説明

回転ドラム式乾燥機

【課題】水分が高くて粘着性の強い泥状・ケーク状の被処理物を、分散性を高めて熱風と効率良く接触させ安定して運転できる乾燥機を提供する。
【解決手段】ドラムに具えた送りリフタ27により出口側に送り、掻上げリフタ28により掻上げ落下させ、ドラム2内に配した攪拌部材33により被処理物Dを破砕し、熱風により乾燥する乾燥機1において、乾燥機1の出口側の低水分の被処理物Dの一部をドラム2内に具えた逆送りリフタ29により投入側に戻し、投入側の被処理物Dの粘着性を低下させ分散性を高めた。逆送りリフタ29は、ドラム2の長さLに対して、投入側から見て30%から90%の範囲であり、ドラムの軸線に対する角度として5°から30°の範囲内に具えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥状・ケーク状等の材料(被処理物)の乾燥に好適な装置に関するものであり、水分が高いために粘着性が強く発現して装置ドラム内に付着し易い被処理物の乾燥を良好に行うことのできる回転ドラム式乾燥機に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近時、環境保全の取り組みが盛んであり、食品工場における食品排水汚泥、し尿処理場におけるし尿汚泥、あるいは下水処理場における下水汚泥等を乾燥し、減容化、腐敗防止の処置をした上で処分したり、再資源化の用途に供している。
これらの泥状・ケーク状物(被処理物)の多くは水分が高いために粘着性が強く、分散しにくいために熱風と効率良く接触しなかったり、乾燥機の機内への付着が激しく、付着による機内の閉塞や、機内内面に付着した泥状・ケーク状物が不定期的に大きく剥落するために機内滞留量が変動し、排出される被処理物の水分が一定せず、また被処理物の乾燥機からの排出量が一定しないという課題があった。
【0003】
ここで前記課題を解消する手段に用いる乾燥機として、回転軸に攪拌部材を具えて成る攪拌装置と引上部材(リフタ)を回転胴(ドラム)内に具えたスラッジドライヤーがある(特許文献1参照)。
本乾燥機から排出される乾燥した被処理物の一部を乾燥機の外部に設けた搬送手段を用いて乾燥機の投入側に移送し、水分の高い被処理物と混合する。この混合により投入する被処理物の水分が下がる。このように水分を下げることで粘着性を低下させ、分散性を高めた上で乾燥機に投入し、機内での付着を回避して被処理物を乾燥させる方法である。
しかしこの方法によれば乾燥機の外部に搬送手段や、投入のための混合手段が必要になり、設備の大型化や設備費用の高額化が避けられなかった。
【特許文献1】特公昭52−11463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような背景を鑑みて成されたものであり、水分が高くて粘着性の強い泥状・ケーク状の被処理物を乾燥する場合でも、被処理物の粘着性を低下させて分散性を高めて熱風と効率良く接触させ、機内の付着が少なく、一定した水分の乾燥物が得られる新規な回転ドラム式乾燥機の開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1記載の回転ドラム式乾燥機は、ドラムの投入側より投入した被処理物を、ドラム内面の投入側に具えた送りリフタにより出口側に送り、次いでドラム内面の掻上げリフタにより掻上げ、ドラム内に配され回転軸に具えた攪拌部材により破砕し、ドラム内に供給される熱風によりこの破砕された被処理物を乾燥し、乾燥した被処理物をドラムの出口側から順次排出する回転ドラム式乾燥機において、前記ドラム内面には、被処理物を出口側から投入側に戻すための逆送りリフタが、ドラムの長さに対して、投入側から見て30%から90%の範囲内に具えられたことを特徴として成るものである。
この発明によれば、ドラム内の出口側に位置する乾燥が進み水分の低下した被処理物を、投入側に位置する水分の高い被処理物と混合することができ、これにより水分が高くて粘着性が強い被処理物は粘着性が低く分散性の良い状態となる。本状態の被処理物はドラム内面への付着が少なく、そのためにドラム内面からの多量の付着物の不定期な剥落がなく、ドラム内の滞留量が一定する。また攪拌部材により容易に解砕されて熱風と効率良く接触し、水分が一定に乾燥された被処理物を得ることができる。
