回路基板及び回路基板の製造方法
【課題】 回路基板を簡易な工程により製造し製造時間の短縮化及び製造コストの低減を図る。
【解決手段】 平板状に形成され配線形成面を有する基板2と、基板の配線形成面上に形成され基板に対して所定の接着力を有するプライマー樹脂層3、3、・・・と、プライマー樹脂層上に形成された配線層4、4、・・・とを設け、配線層を、プライマー樹脂層を覆う状態で塗布され基板に対する接着力がプライマー樹脂層の基板に対する接着力より小さくされた導電性インク4′、4′、・・・のうち基板の配線形成面に接する部分を粘着ロール5によって除去することにより形成した。このように導電性インク4′、4′、・・・の不要部分を除去することにより配線層4、4、・・・を形成することにより、回路基板1を簡易な工程により製造することができる。
【解決手段】 平板状に形成され配線形成面を有する基板2と、基板の配線形成面上に形成され基板に対して所定の接着力を有するプライマー樹脂層3、3、・・・と、プライマー樹脂層上に形成された配線層4、4、・・・とを設け、配線層を、プライマー樹脂層を覆う状態で塗布され基板に対する接着力がプライマー樹脂層の基板に対する接着力より小さくされた導電性インク4′、4′、・・・のうち基板の配線形成面に接する部分を粘着ロール5によって除去することにより形成した。このように導電性インク4′、4′、・・・の不要部分を除去することにより配線層4、4、・・・を形成することにより、回路基板1を簡易な工程により製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路基板及び回路基板の製造方法についての技術分野に関する。詳しくは、基板上に形成されたプライマー樹脂層を覆う状態で塗布された導電性インクのうち基板に接する部分を除去することにより高精細な配線層を有する回路基板を簡易な工程により製造する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電子機器には所定の導電パターン(配線層)が形成された回路基板が配置されている。
【0003】
このような回路基板は、例えば、フォトリソグラフィー法によって製造される。フォトリソグラフィー法による回路基板の製造は、スパッタリング等によって導電用のシード層を形成した基板(ガラス基板)上にメッキレジストとなるフォトレジストを塗布した後にフォトマスク等を用いて露光を行い、順に、現像、パ銅メッキ及びフォトレジストの剥離を行い、シード層をエッチングすることにより行われる。
【0004】
しかしながら、このようなフォトリソグラフィー法による回路基板の製造方法は、基板上へのメッキ工程、フォトレジスト層の形成工程、露光工程、現像工程等の多くの工程を行う必要があり、製造方法が煩雑であり、製造コストが高いと言う問題が生じる場合があった。
【0005】
また、現像工程やメッキ工程において多量に生じる廃液は有害なものであり、廃棄処分を行うためには所定の処理を行う必要がある等の環境面での問題もあった。
【0006】
一方、スクリーン等を用いた印刷によりガラス基板上に導電パターンを形成して回路基板を製造する方法も検討されているが、この方法は、形成される導電パターンの良好な位置精度を確保することが困難であり、高精細な導電パターンを形成する必要がある回路基板の製造には適用することができないと言う問題がある。
【0007】
そこで、高精細な導電パターンを形成することが可能であり廃液処理の問題がない回路基板の製造方法として、光触媒を用いた製造方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0008】
光触媒を用いた製造方法においては、光触媒の作用により濡れ性が変化する物質等をコーティングにより基板上に形成し、エネルギー照射を行ってパターンを形成した後に導電性インクを塗布することにより、高精細の導電パターンが形成される。
【0009】
【特許文献1】特開2004−87976号公報
【特許文献2】特開2009−81441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1及び特許文献2に記載された光触媒を用いた製造方法にあっては、光反応させるための露光工程や現像工程等のリソグラフィー法の工程が必要であり、簡易な工程により回路基板を製造することができず、製造時間が長いと共に製造コストが高いという問題がある。
【0011】
そこで、本発明回路基板及び回路基板の製造方法は、上記した問題点を克服し、回路基板を簡易な工程により製造し製造時間の短縮化及び製造コストの低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
回路基板は、上記した課題を解決するために、平板状に形成され配線形成面を有する基板と、前記基板の配線形成面上に形成され前記基板に対して所定の接着力を有するプライマー樹脂層と、前記プライマー樹脂層上に形成された配線層とを備え、前記配線層は、前記プライマー樹脂層を覆う状態で塗布され前記基板に対する接着力が前記プライマー樹脂層の前記基板に対する接着力より小さくされた導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分が除去手段によって除去されて形成されたものである。
【0013】
従って、導電性インクの不要部分が除去手段によって除去されることにより配線層が形成される。
【0014】
上記した回路基板においては、前記除去手段として外周面に粘着剤を有し軸回り方向へ回転可能な粘着ロールが用いられ、前記粘着ロールが回転され前記粘着剤が前記導電性インク上を転動されて前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分が除去されることが望ましい。
【0015】
粘着ロールが回転され粘着剤が導電性インク上を転動されて導電性インクのうち基板の配線形成面に接する部分が除去されることにより、粘着ロールの回転によって導電性インクの不要部分が除去されて配線層が形成される。
【0016】
上記した回路基板においては、前記プライマー層を覆う導電性インクが前記基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布することが望ましい。
【0017】
プライマー層を覆う導電性インクが基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布されていることにより、プライマー層をそれぞれ覆うようにして導電性インクを塗布するための版や機構が不要になる。
【0018】
上記した回路基板においては、前記プライマー層に着色を施すことが望ましい。
【0019】
プライマー層に着色を施すことにより、プライマー層の基板に対する形成状態の検査を行い易くなる。
【0020】
回路基板の製造方法は、上記した課題を解決するために、平板状に形成され配線形成面を有する基板の前記配線形成面上に前記基板に対して所定の接着力を有するプライマー樹脂層を形成し、前記基板に対する接着力が前記プライマー樹脂層の前記基板に対する接着力より小さくされた導電性インクを前記プライマー樹脂層を覆う状態で塗布し、前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分を除去手段によって除去して配線層を形成するものである。
