説明

回路基板およびこれを備える電子装置

【課題】 セラミック焼結体と金属配線層とを強固に接合することができるとともに、電子部品の動作によって生じる熱や動作の繰り返しによる冷熱サイクルによって、セラミック焼結体と金属配線層とが剥離することが少なく、長期間にわたって使用可能な信頼性の高い回路基板およびこの回路基板に電子部品を搭載してなる電子装置を提供する。
【解決手段】 セラミック焼結体11の少なくとも一方主面に金属配線層12を備えた回路基板10であって、金属配線層12の任意の断面において、空孔の平均径が2μm以上10μm以下であり、空孔の平均面積占有率が1面積%以上4面積%以下であり、空孔の平均重心間距離が7μm以上15μm以下の回路基板10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板およびこの回路基板に電子部品を搭載してなる電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、発熱素子、ペルチェ素子等の各種電子部品が回路基板上に搭載された電子装置が用いられている。このように回路基板上に搭載される電子部品は動作時に熱を生じるものであり、近年の電子部品の高集積化、電子装置の小型化や薄型化によって、回路基板の体積当たりに加わる熱量は大きくなっていることから、放熱性が高く、電子部品の動作の繰り返しによって回路基板を構成するセラミック焼結体と金属配線層とが剥がれないことが求められている。
【0003】
そのため、このような要求に対し、金属配線層となる金属ペーストの構成について、例えば、特許文献1には、銅粉及びガラスフリットを有機ビヒクルに分散してなる銅導電性ペーストであって、銅粉は、平均粒径が0.3μm以上で1.0μm未満の範囲内にある第1の銅粉と、平均粒径が1.0μm以上で5.0μm未満の範囲内にある第2の銅粉とからなり、銅粉の全体に対する第1の銅粉の配合比率は10乃至30重量部の範囲内とされる一方、第2の銅粉の配合比率は90乃至70重量部の範囲内とされていることを特徴とする銅導電性ペーストが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−306228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、銅粉の平均粒径および配合比率の範囲が数値限定されているものであるが、実施例においても銅粉の平均粒径は、数値範囲をもって記載されており、具体的な数値が示されていないことから、セラミック焼結体と強固に接合することができるとともに、放熱性に優れ、熱膨張の緩和された金属配線層の構成を知見するに至るまで十分に開示されたものではなかった。
【0006】
本発明は、セラミック焼結体と金属配線層とを強固に接合することができるとともに、電子部品の動作によって生じる熱や動作の繰り返しによる冷熱サイクルによって、セラミック焼結体と金属配線層とが剥離することが少なく、長期間にわたって使用可能な信頼性の高い回路基板およびこの回路基板に電子部品を搭載してなる電子装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回路基板は、セラミック焼結体の少なくとも一方主面に金属配線層を備えた回路基板であって、前記金属配線層の任意の断面において、空孔の平均径が2μm以上10μm以下であり、前記空孔の平均面積占有率が1面積%以上4面積%以下であり、前記空孔の平均重心間距離が7μm以上15μm以下であることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の電子装置は、上記構成の本発明の回路基板に電子部品を搭載してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の回路基板は、セラミック焼結体の少なくとも一方主面に金属配線層を備えた回路基板であって、前記金属配線層の任意の断面において、空孔の平均径が2μm以上10μm以下であり、前記空孔の平均面積占有率が1面積%以上4面積%以下であり、前記空孔の平均重心間距離が7μm以上15μm以下であることにより、セラミック焼結体と金属配線層とを強固に接合することができるとともに、金属配線層は、放熱性に優れ、熱膨張の緩和されたものとなるので、搭載した電子部品の動作の繰り返しによる冷熱サイクルによって、セラミック焼結体と金属配線層とが剥離することが少なく、また、電子部品の動作によって生じた熱が放熱されないことによって電子部品が故障することが少ないため、信頼性の高い回路基板とすることができる。
