説明

回路シミュレーション装置、回路シミュレーション方法及びプログラム

【課題】位相同期回路を含む回路シミュレーションにおいて、フィードバックループに分周器が存在している場合であっても正確にシミュレートできるようにすること。
【解決手段】フィードバックループに設けられた分周器の分周比を測定するための第1のクロック信号を生成する測定クロック生成部と、分周器が第1のクロック信号を受信して分周して出力した第2のクロック信号と、第1のクロック信号とを参照して、分周器の分周比を測定する分周比測定部と、入力クロック信号を受信し、入力クロック信号の周期と予め設定された逓倍比と測定された分周比の逆数に相当する逓倍比とに応じて、入力クロック信号を逓倍して第3のクロック信号として出力する逓倍クロック生成部と、第1のクロック信号及び第3のクロック信号を受信し、いずれかを出力クロック信号として出力するクロック出力制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路シミュレーション装置、回路シミュレーション方法及びプログラムに関し、特に、位相同期回路(PLL:Phase Locked Loop)を含むデジタル回路に対する回路シミュレーション装置、回路シミュレーション方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、大規模なシステムが単一の集積回路上で実現されるようになり、集積回路(チップ)上に位相同期回路(PLL:Phase Locked Loop)が設けられるようになってきている。そこで、回路シミュレーションにおいても、実際のPLLの動作を模したシミュレーションモデルを用いたシミュレーションを行う必要が生じている。
【0003】
また、フィードバックループを含むPLLを用いた回路シミュレーションにおいて、フィードバックループに分周器を挿入することで、PLLの逓倍比を変更する回路構成が用いられるようになってきている。そこで、シミュレーションにおいても、実動作と同様に、フィードバックループに挿入された分周器によってクロック信号の逓倍比を変更できるようにすることが望ましい。
【0004】
例えば、特許文献1において、PLLモデルをシミュレーションする回路シミュレーション装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007―164363(第11〜16頁、図13〜16)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下の分析は、本発明者によってなされたものである。
【0007】
特許文献1に記載された回路シミュレーション装置は、入力クロック周期と逓倍設定値のみに基づいて、予想フィードバッククロック信号を生成する。フィードバッククロック比較部は、外部で分周されたフィードバッククロック信号がフィードバッククロック供給端子に入力された場合には、外部で分周されたフィードバッククロック信号と、入力クロック周期と逓倍設定値のみに基づいて計算された予想フィードバッククロック信号とを比較することになる。このとき、フィードバッククロック信号と予想フィードバッククロック信号とは異なる信号となるため、フィードバッククロック比較部は正しい比較を行うことができず、正常な動作を行うことができない。
【0008】
すなわち、特許文献1に記載された回路シミュレーション装置によると、フィードバックループに分周器を挿入してPLL単体では設定できない逓倍比を実現しようとした場合において、PLLは正しい逓倍クロック信号を出力することができない。
【0009】
そこで、位相同期回路(PLL)を含む回路シミュレーションにおいて、逓倍クロック出力端子とフィードバッククロック供給端子との間に分周器が存在している場合であっても正確にシミュレートできるようにすることが課題となる。本発明の目的は、かかる課題を解決する回路シミュレーション装置、回路シミュレーション方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の視点に係る回路シミュレーション装置は、
フィードバックループに設けられた分周器の分周比を測定するためのクロック信号を第1のクロック信号として生成する測定クロック生成部と、
前記分周器が前記第1のクロック信号を分周して出力した第2のクロック信号と、前記第1のクロック信号とを参照して、前記分周器の分周比を測定する分周比測定部と、
入力クロック信号を受信し、該入力クロック信号の周期と予め設定された逓倍比と前記分周比測定部によって測定された分周比の逆数に相当する逓倍比とに応じて、該入力クロック信号を逓倍して第3のクロック信号として出力する逓倍クロック生成部と、
前記第1のクロック信号及び前記第3のクロック信号を受信し、これらの信号のいずれかを出力クロック信号として出力するクロック出力制御部と、を有する。
