説明

回路基板検査装置

【課題】X−Y型回路基板検査装置で4端子対法による測定を行うにあたって、各可動アームの離間距離をより広げられるようにする。
【解決手段】4端子対法による計測を行うため、電流プローブP1,P2および電圧プローブP3,P4の測定部20に至る電気配線に同軸ケーブルC1〜C4を用い、同軸ケーブルC1〜C4の外部導体S同士を導通手段70を介して相互に接続し、可動アーム31,32のX−Y方向の動きに追従して伸縮するパンタグラフ構造の伸縮手段60を介して可動アーム31,32の間のほぼ中間位置に支持される同軸ケーブル保持手段50により同軸ケーブルC1〜C4を束ねた状態で保持し、同軸ケーブルC1〜C4の各内部導体ILをそれぞれ変形可能な例えば板バネ81からなる電気的中継手段80を介して対応するプローブP1〜P4に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の検査に用いられるプローブ(導電接触ピン)を所定方向に移動可能な可動アームに支持してなるX−Y型(もしくはフライング型)と呼ばれる回路基板検査装置で4端子対法による測定を行うにあたって、可動アームの動きの自由度を高める技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板に存在する導体パターン,実装部品や素子等(以下、これらを「被測定試料」という。)のインピーダンスを測定する方法の一つとして4端子法がある。
【0003】
4端子法においては、図8の模式図に示すように、基本的な構成として、測定信号を発生する測定信号源1と、電圧検出手段としての電圧計2と、電流検出手段としての電流計3とを備える。
【0004】
プローブとしては、測定信号源1から被測定試料DUTに流れる測定電流径路に内に含まれる2つの電流プローブP1,P2(P1が高電位Hc側で、P2が低電位Lc側)と、被測定試料DUTの電圧検出径路内に含まれる2つの電圧プローブP3,P4(P3が高電位Hp側で、P2が低電位Lp側)の4つのプローブが用いられる。
【0005】
なお、これらの各プローブは構造的には変わらないが、本明細書では、説明の便宜上、電流系統側のものを電流プローブと言い、電圧系統側のものを電圧プローブと言う。
【0006】
測定にあたっては、測定信号源1から電流プローブP1,P2を介して被測定試料DUTに例えば定電流を流し、これによって被測定試料DUTの両端に発生する電圧を電圧プローブP3,P4を介して電圧計2で測定し、電流計3による電流値と電圧計2による電圧値とに基づいて、被測定試料DUTのインピーダンスZを測定する。
【0007】
この4端子法によれば、測定系の電気配線(リード線)の配線抵抗や被測定試料との接触抵抗の影響をほとんど排除することができるが、測定電流径路に流れる電流によって発生する磁束が電圧検出径路をよぎると、検出電圧に誤差が生じ、この誤差がインピーダンス測定値に含まれることになる。
【0008】
この現象は、特に高い周波数の測定電流で測定を行う高周波測定時に問題となる。なお、測定系の電気配線に、同軸ケーブル(シールド被覆線)を使用しても、静電シールドの効果はあるが、上記のような電磁誘導に対しては有効ではない。
【0009】
この電磁誘導による問題は、4端子対法によって解決することができる。4端子対法に関する文献としては例えば特許文献1があるが、図9に4端子対法による測定状態を模式的に示し、これについて説明する。
【0010】
図9を参照して、4端子対法の場合、電流プローブP1,P2の電気配線として同軸ケーブルC1,C2を用い、同様に、電圧プローブP3,P4の電気配線にも同軸ケーブルC3,C4を用いる。そして、各同軸ケーブルC1〜C4の各外部導体(シールド被覆線)Sのすべてを各プローブの基端付近でリード線5にて接続し短絡する。
【0011】
動作について説明すると、4端子対法には、低電位側の電圧プローブP4を仮想接地とする自動平衡ブリッジ法が適用され、測定信号源1よりHcラインを介して被測定試料DUTに測定電圧Vを印加すると(この印加電圧はHpラインと同じ)、被測定試料DUTにはV/Zなる測定電流が流れる。この測定電流は電流計3を通り、そのまま逆向きに外部導体を流れて測定信号源1に戻る(図9の電流の流れ方向を示す矢印参照)。
【0012】
このとき、被測定試料DUTの反対側では、LpがLc(=GND)となるように帰還制御回路FCが動作する。したがって、被測定試料DUTには、電圧計2の両端と同じ電圧がかかるため、電圧計2の示す値は、被測定試料DUTの両端電圧と同じとなる。
【0013】
