回折格子、光ピックアップ装置、光ディスク装置
【課題】
本発明は、組み立て工程の安易で、かつまたトラックの角度変化に強いトラッキングエラー信号検出の手段、およびその手段を実現するための回折格子、光ピックアップ、光ディスク装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
第1及び第2及び第3の少なくとも3つの領域に分割された回折格子を用いる。第2の領域は回折しない領域であり、それを挟む第1の領域と第3領域を回折した光束の光ディスク上での集光位置はnを整数、光ディスクの案内溝間隔をtとしたとき、光ディスク半径方向に(2n−1)×t/2だけ各々間隔を空け配置させる。
本発明は、組み立て工程の安易で、かつまたトラックの角度変化に強いトラッキングエラー信号検出の手段、およびその手段を実現するための回折格子、光ピックアップ、光ディスク装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
第1及び第2及び第3の少なくとも3つの領域に分割された回折格子を用いる。第2の領域は回折しない領域であり、それを挟む第1の領域と第3領域を回折した光束の光ディスク上での集光位置はnを整数、光ディスクの案内溝間隔をtとしたとき、光ディスク半径方向に(2n−1)×t/2だけ各々間隔を空け配置させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折格子、光ピックアップ装置、光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術としては、例えば特開2005−122869号公報がある。本公報には、課題として「ディスク状記録媒体の偏心等による影響を低減してトラッキング誤差信号の品質の向上を図る」と記載があり、解決手段として「使用波長が異なる複数の種類のディスク状記録媒体100に対する情報信号の記録又は再生を可能とし、発光素子9から発光された波長の異なるレーザ光をそれぞれ主光束と一対の第1の副光束と一対の第2の副光束とに分割する複数の領域を有する回折素子10を設け、任意の一種類のディスク状記録媒体の記録面上に該ディスク状記録媒体の略半径方向において離隔して形成される第1の副光束のスポット中心と第2の副光束のスポット中心との距離をDとし、nを自然数とし、当該任意の一種類のディスク状記録媒体のトラックピッチをPとしたときに、距離Dが略(2n−1)×P/2となるようにした」と記載がある。
【0003】
また、本技術分野の背景技術としては、日経エレクトロニクス2004年10月25日号P.47がある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−122869号公報
【非特許文献1】日経エレクトロニクス、2004年10月25日号P.47
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ピックアップ装置は、一般に光ディスク内にある所定の記録トラック上に正しくスポットを照射するため、フォーカス誤差信号の検出により対物レンズをフォーカス方向に変位させてフォーカス方向に調整が行われる他、トラッキング誤差信号を検出して対物レンズを光ディスク状記録媒体の半径方向へ変位させてトラッキング調整が行われる。これらの信号により対物レンズの位置制御が行われる。
【0006】
このうちトラッキング誤差信号検出方法として、プッシュプル方式が知られているが、対物レンズのトラッキング方向変位により大きな直流変動(以下DCオフセットと呼ぶ)が生じやすいという問題がある。
【0007】
そこで、このDCオフセットの低減を図ることのできる差動プッシュプル方式が広く用いられている。
【0008】
差動プッシュプル方式(DPP:Differential Push Pull方式)は、回折格子によって光束を主光束と副光束に分割し、半径方向の主光束のスポット(以下メインスポットと呼ぶ)と副光束のスポット(以下サブスポットと呼ぶ)を用いてDCオフセットを低減している。
【0009】
しかし、DPP方式は3つのスポットがトラックに対して決まった配置でなければならないため、例えば光ディスクの偏心や回折格子の回転ズレが生じると、DPP信号の振幅変化が生じ、安定したトラッキング制御を行うことが難しくなる。
【0010】
そこで特許文献1では、発光素子から発光されたレーザ光を主光束と一対の第1の副光束と一対の第2の副光束とに分割する複数の領域を有する回折素子を設け、ディスク状記録媒体の記録面上に該ディスク状記録媒体の略半径方向において離隔して形成される第1の副光束のスポット中心と第2の副光束のスポット中心との距離をDとし、nを自然数とし、ディスク状記録媒体のトラックピッチをPとしたときに、距離Dが略(2n−1)×P/2となるようにすることで、ディスクの偏心や回折格子の回転ズレによる影響を低減している。この方式は回折格子によって5つのビームに分割されるので、以下説明を簡略化するため、このトラッキング誤差検出方式を従来5ビームDPP方式と呼ぶ。
【0011】
この技術を用いると対物レンズは光ディスクの中心を通って半径方向に伸びる直線上から外れた位置(以下オフセンタと呼ぶ)を走査することになってもトラッキング誤差信号を得ることができる。そのため、非特許文献1のように対物レンズ2つを光ディスク接線方向に並べる配置を実現可能としている。
【0012】
しかしながら、上記従来5ビームDPP方式には以下に示すような課題点がある。上記特許文献によれば、従来5ビームDPP方式は副(以下サブと呼ぶ)光束のプッシュプル信号振幅は0となり、対物レンズがトラッキング方向へ変位する際に生ずるDCオフセット信号のみが検出されるため、これを用いて主光束のDCオフセット信号をキャンセルするとしている。ところがオフセンタ量を大きくしてしまうとサブ光束のプッシュプル信号振幅が検出され、光ディスクの内外周位置によってトラッキング誤差信号が大きく変動してしまう。このため特許文献1の方式を用いて実用的なトラッキング誤差信号を得るためには、オフセンタ量を非常に狭い範囲に限定せざるを得ないことがわかった。また、オフセンタ量をある程度小さくしても光ディスクの内外周位置でトラッキング誤差信号が変動してしまうため、光ピックアップ装置の実用性能が大きく阻害されるのことが課題点であった。
【0013】
例えば非特許文献1のような光ピックアップの場合、1つのアクチュエータに2つの対物レンズを搭載することが必須となる。このためアクチュエータの性能が出しにくいという課題がある。2つの対物レンズを用いて記録再生の高速化に対応するにはアクチュエータは2つ別個に設けることが望ましく、この場合オフセンタ量を大きくする必要が出てくる。
【0014】
上記課題、すなわち従来5ビームDPP方式のトラッキング誤差信号がオフセンタ量に依存するという課題についてはどの公知文献も一切言及しておらず、従って当然のことながらその改善手段も一切開示されていないのが現状である。
【0015】
そこで本発明の目的は、上記従来5ビームDPP方式における課題であるトラッキング誤差信号がオフセンタ量に依存するという点を改善することである。具体的にはオフセンタ量が大きくなってもDCオフセット信号が良好に除去された実用的なトラッキング誤差信号を検出することができる新しいトラッキング誤差検出手段を用いた光ピックアップ装置、光学的情報再生装置、光学的情報記録再生装置あるいはそれに用いられる回折格子を提供することである。
【0016】
つまるところ、回折格子、光ピックアップ装置、光ディスク装置の性能向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は、特許請求の範囲に記載の発明によって達成できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回折格子、光ピックアップ装置、光ディスク装置の性能が向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の詳細について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の第1の実施例に係る光ピックアップ装置の一例を示した概略構成図である。
【0021】
光ピックアップ装置1は、図1のように駆動機構7によって光ディスク100の半径方向に駆動することができるように構成されており、アクチュエータ5、アクチュエータ6にそれぞれ対物レンズ2、対物レンズ3が搭載されている。対物レンズ2のレンズ中心が前記光ディスク100の中心を通って光ピックアップ装置の半径方向の駆動方向に伸びる軸の軸上に配置している。また対物レンズ3のレンズ中心は光ピックアップ装置の半径方向の駆動方向に対して略垂直な方向に配置している。
【0022】
上記のような光ピックアップ装置において、図2はオフセンタする側の光学系について示している。ここではBDの光学系で説明する。なお、簡略化のためにオフセンタする側の光学系を図2のように示したがセンタ・オフセンタする側の光学系を共通光路化してあってもなんら構わない。
【0023】
半導体レーザ50からは、波長略405nmの光束が発散光として出射される。半導体レーザ50から出射した光束は図3に示す回折格子51により5本の光束に分岐される。回折格子51を透過した光束はビームスプリッタ52を反射し、コリメートレンズ53により略平行な光束に変換される。なお一部の光束はビームスプリッタ52を透過しフロントモニタ54に入射する。一般的にBD−REなどの記録型の光ディスクに情報を記録する場合には、光ディスクの記録面に所定の光量を照射させるため、半導体レーザの光量を高精度に制御する必要がある。このため、フロントモニタ54は記録型の光ディスク100に信号を記録する際に、半導体レーザ50の光量の変化を検出し、半導体レーザ50の駆動回路(図示せず)にフィードバックされる。これにより光ディスク100上の光量をモニタすることが可能となる。
