説明

回転型セレクター、および回転型セレクターの制御方法

【課題】従来の回転型セレクターは複雑な操作ができないという課題や、あるいは複雑な操作を可能とするため回転量の違いで操作内容を切替える場合、「回転量(人間の操作行動)の違い」と「操作内容(機械の動作)の違い」とが直感的に結びつき難く、ヒューマンインターフェースの観点からはあまり好ましい態様ではない、という課題がある。
【解決手段】上記課題解決のため、本発明は、まず回転操作のために回転型セレクターに触れた位置を検知し、その検知位置に応じて操作内容を切替える機能を有する回転型セレクターを提供する。具体的には、円盤状の回転型セレクターであって、指を置く位置を検知する指位置検知部と、指による回転を検知する回転検知部と、検知結果に応じて信号を生成する信号生成部と、を有する回転型セレクターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転型セレクターによる効率的な操作入力を実現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械と人間とを有機的に結びつけるための操作入力系(ヒューマンインターフェース)に関する研究が盛んに行われ、その成果物が様々提供、実装されている。特に、ヒューマンインターフェースでは直感的な操作が可能であること、すなわち人間の操作行動から機械の動作が想起されやすいこと、などが重要視されており、例えばジョグダイアルやタッチホイールなど、回転量によってその機械動作量などを制御する「回転型セレクター」は、そのような直感的な操作が可能な操作機構の中でも代表的なものである。
【0003】
しかし、回転型セレクターは基本的には順方向回転、又は逆方向回転の操作しかできないため、複雑な操作が困難であった。そのため、例えば音楽プレーヤーにおいて回転型セレクターで可能な操作は「早送り/巻戻し」(+回転量に応じた送りスピード制御など)のみ、あるいはボリューム量調整のみなどであって、例えば再生操作については別途再生ボタンを設けることで対応している。あるいは特許文献1では、回転型セレクターに押込みスイッチを組み込むことで、押込み状態での回転操作と非押込み状態での回転操作とでその操作内容を切替える技術が提供されている。また、特許文献2では、「少ない回転量では再生」、「多い回転量では早送り」「さらに多い回転量で巻戻し」といった具合に回転型セレクターの回転量の違いに応じてその操作内容を切替えることで、一の回転型セレクターで複数の操作を可能とする技術が提供されている。
【特許文献1】特開2000−194492号公報
【特許文献2】特開2006−323820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の技術には以下のような課題がある。すなわち、回転型セレクターに加えて別途再生ボタンなどを設ける技術では、例えば携帯端末などの小型機器においては操作系を含めた機器全体でのハードウェア配置効率が低下し、操作系以外の機能を圧迫するなどの事態が想定される。
【0005】
また、例えば特許文献1の技術では、押込み状態と非押込み状態の二通りしか区別できないため多くの機能の制御ができない。また、例えば特許文献2のように回転量の違いで操作内容を切替える場合、「回転量(人間の操作行動)の違い」と「操作内容(機械の動作)の違い」とが直感的に結びつき難く、前述のヒューマンインターフェースの観点からはあまり好ましい態様ではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明は、まず回転操作のためにユーザーの指が回転型セレクターに触れた位置を検知することを特徴とする。そしてその検知位置に応じて操作内容を切替える機能を有する回転型セレクターを提供する。具体的には、円盤状の回転型セレクターであって、指を置く位置を検知する指位置検知部と、指による回転を検知する回転検知部と、検知結果に応じて信号を生成する信号生成部と、を有する回転型セレクターである。
【0007】
また、このような構成を有する回転型セレクターにおいて、さらに回転検知部が、円盤体であり、指位置検知部が、円盤体の回転検知部の周囲に配置されたリング状のタッチセンサである回転型セレクターも提供する。また上記構成において、指位置検知部が、円盤状のタッチセンサであり、回転検知部が、円盤状のタッチセンサの周囲に配置されたリング体である回転型セレクターや、あるいは回転検知部が、リング状であり、指位置検知部が、円盤体に配置されたスポットセンサである回転型セレクターなども提供する。また、このような回転型セレクターの制御方法も提供する。
【発明の効果】