【0006】
また請求項2記載の回転ドラム式乾燥機は、前記要件に加え、前記逆送りリフタが、ドラムの軸線に対する角度として5°から30°の範囲内に具えられたことを特徴として成るものである。
この発明によれば、ドラム内の出口側に位置する水分の低い被処理物を効果的に入口側に戻すことができ、戻す量が不足したり、過剰に戻すことがない。
そしてこれら各請求項記載の要件を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水分が高くて粘着性の強い泥状・ケーク状物などの被処理物を乾燥する場合でも被処理物の粘着性を低下させて分散性を高めることができる。これによりドラム内の閉塞がなく、ドラム内面への付着が減じ、ドラム内面からの多量の付着物の不定期な剥落がなくなり、ドラム内の滞留量が一定し、排出量が一定する。また被処理物が攪拌部材により効果的に破砕され、熱風と効率良く接触するので、水分の一定した被処理物(乾燥品)を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の被処理物の粘着性を低下させて分散性を高めた回転ドラム式乾燥機の最良の形態は以下の実施例に示すとおりであるが、本実施例に対して本発明の技術的思想の範囲において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例である回転ドラム式乾燥機1であり、このものは円筒状のドラム2と、このドラム2内の長手方向に架け渡して回転自在に設けられる攪拌機構3を具えて成り、これらは投入側機枠F1、排出側機枠F2及び支持ローラRにより支持される。
【0010】
ここで前記ドラム2について説明すると、このものは図1に示すように、基台Bに具えた前記支持ローラRに対して回転自在に載置される。ドラム2は、投入側の支持ローラR付近のドラム2外周面上に設けたスプロケット25aと、基台Bに設けた駆動モータM1の出力軸に具えたスプロケット25bにチェーン26を巻回することにより、駆動モータM1の駆動で回転するものである。例えばX−X線の断面図を図4に示すように、出口側から投入側を見た状態でドラム2の回転方向は時計回りである。
またドラム2の両側開口部は、投入側蓋体2a及び排出側蓋体2bにより塞ぐものであり、これら投入側蓋体2a、排出側蓋体2bとドラム2との境界部はドラム2が回転可能となるようにシーリングされる。投入側蓋体2aには投入口20及び熱風吹込口22が形成される。また排出側蓋体2bには排出口21及び排気口23が形成される。そして図3、7に示すように、ドラム2内部における出口側の部分には平板リング状の出口堰24が具えられる。本出口堰24は被処理物Dの流出を規制するものであり、出口堰24の高さ寸法(外径と内径との差)によりドラム2内の被処理物Dの滞留量が調整される。
【0011】
次に前記攪拌機構3について説明すると、このものは図6に示すように、回転軸30に対して軸固定部材31を具え、回転軸30に対して軸固定部材31からほぼ垂直に支え部材32が120°の間隔で具えられる。支え部材32にはアンテナ状に攪拌部材33が具えられる。
回転軸30は軸受34により回転自在に支持して成り、図1、2、3に示すように、ドラム2の投入側の基台Bに載置した投入側機枠F1に駆動モータM2を具え、回転軸30に具えたプーリ35a及び駆動モータM2の出力軸に具えたプーリ35bにベルト36を巻回することにより、駆動モータM2の駆動で回転軸30は高速に回転する。例えばX−X視断面図を図4に示すように、出口側から投入側を見た状態で回転軸30の回転方向は時計回りである。
本攪拌部材33は、図6に示すように、被処理物Dとの衝突時にドラム2の出口側方向に被処理物Dを弾くように、一例として角度30°を成すものである。
【0012】
次に前記投入装置4について説明すると、このものは図1,2に示すように、被処理物Dをドラム2内に供給するために投入側機枠F1上に具えるものであり、本実施の形態では一例としてホッパ41とスクリューコンベヤ42とを組み合わせて成る。
【0013】