【0024】
コリメートレンズ53を出射した光束は、ビームエキスパンダ55に入射する。ビームエキスパンダ55は、光束の発散・収束状態を変えることで、光ディスク100のカバー層の厚み誤差による球面収差を補償することに使用される。
【0025】
ビームエキスパンダ55を出射した光ビームは立ち上げミラー56を反射し、アクチュエータ6に搭載されたBD用対物レンズ3により光ディスク100上に集光される。光ディスク100上では5つのスポットが形成される。
【0026】
光ディスク100により反射した光束は、BD用対物レンズ3、立ち上げミラー56、ビームエキスパンダ55、コリメートレンズ53、ビームスプリッタ52、検出レンズ57を経て光検出器58に入射する。検出レンズ57は光束が透過するときに所定の非点収差が与えられ、フォーカス誤差信号検出に用いられる。
【0027】
ところで、上記した本発明の実施例1は、図4で示した従来5ビームDPP方式を用いた光ピックアップ装置とほぼ同一の光学系構成及び集光スポット配置になっているが半導体レーザ50とビームスプリッタ52の間に設けられた回折格子51の格子パターンが異なっている。一方、図5(a)、(b)は従来5ビームDPP方式の回折格子59パターンである。
【0028】
次に、なぜ従来5ビームDPP方式と全く同様の手段でトラッキング誤差信号を検出しても、本実施例を用いることによって従来5ビームDPP方式よりもトラッキング誤差信号のオフセンタ量依存性が改善されるかその理由を以下に説明する。
【0029】
まず初めに、5ビームDPP方式の信号検出原理について簡単に説明する。図6は回折格子51(または59)により分岐された光束の光ディスク100上のメインスポットa、サブスポット+1次光b、cと−1次光d、eの位置とそれぞれのスポットから検出されるプッシュプル信号a、b、c、d、eを示したものである。
【0030】
回折格子51の作用により、図3に示す第1の領域101と第3の領域103を回折した光束がそれぞれ図6の光ディスク100上にサブスポットb、eとサブスポットc、dを形成している。また図5に示す従来5ビームDPP方式の回折格子59では領域201(302、304)と領域202(301、303)を回折した光束がそれぞれ図6の光ディスク100上にサブスポットb、eとサブスポットc、dを形成している。
【0031】
ここで図6中の光スポットa〜eが光ディスク半径方向(図中右)に移動することを考える。
【0032】
メインスポットaが図中の位置から光ディスク半径方向に移動すると、光ディスク100のトラックに沿って図6下部に示すようなプッシュプル信号aが検出できる。また、サブスポットb、dからはプッシュプル信号b、dが検出できる。さらにサブスポットc、eからはプッシュプル信号b、dに対して位相が略180度反転したプッシュプル信号c、eが検出できる。ここでプッシュプル信号aをMPP、プッシュプル信号b、c、d、eを全て加算した信号をSPP信号とすると、トラッキング誤差信号(TES)は次の演算で得られる。
【0033】
【数1】
【0034】
なお、式中のkはメインスポットとサブスポットの光量差を補正する係数である。プッシュプル信号b、c、d、eを全て加算すると0になることは図6より明らかであり、[数1]の演算を行うことでトラッキング誤差信号とMPP信号が等しくなる。本演算はDPP信号演算と同じ演算を行うため、対物レンズシフト時のオフセットをキャンセルできるのが利点である。
【0035】
次に従来5ビームDPP方式のトラッキング誤差信号がオフセンタ量に依存する理由について簡単に説明する。オフセンタするとトラックの傾きが光ディスク半径位置に依存する。図7はオフセンタ量に対するトラック角度変化量(光ディスク内周位置(半径位置22mm)のトラック角度に対する外周位置(半径位置57.5mm)のトラック角度)を示したグラフである。例えばオフセンタ量を5mmとすると光ディスクの内外周で約8度変化することがわかる。このようにオフセンタ量を増やすことによってトラック角度変化量が増えるのである。
【0036】
まず従来5ビームDPP方式の回折格子59を用いた場合のトラッキング誤差信号について説明する。図8(1)、(2)は図5(a)の回折格子を用いた場合の対物レンズ上及び検出面上のサブ+1次光を模式的に示したものである。図8(1)は回折格子59の領域の分割線がトラックに対して垂直に配置した場合を示しており、図8(2)はそれに対し垂直からある角度を持った場合を示したものである。つまり図8(2)はオフセンタしたときのサブ+1次光を模式的に示している。
【0037】
プッシュプル信号は光ディスク100上のトラックで回折されたディスク±1次光とディスク0次光の干渉を検出することで生成される(回折格子の回折光と混同しないようにディスクで回折した光束の+1次光をディスク+1次光、−1次光をディスク−1次光、0次光をディスク0次光と呼ぶ)。ここで、プッシュプル信号生成原理に関しては既に公知であるので説明は省略する。なお、フォーカス検出方式として非点収差方式を採用した例を示しているため、検出器の受光面上のスポットは強度分布が光軸回りに略90度回転している。このためプッシュプル信号は図示するように光ディスクの接線方向に対応する方向に2分割された受光面からの出力信号の差から検出するようになっている。
【0038】
最初に図8(1)のように回折格子59の領域の分割線がトラックに対して垂直な場合を考える。ディスク回折光はトラックに垂直に回折されるのでサブスポットbに対する回折光はディスク+1次光211、ディスク−1次光209のようになる。ここで、サブスポットbに対するディスク±1次光211、209とディスク0次光210の干渉によるプッシュプル信号bが検出される。またサブスポットcに対してもディスク±1次光221、219とディスク0次光220の干渉によるプッシュプル信号cが検出される。上記したように、プッシュプル信号b、プッシュプル信号cは位相が反転しているので加算した信号の振幅は0となる。サブスポットd、eでも同様に考えられるので結局トラッキング誤差信号はMPP信号と等しくなる。
【0039】
次に図8(2)のように回折格子59の領域の分割線がトラックに対し垂直からある角度を持った場合を考える。同様に考えると、ディスク回折光はトラックに垂直に回折されるのでサブスポットbに対する回折光はディスク+1次光231、ディスク−1次光229のようになる。またサブスポットcに対する回折光はディスク+1次光241、ディスク−1次光239のようになる。ここで、サブスポットbに対するディスク±1次光231、229とディスク0次光230の干渉によるプッシュプル信号とサブスポットcに対するディスク±1次光241、239とディスク0次光240の干渉によるプッシュプル信号は反転しているので加算した信号の振幅は0となる。ところが同時にサブスポットbに対するディスク0次光230とサブスポットcに対する+1次光241の干渉、サブスポットcに対する0次光240とサブスポットbに対する−1次光229の干渉が起こる。この領域では、プッシュプル演算をしてもキャンセルしない。結果的に、トラッキング誤差信号に影響してしまう。これが従来5ビームDPP方式の課題点である。なお、図5(b)の回折格子を用いても同様であることは明らかなので説明は省略する。
【0040】
次に本発明の回折格子51を用いた場合のトラック角度依存性について説明する。図9は本発明の図3の3分割回折格子を用いた場合の対物レンズ上及び検出面上でのサブ+1次光を模式的に示したものである。
【0041】
最初に図9(1)のように回折格子51の領域の分割線がトラックに対して垂直な場合を考える。ディスク回折光はトラックに垂直に回折されるのでサブスポットbに対する回折光はディスク+1次光111、ディスク−1次光109のようになる。ここで、サブスポットbに対するディスク±1次光111、109とディスク0次光110の干渉によるプッシュプル信号bが検出される。またサブスポットcに対してもディスク±1次光121、119とディスク0次光120の干渉によるプッシュプル信号cが検出される。上記したように、プッシュプル信号b、プッシュプル信号cは位相が反転しているので加算した信号の振幅は0となる。サブスポットd、eでも同様に考えられるので結局トラッキング誤差信号はMPP信号と等しくなる。
【0042】
次に図9(2)のように分割線がトラックに対し垂直からある角度を持った場合を考える。同様に考えると、ディスク回折光はトラックに垂直に回折されるのでサブスポットbに対する回折光はディスク+1次光131、ディスク−1次光129のようになる。またサブスポットcに対する回折光はディスク+1次光141、ディスク−1次光139のようになる。ここで、サブスポットbに対するディスク±1次光131、129とディスク0次光130の干渉によるプッシュプル信号とサブスポットcに対するディスク±1次光141、139とディスク0次光140の干渉によるプッシュプル信号は反転しているので加算した信号の振幅は0となる。図から明らかなように問題となっている干渉領域が発生しない。これにより、オフセンタしてもSPP信号振幅発生が抑制できる。また、対物レンズシフト時のオフセットについては光量差を補正する係数kを変えることで対応可能である。さらに図10のように、2つのサブスポットをメインスポットに対して前方または後方に配置するだけであっても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0043】
