説明

回転マグネトロンの任意走査経路の制御

スパッタチャンバ(10)のスパッタリングターゲット(18)の後方でスパッタチャンバ(10)の中心軸(14)の周りで回転するマグネトロン(42)の方位角位置および円周位置を決定し、例えば遊星歯車機構を用いてほぼ任意の走査経路を可能にする、2つのモータ(32、36)を制御するための制御システムおよび方法が提供される。システムコントローラ(88)が、複数のコマンドをモーションコントローラ(150)に周期的に送出し、モーションコントローラがモータを密に制御する。各コマンドは、コマンドチケットを含む。モーションコントローラは、直前のコマンドとは異なる値のコマンドチケットを有するコマンドだけを受領する。あるコマンドは、モーションコントローラ内に格納された走査プロファイルを選択するものであり、別のコマンドは、センサに問い合わせて、アームが期待位置にあるかを判定する、動的帰着コマンドを命令するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、材料のスパッタリングに関する。詳細には、本発明は、プラズマスパッタリングターゲットの後方でのマグネトロンの走査経路の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
物理気相成長(PVD)とも呼ばれるスパッタリングは、半導体集積回路の製作において金属の層および関連材料の層を堆積させる最も一般的な方法である。スパッタリングの商業上最も重要な形態は、プラズマの密度を上げ、かつスパッタリング速度を上げるために、スパッタリングターゲットの後方でマグネトロンを用いるプラズマスパッタリングである。典型的なマグネトロンは、ある磁気極性をもつ磁極と、それが取り囲む反対の磁気極性をもつ別の磁極とを含む。ほぼ一定の幅をもち、閉ループを形成する間隙が、2つの磁極を分離し、ターゲットのスパッタリング面に隣接して閉プラズマトラックを構成する。
【0003】
マグネトロンスパッタリングは元々、その後エッチングされて水平の相互接続のパターンになる、ほぼ平坦で比較的厚いアルミニウムなどの金属の層を堆積させるために使用されていた。このタイプのスパッタリングに使用される典型的なマグネトロンは、密に隣接した両磁極がパターンの周辺部付近に位置付けられた、比較的大きな腎臓形を有している。このマグネトロンは、ターゲットの中心のあたりからその使用可能な周辺部の付近まで延在し、ターゲット中心の周りで回転されると、ターゲットの均一なスパッタリングを生じさせ、したがって、ウェーハ上へのスパッタ堆積を生じさせる。マグネトロンの大きなサイズにより、かなり均一なターゲットのエロージョンと、ウェーハ上に堆積されるスパッタ層の均一な厚さを生じさせることができる。
【0004】
しかし、より最近では、マグネトロンスパッタリングは、薄いほぼ共形の層を、垂直相互接続用のビアまたは容量性メモリ用のトレンチなど、誘電体層内に形成された高アスペクト比の穴の中に堆積させるように拡張されている。そのようなスパッタ層の例には、金属が下にある誘電体内に移動するのを防止するための、例えばタンタルおよび窒化タンタルからなるバリア層、または後に電気化学めっき法(ECP)によってビアホール内に充填される銅のめっき電極および核形成層として働く銅シード層がある。そのような深く狭い穴の中へのスパッタリングは、1つには、大部分のスパッタ原子がターゲットに隣接した高密度プラズマ中でイオン化されることを利用しており、これは、ターゲット電力をターゲットの狭いエリアに集中させ、したがって高い電力密度および対応する隣接した高密度プラズマ領域を生じさせる、小型のマグネトロンによって達成することができる。ターゲットの周辺部付近で効果的に走査される小型のマグネトロンは、小型とはいえ、ウェーハ全体にわたってほぼ均一のスパッタ堆積を生じさせることができることが分かっている。というのも、スパッタイオンが、ターゲットからウェーハに移動するときに、ウェーハの中心に向かって拡散するためである。
【0005】
しかし、ターゲット上のより広い帯域をより小型のマグネトロンでスパッタリングすることがときに望ましいことがある。Millerらは、参照により本明細書に組み込む米国特許第6,852,202号において、遊星マグネトロン(PMR)システムについて記載している。このPMRシステムでは、内側アームがターゲット中心の周りで回転されると、内側アームの端部にある旋回軸の周りで外側アームがスピンし、外側アームには、旋回軸からオフセットされたその端部のところにマグネトロンが取り付けられている。記載されているPMRシステムは、太陽歯車がターゲット中心に固定され、また太陽歯車が、旋回軸上で回転し、かつ第2のアームを支持する歯車に結合された、遊星歯車機構を含む。遊星歯車機構は、走査パターンの半径範囲およびローブの数が2本のアームの長さおよび歯車機構の歯車比によって確立される、複数のローブのある(multi−lobed)走査パターンを発生させる。この走査パターンは、先進的なスパッタリング応用分野ではかなり効果的であるが、ローブのある走査パターンは最適な走査パターンとはなり得ず、したがって走査機構の物理的部分を変更せずに走査パターンを変更することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
2つのモータを制御するシステムおよび方法が、スパッタリングターゲットの後方でのほぼ任意の経路に沿ったマグネトロンの移動を生じさせる。システムコントローラが、コマンドをモーションコントローラに周期的に送出し、モーションコントローラがそれらのコマンドを解釈し、それに応じて2つのモータを駆動する。
【0007】
本発明の一態様によれば、各コマンドが、いくつかの許容値の1つ、ならびに起こり得るノーオペレーション値をとることのできるコマンドチケットを含む。システムコントローラは、コマンドチケットの値が同じコマンドを再送することができるが、新しいコマンドの場合にはその値を変更する。モーションコントローラは、コマンド受領時に、そのコマンドが以前に受領したコマンドの許容値以外の許容値を有するコマンドチケットを含んでいない場合には、モータに対するその制御を変更しない。
