説明

回転体の角速度から回転体の性能や特性を判定する装置

【課題】角速度から1回転中の回転角に依存する特性を評価可能とする装置の提供。
【解決手段】回転体の回転軸に1回転360パルス以上のパルスを発生するロータリー・エンコーダを装着する。回転軸の角速度信号を得る。角速度の変化特性を求める。角速度の変化からエンジン、電動モータ等回転体の総合性能(回転角速度の平滑化具合)、個別性能(コンプレッション、燃料噴射タイミング、偏加重、電極の性能)を観察する。
【効果】回転体の性能を簡素化できる。分解、圧力計等の特別な測定器が不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンやモータ等の回転体の性能検査における新しい方法に関するものである。
エンジンの場合はシリンダーの関係に属する検査技術。モータの場合は電極の関係に属する検査技術が主たるものである。いずれも回転の発生動力に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来エンジンのシリンダー圧測定の方法は、各シリンダーに圧力センサーを挿入して測定していた。この方法ではエンジンを燃料で起爆駆動させる事が不可能で、尚且つセルモータによるシリンダー圧測定は煩雑な作業を要し困難を極めていた。
モータ等の場合は偏加重や回転異常の測定は異音や振動による人手の感触に依存しており、測定器による測定では特殊な計測器を要した。
【0003】
この改善策として、エンジンの回転軸にロータリー・エンコーダーを装着し、角速
度を測定し、そのデータから圧換算することでシリンダーのコンプレッション(圧)を測定することが可能となった。特にエンジンが駆動している場合はシリンダーに圧力計を挿入することが不可能で測定が出来なかったが本発明により可能となった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は回転体の性能は、角速度が一定であることが理想である点に着目して発明された角速度測定装置である。回転体の測定として従来は特殊技術を要したり、人による聴音診断や手の感触による触診診断により判断されていたが当発明によりこれらが解決される。角速度から1回転中の回転角に依存する特性を評価可能とする装置の発明である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、回転体の回転軸に1回転360パルス以上のパルスを発生するロータリー・エンコーダーを装着して角速度を測定する装置を考案した。
当発明を使用して角速度の特性から、回転物の総合性能や個別性能を観察することが
可能となった。即ち、例えばエンジンの場合の総合性能とは以下を言う。
総合性能回転においての角速度の平滑化具合(気筒数等)個別性能のすべてを含有した特性個別性能例としてはコンプレッション、燃料噴射タイミング、回転物の偏加重の程度、例えば電動モータ等の回転物では総合性能として回転においての角速度の平滑化具合(電極数等)個別性能のすべてを含有した特性は電極の性能や欠陥、回転物の偏加重の程度。
従前の回転物の評価基準では毎分の回転数、トルク等を重視し、1回転内の回転特性は重要視されずにいた。しかしながら、昨今CDやDVD ハードディスク等の精密な回転性能を要求される回転物には正確な等速角速度の基準化、規格化を要求したい。
【発明の効果】
【0006】
原理からも推測できる様に、エンジンのコンプレッション測定にあたりエンジンの分解や特別な測定器を必要とせず、極めて簡単に測定が可能である。特にシリンダーに圧力計の挿入が不要で実車状態で測定が可能である。(シリンダーに圧力計を挿入すればエンジンは駆動不可能である)また最近のジーゼルエンジンではシリンダーに圧力計の挿入すら不可能なエンジンがあり、コンプレッションの測定すら不可能な状況にある。
コンプレッション不足のエンジンは燃料の不完全燃焼の一因となり、また動力不足を招き環境問題に大きな影響を与える。以上の問題点を当発明は解決する。
環境問題に対するジーゼルエンジン等の影響から、エンジンの性能試験やその、評価
が問題視されてきている。特に実車試験は重要なテーマである。この発明により設備の整わない整備工場やリサイクル用エンジンの流通過程において大きな効果が期待できる。
また、一般の回転体(電動モータや発電機)の性能試験にも有効である。
パソコンの使用ではCDやDVDドライブ、ハードディスクのモータ性能試験にも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明の原理形態を図1から図5に示し、ジーゼルエンジンの実施例の形態を述べる。
図1において、A〜Fの時間間隔幅(周期)はエンジン回転数により決定される。
図2と図3はその角速度を表したものである。
図2はシリンダーの欠陥は無くバランスのとれた回転(トルク)を有している。
図3は等角速度に無く、コンプレッションの欠陥が観察される。
【実施例1】
【0008】
構造的構成を図4に示す。
回転しているエンジンの軸中心に回転計(1度につき1パルス出力)を装着して、その出力を演算装置に入力する。同時にパルス発生器からの1MHz周波数のパルスを同様