これを踏まえ、本発明の効果を説明する。図11はトラック角度変化に対するトラッキング誤差信号振幅変動量について従来5ビームDPP方式と本方式を比較した計算シミュレーション結果である。なお、計算シミュレーションに用いた光ピックアップ装置の主要なパラメータは以下の通りである。
【0044】
(1)レーザ波長:405nm
(2)対物レンズNA:0.85
(3)トラックピッチ:0.32μm(BD−RE想定)
図5(a)、(b)の格子を用いた従来5ビームDPP方式(図11◆印)ではトラック角度変化量が大きくなるに従ってトラッキングエラー信号振幅変動量が急激に大きくなっているが、図3の3分割格子を用いた本方式(図11■印)ではそれが抑制されていることがわかる。このためトラックの角度変化が大きくなっても常にDCオフセット信号が良好に除去された実用的なトラッキング誤差信号を検出することができる。本発明を用いれば安定したトラッキング誤差信号を検出できるだけでなく、オフセンタ量を大きくできるのでアクチュエータ1つに対物レンズ1つで2つの対物レンズを搭載することが可能となり、高速化が可能となる。なお説明はBDで行ったが他の再生/記録方式であってもなんら構わない。また、図12のような回折格子であっても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【実施例2】
【0045】
図13は本発明の第2の実施例に係るオフセンタ側の光学系概略図を示している。図中示された各光学部品については、図2に示した本発明実施例1と同じ光学部品には同じ番号を付している。
【0046】
図2に示した本発明の実施例1と異なる点は回折格子60である。図14は格子60を示したものである。回折格子60は実施例1と同じように3分割の領域を持っており、領域401を回折した光束の光ディスク100上での集光位置と領域403を回折した光束の光ディスク100上での集光位置はnを整数、光ディスク100の案内溝間隔をtとしたとき、光ディスク半径方向に(2n−1)×t/2離れている。しかし、領域402に関しては本発明の実施例1とは異なり、減光フィルターとなっている。実施例1のような場合、回折格子を透過した主光束は領域401、領域403で回折した分光比だけ回折格子を透過する前と光束の形状が変化する。領域401、領域403の分光比が大きくすると対物レンズに入射する光束の形状が本来の光束の形状と大きく異なるために書き込み精度が低下することが考えられる。これを抑制するために領域401、領域403の分光比分だけ領域402の光量を落とすのである。これにより安定した書き込みが行える。なお、簡略化のためにオフセンタ側の光学系を図13のように示したがセンタ・オフセンタを共通光路化してあってもよいことは言うまでない。
【実施例3】
【0047】
図15は本発明の第3の実施例に係るオフセンタ側の光学系概略図を示している。
【0048】
半導体レーザ50からは、波長略405nmの光束が発散光として出射される。半導体レーザ50から出射した光束は図16に示す回折格子61により6または7本の光束に分岐される。回折格子61を透過した5本の光束はビームスプリッタ62を反射し、コリメートレンズ53により略平行な光束に変換される。なお1または2本の光束は回折格子61を回折しフロントモニタ54に入射する。一般的にBD−REなどの記録型の光ディスクに情報を記録する場合には、光ディスクの記録面に所定の光量を照射させるため、半導体レーザの光量を高精度に制御する必要がある。このため、フロントモニタ54は記録型の光ディスク100に信号を記録する際に、半導体レーザ50の光量の変化を検出し、半導体レーザ50の駆動回路(図示せず)にフィードバックされる。これにより光ディスク100上の光量をモニタすることが可能となる。
【0049】
コリメートレンズ53を出射した光束は、ビームエキスパンダ55に入射する。ビームエキスパンダ55は、光束の発散・収束状態を変えることで、カバー層の厚み誤差による球面収差を補償することに使用される。
【0050】
ビームエキスパンダ55を出射した光ビームは立ち上げミラー56を反射し、アクチュエータ6に搭載されたBD用対物レンズ3により光ディスク100上に集光される。光ディスク100上では5つのスポットが形成される。
【0051】
光ディスク100により反射した光束は、BD用対物レンズ3、立ち上げミラー56、ビームエキスパンダ55、コリメートレンズ53、ビームスプリッタ62、検出レンズ57を経て光検出器58に入射する。検出レンズ57は光束が透過するときに所定の非点収差が与えられ、フォーカス誤差信号検出に用いられる。
【0052】
回折格子61は、図16に示すように実施例1と同じく3分割の領域を持っており、領域601を回折した光束のディスク100上での集光位置と領域603を回折した光束のディスク100上での集光位置はnを整数、光ディスク100の案内溝間隔をtとしたとき、光ディスク半径方向に(2n−1)×t/2離れている。しかし、領域602に関しては本発明の実施例1とは異なり、格子構造となっている。この領域602を回折した光束は図15中のフロントモニタ54に入射する。
【0053】
なお、ここでは領域602の回折光をフロントモニタに入射させたが光ディスク100上に照射してフォーカス誤差信号等のサーボ信号生成に用いてもなんら構わない。
【実施例4】
【0054】
図17は本発明の第4の実施例に係るCD、DVD、BDの3種類の光ディスクに対応可能な光ピックアップ装置を示している。図中示された各光学部品については、図2に示した本発明実施例1と同じ光学部品には同じ番号を付している。図中の1点鎖線はCD、DVD、BDの光路を示したものである。また点線502は光ディスクの中心を通り光ピックアップ装置1のシーク軸と一致する線である。BDの光学系は実施例1と同様であるので以下でDVD及びCDの光学系について説明する。なお、BDの光学系は実施例2(図13)、実施例3(図15)の光学系であってもなんら構わない。
【0055】
まずDVDの光学系について説明する。半導体レーザ150からは波長略660nmの光束が発散光として出射される。半導体レーザ150から出射した光束は補正レンズ151を透過し回折格子152に入射する。回折格子152を透過した光束はビームスプリッタ153、ビームスプリッタ154を経てコリメートレンズ155に入射し、平行光に変換される。ビームスプリッタ154に入射した光束の一部は透過し、フロントモニタ161に入射する。コリメートレンズ155を透過した光束は立ち上げミラー156を反射し、アクチュエータ157に搭載されたCD・DVD用互換対物レンズ158により光ディスク上に集光される。光ディスク上では実施例1のように5つのスポットが形成される。このとき、CD・DVD用互換対物レンズ158は光ディスクの中心を通る点線502の位置に配置されている。
【0056】
光ディスクにより反射した光束は、CD・DVD用互換対物レンズ158、立ち上げミラー156、コリメートレンズ155、ビームスプリッタ154、検出レンズ159を経て光検出器160に入射する。検出レンズ159は光束が透過するときに所定の非点収差が与えられ、フォーカス誤差信号検出に用いられる。
【0057】
なお、ここでは実施例1で説明したトラッキング誤差方式を用いたが、従来の3ビームを用いたトラッキング誤差検出方式であってもなんら構わない。
【0058】
次にCDの光学系について説明する。半導体レーザ250からは波長略780nmの光束が発散光として出射される。半導体レーザ250から出射した光束は補正レンズ251を透過し、回折格子252に入射する。回折格子252を透過した光束はビームスプリッタ153、ビームスプリッタ154を経てコリメートレンズ155に入射し、平行光に変換される。ビームスプリッタ154に入射した光束の一部は透過し、フロントモニタ161に入射する。コリメートレンズ155を透過した光束は立ち上げミラー156を反射し、アクチュエータ157に搭載されたCD・DVD用互換対物レンズ158により光ディスク上に集光される。光ディスク上では実施例1のように5つのスポットが形成される。このとき、CD・DVD用互換対物レンズ158は光ディスクの中心を通る点線502の位置に配置されている。
【0059】
光ディスクにより反射した光束は、CD・DVD用互換対物レンズ158、立ち上げミラー156、コリメートレンズ155、ビームスプリッタ154、検出レンズ159を経て光検出器160に入射する。検出レンズ159は光束が透過するときに所定の非点収差が与えられ、フォーカス誤差信号検出に用いられる。
【0060】
なお、ここでは実施例1で説明したトラッキング誤差方式を用いたが、従来の3ビームを用いたトラッキング誤差検出方式であってもなんら構わない。
【0061】
波長の異なるDVDとCDとBDの光ビームを1つの対物レンズを用いて各々所定の光ディスクに集光させる3波長を互換対物レンズは作製が非常に困難である。このため、DVDとCDとBDの対物レンズを光ディスクの中心と一致した点線502上に配置することが出来なかった。また、従来5ビームDPP方式では、オフセンタ量を大きくすることができないため、図17のように2個のレンズを2つのアクチュエータに搭載することが出来なかった。しかし本発明を用いることで、DVDとCDとBDの互換光ピックアップを実現することができ、高速化も可能となる。
【実施例5】
【0062】
実施例5では、光ピックアップ装置170を搭載した、光学的再生装置について説明する。図18は光学的再生装置の概略構成である。光ピックアップ装置170は、光ディスク100の半径方向に沿って駆動できる機構が設けられており、アクセス制御回路172からのアクセス制御信号に応じて位置制御される。