【0008】
本発明の別の態様によれば、マグネトロン走査経路の複数の走査プロファイルがモーションコントローラ内に格納される。1つのコマンドが、格納済みプロファイルの1つを選択するプロファイルコマンドである。モーションコントローラは、プロファイルコマンドを受領すると、選択されたプロファイルを実行するようにモータを制御する。
【0009】
本発明のさらに別の態様によれば、システムが2つのセンサを含み、この2つのセンサは、それぞれに対応するアーム、または走査機構の他の部材が近くを通り過ぎるときを検出することができる。1つのコマンドが、動的帰着コマンドである。モーションコントローラは、動的帰着コマンドを受領すると、それらのアームを予め選択された経路に沿って移動させ、センサがアームを期待時間に検出するかどうかを判定する。期待時間に検出しない場合、制御システムが走査機構を再帰着させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】エピサイクリックマグネトロン走査機構用のモータ制御システムの一実施形態を含む、スパッタチャンバの概略断面図である。
【図2】ユニバーサルマグネトロン走査機構の正投影図である。
【図3】図2のマグネトロン走査機構の一部の断面図である。
【図4】リザーバ上部壁の平面図であり、マグネトロン走査機構が上に取り付けられ、またリザーバ上部壁に関連付けられる光センサ用の取付け穴を含む、リザーバ上部壁の図である。
【図5】本発明によるモータ制御回路の一実施形態の図である。
【図6】マグネトロン走査パターンの複雑なプロファイルの平面図である。
【図7】図6のプロファイルに従うマグネトロンの角度および半径を示すグラフである。
【図8】いくつかのコマンドの動作の説明に使用する走査機構のモデルの概略平面図である。
【図9】本発明と整合性のある1つのコマンドプロトコルを用いて走査機構を動作させる一方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
Millerら(以後Miller)は、2007年10月25日に出願され参照により本明細書に組み込む米国特許出願第11/924,573号において、2シャフトエピサイクリックマグネトロン走査機構、特に詳細な機構および利用できる走査パターンについて記載している。Millerによれば、図1の断面図に概略的に示すスパッタチャンバ10は、中心軸14を中心として概して対称形であり、アダプタ20およびアイソレータ22を介してターゲット組立体18を支持する、従来型の主チャンバ12を含む。ターゲット組立体18は、スパッタリングすべき材料から形成することができ、またはチャンバ本体12の内部に面し、アイソレータ22の上に横方向に延在するバッキングプレートに接合されたターゲットタイルを含むことができる。
【0012】
スパッタチャンバ10は、エピサイクリック走査アクチュエータ26も含み、エピサイクリック走査アクチュエータ26は、ターゲット組立体18の後方にあり、内側回転シャフト28および管状の外側回転シャフト30を含み、それらの回転シャフトは同軸であり、中心軸14の周りに構成され、かつその軸に沿って延在し、その軸の周りで回転することができる。第1のモータ32が内側回転シャフト28に、駆動歯車34によって、または2つのプーリに巻き付けられたベルトなど、内側回転シャフト28を回転させるための他の機械的手段によって結合される。第2のモータ36も同様に、外側回転シャフト30に、別の駆動歯車38を通じて、または内側回転シャフト28の回転とは独立に外側回転シャフト30を回転させるための機械的手段を通じて結合される。回転シャフト28、30は、エピサイクリック機構40に結合され、エピサイクリック機構40は、取付台44を介してマグネトロン42を支持し、ターゲット組立体18の後方で、回転シャフト28、30の回転によって決まるほぼ任意のパターンでマグネトロン42を走査する。Millerのエピサイクリック機構40の主要な実施形態は、Millerによってより詳細に記載されているように、また以下でそれほど細部にわたらずに説明するように、太陽歯車が固定されるのではなく内側回転シャフト28によって回転される点でPMR機構とは異なっている遊星歯車システムである。マグネトロン42は典型的に、中心軸14に沿ったある磁気極性をもつ内側磁極48と、反対の磁気極性をもち、内側磁極48を取り囲む外側磁極50とを支持し、かつそれらを磁気的に結合する磁気ヨーク46を含む。マグネトロン42およびエピサイクリック機構40の大部分は、ターゲット組立体18を適度に低い温度に維持するためにチルドシールド(chilled sealed)をターゲットの裏面またはターゲットのバッキングプレートの方に再循環させる、図示していない冷却リザーバ内に配設される。
【0013】
主チャンバ12に戻ると、真空ポンプ60が、ポンプ吸排用ポート62を通じて主チャンバ12の内部をポンプ吸排する。ガス供給源64が、アルゴンなどのスパッタ作用ガスを、質量流量コントローラ66を通じてチャンバ12内に供給する。例えば金属窒化物の反応性スパッタリングが望ましい場合、反応性ガス、この例では窒素なども供給される。
【0014】
ウェーハ70または他の基板が、ターゲット組立体18に対向する電極として構成されたペデスタル72上に支持される。ウェーハ70をペデスタル72に対して保持し、またはペデスタル周辺部を保護するために、クランプリング74を使用することができる。しかし、多くの最新のリアクタは、静電チャックを使用してウェーハ70をペデスタル72に押し付けている。アダプタ20上に支持された電気的に接地したシールド76が、チャンバ壁部およびペデスタル72の側面をスパッタ堆積から保護し、またプラズマ放電におけるアノードとしても働く。クランプリング74またはペデスタル72とシールド76の間の間隙78を通じて、作用ガスが主処理エリアに入る。他のシールド構成には、1次シールド76の内側の電気的にフローティングの2次シールド、および1次シールド76の2次シールドによって保護された部分を貫通する、処理エリア内へのガス流を促進させるための貫通孔があり得る。