【0008】
以上のような構成をとる本発明によって、一の回転型セレクターにおいて、回転操作のために触れた位置に応じた様々な機能を割当てることができる。したがって別の操作ボタンなどを無駄に増やすことなく様々な操作入力を行うことができる。
【0009】
また、例えば音楽プレーヤーであれば「天頂部(北)に触れてから左右方向へ回転させた場合は、選択カーソルを左右方向に移動」、あるいは「左側部(西)に触れてから上下方向に回転させた場合は音量のアップ/ダウン調節」などの操作入力とすることで、人間の操作行動と機械の動作の方向が一致するという具合に、様々な操作を一の回転型セレクターで可能にしつつ、ヒューマンインターフェースの観点からユーザーにとって操作性の高い操作入力系を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。なお、実施例1は、主に請求項1、5について説明する。また、実施例2は、主に請求項2について説明する。また、実施例3は、主に請求項3について説明する。また、実施例4は、主に請求項4について説明する。
【0011】
≪実施例1≫
<概要>
図1は、本実施例の回転型セレクターを利用した操作の一例を表す概念図である。この図1(a)にあるように、例えば回転型セレクターであるタッチホイールの「天頂部α」に触れてから、ホイール上にて指を左右に回転させる。すると、画面内のカーソルを左右に移動操作させることができる。あるいは、タッチホイールの「右側部β」に触れてから指を上下に回転させる。すると、画面内のカーソルを上下に移動させることができる。
【0012】
また、図1(b)にあるように、タッチホイールの「底部γ」に触れてから、ホイール上にて指を右に回転させる。すると、再生中の音楽や動画を早送りすることができる。また、同じくタッチホイールの「底部γ」に触れてから、今度は指を左に回転させると再生中の音楽や動画を巻戻すことができる。あるいは、タッチホイールの「左側部θ」に触れてから指を上下に回転させると、音量のアップ/ダウン操作をすることができる、という具合である。
【0013】
このように、本実施例の回転型セレクターは、回転操作をするために指が触れた位置に応じて、その操作内容を様々に切替えるよう構成されていることを特徴とする。そして、このような構成をとることで、一の回転型セレクターにて様々な種類の操作を行うことができる。
【0014】
<形状および機能的構成>
図2は、本実施例の回転型セレクターの平面視並びに側面視による形状例を表す図、および機能ブロックの一例を表す図である。この図2(a)にあるように、本実施例の「回転型セレクター」(0200)は、円盤状であることを特徴とする。「回転型セレクター」とは、回転動作の検知によってユーザーからの操作入力を受付ける機構を備える入力デバイスをいい、例えば回転体の回転動作を機械的に検知する「スクロールホイール」や「ジョグダイアル」、タッチセンサによってユーザーの指などによる回転動作を検知する「タッチホイール」、タッチホイールにクリック機構を備える「クリックホイール」などが挙げられる。また、本実施例の回転型セレクターは、ディスプレイ上に仮想的に表示されるソフトウェア入力デバイスであっても良い。
【0015】
また、「円盤状」とは、回転操作を行うに際し、その回転が困難とならなければ真円には限定されず、ドーナツ状や多角形などの形状であっても良い。また、本実施例の回転型セレクターは図2(a)に示す一重の円盤状である形態以外に、その外周にさらに同様の構成を有するリング状回転型セレクターを配置して、二重(あるいは二重以上)の回転型セレクターとして構成しても良い。
【0016】
そして、この円盤状の「回転型セレクター」(0200)は、図2(b)に示すように、「指位置検知部」(0201)と、「回転検知部」(0202)と、「信号生成部」(0203)と、を有する。なお、以下に記載する本回転型セレクターの構成は、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの両方として実現され得る。具体的には、その操作を演算制御するためのCPUや主メモリ、また、制御情報などの送信経路であるバス、不揮発性メモリなどの二次記憶装置、操作入力に利用するためのタッチセンサやジョグダイアルなどの回転体や回転量検出機構などが挙げられる。また、この発明は回転型セレクターとして実現できるのみでなく、回転型セレクターによる操作方法としても実現可能である。また、このような発明の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに、そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるソフトウェア製品、及び同製品を記録媒体に固定した記録媒体も、当然にこの発明の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である)。また、以下の説明では「指位置検知部」(0201)と「回転検知部」(0202)とが同一のタッチセンサ(図2(a)中の0201,0202)などで実現される形態を例に挙げ説明するが、もちろんそれに限定されない。