レーザ点灯回路177からは所定のレーザ駆動電流が光ピックアップ装置170内の半導体レーザに供給され、半導体レーザからは再生に応じて所定の光量でレーザ光が出射される。なお、レーザ点灯回路177は光ピックアップ装置170内に組み込むこともできる。
【0063】
光ピックアップ装置170内の光検出器から出力された信号は、サーボ信号生成回路174および情報信号再生回路175に送られる。サーボ信号生成回路174では前記光検出器からの信号に基いてフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号ならびにチルト制御信号などのサーボ信号が生成され、これを基にアクチュエータ駆動回路173を経て光ピックアップ装置170内のアクチュエータを駆動して、対物レンズの位置制御がなされる。
【0064】
前記情報信号再生回路175では、前記光検出器からの信号に基づいて光ディスク100に記録されている情報信号が再生される。
前記サーボ信号生成回路174および情報信号再生回路175で得られた信号の一部はコントロール回路176に送られる。このコントロール回路176にはスピンドルモータ駆動回路171、アクセス制御回路172、サーボ信号生成回路174、レーザ点灯回路177などが接続され、光ディスク100を回転させるスピンドルモータ180の回転制御、アクセス方向およびアクセス位置の制御、対物レンズのサーボ制御、光ピックアップ装置170内の半導体レーザ発光光量の制御などが行われる。
【実施例6】
【0065】
実施例6では、光ピックアップ170を搭載した、光学的記録再生装置について説明する。図19は光学的記録再生装置の概略構成である。この装置で前記図18に説明した光学的情報記録再生装置と相違する点は、コントロール回路176とレーザ点灯回路177の間に情報信号記録回路178を設け、情報信号記録回路178からの記録制御信号に基づいてレーザ点灯回路177の点灯制御を行って、光ディスク100へ所望の情報を書き込む機能が付加されている点である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例1における光ピックアップ装置と光ディスクの配置を示す図である。
【図2】実施例1における光ピックアップ装置を説明する図である。
【図3】実施例1における回折格子を説明する図である。
【図4】実施例1における従来5ビームDPP方式を用いた光ピックアップ装置を説明する図である。
【図5】実施例1における従来5ビームDPP方式の回折格子を説明する図である。
【図6】実施例1における5ビームDPP方式の原理を説明する図である。
【図7】実施例1におけるオフセンタ量とトラックの角度変化量を示した図である。
【図8】実施例1における従来5ビームDPP方式がトラック角度依存することを説明する図である。
【図9】実施例1における本発明がトラック角度に依存しないことを説明する図である。
【図10】実施例1におけるディスク上のスポット配置を示す図である。
【図11】実施例1における本方式と従来5ビームDPP方式についてオフセンタ量に対するトラッキング誤差信号変動量を比較した図である。
【図12】実施例1における回折格子を説明する図である。
【図13】実施例2における光ピックアップ装置を説明する図である。
【図14】実施例2における回折格子を説明する図である。
【図15】実施例3における光ピックアップ装置を説明する図である。
【図16】実施例3における回折格子を説明する図である。
【図17】実施例4における光ピックアップ装置を説明する図である。
【図18】実施例5における光学的再生装置を説明する図である。
【図19】実施例6における光学的記録再生装置を説明する図である。
【符号の説明】
【0067】
1:光ピックアップ装置、2:対物レンズ、3:対物レンズ、5:駆動装置、6、アクチュエータ、7:駆動機構、10:スピンドル、50:半導体レーザ、51:回折格子、52:ビームスプリッタ、53:コリメートレンズ、54:フロントモニタ、55:ビームエキスパンダ、56:立ち上げミラー、57:検出レンズ、58:光検出器、59:回折格子、60:回折格子、61:回折格子、62:ビームスプリッタ、100:光ディスク、150:半導体レーザ、151:補助レンズ、152:回折格子、153:ビームスプリッタ、154:ビームスプリッタ、155:コリメートレンズ、156:立ち上げミラー、157:アクチュエータ、158:CD・DVD用互換対物レンズ、159:検出レンズ、160:光検出器、161:フロントモニタ、170:光ピックアップ装置、171:スピンドルモータ、172:アクセス制御、173:アクチュエータ駆動回路、174:サーボ信号生成回路、175:情報信号再生回路、176:コントロール回路、177:レーザ点灯回路、178:情報記録回路、180:スピンドルモータ、500:トラック、510:検出面(サブ)、a:本発明のメイン光スポット、b:本発明の第1領域から回折された+1次光スポット、c:本発明の第2領域から回折された+1次光スポット、d:本発明の第1領域から回折された−1次光スポット、e:本発明の第2領域から回折された−1次光スポット
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折格子、光ピックアップ装置、光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術としては、例えば特開2005−122869号公報がある。本公報には、課題として「ディスク状記録媒体の偏心等による影響を低減してトラッキング誤差信号の品質の向上を図る」と記載があり、解決手段として「使用波長が異なる複数の種類のディスク状記録媒体100に対する情報信号の記録又は再生を可能とし、発光素子9から発光された波長の異なるレーザ光をそれぞれ主光束と一対の第1の副光束と一対の第2の副光束とに分割する複数の領域を有する回折素子10を設け、任意の一種類のディスク状記録媒体の記録面上に該ディスク状記録媒体の略半径方向において離隔して形成される第1の副光束のスポット中心と第2の副光束のスポット中心との距離をDとし、nを自然数とし、当該任意の一種類のディスク状記録媒体のトラックピッチをPとしたときに、距離Dが略(2n−1)×P/2となるようにした」と記載がある。
【0003】
また、本技術分野の背景技術としては、日経エレクトロニクス2004年10月25日号P.47がある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−122869号公報
【非特許文献1】日経エレクトロニクス、2004年10月25日号P.47
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ピックアップ装置は、一般に光ディスク内にある所定の記録トラック上に正しくスポットを照射するため、フォーカス誤差信号の検出により対物レンズをフォーカス方向に変位させてフォーカス方向に調整が行われる他、トラッキング誤差信号を検出して対物レンズを光ディスク状記録媒体の半径方向へ変位させてトラッキング調整が行われる。これらの信号により対物レンズの位置制御が行われる。
【0006】
このうちトラッキング誤差信号検出方法として、プッシュプル方式が知られているが、対物レンズのトラッキング方向変位により大きな直流変動(以下DCオフセットと呼ぶ)が生じやすいという問題がある。
【0007】
そこで、このDCオフセットの低減を図ることのできる差動プッシュプル方式が広く用いられている。
【0008】
差動プッシュプル方式(DPP:Differential Push Pull方式)は、回折格子によって光束を主光束と副光束に分割し、半径方向の主光束のスポット(以下メインスポットと呼ぶ)と副光束のスポット(以下サブスポットと呼ぶ)を用いてDCオフセットを低減している。
【0009】
しかし、DPP方式は3つのスポットがトラックに対して決まった配置でなければならないため、例えば光ディスクの偏心や回折格子の回転ズレが生じると、DPP信号の振幅変化が生じ、安定したトラッキング制御を行うことが難しくなる。
【0010】
そこで特許文献1では、発光素子から発光されたレーザ光を主光束と一対の第1の副光束と一対の第2の副光束とに分割する複数の領域を有する回折素子を設け、ディスク状記録媒体の記録面上に該ディスク状記録媒体の略半径方向において離隔して形成される第1の副光束のスポット中心と第2の副光束のスポット中心との距離をDとし、nを自然数とし、ディスク状記録媒体のトラックピッチをPとしたときに、距離Dが略(2n−1)×P/2となるようにすることで、ディスクの偏心や回折格子の回転ズレによる影響を低減している。この方式は回折格子によって5つのビームに分割されるので、以下説明を簡略化するため、このトラッキング誤差検出方式を従来5ビームDPP方式と呼ぶ。
【0011】
この技術を用いると対物レンズは光ディスクの中心を通って半径方向に伸びる直線上から外れた位置(以下オフセンタと呼ぶ)を走査することになってもトラッキング誤差信号を得ることができる。そのため、非特許文献1のように対物レンズ2つを光ディスク接線方向に並べる配置を実現可能としている。
【0012】