次に前記送りリフタ27について説明すると、このものはX−X視断面図を図4に示すように、ドラム2の内面に、一例として90°の間隔で円周上に4箇所具えるものである。本送りリフタ27は平板状であり、Z−Z視断面図を図7に示すように、ドラム2の長さLに対して、ドラム2の投入側の端面を起点として、一例として20%の範囲(0.2L)においてドラム2の内面に具えられ、ドラム2の軸線に対し一例として角度30°を成す。本角度の方向とドラム2の回転方向の作用により、本送りリフタ27は被処理物Dを出口側方向に送る作用を及ぼす。
【0014】
次に前記掻上げリフタ28について説明すると、このものはX−X視断面図を図4に示すように、ドラム2の内面に、一例として90°の間隔で円周上に4箇所具えるものである。本掻上げリフタ28は折曲げられた平板状であり、Z−Z視断面図を図7に示すように、ドラム2の長さLに対して、ドラム2の投入側の端面を起点として一例として20%から90%の範囲内(0.7L)まで具えられ、ドラム2の軸線に対し角度0°(平行)を成す。本掻上げリフタ28は、ドラム2の回転により被処理物Dを掻上げ落下させる作用を及ぼす。
【0015】
次に前記逆送りリフタ29について説明すると、このものはY−Y視断面図を図5に示すように、ドラム2の内面に、一例として90°の間隔で円周上に4箇所具えるものである。本逆送りリフタ29は平板状であり、Z−Z視断面図を図7に示すように、ドラム2の長さLに対して、ドラム2の投入側の端面を起点として30%から90%の範囲内(0.6L)においてドラム2の内面に具えられ、ドラム2の軸線に対し一例として角度10°を成す。本角度の方向とドラム2の回転方向の作用により、本逆送りリフタ29は被処理物Dを入口側に戻す作用(移送する作用)を及ぼす。
【0016】
本発明の回転ドラム式乾燥機1における構造は、一例として上述したように構成されるものであり、以下その作動態様について説明する。
まずドラム2及び回転軸30を、図4、5に示すように時計回りに回転させ、熱風吹込口22から熱風をドラム2内に吹き込み、次いで被処理物Dを投入装置4により投入口20からドラム2内に供給する。被処理物Dは、送りリフタ27により出口側に送られ、続いて具えられている掻上げリフタ28により掻上げられた後落下し、その際回転している攪拌部材33と衝突して破砕され、ドラム2内に飛散する。被処理物Dはドラム2内に飛散することで熱風と効率的に接触し乾燥が進む。ここで攪拌部材33は、図6に示すように、角度が設けられているために衝突により被処理物Dをドラム2の出口側方向に弾く。被処理物Dはこの一連の作用を連続的に受け、徐々に出口側に送られる。
【0017】
本発明によれば、前記ドラム2が回転した際に被処理物Dを入口側に戻す向きに角度が設けられた逆送りリフタ29を具えているため、乾燥が進み水分の低下した出口側の一部の被処理物Dが入口側に戻される。この戻された水分の低下した被処理物Dと、投入されたばかりの水分が高く粘着性が強い被処理物Dとが掻上げリフタ28の掻上げ作用や落下作用、また攪拌部材33の破砕により混合される。この混合物(被処理物D)は投入されたばかりの被処理物Dの状態より水分が低くて粘着性が下がるため、入口側付近に付着してドラム2内を閉塞状態に陥らせたり、ドラム2内に付着した被処理物Dが不定期的に大きく剥落したり、分散性が悪いことによる熱風との接触効率の低下を引き起こすことがない。このため乾燥した被処理物Dの水分は一定し、排出量も一定する。
本逆送りリフタ29により投入側に戻されなかった被処理物Dは出口堰24に至り、このものを乗り越えて排出口21から排出される。
乾燥に供された熱風は温度低下し、被処理物Dから蒸発した水分などを同伴して排気口23より排出される。
【0018】
ここで逆送りリフタ29が、ドラム2の長さLに対し、投入側から30%より前、すなわちより投入側にまで具えられていると、送りリフタ27から出口側に送られる被処理物Dと、逆送りリフタ29により入口側に戻される被処理物Dが、送りリフタ27と逆送りリフタ29が近接する付近に集中的に集積し、ドラム2内に閉塞状態を生じさせる恐れがある。
また逆送りリフタ29が、ドラム2の長さLに対し、投入側から90%より後、すなわちより出口側にまで具えられていると、逆送りリフタ29による被処理物Dを投入側に戻す作用が出口堰24を乗り越える直前の被処理物Dに作用し、排出口21からの排出量に大きな変動を生じさせる。そのため排出口21以後の図示していない設備は、変動する排出量を想定した大型の設備や広い調整余裕率を具えた設備である必要があり、設備費用の高額化や設備機能の高度化を招く。