【0011】
本発明の第2の視点に係る回路シミュレーション方法は、
コンピュータが、フィードバックループに設けられた分周器の分周比を測定するための第1のクロック信号を生成する工程と、
前記分周器が前記第1のクロック信号を分周して出力した第2のクロック信号と、前記第1のクロック信号とを参照して、前記分周器の分周比を測定する工程と、
入力クロック信号を受信し、該入力クロック信号の周期と予め設定された逓倍比と測定された分周比の逆数に相当する逓倍比とに応じて、該入力クロック信号を逓倍して第3のクロック信号として出力する逓倍クロック生成工程と、
前記第1のクロック信号及び前記第3のクロック信号を受信し、これらの信号のいずれかを出力クロック信号として出力する工程と、を含む。
【0012】
本発明の第3の視点に係るプログラムは、
フィードバックループに設けられた分周器の分周比を測定するための第1のクロック信号を生成する処理と、
前記分周器が前記第1のクロック信号を分周して出力した第2のクロック信号と、前記第1のクロック信号とを参照して、前記分周器の分周比を測定する処理と、
入力クロック信号を受信し、該入力クロック信号の周期と予め設定された逓倍比と測定された分周比の逆数に相当する逓倍比とに応じて、該入力クロック信号を逓倍して第3のクロック信号として出力する逓倍クロック生成処理と、
前記第1のクロック信号及び前記第3のクロック信号を受信し、これらの信号のいずれかを出力クロック信号として出力する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る回路シミュレーション装置、回路シミュレーション方法及びプログラムによると、位相同期回路(PLL)を含む回路シミュレーションにおいて、逓倍クロック出力端子とフィードバッククロック供給端子との間に分周器が存在している場合であっても正確にシミュレートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る回路シミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る回路シミュレーション装置の分周比測定部、遅延測定部及び測定クロック生成部の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係る回路シミュレーション装置の動作について説明するためのタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る回路シミュレーション装置の逓倍クロック生成部、クロック監視部及びフィードバッククロック監視部の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る回路シミュレーション装置のクロック監視部の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る回路シミュレーション装置のフィードバッククロック周期変動監視部の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る回路シミュレーション装置のフィードバッククロック監視部の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係る回路シミュレーション装置のクロック出力制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の展開形態によると、上記第1の視点に係る回路シミュレーション装置が提供される。
【0016】
本発明の第2の展開形態によると、分周比測定部は、第2のクロック信号の周期を第1のクロック信号の周期で除することによって、分周器の分周比を測定する、回路シミュレーション装置が提供される。
【0017】
本発明の第3の展開形態によると、クロック出力制御部は、分周比測定部による分周比の測定が終了していない場合には、第1のクロック信号を出力クロック信号として出力し、それ以外の場合には、第3のクロック信号を出力クロック信号として出力する、回路シミュレーション装置が提供される。
【0018】
本発明の第の展開形態によると、クロック出力制御部は、第3のクロック信号を出力クロック信号として出力する際に、出力クロック信号の最初のパルスをマスクする、回路シミュレーション装置が提供される。
【0019】
本発明の第5の展開形態によると、
第1のクロック信号と第2のクロック信号との遅延時間差を求める遅延測定部をさらに備え、
逓倍クロック生成部は、逓倍後の入力クロック信号を遅延時間差に従って遅延させた信号を、第3のクロック信号として出力する、回路シミュレーション装置が提供される。
【0020】