【0015】
DC電源80が、ターゲット組立体18を接地したシールド76に対して負にバイアスし、それによりアルゴン作用ガスが励起し、放電してプラズマになる。マグネトロン42が、プラズマを集中させて、主チャンバ12の内側のマグネトロン42の下方に高密度プラズマ(HDP)領域82を形成する。正に帯電したアルゴンイオンがターゲット組立体18に、ターゲット組立体18から金属をスパッタリングするのに十分なエネルギーを伴って引き寄せられる。スパッタリングされた金属が、ウェーハ70の表面上に堆積し、その表面を被覆する。深く狭い穴の中にスパッタ堆積するために好ましくは、プラズマに対して負のDC自己バイアスをウェーハ70上に形成するために、RF電源84がペデスタル電極72に、高域通過フィルタとして働く容量結合回路86を介して接続される。自己バイアスは、正の金属イオン、またはおそらくはアルゴンイオンをウェーハ70に向かって、高アスペクトの穴により容易に入る垂直軌道内で加速させるときに効果的である。自己バイアスはまた、イオンに高エネルギーを付与し、この付与は、ウェーハ70上へのスパッタ堆積、およびウェーハ70のスパッタエッチングを差異化させるように制御することができる。コンピュータベースのシステムコントローラ88が、真空ポンプ60、アルゴン質量流量コントローラ66、電源80、84、およびマグネトロンモータ32、36用の駆動回路を、システムコントローラ88に挿入されるCDROMなどの記録可能媒体または等価な通信ラインを通じてシステムコントローラ88に入力される所望のスパッタリング条件および走査パターンに従って制御する。
【0016】
エピサイクリック走査アクチュエータ26および取り付けられたマグネトロン42のより現実的なバージョンが、図2の正投影図に示す、ユニバーサルマグネトロンモーション(UMM)機構100と呼ばれる機構に組み込まれる。UMM機構100は、フランジ102上に支持され、フランジ102は、冷却リザーバの上部壁上に支持され、その上部壁に対してシールされる。リザーバの外側でフランジ102上に支持されたデリック104が、垂直アクチュエータ106を支持し、垂直アクチュエータ106は、回転シャフト28、30およびそれらにリブドベルト108、110を通じて結合されたモータ32、36を回転可能に支持するスライダを垂直に移動させることができる。
【0017】
図3の側断面図は、リザーバ側壁116と、アクチュエータフランジ102が上に支持されるリザーバ上部壁118とによってターゲット組立体18の後方に形成された冷却リザーバ114を示す。水封した歯車箱120およびその釣合いおもり122が、リザーバ114の内側で外側回転シャフト30の下端部に固定される。太陽歯車124が、ケース120の内側で内側回転シャフト28の下端部に固定されるが、太陽歯車124は2組のベアリング間にも捕捉される。被動歯車126が、歯車箱120の内側で別の2組のベアリング間に回転可能に支持され、図示していない遊び歯車を介して太陽歯車124に結合される。被動歯車126のシャフト128が、歯車箱120の底面上の回転シールを通過して磁石アーム130に固定され、したがって、磁石アーム130は被動歯車126によって回転される。マグネトロン42およびその釣合いおもり132が、磁石アーム130の両端部に固定される。歯車箱120は内側アームとして働き、磁石アーム130は外側アームとして働き、磁石アーム130は、太陽歯車124および被動歯車126と共に、遊星歯車機構として働く。
【0018】
2本の別々に制御される回転シャフト28、30により、マグネトロン42をほぼ任意のパターンで走査することが可能になる。しかし、この幅広い制御には、2つのモータ32、36が互いに密に制御されることが必要である。すなわち、多くのより複雑な走査パターンの場合、一方のモータの回転を、他方のモータの回転と密に同期させなければならない。回転シャフト28、30のタイミングに隔たりができ始めた場合、例えば、リブドベルト108、110の一方がスリップした場合、走査パターンが急速に劣化する。
【0019】
2本の回転シャフト28、30の独立制御に関する更なる問題は、それらの相対的な回転位相を確立し、維持する必要があることである。Millerの設計に従うと、図4の平面図に示すように、上部リザーバ壁部118は、アクチュエータフランジ102が周りにシールされ、また回転シャフト28、30をリザーバ114内に入れる中心開口134を含む。上部リザーバ壁部118は、中心軸14からオフセットされた、歯車箱センサ用の第1のセンサ開口136、および中心軸14から異なる半径でオフセットされた、磁石アームセンサ用の第2の開口138も含む。この設計では、センサ開口136、138が、中心軸14に関して異なる2つの半径で15°離れて配置される。センサ開口136、138に挿入されるセンサは、2本の遊星アームの回転状態を確立し、次いで監視するための帰着機能を可能にする。センサは、歯車箱120および磁石アーム130に対してそれぞれ角度が固定されている釣合いおもり122および132の上面上にそれぞれ取り付けられた、図3に示す反射体140、142を光学的に感知する。
【0020】
2本のアームが帰着した後は、それらの回転のタイミングまたは相対位相を維持する必要がある。同期性を高めるための一実施形態では、図1に示すコンピュータベースのモーションコントローラ150が、システムコントローラ88と回転シャフト28、30を駆動するモータ32、36との間に挿入される。例えば、DeviceNet(Dnet)通信リンク152が、システムコントローラ88からモーションコントローラ150にコマンドを送出する。Dnet通信システムは、高い信頼性および堅牢性を実証する、公知の産業用コンピュータ制御システムである。モーションコントローラ150は、2つのモータ駆動部154、156を、例えば、マスタ/スレーブ同期モードにて、ストリングサイズが17または32バイトかつサイクルタイムが8ms以下の場合に4Mbps以上のボーレートで動作する2線バスを含む公知のMechatrolink制御プロトコルをベースとした通信リンク158を通じて制御する。更なる詳細は、ウェブサイトwww.mechatrolink.orgから入手することができる。したがって、Mechatrolinkプロトコルに従って動作するモーションコントローラは、システムコントローラ118のポーリングよりもずっと高速に、そのポーリングよりも規則正しく動作することができる。一般に、モーションコントローラ150は、別々のモーション制御信号セットを2つのモータ駆動部154、156に送出し、2つのモータ32、36にそれぞれ必要とされるモーションを示す。モータ駆動部154、156はそれぞれ、2つのモータ32、36を、モータ32、36の回転間に必要な位相を用いて駆動する。