【0017】
「指位置検知部」(0201)は、指を置く位置を検知する機能を有する。具体的には、例えば図2(a)に示すように、回転型セレクターの外周部に設けられた「タッチセンサ」(0201、0202)などで実現する方法が挙げられる。すなわち、回転型セレクターを操作するために指を置いた位置を示す座標情報などを当該タッチセンサにて検知する、という具合である。そして本実施例では、図3に示すように、回転型セレクター上の検知領域を例えばT〜T12という具合に複数に分割し、指位置検知部にて検知した領域に応じて、以下の構成によってその回転操作の内容を切替えることを特徴とする。
【0018】
なお、このタッチセンサは、感圧型、光学式、あるいは静電式など、どのような形式のタッチセンサであっても良い。また指位置検知部は、操作のための指に該当するものであれば、指以外の例えばスタイラスペンなどが置かれる位置を検知しても構わない。また、この指位置検知部は、重力センサなどによって自身の上下左右を判定し、その判定結果に基づいて相対的に指が触れた位置を検知するよう構成しても良い。そのような構成とすることで、機器が上下逆さまになっていても上下が正常な状態と同様の操作を行うことができる。
【0019】
また、この指位置検知部はタッチスクリーン(情報表示可能なタッチセンサ)にて構成することで、後述の図7から9に示すようにその操作内容を指位置検知部にて表示するよう構成しても良い。また、その他にも、この指位置検知部は、例えば図3に示す領域などごとに音声が関連付けられるよう構成しても良い。具体的にはテーブルデータなどを利用して領域の識別情報と音声の識別情報とを関連付けることで、最初にTに指が触れたことを検知すると「ピッ」や「カーソル横移動」などの音声を出力し、最初にTに触れたことを検知した場合は、「ピピッ」や「早送り/巻戻し」などの音声を出力し、ユーザーにその操作内容を通知する、という具合である。
【0020】
「回転検知部」(0202)は、指による回転を検知する機能を有する。具体的には、例えば図2(a)に示すように、回転型セレクターの外周部に設けられた「タッチセンサ」(0201、0202)などで実現する方法が挙げられる。なお前述のように、図2では指位置を検知するためのタッチセンサ(指位置検知部)と、その置かれた指による回転操作を検知するためのタッチセンサ(回転検知部)が同一であるいわゆる「タッチホイール」を例として挙げている。もちろん、本実施例の回転型セレクターは、それ以外にも、例えば、タッチセンサ(指位置検知部)そのものが回転軸を中心に回転し、その回転を機械的に検知するいわゆる「スクロールホイール」や、実施例2以降で後述するようなタッチセンサ(指位置検知部)とは別のダイアル式の回転機構が設けられた「ジョグダイアル」などで回転検知部を実現しても構わない。
【0021】
また、このような回転検知部における「回転の検知」とは、回転そのものの検知のほか、回転方向の検出および回転量の検出も含まれて良い。すなわち回転検知部での回転の検知によって、まず指位置に応じた操作実行のトリガーが取得される。つづいて、検出された回転方向(および後述するように指位置の検知結果)に応じてその操作内容が決定される、という具合である。また、従来の回転型セレクター同様、検出した回転量に応じた制御、例えばボリューム量や早送りスピードを段階的に増加させるなどの制御を行っても良い。
【0022】
また、この回転検知部においては「回転の開始」および「回転の終了」を以下のように検出するよう構成すると良い。具体的には、例えば指位置検知部にて所定秒数以上の間検知がなされない状態の後に指が置かれたこと及びその回転を検知した場合、それを「回転の開始」と判定する、という具合である。一方、回転の終了については、回転の開始した後に指が離れたこと検知してから所定秒以上経過した場合に「回転の終了」と判定する、という具合である。このように構成することで、例えば図4(a)に示すように同じ位置で小刻みに行う回転操作や、図4(b)に示すように連続して行う回転操作などを、図4(c)に示すような一の回転操作として認識することができる。
【0023】
