回転機械の部品摩耗検出方法、及び回転機械の部品摩耗検出装置
【課題】回転機械の稼働中に発生する動作音を、動作音が含む特定の周波数成分に着目して解析することにより、回転機械の部品に摩耗が生じているか判定する。
【解決手段】回転機械の部品摩耗検出方法であって、前記回転機械の動作音を収集して動作音データとして記録し、記録した前記動作音データを、当該動作音データの周波数特性データに変換し、前記周波数特性データから回転機械の回転周期に対応する周波数である基本周波数の倍数に当たる周波数成分であって、前記動作音中に含まれる、前記回転機械の前記部品の摩耗発生に関連して異音が発生する周波数である特徴周波数成分を経時的に抽出し、前記抽出した特徴周波数成分のデータと、最初に抽出した特徴周波数成分のデータとを、両者に含まれる前記特徴周波数の基本周波数と前記特徴周波数の最高周波数との間に存在する周波数成分について比較する。
【解決手段】回転機械の部品摩耗検出方法であって、前記回転機械の動作音を収集して動作音データとして記録し、記録した前記動作音データを、当該動作音データの周波数特性データに変換し、前記周波数特性データから回転機械の回転周期に対応する周波数である基本周波数の倍数に当たる周波数成分であって、前記動作音中に含まれる、前記回転機械の前記部品の摩耗発生に関連して異音が発生する周波数である特徴周波数成分を経時的に抽出し、前記抽出した特徴周波数成分のデータと、最初に抽出した特徴周波数成分のデータとを、両者に含まれる前記特徴周波数の基本周波数と前記特徴周波数の最高周波数との間に存在する周波数成分について比較する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転機械の部品摩耗検出方法、及び回転機械の部品摩耗検出装置に係わり、特に、対象の回転機械を通常稼働させたまま部品の摩耗状況を調べることを可能とする回転機械の部品摩耗検出方法、及び回転機械の部品摩耗検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の省エネルギー及び地球温暖化防止に対する要請から、火力発電におけるエネルギー効率向上が強く求められている。これに対応して、従来火力発電に用いられている蒸気タービン装置とガスタービン装置とを組み合わせて発電するコンバインドサイクル火力発電が開発されている。コンバインドサイクル火力発電は、ガスタービン装置からの排気ガスの熱を回収することにより熱効率を高めている。
ガスタービン翼は高温・高圧ガスにさらされるため、タービン翼が摩耗しやすい問題点がある。タービン翼の摩耗の有無を判断する方法としては、例えばガスタービン装置の軸振動、排気ガス温度、発電効率、ホイールスペース(タービン翼を支持するディスク間等のスペース)温度差、又は動作時に発生する音響を監視し、測定する方法などがある。また、タービン翼単体の損傷を計測する技術としては、例えば特許文献1があり、タービン翼に発生するき裂の深さを、超音波を利用して測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−310112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、軸振動により検出する方法では、タービン翼の一部に摩耗が生じて回転バランスが崩れることにより軸振動が発生しても、最初に摩耗が発生したタービン翼と軸に関して対称の位置にある他のタービン翼に摩耗が生じた場合、回転バランスが回復して軸振動が収束することがあり、確実に摩耗の有無を判定することが難しいという問題がある。
【0005】
また、排気ガス温度、発電効率を監視する方法の場合、タービン翼に摩耗が生じると、排気ガス温度の上昇、発電効率の低下が認められるが、これらの現象が観測されるようになった段階ではタービン翼の摩耗がかなり進行してしまっていることが多く、摩耗の発生を適時に把握することが困難である問題がある。
【0006】
また、ホイールスペースの温度差は、タービン翼の摩耗発生初期に観測されるが、いったん生じた温度差がその後解消される場合があり、再度温度差が明らかに増大していることが観測された段階ではタービン翼の摩耗がかなり進行してしまっていることが多く、やはり摩耗の発生を適時に把握することが困難である問題がある。
【0007】
さらに、音響測定による方法では、タービン翼に摩耗が生じると、ガスタービン装置の動作音が増大することが認められるが、このような現象が明確に観測されるようになった段階では、やはりタービン翼の摩耗がかなり進行してしまっていることが多いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の及び他の課題を解決するためになされたもので、回転機械の稼働中に発生する動作音を、動作音が含む特定の周波数成分に着目して解析することにより、回転機械の部品に摩耗が生じているか判定することを可能とする回転機械の部品摩耗検出方法、及び回転機械の部品摩耗検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明の一態様は、回転機械の部品摩耗検出方法であって、前記回転機械の動作音を収集して動作音データとして記録し、記録した前記動作音データを、当該動作音データの周波数特性データに変換し、前記周波数特性データから回転機械の回転周期に対応する周波数である基本周波数の所定倍までの各倍数に当たる周波数成分である特徴周波数成分を経時的に抽出し、前記抽出した特徴周波数成分のデータと、最初に抽出した特徴周波数成分のデータとを、両者に含まれる前記特徴周波数の基本周波数と前記特徴周波数の最高周波数との間に存在する各特徴周波数成分について比較することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る回転機械の部品摩耗検出方法、又は回転機械の部品摩耗検出装置によれば、回転機械の稼働中に発生する動作音を、動作音が含む特定の周波数成分に着目して解析することにより、回転機械の部品に摩耗が生じているか判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転機械の部品摩耗検出方法の概略系統図である。
【図2A】タービン翼が取り付けられているタービンアセンブリの一例を示す模式図である。
【図2B】タービン翼が取り付けられているタービンアセンブリの一例を示す模式図である。
【図3A】タービン翼を拡大して示す模式図である。
【図3B】タービン翼を拡大して示す模式図である。
【図4A】動作音の波形の一例を示す図である。
【図4B】動作音波形をフーリエ変換して得られる周波数特性の一例を示す図である。