本発明の第6の展開形態によると、上記第2の視点に係る回路シミュレーション方法が提供される。
【0021】
本発明の第7の展開形態によると、
コンピュータが、第1のクロック信号と第2のクロック信号との遅延時間差を求める工程をさらに含み、
逓倍クロック生成工程において、逓倍後の入力クロック信号を遅延時間差に従って遅延させた信号を、第3のクロック信号として出力する、回路シミュレーション方法が提供される。
【0022】
本発明の第8の展開形態によると、コンピュータが、出力クロック信号のうちの最初のパルスをマスクする工程をさらに含む、回路シミュレーション方法が提供される。
【0023】
本発明の第9の展開形態によると、上記第3の視点に係るプログラムが提供される。
【0024】
本発明の第10の展開形態によると、
第1のクロック信号と第2のクロック信号との遅延時間差を求める処理をさらにコンピュータに実行させ、
逓倍クロック生成処理において、逓倍後の入力クロック信号を遅延時間差に従って遅延させた信号を、第3のクロック信号として出力する、プログラムが提供される。
【0025】
本発明の第11の展開形態によると、出力クロック信号のうちの最初のパルスをマスクする処理を、さらにコンピュータに実行させる、プログラムが提供される。
【0026】
本発明の第12の展開形態によると、上記プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0027】
本発明に係る回路シミュレーション装置、回路シミュレーション方法及びプログラムによると、位相同期回路(PLL)を含む回路シミュレーションにおいて、逓倍クロック出力端子とフィードバッククロック供給端子との間に分周器が存在している場合であっても正確にシミュレートすることができる。
【0028】
(実施形態)
本発明の実施形態に係る回路シミュレーション装置について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の回路シミュレーション装置100の構成を示すブロック図である。
【0029】
図1を参照すると、回路シミュレーション装置100は、逓倍設定値入力端子41、入力クロック供給端子42、クロック出力端子43、動作開始信号端子106、及び、フィードバッククロック供給端子58を有する。
【0030】
逓倍設定値は、逓倍設定値入力端子41に供給される。入力クロック信号は、入力クロック供給端子42に供給される。出力クロック信号は、クロック出力端子43から出力される。動作開始信号は、動作開始信号端子106に入力される。
【0031】
逓倍クロック生成部108は、入力クロック信号に応答して逓倍クロック信号を生成する。逓倍クロック生成部108は、クロック周期測定部33、クロック周期変化検出部34、逓倍波形生成部109、遅延付加部110及びエラー処理部36を含む。
【0032】
クロック周期測定部33は、入力クロック信号に応答して、入力クロック信号の周期を測定する。クロック周期測定部33は、入力クロック供給端子42を介して入力クロック信号を受信し、入力クロック信号の変化時刻と次の変化時刻との差を計算する。クロック周期測定部33は、例えば、入力クロック信号の立ち上がり時刻と、入力クロック信号が次に立ち上がる時刻との差に基づいて、クロック周期を算出する。また、クロック周期測定部33は、測定した入力クロック信号の周期を示す値を、クロック周期変化検出部34に供給する。
【0033】
クロック周期変化検出部34は、クロック周期測定部33から供給される入力クロック信号の周期を、クロック周期測定部33から前回供給された入力クロック信号の周期と比較して、入力クロック信号が変動しているか否かを判定する。クロック周期変化検出部34は、入力クロック信号の周期が変動しているかを判定し、判定結果をエラー処理部36に通知する。
【0034】
逓倍波形生成部109は、逓倍設定値入力端子41から供給される逓倍波形設定値とクロック周期測定部33から出力される入力クロック信号の周期と分周比測定部101から出力される外部で設定された逓倍比とに基づいて、入力クロック信号を逓倍した逓倍クロック信号を生成する。ここで、逓倍クロック信号の周期は、一例として、入力クロック信号の周期/(逓倍設定値×外部で設定された逓倍比)とすることができる。
【0035】
遅延付加部110は、逓倍波形生成部109から出力される逓倍クロック信号を、遅延測定部102から供給される遅延値を用いて遅延させたクロック信号を生成する。
【0036】
エラー処理部36は、クロック周期変化検出部34から供給される入力クロック信号が変動した通知、後述するクロック監視部32から供給される入力クロック信号が停止した通知、フィードバッククロック周期変動監視部51から供給されるフィードバッククロック信号が停止した通知、及び、フィードバッククロック監視部107から供給されるフィードバッククロック信号が変動した通知に応答して、逓倍クロック信号の出力を制限する。
