回路基板の製造方法
【課題】めっき加工後に独立回路を形成する場合にも、めっきレジストのはみ出しによるめっき断線、めっきかけ(めっき領域の欠落)を防ぐ。
【解決手段】そこで本発明の回路基板の製造方法は、絶縁性基材すなわち凹部をもつ絶縁性表面を具備した基板表面に下地層11aを形成する工程と、前記下地層11aのうち、回路部と、回路部の絶縁部となる非回路部の境界領域を選択的に除去し、輪郭12を形成する輪郭形成工程と、前記凹部に絶縁性の充填物30を充填する工程と、前記下地層11aを給電部としてめっきを行い、めっき層11bを形成するめっき工程と、前記充填物を除去し、全面エッチングにより、表面に露呈する前記下地層を除去する工程とを含む。
【解決手段】そこで本発明の回路基板の製造方法は、絶縁性基材すなわち凹部をもつ絶縁性表面を具備した基板表面に下地層11aを形成する工程と、前記下地層11aのうち、回路部と、回路部の絶縁部となる非回路部の境界領域を選択的に除去し、輪郭12を形成する輪郭形成工程と、前記凹部に絶縁性の充填物30を充填する工程と、前記下地層11aを給電部としてめっきを行い、めっき層11bを形成するめっき工程と、前記充填物を除去し、全面エッチングにより、表面に露呈する前記下地層を除去する工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法に係り、特に、立体回路基板などの回路基板への配線パターンの形成に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性基材の表面に回路部を形成することによって回路基板を製造するにあたって、回路部と、回路部の絶縁部となる非回路部の境界領域にレーザ等を照射することによってこの箇所にめっきがおこなわれないように処理し、そしてこの後に回路形成用のめっきを施すようにした技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、これらの技術においては、非回路部となる領域全面にめっきがなされないように、レーザや紫外線などを非回路部の領域全面に照射するようにしている。
このため非回路部となる領域全面にレーザなどを照射しようとすると照射処理時間が長くなり、回路基板の生産性が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、本出願人は、めっき用の下地層を絶縁性基材の全面に形成した後、回路部と非回路部の境界領域に、レーザなどの電磁波を照射することによって、非照射部を残して下地層を選択的に除去する。そして、電気めっきにより、非照射部の下地層の内、回路部となる部分に給電し、電界をかけることで、選択的にめっきを施したのちに、非回路部の下地層をエッチング除去するという方法を提案している(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、電気的に分離された複数の独立回路を形成する場合、個々の独立回路に対応する下地層に電気めっきのためだけにそれぞれ給電のための回路をそれぞれ形成するのは困難である。そこで、回路部を分離して独立回路を形成するために、基材表面に凹部を形成しこの凹部に被覆材を通過させて、下地層を形成し、めっき層形成後に被覆材上の通過部を被覆材の少なくとも一部と共に除去することで、回路パターンの切り離しを行うようにしたものも提案されている(特許文献2)。
【0006】
また、回路部を分離して独立回路を形成するために、基材表面に凸部を形成しこの凸部に被覆材を通過させて、下地層を形成し、めっき層形成後に被覆材上の通過部を被覆材の少なくとも一部と共に除去することで、回路パターンの切り離しを行うようにしたものも提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第315682号公報
【特許文献2】特許第4131094号公報
【特許文献3】特許第4207399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、特許文献1の方法では、回路部に囲まれた内側領域に独立回路を形成するには、個々の独立回路に相当する領域の下地層にそれぞれ給電回路を設けて給電する必要があるため、製造が困難である。また、給電回路が回路パターン設計の制約となることがある。また、一体的に回路部を形成してからこの回路部をパターニングし、独立回路を形成する方法も考えられる。このように回路部を一体形成した後に、独立回路を形成しようとすると、めっき層の形成後に、レジストパターンを塗布し、選択的にめっき層及び下地層を除去する必要がある。この場合に、レジストが濡れ拡がり、不要部分まで覆ってしまい、めっき断線やかけを生じることがある。
【0009】
一方、特許文献2及び3の方法では、回路部に囲まれた内側領域にも独立回路を形成することはできるが、めっき後に回路部を構成するめっき層及び下地層の一部を除去して、独立回路を形成する際に、回路が剥離したり、めっき加工後に加工ばりが発生したりするという問題があった。
【0010】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、基板上に、めっき加工によって複数の独立回路を形成する場合にも、容易に高精度の回路パターンを有する回路部を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明の回路基板の製造方法は、絶縁性基材すなわち凹部をもつ絶縁性表面を具備した基板表面に下地層を形成する工程と、前記下地層のうち、回路部と、回路部の絶縁部となる非回路部の境界領域を選択的に除去し、輪郭を形成する輪郭形成工程と、前記凹部に絶縁性の充填物を充填する工程と、前記下地層を給電部としてめっきを行い、めっき層を形成するめっき工程と、前記充填物を除去し、表面に露呈する前記下地層を除去する工程とを含むことを特徴とする。
この構成によれば、凹部に絶縁性の充填物を充填し、めっき後にこの充填物を除去し、全面エッチングを行うことで、めっきかけやバリの発生もなく、極めて効率よく、めっき層パターンからなる回路パターンを形成することが可能となる。ここで下地層の除去は、充填物除去後に全面エッチングを行うようにすればよい。また、めっき工程で非回路部を陽極となるように接続することで、非回路部はエッチングされ、回路部に選択的にめっき層が形成するようにすることも可能である。
【0012】
この充填物が、凹部に嵌合するように配される絶縁性樹脂の成型体で構成されていれば、凹部に嵌合することで、容易に装着でき、取扱が簡単である。
また、この充填物は、弾性体で構成することで、凹部への着脱が容易であり、かつ、めっき液の回り込みを防ぐことができる。
【0013】