「信号生成部」(0203)は、検知結果に応じて信号を生成する機能を有する。具体的には、例えば指の置かれた位置を示す識別情報、および回転方向を示す識別情報と、その操作内容を示す情報とを関連付けた信号生成テーブルなどを参照し、指位置検知部および回転検知部の検知結果に応じて操作用信号を生成することで実現することができる。
【0024】
図5は、この信号生成用テーブルの一例を表す図である。この図にあるように、例えば、指位置検知部にて検知された座標が図3に示す回転型セレクター上の領域T12、T、Tに含まれる座標であって、かつ回転検知部にて検知された回転方向が時計回りであれば、画面内のカーソルを右方向に移動するための制御信号を生成しする、という具合である。また、指位置検知部にて検知された座標が領域T、T、Tに含まれる座標であれば、回転検知部で検知した回転方向に応じてカーソルの上下移動のための制御信号を生成する。
【0025】
あるいは、指位置検知部にて検知された座標が領域T、T、Tに含まれる座標であれば、回転検知部で検知した回転方向に応じて再生中の動画/音楽ファイルの早送り/巻戻し(回転量に応じて送り/戻しスピードを切替)の制御信号を生成する。また、指位置検知部にて検知された座標が領域T、T10、T11に含まれる座標であれば、回転検知部で検知した回転方向に応じて再生音量をアップ/ダウン(回転量に応じて音量調整)の制御信号を生成する、という具合である。
【0026】
また上記信号生成テーブルは、さらに操作モードにも応じて、その操作内容が切替わるよう構成しても良い。すなわち、例えば図6に示すようにテレビ視聴モードにおいては、T領域に指を触れてからの回転操作は番組表示サイズの変更操作である一方、テレビ録画モードでは同じT領域に指を触れてからの回転操作は別の録画/一時停止操作である、という具合である。また、特許文献1にあるような押込みスイッチなどを組み合わせることで、同じ指の位置からの操作でも別の機械動作が行われるよう図に示すテーブル表を構成しても良い。
【0027】
以下、図7から図9を用いて、上記構成によって実現される本実施例の回転型セレクターによる様々な操作について例を挙げて説明する。まず、図7(a)は携帯型/据置型テレビ視聴装置やテレビ視聴用操作リモコンに備えられた回転型セレクターの一例である。この図にあるように、回転型セレクターの上部に触れてから左右に回転させる操作では、番組表示サイズを「ワイド⇔ノーマル⇔データ放送付画面」という具合に順次切替える操作となる。また、回転型セレクターの右部に触れてから上下に回転させる操作では、視聴チャンネルのアップ/ダウン操作となる。また、回転型セレクターの左部に触れてから上下に回転させる操作では、音量のアップ/ダウン操作となる。また、回転型セレクターの下部に触れてから左右に回転させる操作では、画面の明るさのアップ/ダウン操作が実行される、という具合である。もちろん、その他にも時計の2時方向に触れてから回転する操作では「地デジ⇔地アナ⇔CS放送⇔BS放送」といった具合に受信放送の種別が切替わる操作となるよう構成しても良いし、時計8時方向に触れてからの回転操作では「コントラスト値のアップ/ダウン」や「RGB値の連動変更」操作となるよう構成しても良い。
【0028】
なお、本実施例では上記のように「回転の検知」において回転の開始及び終了の検知を行っているため、例えば図7(a)の「画面サイズ変更」の領域に触れてから指を離さずに「選局」領域を通過し「明るさ調整」の領域まで回転操作を行ったとしても、当然実行される操作は「画面サイズ変更」であって、「選局」や「明るさ調整」の操作が実行されることは無い。
【0029】
図7(b)は、携帯型テレビ録画装置などに備えられた回転型セレクターの一例である。この図にあるように、回転型セレクターの上部に触れてから右に回転させる操作は番組録画の開始操作となり、左に回転させる操作は録画の一時停止操作となる。また、回転型セレクターの右部に触れてから上下に回転させる操作では、視聴チャンネルのアップ/ダウン操作となる。また、回転型セレクターの左部に触れてから上下に回転させる操作では、音量のアップ/ダウン操作となる。また、回転型セレクターの下部に触れてから右に回転させる操作ではタイムシフト再生を実行する操作となり、左に回転させる操作ではタイムシフト再生中の巻戻し操作となる、という具合である。
【0030】
図8(a)は、携帯型画像ビューワなどに備えられた回転型セレクターの一例である。この図にあるように、この回転型セレクターの上部に触れてから右に回転させる操作では画像の拡大表示操作となり、左に回転させる操作では画像の縮小表示操作となる。また、回転型セレクターの右部に触れてから上下に回転させる操作では、次/前の画像を表示する操作となる。また、回転型セレクターの左部に触れてから上に回転させる操作では、表示中の画像を添付した状態でメーラーが自動起動する操作となり、下に回転させる操作では表示中の画像をメモリに保存する操作となる。また、回転型セレクターの下部に触れてから左右に回転させる操作では、画面の明るさのアップ/ダウン操作となる、という具合である。