しかしながら、上記従来5ビームDPP方式には以下に示すような課題点がある。上記特許文献によれば、従来5ビームDPP方式は副(以下サブと呼ぶ)光束のプッシュプル信号振幅は0となり、対物レンズがトラッキング方向へ変位する際に生ずるDCオフセット信号のみが検出されるため、これを用いて主光束のDCオフセット信号をキャンセルするとしている。ところがオフセンタ量を大きくしてしまうとサブ光束のプッシュプル信号振幅が検出され、光ディスクの内外周位置によってトラッキング誤差信号が大きく変動してしまう。このため特許文献1の方式を用いて実用的なトラッキング誤差信号を得るためには、オフセンタ量を非常に狭い範囲に限定せざるを得ないことがわかった。また、オフセンタ量をある程度小さくしても光ディスクの内外周位置でトラッキング誤差信号が変動してしまうため、光ピックアップ装置の実用性能が大きく阻害されるのことが課題点であった。
【0013】
例えば非特許文献1のような光ピックアップの場合、1つのアクチュエータに2つの対物レンズを搭載することが必須となる。このためアクチュエータの性能が出しにくいという課題がある。2つの対物レンズを用いて記録再生の高速化に対応するにはアクチュエータは2つ別個に設けることが望ましく、この場合オフセンタ量を大きくする必要が出てくる。
【0014】
上記課題、すなわち従来5ビームDPP方式のトラッキング誤差信号がオフセンタ量に依存するという課題についてはどの公知文献も一切言及しておらず、従って当然のことながらその改善手段も一切開示されていないのが現状である。
【0015】
そこで本発明の目的は、上記従来5ビームDPP方式における課題であるトラッキング誤差信号がオフセンタ量に依存するという点を改善することである。具体的にはオフセンタ量が大きくなってもDCオフセット信号が良好に除去された実用的なトラッキング誤差信号を検出することができる新しいトラッキング誤差検出手段を用いた光ピックアップ装置、光学的情報再生装置、光学的情報記録再生装置あるいはそれに用いられる回折格子を提供することである。
【0016】
つまるところ、回折格子、光ピックアップ装置、光ディスク装置の性能向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は、特許請求の範囲に記載の発明によって達成できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回折格子、光ピックアップ装置、光ディスク装置の性能が向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の詳細について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の第1の実施例に係る光ピックアップ装置の一例を示した概略構成図である。
【0021】
光ピックアップ装置1は、図1のように駆動機構7によって光ディスク100の半径方向に駆動することができるように構成されており、アクチュエータ5、アクチュエータ6にそれぞれ対物レンズ2、対物レンズ3が搭載されている。対物レンズ2のレンズ中心が前記光ディスク100の中心を通って光ピックアップ装置の半径方向の駆動方向に伸びる軸の軸上に配置している。また対物レンズ3のレンズ中心は光ピックアップ装置の半径方向の駆動方向に対して略垂直な方向に配置している。
【0022】
上記のような光ピックアップ装置において、図2はオフセンタする側の光学系について示している。ここではBDの光学系で説明する。なお、簡略化のためにオフセンタする側の光学系を図2のように示したがセンタ・オフセンタする側の光学系を共通光路化してあってもなんら構わない。
【0023】
半導体レーザ50からは、波長略405nmの光束が発散光として出射される。半導体レーザ50から出射した光束は図3に示す回折格子51により5本の光束に分岐される。回折格子51を透過した光束はビームスプリッタ52を反射し、コリメートレンズ53により略平行な光束に変換される。なお一部の光束はビームスプリッタ52を透過しフロントモニタ54に入射する。一般的にBD−REなどの記録型の光ディスクに情報を記録する場合には、光ディスクの記録面に所定の光量を照射させるため、半導体レーザの光量を高精度に制御する必要がある。このため、フロントモニタ54は記録型の光ディスク100に信号を記録する際に、半導体レーザ50の光量の変化を検出し、半導体レーザ50の駆動回路(図示せず)にフィードバックされる。これにより光ディスク100上の光量をモニタすることが可能となる。
【0024】
コリメートレンズ53を出射した光束は、ビームエキスパンダ55に入射する。ビームエキスパンダ55は、光束の発散・収束状態を変えることで、光ディスク100のカバー層の厚み誤差による球面収差を補償することに使用される。
【0025】
ビームエキスパンダ55を出射した光ビームは立ち上げミラー56を反射し、アクチュエータ6に搭載されたBD用対物レンズ3により光ディスク100上に集光される。光ディスク100上では5つのスポットが形成される。
【0026】
光ディスク100により反射した光束は、BD用対物レンズ3、立ち上げミラー56、ビームエキスパンダ55、コリメートレンズ53、ビームスプリッタ52、検出レンズ57を経て光検出器58に入射する。検出レンズ57は光束が透過するときに所定の非点収差が与えられ、フォーカス誤差信号検出に用いられる。
【0027】
ところで、上記した本発明の実施例1は、図4で示した従来5ビームDPP方式を用いた光ピックアップ装置とほぼ同一の光学系構成及び集光スポット配置になっているが半導体レーザ50とビームスプリッタ52の間に設けられた回折格子51の格子パターンが異なっている。一方、図5(a)、(b)は従来5ビームDPP方式の回折格子59パターンである。
【0028】
次に、なぜ従来5ビームDPP方式と全く同様の手段でトラッキング誤差信号を検出しても、本実施例を用いることによって従来5ビームDPP方式よりもトラッキング誤差信号のオフセンタ量依存性が改善されるかその理由を以下に説明する。
【0029】
まず初めに、5ビームDPP方式の信号検出原理について簡単に説明する。図6は回折格子51(または59)により分岐された光束の光ディスク100上のメインスポットa、サブスポット+1次光b、cと−1次光d、eの位置とそれぞれのスポットから検出されるプッシュプル信号a、b、c、d、eを示したものである。
【0030】
回折格子51の作用により、図3に示す第1の領域101と第3の領域103を回折した光束がそれぞれ図6の光ディスク100上にサブスポットb、eとサブスポットc、dを形成している。また図5に示す従来5ビームDPP方式の回折格子59では領域201(302、304)と領域202(301、303)を回折した光束がそれぞれ図6の光ディスク100上にサブスポットb、eとサブスポットc、dを形成している。
【0031】
ここで図6中の光スポットa〜eが光ディスク半径方向(図中右)に移動することを考える。
【0032】
メインスポットaが図中の位置から光ディスク半径方向に移動すると、光ディスク100のトラックに沿って図6下部に示すようなプッシュプル信号aが検出できる。また、サブスポットb、dからはプッシュプル信号b、dが検出できる。さらにサブスポットc、eからはプッシュプル信号b、dに対して位相が略180度反転したプッシュプル信号c、eが検出できる。ここでプッシュプル信号aをMPP、プッシュプル信号b、c、d、eを全て加算した信号をSPP信号とすると、トラッキング誤差信号(TES)は次の演算で得られる。
【0033】
【数1】
【0034】
なお、式中のkはメインスポットとサブスポットの光量差を補正する係数である。プッシュプル信号b、c、d、eを全て加算すると0になることは図6より明らかであり、[数1]の演算を行うことでトラッキング誤差信号とMPP信号が等しくなる。本演算はDPP信号演算と同じ演算を行うため、対物レンズシフト時のオフセットをキャンセルできるのが利点である。
【0035】
次に従来5ビームDPP方式のトラッキング誤差信号がオフセンタ量に依存する理由について簡単に説明する。オフセンタするとトラックの傾きが光ディスク半径位置に依存する。図7はオフセンタ量に対するトラック角度変化量(光ディスク内周位置(半径位置22mm)のトラック角度に対する外周位置(半径位置57.5mm)のトラック角度)を示したグラフである。例えばオフセンタ量を5mmとすると光ディスクの内外周で約8度変化することがわかる。このようにオフセンタ量を増やすことによってトラック角度変化量が増えるのである。
【0036】
まず従来5ビームDPP方式の回折格子59を用いた場合のトラッキング誤差信号について説明する。図8(1)、(2)は図5(a)の回折格子を用いた場合の対物レンズ上及び検出面上のサブ+1次光を模式的に示したものである。図8(1)は回折格子59の領域の分割線がトラックに対して垂直に配置した場合を示しており、図8(2)はそれに対し垂直からある角度を持った場合を示したものである。つまり図8(2)はオフセンタしたときのサブ+1次光を模式的に示している。
【0037】
プッシュプル信号は光ディスク100上のトラックで回折されたディスク±1次光とディスク0次光の干渉を検出することで生成される(回折格子の回折光と混同しないようにディスクで回折した光束の+1次光をディスク+1次光、−1次光をディスク−1次光、0次光をディスク0次光と呼ぶ)。ここで、プッシュプル信号生成原理に関しては既に公知であるので説明は省略する。なお、フォーカス検出方式として非点収差方式を採用した例を示しているため、検出器の受光面上のスポットは強度分布が光軸回りに略90度回転している。このためプッシュプル信号は図示するように光ディスクの接線方向に対応する方向に2分割された受光面からの出力信号の差から検出するようになっている。
【0038】