さらに、この充填物として、レジストを凹部に充填し硬化させることで、より密着性よく下地層を被覆することができ、不要部へのめっき層の付着を防止することができる。
【0014】
また、本発明は、上記回路基板の製造方法であって、前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部の側壁が前記回路基板表面に対して垂直となるように形成する工程であるものを含む。
この構成によれば、凹部の側壁が回路基板表面に対して垂直であるため、はずれないように強固に充填物をはめ込むことができ、不要部へのめっき層の付着を防止することができる。
【0015】
また、本発明は、上記回路基板の製造方法であって、前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部が前記充填物を係止する凸部を有するように形成する工程であるものを含む。
この構成によれば、凸部によって充填物が係止される。
【0016】
また、本発明は、上記回路基板の製造方法であって、前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部の底部に溝を有する絶縁性基材を用意する工程であるものを含む。
この構成によれば、溝に充填物が入り込むことによってより強固に係止される。
【0017】
また、本発明は、上記回路基板の製造方法であって、前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部の開口縁に切り欠きを有する絶縁性基材を用意する工程であるものを含む。
この構成によれば、溝に充填物が入り込むことによってより強固に係止される。
【0018】
また、絶縁性基材としては樹脂基板を用いてもよい。射出成型により、精度よく凹部が形成でき、形成された凹部に下地層を形成し、この上層にめっき層を形成すればよい。
【0019】
さらにまた、絶縁性基材としてはセラミック基板を用いてもよい。セラミック基板を用いることで、安定で放熱性に優れた回路基板を提供することができる。またセラミックグリーンシートを用いることで、容易に形成可能である。また複数段の段差を有する凹部を形成することができ、このような複数段の段差表面上にめっき層を形成することも可能である。
【発明の効果】
【0020】
以上説明してきたように、本発明によれば、回路部に囲まれた領域に独立回路を形成するに際し、断線やかけのない回路パターンをもつ基板をより効率よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程において凹部を有するセラミック基板を形成した状態を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程において下地層を形成した状態を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程において輪郭を除去した状態を示す斜視図
【図4】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程において絶縁物を充填した状態を示す斜視図
【図5】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程においてめっき層を形成した状態を示す斜視図
【図6】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程においてめっき層形成後に充填物を除去した状態を示す斜視図
【図7】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程において全面エッチングにより下地層を除去した状態を示す斜視図
【図8】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程における下地層を形成した状態を示す要部断面説明図(図2の断面図に対応する)
【図9】本発明の実施の形態2の回路基板の製造工程における下地層を形成した状態を示す要部断面説明図(図2の断面図に対応する)
【図10】本発明の実施の形態2の回路基板の製造工程における充填物を充填した状態を示す要部断面説明図
【図11】本発明の実施の形態3の回路基板の製造工程における下地層を形成した状態を示す要部断面説明図(図2の断面図に対応する)
【図12】本発明の実施の形態3の回路基板の製造工程における充填物を充填した状態を示す要部断面説明図
【図13】本発明の実施の形態4の回路基板の製造工程における下地層を形成した状態を示す要部断面説明図(図2の断面図に対応する
【図14】本発明の実施の形態4の回路基板の製造工程における充填物を充填した状態を示す要部断面説明図
【図15】本発明の実施の形態5の回路基板の製造工程における凹部を示す要部説明図
【図16】本発明の実施の形態5の回路基板の製造工程における充填物を充填した状態を示す要部説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1乃至7は本発明の実施の形態1の回路基板の製造方法を示す図である。ここで、凹部をもつ絶縁性表面を具備した基板とは、凹部を有する樹脂基板を用いている。
本実施の形態の回路基板の製造方法は、図1乃至図7に製造工程図を示すように、絶縁性基材10として、射出成形により凹部20を形成したセラミック基板を用意し(図1)、この表面に下地層11aを形成する(図2)。そして続いて、これら下地層11aのうち、回路部RCと、回路部RCの絶縁部となる非回路部RNの境界領域RBを選択的に除去し、輪郭12を形成する(図3)。この後、凹部20に絶縁性の充填物30としてウレタン樹脂からなる弾性体を充填する(図4)。そして下地層11aを給電部としてめっきを行い、めっき層を形成する(図5)。この充填物30を除去し(図6)、全面エッチングにより、表面に露呈する下地層を除去する(図7)。なお凹部20は図8に断面図を示すようにテーパ状の側壁を有する。
【0024】
次に、各工程について詳細に説明する。
基材10としてはポリイミド、ABS、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、アルミナセラミックス等の電気絶縁材料によって形成したものを用いる。なお、図1に示すように平板状の基板の他に、三次元立体形状に成形したものなどを用いる。そしてまず表面に凹部20を有する絶縁性基材10を用意し、この表面をプラズマ処理して微細な凹凸を付与する粗面化処理を施す。
【0025】
そして、図2に示すように、絶縁性基材10の表面全体に下地層11aとして薄い金属膜を設ける。下地層11aの形成は、絶縁性基材10の表面にスパッタリングを行うことで、実現する。ここでは例えば下地層11aとしては、膜厚0.1〜2μm程度のクロム薄膜をスパッタリング法で形成する。