【0021】
従って、導電性インクの不要部分が除去手段によって除去されることにより配線層が形成される。
【0022】
上記した回路基板の製造方法においては、前記除去手段として外周面に粘着剤を有し軸回り方向へ回転可能な粘着ロールが用いられ、前記粘着ロールを回転させ前記粘着剤を前記導電性インク上で転動させて前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分を除去するようにすることが望ましい。
【0023】
粘着ロールが回転され粘着剤が導電性インク上を転動されて導電性インクのうち基板の配線形成面に接する部分が除去されることにより、粘着ロールの回転によって導電性インクの不要部分が除去されて配線層が形成される。
【0024】
上記した回路基板の製造方法においては、前記プライマー層を覆う導電性インクを前記基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布することが望ましい。
【0025】
プライマー層を覆う導電性インクが基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布されていることにより、プライマー層をそれぞれ覆うようにして導電性インクを塗布するための版や機構が不要になる。
【0026】
上記した回路基板の製造方法においては、前記プライマー層に着色を施すことが望ましい。
【0027】
プライマー層に着色を施すことにより、プライマー層の基板に対する形成状態の検査を行い易くなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明回路基板は、平板状に形成され配線形成面を有する基板と、前記基板の配線形成面上に形成され前記基板に対して所定の接着力を有するプライマー樹脂層と、前記プライマー樹脂層上に形成された配線層とを備え、前記配線層は、前記プライマー樹脂層を覆う状態で塗布され前記基板に対する接着力が前記プライマー樹脂層の前記基板に対する接着力より小さくされた導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分が除去手段によって除去されて形成されている。
【0029】
従って、回路基板を簡易な工程により製造することができ、製造時間の短縮化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0030】
請求項2に記載した発明にあっては、前記除去手段として外周面に粘着剤を有し軸回り方向へ回転可能な粘着ロールが用いられ、前記粘着ロールが回転され前記粘着剤が前記導電性インク上を転動されて前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分が除去されるようにしている。
【0031】
従って、配線層として不要な導電性インクを簡単かつ確実に除去することができる。
【0032】
請求項3に記載した発明にあっては、前記プライマー層を覆う導電性インクが前記基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布されている。
【0033】
従って、プライマー層をそれぞれ覆うようにして導電性インクを塗布するための版や機構を設ける必要がなく、その分、製造コストの低減を図ることができる。
【0034】
請求項4に記載した発明にあっては、前記プライマー層に着色を施している。
【0035】
従って、プライマー層の基板に対する形成状態の検査を行い易くなり、配線層の位置精度の向上を図ることができる。
【0036】
本発明回路基板の製造方法は、平板状に形成され配線形成面を有する基板の前記配線形成面上に前記基板に対して所定の接着力を有するプライマー樹脂層を形成し、前記基板に対する接着力が前記プライマー樹脂層の前記基板に対する接着力より小さくされた導電性インクを前記プライマー樹脂層を覆う状態で塗布し、前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分を除去手段によって除去して配線層を形成している。
【0037】
従って、回路基板を簡易な工程により製造することができ、製造時間の短縮化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0038】
請求項6に記載した発明にあっては、前記除去手段として外周面に粘着剤を有し軸回り方向へ回転可能な粘着ロールが用いられ、前記粘着ロールを回転させ前記粘着剤を前記導電性インク上で転動させて前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分を除去するようにしている。
【0039】
従って、配線層として不要な導電性インクを簡単かつ確実に除去することができる。
【0040】
請求項7に記載した発明にあっては、前記プライマー層を覆う導電性インクを前記基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布している。
【0041】
従って、プライマー層をそれぞれ覆うようにして導電性インクを塗布するための版や機構を設ける必要がなく、その分、製造コストの低減を図ることができる。
【0042】
請求項8に記載した発明にあっては、前記プライマー層に着色を施している。
【0043】
従って、プライマー層の基板に対する形成状態の検査を行い易くなり、配線層の位置精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に、本発明回路基板及び回路基板の製造方法の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0045】
以下に示した最良の形態は、本発明回路基板及び回路基板の製造方法を、印刷により微細な導電パターン(配線層)を形成することにより環境負荷の低減や低コスト化等を図ることができるプリンタブルエレクトロニクス技術により製造する回路基板及び回路基板の製造方法に適用したものである。
【0046】
このようなプリンタブルエレクトロニクス技術により製造した回路基板は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ等に適用される。
【0047】
以下の説明にあっては、例として、配線層が形成される被印刷物として機能する基板が上下方向を向く向きで配置された状態で方向を示すが、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0048】
[回路基板の構成]
回路基板1は、図1に示すように、被印刷物として機能する平板状の基板2と基板2上に形成されたプライマー層3、3、・・・とプライマー層3、3、・・・上にそれぞれ形成された配線層4、4、・・・とを有し、配線層4、4、・・・が導電パターンとして機能する。
【0049】