【0021】
システムコントローラ88は、その制御下にあるさまざまな要素を、現在の制御設定をそれぞれの要素に送出することによって順次ポーリングする。ポーリング周期は、1秒またはそれよりいくらか短い程度であり、これは、2つのモータ駆動部154、156を直接Dnet制御するには満足のいくものではない。その代わりに、モーションコントローラ150が現在のDnet制御設定を受領し、その設定を解釈し、それに応じてモータ駆動部154、156の迅速でほぼ連続した制御を実施する。
【0022】
図5の概略図に、モータ制御回路160がより詳細に示されている。Yaskawa MP2300とすることができるモーションコントローラ150が、24VDC電源によって給電され、Dnet通信リンク152を通じてシステムコントローラ58と通信する。それぞれYaskawa SGDS−08A12Aとすることができる各モータ駆動部154、156が、Mechatrolink通信リンク158を通じてモーションコントローラ150と通信する。各モータ駆動部154、156は、モータ32、36に必要な208VAC電源から給電され、センサに必要な24VDC電源からも給電される。磁石アーム130用のモータ駆動部154は、この実施形態ではサーボモータである関連するモータ32を、駆動ライン162を通じて駆動し、サーボモータ32のエンコーダからフィードバックライン164を通じてフィードバック信号を受領する。磁石アーム130用のモータ32を、ソフトウェアの説明の中ではM2モータと呼ぶ。アームモータ駆動部154は、センサ166から検出ライン168を通じて検出信号も受領する。センサ166は、Omron E3T−SR21などの光センサとすることができ、これは、磁石アーム130の位置を確立するために、光ビームを放出し、また磁石アーム130に関連付けられた反射体142から反射ビームを受領する。同様に、歯車箱120用のモータ駆動部156も、やはりサーボモータである関連するモータ36を駆動ライン170を通じて駆動し、サーボモータ36のエンコーダからフィードバックライン172を通じてフィードバック信号を受領する。歯車箱120用のモータ36をM1と呼ぶ。歯車箱モータ駆動部156は、歯車箱120の角度位置を確立するために、検出ライン176を通じて先に説明した光センサなどのセンサ174から、歯車箱120に関連付けられた反射体140からの検出反射ビームも受領する。
【0023】
図5の制御回路160を通じて走査経路を制御する1つのモードに、各モータ32、36に、関連するアーム同士がそれらの間に所望の位相を伴って配置された後で、それぞれの回転速度で回転するように命令することがある。例えば、歯車箱モータ36が設定された回転速度で回転する間にアームモータ32が静止しているように命令された場合、結果として得られる走査経路は、先に説明した、固定の太陽歯車を備えたPMR走査システムの走査経路である。別の例では、アームモータ32および歯車箱モータ36が同じ速度で同じ方向に回転するように命令された場合、マグネトロンは、2本のアーム間の初期位相によって半径が決まる、ターゲット中心14を中心とした円経路をたどる。
【0024】
これらの単純なパターンはどちらも、中間のモーションコントローラ150を用いて容易に達成することができる。しかし、Dnetコントローラ58の比較的遅いサイクルタイムが、より複雑な走査パターンに関して困難をもたらす。例えば、図6に示す走査パターン170は、全てが数秒内で実施される、ターゲット周辺部付近でのターゲット中心14を中心とした概して円形の走査と、中心14からオフセットされた2つのより小さないくらか円形の走査とを含む。同様の走査パターンが図7のグラフに表現されており、グラフでは、トレース182が、マグネトロンの中心の度単位での角度位置を時間の関数としてプロットしており、トレース184が、マグネトロンの半径位置を0.1インチ(2.54mm)単位でプロットしている。角度トレース182は、プロファイルの各点を示す。半径トレース182は、連続的に示されているが、対応する各プロファイル点を含む。この複雑な走査パターンには、回転速度が60rpmという典型的な範囲内にある場合に、Dnet通信プロトコルによって与えられる制御よりも密な制御が必要になる。
【0025】
本発明の一実施形態では、システムコントローラ88がモーションコントローラ150をいくらか粗いタイムスケールで周期的にポーリングすると同時に、モーションコントローラ150がモータ駆動部154、156をずっと緊密に、かつすばやく制御する。ポーリングは、モーションコントローラ150に指令すること、およびモーションコントローラ150に関連する要素の状態を判定するために、モーションコントローラ150に問い合わせることを含むことができる。システムコントローラ88からモーションコントローラ150に送出されるコマンドのコマンドフォーマットの一例が、表1に示されている。コマンドは8バイトからなり、それぞれが7ビットである。
【0026】
【表1】

【0027】
