説明

回転検出装置

【課題】 自動車の車輪速度検出装置において、回転部材に取り付けられたマグネットトーンホイールと検出センサーとの間隙を常に一定に保つ。
【解決手段】 押し付けバネ5の弾性圧力によって検出センサー4をマグネットトーンホイール2の方へ強制的に押付け、マグネットトーンホイール2の取り付け部である回転部材1と検出センサー4の取付部材3の一部分を接触摺動させ、且つマグネットトーンホイール2と検出センサー4との互いに回転する検出部とは検出センサー4の取付部材の一部を検出センサー4の検出部よりも突出させて互いに接触させない配置としてその間隙を一定に保つ。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車の車輪等の回転速度を検出するために設けた回転速度検出装置であって、回転数の検出精度の向上と装着安全性を図った回転検出装置に関する。
【0002】
【従来技術の内容】回転数検出をなすマグネットトーンホィールと検出センサーは、自動車に置けるアンチロックブレーキシステム、トラクションコントロールシステム、あるいはスタビリティコントロールシステムなどの走行安全装置を自在に制御するために装備されるものであって、その配置箇所としては、自動車の懸架装置のハブフランジ等に配備されてその車輪の回転数を検出しめており、前後左右など複数の車輪の回転数の違いを感知して駆動装置あるいはブレーキ装置等をオン・オフさせ自動車の緊急時の挙動を制御せしめることで走行安定性と安全性などを確保している。
【0003】ここで前記したマグネットトーンホィールと検出センサーの装着される回転検出装置を図面を基に詳述すると、一般的には図4に示すように、自動車の回転するホィールのホィールベアリングに回転部材1が装着され、その回転部材1へマグネットトーンホィール2が組み込まれており、このホィールの固定側部材6へは検出センサー4が前記マグネットトーンホィール2と近接して取り付けられ、回転側部材7に取り付けられたマグネットトーンホィール2が発するパルス信号を該検出センサー4が検出してその車輪の回転数を検出する測定機能を果たしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような検出センサー4と前記マグネットトーンホィール2とが近接してそれぞれ別の取付け部材6,7へ取り付けられる組み付け構造にあっては、それぞれの取付け部材6,7への正確な装着とホィールベアリングを含めたホィール部分全体の高い仕上がり精度が必要となるものであって、ともすると組み付け不備や回転中に生じるそれぞれの取付け部材6,7の相対的間隔の変化によって検出センサー4と前記マグネットトーンホィール2とが回転ぶれを起こしてその間隔を不正確なものとし、結果として正確な回転数検出がなされない不具合を発生させる。また、経時的なホィールベアリングの摩耗による前記近接した間隙の変化も見逃すことが出来ず、安全度の低い検出構造と言わざるを得ない。
【0005】本発明はこのような欠点に鑑み、安価でありながら正確な間隙を保ち、もって精度の高い回転数検出を実現することのできる回転検出装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明を図面に基づいて説明すると、図1に示すように、自動車の車輪等の回転速度を検出するために、その軸受部であるホィールベアリングに装着され、前記ホィールベアリングを密封するシール部材等の回転部材1へ組み込まれたマグネットトーンホィール2と、その回転数を検出する検出センサー4からなった回転検出装置であって、前記マグネットトーンホィール2あるいはその取付け部である回転部材1へ前記検出センサー4の取付け部材3を押付けバネ5を介してその一部分を摺接せしめ、前記マグネットトーンホィール2と前記検出センサー4の対向する検出部を近接させその感知間隙cを常時一定に保たせることを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】前記のように本発明では、押付けバネ5の弾性押圧によって検出センサー4を前記マグネットトーンホィール2へ強制的に押付け、前記マグネットトーンホィール2の取付け部である回転部材1と検出センサー4の取付け部材3の一部分を接触させるが、図1R>1、および図2で示すように前記マグネットトーンホィール2と前記検出センサー4との互いに回転する検出部は接触させない配置とし(ここでは検出センサー4の取付け部材4の一部を該検出センサー4の検出部よりも突出せしめている)、ここでその感知間隙cを常時一定に保つことができるものとなる。
【0008】
【実施例】以下にその実施例を示す。本発明の実施において、マグネットトーンホィール2と検出センサー4との接触部は、図1および図2では検出センサー4の取付け部材3の一部を該検出センサー4の対峙する検出部よりも突出せしめて示したが、図3に示すようにマグネットトーンホィール2が取り付けられた回転部材1の一部を延設し検出センサー4の検出部以上に突出せしめ、該検出センサー4を押付けバネ5の弾性押圧によって前記回転部材1の方向へ強制的に押付けてマグネットトーンホィール2と検出センサー4との検出部の感知間隙cを保たせることもできる。
【0009】このマグネットトーンホィール2は、合成ゴムあるいは合成樹脂などの弾性材にフェライト等の強磁性粉末を混合形成した弾性マグネットを一体的に設け、この弾性体からなるマグネットトーンホィール2へS極とN極とを交互に配置せしめてパルス信号を発する弾性体製のエンコーダを形成する。
【0010】前記マグネットトーンホィール2は前述のように弾性体からなっており成形性に優れるからいかような形にも造形可能であり、必要ならシール部材の構成部の一部を共用することも可能となり、より軽量化、コンパクト化を進めることが出来る。