基板2は配線層4、4、・・・が形成された側の面が配線形成面2aとされており、例えば、両面に配線層4、4、・・・が形成されている場合には両面が配線形成面2a、2aとされる。基板2は絶縁性を有する材料、例えば、無アルカリガラス等のガラスによって形成されているが、基板2としてはポリエチレンテレフタレートやポリイミド等の樹脂材料を用いることも可能である。
【0050】
プライマー層3、3、・・・は、例えば、厚みT1が0.2μm乃至0.3μmとされ、幅L1が8μmとされている。プライマー層3、3、・・・間の間隔Sは、例えば、8μmとされている。プライマー層3、3、・・・としては、例えば、エポキシ系、フェノール系、ポリエステル系等の溶剤型粘着剤が用いられ、プライマー層3、3、・・・は基板2に対して高い接着力を有している。
【0051】
配線層4、4、・・・は、例えば、厚みT2が3μmとされ、幅L2が8μmとされている。配線層4、4、・・・としては、例えば、銀ナノインクが用いられている。配線層4、4、・・・はプライマー層3、3、・・・に対しては高い接着力を有しているが、基板2に対する接着力は弱く、配線層4、4、・・・の基板2に対する接着力はプライマー層3、3、・・・の基板2に対する接着力より非常に小さい。
【0052】
尚、配線層4、4、・・・の材料としては、例えば、金、銅、ニッケル、すず、鉛等を用いることも可能である。
【0053】
上記したように、配線層4は厚みが3μmとされ幅が8μmとされており、アスペクト比が0.3以上と高くされ導電性に関する信頼性の向上が図られている。
【0054】
[回路基板の製造方法]
以下に、回路基板1の製造方法について説明する(図2乃至図10参照)。
【0055】
図2は、回路基板1の製造方法における各工程を示すフローチャート図であり、図3乃至図10は、各工程における状態を示す構成図である。
【0056】
(S1)先ず、基板2を用意し、基板2の配線形成面2aにおける所定の位置、即ち、導電パターンを形成する位置にプライマー層3、3、・・・を、例えば、印刷により形成する(図3参照)。プライマー層3、3、・・・の基板2に対する形成方法(印刷方法)としては、例えば、インクジェット、スクリーン版を用いたスクリーン法、凹版を用いたグラビア印刷やオフセット印刷、凸版を用いたフレキソ印刷等の各種の方法を用いることができる。
【0057】
(S2)次に、工程S1において基板2に形成したプライマー層3、3、・・・を乾燥させる(図4参照)。プライマー層3、3、・・・の乾燥は、例えば、熱風や遠赤外線を用いたオーブン、真空を用いた乾燥炉、配線形成面2aの反対側の面からプライマー層3、3、・・・を加熱するホットプレート等によって行う。ホットプレートを用いた加熱は、例えば、100°Cで約10分間行う。プライマー層3、3、・・・の乾燥は、次の工程(S3)においてプライマー層3、3、・・・上に形成する配線層4、4、・・・の印刷の際に不具合を生じない程度までプライマー層3、3、・・・から溶剤を除去することにより行う。
【0058】
(S3)次いで、工程S2において乾燥させたプライマー層3、3、・・・をそれぞれ覆うようにして導電性インク4′、4′、・・・を塗布する(図5参照)。即ち、導電性インク4′、4′、・・・は塗布された状態においてそれぞれプライマー層3、3、・・・の全体を覆い、一部が基板2の配線形成面2aに接触した状態とされる。
【0059】
このとき、塗布する導電性インク4′、4′、・・・の幅を、例えば、12μmとし、導電性インク4′、4′、・・・間の間隔を、例えば、4μmとする。 導電性インク4′、4′、・・・としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、すず、鉛等の金属粉や導電性高分子等を主成分とし分散剤、バインダー、溶剤等を混合分散させて各種印刷法に適するように調合した材料を用いる。
【0060】
また、導電性インク4′、4′、・・・の印刷方法としては、例えば、インクジェット印刷、スクリーン版を用いたスクリーン印刷、凹版を用いたグラビア印刷やオフセット印刷、凸版を用いたフレキソ印刷等の各種の印刷方法を用いることができる。
【0061】
尚、(S2)の工程においてプライマー層3、3、・・・に着色を施しておくことにより、プライマー層3、3、・・・の基板2に対する形成状態の検査を行い易くなる。このようなプライマー層3、3、・・・の基板2に対する形成状態を検査することにより、プライマー層3、3、・・・上への導電性インク4′、4′、・・・の塗布をプライマー層3、3、・・・が確実に所定の位置に形成された状態で行うことができる。従って、(S4)の工程以降の工程において形成される配線層4、4、・・・の位置精度の向上を図ることができる。
【0062】
(S4)続いて、工程S3において塗布した導電性インク4′、4′、・・・の焼成を行う(図6参照)。導電性インク4′、4′、・・・の焼成は導電性インク4′、4′、・・・の導電性を発現させるための工程であり、熱風や遠赤外線を用いた加熱炉によって導電性インク4′、4′、・・・を硬化させる。加熱炉による焼成は、例えば、230°Cで約60分行う。
【0063】
尚、導電性インク4′、4′、・・・の焼成はレーザーやプラズマ等を用いることにより行うことも可能である。
【0064】
導電性インク4′のプライマー層3に対する密着力(接着力)は極めて大きく、導電性インク4′の基板2に対する接着力はプライマー層3の基板2に対する接着力より非常に小さい。
【0065】
(S5)最後に、工程S4において焼成した導電性インク4′、4′、・・・の一部を除去手段によって除去(剥離)して配線層4、4、・・・を形成する(図7乃至図9参照)。
【0066】
除去手段としては、例えば、粘着ロール5が用いられ、粘着ロール5には外周面に粘着剤5aが付着されている(図7参照)。粘着ロール5の粘着剤5aとしては、例えば、アクリル系の粘着材料が用いられている。
【0067】
粘着ロール5による導電性インク4′、4′、・・・の一部の除去は、粘着ロール5を軸回り方向へ回転させて粘着剤5aを導電性インク4′、4′、・・・上を転動させることにより行う。このとき導電性インク4′、4′、・・・の基板2に対する接着力が小さいため、導電性インク4′、4′、・・・のうち基板2の配線形成面2aに接する部分のみが粘着剤5aに粘着されて剥離される(図8参照)。
【0068】
このように粘着ロール5によって導電性インク4′、4′、・・・のうち基板2の配線形成面2aに接する部分のみが粘着剤5aに粘着されて除去されることにより、プライマー層3、3、・・・上にそれぞれ配線層4、4、・・・が形成される(図9参照)。
【0069】
プライマー層3、3、・・・上にそれぞれ配線層4、4、・・・が形成されることにより、回路基板1が製造される。
【0070】
尚、上記には、外周面に粘着剤5aが付着されている粘着ロール5を除去手段の例として示したが、例えば、除去手段として、粘着剤が付着された粘着シートを導電性インク4′、4′、・・・と回転可能なロール体との間で挟み込みロール体を回転させることにより粘着シートを送って導電性インク4′、4′、・・・の一部を剥離する構造であってもよい。
【0071】
また、導電性インク4′、4′、・・・の一部の除去(剥離)は、例えば、導電性インク4′、4′、・・・に対して水やセラミックス等の微粉末を高圧で射出することにより行うことも可能である。
