説明

回転塗布方法

【課題】本発明の主な課題は、基板表面上に低粘度の塗布液を供給する際に、空気溜りを残存させることなく、平面形状が点対称な濡れ領域を形成でき、その結果、その後の高速回転により、基板表面全体に均一な厚さの塗膜が得られる回転塗布方法を提供することである。
【解決手段】本発明の回転塗布方法は、基板表面上に供給した塗布液12を、基板Wを回転させることによって、基板表面に分散させて塗布する回転塗布方法であって、基板中央位置に塗布液12を供給して、第1の濡れ領域101aを形成する工程と、基板Wを第2の回転数N2で低速回転させながら、塗布液12を第1の濡れ領域101aの外周縁の外側位置に供給して、第1の濡れ領域101aと接して取り囲む第2の濡れ領域101bを形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面上に供給した塗布液を、基板を回転させることによって、基板表面に分散させて塗布する回転塗布方法に関し、とくに低粘度の塗布液を塗布する回転塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スピンコータ等を用いて、基板表面に塗布液を供給し、その供給した塗布液を高速回転の遠心力で回転塗布する際に、より均一な厚さの塗膜を得るためには、塗布液の供給時に基板表面上に如何にその平面形状が点対称な濡れ領域を形成するかが重要となる。
【0003】
とくに低粘度で表面張力(凝集力)の小さい塗布液では、基板表面上の広い範囲に安定した平面形状の濡れ領域を形成することは困難であった。
【0004】
従来の回転塗布方法の一例として、スピンコータを用いて半導体基板表面上に塗膜を形成し、その含有する不純物を熱拡散させる液状塗布拡散源の回転塗布方法を図4,図5に示す。
【0005】
図4は側断面図であり、図5は半導体基板上の濡れ領域の平面形状およびノズル位置を示す平面図である。
【0006】
図4,図5において、1はスピンコータ、2はスピンチャック、3は変速機構、4は回転モータ、5はカップ、6はノズル、7はノズル移動用モータ、8はノズル移動用ガイド、9は塗布液貯蔵部、10は制御部、11は排出口、12は塗布液(液状塗布拡散源)、12a,12bは基板表面上の濡れ領域、Sはスクライブパターン溝、Wは半導体基板である。
【0007】
このようなスピンコータ1を用いた回転塗布方法は、先ず、ノズル6を静止状態の半導体基板Wの中央上方に配置し、基板表面を十分被覆できる量の塗布液12を基板表面上に滴下し、その後、半導体基板Wを高速回転させ、その遠心力によって塗布液12を基板表面全体に分散させて薄い塗膜を形成する。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開平5−347265号公報
【特許文献2】特開2005−230652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ノズル6から基板中央に、基板表面を十分被覆できる量の塗布液12を一点集中型で滴下供給すると、基板表面上での濡れ広がり面積が小さい間は塗布液12の持つ表面張力(凝集力)により、ほぼ均等に濡れ広がるが、徐々に濡れ広がり面積が増大すると、基板全体の僅かな反りや傾斜の影響力の方が塗布液12の表面張力(凝集力)よりも大きくなり、不特定な方向に偏って濡れ広がり、その結果、図5(a)に示すように、歪んだ平面形状(非点対称)の濡れ領域が形成された。
【0009】
尚、図5(a)では、略円形状の濡れ領域12aを形成する場合を示したが、とくにこれに限らず、図5(b)に示すように、格子状に形成されたスクライブパターン溝Sなどによる毛細管現象に依存して濡れ広がり、略矩形状の濡れ領域12bを形成する場合もある。
【0010】
そして、このように歪んだ平面形状の濡れ領域12a,12bの塗布液12を高速回転させ、遠心力で基板表面全体に分散させても、均一な厚さの塗膜を得ることはできなかった。
【0011】