【図4C】複数の周波数特性を重ねあわせて得られる合成周波数特性の一例を示す図である。
【図4D】合成周波数特性から対象である回転機械特有の周波数成分を抽出して得た周波数特性の一例を示す図である。
【図4E】図4Dを縦軸方向に拡大して示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による摩耗検出装置100のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態による摩耗検出装置100のソフトウェア構成の一例を示す模式図である。
【図7】本発明の一実施形態で用いられる抽出結果判別テーブル150の一例を示す図である。
【図8】本発明の抽出結果判別の概念を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態による摩耗検出方法の処理フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0013】
《摩耗検出系統の構成》
本発明の一実施形態に係る回転機械の部品摩耗検出方法を用いた摩耗検出系統の一例を、図1に模式的に示している。図1の例は、コンバインドサイクル発電所に設置されるガスタービン装置に設けられているタービン翼の摩耗検出を行う場合の系統例である。
【0014】
図1の例では、ガスタービン装置10に関連する構成のみを簡略化して示している。ガスタービン装置10に供給される高温高圧の燃焼ガスによってタービン翼16及び回転軸14が回転駆動される。回転軸14の出力は発電機20の入力に接続されていて、ガスタービン装置10の発生動力が電力に変換される。一方、ガスタービン装置10からの排気ガスは、排熱回収ボイラへ供給され、予熱水を蒸気に変えるために利用される。
【0015】
本実施形態の摩耗検出系統では、ガスタービン装置10内で動作しているタービン翼16の摩耗度合いを検出するために、ガスタービン装置10の動作音を収集するための集音装置30が設けられている。なお、摩耗検出の対象となる設備機器は、ガスタービン装置10に限られることなく、稼働を通じて摩耗が進行するおそれのある部品を有する回転機械について広く適用することができる。
【0016】
集音装置30は、例えばガスタービン装置10の動作音を電気信号に変換して出力するマイクとマイクの出力電気信号をデジタル信号に変換して、本実施形態の摩耗検出処理を実現するための摩耗検出装置100へ送信する信号変換送信部とを備えていればよく、特定の構成の装置に限定されるものではない。
【0017】
集音装置30と摩耗検出装置100とは、通信回線40によって接続されている。通信回線40は、例えば適宜の通信プロトコルを採用する通信ネットワークの一部によって構成することができ、また集音装置30と摩耗検出装置100との間の専用通信線として構成してもよい。また通信回線40は適宜の態様の無線通信によって構成してもよい。また、マイク出力のアナログ電気信号をそのまま摩耗検出装置100へ送信し、摩耗検出装置100でデジタル信号に変換する構成を採用してもよい。
【0018】
《タービン翼の摩耗検出処理の概要》
次に、本実施形態により実現される、タービン翼16の摩耗検出処理の概要について説明する。図2A、図2Bに、ガスタービン装置10のタービンアセンブリ12の一例を模式的に示している。図2Aはタービンアセンブリ12の半径方向から見た側面図を、図2Bはタービンアセンブリ12の軸方向から見た正面図を、それぞれ模式的に示している。
【0019】
図2Aの例では、タービンアセンブリ12は、回転軸14に設けられた三組のタービン16を有している。タービン16は、燃焼ガスの動圧を回転軸14の回転出力として効果的に変換するために、直径が異なる三組のタービン16A〜16Cを備えている。図2Bに示すように、各タービン16A〜16Cはハブ18の部分で回転軸14に取り付けられており、ハブ18から一体に外方へ延在しているディスク部17の外周に、多数のタービン翼TBが設けられている。図2A、図2Bのタービン16では、各タービン翼TBに軸方向から衝突する燃焼ガスのエネルギーが、タービン16及び回転軸14の回転駆動力に変換される。なお、図2A、図2Bでは、タービン翼TBの図示を一部省略している。
【0020】
次に、タービン翼TBの摩耗について説明する。図3Aに摩耗がない状態のタービン翼TBの模式図を、図3Bに摩耗が発生したタービン翼TBの模式図を、それぞれ示している。図2Aで、タービン16のディスク部17の外周に立設された各タービン翼TBには、紙面手前側から燃焼ガス流が衝突し、タービン翼TBを紙面向かって左方向へ向かう圧力を生じさせる。石炭ガスを燃焼させて得られる燃焼ガスには、LNG等の一般的な液体燃料にはない粉塵等の固体微粒子が含まれているため、燃焼ガスがタービン翼TBに衝突するときに、その含まれている固体微粒子がタービン翼TBを摩耗させる。図3Bに示す摩耗が発生したタービン翼TBでは、タービン翼TBの側縁部が削り取られるように摩耗Wが発生して進行していることがわかる。このようなタービン翼TBに発生する摩耗Wは、ガスタービン装置10を停止させ、図示しないケーシングを取り外してタービンアセンブリ12を目視すれば発見することができるが、本実施例では、ガスタービン装置10が動作中に発生する動作音の変化に基づいて、タービン翼TBに摩耗が生じているか判定することとしている。
【0021】
次に、図4A〜図4Eを参照して、タービン翼TBの摩耗を検出するための、ガスタービン装置10の動作音解析処理の手順を説明する。図4A〜図4Eは、ガスタービン装置10の動作音波形サンプルと、その波形サンプルを操作して得られる波形データの例を示している。図4A〜図4Eの各図においては、(a)タービン翼TBの摩耗なし、(b)タービン翼TBの摩耗ありのそれぞれの場合の波形データサンプルを対比させて示している。
【0022】
まず、図4Aは、ガスタービン装置10の動作中にサンプリングされた動作音の波形サンプルを示している。測定対象となったガスタービン装置10は、電源周波数60Hz用の2極発電機に接続されるもので、運転速度は3600rpmである。図4Aの各波形サンプルの縦軸は動作音のレベルを示しており、特に特定の単位を用いることなく、動作音のレベル変動を相対的に示している。図4Aは、解析対象となる動作音の生データを示しており、この状態では、タービン翼TBの摩耗発生を知るために、両者を定量的に比較することは困難である。
【0023】