最初に図8(1)のように回折格子59の領域の分割線がトラックに対して垂直な場合を考える。ディスク回折光はトラックに垂直に回折されるのでサブスポットbに対する回折光はディスク+1次光211、ディスク−1次光209のようになる。ここで、サブスポットbに対するディスク±1次光211、209とディスク0次光210の干渉によるプッシュプル信号bが検出される。またサブスポットcに対してもディスク±1次光221、219とディスク0次光220の干渉によるプッシュプル信号cが検出される。上記したように、プッシュプル信号b、プッシュプル信号cは位相が反転しているので加算した信号の振幅は0となる。サブスポットd、eでも同様に考えられるので結局トラッキング誤差信号はMPP信号と等しくなる。
【0039】
次に図8(2)のように回折格子59の領域の分割線がトラックに対し垂直からある角度を持った場合を考える。同様に考えると、ディスク回折光はトラックに垂直に回折されるのでサブスポットbに対する回折光はディスク+1次光231、ディスク−1次光229のようになる。またサブスポットcに対する回折光はディスク+1次光241、ディスク−1次光239のようになる。ここで、サブスポットbに対するディスク±1次光231、229とディスク0次光230の干渉によるプッシュプル信号とサブスポットcに対するディスク±1次光241、239とディスク0次光240の干渉によるプッシュプル信号は反転しているので加算した信号の振幅は0となる。ところが同時にサブスポットbに対するディスク0次光230とサブスポットcに対する+1次光241の干渉、サブスポットcに対する0次光240とサブスポットbに対する−1次光229の干渉が起こる。この領域では、プッシュプル演算をしてもキャンセルしない。結果的に、トラッキング誤差信号に影響してしまう。これが従来5ビームDPP方式の課題点である。なお、図5(b)の回折格子を用いても同様であることは明らかなので説明は省略する。
【0040】
次に本発明の回折格子51を用いた場合のトラック角度依存性について説明する。図9は本発明の図3の3分割回折格子を用いた場合の対物レンズ上及び検出面上でのサブ+1次光を模式的に示したものである。
【0041】
最初に図9(1)のように回折格子51の領域の分割線がトラックに対して垂直な場合を考える。ディスク回折光はトラックに垂直に回折されるのでサブスポットbに対する回折光はディスク+1次光111、ディスク−1次光109のようになる。ここで、サブスポットbに対するディスク±1次光111、109とディスク0次光110の干渉によるプッシュプル信号bが検出される。またサブスポットcに対してもディスク±1次光121、119とディスク0次光120の干渉によるプッシュプル信号cが検出される。上記したように、プッシュプル信号b、プッシュプル信号cは位相が反転しているので加算した信号の振幅は0となる。サブスポットd、eでも同様に考えられるので結局トラッキング誤差信号はMPP信号と等しくなる。
【0042】
次に図9(2)のように分割線がトラックに対し垂直からある角度を持った場合を考える。同様に考えると、ディスク回折光はトラックに垂直に回折されるのでサブスポットbに対する回折光はディスク+1次光131、ディスク−1次光129のようになる。またサブスポットcに対する回折光はディスク+1次光141、ディスク−1次光139のようになる。ここで、サブスポットbに対するディスク±1次光131、129とディスク0次光130の干渉によるプッシュプル信号とサブスポットcに対するディスク±1次光141、139とディスク0次光140の干渉によるプッシュプル信号は反転しているので加算した信号の振幅は0となる。図から明らかなように問題となっている干渉領域が発生しない。これにより、オフセンタしてもSPP信号振幅発生が抑制できる。また、対物レンズシフト時のオフセットについては光量差を補正する係数kを変えることで対応可能である。さらに図10のように、2つのサブスポットをメインスポットに対して前方または後方に配置するだけであっても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0043】
これを踏まえ、本発明の効果を説明する。図11はトラック角度変化に対するトラッキング誤差信号振幅変動量について従来5ビームDPP方式と本方式を比較した計算シミュレーション結果である。なお、計算シミュレーションに用いた光ピックアップ装置の主要なパラメータは以下の通りである。
【0044】
(1)レーザ波長:405nm
(2)対物レンズNA:0.85
(3)トラックピッチ:0.32μm(BD−RE想定)
図5(a)、(b)の格子を用いた従来5ビームDPP方式(図11◆印)ではトラック角度変化量が大きくなるに従ってトラッキングエラー信号振幅変動量が急激に大きくなっているが、図3の3分割格子を用いた本方式(図11■印)ではそれが抑制されていることがわかる。このためトラックの角度変化が大きくなっても常にDCオフセット信号が良好に除去された実用的なトラッキング誤差信号を検出することができる。本発明を用いれば安定したトラッキング誤差信号を検出できるだけでなく、オフセンタ量を大きくできるのでアクチュエータ1つに対物レンズ1つで2つの対物レンズを搭載することが可能となり、高速化が可能となる。なお説明はBDで行ったが他の再生/記録方式であってもなんら構わない。また、図12のような回折格子であっても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【実施例2】
【0045】
図13は本発明の第2の実施例に係るオフセンタ側の光学系概略図を示している。図中示された各光学部品については、図2に示した本発明実施例1と同じ光学部品には同じ番号を付している。
【0046】
図2に示した本発明の実施例1と異なる点は回折格子60である。図14は格子60を示したものである。回折格子60は実施例1と同じように3分割の領域を持っており、領域401を回折した光束の光ディスク100上での集光位置と領域403を回折した光束の光ディスク100上での集光位置はnを整数、光ディスク100の案内溝間隔をtとしたとき、光ディスク半径方向に(2n−1)×t/2離れている。しかし、領域402に関しては本発明の実施例1とは異なり、減光フィルターとなっている。実施例1のような場合、回折格子を透過した主光束は領域401、領域403で回折した分光比だけ回折格子を透過する前と光束の形状が変化する。領域401、領域403の分光比が大きくすると対物レンズに入射する光束の形状が本来の光束の形状と大きく異なるために書き込み精度が低下することが考えられる。これを抑制するために領域401、領域403の分光比分だけ領域402の光量を落とすのである。これにより安定した書き込みが行える。なお、簡略化のためにオフセンタ側の光学系を図13のように示したがセンタ・オフセンタを共通光路化してあってもよいことは言うまでない。
【実施例3】
【0047】
図15は本発明の第3の実施例に係るオフセンタ側の光学系概略図を示している。
【0048】
半導体レーザ50からは、波長略405nmの光束が発散光として出射される。半導体レーザ50から出射した光束は図16に示す回折格子61により6または7本の光束に分岐される。回折格子61を透過した5本の光束はビームスプリッタ62を反射し、コリメートレンズ53により略平行な光束に変換される。なお1または2本の光束は回折格子61を回折しフロントモニタ54に入射する。一般的にBD−REなどの記録型の光ディスクに情報を記録する場合には、光ディスクの記録面に所定の光量を照射させるため、半導体レーザの光量を高精度に制御する必要がある。このため、フロントモニタ54は記録型の光ディスク100に信号を記録する際に、半導体レーザ50の光量の変化を検出し、半導体レーザ50の駆動回路(図示せず)にフィードバックされる。これにより光ディスク100上の光量をモニタすることが可能となる。
【0049】
コリメートレンズ53を出射した光束は、ビームエキスパンダ55に入射する。ビームエキスパンダ55は、光束の発散・収束状態を変えることで、カバー層の厚み誤差による球面収差を補償することに使用される。
【0050】
ビームエキスパンダ55を出射した光ビームは立ち上げミラー56を反射し、アクチュエータ6に搭載されたBD用対物レンズ3により光ディスク100上に集光される。光ディスク100上では5つのスポットが形成される。
【0051】
光ディスク100により反射した光束は、BD用対物レンズ3、立ち上げミラー56、ビームエキスパンダ55、コリメートレンズ53、ビームスプリッタ62、検出レンズ57を経て光検出器58に入射する。検出レンズ57は光束が透過するときに所定の非点収差が与えられ、フォーカス誤差信号検出に用いられる。
【0052】
回折格子61は、図16に示すように実施例1と同じく3分割の領域を持っており、領域601を回折した光束のディスク100上での集光位置と領域603を回折した光束のディスク100上での集光位置はnを整数、光ディスク100の案内溝間隔をtとしたとき、光ディスク半径方向に(2n−1)×t/2離れている。しかし、領域602に関しては本発明の実施例1とは異なり、格子構造となっている。この領域602を回折した光束は図15中のフロントモニタ54に入射する。
【0053】
なお、ここでは領域602の回折光をフロントモニタに入射させたが光ディスク100上に照射してフォーカス誤差信号等のサーボ信号生成に用いてもなんら構わない。
【実施例4】
【0054】
図17は本発明の第4の実施例に係るCD、DVD、BDの3種類の光ディスクに対応可能な光ピックアップ装置を示している。図中示された各光学部品については、図2に示した本発明実施例1と同じ光学部品には同じ番号を付している。図中の1点鎖線はCD、DVD、BDの光路を示したものである。また点線502は光ディスクの中心を通り光ピックアップ装置1のシーク軸と一致する線である。BDの光学系は実施例1と同様であるので以下でDVD及びCDの光学系について説明する。なお、BDの光学系は実施例2(図13)、実施例3(図15)の光学系であってもなんら構わない。