【0037】
クロック監視部32は、入力クロック信号の状態を監視する。クロック監視部32は、予想クロック生成部37とクロック比較部38を含む。
【0038】
予想クロック生成部37は、クロック周期測定部33から出力される周期の予想クロック信号を生成する。予想クロック生成部37は、あらかじめ設定されたロックアップ時間が経過した後、生成したクロック信号を予想クロック信号としてクロック比較部38に出力する。
【0039】
クロック比較部38は、予想クロック信号生成のイベントに応答して、その時刻の入力クロック信号と、予想クロック生成部37から供給される予想クロック信号との比較を行い、比較結果をエラー処理部36に出力する。
【0040】
フィードバッククロック周期変動監視部51は、フィードバッククロック周期測定部53と、フィードバッククロック周期変化検出部54とを含む。
【0041】
フィードバッククロック周期測定部53は、フィードバッククロック供給端子58を介して供給されるクロック信号(以下「フィードバッククロック信号」)の周期を測定し、その周期情報をフィードバッククロック周期変化検出部54に出力する。
【0042】
フィードバッククロック周期変化検出部54は、フィードバッククロック周期測定部53から供給されるフィードバッククロック周期の測定値に基づいて、フィードバッククロック信号の周期が変化しているか否かを判定し、判定結果をエラー処理部36に出力する。
【0043】
フィードバッククロック監視部107は、予想分周フィードバッククロック生成部105とフィードバッククロック比較部111を含む。
【0044】
予想分周フィードバッククロック生成部105は、逓倍設定値入力端子41を介して供給される逓倍設定値と、クロック周期測定部33から出力される入力クロック周期の測定値と、分周比測定部101から出力される外部で設定された逓倍比に基づいて、予想分周フィードバッククロック信号を生成し、フィードバッククロック比較部111へ出力する。
【0045】
フィードバッククロック比較部111は、予想分周フィードバッククロック信号を入力し、フィードバッククロック信号が変動した通知をエラー処理部36に行う。フィードバッククロック信号は、クロック出力端子43から出力される逓倍クロック信号を外部分周器200が分周したクロック信号である。
【0046】
測定クロック生成部103は、動作開始信号端子106からの動作開始信号と、分周比測定部101からのフィードバックループの分周比の測定終了の通知とに基づいてフィードバックループ中に含まれる分周器の分周比を測定するためのクロック信号(以下「測定クロック信号」)を供給する。
【0047】
分周比測定部101は、測定クロック生成部103が出力した測定クロック信号とフィードバッククロック供給端子58のフィードバッククロック信号の関係からフィードバックループに含まれる分周器200の分周比を測定し、外部で設定された逓倍比を、予想分周フィードバッククロック生成部105及び逓倍波形生成部109に出力し、フィードバックループの分周比の測定終了の通知を、測定クロック生成部103及びクロック出力制御部104に出力する。
【0048】
遅延測定部102は、測定クロック生成部103が出力した測定クロック信号と、フィードバッククロック供給端子58のフィードバッククロック信号の立ち上がりの遅延時間の差から、フィードバックループに含まれる遅延を求める。
【0049】
クロック出力制御部104は、分周比測定部101からのフィードバックループの分周比の測定終了の通知を入力し、測定クロック生成部103からの測定クロック信号、又は、逓倍クロック生成部108が出力した逓倍クロック信号のいずれかを、出力クロック信号として、クロック出力端子43を通じて外部に出力するように制御する。
【0050】
分周器200は、外部フィードバックループに挿入され、入力されたクロック信号を分周して出力する。
【0051】
図2は、分周比測定部101、遅延測定部102及び測定クロック生成部103の動作を示すフローチャートである。
【0052】
図3は、本実施形態に係る回路シミュレーション装置100の動作について説明するためのタイミングチャートである。ここでは、一例として、分周器200は4分周を行うものとする。
【0053】
図2及び図3を参照して、外部フィードバックに存在する分周器200の分周比を測定する方法について説明する。
【0054】
時刻T10で動作開始信号が立ち下がり、回路シミュレーション装置100の動作が開始する。
【0055】
測定クロック生成部103は、時刻T11で分周器200の分周比測定のためにあらかじめ設定された周期のクロック信号を、クロック出力制御部104とクロック出力端子43を経由して、外部に出力する(ステップS130)。