【0072】
さらに、工程(S3)においては、プライマー層3、3、・・・をそれぞれ覆うようにして導電性インク4′、4′、・・・を塗布する例を示したが、プライマー層3、3、・・・と基板2の配線形成面2aの全面を覆うようにして導電性インク4′を塗布してもよい(図10参照)。
【0073】
プライマー層3、3、・・・と基板2の配線形成面2aの全面を覆うようにして導電性インク4′を塗布することにより、プライマー層3、3、・・・をそれぞれ覆うようにして導電性インク4′、4′、・・・を塗布するための版や機構を設ける必要がなく、その分、製造コストの低減を図ることができる。
【0074】
但し、プライマー層3、3、・・・をそれぞれ覆うようにして導電性インク4′、4′、・・・を塗布することにより、除去する導電性インク4′、4′、・・・の量が少なくなり、導電性インク4′、4′、・・・の使用量の低減による材料費の低減を図ることができる。
【0075】
[まとめ]
以上に記載した通り、回路基板1にあっては、プライマー樹脂層3、3、・・・を覆う状態で塗布された導電性インク4′、4′、・・・のうち基板2の配線形成面2aに接する部分を粘着ロール5によって剥離して除去することにより配線層4、4、・・・を形成している。
【0076】
従って、回路基板1を簡易な工程により製造することができ、製造時間の短縮化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0077】
また、除去手段として外周面に粘着剤5aが付着された粘着ロール5を用いることにより、配線層4、4、・・・として不要な導電性インク4′、4′、・・・を簡単かつ確実に除去することができる。
【0078】
尚、導電性インクを用いてガラス基板上に高精細な配線層を印刷により形成する際には、一般に、以下に示すような問題点があることが知られている。
(1)高アスペクト比の配線層(厚膜の配線層)を形成することが困難であること。
(2)印刷する配線層の厚みが厚くなるに従って、配線層を高い位置精度で印刷により形成することが困難であること。
(3)導電性インクとガラス基板の接着力が小さいこと。この場合に接着力を高める樹脂を導電性インクに含有させると、電気抵抗率が上昇し配線層の機能が低下してしまうこと。
【0079】
このような問題に対して、上記した回路基板1のように、導電性インク4′、4′、・・・の不要な部分を除去して配線層4、4、・・・を形成することにより、以下のような効果が奏される。
(1)高アスペクト比の高精細な配線層4、4、・・・を有する回路基板1を形成することができる。
(2)密着力(接着力)が高く高精細かつ抵抗の小さい配線層4、4、・・・を形成することができる。
(3)環境に配慮した環境負荷の小さい回路基板1を形成することができる。
(4)プライマー層3、3、・・・の基板2に対する高い位置精度が確保されていることにより、導電性インク4′、4′、・・・を高い位置精度で塗布しなくても配線層4、4、・・・の高い位置精度を確保することができる。
(5)簡易な方法により高精細の配線層4、4、・・・を形成することができるため歩留りでの改善を実現することができる。
(6)簡易な方法により配線層4、4、・・・の高い位置精度が確保された回路基板1を製造することができるため生産性の向上を図ることができる。
【0080】
上記した最良の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本発明を実施する際の具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図2乃至図10と共に本発明回路基板及び回路基板の製造方法の実施の形態を示すものであり、本図は、回路基板の概略拡大断面図である。
【図2】回路基板の製造方法を示すフローチャート図である。
【図3】図4乃至図10と共に回路基板の製造方法の各工程における状態を示すものであり、本図は、基板にプライマー層が形成された状態を示す概略断面図である。
【図4】プライマー層を乾燥させている状態を示す概略断面図である。
【図5】プライマー層を覆うようにして導電性インクが塗布された状態を示す概略断面図である。
【図6】導電性インクの焼成を行っている状態を示す概略断面図である。
【図7】粘着ロールが導電性インクに接した状態を示す概略断面図である。
【図8】粘着ロールが回転され不要な導電性インクが除去されている状態を示す概略断面図である。
【図9】不要な導電性インクが除去されて回路基板が製造された状態を示す概略断面図である。
【図10】プライマー層と基板の全体を覆うようにして導電性インクが塗布された状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1…回路基板、2…基板、2a…配線形成面、3…プライマー層、4′…導電性インク、4…配線層、5…粘着ロール、5a…粘着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は回路基板及び回路基板の製造方法についての技術分野に関する。詳しくは、基板上に形成されたプライマー樹脂層を覆う状態で塗布された導電性インクのうち基板に接する部分を除去することにより高精細な配線層を有する回路基板を簡易な工程により製造する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電子機器には所定の導電パターン(配線層)が形成された回路基板が配置されている。
【0003】
このような回路基板は、例えば、フォトリソグラフィー法によって製造される。フォトリソグラフィー法による回路基板の製造は、スパッタリング等によって導電用のシード層を形成した基板(ガラス基板)上にメッキレジストとなるフォトレジストを塗布した後にフォトマスク等を用いて露光を行い、順に、現像、パ銅メッキ及びフォトレジストの剥離を行い、シード層をエッチングすることにより行われる。
【0004】
しかしながら、このようなフォトリソグラフィー法による回路基板の製造方法は、基板上へのメッキ工程、フォトレジスト層の形成工程、露光工程、現像工程等の多くの工程を行う必要があり、製造方法が煩雑であり、製造コストが高いと言う問題が生じる場合があった。
【0005】
また、現像工程やメッキ工程において多量に生じる廃液は有害なものであり、廃棄処分を行うためには所定の処理を行う必要がある等の環境面での問題もあった。
【0006】
一方、スクリーン等を用いた印刷によりガラス基板上に導電パターンを形成して回路基板を製造する方法も検討されているが、この方法は、形成される導電パターンの良好な位置精度を確保することが困難であり、高精細な導電パターンを形成する必要がある回路基板の製造には適用することができないと言う問題がある。
【0007】
そこで、高精細な導電パターンを形成することが可能であり廃液処理の問題がない回路基板の製造方法として、光触媒を用いた製造方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0008】
光触媒を用いた製造方法においては、光触媒の作用により濡れ性が変化する物質等をコーティングにより基板上に形成し、エネルギー照射を行ってパターンを形成した後に導電性インクを塗布することにより、高精細の導電パターンが形成される。