【0031】
図8(b)は、カメラ装置に備えられた回転型セレクターの一例である。この図にあるように、この回転型セレクターの上部に触れてから左右に回転させる操作ではズームイン/アウトの調整操作となる。また、回転型セレクターの右上部に触れてから上下に回転させる操作では、シャッタースピードのアップ/ダウンの調整操作となる。また回転型セレクターの右下部に触れてから上下に回転させる操作では、撮影モードを「全自動⇔ポートレート⇔風景⇔接写⇔夜景⇔スポーツ」という具合に順次切替える操作となる。また、回転型セレクターの下部に触れてから左右に回転させる操作では、絞り値の調整操作となる。また、回転型セレクターの左下部に触れてから上下に回転させる操作では、ISO感度の調整操作となる。また、回転型セレクターの左上部に触れてから上下に回転させる操作では、フレーム内の測光ポイントの選択操作となる、という具合である。
【0032】
なお、上記例では一の領域に触れて一の操作を実行する操作例について説明したが、例えば図7(a)の「選局」と「音量」に同時に触れてからそれぞれに置いた指を所望の方向に回転させることで、2(以上)の操作を同時に行うよう構成しても良い。
【0033】
図9は、メールやワープロ機能付の電子機器に備えられた回転型セレクターによる文字入力の一例を表す概念図である。この図にあるように、回転型セレクター上の領域を1時〜12時に12分割して、指を置く位置を検知するよう構成する。そして、図9(a)にあるように、回転型セレクターの12時領域に触れると、画面上にあ行の文字「あいうえお」が表示され、左右の回転操作によってそのあ行の文字の選択操作が実行される、という具合である。また、図9(b)にあるように回転セレクター上の10時領域に触れると入力文字のカナ漢字への選択変換操作となり、図9(c)にあるように11時領域に触れると入力モードの選択切替操作となる、という具合である。
【0034】
このように、本実施例の回転型セレクターでは、従来の順/逆の回転方向に加えて、指位置検知部での検知結果に応じて操作制御信号を生成するよう構成されている。したがって、回転操作をするために指が触れた位置に応じて様々な種類の操作を直感的に行うことができるようになる。また、このような回転型セレクターを表示ディスプレイの周囲に配置する、すなわち図9の中央領域を表示ディスプレイとすることで、操作デバイスと表示ディスプレイとを一体化して装置本体の小型を図っても良い。
【0035】
<ハードウェア的構成>
図10は、上記機能的な各構成要件をハードウェアとして実現した際の、回転型セレクターにおける構成の一例を表す概略図である。この図を利用して操作入力処理におけるそれぞれのハードウェア構成部の働きについて説明する。
【0036】
この図にあるように、回転型セレクターは、信号生成部である「CPU(中央演算装置)」(1001)と、「主メモリ」(1002)と、を備えている。また操作プログラムを保持する「フラッシュメモリ」(1003)や、指位置検知部および回転検知部である「タッチセンサ」(1004)、操作に基づく制御命令を各駆動回路へ送出する「I/O(インプット/アウトプット)」(1005)などを備えている。そしてそれらが「システムバス」などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0037】
また、「主メモリ」にはプログラムが読み出され、「CPU」にて読み出された当該プログラムにしたがった各種演算処理が実行される。また、この「主メモリ」や「フラッシュメモリ」にはそれぞれ複数のアドレスが割当てられており、「CPU」の演算処理においては、そのアドレスを特定し格納されているデータにアクセスすることで、データを用いた演算処理を行うことが可能になっている。
【0038】
ここで、所定時間タッチセンサでの検知がなされていない状態からユーザーが操作のために「タッチセンサ」に指を触れた。すると、例えば静電式のタッチセンサであれば、格子状に配した電極によって電気容量の変化を検知し、指が置かれた位置(座標情報)を検出する。つづいて回転操作によって指がタッチセンサ上を移動することを同じく格子状電極によって検知し、その回転移動方向および回転量を検出する。そして指がタッチセンサから離れてから所定秒以上経過したら回転が終了したと判定し、検出した情報をそれぞれ「主メモリ」のアドレス1、2、3に格納する。つづいて、「CPU」にて、「主メモリ」のアドレス1、2、3に格納されている「指位置」「回転方向」「回転量」を検索キーとする論理演算処理が実行され、操作プログラムに含まれる図4や図5に示すような信号生成テーブルを参照する。