【0010】
また、本発明の電子装置によれば、本発明の回路基板に電子部品を搭載してなることにより、信頼性の高い電子装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の回路基板を備える電子装置の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A’線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態の一例について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の回路基板を備える電子装置の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A’線における断面図である。本実施形態の電子装置1は、セラミック焼結体11およびセラミック焼結体11の一方主面に備えられた金属配線層12からなる回路基板10と、金属配線層12上に設けられた電極パッド14と、電極パッド14上に搭載された電子部品13とによって構成されている。そして、本実施形態の回路基板10を構成する金属配線層12は、金属配線層12の任意の断面において、空孔の平均径が2μm以上10μm以下であり、空孔の平均面積占有率が1面積%以上4面積%以下であり、空孔の平均重心間距離が7μm以上15μm以下の範囲を満たしていることが重要である。
【0014】
この金属配線層12の任意の断面における空孔の平均径、平均面積占有率および平均重心間距離の数値は、セラミック焼結体11に金属配線層12を備える際の接合強度や、金属配線層12の熱特性に与える影響を表すものとなる。ここで、金属配線層12の熱特性とは、電子部品13を動作させたときに生じる熱による膨張(以降、熱膨張と記載する。)やこの熱の放熱性のことである。
【0015】
そして、空孔の平均径、平均面積占有率および平均重心間距離の数値範囲の3つの要件のうち、個々の要件において数値範囲外である場合について述べることは困難であるが、空孔の平均径が2μm未満であったり、空孔の平均面積占有率が1面積%未満である場合は、金属配線層12が緻密であることから、熱膨張が大きくなり、電子部品13の動作の繰り返しによる冷熱サイクルによって、セラミック焼結体11と金属配線層12とに剥離が生じやすい傾向がある。また、空孔の平均径が10μmを超えたり、空孔の平均面積占有率が4面積%を超える場合には、セラミック焼結体11と金属配線層12とが強固に接合することができなかったり、放熱性が低いために、電子部品13の動作によって生じた熱が放熱されず電子部品13が故障したり寿命が短くなりやすい傾向がある。
【0016】
また、空孔の平均重心間距離は、空孔の分散度合いを表すものであり、例えば、空孔の平均径が大きい場合に空孔同士の距離が近すぎると放熱性が低くなる傾向があり、空孔同士の距離が遠すぎると熱膨張に偏りが生じて、電子部品13の動作の繰り返しによって、セラミック焼結体11と金属配線層12とが剥離が生じやすくなる傾向がある。
【0017】
それ故、本実施形態においては、金属配線層12が、金属配線層12の任意の断面において、空孔の平均径が2μm以上10μm以下であり、空孔の平均面積占有率が1面積%以上4面積%以下であり、空孔の平均重心間距離が7μm以上15μm以下を満たしているものであることにより、セラミック焼結体11と金属配線層12とが強固に接合することができるとともに、放熱性に優れ、熱膨張の緩和された金属配線層12とすることができる。そして、このような金属配線層12をセラミック焼結体の少なくとも一方主面に備えた構成の回路基板10であることにより、熱的信頼性の高いものとすることができる。
【0018】
なお、金属配線層12の任意の断面における空孔の測定方法は、例えば、厚み方向に回路基板10を切断し、クロスセクションポリッシャー(CP)を用いて研磨した面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて2000倍の倍率で観察し、この観察画像を画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)を用いることによって空孔の径を求めることができる。そして、観察については、5箇所で行ない、各観察画像における空孔の径の平均値を算出することによって空孔の平均径を求めることができる。また、空孔の平均面積占有率は、5箇所の観察画像について、同様の画像解析ソフトを用いて、各観察画像における空孔の占有する面積比率を求めて平均値を算出することによって求めることができる。また、空孔の平均重心間距離は、5箇所の観察画像について、同様の画像解析ソフトの重心間距離法を用いて、各観察画像における空孔の重心間距離を求めて平均値を算出することによって求めることができる。