また、このような濡れ領域の平面形状の歪みの発生は、表面張力(凝集力)の小さい低粘度の塗布液12ほど顕著であった。
【0012】
また、塗布液12を滴下するノズル6の高さ位置が高いと、滴下した塗布液12中にエアを巻き込みやすく、塗布ムラの原因となった。
【0013】
尚、特許文献2には、フォトレジストなどの高粘度塗布液の供給方法として、ノズルを基板中央から順次、基板半径方向に断続的移動および断続的塗布液供給を繰り返し、同心円状の多数の濡れ領域を形成する方法が開示されているが、この方法においては、互いに隣り合うリング状濡れ領域が離間して独立しているため、それぞれの濡れ領域の平面形状を安定維持させることが困難であった上、分散後に空気溜りが残存するおそれがあった。
【0014】
本発明の主な課題は、基板表面上に低粘度の塗布液を供給する際に、空気溜りを残存させることなく、平面形状が点対称な濡れ領域を形成でき、その結果、その後の高速回転により、基板表面全体に均一な厚さの塗膜が得られる回転塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の回転塗布方法は、基板の表面上に供給した塗布液を、基板を回転させることによって、表面上に分散させて塗布する回転塗布方法であって、基板の中央位置に塗布液を供給して、第1の濡れ領域を形成する工程と、基板を第2の回転速度で回転させながら、塗布液を第1の濡れ領域の外周縁の外側位置に供給して、第1の濡れ領域と接して取り囲む第2の濡れ領域を形成する工程とを含む回転塗布方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の回転塗布方法によれば、基板表面上に低粘度の塗布液を供給する際に、空気溜りを残存させることなく、平面形状が点対称な濡れ領域を形成でき、その結果、その後の高速回転により、基板表面全体に均一な厚さの塗膜が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、基板表面上に低粘度の塗布液を供給する際に、空気溜りを残存させることなく、平面形状が点対称な濡れ領域を形成でき、その結果、その後の高速回転により、基板表面全体に均一な厚さの塗膜を得るという目的を、基板の中央位置に塗布液を供給して、第1の濡れ領域を形成する工程と、基板を第2の回転速度で回転させながら、塗布液を第1の濡れ領域の外周縁の外側位置に供給して、第1の濡れ領域と接して取り囲む第2の濡れ領域を形成する工程とを含むことで実現した。
【実施例】
【0018】
本発明の回転塗布方法の一例として、スピンコータを用いて半導体基板表面上に塗膜を形成し、その含有する不純物を熱拡散させる液状塗布拡散源の回転塗布方法を図1〜3に示す。図4,5と同一部分には同一符号を付す。
【0019】
図1は側断面図であり、図2は半導体基板上の略円形状の濡れ領域およびノズル位置を示す平面図であり、図3は半導体基板上の略矩形状の濡れ領域およびノズル位置を示す平面図である。
【0020】
図1において、1はスピンコータ、2はスピンチャック、3は変速機構、4は回転モータ、5はカップ、6はノズル、7はノズル移動用モータ、8はノズル移動用ガイド、9は塗布液貯蔵部、10は制御部、11は排出口、12は塗布液(液状塗布拡散源)、101aは第1の濡れ領域、101bは第2の濡れ領域、N1は第1の供給工程の半導体基板Wの第1の回転数、N2は第2の供給工程の半導体基板Wの第2の回転数、Wは半導体基板である。
【0021】
ここで、ノズル6高さHは、ノズル6先端と基板表面との間で塗布液12が連続体となる程度の高さに設定しておく。
【0022】
このようなノズル高さHにしておくと、塗布液12が基板表面上にスムースに供給され、滴下した塗布液12中にエアの巻き込みがなく、塗布ムラになるのを防止でき好適である。
【0023】
そして、先ず、図1(a),図2(a),図3(a)に示すように、第1の供給工程として、ノズル6を基板中央の上方に配置して、所定量の塗布液12を基板表面上に供給して、第1の濡れ領域101aを形成する。図2(a)では第1の濡れ領域101aが略円形状となる場合を示し、図3(a)では第1の濡れ領域101aが略矩形状となる場合を示す。