【0011】また、前記のようにマグネットトーンホィール2と検出センサー4との感知間隙cはその間隙が保たれるので極限まで狭く設定することが可能となり、それに伴ってその性能を最大に発揮させるためには異物の排除が不可欠であって、その配置において前記マグネットトーンホィール2をシール部材の内方に組み込み密封された状態に置けばその検出性能が低下することはない。
【0012】また、前記マグネットトーンホィール2と前記検出センサー4との摺動においては、その感知間隙cを保つ意味からその摩耗の軽減が必要となり、直接的には該接触部へ図2に示すように、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)あるいはモリブデンとかカーボンの混合された合成樹脂材などの低摩擦材8を配し摺動抵抗を低めることが簡単な解決手段となる。また間接的には、前記マグネットトーンホィール2と前記検出センサー4の摺動接触部にレール、あるいは潤滑剤の配された溝、凹凸部などの補助摺接手段(いずれも図示していない)を配置することも有効な手段となり得る。
【0013】最後に、マグネットトーンホィール2へ検出センサー4を摺接せしめる押付けバネ5においては、リーフスプリング、コイルスプリング、皿バネ、などの金属からなる金属バネが造形性優れ廉価であるので薦められるが、その他に弾性を持つ材料の非金属バネを採用することもでき、例えばプラスチックバネ、ゴムバネなどがこれに当たる。さらに空気あるいは液体の圧力を利用した圧力バネとか、磁力を用いた磁力バネなども実施可能であり、いずれも求められる性能と使用状況によって選択される。
【0014】
【発明の効果】本発明によると、互いに回転する検出部は接触させない配置とし、マグネットトーンホィール2と検出センサー4の一部分を接触せしめて感知間隙cを常時一定に保たせることができ、従ってその間隙寸法の設定も自由であって、感知検出性能を最大に発揮させることができるものとなる。このような正確な回転検出部の形成によって精度の高い回転数検出を実現することができる。また、前記のように本発明の回転検出装置は装着された後に正確な感知間隙cが永続的に確保されるものであるから装着される部分一帯の寸法精度も高精度を必要としない利点があり、もって装着作業を容易とし作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示した断面図。
【図2】本発明の要部を示した拡大断面図。
【図3】本発明の他の実施例を示した断面図。
【図4】本発明を用いない従来の構造を示した断面図。
【符号の説明】
1 回転部材
2 マグネットトーンホィール
3 取付け部材
4 検出センサー
5 押付けバネ
6 固定側部材
7 回転側部材
8 摺動部材
c 感知間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ホィールベアリングに装着され、回転部材へ組み込まれたマグネットトーンホィールとその回転数を検出する検出センサーからなった回転検出装置において、前記マグネットトーンホィールあるいはその取付け部である回転部材へ前記検出センサーあるいはその取付け部材を押付けバネを介して摺接せしめ、前記マグネットトーンホィールと前記検出センサーとの検出部を近接配置したことを特徴とする回転検出装置。
【請求項2】 ホィールベアリングに装着され、回転部材へ組み込まれたマグネットトーンホィールとその回転数を検出する検出センサーからなった回転検出装置において、前記マグネットトーンホィールは弾性材に強磁性粉末を混合して形成せしめたことを特徴とする請求項1の回転検出装置。
【請求項3】 ホィールベアリングに装着され、回転部材へ組み込まれたマグネットトーンホィールとその回転数を検出する検出センサーからなった回転検出装置において、前記マグネットトーンホィールは前記回転部材を構成するシール部材の一部を共用することを特徴とする請求項1ないし2の回転検出装置。
【請求項4】 ホィールベアリングに装着され、回転部材へ組み込まれたマグネットトーンホィールとその回転数を検出する検出センサーからなった回転検出装置において、前記マグネットトーンホィールと前記検出センサーの摺動部材との接触部に低摩擦材を配したことを特徴とする請求項1ないし3の回転検出装置。
【請求項5】 ホィールベアリングに装着され、回転部材へ組み込まれたマグネットトーンホィールとその回転数を検出する検出センサーからなった回転検出装置において、前記マグネットトーンホィールと前記検出センサーの摺動部材との接触部にレール、あるいは潤滑剤の配された溝、凹凸部などの補助摺接手段を配置したことを特徴とする請求項1ないし3の回転検出装置。
【請求項6】 ホィールベアリングに装着され、回転部材へ組み込まれたマグネットトーンホィールとその回転数を検出する検出センサーからなった回転検出装置において、前記マグネットトーンホィールへ前記検出センサーの摺動部材を摺接せしめる押付けバネは、金属バネ、非金属バネ、圧力バネ、あるいは磁力バネのいずれかでなることを特徴とする請求項1の回転検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−215235(P2001−215235A)
【公開日】平成13年8月10日(2001.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−24621(P2000−24621)
【出願日】平成12年2月2日(2000.2.2)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】