次に、図4Bに、図4Aに示した各波形をフーリエ変換して得られる波形データの例を示している。前記のように、ガスタービン装置10の運転速度は3600rpmであるから、1つのタービン翼TBに注目すると、毎秒60回転することになる。ここで、いま注目したタービン翼TBに摩耗Wが発生しているとすると、その摩耗Wによって生じる、正常なタービン翼TBとは異なる音響のレベルも、毎秒60回周期的に変化すると考えられる。すなわち、1つのタービン翼TBに発生した摩耗は、基本的に周波数60Hzの異音として測定されると考えられる。したがって、摩耗Wが発生したタービン翼TBが2つ、3つと増えていったとすると、測定される異音の周波数は、60Hzの2倍、3倍の位置にも現れるようになり、すべてのタービン翼TB(図2A、図2Bの例では92枚)に摩耗Wが発生している場合には、60×92=5520Hzまで、60の倍数の周波数において異音が測定されることとなる。なお、この注目すべき周波数成分は、発電用ガスタービン装置10の場合、駆動する発電機20の電源周波数に対応して異なり、例えば、東日本のように電源周波数が50Hzである地域で使用される発電用ガスタービン装置10の場合には、50Hzの倍数の成分となる。
【0024】
図4Bでは、図4Aに示すように記録された動作音の波形データについて、その周波数特性を明らかにするために、フーリエ変換処理を行い、その結果得られた波形データ例を示している。図4Bの波形データの周波数特性は、横軸に周波数を、縦軸に図4Aと同じく任意の音響レベルをとって図示されている。図4Bに示されるように、摩耗有無のいずれの場合でも、周波数60Hz、及び5520Hzにおいて顕著なピークが記録されている。なお、(a)の摩耗なしの場合にも、60Hz及び5520Hzでピークが記録されるのは、タービン16の基本回転周波数である60Hzと、92枚のタービン翼TBがそれぞれ発生する音響の合成として得られる5520Hzとに、ガスタービン装置10の動作音に特徴的な音響が含まれているためと考えられる。
【0025】
次に、図4Cには、図4Aで測定した動作音の複数の波形データをそれぞれフーリエ変換処理し、合成して(重ね合わせて)得られる周波数特性を示している。図4Cのグラフの縦軸、横軸は、図4Bと同様である。複数の波形データを重ね合わせることにより、タービン翼TBの摩耗が進行してレベルが漸増している周波数成分はその増大分が増幅される。一方、タービン翼摩耗とは異なる要因の雑音など、一過性の周波数成分については重ね合わせによって低減される。このように、複数の波形データを合成することにより、タービン翼摩耗に起因する周波数成分を強調することができる。
【0026】
次に、図4Cで得られた重ね合わせ処理後の周波数特性データにおいて、測定対象であるガスタービン装置10の動作音に特徴的な、60の倍数の周波数成分を抽出することにより、図4Dの周波数特性データを得る。図4Dのように、図4Cの周波数特性データから60の倍数の周波数成分(特徴周波数)を抽出することで、時間間隔をおいて測定、生成された60の倍数成分に関する周波数特性データを比較し、経時的な変動分をモニタすることによって、タービン翼摩耗に起因する異音の周波数成分の変化を記録することができ、これによりタービン翼TBの摩耗を検出することができる。図4Eは、図4Dの周波数特性データを、縦軸方向に4倍に拡大して示した図である。先鋭なピークを示す60Hz(基本周波数)と5520Hz(特徴周波数のうち事実上の最高周波数)の周波数成分の間において、例えば2000Hz〜4500Hz付近の領域で、各周波数成分が増大していることが読み取れる。したがって、図4Eのように拡大した周波数特性データを目視で時系列に観察することにより、タービン翼TBの摩耗の有無を簡易的に判定することもできる。
【0027】
以上の周波数特性データのモニタは、例えば1日1回実施することとし、ガスタービン装置10の動作音を、1時間おき、あるいは10分おき等、適宜の時間間隔で収集し、例えばこのように収集した24回分、あるいは144回分の波形データから図4D又は図4Eの周波数特性データを得るように実施することができる。
【0028】
《摩耗検出装置100》
次に、摩耗検出装置100の構成について説明する。図5に、本実施形態における摩耗検出装置100の構成例を示している。
【0029】
摩耗検出装置100は、例えば一般的なコンピュータの構成を有し、中央処理装置101(例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、以下簡単のため「CPU」と称する)、主記憶装置102(例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory))、補助記憶装置103(例えばハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD))、ユーザの操作入力を受け付ける入力装置104(例えばキーボードやマウス)、出力装置105(例えば液晶モニタ)、他の装置との間の通信を実現する通信インターフェイス106(例えばNIC(Network Interface Card))を備えている。
【0030】
摩耗検出装置100で稼働するオペレーティングシステム(Operating System、 OS)は、特定のシステムに限定されることはない。例えばWindows(登録商標)、UNIX(登録商標)系のオペレーティングシステム、例えばLinux(登録商標)がこのOSとして好適に用いられる。
【0031】
次に、摩耗検出装置100のソフトウェア構成について説明する。図6に、摩耗検出装置100のソフトウェア構成の一例を示している。摩耗検出装置100は、データI/O部110、OS120、及び音響処理部130を備えている。データI/O部110は、OS120の配下で、集音装置30からの音響データ入力、入力装置104からのデータ入力等を受付けて音響処理部130へ引き渡す入力データ処理と、音響処理部130からの出力データを出力装置105等へ引き渡す出力データ処理とを実行する。また、摩耗検出装置100には、集音装置30から入力される音響データ及びその音響データから生成される各種波形データを格納する音響データ記憶部140と、音響処理部130が使用する抽出結果判別テーブル150が設定されている。
【0032】
OS120は、摩耗検出装置100のハードウェア構成に関して述べたように、データI/O部110によるデータ入出力処理、及び音響処理部130の動作のための基盤を提供する基本ソフトウェアである。
【0033】
音響処理部130は、本実施形態により実行されるタービン翼TBの摩耗検出処理を、集音装置30からの動作音データを解析することにより実現する機能を有する。音響処理部130は、補助記憶装置103に記憶されている、これを実現するプログラムをCPU101が読み出して実行することにより実現する機能ブロックである。