【0024】
ここで、塗布液12の供給量は、塗布液12の粘度(例えば、10〜130cp)や基板Wの反り、傾斜、形成パターンなどを考慮して、塗布液12が基板表面上でほぼ均等に濡れ広がり、点対称な平面形状の第1の濡れ領域101a(例えば、円形状の場合;半径=10〜20mm、矩形状の場合;一辺長=20〜40mm)を形成維持できる供給量とする。
【0025】
また、この第1の供給工程は、基板Wを第1の回転数N1で低速回転させながら行う(例えば、N1=10〜50rpm)。
【0026】
このように半導体基板Wを低速回転させながら塗布液12を供給すると、基板表面上に供給された塗布液12が適度な遠心力fにより基板円周方向に均等に濡れ広がり好適である。
【0027】
次に、一旦、塗布液12の供給を停止させる。
【0028】
次に、ノズル6を基板中央位置から第1の濡れ領域101aの外周縁の外側位置まで移動させる。
【0029】
移動後の供給位置としては、基板表面上に供給された塗布液12が濡れ広がって第1塗れ領域と回転により次第に順を追って接触していくような供給位置とする。また、ノズル6はノズル高さHに設定する。
【0030】
ここで、供給位置を第1の濡れ領域101aの外周縁の外側位置とする理由は、供給位置を第1の濡れ領域101aの領域内や外周縁上にすると、第1の濡れ領域101a上に直接、ノズル6からの塗布液12が供給されるため、その衝撃で濡れ領域の変形が発生するからである。
【0031】
また、供給位置を第1の濡れ領域101aの外周縁の外側位置とすると、より広範囲な濡れ領域が形成できて好適である。
【0032】
そして、図1(b),図2(b),図3(b)に示すように、第2の供給工程として、半導体基板Wを第2の回転数で低速回転(例えば、回転数N2=5〜40rpm)させながら塗布液12を供給することで第1の濡れ領域101aと接して取り囲む第2の濡れ領域101bを形成する。
【0033】
尚、このときの半導体基板Wの回転数N2は、第1の濡れ領域101aの塗布液12が遠心力で広がらないようにするため、回転数N2<回転数N1とするのがよい。
【0034】
このように、第1の濡れ領域101aと接するように第2の濡れ領域101bを形成すると両者間に空気溜りを残存させる心配がない。
【0035】
また、第2の濡れ領域101bを第1の濡れ領域101aと接触させながら形成して行くため、形成されつつある第2の濡れ領域101bの塗布液12に対して、第1の濡れ領域101aから表面張力(凝集力)による引張力tが作用し、第2の濡れ領域101bが急速に濡れ広がることを抑制でき、安定した平面形状が得られる。
【0036】
すなわち、第2の供給工程では、基板表面上に塗布される塗布液12に、一方では、第1の濡れ領域101aからの引張力tが作用し、他方では、低速回転(回転数N2)による遠心力f(引張力tと反対向き)が作用する格好となる。
【0037】
このため、これらの力(f,t)の関係を回転数N2などでバランス制御することで点対称な第2の濡れ領域101bが安定形成される。
【0038】
次に、第1,第2の濡れ領域101a,101bの形成が完了したら、半導体基板Wを高速回転(例えば、1000rpm以上)させて、第1,第2の濡れ領域101a,101bの塗布液12を遠心力を利用して半導体基板W表面全体に分散させる。
【0039】
このようにすると、点対称な平面形状の第1,第2の濡れ領域101a,101bから基板表面全体に塗布液12が均等分散され、均一な厚さの塗膜が得られる。
【0040】
尚、上記の例では、第1の供給工程では、半導体基板Wを第1の回転数N1で低速回転させながら塗布液12を供給して行うことで説明したが、とくにこれに限るものではなく、静止状態の半導体基板Wに塗布液12を供給して行ってもよく、または、静止状態の半導体基板Wに塗布液12を供給後、半導体基板Wを第1の回転数N1で回転させて行ってもよい。
【0041】