【0026】
なお、前記実施の形態では、下地層の形成にスパッタリング法を用いたが、スパッタリングのほか、触媒を付与した後に無電解めっきをおこなったり、CVDやPVDなど、任意の方法で形成することができる。また下地層の材料としては、Cu,Ni,Pd,Cr,Ag等があり、スパッタリングをおこなって形成する場合には、薄い下地層11aを形成する。また、下地層11aはめっき用触媒やめっき用触媒の化合物を絶縁性基材10の表面に付着させることによっても形成することができる。
【0027】
次に、図3に示すように、絶縁性基材10の表面にレーザ等の電磁波を照射して電磁波を照射した部分の薄い下地層11aを除去する。電磁波としてはレーザの他に、X線や紫外線等を用いることができるが、レーザが最も好適である。従って、以下主として電磁波としてレーザを用いる。このレーザとしては例えばQスイッチYAGレーザを用いることができる。ガルバノミラー等で操作することによってレーザを絶縁性基材10の表面に移動させつつ照射する。ガルバノミラーはガルバノメータを用いて角度可変に形成したミラーであり、高速でビーム移動が可能であると共にレーザスポット径も数十μmを得ることが可能である。またレーザの照射は、絶縁性基材10の表面のうち回路部RCを形成する箇所である回路部以外の部分、すなわち回路部RC間の絶縁スペースとなる非回路部RNにおいておこなわれる。非回路部RNの回路部RCとの境界領域RBに非回路部RNのパターンに沿ってレーザを移動(走査)させながら照射することによって、非回路部RNの回路部RCとの境界領域の下地層11aを除去する。このようにして図3に示すように、非回路部RNの下地層11aのうち、レーザの照射部である回路部RCとの境界領域RBの下地層11aは除去され、非回路部RNの下地層11aのうちレーザの非照射部は、回路部RCの下地層11aと共に除去されずに残されることになる。レーザの照射エネルギーは例えば10〜300μJ/pulse程度が好ましく、下地層11aと共に絶縁性基材10の表面部を同時に除去するようにしてもよい。ここで、非回路部RNの幅が照射レーザのスポット径と同等の場合には、非回路部RNに沿ってレーザを1回照射するようにするのがよい。
【0028】
このようにして絶縁性基材10の非回路部RNの回路部RCとの境界領域にレーザを照射した後、図4に示すように凹部20を覆うように、充填物30を装着する。そして回路部RCの下地層11aに給電電極の陰極を接続して通電しつつ、電気めっき浴に絶縁性基材10を浸漬することによって、回路部RCの下地層11aに銅などのめっき層11bを10μm程度の厚みで析出させ、図5に示すようにパターン形状の回路を形成する。非回路部RNに残留する下地層11aには通電されていないので、非回路部RNに残留する下地層11aにはめっき層11bは設けられない。
【0029】
このように回路部RCの下地層11aに電気めっきをして回路形成した後、図6に示すように充填物30を除去し、全面ソフトエッチングにより図7に示すように、非回路部RNに残留する下地層11aをエッチング除去する。そして最後に必要に応じてソルダーレジスト、Niめっき、Auめっきを施すことによって、回路基板として仕上げることができる。
【0030】
このようにして回路基板を製造するにあたり、不要部に充填物を充填し、めっき層形成のマスクとして用いているため、めっき層形成後、簡単に除去することができ、端面にバリが発生したりすることもなく、まためっきかけの発生もなく良好な回路パターンを形成することができる。また、この方法によれば、レーザの照射は絶縁性基材10の表面の非回路部RNの回路部RCとの境界線に沿っておこなっているだけであり、非回路部RNの全面にレーザを走査させて照射する必要はない。従って、非回路部RNの広い領域の全面にレーザを描画して照射する場合に比べてレーザの照射処理時間を短縮することができ、回路基板の生産性を高めることが可能になる。また、回路形成のためのめっきは、回路を作製するために必要な回路部RCにおいてのみおこなわれ、不要な非回路部RNにまではめっきがおこなわれないため、めっき金属等のめっき材料の無駄が少なくなり経済的に有利となる。
【0031】
ここで、回路部RCの下地層11aのうち、給電電極に接続された下地層11aから独立して設けられている下地層がある場合、この下地層には電気めっきの際の給電をおこなうことができない。そこで本実施の形態では、下地層11aを凹部20内で接続しておき、この凹部20を充填物30で覆い、下地層11aに給電しながら電気めっきをおこなうことによって、めっき層11bを形成することができるものである。そして充填物を除去した後、ソフトエッチングにより、表面に露呈する下地層11aをエッチング除去し、回路部を形成するものである。
なお充填物30は、弾性体で構成するのが望ましい。これにより、凹部への着脱が容易であり、かつ、めっき液の回り込みを防ぐことができる。
【0032】
さらにまた、この充填物として、レジストを凹部に充填し硬化させることで、より密着性よく下地層を被覆することができ、不要部へのめっき層の付着を防止することができる。
【0033】
またこの方法において、ここで下地層の除去は、充填物除去後に全面エッチングを行うようにしたが、全面エッチングを行わないようにすることも可能である。また、めっき工程で非回路部を陽極となるように接続することで、非回路部はエッチングされ、回路部に選択的にめっき層が形成されるようにしてもよい。この点については後述する。
【0034】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、凹部20の側壁20Sを図8に示すように、テーパ面で構成したが、図9に示すように断面垂直の側壁20Sを形成するようにしてもよい。このとき図10に示すように、側壁20Sの高さよりも厚い充填物30を嵌合させることで、より確実なパターン形成が可能となる。
この構成によれば、充填物がはずれないように強固にはめ込むことができ、不要部へのめっき層が形成されるのを防止することができる。
【0035】
(実施の形態3)
本実施の形態では、図11に示すように、凹部20の底面に、充填物30を係止する凸部16を形成しておくようにし、めっき工程に先立ち図12に示すように、凹部20に充填物30が充填され凸部16に係合されるようにしている。
この構成によれば、凸部16によって充填物が係止され、めっき液の回り込みを低減することができ、信頼性の高い回路部を形成することができる。
【0036】
(実施の形態4)
本実施の形態では、図13に示すように、凹部20は底部に充填物30を係止するための溝18を形成しておくようにし、めっき工程に先立ち、図14に示すように、凹部20に、充填物30が係合されるようにしている。