このように、4端子対法によれば、測定電流径路内において、測定電流の往路と復路とが重ね合わされるため、上記4端子法の利点を維持しながら、測定電流により生ずる磁束の影響(電磁誘導)を軽減することができる。
【0014】
なお、各同軸ケーブルC1〜C4の各外部導体Sのすべてをリード線5にて接続しているのは、上記電圧を測定する際に、それに関与するHp,Lpの各外部導体Sの電位が確定していない状態は好ましくない、等の理由による。
【0015】
ところで、X−Y型回路基板装置では、例えば特許文献2に記載されているように、回路基板上を所定方向(X,YおよびZ方向)に移動し得る少なくとも2つの可動アームを備え、その各可動アームにプローブを支持させ、あらかじめ設定されている検査プログラムにしたがって、各可動アームを移動させて回路基板上の被測定試料の検査を行うようにしている。
【0016】
X−Y型回路基板装置で4端子対法による測定を行う場合、例えば、一方の可動アームに高電位側の電流プローブP1と電圧プローブP3とが設けられ、他方の可動アームに低電位側の電流プローブP2と電圧プローブP4とが設けられ、これらの各可動アーム間に外部導体接続用のリード線5が掛け渡されることになる。
【0017】
このため、各可動アームの動き得る範囲がリード線5の配線長に制限され、例えばパターンのピッチが変化し、プロービング箇所間の距離がリード線5の配線長よりも長い場合には対応ができない、等の問題がある。
【0018】
なお、各可動アーム間に掛け渡される外部導体接続用リード線の配線長を長くすることは、高い周波数を扱ううえで好ましくないし、また、極端な例ではあるが、可動アームの間隔が狭められた際に、被検査回路基板上にリード線が垂れ下がって引きずられるおそれもあり、総じて好ましい対策とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平2−122274号公報
【特許文献2】特開2002−14132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、本発明の課題は、X−Y型(もしくはフライング型)と呼ばれる回路基板検査装置で4端子対法による測定を行うにあたって、各可動アームの離間距離をより広げられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本発明は、測定信号源および電圧検出手段を含む測定部と、上記測定信号源と被測定試料との間の測定電流径路に含まれる第1,第2の電流プローブおよび上記電圧検出手段と上記被測定試料との間の電圧検出径路に含まれる第1,第2の電圧プローブと、所定の上記プローブが取り付けられ、移動機構によりX−Y−Zの任意方向に駆動される第1,第2の可動アームと、上記移動機構を介して上記各可動アームの動きを制御し、かつ、上記測定部からの測定信号に基づいて上記被測定試料のパラメータを算出する制御部とを備えている回路基板検査装置において、4端子対法による計測を行うため、上記各電流プローブおよび上記各電圧プローブの上記測定部に至る電気配線に同軸ケーブルが用いられるとともに、上記各同軸ケーブルの外部導体同士が所定の導通手段を介して相互に接続され、上記第1の可動アームのプローブ支持部に、上記第1の電流プローブと上記第1の電圧プローブとが支持され、上記第2の可動アームのプローブ支持部に、上記第2の電流プローブと上記第2の電圧プローブとが支持されており、上記第1の可動アームと上記第2の可動アームのX−Y方向の動きに追従して伸縮する伸縮手段を介して上記第1の可動アームと上記第2の可動アームとの間のほぼ中間位置に支持される同軸ケーブル保持手段により、上記各同軸ケーブルの所定部分が束ねられた状態で保持され、上記各同軸ケーブルの内部導体が、それぞれ変形可能な電気的中継手段を介して対応する上記プローブに接続されていることを特徴としている。
【0022】
本発明において、上記伸縮手段には、対向する2辺にそれぞれ関節状に連結された2本のリンクレバーを含むパンタグラフ構造もしくはコイルバネが好ましく採用される。
【0023】
また、本発明の好ましい態様によれば、上記導通手段として回路基板が用いられ、上記回路基板には、上記各同軸ケーブルの外部導体が剥き出された状態で挿通される4つの挿通孔と、上記各挿通孔の間に形成された上記各外部導体同士を接続する導体パターンとが設けられる。
【0024】
また、上記第1の可動アーム側に支持される上記第1の電流プローブおよび上記第1の電圧プローブがともに高電位側で、上記第2の可動アーム側に支持される上記第2の電流プローブおよび上記第2の電圧プローブがともに低電位側であることが好ましい。