【0034】
音響処理部130はさらに、フーリエ変換部1310、変換後データ合成部1320、周波数成分抽出部1330、及び抽出結果判別部1340の各機能ブロックを備えて構成されている。
【0035】
フーリエ変換部1310では、集音装置30によって収集され、データI/O部110を介して音響データ記憶部140に格納された動作音波形データについて、フーリエ変換処理が実行される。集音装置30からは、所定の時間間隔で動作音波形データが入力され、音響データ記憶部140に格納されるので、フーリエ変換部1310は、これらの動作音波形データが音響データ記憶部140に格納されるごとに、順次フーリエ変換処理を実行する。ただし、フーリエ変換処理は、複数の動作音波形データについてまとめて実行するようにしてもよい。前記のように、フーリエ変換部1310で変換された波形データは、音響データ記憶部140に格納される。
【0036】
変換後データ合成部1320は、フーリエ変換部1310によってフーリエ変換することにより得られる複数の周波数特性データを重ね合わせる合成処理を行う。合成された周波数特性データは、音響データ記憶部140に格納される。
【0037】
周波数成分抽出部1330は、変換後データ合成部1320が生成した周波数特性データから、60の倍数の周波数成分を抽出して、中間周波数成分、本実施形態の例では60Hz〜5520Hzの間の抽出された周波数成分を比較するための、抽出周波数特性データを生成する。
【0038】
抽出結果判別部1340は、後述する抽出結果判別テーブル150を参照して、タービン翼TBに摩耗が発生しているか判別する処理を実行する。判別結果は、データI/O部110を介して、摩耗検出装置100の出力装置105から、適宜の形式で出力させることができる。
【0039】
なお、周波数成分抽出部1330で得られた周波数成分データを、例えば図4Eに例示したグラフ形式のグラフィック出力となるように、データI/O部110を介して、摩耗検出装置100の出力装置105から出力させる構成とすれば、そのグラフィック出力を参照して、人がタービン翼TBの摩耗発生有無を判定することもできる。
【0040】
次に、抽出結果判別テーブル150について説明する。図7に、本実施形態の抽出結果判別テーブル150の一例を示している。抽出結果判別テーブル150には、フーリエ変換及び重ねあわせ処理が実行され、さらに60の倍数の周波数成分が抽出された状態の周波数特性データ(図4D又は図4E)が、摩耗検出装置100の稼働開始から累積的に記録されている。図7の例では、60Hz〜5520Hz(=60×92枚)の周波数領域での、抽出された各周波数成分である120Hz〜5460Hzのレベルについて、抽出結果が得られるごとに、周波数成分抽出部1330によって、抽出結果データIDを付して記録されている。1つの抽出結果周波数データのレコードには、例えば図7の第1レコードが示すように、抽出結果データID=1に対応して、120Hz〜5460Hzまでの図4D又は図4Eの縦軸レベルに対応する数値が、56、…、17、…のように記録される。抽出結果判別テーブル150は、抽出結果判別部1340によって参照され、タービン翼TBに摩耗が発生しているか判別するためのデータとして使用される。
【0041】
次に、抽出結果周波数データに基づく、タービン翼TBの摩耗発生有無判別処理について説明する。まず、摩耗検出装置100のソフトウェア構成に関して説明したように、抽出結果周波数データは、例えば直近複数回のデータを摩耗検出装置100の出力装置105から適宜のグラフィック形式(例えば図4E)で表示出力させることにより、人による摩耗有無判定資料として利用することができる。この場合、表示する複数回のデータの差分を色分け等により区分して表示することにより、判定を容易にすることができる。
【0042】
抽出周波数データに基づいて摩耗発生有無を自動判定させる場合の処理概要は以下のようになる。抽出結果判別部1340は、周波数成分抽出部1330によって抽出され、抽出結果判別テーブル150に記録されている抽出結果周波数データ群について、正常値と考えられるデータと異常値と考えられるデータとを判別し、異常値が検出された場合に、タービン翼TBの摩耗発生と判定してその旨の情報を、出力装置105を介して出力する処理を実行する。
【0043】
抽出結果判別部1340では、抽出結果判別テーブル150に記録されている抽出結果周波数データについて、複数の直近データを採用し、その抽出結果周波数データ群の中から、タービン翼TBの摩耗発生を示す異常値を検出している。図8に、抽出結果周波数データに対する抽出結果判別処理の概念図を示している。本実施形態では、異常値の抽出処理を、多変量解析手法の一法である1クラスν−サポートベクターマシンを用いて実行している。本実施形態では、異常値の割合を示すνを一例として10%とした。1クラスν−サポートベクターマシン自体は公知の演算方法であり、例えば、赤穂昭太郎著、「カーネル多変量解析」、岩波書店、2008年11月、p.4-10、p.86-105、p.106-112に詳しいので、ここでは以下に簡単に説明する。
【0044】
特徴ベクトルとパラメータの内積からなる関数
【数1】
をとると、外れ値を判別しようとする対象サンプルは、f(x(1)),...,f(x(n))のように1次元のデータとなる。これらのデータを、正の閾値ρによって分類する。ρ≦f(x(i))となるデータは正常値と、ρ<f(x(i))となるデータは外れ値と判定する。
【0045】
ここで、適切な閾値ρを設定するために、次の損失関数を作成する。
【数2】
この損失関数により定まる損失を抑えながら閾値ρを大とする基準を考えると、サンプルデータ中の外れ値を判別する処理を、以下の最適化問題を解くことに帰着させることができる。
【数3】
概略以上の操作によって、図8に示す正常値と異常値とを判別するための識別関数f(x)を求めることができる。
【0046】
抽出結果判別部1340では、前記のように、抽出結果周波数データの正常値と異常値とを判別するための閾値として、あらかじめ経験的に設定される正常値および異常値をそれぞれ代表する周波数データを利用して算出された識別関数f(x)を設定しておく。抽出結果判別部1340は、前記の設定された識別関数f(x)を用いて、実際に周波数成分抽出部1330によって抽出され抽出結果判別テーブル150に記録されている抽出結果周波数データに関して異常値が判別抽出された場合、タービン翼TBに摩耗が発生したものとして、異常値が検出された事象、及び異常値検出時刻、検出頻度などのデータを算出し、摩耗検出装置100の出力装置105などに送信する処理を実行する。
【0047】
