学素子10の格子斜面111の角度は、積層型回折光学素子10の中心から外周に向かうに従って徐々に変化しているため、レンズ群6に使用されるレンズは、非球面成分を含むことになる。
【0028】
紫外光ランプは紫外域から可視域まで広い波長帯域での発光スペクトルを有している。光硬化樹脂材料4aの硬化反応を発生させる波長域は250〜400nmと広いため、硬化させる光の波長域を紫外光バンドパスフィルター7で、360〜370nmと限定している。これは、レンズ群6は屈折レンズであるため、レンズ群6に入射する光の波長に依存してレンズ群6のガラス材料の屈折率が異なり、複数の波長の光が異なる入射角度で照射されてしまうためである。
【0029】
レンズ群の設計は、前述したように、紫外光が全ての格子斜面11に対して垂直方向から入射していることが好ましい。この場合は前述の図1(b)及び図2(a)の状態となる。ただし、回折格子の形状によっては、光学設計上全ての格子斜面11に対して垂直方向から入射させることが困難な場合がある。その場合は、全ての格子斜面11に対して、照射する紫外光の入射角度が、少なくとも格子斜面11と格子壁面12により形成される頂点よりも格子斜面11側であれば良い。すなわち、全ての格子斜面11が、図1(c)及び図2(b)の状態になっていないことが重要である。
【0030】
また、図4(d)に示した、光硬化樹脂材料3aに紫外光を照射する工程においても、図6と同様に、格子斜面11に垂直な方向から紫外光を照射するようにレンズ群を用いることが好ましい。ただし、光硬化樹脂材料3aは金属微粒子が分散していないため、屈折率分布の影響は少なく、必ずしもレンズ群を付加する必要はない。
【0031】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、光硬化樹脂材料3aへの紫外光の照射は、第1のガラス基板1を介して行われ、光硬化樹脂材料4aへの紫外光の照射は、第2のガラス基板2を介して行われている。第2実施形態では、図7(a)に示すように、成形型8に紫外光を透過する材料を用いることにより、成形型8側から光硬化樹脂材料4aを硬化させることも可能である。図7(b)の要部詳細図である。図7(a)、(b)において、紫外光30a、30bは紫外光の行路を示しており、それぞれ異なる格子斜面11に対して、垂直方向から入射している。成形型8としては、メタクリレートを主材とした紫外光硬化樹脂を、予めNiPめっき層を所望の格子形状を切削加工したマスター型を用いることができる。この場合レンズ群9は、紫外光30a、30bが樹脂材料4の全ての格子斜面11に対して垂直に入射するように設計されている。
【符号の説明】
【0032】
1、2 ガラス基板
3、4 樹脂層
5 金型
8 成形型
10 回折格子
100 回折格子形状
111 格子斜面
112 格子壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、前記ガラス基板に積層された、複数の格子斜面と格子壁面からなる回折格子形状を有する光硬化樹脂からなる樹脂層とを備え、前記樹脂層の屈折率が、前記回折格子形状の格子斜面から前記樹脂層の厚み方向に変化しており、前記屈折率が変化する方向が前記格子斜面に対して垂直方向であることを特徴とする回折光学素子。
【請求項2】
ガラス基板と、前記ガラス基板に積層された、複数の格子斜面と格子壁面からなる回折格子形状を有する光硬化樹脂からなる樹脂層とを備え、前記樹脂層の屈折率が、前記回折格子形状のすべての格子斜面において前記樹脂層の厚み方向に変化しており、前記屈折率が変化する方向が、格子斜面に対して垂直もしくは垂直方向よりも前記樹脂層の同一の格子斜面の薄肉側に傾斜していることを特徴とする回折光学素子。
【請求項3】
前記樹脂層はフッ素系樹脂であり、金属微粒子が分散していることを特徴とする請求項1または2に記載の回折光学素子。
【請求項4】