【0009】
【特許文献1】特開2004−87976号公報
【特許文献2】特開2009−81441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1及び特許文献2に記載された光触媒を用いた製造方法にあっては、光反応させるための露光工程や現像工程等のリソグラフィー法の工程が必要であり、簡易な工程により回路基板を製造することができず、製造時間が長いと共に製造コストが高いという問題がある。
【0011】
そこで、本発明回路基板及び回路基板の製造方法は、上記した問題点を克服し、回路基板を簡易な工程により製造し製造時間の短縮化及び製造コストの低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
回路基板は、上記した課題を解決するために、平板状に形成され配線形成面を有する基板と、前記基板の配線形成面上に形成され前記基板に対して所定の接着力を有するプライマー樹脂層と、前記プライマー樹脂層上に形成された配線層とを備え、前記配線層は、前記プライマー樹脂層を覆う状態で塗布され前記基板に対する接着力が前記プライマー樹脂層の前記基板に対する接着力より小さくされた導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分が除去手段によって除去されて形成されたものである。
【0013】
従って、導電性インクの不要部分が除去手段によって除去されることにより配線層が形成される。
【0014】
上記した回路基板においては、前記除去手段として外周面に粘着剤を有し軸回り方向へ回転可能な粘着ロールが用いられ、前記粘着ロールが回転され前記粘着剤が前記導電性インク上を転動されて前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分が除去されることが望ましい。
【0015】
粘着ロールが回転され粘着剤が導電性インク上を転動されて導電性インクのうち基板の配線形成面に接する部分が除去されることにより、粘着ロールの回転によって導電性インクの不要部分が除去されて配線層が形成される。
【0016】
上記した回路基板においては、前記プライマー層を覆う導電性インクが前記基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布することが望ましい。
【0017】
プライマー層を覆う導電性インクが基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布されていることにより、プライマー層をそれぞれ覆うようにして導電性インクを塗布するための版や機構が不要になる。
【0018】
上記した回路基板においては、前記プライマー層に着色を施すことが望ましい。
【0019】
プライマー層に着色を施すことにより、プライマー層の基板に対する形成状態の検査を行い易くなる。
【0020】
回路基板の製造方法は、上記した課題を解決するために、平板状に形成され配線形成面を有する基板の前記配線形成面上に前記基板に対して所定の接着力を有するプライマー樹脂層を形成し、前記基板に対する接着力が前記プライマー樹脂層の前記基板に対する接着力より小さくされた導電性インクを前記プライマー樹脂層を覆う状態で塗布し、前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分を除去手段によって除去して配線層を形成するものである。
【0021】
従って、導電性インクの不要部分が除去手段によって除去されることにより配線層が形成される。
【0022】
上記した回路基板の製造方法においては、前記除去手段として外周面に粘着剤を有し軸回り方向へ回転可能な粘着ロールが用いられ、前記粘着ロールを回転させ前記粘着剤を前記導電性インク上で転動させて前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分を除去するようにすることが望ましい。
【0023】
粘着ロールが回転され粘着剤が導電性インク上を転動されて導電性インクのうち基板の配線形成面に接する部分が除去されることにより、粘着ロールの回転によって導電性インクの不要部分が除去されて配線層が形成される。
【0024】
上記した回路基板の製造方法においては、前記プライマー層を覆う導電性インクを前記基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布することが望ましい。
【0025】
プライマー層を覆う導電性インクが基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布されていることにより、プライマー層をそれぞれ覆うようにして導電性インクを塗布するための版や機構が不要になる。
【0026】
上記した回路基板の製造方法においては、前記プライマー層に着色を施すことが望ましい。
【0027】
プライマー層に着色を施すことにより、プライマー層の基板に対する形成状態の検査を行い易くなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明回路基板は、平板状に形成され配線形成面を有する基板と、前記基板の配線形成面上に形成され前記基板に対して所定の接着力を有するプライマー樹脂層と、前記プライマー樹脂層上に形成された配線層とを備え、前記配線層は、前記プライマー樹脂層を覆う状態で塗布され前記基板に対する接着力が前記プライマー樹脂層の前記基板に対する接着力より小さくされた導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分が除去手段によって除去されて形成されている。
【0029】
従って、回路基板を簡易な工程により製造することができ、製造時間の短縮化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0030】
請求項2に記載した発明にあっては、前記除去手段として外周面に粘着剤を有し軸回り方向へ回転可能な粘着ロールが用いられ、前記粘着ロールが回転され前記粘着剤が前記導電性インク上を転動されて前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分が除去されるようにしている。
【0031】
従って、配線層として不要な導電性インクを簡単かつ確実に除去することができる。
【0032】
請求項3に記載した発明にあっては、前記プライマー層を覆う導電性インクが前記基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布されている。
【0033】
従って、プライマー層をそれぞれ覆うようにして導電性インクを塗布するための版や機構を設ける必要がなく、その分、製造コストの低減を図ることができる。
【0034】
請求項4に記載した発明にあっては、前記プライマー層に着色を施している。
【0035】
従って、プライマー層の基板に対する形成状態の検査を行い易くなり、配線層の位置精度の向上を図ることができる。
【0036】