【0039】
そして参照の結果、例えば、信号生成テーブルにて「音量の5段階アップ」との操作内容が特定されれば、その旨を示す信号を生成し「主メモリ」のアドレス4に格納する。そして「I/O」から、当該操作信号を音量制御回路に送出する、という具合である。
【0040】
<処理の流れ>
図11は、本実施例の回転型セレクターにおける処理の流れの一例を表すフローチャートである。なお、以下に示すステップは、媒体に記録され計算機を制御するためのプログラムを構成する処理ステップであっても構わない。この図にあるように、まず、タッチセンサなどによってセンサ上に指が載置されたか否かを検知する(ステップS1101)。そしてセンサ上に指が載置されたことをセンサにて検知すると、その指が載置された位置(座標情報)を取得し(ステップS1102)、つづいてその指による回転操作の回転を検知する(ステップS1103)。そして、検知した指の位置や回転(および回転量)に応じて操作信号を生成する(ステップS1104)。
【0041】
<効果の簡単な説明>
以上のように、本実施例では、一の回転型セレクターにおいて回転操作のために触れた位置に応じた様々な機能を割当てることができる。したがって別の操作ボタンなどを無駄に増やすことなく様々な操作入力を行うことができる。また、例えば図7〜9に示すように人間の操作行動と機械の動作の方向が一致するよう操作機能を割当てることで、ヒューマンインターフェースの観点からユーザーにとって操作性の高い操作入力系を提供することができる。
【0042】
≪実施例2≫
<概要>
本実施例は、上記実施例1を基本として、回転検知部が指位置検知部であるタッチセンサとは別に当該タッチセンサの周囲に配置されることを特徴とする回転型セレクターである。
【0043】
<形状および機能的構成>
図12は、本実施例の回転型セレクターの平面視並びに側面視の形状例を表す図である。なお、本実施例の機能ブロックは、上記実施例の図2(b)にて記載したものと同様であるので、その説明は省略する。そしてこの図12にあるように、本実施例の「回転型セレクター」(1200)は、実施例1を基本として、さらに「指位置検知部」(1201)が円盤状のタッチセンサであり、「回転検知部」(1202)が円盤状のタッチセンサの周囲に配置されたリング体であることを特徴とする。なお、指位置検知部である「タッチセンサ」(1201)は、図12(b)に示すように、機器本体に固定され、外周に配置された回転検知部である「リング体」(1202)のみが回転するようにしても良い。また、「タッチセンサ」が可動に設けられている場合は、重力センサなどでタッチセンサ自身の上下左右を認識し、その認識結果に従って指位置の検知を行うよう構成したり、あるいは、機械バネなどで操作後に回転したタッチセンサが定位置に戻るよう構成しても良い。
【0044】
そして、本実施例の回転型セレクターを上記構成とすることで、回転検知部を指で回転させる際に指が置かれた位置を検知し、回転操作を行うことができる。したがって、実施例1で説明したような、回転操作のために触れた位置に応じた様々な操作信号の生成を「信号生成部」(1203)にて行うことができる。また本実施例では、回転検知機構を仮想的に回転操作を検知するセンサ方式ではなく、実際の回転を検知する機械方式とすることでユーザーの回転操作感をリアルなものとすることができる。また、回転量を直感的に把握することが可能となり、細かい正確な操作も行うことができる。
【0045】
<ハードウェア的構成>
図13は、上記機能的な各構成要件をハードウェアとして実現した際の、回転型セレクターにおける構成の一例を表す概略図である。この図を利用して操作入力処理におけるそれぞれのハードウェア構成部の働きについて説明する。
【0046】
この図にあるように、回転型セレクターは、実施例1と同様に「CPU」(1301)と、「主メモリ」(1302)と、「フラッシュメモリ」(1303)と「I/O」(1306)と、などを備えている。そして、さらに、指位置検知部である「タッチセンサ」(1304)と、回転検知部である「ジョグダイアル」(1305)を備える。
【0047】