《摩耗検出処理フローの説明》
次に、以上の構成によって実現される摩耗検出装置100の処理について説明する。図9に、摩耗検出装置100によって実行される摩耗検出処理フローの一例を示している。なお、図9において、各処理ステップに付した符号の「S」の文字は、「Step」を表している。この摩耗検出処理フローの開始契機は、摩耗検出装置100の入力装置104から手動で与えることができる。あるいは、摩耗検出装置100のOS120から時間情報を得て、所定の時刻に、又は所定の時間間隔で摩耗検出処理フロー開始の契機を与える機能ブロックを設けておいてもよい。
【0048】
前記の例を含む何らかの契機で本実施形態の摩耗検出処理フローが開始されると(S901)、まず、音響データ記憶部140は、集音装置30によって収集され、送信されてくるガスタービン装置10の動作音データを取得して、波形データとして記録する(S902)。本実施形態では、図4Aに例示したように、波形データは約80msにわたって収集するものとしている。ただし、本実施形態のように、ガスタービン装置10の回転速度が、出力周波数60Hzの2極発電機に適合する3600rpmであれば、最短で17ms程度の波形データを収集すれば、以後の処理は可能である。
【0049】
次いで、音響データ記憶部140は、動作音波形データが、m回分記録されたか判定し、m回分記録されていると判定した場合はS904の処理に進み、m回分のデータが記録されていないと判定した場合(S903、No)、適宜の時間間隔が設定されたタイマーで待機した後(S905)、S902に戻って動作音の波形データを記録する。S905のタイマーにより、摩耗検出処理に用いる動作音データが、タイマーに設定されている時間間隔ごとに、m個記録されることになる。なお、定数m及びタイマーの時間間隔は、対象となるガスタービン装置10の保守計画等に基づいて適宜に設定すればよく、例えば10分間隔でm=10個の動作音データを収集する等と設定することができる。
【0050】
次いで、フーリエ変換部1310が、音響データ記憶部140に記録されているm個の動作音データについて、フーリエ変換処理する(S904)。次いで変換後データ合成部1320が、フーリエ変換されたm個の動作音データを重ね合わせる合成処理を実行する(S906)。
【0051】
次に、周波数成分抽出部1330が、音響データ記憶部140に記録されている、合成された周波数データについて、本実施形態における基本周波数である60Hzの倍数の成分を抽出して抽出結果判別テーブル150に記録する(S907)。次いで、抽出結果判別部1340は、摩耗検出装置100のソフトウェア構成に関して説明したように、中間周波数領域(本実施形態では120〜5460Hz)に対応する抽出結果周波数データについて、あらかじめ設定した識別関数f(x)を用いて正常、異常の判別処理を行う(S908)。抽出結果判別部1340は、S908の判別結果に基づいて異常値が検出されたか判定し(S909)、異常値が検出されなかったと判定した場合(S909、No)、そのまま本処理フローを終了する(S911)。S909で異常値が検出されたと判定した場合(S909、Yes)、抽出結果判別部1340は、タービン翼TBの摩耗発生を検出した旨の情報を、データI/O部110を介して出力装置105に送信し(S910)、本処理を終了する(S911)。
【0052】
以上説明した本実施形態の摩耗検出方法によれば、ガスタービン装置10の稼働中に発生する動作音を、動作音が含む特定の周波数成分(例えば電源周波数60Hzの倍数)に着目して解析することにより、タービン翼TBに摩耗が生じているか判定することが可能となる。
【0053】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 ガスタービン装置 12 タービンアセンブリ
14 回転軸 16(16A〜16C) タービン
17 ディスク部 18 ハブ TB タービン翼 W 摩耗
20 発電機 30 集音装置 40 通信回線
100 摩耗検出装置 101 中央処理装置
102 主記憶装置 103 補助記憶装置
104 入力装置 105 出力装置 106 通信インターフェイス
110 データI/O部 120 OS 130 音響処理部
140 音響データ記憶部 150 抽出結果判別テーブル
1310 フーリエ変換部
1320 変換後データ合成部 1330 周波数成分抽出部
1340 抽出結果判別部
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転機械の部品摩耗検出方法、及び回転機械の部品摩耗検出装置に係わり、特に、対象の回転機械を通常稼働させたまま部品の摩耗状況を調べることを可能とする回転機械の部品摩耗検出方法、及び回転機械の部品摩耗検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の省エネルギー及び地球温暖化防止に対する要請から、火力発電におけるエネルギー効率向上が強く求められている。これに対応して、従来火力発電に用いられている蒸気タービン装置とガスタービン装置とを組み合わせて発電するコンバインドサイクル火力発電が開発されている。コンバインドサイクル火力発電は、ガスタービン装置からの排気ガスの熱を回収することにより熱効率を高めている。
ガスタービン翼は高温・高圧ガスにさらされるため、タービン翼が摩耗しやすい問題点がある。タービン翼の摩耗の有無を判断する方法としては、例えばガスタービン装置の軸振動、排気ガス温度、発電効率、ホイールスペース(タービン翼を支持するディスク間等のスペース)温度差、又は動作時に発生する音響を監視し、測定する方法などがある。また、タービン翼単体の損傷を計測する技術としては、例えば特許文献1があり、タービン翼に発生するき裂の深さを、超音波を利用して測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−310112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、軸振動により検出する方法では、タービン翼の一部に摩耗が生じて回転バランスが崩れることにより軸振動が発生しても、最初に摩耗が発生したタービン翼と軸に関して対称の位置にある他のタービン翼に摩耗が生じた場合、回転バランスが回復して軸振動が収束することがあり、確実に摩耗の有無を判定することが難しいという問題がある。
【0005】
また、排気ガス温度、発電効率を監視する方法の場合、タービン翼に摩耗が生じると、排気ガス温度の上昇、発電効率の低下が認められるが、これらの現象が観測されるようになった段階ではタービン翼の摩耗がかなり進行してしまっていることが多く、摩耗の発生を適時に把握することが困難である問題がある。