この構成によれば、溝に充填物が入り込むことによってより強固に係止され、めっき液の回り込みを低減することができ、信頼性の高い回路部を形成することができる。
【0037】
(実施の形態5)
本実施の形態では、図15に示すように、凹部20は、その開口縁に切り欠き13を有するようにしてもよい。
この構成によれば、図16に示すように、凹部20の開口縁に形成された切り欠き13をつかむことで、充填物30の除去が容易となる。
【0038】
なお、前記実施の形態では、レーザ等の電磁波を照射して輪郭を形成した後に、下地層11aとしての金属層上にめっき層11bを設けるにあたり、下地層11aの金属とめっき層11bの金属とが異種の金属である場合、電気めっき浴に絶縁性基材10を浸漬して電気めっきをおこなう際に下地層11aの金属が電気めっき浴に溶出し、電気めっき浴が汚染されるおそれがある。そこでこの場合には、下地層11aとめっき層11bとを同種の金属で形成するようにするのが望ましい。例えば、下地層11aとしてCuをスパッタリングすることによって厚み0.1〜2μm程度の薄いCu層を形成し、次に絶縁性基材10の表面の非回路部RNの少なくとも回路部RCとの境界領域にレーザを照射した後、下地層11aに給電電極の陰極を接続して通電しつつ、電気銅めっき浴に絶縁性基材10を浸漬することによって、下地層11aに銅などの電気めっき層11bを10μm程度の厚みで析出させ、所望のパターン形状の回路を形成することができる。
【0039】
この場合、電気めっき浴に絶縁性基材10を浸漬して下地層11a上に電気めっきをおこなうにあたり、下地層11aの金属は電気めっき浴に溶解しているめっき金属と同じ金属であるため、非回路部RNの下地層11aが電気めっき浴に溶け出しても、電気めっき浴が異種金属によって汚染されるようなことがなく、むしろ非回路部RNの下地層11aから電気めっき浴に溶出する金属はめっき金属として補充されることになり、電気めっきの経済性を高めることができる。
【0040】
また、このように電気めっきをおこなう際に、回路部RCの下地層11aに陰極を接続すると共に非回路部RNの下地層11aに陽極を接続して、電気めっき浴に浸漬することで、回路部RCの下地層11a上には陰極からの給電でめっき層11bが析出すると共に、非回路部RNの下地層11aは陽極からの給電で電気めっき浴に積極的に溶出させることができる。この場合は、前記実施の形態の場合のようにライトエッチングをおこなう必要はなく、非回路部RNの下地層11aを溶解除去することができる。
【0041】
従って最後に、充填物30を除去してから、凹部20内に露呈する下地層11aをエッチング除去するようにすればよい。また、充填物として樹脂成型体に代えて、レジストを用いてもよい。
【0042】
レジストの場合はめっき後に、アッシングなどでレジストの一部を蒸発させ、膜厚を減じ、凹部の開口縁に露呈する下地層11aをエッチング除去するようにし、凹部内部の下地層11aと分離するようにしてもよい。これにより、凹部内部の下地層11aは回路部と電気的に分離された状態となり、下地層11aをダイパッドとして用いることも可能である。
【0043】
なお前記実施の形態では、回路基板として射出成形によって形成した樹脂製の立体基板を用いたが、セラミック基板でもよくまた、グリーンシートを用いた積層基板を用いてもよい。ここでは例えば1000℃以下で低温焼結が可能なセラミック誘電体材料LTCC(低温温同時焼成セラミック:Low Temperature Co-fired Ceramics)からなり、厚さが10μm〜200μmのグリーンシートに、低抵抗率のAgやCu等の導電ペーストを印刷して所定のパターンを形成し、複数のグリーンシートを絶縁層として用いて、適宜一体的に積層し、焼結することにより内部導体層を備えた絶縁層(誘電体層)として製造することが出来る。これらの誘電体材料としては、例えばAl、Si、Srを主成分として、Ti、Bi、Cu、Mn、Na、Kを副成分とする材料や、Al、Si、Srを主成分としてCa、Pb、Na、Kを複成分とする材料や、Al、Mg、Si、Gdを含む材料や、Al、Si、Zr、Mgを含む材料が適用可能である。ここで、誘電率は5〜15程度の材料を用いる。なお、セラミック誘電体材料の他に、樹脂積層基板や樹脂とセラミック誘電体粉末を混合してなる複合材料を用いてなる積層基板を用いることも可能である。また、前記セラミック基板をHTCC(高温同時焼成セラミック:High Temperature Co-fired Ceramics)技術を用いて、誘電体材料をAl2O3を主体とするものとし、内部導体層として伝送線路等をタングステンやモリブデン等の高温で焼結可能な金属導体として構成しても良い。
【0044】
また、グリーンシートに限定されることなく、他のセラミックにも適用可能であり、またガラスエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの樹脂基板を用いた場合、プリプレグを用いた積層基板などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 絶縁性基材
11a 下地層
11b めっき層
12 輪郭
13 切り欠き
16 凸部
18 溝
20 凹部
20S 側壁
30 充填物
RC 回路部
RN 非回路部
RB 境界領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法に係り、特に、立体回路基板などの回路基板への配線パターンの形成に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性基材の表面に回路部を形成することによって回路基板を製造するにあたって、回路部と、回路部の絶縁部となる非回路部の境界領域にレーザ等を照射することによってこの箇所にめっきがおこなわれないように処理し、そしてこの後に回路形成用のめっきを施すようにした技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、これらの技術においては、非回路部となる領域全面にめっきがなされないように、レーザや紫外線などを非回路部の領域全面に照射するようにしている。
このため非回路部となる領域全面にレーザなどを照射しようとすると照射処理時間が長くなり、回路基板の生産性が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、本出願人は、めっき用の下地層を絶縁性基材の全面に形成した後、回路部と非回路部の境界領域に、レーザなどの電磁波を照射することによって、非照射部を残して下地層を選択的に除去する。そして、電気めっきにより、非照射部の下地層の内、回路部となる部分に給電し、電界をかけることで、選択的にめっきを施したのちに、非回路部の下地層をエッチング除去するという方法を提案している(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、電気的に分離された複数の独立回路を形成する場合、個々の独立回路に対応する下地層に電気めっきのためだけにそれぞれ給電のための回路をそれぞれ形成するのは困難である。そこで、回路部を分離して独立回路を形成するために、基材表面に凹部を形成しこの凹部に被覆材を通過させて、下地層を形成し、めっき層形成後に被覆材上の通過部を被覆材の少なくとも一部と共に除去することで、回路パターンの切り離しを行うようにしたものも提案されている(特許文献2)。