【0055】
まずDVDの光学系について説明する。半導体レーザ150からは波長略660nmの光束が発散光として出射される。半導体レーザ150から出射した光束は補正レンズ151を透過し回折格子152に入射する。回折格子152を透過した光束はビームスプリッタ153、ビームスプリッタ154を経てコリメートレンズ155に入射し、平行光に変換される。ビームスプリッタ154に入射した光束の一部は透過し、フロントモニタ161に入射する。コリメートレンズ155を透過した光束は立ち上げミラー156を反射し、アクチュエータ157に搭載されたCD・DVD用互換対物レンズ158により光ディスク上に集光される。光ディスク上では実施例1のように5つのスポットが形成される。このとき、CD・DVD用互換対物レンズ158は光ディスクの中心を通る点線502の位置に配置されている。
【0056】
光ディスクにより反射した光束は、CD・DVD用互換対物レンズ158、立ち上げミラー156、コリメートレンズ155、ビームスプリッタ154、検出レンズ159を経て光検出器160に入射する。検出レンズ159は光束が透過するときに所定の非点収差が与えられ、フォーカス誤差信号検出に用いられる。
【0057】
なお、ここでは実施例1で説明したトラッキング誤差方式を用いたが、従来の3ビームを用いたトラッキング誤差検出方式であってもなんら構わない。
【0058】
次にCDの光学系について説明する。半導体レーザ250からは波長略780nmの光束が発散光として出射される。半導体レーザ250から出射した光束は補正レンズ251を透過し、回折格子252に入射する。回折格子252を透過した光束はビームスプリッタ153、ビームスプリッタ154を経てコリメートレンズ155に入射し、平行光に変換される。ビームスプリッタ154に入射した光束の一部は透過し、フロントモニタ161に入射する。コリメートレンズ155を透過した光束は立ち上げミラー156を反射し、アクチュエータ157に搭載されたCD・DVD用互換対物レンズ158により光ディスク上に集光される。光ディスク上では実施例1のように5つのスポットが形成される。このとき、CD・DVD用互換対物レンズ158は光ディスクの中心を通る点線502の位置に配置されている。
【0059】
光ディスクにより反射した光束は、CD・DVD用互換対物レンズ158、立ち上げミラー156、コリメートレンズ155、ビームスプリッタ154、検出レンズ159を経て光検出器160に入射する。検出レンズ159は光束が透過するときに所定の非点収差が与えられ、フォーカス誤差信号検出に用いられる。
【0060】
なお、ここでは実施例1で説明したトラッキング誤差方式を用いたが、従来の3ビームを用いたトラッキング誤差検出方式であってもなんら構わない。
【0061】
波長の異なるDVDとCDとBDの光ビームを1つの対物レンズを用いて各々所定の光ディスクに集光させる3波長を互換対物レンズは作製が非常に困難である。このため、DVDとCDとBDの対物レンズを光ディスクの中心と一致した点線502上に配置することが出来なかった。また、従来5ビームDPP方式では、オフセンタ量を大きくすることができないため、図17のように2個のレンズを2つのアクチュエータに搭載することが出来なかった。しかし本発明を用いることで、DVDとCDとBDの互換光ピックアップを実現することができ、高速化も可能となる。
【実施例5】
【0062】
実施例5では、光ピックアップ装置170を搭載した、光学的再生装置について説明する。図18は光学的再生装置の概略構成である。光ピックアップ装置170は、光ディスク100の半径方向に沿って駆動できる機構が設けられており、アクセス制御回路172からのアクセス制御信号に応じて位置制御される。
レーザ点灯回路177からは所定のレーザ駆動電流が光ピックアップ装置170内の半導体レーザに供給され、半導体レーザからは再生に応じて所定の光量でレーザ光が出射される。なお、レーザ点灯回路177は光ピックアップ装置170内に組み込むこともできる。
【0063】
光ピックアップ装置170内の光検出器から出力された信号は、サーボ信号生成回路174および情報信号再生回路175に送られる。サーボ信号生成回路174では前記光検出器からの信号に基いてフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号ならびにチルト制御信号などのサーボ信号が生成され、これを基にアクチュエータ駆動回路173を経て光ピックアップ装置170内のアクチュエータを駆動して、対物レンズの位置制御がなされる。
【0064】
前記情報信号再生回路175では、前記光検出器からの信号に基づいて光ディスク100に記録されている情報信号が再生される。
前記サーボ信号生成回路174および情報信号再生回路175で得られた信号の一部はコントロール回路176に送られる。このコントロール回路176にはスピンドルモータ駆動回路171、アクセス制御回路172、サーボ信号生成回路174、レーザ点灯回路177などが接続され、光ディスク100を回転させるスピンドルモータ180の回転制御、アクセス方向およびアクセス位置の制御、対物レンズのサーボ制御、光ピックアップ装置170内の半導体レーザ発光光量の制御などが行われる。
【実施例6】
【0065】
実施例6では、光ピックアップ170を搭載した、光学的記録再生装置について説明する。図19は光学的記録再生装置の概略構成である。この装置で前記図18に説明した光学的情報記録再生装置と相違する点は、コントロール回路176とレーザ点灯回路177の間に情報信号記録回路178を設け、情報信号記録回路178からの記録制御信号に基づいてレーザ点灯回路177の点灯制御を行って、光ディスク100へ所望の情報を書き込む機能が付加されている点である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例1における光ピックアップ装置と光ディスクの配置を示す図である。
【図2】実施例1における光ピックアップ装置を説明する図である。
【図3】実施例1における回折格子を説明する図である。
【図4】実施例1における従来5ビームDPP方式を用いた光ピックアップ装置を説明する図である。
【図5】実施例1における従来5ビームDPP方式の回折格子を説明する図である。
【図6】実施例1における5ビームDPP方式の原理を説明する図である。
【図7】実施例1におけるオフセンタ量とトラックの角度変化量を示した図である。
【図8】実施例1における従来5ビームDPP方式がトラック角度依存することを説明する図である。
【図9】実施例1における本発明がトラック角度に依存しないことを説明する図である。
【図10】実施例1におけるディスク上のスポット配置を示す図である。
【図11】実施例1における本方式と従来5ビームDPP方式についてオフセンタ量に対するトラッキング誤差信号変動量を比較した図である。
【図12】実施例1における回折格子を説明する図である。
【図13】実施例2における光ピックアップ装置を説明する図である。
【図14】実施例2における回折格子を説明する図である。
【図15】実施例3における光ピックアップ装置を説明する図である。
【図16】実施例3における回折格子を説明する図である。
【図17】実施例4における光ピックアップ装置を説明する図である。
【図18】実施例5における光学的再生装置を説明する図である。
【図19】実施例6における光学的記録再生装置を説明する図である。
【符号の説明】
【0067】
1:光ピックアップ装置、2:対物レンズ、3:対物レンズ、5:駆動装置、6、アクチュエータ、7:駆動機構、10:スピンドル、50:半導体レーザ、51:回折格子、52:ビームスプリッタ、53:コリメートレンズ、54:フロントモニタ、55:ビームエキスパンダ、56:立ち上げミラー、57:検出レンズ、58:光検出器、59:回折格子、60:回折格子、61:回折格子、62:ビームスプリッタ、100:光ディスク、150:半導体レーザ、151:補助レンズ、152:回折格子、153:ビームスプリッタ、154:ビームスプリッタ、155:コリメートレンズ、156:立ち上げミラー、157:アクチュエータ、158:CD・DVD用互換対物レンズ、159:検出レンズ、160:光検出器、161:フロントモニタ、170:光ピックアップ装置、171:スピンドルモータ、172:アクセス制御、173:アクチュエータ駆動回路、174:サーボ信号生成回路、175:情報信号再生回路、176:コントロール回路、177:レーザ点灯回路、178:情報記録回路、180:スピンドルモータ、500:トラック、510:検出面(サブ)、a:本発明のメイン光スポット、b:本発明の第1領域から回折された+1次光スポット、c:本発明の第2領域から回折された+1次光スポット、d:本発明の第1領域から回折された−1次光スポット、e:本発明の第2領域から回折された−1次光スポット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光束を少なくとも5本の光束に分岐する分岐手段と、
前記5本の光束を集光して光ディスクの記録面上に各々独立した5個の集光スポットを照射する集光光学系と、
前記5個の集光スポットの前記光ディスクからの反射光を各々2分割以上に分割された受光面で受光するように配置された光検出器と、
を備えた光ピックアップ装置であって、