【0006】
また、ホイールスペースの温度差は、タービン翼の摩耗発生初期に観測されるが、いったん生じた温度差がその後解消される場合があり、再度温度差が明らかに増大していることが観測された段階ではタービン翼の摩耗がかなり進行してしまっていることが多く、やはり摩耗の発生を適時に把握することが困難である問題がある。
【0007】
さらに、音響測定による方法では、タービン翼に摩耗が生じると、ガスタービン装置の動作音が増大することが認められるが、このような現象が明確に観測されるようになった段階では、やはりタービン翼の摩耗がかなり進行してしまっていることが多いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の及び他の課題を解決するためになされたもので、回転機械の稼働中に発生する動作音を、動作音が含む特定の周波数成分に着目して解析することにより、回転機械の部品に摩耗が生じているか判定することを可能とする回転機械の部品摩耗検出方法、及び回転機械の部品摩耗検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明の一態様は、回転機械の部品摩耗検出方法であって、前記回転機械の動作音を収集して動作音データとして記録し、記録した前記動作音データを、当該動作音データの周波数特性データに変換し、前記周波数特性データから回転機械の回転周期に対応する周波数である基本周波数の所定倍までの各倍数に当たる周波数成分である特徴周波数成分を経時的に抽出し、前記抽出した特徴周波数成分のデータと、最初に抽出した特徴周波数成分のデータとを、両者に含まれる前記特徴周波数の基本周波数と前記特徴周波数の最高周波数との間に存在する各特徴周波数成分について比較することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る回転機械の部品摩耗検出方法、又は回転機械の部品摩耗検出装置によれば、回転機械の稼働中に発生する動作音を、動作音が含む特定の周波数成分に着目して解析することにより、回転機械の部品に摩耗が生じているか判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転機械の部品摩耗検出方法の概略系統図である。
【図2A】タービン翼が取り付けられているタービンアセンブリの一例を示す模式図である。
【図2B】タービン翼が取り付けられているタービンアセンブリの一例を示す模式図である。
【図3A】タービン翼を拡大して示す模式図である。
【図3B】タービン翼を拡大して示す模式図である。
【図4A】動作音の波形の一例を示す図である。
【図4B】動作音波形をフーリエ変換して得られる周波数特性の一例を示す図である。
【図4C】複数の周波数特性を重ねあわせて得られる合成周波数特性の一例を示す図である。
【図4D】合成周波数特性から対象である回転機械特有の周波数成分を抽出して得た周波数特性の一例を示す図である。
【図4E】図4Dを縦軸方向に拡大して示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による摩耗検出装置100のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態による摩耗検出装置100のソフトウェア構成の一例を示す模式図である。
【図7】本発明の一実施形態で用いられる抽出結果判別テーブル150の一例を示す図である。
【図8】本発明の抽出結果判別の概念を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態による摩耗検出方法の処理フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0013】
《摩耗検出系統の構成》
本発明の一実施形態に係る回転機械の部品摩耗検出方法を用いた摩耗検出系統の一例を、図1に模式的に示している。図1の例は、コンバインドサイクル発電所に設置されるガスタービン装置に設けられているタービン翼の摩耗検出を行う場合の系統例である。
【0014】
図1の例では、ガスタービン装置10に関連する構成のみを簡略化して示している。ガスタービン装置10に供給される高温高圧の燃焼ガスによってタービン翼16及び回転軸14が回転駆動される。回転軸14の出力は発電機20の入力に接続されていて、ガスタービン装置10の発生動力が電力に変換される。一方、ガスタービン装置10からの排気ガスは、排熱回収ボイラへ供給され、予熱水を蒸気に変えるために利用される。
【0015】
本実施形態の摩耗検出系統では、ガスタービン装置10内で動作しているタービン翼16の摩耗度合いを検出するために、ガスタービン装置10の動作音を収集するための集音装置30が設けられている。なお、摩耗検出の対象となる設備機器は、ガスタービン装置10に限られることなく、稼働を通じて摩耗が進行するおそれのある部品を有する回転機械について広く適用することができる。
【0016】
集音装置30は、例えばガスタービン装置10の動作音を電気信号に変換して出力するマイクとマイクの出力電気信号をデジタル信号に変換して、本実施形態の摩耗検出処理を実現するための摩耗検出装置100へ送信する信号変換送信部とを備えていればよく、特定の構成の装置に限定されるものではない。
【0017】
集音装置30と摩耗検出装置100とは、通信回線40によって接続されている。通信回線40は、例えば適宜の通信プロトコルを採用する通信ネットワークの一部によって構成することができ、また集音装置30と摩耗検出装置100との間の専用通信線として構成してもよい。また通信回線40は適宜の態様の無線通信によって構成してもよい。また、マイク出力のアナログ電気信号をそのまま摩耗検出装置100へ送信し、摩耗検出装置100でデジタル信号に変換する構成を採用してもよい。
【0018】
《タービン翼の摩耗検出処理の概要》
次に、本実施形態により実現される、タービン翼16の摩耗検出処理の概要について説明する。図2A、図2Bに、ガスタービン装置10のタービンアセンブリ12の一例を模式的に示している。図2Aはタービンアセンブリ12の半径方向から見た側面図を、図2Bはタービンアセンブリ12の軸方向から見た正面図を、それぞれ模式的に示している。
【0019】