【0019】
次に、本実施形態の回路基板10を構成する金属配線層12は、銅やアルミニウムを主成分とすることが好ましく、特に銅を主成分とすることが好ましい。金属配線層12が銅を主成分とするときには、銅は熱伝導性が高いため放熱性を高めることができる。また、副成分として、ジルコニウム、チタン、モリブデン,スズまたは亜鉛のうち少なくとも1種を含有してもよい。なお、金属配線層12の主成分とは、金属配線層12を構成する成分のうち、50質量%を超える成分のことをいう。
【0020】
また、本実施形態の回路基板10を構成するセラミック焼結体11は、酸化アルミニウム質焼結体、酸化ジルコニウム質焼結体、窒化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、またはムライト質焼結体を用いることができる。また、金属配線層12の主成分が銅であるときは、セラミック焼結体11が酸化アルミニウム質焼結体または窒化アルミニウム焼結体であれば、セラミック焼結体11と金属配線層12との界面でアルミン酸銅(CuAlまたはCuAlO)が生成されることで、セラミック焼結体11と金属配線層12との接合強度を高くすることができ、基板の加工性の観点から、セラミック焼結体11が酸化アルミニウム質焼結体からなることが好ましい。
【0021】
また、回路基板10に搭載される電子部品13としては、例えば、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)素子、インテリジェント・パワー・モジュール(IPM)素子、金属酸化膜型電界効果トランジスタ(MOSFET)素子、発光ダイオード(LED)素子、フリーホイーリングダイオード(FWD)素子、ジャイアント・トランジスタ(GTR)素子、ショットキー・バリア・ダイオード(SBD)等の半導体素子、昇華型サーマルプリンタヘッドまたはサーマルインクジェットプリンタヘッド用の発熱素子、ペルチェ素子等を用いることができる。
【0022】
以下、本実施形態の回路基板10の製造方法について説明する。
【0023】
まず、主成分として、酸化アルミニウム(Al)、焼結助剤として、酸化珪素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)等の粉末を用いて公知の方法により酸化アルミニウム質焼結体を作製する。
【0024】
次に、金属配線層12となる金属ペーストを準備する。この金属ペーストは、銅やアルミニウムを主成分とする金属粉末、ガラス粉末、有機ビヒクルを含有する。また、必要に応じて金属酸化物を加えても良い。
【0025】
そして、金属粉末としては、平均粒径が1.5μm以上3.5μm以下である第1の金属粉末を65質量%以上75質量%以下、平均粒径が第1の金属粉末の平均粒径の13.5%以上16.5%以下である第2の金属粉末を25質量%以上35質量%以下で混合した金属粉末を用いる。このような金属粉末を用いることにより、質量比率が高く、平均粒径の大きい第1の金属粉末の粒子同士の隙間に、平均粒径が第1の金属粉末の平均粒径の13.5%以上16.5%以下である第2の金属粉末が入ることによって、金属ペーストの焼結性を向上させることができるとともに、得られた金属配線層12は、金属配線層12の断面における空孔の平均径が2μm以上10μm以下、平均面積占有率が1面積%以上4面積%以下、平均重心間距離が7μm以上15μm以下となる。そして、このような金属配線層12となる金属ペーストを用いれば、セラミック焼結体11と金属配線層12とを強固に接合することができる。また、得られた金属配線層12は、放熱性に優れ、熱膨張の緩和されたものとなる。特に、第1の金属粉末を68質量%以上72質量%以下、第2の金属粉末を28質量%以上32質量%以下とした金属粉末を用いることが好ましい。
【0026】