0バイトの2つのビットは、コマンドチケットを表す。コマンドチケットは、システムコントローラ88の比較的まれなポーリングと、モータ駆動部154、156のずっとすばやく緊密な制御との間の相違に、ポーリングがごく最近のコマンドを、そのコマンドがすでに実行されているとしても含むことを考慮に入れて対処する。そのコマンドコードは、4つの値00、01、10、11のいずれかをとることができる。00コマンドチケットはNOPであり、すなわち無視すべきである。システムコントローラ88とモーションコントローラ150はどちらも、最近送出されたコマンドのシーケンスを常に把握している。システムコントローラ88は、各ポーリング周期においてコマンドを送出する。コマンドが最終のポーリング周期内と同じである場合、コマンドチケットは同じままである。コマンドが最終のポーリング周期から変化する場合、システムコントローラ88は、コマンドチケットを、3つのアクティブな値01、10、11のうちの新しい値に変更する。コマンドチケット値は、3つの許容値を必ずしも規則正しく繰り返さなければならないとは限らない。すなわち、以前のコマンドチケット11に続くコマンドチケット01または11は、処理すべき新しいコマンドチケットと解釈される。対極的に、モーションコントローラ150が、最終受領コマンドチケットと同じ値のコマンドチケットを有するコマンドを受領すると、そのコマンドはすでに処理されているため基本的に無視される。
【0028】
6ビットのCOMMAND CODEは、モーションコントローラ150に多くの動作のうち1つを実施するように命令するものである。そのうちいくつかを後に説明する。
【0029】
アクティブなENABLEビットは、M1サーボ駆動部とM2サーボ駆動部をどちらもオンにする。ENABLEビットは、部品を交換しているとき、またはハードウェアインターロックが動作上の問題を示しているときなど、駆動係合が望ましくないときはいつでも非アクティブにすべきである。アクティブなHARD STOPビットはEMO、すなわち、可能な限りすばやい停止動作を行う。モータはその最大減速度で停止する。HARD STOPは、ENABLEをオーバーライドする。
【0030】
コマンドは、4バイトのコマンドデータを含み、そのフォーマットはコマンドによって変わる。コマンドプロトコル内には、プロトコルの更なる開発のために用意されている2バイトの予備フォーマッティングがある。
【0031】
初期の例示的なコマンドコードセットが、表2に示されている。コマンドコードは6ビットで定義されるが、一覧表にした16個のコマンドコードは16進数で番号付けしてあり、4ビットしか必要としない。
【0032】
【表2】

【0033】
「0」コマンドコードから「9」コマンドコードは、行うべきアクションを命令し、「A」コマンドコードから「F」コマンドコードは、パラメータを設定し、または情報を取得する。
【0034】
「0」コマンドコードはNOPを示し、すなわち無視すべきであることを示す。
【0035】
「1」コマンドコードは、両モータ32、36の、したがって磁石アームと歯車箱の角度位置に関する初期状態を、センサ166、174、およびそれらの関連する反射体142、140を用いて確立するためのHOMEコマンドを示す。このコマンドは、連続生産作業の前に発行することができる。帰着プロシージャの説明のための一例が、図8の概略平面図において3時の位置に示されており、この場合、内側アーム190がターゲット組立体18の中心軸14の周りで回転し、外側アーム192が、内側アーム190の遠位端部付近の旋回軸194の周りで回転し、外側アーム192の遠位端部付近で図示していないマグネトロンを支持する。内側アーム190は、歯車箱120に対応し、外側アーム192は、磁石プレート130に対応し、旋回軸194は、被動歯車126のシャフトの軸に対応する。センサ166、174が、回転可能アーム190、192の上方に配置される。内側センサ174は、外側回転シャフト30のあらゆる回転についてトリガする。その目的は、アーム190、192の位置が不明であっても、そのそれぞれのセンサ174、166の下にそれらのアームを配置して、それらの位置を初期化することである。外側センサ166は、2本のアーム190、192が一直線に並んでいるときだけであるが、内側回転シャフト28のあらゆる回転についてトリガする。この図は、ホームポジションにあるアーム190、192が外側アーム192が最大に開いて平行になっている、図中のホームポジションが、センサ166、174が単一の半径に沿って配置されないという図2〜4の遊星歯車機構の複雑さを含んでいないこと、またアーム190、192に関連付けられる反射体140、142が、例えば、遊星歯車システムを形成するアーム170、172とは中心軸14をはさんで反対側にある釣合いおもり上で、別々の角度位置にあってよいことを想定している。例えば、これは、内側アーム190が初期化された後に、外側アーム192の初期化を可能にするために内側アーム190が165°回転されることを意味する。
【0036】
帰着プロシージャはまず、モーションコントローラ150が歯車箱モータ36に、内側センサ174がその下にある位置を指示するまで内側アーム190を回転させるように命令することから始まる。センサ検出は遅いことがあり、したがってプロシージャは、後に内側アーム190を内側ホームポジションが確立されるまで内側センサ174の位置を横切って前後に移動させることによって、内側ホームポジションを捜す必要がある。次いで、内側アームがそのホームポジションにパークした状態で、モーションコントローラがアームモータ32に、外側センサ166がその下にある位置を指示するまで外側アーム192を回転させるように命令する。この場合もやはり、外側ホームポジションを捜すことが必要になる場合がある。この結果が、2本のアーム190、192の図示のホームポジションであり、あらゆる後続の移動がこのホームポジションから参照される。
【0037】
「2」コマンドコードはROTATEコマンドを示し、これは、2つのモータ32、36に同じ速度で同じ方向に回転するように命令するものである。遊星歯車システムでは、等しい回転は、2本のアーム190、192が平行に回転し、したがって、図8の12時の位置に示すように、2本のアーム190、192が一直線に並んだままであることを意味する。アーム190、192が位相ずれしている、すなわち一直線に並んでいない間にROTATEコマンドが発行された場合、後続の同期回転が、後続の回転中にアーム190と192の間の位相を維持する。
【0038】