本発明回路基板の製造方法は、平板状に形成され配線形成面を有する基板の前記配線形成面上に前記基板に対して所定の接着力を有するプライマー樹脂層を形成し、前記基板に対する接着力が前記プライマー樹脂層の前記基板に対する接着力より小さくされた導電性インクを前記プライマー樹脂層を覆う状態で塗布し、前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分を除去手段によって除去して配線層を形成している。
【0037】
従って、回路基板を簡易な工程により製造することができ、製造時間の短縮化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0038】
請求項6に記載した発明にあっては、前記除去手段として外周面に粘着剤を有し軸回り方向へ回転可能な粘着ロールが用いられ、前記粘着ロールを回転させ前記粘着剤を前記導電性インク上で転動させて前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分を除去するようにしている。
【0039】
従って、配線層として不要な導電性インクを簡単かつ確実に除去することができる。
【0040】
請求項7に記載した発明にあっては、前記プライマー層を覆う導電性インクを前記基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布している。
【0041】
従って、プライマー層をそれぞれ覆うようにして導電性インクを塗布するための版や機構を設ける必要がなく、その分、製造コストの低減を図ることができる。
【0042】
請求項8に記載した発明にあっては、前記プライマー層に着色を施している。
【0043】
従って、プライマー層の基板に対する形成状態の検査を行い易くなり、配線層の位置精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に、本発明回路基板及び回路基板の製造方法の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0045】
以下に示した最良の形態は、本発明回路基板及び回路基板の製造方法を、印刷により微細な導電パターン(配線層)を形成することにより環境負荷の低減や低コスト化等を図ることができるプリンタブルエレクトロニクス技術により製造する回路基板及び回路基板の製造方法に適用したものである。
【0046】
このようなプリンタブルエレクトロニクス技術により製造した回路基板は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ等に適用される。
【0047】
以下の説明にあっては、例として、配線層が形成される被印刷物として機能する基板が上下方向を向く向きで配置された状態で方向を示すが、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0048】
[回路基板の構成]
回路基板1は、図1に示すように、被印刷物として機能する平板状の基板2と基板2上に形成されたプライマー層3、3、・・・とプライマー層3、3、・・・上にそれぞれ形成された配線層4、4、・・・とを有し、配線層4、4、・・・が導電パターンとして機能する。
【0049】
基板2は配線層4、4、・・・が形成された側の面が配線形成面2aとされており、例えば、両面に配線層4、4、・・・が形成されている場合には両面が配線形成面2a、2aとされる。基板2は絶縁性を有する材料、例えば、無アルカリガラス等のガラスによって形成されているが、基板2としてはポリエチレンテレフタレートやポリイミド等の樹脂材料を用いることも可能である。
【0050】
プライマー層3、3、・・・は、例えば、厚みT1が0.2μm乃至0.3μmとされ、幅L1が8μmとされている。プライマー層3、3、・・・間の間隔Sは、例えば、8μmとされている。プライマー層3、3、・・・としては、例えば、エポキシ系、フェノール系、ポリエステル系等の溶剤型粘着剤が用いられ、プライマー層3、3、・・・は基板2に対して高い接着力を有している。
【0051】
配線層4、4、・・・は、例えば、厚みT2が3μmとされ、幅L2が8μmとされている。配線層4、4、・・・としては、例えば、銀ナノインクが用いられている。配線層4、4、・・・はプライマー層3、3、・・・に対しては高い接着力を有しているが、基板2に対する接着力は弱く、配線層4、4、・・・の基板2に対する接着力はプライマー層3、3、・・・の基板2に対する接着力より非常に小さい。
【0052】
尚、配線層4、4、・・・の材料としては、例えば、金、銅、ニッケル、すず、鉛等を用いることも可能である。
【0053】
上記したように、配線層4は厚みが3μmとされ幅が8μmとされており、アスペクト比が0.3以上と高くされ導電性に関する信頼性の向上が図られている。
【0054】
[回路基板の製造方法]
以下に、回路基板1の製造方法について説明する(図2乃至図10参照)。
【0055】
図2は、回路基板1の製造方法における各工程を示すフローチャート図であり、図3乃至図10は、各工程における状態を示す構成図である。
【0056】
(S1)先ず、基板2を用意し、基板2の配線形成面2aにおける所定の位置、即ち、導電パターンを形成する位置にプライマー層3、3、・・・を、例えば、印刷により形成する(図3参照)。プライマー層3、3、・・・の基板2に対する形成方法(印刷方法)としては、例えば、インクジェット、スクリーン版を用いたスクリーン法、凹版を用いたグラビア印刷やオフセット印刷、凸版を用いたフレキソ印刷等の各種の方法を用いることができる。
【0057】
(S2)次に、工程S1において基板2に形成したプライマー層3、3、・・・を乾燥させる(図4参照)。プライマー層3、3、・・・の乾燥は、例えば、熱風や遠赤外線を用いたオーブン、真空を用いた乾燥炉、配線形成面2aの反対側の面からプライマー層3、3、・・・を加熱するホットプレート等によって行う。ホットプレートを用いた加熱は、例えば、100°Cで約10分間行う。プライマー層3、3、・・・の乾燥は、次の工程(S3)においてプライマー層3、3、・・・上に形成する配線層4、4、・・・の印刷の際に不具合を生じない程度までプライマー層3、3、・・・から溶剤を除去することにより行う。
【0058】
(S3)次いで、工程S2において乾燥させたプライマー層3、3、・・・をそれぞれ覆うようにして導電性インク4′、4′、・・・を塗布する(図5参照)。即ち、導電性インク4′、4′、・・・は塗布された状態においてそれぞれプライマー層3、3、・・・の全体を覆い、一部が基板2の配線形成面2aに接触した状態とされる。
【0059】
このとき、塗布する導電性インク4′、4′、・・・の幅を、例えば、12μmとし、導電性インク4′、4′、・・・間の間隔を、例えば、4μmとする。 導電性インク4′、4′、・・・としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、すず、鉛等の金属粉や導電性高分子等を主成分とし分散剤、バインダー、溶剤等を混合分散させて各種印刷法に適するように調合した材料を用いる。
【0060】