【0006】
また、回路部を分離して独立回路を形成するために、基材表面に凸部を形成しこの凸部に被覆材を通過させて、下地層を形成し、めっき層形成後に被覆材上の通過部を被覆材の少なくとも一部と共に除去することで、回路パターンの切り離しを行うようにしたものも提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第315682号公報
【特許文献2】特許第4131094号公報
【特許文献3】特許第4207399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、特許文献1の方法では、回路部に囲まれた内側領域に独立回路を形成するには、個々の独立回路に相当する領域の下地層にそれぞれ給電回路を設けて給電する必要があるため、製造が困難である。また、給電回路が回路パターン設計の制約となることがある。また、一体的に回路部を形成してからこの回路部をパターニングし、独立回路を形成する方法も考えられる。このように回路部を一体形成した後に、独立回路を形成しようとすると、めっき層の形成後に、レジストパターンを塗布し、選択的にめっき層及び下地層を除去する必要がある。この場合に、レジストが濡れ拡がり、不要部分まで覆ってしまい、めっき断線やかけを生じることがある。
【0009】
一方、特許文献2及び3の方法では、回路部に囲まれた内側領域にも独立回路を形成することはできるが、めっき後に回路部を構成するめっき層及び下地層の一部を除去して、独立回路を形成する際に、回路が剥離したり、めっき加工後に加工ばりが発生したりするという問題があった。
【0010】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、基板上に、めっき加工によって複数の独立回路を形成する場合にも、容易に高精度の回路パターンを有する回路部を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明の回路基板の製造方法は、絶縁性基材すなわち凹部をもつ絶縁性表面を具備した基板表面に下地層を形成する工程と、前記下地層のうち、回路部と、回路部の絶縁部となる非回路部の境界領域を選択的に除去し、輪郭を形成する輪郭形成工程と、前記凹部に絶縁性の充填物を充填する工程と、前記下地層を給電部としてめっきを行い、めっき層を形成するめっき工程と、前記充填物を除去し、表面に露呈する前記下地層を除去する工程とを含むことを特徴とする。
この構成によれば、凹部に絶縁性の充填物を充填し、めっき後にこの充填物を除去し、全面エッチングを行うことで、めっきかけやバリの発生もなく、極めて効率よく、めっき層パターンからなる回路パターンを形成することが可能となる。ここで下地層の除去は、充填物除去後に全面エッチングを行うようにすればよい。また、めっき工程で非回路部を陽極となるように接続することで、非回路部はエッチングされ、回路部に選択的にめっき層が形成するようにすることも可能である。
【0012】
この充填物が、凹部に嵌合するように配される絶縁性樹脂の成型体で構成されていれば、凹部に嵌合することで、容易に装着でき、取扱が簡単である。
また、この充填物は、弾性体で構成することで、凹部への着脱が容易であり、かつ、めっき液の回り込みを防ぐことができる。
【0013】
さらに、この充填物として、レジストを凹部に充填し硬化させることで、より密着性よく下地層を被覆することができ、不要部へのめっき層の付着を防止することができる。
【0014】
また、本発明は、上記回路基板の製造方法であって、前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部の側壁が前記回路基板表面に対して垂直となるように形成する工程であるものを含む。
この構成によれば、凹部の側壁が回路基板表面に対して垂直であるため、はずれないように強固に充填物をはめ込むことができ、不要部へのめっき層の付着を防止することができる。
【0015】
また、本発明は、上記回路基板の製造方法であって、前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部が前記充填物を係止する凸部を有するように形成する工程であるものを含む。
この構成によれば、凸部によって充填物が係止される。
【0016】
また、本発明は、上記回路基板の製造方法であって、前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部の底部に溝を有する絶縁性基材を用意する工程であるものを含む。
この構成によれば、溝に充填物が入り込むことによってより強固に係止される。
【0017】
また、本発明は、上記回路基板の製造方法であって、前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部の開口縁に切り欠きを有する絶縁性基材を用意する工程であるものを含む。
この構成によれば、溝に充填物が入り込むことによってより強固に係止される。
【0018】
また、絶縁性基材としては樹脂基板を用いてもよい。射出成型により、精度よく凹部が形成でき、形成された凹部に下地層を形成し、この上層にめっき層を形成すればよい。
【0019】
さらにまた、絶縁性基材としてはセラミック基板を用いてもよい。セラミック基板を用いることで、安定で放熱性に優れた回路基板を提供することができる。またセラミックグリーンシートを用いることで、容易に形成可能である。また複数段の段差を有する凹部を形成することができ、このような複数段の段差表面上にめっき層を形成することも可能である。
【発明の効果】
【0020】
以上説明してきたように、本発明によれば、回路部に囲まれた領域に独立回路を形成するに際し、断線やかけのない回路パターンをもつ基板をより効率よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程において凹部を有するセラミック基板を形成した状態を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程において下地層を形成した状態を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程において輪郭を除去した状態を示す斜視図