ここで、ユーザーが操作のために「ジョグダイアル」に指を触れた。すると、図12(b)に示すように「タッチセンサ」(1201)にも指が触れるので、実施例1と同様に例えば電気容量の変化などから指が置かれた位置(座標情報)を検出する。つづいて「ジョグダイアル」(1202)の回転操作による回転軸の回転から、その回転移動方向および回転量を検出する。そして、検出した情報を、それぞれ「主メモリ」のアドレス1、2、3に格納する。そして、実施例1同様に、「CPU」の論理演算処理による信号生成テーブル検索処理の結果、指位置と回転方向と回転量とに応じた操作信号を生成し「I/O」(1306)から出力する、という具合である。
【0048】
<処理の流れ>
本実施例の回転型セレクターにおける処理の流れの一例は、図11に示す実施例1における処理の流れと同様であるのでその説明は省略する。
【0049】
<効果の簡単な説明>
以上のように、本実施例の回転型セレクターによって、実施例1同様に、回転操作のために触れた位置に応じた様々な操作を行うことができる。また本実施例では、回転検知部における検知方式について、仮想的に回転操作を検知するセンサ方式ではなく、実際の回転を検知する機械方式とすることで、ユーザーの回転操作感をリアルなものとすることができる。また、回転量を直感的に把握することが可能となり、細かい正確な操作も行うことができる。
【0050】
≪実施例3≫
<概要>
本実施例は、上記実施例2と同様に、回転検知部が指位置検知部であるタッチセンサとは別に配置される機構によってその回転を検知する回転型セレクターである。そして、実施例2との相違点は、その回転検知部が指位置検知部であるタッチセンサの外側周囲ではなく内側に配置されている点である。
【0051】
<形状および機能的構成>
図14は、本実施例の回転型セレクターの平面視並びに側面視の形状例を表す図である。なお、本実施例の機能ブロックは、上記実施例1の図2(b)にて記載したものと同様であるので、その説明は省略する。そしてこの図14にあるように、本実施例の「回転型セレクター」(1400)は、実施例1を基本として、さらに「回転検知部」(1402)が円盤体であり、「指位置検知部」(1401)が円盤体の回転検知部の周囲に配置されたリング状のタッチセンサであることを特徴とする。なお、指位置検知部である「タッチセンサ」(1401)は、図14(b)に示すように、機器本体に固定され、内部に配置された回転検知部である「円盤体」(1402)のみが回転するようにしても良い。
【0052】
そして、本実施例の回転型セレクターを上記構成とすることで、本実施例でも回転検知部を指で回転させる際に指が置かれた位置を検知し、回転操作を行うことができる。したがって、実施例1で説明したような、回転操作のために触れた位置に応じた様々な操作信号の生成を「信号生成部」(1403)にて行うことができる。また実施例2同様に回転検知部を実際の回転を検知する機械方式とすることでユーザーの回転操作感をリアルなものとすることができる。また、回転量を直感的に把握することが可能となり、細かい正確な操作も行うことができる。
【0053】
<ハードウェア的構成および処理の流れ>
本実施例の回転型セレクターにおけるハードウェア構成の一例、および処理の流れの一例は、図13にて示す実施例2におけるハードウェア構成や図11に示す実施例1における処理の流れと同様であるのでその説明は省略する。
【0054】
<効果の簡単な説明>
以上のように、本実施例の回転型セレクターによっても、実施例1同様に、回転操作のために触れた位置に応じた様々な操作を行うことができることに加え、さらにユーザーの回転操作感をリアルなものとすることができる。また、回転量を直感的に把握することが可能となり、細かい正確な操作も行うことができる。
【0055】
≪実施例4≫
<概要>
本実施例は、上記実施例2や3と同様に、回転検知部が指位置検知部であるタッチセンサとは別に配置される機構によって実現される回転型セレクターである。そして、実施例2や3との相違点は、指位置検知部であるタッチセンサがスポットセンサである点である。
【0056】
<形状および機能的構成>
図15は、本実施例の回転型セレクターの平面視並びに側面視の形状例を表す図である。なお、本実施例の機能ブロックは、上記実施例1の図2(b)にて記載したものと同様であるので、その説明は省略する。そしてこの図15にあるように、本実施例の「回転型セレクター」(1500)は、実施例1を基本として、さらに「回転検知部」(1502)がリング状であり、「指位置検知部」(1501)が円盤体に配置されたスポットセンサであることを特徴とする。なお、指位置検知部である「スポットセンサ」(1501)は、図15(b)に示すように機器本体に固定され、回転検知部である「リング体」(1502)のみが回転するようにしても良い。
【0057】