また、導電性インク4′、4′、・・・の印刷方法としては、例えば、インクジェット印刷、スクリーン版を用いたスクリーン印刷、凹版を用いたグラビア印刷やオフセット印刷、凸版を用いたフレキソ印刷等の各種の印刷方法を用いることができる。
【0061】
尚、(S2)の工程においてプライマー層3、3、・・・に着色を施しておくことにより、プライマー層3、3、・・・の基板2に対する形成状態の検査を行い易くなる。このようなプライマー層3、3、・・・の基板2に対する形成状態を検査することにより、プライマー層3、3、・・・上への導電性インク4′、4′、・・・の塗布をプライマー層3、3、・・・が確実に所定の位置に形成された状態で行うことができる。従って、(S4)の工程以降の工程において形成される配線層4、4、・・・の位置精度の向上を図ることができる。
【0062】
(S4)続いて、工程S3において塗布した導電性インク4′、4′、・・・の焼成を行う(図6参照)。導電性インク4′、4′、・・・の焼成は導電性インク4′、4′、・・・の導電性を発現させるための工程であり、熱風や遠赤外線を用いた加熱炉によって導電性インク4′、4′、・・・を硬化させる。加熱炉による焼成は、例えば、230°Cで約60分行う。
【0063】
尚、導電性インク4′、4′、・・・の焼成はレーザーやプラズマ等を用いることにより行うことも可能である。
【0064】
導電性インク4′のプライマー層3に対する密着力(接着力)は極めて大きく、導電性インク4′の基板2に対する接着力はプライマー層3の基板2に対する接着力より非常に小さい。
【0065】
(S5)最後に、工程S4において焼成した導電性インク4′、4′、・・・の一部を除去手段によって除去(剥離)して配線層4、4、・・・を形成する(図7乃至図9参照)。
【0066】
除去手段としては、例えば、粘着ロール5が用いられ、粘着ロール5には外周面に粘着剤5aが付着されている(図7参照)。粘着ロール5の粘着剤5aとしては、例えば、アクリル系の粘着材料が用いられている。
【0067】
粘着ロール5による導電性インク4′、4′、・・・の一部の除去は、粘着ロール5を軸回り方向へ回転させて粘着剤5aを導電性インク4′、4′、・・・上を転動させることにより行う。このとき導電性インク4′、4′、・・・の基板2に対する接着力が小さいため、導電性インク4′、4′、・・・のうち基板2の配線形成面2aに接する部分のみが粘着剤5aに粘着されて剥離される(図8参照)。
【0068】
このように粘着ロール5によって導電性インク4′、4′、・・・のうち基板2の配線形成面2aに接する部分のみが粘着剤5aに粘着されて除去されることにより、プライマー層3、3、・・・上にそれぞれ配線層4、4、・・・が形成される(図9参照)。
【0069】
プライマー層3、3、・・・上にそれぞれ配線層4、4、・・・が形成されることにより、回路基板1が製造される。
【0070】
尚、上記には、外周面に粘着剤5aが付着されている粘着ロール5を除去手段の例として示したが、例えば、除去手段として、粘着剤が付着された粘着シートを導電性インク4′、4′、・・・と回転可能なロール体との間で挟み込みロール体を回転させることにより粘着シートを送って導電性インク4′、4′、・・・の一部を剥離する構造であってもよい。
【0071】
また、導電性インク4′、4′、・・・の一部の除去(剥離)は、例えば、導電性インク4′、4′、・・・に対して水やセラミックス等の微粉末を高圧で射出することにより行うことも可能である。
【0072】
さらに、工程(S3)においては、プライマー層3、3、・・・をそれぞれ覆うようにして導電性インク4′、4′、・・・を塗布する例を示したが、プライマー層3、3、・・・と基板2の配線形成面2aの全面を覆うようにして導電性インク4′を塗布してもよい(図10参照)。
【0073】
プライマー層3、3、・・・と基板2の配線形成面2aの全面を覆うようにして導電性インク4′を塗布することにより、プライマー層3、3、・・・をそれぞれ覆うようにして導電性インク4′、4′、・・・を塗布するための版や機構を設ける必要がなく、その分、製造コストの低減を図ることができる。
【0074】
但し、プライマー層3、3、・・・をそれぞれ覆うようにして導電性インク4′、4′、・・・を塗布することにより、除去する導電性インク4′、4′、・・・の量が少なくなり、導電性インク4′、4′、・・・の使用量の低減による材料費の低減を図ることができる。
【0075】
[まとめ]
以上に記載した通り、回路基板1にあっては、プライマー樹脂層3、3、・・・を覆う状態で塗布された導電性インク4′、4′、・・・のうち基板2の配線形成面2aに接する部分を粘着ロール5によって剥離して除去することにより配線層4、4、・・・を形成している。
【0076】
従って、回路基板1を簡易な工程により製造することができ、製造時間の短縮化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0077】
また、除去手段として外周面に粘着剤5aが付着された粘着ロール5を用いることにより、配線層4、4、・・・として不要な導電性インク4′、4′、・・・を簡単かつ確実に除去することができる。
【0078】
尚、導電性インクを用いてガラス基板上に高精細な配線層を印刷により形成する際には、一般に、以下に示すような問題点があることが知られている。
(1)高アスペクト比の配線層(厚膜の配線層)を形成することが困難であること。
(2)印刷する配線層の厚みが厚くなるに従って、配線層を高い位置精度で印刷により形成することが困難であること。
(3)導電性インクとガラス基板の接着力が小さいこと。この場合に接着力を高める樹脂を導電性インクに含有させると、電気抵抗率が上昇し配線層の機能が低下してしまうこと。
【0079】
このような問題に対して、上記した回路基板1のように、導電性インク4′、4′、・・・の不要な部分を除去して配線層4、4、・・・を形成することにより、以下のような効果が奏される。
(1)高アスペクト比の高精細な配線層4、4、・・・を有する回路基板1を形成することができる。
(2)密着力(接着力)が高く高精細かつ抵抗の小さい配線層4、4、・・・を形成することができる。
(3)環境に配慮した環境負荷の小さい回路基板1を形成することができる。
(4)プライマー層3、3、・・・の基板2に対する高い位置精度が確保されていることにより、導電性インク4′、4′、・・・を高い位置精度で塗布しなくても配線層4、4、・・・の高い位置精度を確保することができる。
(5)簡易な方法により高精細の配線層4、4、・・・を形成することができるため歩留りでの改善を実現することができる。
(6)簡易な方法により配線層4、4、・・・の高い位置精度が確保された回路基板1を製造することができるため生産性の向上を図ることができる。
【0080】
上記した最良の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本発明を実施する際の具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図2乃至図10と共に本発明回路基板及び回路基板の製造方法の実施の形態を示すものであり、本図は、回路基板の概略拡大断面図である。