また逆送りリフタ29が、ドラムの軸線に対し、角度5°より小さい角度に具えられると、逆送りリフタ29による被処理物Dを入口側に戻す作用が弱く、被処理物Dが入口側に十分戻らない。
また逆送りリフタ29が、ドラムの軸線に対し、角度30°より大きな角度に具えられると、逆送りリフタ29による被処理物Dを入口側に戻す作用が強いためにドラム2内に滞留する被処理物Dの滞留量が著しく増加し、攪拌機構3の動力負荷の増大を招いたり、攪拌機構3を損傷させる恐れがある。
【0019】
本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもなく、前記実施例に限定されるものではない。
例えば、前述の実施例は投入装置にホッパとスクリューコンベヤとを構成したものを示したが、被処理物がポンプにより圧送できる物性であればポンプによりドラム2内に供給することが可能である。
また、粘着性が強く発現する水分の被処理物Dが存在する位置に出口側の水分の低下した被処理物Dを戻し、その位置に存在する被処理物Dの水分を下げ、粘着性を下げるように逆送りリフタ29を設置すれば良いので、運転に支障のない限りにおいて投入側から見て30%から90%の範囲内の一部に逆送りリフタ29を具えるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、泥状・ケーク状等の水分が高くて粘着性の強い材料(被処理物)を連続的に安定して効率良く乾燥する回転ドラム式乾燥機として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例である回転ドラム式乾燥機の外観を示す側面図である。
【図2】図1の回転ドラム式乾燥機の正面図である。
【図3】図1の回転ドラム式乾燥機の背面図である。
【図4】図1のX−X視断面図である。
【図5】図1のY−Y視断面図である
【図6】攪拌機構を示す図である。
【図7】図3のZ−Z視断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 回転ドラム式乾燥機
2 ドラム
2a 投入側蓋体
2b 排出側蓋体
3 攪拌機構
4 投入装置
20 投入口
21 排出口
22 熱風吹込口
23 排気口
24 出口堰
25a スプロケット
25b スプロケット
26 チェーン
27 送りリフタ
28 掻上げリフタ
29 逆送りリフタ
30 回転軸
31 軸固定部材
32 支え部材
33 攪拌部材
34 軸受
35a プーリ
35b プーリ
36 ベルト
41 ホッパ
42 スクリューコンベヤ
B 基台
D 被処理物
F1 投入側機枠
F2 排出側機枠
M1 駆動モータ
M2 駆動モータ
R 支持ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムの投入側より投入した被処理物を、ドラム内面の投入側に具えた送りリフタにより出口側に送り、次いでドラム内面の掻上げリフタにより掻上げ、ドラム内に配され回転軸に具えた攪拌部材により破砕し、ドラム内に供給される熱風によりこの破砕された被処理物を乾燥し、乾燥した被処理物をドラムの出口側から順次排出する回転ドラム式乾燥機において、
前記ドラム内面には、被処理物を出口側から投入側に戻すための逆送りリフタが、ドラムの長さに対して、投入側から見て30%から90%の範囲内に具えられた回転ドラム式乾燥機。
【請求項2】
前記逆送りリフタは、ドラムの軸線に対する角度として5°から30°の範囲内に具えられたことを特徴とする請求項1記載の回転ドラム式乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−38481(P2010−38481A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203739(P2008−203739)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000149310)株式会社大川原製作所 (64)
【Fターム(参考)】