「3」コマンドコードはSTOPコマンドを示し、これは、モータ32、36が実際に動いている場合にそれらの回転を停止させるものである。
【0039】
「4」コマンドコードはMOVE M2コマンドを示し、これは、モータ32に外側アーム130を、歯車箱120の角度位置に対してコマンドのデータフィールド内で指定された位相角まで移動させるものである。例えば、両アームが図7の12時の位置に配置された後に、外側アーム182が逆行運動で内側アーム190に対して新しい角度位置に移動するようにMOVE M2コマンドが発行された場合、結果として生じる位置決めが9時の位置に示されており、この場合、外側アーム192はその時点で内側アーム190に垂直であり、外側アーム192の遠位に支持されたマグネトロンが、ターゲット組立体18の周辺部の十分内側にある。
【0040】
「5」コマンドコードはPROFILEコマンドを示し、これは、複雑な走査パターンを、比較的遅いシステムコントローラ88を用いて制御することを大幅に容易にするものである。図6の走査パターン170は、隣接するプロファイル点192同士の間で接続されたいくつかの区画190に分解することができる。PROFILEコマンドは本質的に、モーションコントローラ150が、プロファイル点192に基づいて、ローカルに格納されたプロファイルパターンに照会して、マグネトロンを所望のプロファイル170に沿って走査させるようにモータ32、36に命令することを可能にする。
【0041】
モーションコントローラ150内には複数のプロファイルを予めロードしておくことができる。データコマンド内の2バイトのコマンドデータを使用して、格納済みプロファイルのうちどれを使用すべきかを選択することができる。もう2バイトのコマンドデータを使用して、プロファイルの合計実行時間を例えばミリ秒単位で表すプロファイル係数を指示することができる。
【0042】
プロファイルは、モーションコントローラ150のメモリ内にさまざまな形で格納することができる。しかし、表3に示す、図6および7の走査パターンに類似した走査パターンに関する都合の良い1つのフォーマットの場合、1番目の入力を除き、例えば秒単位で列挙された時間と内側アーム190に対する外側アーム182の位相角とが対になった一連の値を含む。他の走査パターンもモーションコントローラ150内に格納される。
【0043】
【表3】

【0044】
表中の1番目の入力は、表中に続く位置データの番号を示す。表の残りの部分では、1番目の列が、例えば秒単位の時間を示し、合計経過時間が1sであり、入力間の一定の時間差が2.5msであり、2番目の列が、外側アームと内側アームの間の、例えばミリ度の単位の位相角を示す。この表は、より長い走査時間、例えば典型的な4sに合わせて拡張することができる。示したパターンは、まず、ターゲットの周辺部付近で概して円形のパターンで走査するようにマグネトロンを制御してから、別の外側の円形走査で終わるより複雑なパターンに変わる。
【0045】
モーションコントローラ150は、PROFILEコマンドのデータフィールド内に含まれるプロファイル係数に従って、格納済みの軌道の1秒周期を正規化する。PROFILEコマンドが外側アーム182の回転の基準とする内側アーム190の回転速度は、前述のROTATEコマンドによって設定することができる。モーションコントローラ150は、プロファイル表から計算を実施して、マグネトロンをプロファイル表内の以前の位置から次の位置に移動させるためにはどの速度で外側アーム182用のモータを回転させる必要があるかを求めることができる。ROTATEコマンドによって設定される回転速度により、PROFILEコマンドによって設定される走査パターンの時間長が決まる。選択されたプロファイル上にある2つ以上の隣接する点同士の間のより複雑な経路を計算することができる。大幅に異なる複数のプロファイルを、システムコントローラ88によって選択されるように、モーションコントローラ150内に予めロードしておくことができる。
【0046】
格納済みプロファイルに従ってマグネトロンを走査するための1つのプロセスが、図9の流れ図に示されている。ステップ200では、HOMEコマンドが両モータおよびその関連するアームを、それらのホームポジションに帰着させる。ホームポジションが両アームの最大の開きに対応している必要はなく、それらの位置が既知でありさえすればよい。ステップ202では、ROTATEコマンドが、両モータ、したがって遊星歯車機構の場合にそれらのアームを同じ速度、例えば60Hzで回転させ、したがって、中心軸の周りでマグネトロンの円形走査を生じさせる。ステップ204では、MOVE M2コマンドが外側アームに、例えばターゲット周辺部のチャンバ壁部付近の、プラズマの点火を促進する位置にマグネトロンを移動させるように命令する。システムコントローラ118がプラズマを点火させ、ターゲット電力を、スパッタリングを開始するのに所望のレベルに変更した後、ステップ206において、MOVE M2コマンドが外側アームに、初期位置に移動するように命令する。ステップ208では、PROFILEコマンドが、指定された走査経路に従って指定された時間長の間、マグネトロンの移動を命令する。PROFILEステップ208の完了時に、スパッタリングが停止して、制御がROTATEステップ202に戻るように、システムコントローラ118がプラズマを消火させる。この期間中、プロファイルに従って処理されたウェーハがチャンバから取り除かれ、新しいウェーハと取り替えられる。一般に、マグネトロンがプロファイルの終了時にプロファイルの開始時と同じ半径位置、すなわち、プロファイル表の2番目の列内で指定されたのと同じアーム間の位相に戻される場合、スパッタリングの不均一性が改善される。
【0047】
開始方位角がランダムになるように、例えば図6または7の走査パターンは、その基準をターゲット組立体18上の設定された角度位置にするのではなく、PROFILEコマンドによってトリガされることが望ましい。図7のトレース182、184の基準とすることができるのは、ゼロに等しい時間での初期角度位置、およびその時間において生じる実際の角度からの変化である。典型的には、ウェーハの処理中の方位角は、適切な平均化が達成されている限りは重要ではないが、例えば図示のトラックのエリアがウェーハごとに繰り返される場合にそのエリア間の局所的な過度のスパッタリングを防止するために、ターゲットスパッタリングが方位角の面から平均化されることが望ましい。