そして、本実施例の回転型セレクターの指位置検知部をスポットセンサとして構成することで、より正確に指位置を検知することができる。また、回転セレクター上にて傷等に弱いタッチセンサが占める表面積を減らすことができるので、回転型セレクターの長寿命化を図ることもできる。また、操作方法は、実施例1〜3とは異なり、例えば親指でスポットセンサに触れることで操作内容を選択し、例えば人差し指で回転操作を行うこととなるが、スポットセンサにより操作内容を選択するため、正確に確実な操作を行うことができる。
【0058】
<ハードウェア的構成および処理の流れ>
本実施例の回転型セレクターにおけるハードウェア構成の一例、および処理の流れの一例は、図13にて示す実施例2におけるハードウェア構成や図11に示す実施例1における処理の流れと同様であるのでその説明は省略する。
【0059】
<効果の簡単な説明>
以上のように、本実施例の回転型セレクターによって、スポットセンサでより正確に指位置を検知することができる。また、回転セレクター上にて傷等に弱いタッチセンサが占める表面積を減らすことができるので、回転型セレクターの長寿命化を図ることもできる。また、操作方法は、実施例1〜3とは異なり、例えば親指でスポットセンサに触れることで操作内容を選択し、例えば人差し指で回転操作を行うこととなるが、スポットセンサにより操作内容を選択するため、正確に確実な操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1の回転型セレクターを利用した操作の一例を表す概念図
【図2】実施例1の回転型セレクターの平面視並びに側面視による形状例を表す図、および機能ブロックの一例を表す図
【図3】実施例1の回転型セレクターの指位置検知部での区別される検知領域の一例を表す図
【図4】実施例1の回転型セレクターにおける回転操作方法のいくつかの例を表す図
【図5】実施例1の回転型セレクターの信号生成部での信号生成に利用されるテーブルの一例を表す図
【図6】実施例1の回転型セレクターの信号生成部での信号生成に利用されるテーブルの、別の一例を表す図
【図7】携帯型/据置型テレビ視聴装置やテレビ視聴用操作リモコン及び携帯型テレビ録画装置などに備えられた実施例1の回転型セレクターの一例を表す図
【図8】携帯型画像ビューワ及びカメラ装置などに備えられた実施例1の回転型セレクターの一例を表す図
【図9】メールやワープロ機能付の電子機器に備えられた本実施例の回転型セレクターによる文字入力の一例を表す概念図
【図10】実施例1の回転型セレクターにおけるハードウェア構成の一例を表す図
【図11】実施例1の回転型セレクターにおける処理の流れの一例を表すフローチャート
【図12】実施例2の回転型セレクターの平面視並びに側面視の形状例を表す図
【図13】実施例2の回転型セレクターにおけるハードウェア構成の一例を表す図
【図14】実施例3の回転型セレクターの平面視並びに側面視の形状例を表す図
【図15】実施例4の回転型セレクターの平面視並びに側面視の形状例を表す図
【符号の説明】
【0061】
0200 回転型セレクター
0201 指位置検知部
0202 回転検知部
0203 信号生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の回転型セレクターであって、
指を置く位置を検知する指位置検知部と、
指による回転を検知する回転検知部と、
検知結果に応じて信号を生成する信号生成部と、
を有する回転型セレクター。
【請求項2】
指位置検知部は、円盤状のタッチセンサであり、
回転検知部は、円盤状のタッチセンサの周囲に配置されたリング体である請求項1に記載の回転型セレクター。
【請求項3】
回転検知部は、円盤体であり、
指位置検知部は、円盤体の回転検知部の周囲に配置されたリング状のタッチセンサである請求項1に記載の回転型セレクター。
【請求項4】
回転検知部は、リング状であり、
指位置検知部は、円盤体に配置されたスポットセンサである請求項1に記載の回転型セレクター。
【請求項5】
円盤状の回転型セレクターの制御方法であって、
指を置く位置を検知する指位置検知ステップと、
指による回転を検知する回転検知ステップと、
検知結果に応じて信号を生成する信号生成ステップと、
を計算機に実行させる回転型セレクターの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−93379(P2009−93379A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262741(P2007−262741)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】