【図4】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程において絶縁物を充填した状態を示す斜視図
【図5】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程においてめっき層を形成した状態を示す斜視図
【図6】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程においてめっき層形成後に充填物を除去した状態を示す斜視図
【図7】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程において全面エッチングにより下地層を除去した状態を示す斜視図
【図8】本発明の実施の形態1の回路基板の製造工程における下地層を形成した状態を示す要部断面説明図(図2の断面図に対応する)
【図9】本発明の実施の形態2の回路基板の製造工程における下地層を形成した状態を示す要部断面説明図(図2の断面図に対応する)
【図10】本発明の実施の形態2の回路基板の製造工程における充填物を充填した状態を示す要部断面説明図
【図11】本発明の実施の形態3の回路基板の製造工程における下地層を形成した状態を示す要部断面説明図(図2の断面図に対応する)
【図12】本発明の実施の形態3の回路基板の製造工程における充填物を充填した状態を示す要部断面説明図
【図13】本発明の実施の形態4の回路基板の製造工程における下地層を形成した状態を示す要部断面説明図(図2の断面図に対応する
【図14】本発明の実施の形態4の回路基板の製造工程における充填物を充填した状態を示す要部断面説明図
【図15】本発明の実施の形態5の回路基板の製造工程における凹部を示す要部説明図
【図16】本発明の実施の形態5の回路基板の製造工程における充填物を充填した状態を示す要部説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1乃至7は本発明の実施の形態1の回路基板の製造方法を示す図である。ここで、凹部をもつ絶縁性表面を具備した基板とは、凹部を有する樹脂基板を用いている。
本実施の形態の回路基板の製造方法は、図1乃至図7に製造工程図を示すように、絶縁性基材10として、射出成形により凹部20を形成したセラミック基板を用意し(図1)、この表面に下地層11aを形成する(図2)。そして続いて、これら下地層11aのうち、回路部RCと、回路部RCの絶縁部となる非回路部RNの境界領域RBを選択的に除去し、輪郭12を形成する(図3)。この後、凹部20に絶縁性の充填物30としてウレタン樹脂からなる弾性体を充填する(図4)。そして下地層11aを給電部としてめっきを行い、めっき層を形成する(図5)。この充填物30を除去し(図6)、全面エッチングにより、表面に露呈する下地層を除去する(図7)。なお凹部20は図8に断面図を示すようにテーパ状の側壁を有する。
【0024】
次に、各工程について詳細に説明する。
基材10としてはポリイミド、ABS、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、アルミナセラミックス等の電気絶縁材料によって形成したものを用いる。なお、図1に示すように平板状の基板の他に、三次元立体形状に成形したものなどを用いる。そしてまず表面に凹部20を有する絶縁性基材10を用意し、この表面をプラズマ処理して微細な凹凸を付与する粗面化処理を施す。
【0025】
そして、図2に示すように、絶縁性基材10の表面全体に下地層11aとして薄い金属膜を設ける。下地層11aの形成は、絶縁性基材10の表面にスパッタリングを行うことで、実現する。ここでは例えば下地層11aとしては、膜厚0.1〜2μm程度のクロム薄膜をスパッタリング法で形成する。
【0026】
なお、前記実施の形態では、下地層の形成にスパッタリング法を用いたが、スパッタリングのほか、触媒を付与した後に無電解めっきをおこなったり、CVDやPVDなど、任意の方法で形成することができる。また下地層の材料としては、Cu,Ni,Pd,Cr,Ag等があり、スパッタリングをおこなって形成する場合には、薄い下地層11aを形成する。また、下地層11aはめっき用触媒やめっき用触媒の化合物を絶縁性基材10の表面に付着させることによっても形成することができる。
【0027】
次に、図3に示すように、絶縁性基材10の表面にレーザ等の電磁波を照射して電磁波を照射した部分の薄い下地層11aを除去する。電磁波としてはレーザの他に、X線や紫外線等を用いることができるが、レーザが最も好適である。従って、以下主として電磁波としてレーザを用いる。このレーザとしては例えばQスイッチYAGレーザを用いることができる。ガルバノミラー等で操作することによってレーザを絶縁性基材10の表面に移動させつつ照射する。ガルバノミラーはガルバノメータを用いて角度可変に形成したミラーであり、高速でビーム移動が可能であると共にレーザスポット径も数十μmを得ることが可能である。またレーザの照射は、絶縁性基材10の表面のうち回路部RCを形成する箇所である回路部以外の部分、すなわち回路部RC間の絶縁スペースとなる非回路部RNにおいておこなわれる。非回路部RNの回路部RCとの境界領域RBに非回路部RNのパターンに沿ってレーザを移動(走査)させながら照射することによって、非回路部RNの回路部RCとの境界領域の下地層11aを除去する。このようにして図3に示すように、非回路部RNの下地層11aのうち、レーザの照射部である回路部RCとの境界領域RBの下地層11aは除去され、非回路部RNの下地層11aのうちレーザの非照射部は、回路部RCの下地層11aと共に除去されずに残されることになる。レーザの照射エネルギーは例えば10〜300μJ/pulse程度が好ましく、下地層11aと共に絶縁性基材10の表面部を同時に除去するようにしてもよい。ここで、非回路部RNの幅が照射レーザのスポット径と同等の場合には、非回路部RNに沿ってレーザを1回照射するようにするのがよい。
【0028】
このようにして絶縁性基材10の非回路部RNの回路部RCとの境界領域にレーザを照射した後、図4に示すように凹部20を覆うように、充填物30を装着する。そして回路部RCの下地層11aに給電電極の陰極を接続して通電しつつ、電気めっき浴に絶縁性基材10を浸漬することによって、回路部RCの下地層11aに銅などのめっき層11bを10μm程度の厚みで析出させ、図5に示すようにパターン形状の回路を形成する。非回路部RNに残留する下地層11aには通電されていないので、非回路部RNに残留する下地層11aにはめっき層11bは設けられない。
【0029】