【0056】
分周比測定部101は、フィードバッククロック供給端子58からのフィードバッククロック信号の立ち上がりエッジが入力されるまで待つ(ステップS131)。
【0057】
分周比測定部101にフィードバッククロック信号の立ち上がりエッジが入力されたら(ステップS131のYes)、遅延測定部102は、直前の測定クロック信号の立ち上がりエッジの時刻T12から、入力されたフィードバッククロック信号の立ち上がりエッジの時刻T3との時間差T2をフィードバックパスの遅延時間として、遅延付加部110に通知する(ステップS132)。
【0058】
このとき、分周比測定部101は、時刻T3をフィードバッククロック信号の立ち上がり時刻として記憶する。
【0059】
分周比測定部101は、次のフィードバッククロック信号の立ち上がりエッジが入力されるまで待つ(ステップS133)。
【0060】
分周比測定部101にフィードバッククロック信号の立ち上がりエッジが入力されたら(ステップS133のYes)、分周比測定部101は、フィードバックループの分周比の測定が終了したことを、測定クロック生成部103及びクロック出力制御部104に通知する。測定クロック生成部103は、分周比測定部101からの測定が終了したことを示す通知に従って、測定クロック信号の出力を停止する(ステップS134)。
【0061】
分周比測定部101は、次のフィードバッククロック信号の立ち上がりエッジが入力される時刻T5を記憶し、時刻T5と時刻T3の時刻の差からフィードバッククロック信号の周期T4を算出する。分周比測定部101は、フィードバッククロック信号の周期T4の時間を、あらかじめ設定された測定クロック信号の周期T1で除算することで、分周器200の分周比を求める(ステップS135)。
【0062】
分周比測定部101は、得られた分周比を、予想分周フィードバッククロック生成部105に通知する。また、分周比と逓倍比とは、逆数の関係にあるため、分周比測定部101は、分周比の逆数を外部で設定された逓倍比として、逓倍波形生成部109に通知する。
【0063】
次に、図3及び図4を参照して、クロック信号出力について説明する。
【0064】
図4は、逓倍クロック生成部108、クロック監視部32及びフィードバッククロック監視部107の動作を示すフローチャートである。
【0065】
クロック周期測定部33は、入力クロック信号の変化を監視する(ステップS101)。入力クロック信号が供給されていない場合(ステップS101のNo)、処理を終了する。一方、入力クロック信号が供給されると(ステップS101のYes)、クロック周期測定部33は、入力クロック信号の周期を求めて、クロック周期変化検出部34へ通知する(ステップS102)。
【0066】
クロック周期変化検出部34は、クロック周期測定部33から通知される入力クロック信号の周期が前回通知された周期から変化しているか否かを判定する(ステップS103)。
【0067】
入力クロック信号の周期が変化した場合には(ステップS103のYes)、エラー処理部36は、エラー処理を行ない(ステップS105)、処理を終了する。
【0068】
入力クロック信号の周期に変化がない場合には(ステップS103のNo)、逓倍波形生成部109は、逓倍波形を作成済みであるか否かを確認する(ステップS104)。作成済みであれば(ステップS104のYes)、処理を終了する。
【0069】
作成済みでなければ(ステップS104のNo)、逓倍波形生成部109は、フィードバックループに含まれる分周器の分周比の測定が終了しているか否かを確認する(ステップS120)。終了していない場合には(ステップS120のNo)、処理を終了する。
【0070】
測定が終了している場合には(ステップS120のYes)、逓倍波形生成部109は、動作開始信号の立下りの時刻T10からロックアップタイム時間T6を経過しているか否かを判定する(ステップS106)。ロックアップタイム時間T6を経過していない場合には(ステップS106のNo)、処理を終了する。
【0071】
一方、ロックアップタイム時間T6を経過していた場合には(ステップS106のYes)、逓倍波形生成部109は、逓倍設定値入力端子41で与えられた逓倍設定値と、分周比測定部101で得られた外部で設定された逓倍比からクロック出力端子43に出力すべき逓倍設定値を決定する(ステップS121)。
【0072】
逓倍波形生成部109は、ステップS121で求めた逓倍設定値で、入力クロック信号の周波数を逓倍して、クロック出力端子43に出力する逓倍クロック信号を生成する(ステップS107)。
【0073】
予想クロック生成部37は、ステップS102のクロック周期測定部33から通知される入力クロック信号の周期と同じ周期で変化する予想クロック信号を生成する(ステップS108)。
【0074】