【0048】
「6」コマンドコードはCONFIRM HOMEを示し、これは、HOMEコマンドにいくらか類似しているが、ベルトの滑りまたは他の理由のためにモータ間で同期が喪失していないことを判定するために、オンザフライで、すなわち両アームが動作速度で回転している間に実施される。オンザフライでの動作は帰着動作よりもすばやく、例えばHOMEコマンドの場合の1分に対して2秒または3秒であり、元の帰着位置の喪失に関する問題があるかどうかも指示する。
【0049】
CONFIRM HOMEコマンドの動作は、モータおよびアームがROTATEコマンドに従って同期して回転していることを想定したものである。M2モータ32が、磁石アーム130を、その反射体142が関連するセンサ166の下を通過するはずの位置に移動させるように命令される。磁石アームセンサ166は、以前の帰着動作に基づいて、回転位置の数度の回転につき1回トリガされるはずである。トリガされれば、以前のHOMEコマンドにおいて較正された状態が有効である。トリガされなければ、警報が出され、障害解決が必要になる。磁石アームセンサ166は、1回転に1回同じようにトリガされるはずである。トリガされなければ、警報が出され、モータ駆動部154、156を再帰着させるためにHOMEコマンドが発行される。2回の連続する回転について帰着が確認された場合、磁石アーム130はその元の位置に戻され、別様に命令されるまで回転が継続する。
【0050】
「7」コマンドコードはSPIN M2コマンドを示し、これは、磁石アーム130が歯車箱120とは異なる速度で、さらには歯車箱120とは異なる方向に回転する、すなわち非同期に回転することを可能にするものである。その4バイトのデータが、磁石アーム130用のM2モータ32の速度を指定する。速度データは符号付きであり、負の値が歯車箱120に対する逆回転または逆行回転を示す。
【0051】
「8」コマンドコードはSTOP SPIN M2コマンドを示し、これは、SPIN M2コマンドから生じる磁石アーム130の非同期スピンを停止させるものである。その代わりに、M2モータ32は、磁石アーム13を歯車箱120と同期して、すなわち、以前に発行された任意のROTATEコマンドに従って回転させ、または少なくとも配置するように命令される。この2つのモーション間の位相は、STOP SPIN M2コマンド内に含まれる角度データによって指示される。
【0052】
「9」コマンドコードはMOVE M1コマンドを示し、これは、M1モータ36に、MOVE M1コマンドのデータによって指示される位置に歯車箱を回転または移動させるように命令するものである。これは静的な動作である。他方のM2モータ36の状態は関係ない。
【0053】
「A」コマンドコードはCLEAR ALARMコードを示し、これは、モーションコントローラ150に、以前に発行された任意の警報フラグを解除させ、正常動作に戻るように命令するものである。
【0054】
「B」コマンドコードはSET ROTATION ACCELを示し、これは、その含まれるデータに従って両モータのROTATION加速度を設定するものである。このコマンドは、任意のROTATIONコマンドが送出される前に送出すべきであり、その後は有効に存続する。
【0055】
「C」コマンドコードおよび「D」コマンドコードはそれぞれ、SET MOVE M2 ACCELコマンドおよびSET MOVE M2コマンドを示し、これらは、磁石アーム130をMOVE M2コマンド内で指定された位置に移動させる際にMOVE M2コマンド内で利用される加速度および速度を設定するものである。
【0056】
同様に、「E」コマンドコードはSET SPIN M2を示し、これは、磁石アーム130の非同期スピン速度を命令するSPIN M2コマンド内で使用される加速度を設定するものである。
【0057】
「F」コマンドコードはGETコマンドを示し、このコマンドでは、システムコントローラ88がモーションコントローラ150に、GETコマンドのデータフィールド内で指定された1つのデータの値について問い合わせる。データは、モーションコントローラ150の識別、警報状態、またはモータに課せられている制御パラメータの現在の値とすることができる。
【0058】
モーションコントローラ150は、複雑な走査パターンおよびサーボモータの迅速な制御を可能にするにもかかわらず、サーボモータが指定された速度で比較的長い期間回転するように命令され、それをシステムコントローラ88だけで対処することのできる、従来の走査を実施できるようにもする。
【0059】
Dnet通信リンク152は、モーションコントローラ150が命令を受領するだけでなく、システムコントローラ88への応答を送出もするように、双方向である。指令されたアクションが完了したこと、または場合によっては、指令されたアクションがフェイルしたことをシステムコントローラ88に知らせるために、応答はコマンドが受領された後で自動的に戻すことができ、また付随するデータが所望の動作パラメータを確定することができる。特に、CONFIRM HOMEコマンドが応答を待つことになる。応答は、警報障害フラグを含むことができる。応答は、要求されたデータがシステムコントローラ88に戻されるGETコマンドに続いてよい。
【0060】
応答フォーマットは、表1のコマンドフォーマットに類似しているが、いくつかの応答タイプでは、システムコントローラ88に送出される2つ以上のデータを収容するために、より長くてよい。応答は、有利には、先に説明したコマンドチケットを含む。
【0061】
本発明は、ほぼ任意の走査パターンを達成するために2つ以上のモータを、特にそれらのモータが非同期に動作する必要がある場合に、別々に制御する必要のある他のタイプの走査機構に適用することができる。モータは、サーボモータ以外のタイプとすることができる。通信リンクは、説明したタイプに限定されないが、本発明は、モータへの通信リンクがホストコントローラへのリンクよりも大幅に高速に動作する場合、大きな利点をもたらす。