【0025】
また、上記電気的中継手段として、好ましくは板バネもしくは金属のリボン箔が用いられる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、導通手段により各外部導体同士が相互に接続された4本の各同軸ケーブルが同軸ケーブル保持手段により束ねられた状態で第1の可動アームと第2の可動アームのほぼ中間位置に支持されるようにしたことにより、各可動アームの移動に伴って、第1の可動アーム側に設けられている2本のプローブに対する電気的中継手段と、第2の可動アーム側に設けられている2本のプローブに対する電気的中継手段とがほぼ均等に変形するため、電気的中継手段が許容し得る変形可能な範囲内で、可動アームの動きの自由度が高められる。また、各電気的中継手段が例えば板バネからなる場合、それらにかけられる負荷もほぼ均等になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)本発明のX−Y型回路基板検査装置の基本的な構成を示す模式図、(b)本発明に適用される4端子対法によるプローブの構成例を示す模式図。
【図2】本発明のX−Y型回路基板検査装置の具体的な実施形態を示す模式的な正面図。
【図3】本発明の実施形態が備える伸縮手段の構成を示す図2のA−A線断面図。
【図4】本発明の実施形態が備える導通手段を示す斜視図。
【図5】(a),(b)本発明における電気的中継手段の好ましい例を示す側面図。
【図6】(a)〜(c)上記伸縮手段の動作例を示す模式図。
【図7】上記伸縮手段の変形例を示す模式図。
【図8】4端子法による測定状態を示す模式図。
【図9】4端子対法による測定状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、図1ないし図7により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
まず、図1(a)を参照して、本発明の回路基板検査装置の構成を概略的に説明すると、この回路基板検査装置は、X−Y型もしくはフライング型と呼ばれる検査装置で、基本的な構成として、制御部10と、測定部20と、一対の可動アーム31,32と、可動アームの移動機構41,42とを備える。
【0030】
制御部10には、例えばマイクロコンピュータが用いられ、その記憶部には、被検査回路基板A上に存在する被測定試料DUTについての検査プログラムや、良否判定用の基準データ等が設定される。また、制御部10は、測定部20からの測定信号に基づいて、被測定試料DUTのパラメータ(例えば、インピーダンス)を算出し、好ましくは、その良否判定等を行う。
【0031】
測定部20は、先の図9で説明したように、4端子対法による測定を行うための測定信号源1、電圧検出手段としての電圧計2、電流検出手段としての電流計3および帰還制御回路FC等を備え、この測定には、低電位側の電圧プローブP4を仮想接地とする自動平衡ブリッジ法が適用される。
【0032】
可動アーム31,32は、それらの移動機構41,42によりX−Y−Z方向に駆動される。可動アーム31,32の移動制御信号は、制御部10から移動機構41,42に与えられる。図示しないが、可動アーム31,32のほかに、別の可動アーム(例えば、ガードプローブ用の可動アーム等)が設けられてもよい。
【0033】
なお、X−Y方向とは、可動アーム31,32が図1に示す被検査回路基板Aの基板面と平行な面に沿って動く方向(図1の紙面左右方向を例えばX方向とすれば、図1の紙面と直交する方向がY方向)であり、Z方向とは、被検査回路基板Aの基板面と直交する垂直方向(図1において上下方向)である。
【0034】
検査プローブには、図1(b)に示す4端子対法による4本のプローブP1〜P4が用いられる。このうち、先の図9で説明したのと同じく、P1,P2が被測定試料DUTに対する測定電流径路に含まれる電流プローブで、P3,P4が被測定試料DUTの電圧検出径路に含まれる電圧プローブである。
【0035】
電流プローブP1,P2,電圧プローブP3,P4には、同じ構造のプローブが用いられてよい。なお、説明するうえで、これらの各プローブの区別を必要としない場合には、単にプローブということがある。
【0036】
プローブP1,P2,P3およびP4は、それぞれ同軸ケーブルC1,C2,C3およびC4の各内部導体ILを介して測定部20に接続される。
【0037】