また、上記の例では、塗布液12を第1,第2の供給工程に2分割して供給することで説明したが、とくにこれに限定されるものではなく、基板表面上に、さらに広範囲に亘る濡れ領域を確保したい場合は、第3の供給工程として、第2の濡れ領域101bと接して取り囲む第3の濡れ領域を形成する工程を追加してもよく、順次、その外側に最外周の濡れ領域と接して取り囲む濡れ領域を形成して行ってもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、基板表面上に低粘度の塗布液を供給する際に、空気溜りを残存させることなく、平面形状が点対称な濡れ領域を形成でき、その結果、その後の高速回転により、基板表面全体に均一な厚さの塗膜が得られる回転塗布方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の回転塗布方法の一例を説明する側断面図
【図2】本発明の回転塗布方法の一例を説明する平面図
【図3】本発明の回転塗布方法の一例を説明する平面図
【図4】従来の回転塗布方法の一例を説明する側断面図
【図5】従来の回転塗布方法の一例を説明する平面図
【符号の説明】
【0044】
1 スピンコータ
2 スピンチャック
3 変速機構
4 回転モータ
5 カップ
6 ノズル
7 ノズル移動用モータ
8 ノズル移動用ガイド
9 塗布液貯蔵部
10 制御部
11 排出口
12 塗布液(液状塗布拡散源)
12a,12b 濡れ領域
101a 第1の濡れ領域
101b 第2の濡れ領域
N1 第1の供給工程の半導体基板Wの回転数
N2 第2の供給工程の半導体基板Wの回転数
S スクライブパターン溝
W 半導体基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上に供給した塗布液を、前記基板を回転させることによって、前記表面上に分散させて塗布する回転塗布方法であって、
前記基板の中央位置に前記塗布液を供給して、第1の濡れ領域を形成する工程と、
前記基板を第2の回転速度で回転させながら、前記塗布液を前記第1の濡れ領域の外周縁の外側位置に供給して、前記第1の濡れ領域と接して取り囲む第2の濡れ領域を形成する工程とを含む回転塗布方法。
【請求項2】
前記第1の濡れ領域の形成は、静止状態の基板に塗布液を供給して行うか、または、静止状態の基板に塗布液を供給後、前記基板を第1の回転速度で回転させて行うか、または、基板を第1の回転速度で回転させながら塗布液を供給して行う請求項1に記載の回転塗布方法。
【請求項3】
前記第2の回転速度は、前記第1の回転速度よりも遅い回転速度である請求項2に記載の回転塗布方法。
【請求項4】
前記第2の濡れ領域形成後、さらにその外側に順次、最外周の濡れ領域と接して取り囲む濡れ領域を形成する工程を含む請求項1から3のいずれかに記載の回転塗布方法。
【請求項5】
所定の濡れ領域の形成が完了した後、前記濡れ領域の形成時の回転速度よりも速い回転速度で前記基板を回転させ、前記濡れ領域の前記塗布液を基板表面全体に分散させる工程を、さらに含む請求項1から4のいずれかに記載の回転塗布方法。
【請求項6】
前記塗布液を供給するノズルの高さ位置は、ノズル先端と基板表面との間で前記塗布液が連続体となる高さ位置とする請求項1から5のいずれかに記載の回転塗布方法。
【請求項7】
前記塗布液は、半導体基板表面上に塗布して、その含有する不純物を熱拡散させる液状塗布拡散源である請求項1から6のいずれかに記載の回転塗布方法。
【請求項8】
前記塗布液の粘度は、10cp〜130cpである請求項1から7のいずれかに記載の回転塗布方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−221124(P2008−221124A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62761(P2007−62761)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】