このように回路部RCの下地層11aに電気めっきをして回路形成した後、図6に示すように充填物30を除去し、全面ソフトエッチングにより図7に示すように、非回路部RNに残留する下地層11aをエッチング除去する。そして最後に必要に応じてソルダーレジスト、Niめっき、Auめっきを施すことによって、回路基板として仕上げることができる。
【0030】
このようにして回路基板を製造するにあたり、不要部に充填物を充填し、めっき層形成のマスクとして用いているため、めっき層形成後、簡単に除去することができ、端面にバリが発生したりすることもなく、まためっきかけの発生もなく良好な回路パターンを形成することができる。また、この方法によれば、レーザの照射は絶縁性基材10の表面の非回路部RNの回路部RCとの境界線に沿っておこなっているだけであり、非回路部RNの全面にレーザを走査させて照射する必要はない。従って、非回路部RNの広い領域の全面にレーザを描画して照射する場合に比べてレーザの照射処理時間を短縮することができ、回路基板の生産性を高めることが可能になる。また、回路形成のためのめっきは、回路を作製するために必要な回路部RCにおいてのみおこなわれ、不要な非回路部RNにまではめっきがおこなわれないため、めっき金属等のめっき材料の無駄が少なくなり経済的に有利となる。
【0031】
ここで、回路部RCの下地層11aのうち、給電電極に接続された下地層11aから独立して設けられている下地層がある場合、この下地層には電気めっきの際の給電をおこなうことができない。そこで本実施の形態では、下地層11aを凹部20内で接続しておき、この凹部20を充填物30で覆い、下地層11aに給電しながら電気めっきをおこなうことによって、めっき層11bを形成することができるものである。そして充填物を除去した後、ソフトエッチングにより、表面に露呈する下地層11aをエッチング除去し、回路部を形成するものである。
なお充填物30は、弾性体で構成するのが望ましい。これにより、凹部への着脱が容易であり、かつ、めっき液の回り込みを防ぐことができる。
【0032】
さらにまた、この充填物として、レジストを凹部に充填し硬化させることで、より密着性よく下地層を被覆することができ、不要部へのめっき層の付着を防止することができる。
【0033】
またこの方法において、ここで下地層の除去は、充填物除去後に全面エッチングを行うようにしたが、全面エッチングを行わないようにすることも可能である。また、めっき工程で非回路部を陽極となるように接続することで、非回路部はエッチングされ、回路部に選択的にめっき層が形成されるようにしてもよい。この点については後述する。
【0034】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、凹部20の側壁20Sを図8に示すように、テーパ面で構成したが、図9に示すように断面垂直の側壁20Sを形成するようにしてもよい。このとき図10に示すように、側壁20Sの高さよりも厚い充填物30を嵌合させることで、より確実なパターン形成が可能となる。
この構成によれば、充填物がはずれないように強固にはめ込むことができ、不要部へのめっき層が形成されるのを防止することができる。
【0035】
(実施の形態3)
本実施の形態では、図11に示すように、凹部20の底面に、充填物30を係止する凸部16を形成しておくようにし、めっき工程に先立ち図12に示すように、凹部20に充填物30が充填され凸部16に係合されるようにしている。
この構成によれば、凸部16によって充填物が係止され、めっき液の回り込みを低減することができ、信頼性の高い回路部を形成することができる。
【0036】
(実施の形態4)
本実施の形態では、図13に示すように、凹部20は底部に充填物30を係止するための溝18を形成しておくようにし、めっき工程に先立ち、図14に示すように、凹部20に、充填物30が係合されるようにしている。
この構成によれば、溝に充填物が入り込むことによってより強固に係止され、めっき液の回り込みを低減することができ、信頼性の高い回路部を形成することができる。
【0037】
(実施の形態5)
本実施の形態では、図15に示すように、凹部20は、その開口縁に切り欠き13を有するようにしてもよい。
この構成によれば、図16に示すように、凹部20の開口縁に形成された切り欠き13をつかむことで、充填物30の除去が容易となる。
【0038】
なお、前記実施の形態では、レーザ等の電磁波を照射して輪郭を形成した後に、下地層11aとしての金属層上にめっき層11bを設けるにあたり、下地層11aの金属とめっき層11bの金属とが異種の金属である場合、電気めっき浴に絶縁性基材10を浸漬して電気めっきをおこなう際に下地層11aの金属が電気めっき浴に溶出し、電気めっき浴が汚染されるおそれがある。そこでこの場合には、下地層11aとめっき層11bとを同種の金属で形成するようにするのが望ましい。例えば、下地層11aとしてCuをスパッタリングすることによって厚み0.1〜2μm程度の薄いCu層を形成し、次に絶縁性基材10の表面の非回路部RNの少なくとも回路部RCとの境界領域にレーザを照射した後、下地層11aに給電電極の陰極を接続して通電しつつ、電気銅めっき浴に絶縁性基材10を浸漬することによって、下地層11aに銅などの電気めっき層11bを10μm程度の厚みで析出させ、所望のパターン形状の回路を形成することができる。
【0039】
この場合、電気めっき浴に絶縁性基材10を浸漬して下地層11a上に電気めっきをおこなうにあたり、下地層11aの金属は電気めっき浴に溶解しているめっき金属と同じ金属であるため、非回路部RNの下地層11aが電気めっき浴に溶け出しても、電気めっき浴が異種金属によって汚染されるようなことがなく、むしろ非回路部RNの下地層11aから電気めっき浴に溶出する金属はめっき金属として補充されることになり、電気めっきの経済性を高めることができる。
【0040】
また、このように電気めっきをおこなう際に、回路部RCの下地層11aに陰極を接続すると共に非回路部RNの下地層11aに陽極を接続して、電気めっき浴に浸漬することで、回路部RCの下地層11a上には陰極からの給電でめっき層11bが析出すると共に、非回路部RNの下地層11aは陽極からの給電で電気めっき浴に積極的に溶出させることができる。この場合は、前記実施の形態の場合のようにライトエッチングをおこなう必要はなく、非回路部RNの下地層11aを溶解除去することができる。
【0041】
従って最後に、充填物30を除去してから、凹部20内に露呈する下地層11aをエッチング除去するようにすればよい。また、充填物として樹脂成型体に代えて、レジストを用いてもよい。
【0042】