先の図9を参照して、電流プローブP1,P2のうち、電流プローブP1が高電位(Hi)側で測定信号源1のHc端子に接続され、電流プローブP2は低電位(Low)側として電流計3のLc端子側に接続される。
【0038】
同様に、電圧プローブP3,P4のうち、電圧プローブP3が高電位側で電圧計2のHp端子に接続され、電圧プローブP4は低電位側として電圧検出系のLp端子側に接続される。
【0039】
同軸ケーブルC1〜C4の各内部導体ILは、その各一端がプローブP1〜P4の基端b側に接続され、各他端が測定部20に接続されるが、各同軸ケーブルC1〜C4の外部導体(シールド被覆線)S同士は、プローブP1〜P4の基端b側付近において例えばリード線5により相互に接続される。
【0040】
同様に、低電位側の同軸ケーブルC2,C4の各外部導体S同士も、プローブP2,P4の基端b側付近においてリード線5により相互に接続されている。
【0041】
本発明では、この4端子対法による測定用のプローブP1〜P4を所定方向に移動可能な可動アーム31,32に支持させて、X−Y型の回路基板検査装置で被測定試料DUTのインピーダンス測定を行う。
【0042】
そのため、この実施形態では、図2に示すように、高電位側の電流プローブP1および高電位側の電圧プローブP3を一方の可動アーム32側のプローブ保持部32aに取り付け、低電位側の電流プローブP2および低電位側の電圧プローブP4を他方の可動アーム31側のプローブ保持部31aに取り付ける。
【0043】
なお、この実施形態において、プローブ保持部31a,32aとは、図1に示すように、被検査回路基板Aの基板面とほぼ平行に配向された各可動アーム31,32に含まれるアーム部分である。
【0044】
図3を併せて参照して、本発明では、可動アーム31,32の動きの自由度を高めるため、可動アーム31と可動アーム32のX−Y方向の動きに追従して伸縮する伸縮手段60(60L),60(60R)を介して可動アーム31と可動アーム32との間のほぼ中間位置に支持される同軸ケーブル保持手段50を備え、この同軸ケーブル保持手段50により、各同軸ケーブルC1〜C4の所定部分が束ねられた状態で保持され、各同軸ケーブルC1〜C4の内部導体ILが、それぞれ変形可能な電気的中継手段80を介して対応するプローブP1〜P4に接続される。
【0045】
この実施形態では、同軸ケーブル保持手段50が、50A,50Bとして上下2段(上下2箇所)に配置されているが、その構成は同一であるため、一方の同軸ケーブル保持手段50および伸縮手段60(60L),60(60R)の構成を図3により説明する。なお、図3は図2のA−A線に沿った図であるため下段側のものである。
【0046】
同軸ケーブル保持手段50は、4本の同軸ケーブルC1〜C4が挿通されるケーブル保持基板51からなる。この実施形態において、ケーブル保持基板51は円盤状に形成されているが、例えば角盤状に形成されてもよい。材質は合成樹脂等の非磁性体であることが好ましい。
【0047】
また、この実施形態において、同軸ケーブルC1〜C4は、四角形の各頂点部分に位置するようにケーブル保持基板51に挿通されているが、横並びもしくは縦並びの一列状としてケーブル保持基板51に挿通されてもよい。
【0048】
伸縮手段60には、一方の可動アーム31およびケーブル保持基板51との間に介在される伸縮手段60Lと、他方の可動アーム32およびケーブル保持基板51との間に介在される伸縮手段60Rとが含まれるが、その構成は、ケーブル保持基板51を挟んで左右対称であるため、一方の伸縮手段60Lについて説明する。なお、伸縮手段60L,60Rを区別する必要がない場合には、総称として伸縮手段60という。
【0049】
この実施形態において、伸縮手段60Lには、対向する2つのリンク辺61,62にそれぞれ関節状に連結された2本のリンクレバー61a,61b;62a,62bを含むパンタグラフ構造が採用されている。
【0050】
一方のリンク辺61側の第1リンクレバー61aと他方のリンク辺62側の第1リンクレバー62aは同じ長さであり、また、一方のリンク辺61側の第2リンクレバー61bと他方のリンク辺62側の第2リンクレバー62bも同じ長さである。この実施形態では、第1リンクレバー61a,62aの長さが第2リンクレバー61b,62bの長さよりも長いが、同じ長さもしくは逆であってもよい。
【0051】
一方のリンク辺61側において、第1リンクレバー61aの一端側は、ヒンジピン61cを介してケーブル保持基板51に連結され、その他端側は、ヒンジピン61dを介して第2リンクレバー61bの一端側に連結されている。第2リンクレバー61bの他端側は、ヒンジピン61eを介して可動アーム31(伸縮手段60R側では可動アーム32)に連結されている。