【図2】回路基板の製造方法を示すフローチャート図である。
【図3】図4乃至図10と共に回路基板の製造方法の各工程における状態を示すものであり、本図は、基板にプライマー層が形成された状態を示す概略断面図である。
【図4】プライマー層を乾燥させている状態を示す概略断面図である。
【図5】プライマー層を覆うようにして導電性インクが塗布された状態を示す概略断面図である。
【図6】導電性インクの焼成を行っている状態を示す概略断面図である。
【図7】粘着ロールが導電性インクに接した状態を示す概略断面図である。
【図8】粘着ロールが回転され不要な導電性インクが除去されている状態を示す概略断面図である。
【図9】不要な導電性インクが除去されて回路基板が製造された状態を示す概略断面図である。
【図10】プライマー層と基板の全体を覆うようにして導電性インクが塗布された状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1…回路基板、2…基板、2a…配線形成面、3…プライマー層、4′…導電性インク、4…配線層、5…粘着ロール、5a…粘着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状に形成され配線形成面を有する基板と、
前記基板の配線形成面上に形成され前記基板に対して所定の接着力を有するプライマー樹脂層と、
前記プライマー樹脂層上に形成された配線層とを備え、
前記配線層は、前記プライマー樹脂層を覆う状態で塗布され前記基板に対する接着力が前記プライマー樹脂層の前記基板に対する接着力より小さくされた導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分が除去手段によって除去されて形成された
回路基板。
【請求項2】
前記除去手段として外周面に粘着剤を有し軸回り方向へ回転可能な粘着ロールが用いられ、
前記粘着ロールが回転され前記粘着剤が前記導電性インク上を転動されて前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分が除去されるようにした
請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記プライマー層を覆う導電性インクが前記基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布された
請求項1に記載の回路基板。
【請求項4】
前記プライマー層に着色を施した
請求項1に記載の回路基板。
【請求項5】
平板状に形成され配線形成面を有する基板の前記配線形成面上に前記基板に対して所定の接着力を有するプライマー樹脂層を形成し、
前記基板に対する接着力が前記プライマー樹脂層の前記基板に対する接着力より小さくされた導電性インクを前記プライマー樹脂層を覆う状態で塗布し、
前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分を除去手段によって除去して配線層を形成した
回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記除去手段として外周面に粘着剤を有し軸回り方向へ回転可能な粘着ロールが用いられ、
前記粘着ロールを回転させ前記粘着剤を前記導電性インク上で転動させて前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分を除去するようにした
請求項5に記載の回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記プライマー層を覆う導電性インクを前記基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布した
請求項5に記載の回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記プライマー層に着色を施した
請求項5に記載の回路基板の製造方法。
【請求項1】
平板状に形成され配線形成面を有する基板と、
前記基板の配線形成面上に形成され前記基板に対して所定の接着力を有するプライマー樹脂層と、
前記プライマー樹脂層上に形成された配線層とを備え、
前記配線層は、前記プライマー樹脂層を覆う状態で塗布され前記基板に対する接着力が前記プライマー樹脂層の前記基板に対する接着力より小さくされた導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分が除去手段によって除去されて形成された
回路基板。
【請求項2】
前記除去手段として外周面に粘着剤を有し軸回り方向へ回転可能な粘着ロールが用いられ、
前記粘着ロールが回転され前記粘着剤が前記導電性インク上を転動されて前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分が除去されるようにした
請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記プライマー層を覆う導電性インクが前記基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布された
請求項1に記載の回路基板。
【請求項4】
前記プライマー層に着色を施した
請求項1に記載の回路基板。
【請求項5】
平板状に形成され配線形成面を有する基板の前記配線形成面上に前記基板に対して所定の接着力を有するプライマー樹脂層を形成し、
前記基板に対する接着力が前記プライマー樹脂層の前記基板に対する接着力より小さくされた導電性インクを前記プライマー樹脂層を覆う状態で塗布し、
前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分を除去手段によって除去して配線層を形成した
回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記除去手段として外周面に粘着剤を有し軸回り方向へ回転可能な粘着ロールが用いられ、
前記粘着ロールを回転させ前記粘着剤を前記導電性インク上で転動させて前記導電性インクのうち前記基板の配線形成面に接する部分を除去するようにした
請求項5に記載の回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記プライマー層を覆う導電性インクを前記基板の配線形成面の全面に接する状態で塗布した
請求項5に記載の回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記プライマー層に着色を施した
請求項5に記載の回路基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−104613(P2012−104613A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251268(P2010−251268)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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