また、ガラス粉末は、特に限定されるものではないが、軟化点が400℃以上600℃以下のものを用いることが好ましい。軟化点が400℃以上600℃以下であるときには、焼成の際にガラスが動きやすく、セラミック焼結体11と金属配線層12との界面にガラスが存在していることにより、貫通孔12内における貫通導体13の接合強度を向上させることができる。このガラスの種類としては、例えば、SiO系、ZnO系、RO−SiO系(R:アルカリ金属元素)、RO−ZnO−SiO系、SiO−B系、SiO−ZnO−B系、RO−SiO−B系、RO−ZnO−SiO−B系、SiO−B−Bi系、SiO−ZnO−B−Bi系、RO−SiO−B−Bi系、RO−SiO−ZnO−B−Bi系などが挙げられる。
【0027】
特に、ガラス粉末に、BiまたはZnの少なくともいずれかを含有していることが好ましい。ガラス粉末にBiまたはZnの少なくともいずれかを含有しているときには、セラミック焼結体11に対する金属ペーストの濡れ性が良好となり、セラミック焼結体11と金属配線層12との接合強度をより高いものとすることができる。なお、Bi,Znの含有の有無については、TEM(透過型電子顕微鏡)やSEMによるEDS(エネルギー分散型X線分析)によって確認すればよい。
【0028】
また、有機ビヒクルは、有機バインダを有機溶剤に溶解したものであり、例えば、有機バインダと有機溶剤の比率は、有機溶剤1に対し、有機バインダが2〜5である。そして、有機バインダとしては、例えば、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル類、ニトロセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ブチルセルロース等のセルロース類、ポリオキシメチレン等のポリエーテル類、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のポリビニル類から選択される1種もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
また、有機溶剤としては、例えば、カルビトール、カルビトールアセテート、テルピネオール、メタクレゾール、ジメチルイミダゾール、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルホルムアミド、ジアセトンアルコール、トリエチレングリコール、パラキシレン、乳酸エチル、イソホロンから選択される1種もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
そして、金属ペーストとなる、金属粉末、ガラス粉末、有機ビヒクルの配合比としては、金属ペースト100質量%のうち、金属粉末を84.5質量%〜89.5質量%、ガラス粉末を0.5質量%以上4質量%以下、有機ビヒクルを10質量%以上15質量%以下の範囲とする。なお、ガラスフリットが4質量%を超えると放熱性が低下する傾向がある。
【0031】
また、金属ペーストに金属酸化物を含有させるときには、セラミック焼結体11が酸化アルミニウム質焼結体または窒化アルミニウム質焼結体であれば、酸化銅(CuOまたはCuO)であることが好ましい。このように、金属ペーストに金属酸化物である酸化銅を含有しているときには、アルミン酸銅(CuAlまたはCuAlO)が生成されやすくなり、セラミック焼結体11と金属配線層12との接合強度を高くすることができる。
【0032】
また、セラミック焼結体11が酸化アルミニウム質焼結体であれば、金属ペーストに含有される金属酸化物は酸化アルミニウム(Al)であることが好ましい。これにより、金属配線層12の熱膨張係数を酸化アルミニウム質焼結体の熱膨張係数に近づけることができ、セラミック焼結体11と金属配線層12との熱膨張係数差によって、セラミック焼結体11と金属配線層12とが剥離するおそれを少なくすることができる。
【0033】
そして、上述した第1の金属粉末および第2の金属粉末を混合した金属粉末、ガラス粉末、有機ビヒクルを用いて、金属ペーストを作製し、公知のスクリーン印刷法を用いて金属ペーストを印刷する。次に、セラミック焼結体11の主面に形成した金属ペーストを80℃以上150℃以下で乾燥する。その後、金属ペーストを構成する金属粉末が銅であるときに
は、最高温度850℃以上1050℃以下、保持時間0.5時間以上3時間以下で焼成し、金属ペーストを構成する金属粉末がアルミニウムであるときには、最高温度500℃以上600℃以下、保持時間0.5時間以上3時間以下で焼成することにより、セラミック焼結体11の主面に金