予想分周フィードバッククロック生成部105は、ステップS102のクロック周期測定部33から通知される入力クロック信号の周期と、逓倍設定値入力端子41で与えられた逓倍設定値と、分周比測定部101で得られた外部で設定された逓倍比から予想フィードバッククロック信号を生成する(ステップS122)。
【0075】
図5は、クロック監視部32の動作を示すフローチャートである。クロック監視部32は、予想クロック生成部37で生成された予想クロック信号の変化タイミング毎に図5の処理を行う。
【0076】
予想クロック信号の変化があったことを検出した場合には(ステップS150のYes)、クロック比較部38は、入力クロック供給端子42からの入力クロック信号と、予想クロック生成部37で生成された予想クロック信号の周期幅との間で、変化タイミングを比較する(ステップS151)。
【0077】
これらが異なる場合には(ステップS151のNo)、エラー処理部36は、エラー処理を行い(ステップS152)、逓倍出力生成を停止し、外部に対して不定出力を行い、処理を終了する。
【0078】
一方、比較結果が同じ場合には(ステップS151のYes)、動作を終了する。
【0079】
図6は、フィードバッククロック周期変動監視部51の動作を示すフローチャートである。フィードバッククロック周期変動監視部51は、フィードバッククロック信号の変化タイミング毎に図6の処理を行う。
【0080】
フィードバッククロック供給端子58からの入力に変化があったことを検出し(ステップS160のYes)、フィードバッククロック周期測定部53は、前変化点からの時間(以下「フィードバッククロック周期」という)を測定する(ステップS161)。
【0081】
フィードバッククロック周期変化検出部54は、ステップS161で測定したフィードバッククロック周期がその直前のフィードバッククロック周期幅と異なるか否かを判定する(ステップS162)。
【0082】
周期が変動した場合には(ステップS162のYes)、エラー処理部36は、エラー処理を行ない(ステップS163)、逓倍出力生成を停止し、外部に対して不定出力を行い、処理を終了する。一方、周期が変化していない場合には(ステップS162のNo)、処理を終了する。
【0083】
図7は、フィードバッククロック監視部107の動作を示すフローチャートである。フィードバッククロック監視部107は、予想分周フィードバッククロック生成部105で生成された予想フィードバッククロック信号の変化タイミング毎に図7の処理を行う。
【0084】
フィードバッククロック比較部111は、予想フィードバッククロック信号の変化があったことを検出した場合(ステップS170のYes)、フィードバッククロック供給端子58からの入力フィードバッククロック信号と、予想分周フィードバッククロック生成部105で生成された予想フィードバッククロック信号の周期幅との間で変化タイミングを比較する(ステップS171)。
【0085】
これらが異なる場合には(ステップS171のNo)、エラー処理部36は、エラー処理を行ない(ステップS172)、逓倍出力生成を停止し、外部に対して不定出力を行い、処理を終了する。比較結果が同じ場合には(ステップS171のYes)、動作を終了する。
【0086】
図8は、回路シミュレーション装置100の外部へクロック信号を出力するクロック出力制御部104の動作を示すフローチャートである。図3及び図8を参照して、クロック出力制御部104の動作について説明する。
【0087】
クロック出力制御部104は、逓倍クロック生成部108の出力及び測定クロック生成部103の出力の変化タイミング毎に図8の処理を行う。
【0088】
クロック出力制御部104は、分周比測定部101からのフィードバックループの分周比の測定終了の通知が存在しているか否かを確認することで、フィードバックループの分周比の測定が終了したか否かを判定する(ステップS140)。
【0089】
終了していなければ(ステップS140のNo)、測定クロック生成部103は、フィードバックループ中に含まれる分周器200の分周比を測定するための測定クロック信号を、出力クロック信号としてクロック出力端子43に出力する(ステップS142)。
【0090】
フィードバックループの分周比の測定が終了している場合には(ステップS140のYes)、逓倍クロック生成部108から出力された逓倍クロック信号が最初のクロック信号であるか否かを判定する(ステップS141)。
【0091】
最初のクロック信号でなければ(ステップS141のNo)、逓倍クロック生成部108から出力された逓倍クロック信号出力を、出力クロック信号としてクロック出力端子43に出力する(ステップS143)。
【0092】
最初のクロック信号と判定された場合には(ステップS141のYes)、最初のクロック信号をマスク処理して、LOWを出力する(ステップS144)。