【0062】
したがって本発明は、システムコントローラの大幅なアップグレードなしで、またはその修正さえせずに、マグネトロンを複雑なパターンで走査できるようにする。本発明は、システムのスループットに影響を及ぼさずにモータマグネトロンの帰着状態を確認するための効率的なプロシージャも提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の周りでのマグネトロンの方位角移動および半径移動を可能にする走査機構を有するスパッタリングチャンバ内で前記マグネトロンの移動を制御するための制御機構であって、
前記走査機構に機械的に結合された2つのモータと、
ポーリング通信リンクを通じてシステムコントローラに接続され、前記マグネトロンの走査経路に関するコマンドを受領し、前記2つのモータの回転速度、およびそれらの間の回転位相を別々に制御するモーションコントローラと
を備える制御機構。
【請求項2】
前記モーションコントローラと前記2つのモータのうちそれぞれのモータとの間に接続された2つの駆動回路をさらに備える、請求項1に記載の制御機構。
【請求項3】
前記2つのモータがサーボモータであり、前記駆動回路が、前記それぞれのモータからエンコーダ信号を受領する、請求項2に記載の制御機構。
【請求項4】
前記モーションコントローラが、前記走査経路の複数の走査プロファイルが記録されたメモリを含み、
前記システムコントローラから送出されるプロファイルコマンドが、走査プロファイルを選択し、
前記モーションコントローラが、前記回転速度および回転位相を、前記選択された走査プロファイルに従って制御する
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の制御機構。
【請求項5】
前記走査プロファイルが、時間と前記回転位相の複数の対を含む、請求項4に記載の制御機構。
【請求項6】
前記コマンドがコマンドチケットを含み、前記モーションコントローラが、第1のコマンド内で受領した前記コマンドチケットの第1の値を格納し、直後のコマンドを、そのコマンドチケットの値が、前記第1の値以外の許容値である場合にだけ実行する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の制御機構。
【請求項7】
中心軸の周りで回転可能な第1のアームと、
前記第1のアーム上の、前記中心軸からオフセットされた旋回軸の周りで回転可能であり、前記旋回軸からオフセットされた場所で前記マグネトロンを支持する第2のアームと、
前記2本のアームの存在をそれぞれが検出する、配設された2つのセンサと
をさらに備え、
前記コマンドが動的帰着コマンドを含み、
前記モーションコントローラが、前記動的帰着コマンドに応答して、前記アームが動いている間の前記2つのセンサからの信号を処理して、前記アームが所定の時間に所定の位置にあるかどうかを判定する
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の制御機構。
【請求項8】
前記センサ同士が、前記中心軸から異なる2つの半径で配設される、請求項7に記載の制御機構。
【請求項9】
前記センサが、それぞれが光ビームを放出し、光を検出する光センサであり、前記制御機構が、前記第1および第2のアーム上に配設された反射体をさらに備える、請求項8に記載の制御機構。
【請求項10】
プラズマスパッタチャンバ内でターゲットに隣接して回転するマグネトロン用の2軸走査機構を制御する方法であって、
複数のコマンドをモーションコントローラに周期的に送出するステップと、
前記モーションコントローラ内でそれらのコマンドを解釈して、前記走査機構に結合された2つのモータに駆動信号を送出し、それによって、前記ターゲットに隣接して前記マグネトロンの走査経路を実行するステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記モーションコントローラ内に複数の走査プロファイルを格納するステップをさらに含み、
前記複数のコマンドの1つが、前記走査プロファイルの1つを選択するプロファイルコマンドであり、前記モーションコントローラが、前記選択された走査プロファイルに対応する前記走査経路を前記走査機構に実行させる前記駆動信号を送出する
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各コマンドが、複数の動作値の1つを有するコマンドチケットを含み、前記モーションコントローラが前記コマンドを、そのコマンドチケットが直前に送出されたコマンドの動作値とは異なる動作値を有する場合にだけ解釈する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数のコマンドの1つが動的帰着コマンドであり、
前記動的帰着コマンドが送出されたとき、前記モーションコントローラが、前記走査機構の2つの部分の位置を感知する2つのセンサに問い合わせて、前記部分が予め選択された時間に予め選択された位置にあるかどうかを判定すること
をさらに含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記部分が前記予め選択された時間に前記予め選択された位置にない場合、前記走査機構を再帰着させる、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−505496(P2011−505496A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535990(P2010−535990)
【出願日】平成20年11月24日(2008.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/013072
【国際公開番号】WO2009/070265
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】