属配線層12を備えた回路基板10を得ることができる。なお、この焼成時の雰囲気は、金属ペーストの酸化を抑制すべく非酸化雰囲気で焼成する。
【0034】
また、金属配線層12の表面に部分的もしくは全面にめっき処理を行なってもよい。このようにめっき処理を行なうことによって、電極パッド14やボンディングワイヤ15などの接合処理がしやすくなり、金属配線層12が酸化腐蝕するのを抑制することができる。めっきの種類としては公知のめっきであればよく、例えば、金めっき、銀めっきまたはニッケル−金めっきなどが挙げられる。
【0035】
また、金属配線層12の形成において、セラミック焼結体11の主面の例えば全面に金属ペーストを印刷して乾燥し焼成した後、金属配線層12の必要領域にレジスト膜を形成し、塩化第二鉄、塩化第二銅またはアルカリからなるエッチング液等を用いてエッチングし、その後、水酸化ナトリウム水溶液等を用いてレジスト膜を除去することで、必要領域に金属配線層12を形成してもよい。
【0036】
また、セラミック焼結体11に貫通孔を設けて、貫通孔内に同様の金属ペーストを充填し、この貫通孔を覆うように金属ペーストを塗布して焼成したり、さらに、セラミック焼結体11の他方主面にも金属ペーストを塗布して焼成したりすることによって、放熱性を向上させることができる。
【0037】
そして、上述した製造方法により得られた本実施形態の回路基板10は、セラミック焼結体11と金属配線層12とが強固に接合されているとともに、金属配線層12は、放熱性に優れ、熱膨張の緩和されたものであるため、電子部品13の動作の繰り返しによって、セラミック焼結体11と金属配線層12とが剥離することが少なく、放熱性に優れているので電子部品13が故障したり寿命が短くなるおそれの少ない回路基板10とすることができる。
【0038】
また、本実施形態の回路基板10の製造方法は上述した製造方法に限るものではない。なお、回路基板10は、分割溝が形成されたセラミック焼結体11を用いて、上述した方法で本実施形態の回路基板10を多数個形成し、その後分割すれば、効率よく作製可能である。
【0039】
そして、金属配線層12上に、電極パッド14を設け、この電極パッド14上に電子部品13を搭載することにより、本実施形態の電子装置1とすることができる。この本実施形態の電子装置1は、本実施形態の回路基板10に電子部品13を搭載してなることにより、長期間にわたって使用可能な信頼性の高い電子装置1となる。
【0040】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
金属配線層12となる金属粉末の配合比等を異ならせた試料を作製し、金属配線層12の空孔の平均面積占有率および平均重心間距離を測定した。また金属配線層12の放熱性を確認するため熱伝導率を測定し、熱膨張等による回路基板10の熱的信頼性を確認するため、ヒートサイクル試験を行なった。
【0042】
まず、酸化珪素および酸化マグネシウムを焼結助剤とし、酸化アルミニウムの含有量が96質量%の酸化アルミニウム質焼結体を作製した。なお、セラミック焼結体11には、試料を多数個取りできるように、溝加工を施した。
【0043】
次に、各試料の作製のために使用する金属ペーストについては、第1の金属粉末および第2の金属粉末を用いて、表1に示す平均粒径および混合比率とした金属粉末を86質量%と、RO−SiO−B系のガラス粉末を3質量%と、有機ビヒクルを11質量%(有機バインダであるアクリル樹脂を8.5質量%と、有機溶剤であるテルピネオールを2.5質量%)とを調合し、金属ペーストを作製した。
【0044】
そして、得られた金属ペーストを用いてセラミック焼結体11の一方主面にスクリーン印刷を行なった。なお、金属配線層12の厚みは70μmとなるように形成した。そして、大気雰囲気で100℃にて乾燥させた後、酸素濃度を5ppmに調整した窒素雰囲気の中で、焼
成温度を900℃、焼成時間を0.8時間で焼成することにより、セラミック焼結体11の一方主面に金属配線層12を備えた試料No.1〜23の回路基板を得た。
【0045】
次に、各試料を厚み方向に切断し、クロスセクションポリッシャー(CP)を用いて研磨した。その後、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて2000倍の倍率で各試料につき5箇所の観察画像について、画像解析ソフト「A像くん」を用いて空孔の平均径、平均面積占有率および平均重心間距離を求めた。