【0093】
以上の動作によると、外部フィードバックに存在する分周器200の分周比を測定する期間内において、フィードバッククロック信号が分周器200に入力されているため、分周器200は、分周開始時点から1クロック入力された状態となる。したがって、逓倍クロック生成部108からクロック信号の出力を開始した場合、入力クロック信号に対する位相が逓倍クロック信号で1クロック分ずれてしまう。このとき、フィードバックをもつPLLのモデルにおいて、外部入力のクロック信号とLSI内部で使用されるフィードバッククロック信号を含むクロック信号の出力との位相を合わせることができない。
【0094】
そこで、逓倍クロック生成部108から出力されるクロック信号の時刻T7で立ち上がるクロック信号をマスクして、時刻T8の立ち上がりのクロック信号から外部へ出力するようにする。これにより、時刻T9では入力クロック信号とフィードバッククロック信号との位相を合わせることができる。
【0095】
本実施形態の回路シミュレーション装置100は、PLLを使用したデジタル回路におけるシミュレーションの分野において適用し得る。回路シミュレーション装置100は、フィードバックループの分周器200の分周比を測定するためのクロック信号を生成する測定クロック生成部103と、測定クロック信号と逓倍クロック生成部108の出力クロック信号のいずれを出力するかを制御するクロック出力制御部104と、測定クロック信号を外部出力してフィードバックされた信号と測定クロック信号とに基づいて外部分周器の分周比を求める分周比測定部101とを有する。
【0096】
このとき、フィードバックループの分周器200の分周比と、入力クロック信号のクロック周期と、逓倍設定値入力端子41から入力される逓倍比から、逓倍波形生成部109は、PLLモデルによって出力すべき逓倍波形を生成することができる。
【0097】
本実施形態の回路シミュレーション装置100によると、フィードバックループに分周器を挿入したPLLのシミュレーションモデルであっても正しくシミュレートすることができる。なぜなら、回路シミュレーション装置100は、モデル内に逓倍比を認識させるためにフィードバック経路の分周器200の分周比を検出するための測定クロック信号を出力する手段と、測定クロック信号を分周器200が分周してフィードバックしたフィードバッククロック信号のクロック幅を測定する手段とを有する。このとき、分周器200のクロック幅を測定クロック信号のクロック幅で除することで、外部で設定されている分周比を求めることができ、求めた分周比と、入力クロック周期と、逓倍設定値から、PLL出力波形を生成することができる。
【0098】
また、本実施形態の回路シミュレーション装置100によると、フィードバックループに挿入された分周器200の変化を検出することができる。なぜなら、回路シミュレーション装置100によると、フィードバッククロック監視部107において、予想フィードバッククロック信号を生成し、予想フィードバッククロック信号の変化タイミング毎にフィードバッククロック信号からの信号と比較することにより、フィードバッククロック信号のクロックが停止し又は変化しても、これらの状態を検出してミュレーション結果に反映することができるからである。
【0099】
なお、上記の非特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0100】
32 クロック監視部
33 クロック周期測定部
34 クロック周期変化検出部
36 エラー処理部
37 予想クロック生成部
38 クロック比較部
41 逓倍設定値入力端子
42 入力クロック供給端子
43 クロック出力端子
51 フィードバッククロック周期変動監視部
53 フィードバッククロック周期測定部
54 フィードバッククロック周期変化検出部
58 フィードバッククロック供給端子
100 回路シミュレーション装置
101 分周比測定部
102 遅延測定部
103 測定クロック生成部
104 クロック出力制御部
105 予想分周フィードバッククロック生成部
106 動作開始信号端子
107 フィードバッククロック監視部
108 逓倍クロック生成部
109 逓倍波形生成部
110 遅延付加部
111 フィードバッククロック比較部
200 分周器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードバックループに設けられた分周器の分周比を測定するためのクロック信号を第1のクロック信号として生成する測定クロック生成部と、
前記分周器が前記第1のクロック信号を分周して出力した第2のクロック信号と、前記第1のクロック信号とを参照して、前記分周器の分周比を測定する分周比測定部と、