に入力する。演算はロータリー・エンコーダからのパルス間隔の時間を計測して角速度とする。
ロータリー・エンコーダーから得られたデータの処理を図5に示す。
図5においてT1からT7まではエンジンの回転角1度ごとの回転する時間を示す。
この時間幅を実際のエンジンで測定したデータをグラフ化したものが図6から図16までである。
V型エンジンでは図12から図16迄である。
V型エンジンは直列型と異なりほぼ同時期にシリンダー2基が同時爆発する為に2基のシリンダーのコンプレッションが加算された値でグラフ化される。
ここでは2基のシリンダーが同時に同じ働きをするので、シリンダー番号ではなく、そのペアーシリンダーを1ユニットとする表現を採用した。
実際の測定データ図6では6気筒エンジンの全シリンダーが正常な場合の特性グラフである。波型波形(函数波形)の最大値(山)がコンプレッション値である。
若干の凸凹が観察されるが、比較的各シルンダーのコンプレッションの値に大差は観察されない。1つの山が1つのシリンダーに対応しいて、山の序列順序はエンジンの起爆序列順番である。
図7では6番目シリンダーの密閉度を故意にゼロにした時の測定データである。
6番目毎にあるべき山が見受けられない。このシリンダーのコンプレッション値はゼロとグラフから判断可能である。
図8は同じエンジンの6気筒目のシリンダーの密閉状態を半分にして測定したデータである。コンプレッション値は半減しているのが顕著に窺える。
図9は同じエンジンの6気筒目のシリンダーの密閉状態を1/4にして測定したデータである。コンプレッション値は1/4に低減しているのが窺える。
図10は同じエンジンの奇数気筒目のシリンダーの密閉状態を全開放にして測定したデータである。コンプレッション値がゼロの状態で有る事が確認できた。
図11はv型エンジン12気筒の測定データである。
シリンダーは全密閉状態である。
図12はNo1シリンダーのみ密閉状態を開放し他のシリンダーは正常とした場合の測定されたデータである。コンプレッション値は完全にゼロとしていない。
これはV型エンジンはほぼ同時に2つのシリンダーが上死点(起爆位置)にあるためで、
ペアーとされたシリンダーの1方のコンプレッションが作用しているためである。
図13は同様に12番目のシリンダーの開放を追加してみた。
同様の現象が窺える。
図14は2番目と4番目のシリンダーを追加開放した時のデータである。
1番目と4番目のシリンダーはペアーとしているのでコンプレッションは完全にゼロとなっている。
図15では7番目のシリンダーを開放した。
図16では12番目と7番目 1番目と4番目 2番目と5番目のシリンダーを開放した時のコンプレッション測定データである。
ペアーとされたシリンダーの同時は開放で完全にコンプレッション値はゼロである。
【実施例2】
【0009】
パソコンに搭載されるハードディスク、DVD,CD用モータの回転性能は大変重要なテーマである。また動力用モータ等の回転体の性能も同様と考えられる。
これらの回転体の品質向上にも角速度測定器を使用することにより、より高性能なデータの読み取りが可能となり信頼性の高いモータの生産が可能となる。
従前のモータ性能の要素として定格回転数等の表記があったが、回転物の所有する物理的特性による1回転中の速度変化や偏加重によるブレ回転に対する性能表記は無く、高品質モータには是非とも要求したいパラメータである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】はジーゼルエンジンの整備マニュアルから引用したTDC信号の図解説明図で、エンジンの回転による各信号を表したものである。
【図2】はそのTDC信号が正常である場合(シリンダーに欠陥が無い)の角速度を表している。
【図3】は欠陥のあるシリンダーを持ったエンジンの角速度を表してある。
【図4】は当装置の構成図である。
【図5】はそのデータ処理の説明図である。
【図6】外部に装着したロータリー・エンコーダーで測定したL型ーゼルエンジンのコンプレッションデータである。
【図7】図6と同じ
【図8】図6と同じ
【図9】図6と同じ
【図10】図6と同じ
【図11】図6と同じ
【図12】外部に装着したローターリー・エンコーダーで測定したV型ジーゼルエンジンのコンプレッションデータである。
【図13】図12と同じ
【図14】図12と同じ
【図15】図12と同じ
【図16】図12と同じ
【図17】図12と同じ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の角速度を測定して、得られた測定値から回転体の総合性能や個別性能を判定する装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2007−198766(P2007−198766A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14579(P2006−14579)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(305001641)株式会社 ハーベスト (2)
【出願人】(506025947)株式会社大洋商会 (2)
【Fターム(参考)】