図2Aの例では、タービンアセンブリ12は、回転軸14に設けられた三組のタービン16を有している。タービン16は、燃焼ガスの動圧を回転軸14の回転出力として効果的に変換するために、直径が異なる三組のタービン16A〜16Cを備えている。図2Bに示すように、各タービン16A〜16Cはハブ18の部分で回転軸14に取り付けられており、ハブ18から一体に外方へ延在しているディスク部17の外周に、多数のタービン翼TBが設けられている。図2A、図2Bのタービン16では、各タービン翼TBに軸方向から衝突する燃焼ガスのエネルギーが、タービン16及び回転軸14の回転駆動力に変換される。なお、図2A、図2Bでは、タービン翼TBの図示を一部省略している。
【0020】
次に、タービン翼TBの摩耗について説明する。図3Aに摩耗がない状態のタービン翼TBの模式図を、図3Bに摩耗が発生したタービン翼TBの模式図を、それぞれ示している。図2Aで、タービン16のディスク部17の外周に立設された各タービン翼TBには、紙面手前側から燃焼ガス流が衝突し、タービン翼TBを紙面向かって左方向へ向かう圧力を生じさせる。石炭ガスを燃焼させて得られる燃焼ガスには、LNG等の一般的な液体燃料にはない粉塵等の固体微粒子が含まれているため、燃焼ガスがタービン翼TBに衝突するときに、その含まれている固体微粒子がタービン翼TBを摩耗させる。図3Bに示す摩耗が発生したタービン翼TBでは、タービン翼TBの側縁部が削り取られるように摩耗Wが発生して進行していることがわかる。このようなタービン翼TBに発生する摩耗Wは、ガスタービン装置10を停止させ、図示しないケーシングを取り外してタービンアセンブリ12を目視すれば発見することができるが、本実施例では、ガスタービン装置10が動作中に発生する動作音の変化に基づいて、タービン翼TBに摩耗が生じているか判定することとしている。
【0021】
次に、図4A〜図4Eを参照して、タービン翼TBの摩耗を検出するための、ガスタービン装置10の動作音解析処理の手順を説明する。図4A〜図4Eは、ガスタービン装置10の動作音波形サンプルと、その波形サンプルを操作して得られる波形データの例を示している。図4A〜図4Eの各図においては、(a)タービン翼TBの摩耗なし、(b)タービン翼TBの摩耗ありのそれぞれの場合の波形データサンプルを対比させて示している。
【0022】
まず、図4Aは、ガスタービン装置10の動作中にサンプリングされた動作音の波形サンプルを示している。測定対象となったガスタービン装置10は、電源周波数60Hz用の2極発電機に接続されるもので、運転速度は3600rpmである。図4Aの各波形サンプルの縦軸は動作音のレベルを示しており、特に特定の単位を用いることなく、動作音のレベル変動を相対的に示している。図4Aは、解析対象となる動作音の生データを示しており、この状態では、タービン翼TBの摩耗発生を知るために、両者を定量的に比較することは困難である。
【0023】
次に、図4Bに、図4Aに示した各波形をフーリエ変換して得られる波形データの例を示している。前記のように、ガスタービン装置10の運転速度は3600rpmであるから、1つのタービン翼TBに注目すると、毎秒60回転することになる。ここで、いま注目したタービン翼TBに摩耗Wが発生しているとすると、その摩耗Wによって生じる、正常なタービン翼TBとは異なる音響のレベルも、毎秒60回周期的に変化すると考えられる。すなわち、1つのタービン翼TBに発生した摩耗は、基本的に周波数60Hzの異音として測定されると考えられる。したがって、摩耗Wが発生したタービン翼TBが2つ、3つと増えていったとすると、測定される異音の周波数は、60Hzの2倍、3倍の位置にも現れるようになり、すべてのタービン翼TB(図2A、図2Bの例では92枚)に摩耗Wが発生している場合には、60×92=5520Hzまで、60の倍数の周波数において異音が測定されることとなる。なお、この注目すべき周波数成分は、発電用ガスタービン装置10の場合、駆動する発電機20の電源周波数に対応して異なり、例えば、東日本のように電源周波数が50Hzである地域で使用される発電用ガスタービン装置10の場合には、50Hzの倍数の成分となる。
【0024】
図4Bでは、図4Aに示すように記録された動作音の波形データについて、その周波数特性を明らかにするために、フーリエ変換処理を行い、その結果得られた波形データ例を示している。図4Bの波形データの周波数特性は、横軸に周波数を、縦軸に図4Aと同じく任意の音響レベルをとって図示されている。図4Bに示されるように、摩耗有無のいずれの場合でも、周波数60Hz、及び5520Hzにおいて顕著なピークが記録されている。なお、(a)の摩耗なしの場合にも、60Hz及び5520Hzでピークが記録されるのは、タービン16の基本回転周波数である60Hzと、92枚のタービン翼TBがそれぞれ発生する音響の合成として得られる5520Hzとに、ガスタービン装置10の動作音に特徴的な音響が含まれているためと考えられる。
【0025】
次に、図4Cには、図4Aで測定した動作音の複数の波形データをそれぞれフーリエ変換処理し、合成して(重ね合わせて)得られる周波数特性を示している。図4Cのグラフの縦軸、横軸は、図4Bと同様である。複数の波形データを重ね合わせることにより、タービン翼TBの摩耗が進行してレベルが漸増している周波数成分はその増大分が増幅される。一方、タービン翼摩耗とは異なる要因の雑音など、一過性の周波数成分については重ね合わせによって低減される。このように、複数の波形データを合成することにより、タービン翼摩耗に起因する周波数成分を強調することができる。
【0026】
次に、図4Cで得られた重ね合わせ処理後の周波数特性データにおいて、測定対象であるガスタービン装置10の動作音に特徴的な、60の倍数の周波数成分を抽出することにより、図4Dの周波数特性データを得る。図4Dのように、図4Cの周波数特性データから60の倍数の周波数成分(特徴周波数)を抽出することで、時間間隔をおいて測定、生成された60の倍数成分に関する周波数特性データを比較し、経時的な変動分をモニタすることによって、タービン翼摩耗に起因する異音の周波数成分の変化を記録することができ、これによりタービン翼TBの摩耗を検出することができる。図4Eは、図4Dの周波数特性データを、縦軸方向に4倍に拡大して示した図である。先鋭なピークを示す60Hz(基本周波数)と5520Hz(特徴周波数のうち事実上の最高周波数)の周波数成分の間において、例えば2000Hz〜4500Hz付近の領域で、各周波数成分が増大していることが読み取れる。したがって、図4Eのように拡大した周波数特性データを目視で時系列に観察することにより、タービン翼TBの摩耗の有無を簡易的に判定することもできる。
【0027】
以上の周波数特性データのモニタは、例えば1日1回実施することとし、ガスタービン装置10の動作音を、1時間おき、あるいは10分おき等、適宜の時間間隔で収集し、例えばこのように収集した24回分、あるいは144回分の波形データから図4D又は図4Eの周波数特性データを得るように実施することができる。