入力クロック信号を受信し、該入力クロック信号の周期と予め設定された逓倍比と前記分周比測定部によって測定された分周比の逆数に相当する逓倍比とに応じて、該入力クロック信号を逓倍して第3のクロック信号として出力する逓倍クロック生成部と、
前記第1のクロック信号及び前記第3のクロック信号を受信し、これらの信号のいずれかを出力クロック信号として出力するクロック出力制御部と、を備えていることを特徴とする回路シミュレーション装置。
【請求項2】
前記分周比測定部は、前記第2のクロック信号の周期を前記第1のクロック信号の周期で除することによって、前記分周器の分周比を測定することを特徴とする、請求項1に記載の回路シミュレーション装置。
【請求項3】
前記クロック出力制御部は、前記分周比測定部による分周比の測定が終了していない場合には、前記第1のクロック信号を出力クロック信号として出力し、それ以外の場合には、前記第3のクロック信号を出力クロック信号として出力することを特徴とする、請求項1又は2に記載の回路シミュレーション装置。
【請求項4】
前記クロック出力制御部は、前記第3のクロック信号を出力クロック信号として出力する際に、該出力クロック信号の最初のパルスをマスクすることを特徴とする、請求項3に記載の回路シミュレーション装置。
【請求項5】
前記第1のクロック信号と前記第2のクロック信号との遅延時間差を求める遅延測定部をさらに備え、
前記逓倍クロック生成部は、逓倍後の入力クロック信号を前記遅延時間差に従って遅延させた信号を、前記第3のクロック信号として出力することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回路シミュレーション装置。
【請求項6】
コンピュータが、フィードバックループに設けられた分周器の分周比を測定するための第1のクロック信号を生成する工程と、
前記分周器が前記第1のクロック信号を分周して出力した第2のクロック信号と、前記第1のクロック信号とを参照して、前記分周器の分周比を測定する工程と、
入力クロック信号を受信し、該入力クロック信号の周期と予め設定された逓倍比と測定された分周比の逆数に相当する逓倍比とに応じて、該入力クロック信号を逓倍して第3のクロック信号として出力する逓倍クロック生成工程と、
前記第1のクロック信号及び前記第3のクロック信号を受信し、これらの信号のいずれかを出力クロック信号として出力する工程と、を含むことを特徴とする回路シミュレーション方法。
【請求項7】
コンピュータが、前記第1のクロック信号と前記第2のクロック信号との遅延時間差を求める工程をさらに含み、
前記逓倍クロック生成工程において、逓倍後の入力クロック信号を前記遅延時間差に従って遅延させた信号を、前記第3のクロック信号として出力することを特徴とする、請求項6に記載の回路シミュレーション方法。
【請求項8】
コンピュータが、前記出力クロック信号のうちの最初のパルスをマスクする工程をさらに含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載の回路シミュレーション方法。
【請求項9】
フィードバックループに設けられた分周器の分周比を測定するための第1のクロック信号を生成する処理と、
前記分周器が前記第1のクロック信号を分周して出力した第2のクロック信号と、前記第1のクロック信号とを参照して、前記分周器の分周比を測定する処理と、
入力クロック信号を受信し、該入力クロック信号の周期と予め設定された逓倍比と測定された分周比の逆数に相当する逓倍比とに応じて、該入力クロック信号を逓倍して第3のクロック信号として出力する逓倍クロック生成処理と、
前記第1のクロック信号及び前記第3のクロック信号を受信し、これらの信号のいずれかを出力クロック信号として出力する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
前記第1のクロック信号と前記第2のクロック信号との遅延時間差を求める処理をさらにコンピュータに実行させ、
前記逓倍クロック生成処理において、逓倍後の入力クロック信号を前記遅延時間差に従って遅延させた信号を、前記第3のクロック信号として出力することを特徴とする、請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記出力クロック信号のうちの最初のパルスをマスクする処理を、さらにコンピュータに実行させることを特徴とする、請求項9又は10に記載のプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−217244(P2011−217244A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85061(P2010−85061)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】