【0046】
また、熱伝導率の測定方法は、各試料からセラミック焼結体11と金属配線層12とが接合された直径10mmの試験片を切り出し、アルキメデス法で密度を求めた後、JIS R1611−2100に準拠したレーザーフラッシュ法によって求めた。
【0047】
また、ヒートサイクル試験として、冷熱衝撃試験装置を用いて各試料の環境温度を、室温から−45℃に降温して15分保持してから、昇温して125℃で15分保持した後、室温まで
降温するというサイクルを1サイクルとしたヒートサイクル試験を行なった。なお、各試料の試料数は20個とし、2000サイクル〜3000サイクルの間で50サイクル毎に各試料につき一つずつ取出し、セラミック焼結体11と金属配線層12との界面の観察を行ない、剥離が確認されたときのサイクル回数を表1に示した。剥離の確認は、SEMを用いて1000倍の倍率で観察して行なった。以上の算出値、測定値等の結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1から、空孔の平均径が2μm以上10μm以下、空孔の平均面積占有率が1面積%以上4面積%以下、空孔の平均重心間距離が7μm以上15μm以下のいずれかを満足しない試料No.1,7,8,14,15,21〜23は、熱伝導率が87W/(m・K)以下もしくはヒートサイクル試験の回数が2200回以下であり、熱的信頼性の低いものであった。
【0050】
これに対し、空孔の平均径が2μm以上10μm以下であり、空孔の平均面積占有率が1面積%以上4面積%以下であり、空孔の平均重心間距離が7μm以上15μm以下である試料No.2〜6,9〜13,16〜20は、熱伝導率が100W/(m・K)を超え、ヒートサイ
クル試験の回数が2350回以上の結果が得られており、熱的信頼性に優れた回路基板10であることがわかった。
【0051】
特に、空孔の平均径が3.8μm以上5.8μm以下であり、空孔の平均面積占有率が1.5面
積%以上3.2面積%以下であり、空孔の平均重心間距離が8.0μm以上12.5μm以下である試料No.3〜5,10〜12,17〜19は、熱伝導率が108W/(m・K)以上であり、ヒー
トサイクル試験の回数が2500回以上の結果が得られており、より優れた回路基板10であることがわかった。
【実施例2】
【0052】
次に、ZnまたはBiを含むガラスを添加した金属ペーストを用いて作製した試料(以下、Bi有り試料およびZn有り試料と)およびBiを含まないガラスを添加した金属ペーストを用いて作製した試料(以下、Bi,Zn無し試料)について、ヒートサイクル試験を行なった。なお、ガラス粉末として、RO−SiO−B系、RO−SiO−B−ZnO系またはRO−SiO−B−Bi系を用いたこと以外は、製造方法、試験方法ともに実施例1と同様の方法で行なった。
【0053】
ヒートサイクル試験の結果、Bi無し試料に対し、Zn有り試料はサイクル数で5%、Bi有り試料はサイクル数で10%の向上が見られ、ZnまたはBiを含むガラスを含有していることにより、セラミック焼結体11と金属配線層12の接合強度を高めることができ、繰り返し掛かる熱によって金属配線層12が剥離することが少ない信頼性の高い回路基板10とできることがわかった。
【符号の説明】
【0054】
1:電子装置
10:回路基板
11:セラミック焼結体
12:金属配線層
13:電子部品
14:電極パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック焼結体の少なくとも一方主面に金属配線層を備えた回路基板であって、前記金属配線層の任意の断面において、空孔の平均径が2μm以上10μm以下であり、前記空孔の平均面積占有率が1面積%以上4面積%以下であり、前記空孔の平均重心間距離が7μm以上15μm以下であることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
請求項1に記載の回路基板に電子部品を搭載してなることを特徴とする電子装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−30616(P2013−30616A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165650(P2011−165650)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】