レジストの場合はめっき後に、アッシングなどでレジストの一部を蒸発させ、膜厚を減じ、凹部の開口縁に露呈する下地層11aをエッチング除去するようにし、凹部内部の下地層11aと分離するようにしてもよい。これにより、凹部内部の下地層11aは回路部と電気的に分離された状態となり、下地層11aをダイパッドとして用いることも可能である。
【0043】
なお前記実施の形態では、回路基板として射出成形によって形成した樹脂製の立体基板を用いたが、セラミック基板でもよくまた、グリーンシートを用いた積層基板を用いてもよい。ここでは例えば1000℃以下で低温焼結が可能なセラミック誘電体材料LTCC(低温温同時焼成セラミック:Low Temperature Co-fired Ceramics)からなり、厚さが10μm〜200μmのグリーンシートに、低抵抗率のAgやCu等の導電ペーストを印刷して所定のパターンを形成し、複数のグリーンシートを絶縁層として用いて、適宜一体的に積層し、焼結することにより内部導体層を備えた絶縁層(誘電体層)として製造することが出来る。これらの誘電体材料としては、例えばAl、Si、Srを主成分として、Ti、Bi、Cu、Mn、Na、Kを副成分とする材料や、Al、Si、Srを主成分としてCa、Pb、Na、Kを複成分とする材料や、Al、Mg、Si、Gdを含む材料や、Al、Si、Zr、Mgを含む材料が適用可能である。ここで、誘電率は5〜15程度の材料を用いる。なお、セラミック誘電体材料の他に、樹脂積層基板や樹脂とセラミック誘電体粉末を混合してなる複合材料を用いてなる積層基板を用いることも可能である。また、前記セラミック基板をHTCC(高温同時焼成セラミック:High Temperature Co-fired Ceramics)技術を用いて、誘電体材料をAl2O3を主体とするものとし、内部導体層として伝送線路等をタングステンやモリブデン等の高温で焼結可能な金属導体として構成しても良い。
【0044】
また、グリーンシートに限定されることなく、他のセラミックにも適用可能であり、またガラスエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの樹脂基板を用いた場合、プリプレグを用いた積層基板などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 絶縁性基材
11a 下地層
11b めっき層
12 輪郭
13 切り欠き
16 凸部
18 溝
20 凹部
20S 側壁
30 充填物
RC 回路部
RN 非回路部
RB 境界領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部をもつ絶縁性基材を用意する工程と、
凹部をもつ絶縁性基材表面に下地層を形成する工程と、
前記下地層のうち、回路部と、回路部の絶縁部となる非回路部の境界領域を選択的に除去し、輪郭を形成する輪郭形成工程と、
前記凹部に絶縁性の充填物を充填する工程と、
前記下地層を給電部としてめっきを行い、めっき層を形成するめっき工程と、
前記充填物を除去し、表面に露呈する前記下地層を除去する工程とを含む回路基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の回路基板の製造方法であって、
前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部の側壁が前記回路基板表面に対して垂直となるように形成する工程である回路基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の回路基板の製造方法であって、
前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部が前記充填物を係止する凸部を有するように形成する工程である回路基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の回路基板の製造方法であって、
前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部の底部に溝を有する絶縁性基材を用意する工程である回路基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の回路基板の製造方法であって、
前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部の開口縁に切り欠きを有する絶縁性基材を用意する工程である回路基板の製造方法。
【請求項1】
凹部をもつ絶縁性基材を用意する工程と、
凹部をもつ絶縁性基材表面に下地層を形成する工程と、
前記下地層のうち、回路部と、回路部の絶縁部となる非回路部の境界領域を選択的に除去し、輪郭を形成する輪郭形成工程と、
前記凹部に絶縁性の充填物を充填する工程と、
前記下地層を給電部としてめっきを行い、めっき層を形成するめっき工程と、
前記充填物を除去し、表面に露呈する前記下地層を除去する工程とを含む回路基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の回路基板の製造方法であって、
前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部の側壁が前記回路基板表面に対して垂直となるように形成する工程である回路基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の回路基板の製造方法であって、
前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部が前記充填物を係止する凸部を有するように形成する工程である回路基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の回路基板の製造方法であって、
前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部の底部に溝を有する絶縁性基材を用意する工程である回路基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の回路基板の製造方法であって、
前記絶縁性基材を用意する工程は、前記凹部の開口縁に切り欠きを有する絶縁性基材を用意する工程である回路基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−129839(P2011−129839A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289566(P2009−289566)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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