【0052】
同様に、他方のリンク辺62側においても、第1リンクレバー62aの一端側は、ヒンジピン62cを介してケーブル保持基板51に連結され、その他端側は、ヒンジピン62dを介して第2リンクレバー62bの一端側に連結されている。第2リンクレバー62bの他端側は、ヒンジピン62eを介して可動アーム31(伸縮手段60R側では可動アーム32)に連結されている。
【0053】
各同軸ケーブルC1〜C4は、下段側の同軸ケーブル保持手段50Bのケーブル保持基板51から引き出された部分において、それらの外部導体(シールド被覆線)Sが剥き出しとされ、導通手段70により外部導体S同士が相互に導通(電気的に短絡)される。
【0054】
導通手段70は、図1(b)に示したようにリード線5であってもよいが、この実施形態では、導通手段70として図4に示す回路基板71を用いている。
【0055】
この回路基板71には、各同軸ケーブルC1〜C4の外部導体Sが剥き出された状態で挿通される4つの挿通孔71a〜71dと、各挿通孔71a〜71dの間に形成された各外部導体S同士を接続する導体パターン72とが設けられている。
【0056】
これによれば、各外部導体Sを導体パターン72に半田付けすればよく、リード線5が不要であることから、容易に各外部導体Sを最短距離で電気的に接続することが可能となる。なお、回路基板71を下段側の同軸ケーブル保持手段50Bのケーブル保持基板51の下面側に一体として配置してもよい。
【0057】
次に、下段側のケーブル保持基板51に支持されている同軸ケーブルC1〜C4の各内部導体ILと、可動アーム31,32のプローブ保持部31a,32aに取り付けられている各プローブP1〜P4とを接続する電気的中継手段80について説明する。
【0058】
この電気的中継手段80には、可動アーム31,32のX−Y−Z方向への移動に追随して変形可能であることが要求される。ここで、X−Y−Z方向に変形可能とは、柔軟性を有していることはもとより、弾性復元力(いわゆるバネ弾性)を有していることが望ましい。
【0059】
そこで、この実施形態においては、上記電気的中継手段80として、図5(a),(b)に示すように、少なくとも一部に湾曲部81aを含み、沿面距離が下段側のケーブル保持基板51とプローブ支持部31a,32aとの間隔よりも長い長さを有する例えばリン青銅からなる板バネ81を用いている。
【0060】
なお、上記電気的中継手段80として、板バネ81に代えて、例えばアルミニウム等の金属材からなるリボン箔が用いられてもよい。また、電気配線として一般に用いられている通常のリード線も使用することができる。
【0061】
可動アーム31,32のプロービング時における動作例として、図6(a)に可動アーム31,32がX方向に沿って互いに近づく方向に移動した場合を、図6(b)に可動アーム31,32がX方向に沿って互いに離れる方向に移動した場合を、図6(c)に可動アーム31,32がY方向に沿って互いに離れる方向に移動した場合をそれぞれ示すが、本発明によれば、いずれの場合においても、同軸ケーブル保持手段50は、パンタグラフ構造の伸縮手段60L,60Rを介して可動アーム31,32の間のほぼ中間位置に保持される。
【0062】
したがって、可動アーム31側のプローブP2,P4に接続されている各板バネ81,81と、可動アーム32側のプローブP1,P3に接続されている各板バネ81,81とがほぼ均等に変形するため、各板バネ81が許容し得る変形可能な範囲内で、可動アーム31,32の動きの自由度が高められる。また、各板バネ81にかけられる負荷もほぼ均等になる。
【0063】
なお、伸縮手段60の変形例として、図7に示すように、リンク辺61,62の部分を引っ張りコイルバネ64a,64bとしてもよい。
【0064】
すなわち、同軸ケーブル保持手段50を、左側2本の引っ張りコイルバネ64a,64bおよび右側2本の引っ張りコイルバネ64a,64bの計4本の引っ張りコイルバネにて可動アーム31,32間のほぼ中間位置に保持させてもよい。
【0065】
この場合においても、各引っ張りコイルバネの両端はヒンジピンを介して同軸ケーブル保持手段50もしくは可動アーム31,32側に連結されることが好ましい。さらに簡略化された別の変形例として、図7の鎖線で示すように、引っ張りコイルバネを左右一対の2本とすることもできる。
【0066】
また、電気的中継手段80(板バネ81)の破損や、その接続部分のはずれ等を防止するうえで、可動アーム31,32との間に、図示しないが、それらの離間距離を所定範囲内に制限する強靱なワイヤ等を掛け渡すことが好ましい。