前記分岐手段は、第1及び第2及び第3の少なくとも3つの領域に分割された回折格子であって、前記第1の領域と前記第3の領域は前記第2の領域を挟み、
前記第1の領域を回折した光束の光ディスク上での集光位置と前記第3領域を回折した光束の光ディスク上での集光位置はnを整数、光ディスクの案内溝間隔をtとしたとき、光ディスク半径方向に略(2n−1)×t/2だけ各々間隔を空け配置させたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光束を少なくとも3本の光束に分岐する分岐手段と、
前記3本の光束を集光して光ディスクの記録面上に各々独立した3個の集光スポットを照射する集光光学系と、
前記3個の集光スポットの前記光ディスクからの反射光を各々2分割以上に分割された受光面で受光するように配置された光検出器と、
を備えた光ピックアップ装置であって、
前記分岐手段は、第1及び第2及び第3の少なくとも3つの領域に分割された回折格子であって、前記第1の領域と前記第3の領域は前記第2の領域を挟み、
前記第1の領域を回折した光束の光ディスク上での集光位置と前記第3領域を回折した光束の光ディスク上での集光位置はnを整数、光ディスクの案内溝間隔をtとしたとき、光ディスク半径方向に略(2n−1)×t/2だけ各々間隔を空け配置させたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2いずれか記載の光ピックアップ装置であって、
前記回折格子の第1及び第2及び第3の3領域の分割方向は対物レンズがシフトする方向に対応していることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3いずれか記載の光ピックアップ装置であって、
前記分岐手段である回折格子の第2の領域は格子構造でないことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3いずれか記載の光ピックアップ装置であって、
前記分岐手段である回折格子の第2の領域は減光フィルターであることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
光束を複数に分岐する回折格子であって、
前記回折格子は該回折格子に入射する光ビームの照射面を所定の方向に短冊状に第1及び第2及び第3の3領域に分割させ、前記第1の領域と前記第3の領域は前記第2の領域を挟み、前記第1の領域と第3の領域の格子溝を異なる角度を持たせ形成させたことを特徴とする回折格子。
【請求項7】
請求項6記載の回折格子であって、
第1と第3の格子溝の角度が第2の領域に対して対称であることを特徴とする回折格子。
【請求項8】
請求項6または請求項7いずれか記載の回折格子であって、
前記回折格子第2の領域は格子構造でないことを特徴とする回折格子。
【請求項9】
請求項6または請求項7いずれか記載の回折格子であって、
前記回折格子第2の領域は減光フィルターであることを特徴とする回折格子。
【請求項10】
請求項1ないし5いずれか記載の光ピックアップ装置と、
前記光ピックアップ装置内における前記半導体レーザを駆動するレーザ点灯回路と、
前記光ピックアップ装置内の前記光検出器から検出された信号を用いてフォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号を生成するサーボ信号生成回路と、
光ディスクに記録された情報信号を再生する情報信号再生回路とを搭載した光学的情報再生装置または光学的情報記録再生装置。
【請求項11】
第一の領域、第二の領域、第三の領域からなる回折格子であって、
前記第ニ領域は、前記第一領域と前記第三領域の挟まれ、
前記第一の領域と前記第三の領域では光束を分岐し、前記第二の領域では光束を分岐しない、
回折格子。
【請求項12】
半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光束を少なくとも5本の光束に分岐する分岐手段と、
前記半導体レーザから出射されて、光ディスクから反射される光を検出するた光検出器と、
を有し、
前記分岐手段は3つの領域からなっており、第ニ領域は第一領域と第三領域の挟まれ、前記第一の領域と前記第三の領域では光束を分岐し、前記第二の領域では光束を分岐しない、
光ピックアップ装置。
【請求項1】
半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光束を少なくとも5本の光束に分岐する分岐手段と、
前記5本の光束を集光して光ディスクの記録面上に各々独立した5個の集光スポットを照射する集光光学系と、
前記5個の集光スポットの前記光ディスクからの反射光を各々2分割以上に分割された受光面で受光するように配置された光検出器と、
を備えた光ピックアップ装置であって、
前記分岐手段は、第1及び第2及び第3の少なくとも3つの領域に分割された回折格子であって、前記第1の領域と前記第3の領域は前記第2の領域を挟み、
前記第1の領域を回折した光束の光ディスク上での集光位置と前記第3領域を回折した光束の光ディスク上での集光位置はnを整数、光ディスクの案内溝間隔をtとしたとき、光ディスク半径方向に略(2n−1)×t/2だけ各々間隔を空け配置させたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光束を少なくとも3本の光束に分岐する分岐手段と、
前記3本の光束を集光して光ディスクの記録面上に各々独立した3個の集光スポットを照射する集光光学系と、
前記3個の集光スポットの前記光ディスクからの反射光を各々2分割以上に分割された受光面で受光するように配置された光検出器と、
を備えた光ピックアップ装置であって、
前記分岐手段は、第1及び第2及び第3の少なくとも3つの領域に分割された回折格子であって、前記第1の領域と前記第3の領域は前記第2の領域を挟み、
前記第1の領域を回折した光束の光ディスク上での集光位置と前記第3領域を回折した光束の光ディスク上での集光位置はnを整数、光ディスクの案内溝間隔をtとしたとき、光ディスク半径方向に略(2n−1)×t/2だけ各々間隔を空け配置させたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2いずれか記載の光ピックアップ装置であって、
前記回折格子の第1及び第2及び第3の3領域の分割方向は対物レンズがシフトする方向に対応していることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3いずれか記載の光ピックアップ装置であって、
前記分岐手段である回折格子の第2の領域は格子構造でないことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3いずれか記載の光ピックアップ装置であって、
前記分岐手段である回折格子の第2の領域は減光フィルターであることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
光束を複数に分岐する回折格子であって、
前記回折格子は該回折格子に入射する光ビームの照射面を所定の方向に短冊状に第1及び第2及び第3の3領域に分割させ、前記第1の領域と前記第3の領域は前記第2の領域を挟み、前記第1の領域と第3の領域の格子溝を異なる角度を持たせ形成させたことを特徴とする回折格子。
【請求項7】
請求項6記載の回折格子であって、
第1と第3の格子溝の角度が第2の領域に対して対称であることを特徴とする回折格子。
【請求項8】
請求項6または請求項7いずれか記載の回折格子であって、
前記回折格子第2の領域は格子構造でないことを特徴とする回折格子。
【請求項9】
請求項6または請求項7いずれか記載の回折格子であって、
前記回折格子第2の領域は減光フィルターであることを特徴とする回折格子。
【請求項10】
請求項1ないし5いずれか記載の光ピックアップ装置と、
前記光ピックアップ装置内における前記半導体レーザを駆動するレーザ点灯回路と、
前記光ピックアップ装置内の前記光検出器から検出された信号を用いてフォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号を生成するサーボ信号生成回路と、
光ディスクに記録された情報信号を再生する情報信号再生回路とを搭載した光学的情報再生装置または光学的情報記録再生装置。
【請求項11】
第一の領域、第二の領域、第三の領域からなる回折格子であって、
前記第ニ領域は、前記第一領域と前記第三領域の挟まれ、
前記第一の領域と前記第三の領域では光束を分岐し、前記第二の領域では光束を分岐しない、
回折格子。
【請求項12】
半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光束を少なくとも5本の光束に分岐する分岐手段と、
前記半導体レーザから出射されて、光ディスクから反射される光を検出するた光検出器と、
を有し、
前記分岐手段は3つの領域からなっており、第ニ領域は第一領域と第三領域の挟まれ、前記第一の領域と前記第三の領域では光束を分岐し、前記第二の領域では光束を分岐しない、
光ピックアップ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−234175(P2007−234175A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57091(P2006−57091)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
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