第1のガラス基板と、第2のガラス基板と、第1のガラス基板と第2のガラス基板の間に積層して配置され、お互いの境界面に複数の格子斜面と格子壁面からなる回折格子形状を有する光硬化樹脂からなる第1の樹脂層と第2の樹脂層を備え、前記第2の樹脂層の屈折率が、前記回折格子形状のすべての格子斜面において前記樹脂層の厚み方向に変化しており、前記屈折率が変化する方向が、格子斜面に対して垂直もしくは垂直方向よりも前記樹脂層の同一の格子斜面の薄肉側に傾斜していることを特徴とする積層型回折光学素子。
【請求項5】
前記第2の樹脂層はフッ素系樹脂であり、金属微粒子が分散していることを特徴とする請求項4に記載の積層型回折光学素子。
【請求項6】
ガラス基板に、複数の格子斜面と格子壁面からなる回折格子形状を有する樹脂層が積層された回折光学素子の製造方法において、前記回折格子形状を有する成形型に光硬化樹脂材料を供給する工程と、前記成形型に供給された光硬化樹脂材料の上から前記ガラス基板を接触させ、前記光硬化樹脂材料を前記成形型と前記ガラス基板の間に充填させる工程と、前記成形型の前記回折格子形状の格子斜面に対して、垂直もしくは垂直方向よりも前記樹脂層の同一の格子斜面の薄肉側に傾斜している方向から光を照射して前記光硬化樹脂材料を硬化させることで、前記ガラス基板と回折格子形状を有する樹脂層とを一体化する工程と、前記一体化した前記ガラス基板と樹脂層とを前記成形型から離型する工程を有することを特徴とする回折光学素子の製造方法。
【請求項7】
前記光硬化樹脂材料は紫外光硬化樹脂であり、前記照射する光は紫外光であり、前記成形型は紫外光を透過する材料から形成されており、前記紫外光の照射は、前記成形型を介して行われることを特徴とする請求項6に記載の回折光学素子の製造方法。
【請求項8】
前記光の照射方向は、光源と前記ガラス基板および樹脂層との間に配置されたレンズ群により定められていることを特徴とする請求項6または7のいずれか一方に記載の回折光学素子の製造方法。
【請求項9】
第1のガラス基板と、第2のガラス基板と、第1のガラス基板と第2のガラス基板の間に積層して配置され、お互いの境界面に複数の格子斜面と格子壁面からなる回折格子形状を有する光硬化樹脂からなる第1の樹脂層と第2の樹脂層を有する積層型回折光学素子の製造方法において、前記回折格子形状を有する成形型に第1の光硬化樹脂材料を供給する工程と、前記成形型に供給された第1の光硬化樹脂材料の上から前記第1のガラス基板を接触させ、前記第1の光硬化樹脂材料を前記成形型と前記第1のガラス基板の間に充填させる工程と、前記第1の光硬化樹脂材料に、光を照射して前記光硬化樹脂材料を硬化させることで、前記第1のガラス基板と前記第1の樹脂層とを一体化する工程と、前記一体化した前記ガラス基板と前記第1の樹脂層とを前記成形型から離型する工程と、前記第2のガラス基板に第2の光硬化樹脂材料を供給する工程と、前記第2のガラス基板に供給された第2の光硬化樹脂材料の上から、前記一体化した前記ガラス基板と前記第1の樹脂層を、前記第2の光硬化樹脂材料と前記第1の樹脂層が接触させ、前記第2の光硬化樹脂材料を前記第1の樹脂層と前記第2のガラス基板の間に充填させる工程と、前記回折格子形状の格子斜面に対して、垂直もしくは垂直方向よりも前記樹脂層の同一の格子斜面の薄肉側に傾斜している方向から光を照射して前記第2の光硬化樹脂材料を硬化させることで、一体化した前記第1のガラス基板と第1の樹脂層と、前記第2のガラス基板および第2の樹脂層とを一体化する工程と、を有することを特徴とする積層型回折光学素子の製造方法。
【請求項10】
前記第2の樹脂層はフッ素系樹脂であり、金属微粒子が分散していることを特徴とする請求項9に記載の積層型回折光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−160474(P2010−160474A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239394(P2009−239394)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】