【0067】
また、一方の可動アームと他方の可動アームとに、それぞれ電流プローブと電圧プローブとを支持させることを前提として、場合によっては、それらの高電位側と低電位側とを入れ替えてもよく、このような態様も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 測定信号源
2 電圧検出手段(電圧計)
3 電流検出手段(電流計)
5 リード線(導通手段)
10 制御部
20 測定部
31,32 可動アーム
31a,32a プローブ保持部
41,42 移動機構
50 同軸ケーブル保持手段
51 ケーブル保持基板
60 伸縮手段
61,62 リンク辺
61a,61b,62a,62b リンクレバー
61c〜61e,62c〜62e ヒンジピン
70 導通手段
71 回路基板
71a〜71d 挿通孔
72 導体パターン
80 電気的中継手段
81 板バネ
81a 湾曲部
A 被検査回路基板
DUT 被測定試料
P1,P2 電流プローブ
P3,P4 電圧プローブ
C1〜C4 同軸ケーブル
IL 内部導体
S 外部導体(シールド被覆線)
FC 帰還制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定信号源および電圧検出手段を含む測定部と、上記測定信号源と被測定試料との間の測定電流径路に含まれる第1,第2の電流プローブおよび上記電圧検出手段と上記被測定試料との間の電圧検出径路に含まれる第1,第2の電圧プローブと、所定の上記プローブが取り付けられ、移動機構によりX−Y−Zの任意方向に駆動される第1,第2の可動アームと、上記移動機構を介して上記各可動アームの動きを制御し、かつ、上記測定部からの測定信号に基づいて上記被測定試料のパラメータを算出する制御部とを備えている回路基板検査装置において、
4端子対法による計測を行うため、上記各電流プローブおよび上記各電圧プローブの上記測定部に至る電気配線に同軸ケーブルが用いられるとともに、上記各同軸ケーブルの外部導体同士が所定の導通手段を介して相互に接続され、
上記第1の可動アームのプローブ支持部に、上記第1の電流プローブと上記第1の電圧プローブとが支持され、上記第2の可動アームのプローブ支持部に、上記第2の電流プローブと上記第2の電圧プローブとが支持されており、
上記第1の可動アームと上記第2の可動アームのX−Y方向の動きに追従して伸縮する伸縮手段を介して上記第1の可動アームと上記第2の可動アームとの間のほぼ中間位置に支持される同軸ケーブル保持手段により、上記各同軸ケーブルの所定部分が束ねられた状態で保持され、
上記各同軸ケーブルの内部導体が、それぞれ変形可能な電気的中継手段を介して対応する上記プローブに接続されていることを特徴とする回路基板検査装置。
【請求項2】
上記伸縮手段が、対向する2辺にそれぞれ関節状に連結された2本のリンクレバーを含むパンタグラフ構造からなることを特徴とする請求項1に記載の回路基板検査装置。
【請求項3】
上記伸縮手段が、コイルバネからなることを特徴とする請求項1に記載の回路基板検査装置。
【請求項4】
上記導通手段として回路基板が用いられ、上記回路基板には、上記各同軸ケーブルの外部導体が剥き出された状態で挿通される4つの挿通孔と、上記各挿通孔の間に形成された上記各外部導体同士を接続する導体パターンとが設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の回路基板検査装置。
【請求項5】
上記第1の可動アーム側に支持される上記第1の電流プローブおよび上記第1の電圧プローブがともに高電位側で、上記第2の可動アーム側に支持される上記第2の電流プローブおよび上記第2の電圧プローブがともに低電位側であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回路基板検査装置。
【請求項6】
上記電気的中継手段として、板バネもしくは金属のリボン箔が用いられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の回路基板検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−19742(P2013−19742A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152663(P2011−152663)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】