【0028】
《摩耗検出装置100》
次に、摩耗検出装置100の構成について説明する。図5に、本実施形態における摩耗検出装置100の構成例を示している。
【0029】
摩耗検出装置100は、例えば一般的なコンピュータの構成を有し、中央処理装置101(例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、以下簡単のため「CPU」と称する)、主記憶装置102(例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory))、補助記憶装置103(例えばハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD))、ユーザの操作入力を受け付ける入力装置104(例えばキーボードやマウス)、出力装置105(例えば液晶モニタ)、他の装置との間の通信を実現する通信インターフェイス106(例えばNIC(Network Interface Card))を備えている。
【0030】
摩耗検出装置100で稼働するオペレーティングシステム(Operating System、 OS)は、特定のシステムに限定されることはない。例えばWindows(登録商標)、UNIX(登録商標)系のオペレーティングシステム、例えばLinux(登録商標)がこのOSとして好適に用いられる。
【0031】
次に、摩耗検出装置100のソフトウェア構成について説明する。図6に、摩耗検出装置100のソフトウェア構成の一例を示している。摩耗検出装置100は、データI/O部110、OS120、及び音響処理部130を備えている。データI/O部110は、OS120の配下で、集音装置30からの音響データ入力、入力装置104からのデータ入力等を受付けて音響処理部130へ引き渡す入力データ処理と、音響処理部130からの出力データを出力装置105等へ引き渡す出力データ処理とを実行する。また、摩耗検出装置100には、集音装置30から入力される音響データ及びその音響データから生成される各種波形データを格納する音響データ記憶部140と、音響処理部130が使用する抽出結果判別テーブル150が設定されている。
【0032】
OS120は、摩耗検出装置100のハードウェア構成に関して述べたように、データI/O部110によるデータ入出力処理、及び音響処理部130の動作のための基盤を提供する基本ソフトウェアである。
【0033】
音響処理部130は、本実施形態により実行されるタービン翼TBの摩耗検出処理を、集音装置30からの動作音データを解析することにより実現する機能を有する。音響処理部130は、補助記憶装置103に記憶されている、これを実現するプログラムをCPU101が読み出して実行することにより実現する機能ブロックである。
【0034】
音響処理部130はさらに、フーリエ変換部1310、変換後データ合成部1320、周波数成分抽出部1330、及び抽出結果判別部1340の各機能ブロックを備えて構成されている。
【0035】
フーリエ変換部1310では、集音装置30によって収集され、データI/O部110を介して音響データ記憶部140に格納された動作音波形データについて、フーリエ変換処理が実行される。集音装置30からは、所定の時間間隔で動作音波形データが入力され、音響データ記憶部140に格納されるので、フーリエ変換部1310は、これらの動作音波形データが音響データ記憶部140に格納されるごとに、順次フーリエ変換処理を実行する。ただし、フーリエ変換処理は、複数の動作音波形データについてまとめて実行するようにしてもよい。前記のように、フーリエ変換部1310で変換された波形データは、音響データ記憶部140に格納される。
【0036】
変換後データ合成部1320は、フーリエ変換部1310によってフーリエ変換することにより得られる複数の周波数特性データを重ね合わせる合成処理を行う。合成された周波数特性データは、音響データ記憶部140に格納される。
【0037】
周波数成分抽出部1330は、変換後データ合成部1320が生成した周波数特性データから、60の倍数の周波数成分を抽出して、中間周波数成分、本実施形態の例では60Hz〜5520Hzの間の抽出された周波数成分を比較するための、抽出周波数特性データを生成する。
【0038】
抽出結果判別部1340は、後述する抽出結果判別テーブル150を参照して、タービン翼TBに摩耗が発生しているか判別する処理を実行する。判別結果は、データI/O部110を介して、摩耗検出装置100の出力装置105から、適宜の形式で出力させることができる。
【0039】
なお、周波数成分抽出部1330で得られた周波数成分データを、例えば図4Eに例示したグラフ形式のグラフィック出力となるように、データI/O部110を介して、摩耗検出装置100の出力装置105から出力させる構成とすれば、そのグラフィック出力を参照して、人がタービン翼TBの摩耗発生有無を判定することもできる。
【0040】
次に、抽出結果判別テーブル150について説明する。図7に、本実施形態の抽出結果判別テーブル150の一例を示している。抽出結果判別テーブル150には、フーリエ変換及び重ねあわせ処理が実行され、さらに60の倍数の周波数成分が抽出された状態の周波数特性データ(図4D又は図4E)が、摩耗検出装置100の稼働開始から累積的に記録されている。図7の例では、60Hz〜5520Hz(=60×92枚)の周波数領域での、抽出された各周波数成分である120Hz〜5460Hzのレベルについて、抽出結果が得られるごとに、周波数成分抽出部1330によって、抽出結果データIDを付して記録されている。1つの抽出結果周波数データのレコードには、例えば図7の第1レコードが示すように、抽出結果データID=1に対応して、120Hz〜5460Hzまでの図4D又は図4Eの縦軸レベルに対応する数値が、56、…、17、…のように記録される。抽出結果判別テーブル150は、抽出結果判別部1340によって参照され、タービン翼TBに摩耗が発生しているか判別するためのデータとして使用される。
【0041】
次に、抽出結果周波数データに基づく、タービン翼TBの摩耗発生有無判別処理について説明する。まず、摩耗検出装置100のソフトウェア構成に関して説明したように、抽出結果周波数データは、例えば直近複数回のデータを摩耗検出装置100の出力装置105から適宜のグラフィック形式(例えば図4E)で表示出力させることにより、人による摩耗有無判定資料として利用することができる。この場合、表示する複数回のデータの差分を色分け等により区分して表示することにより、判定を容易にすることができる。
【0042】
抽出周波数データに基づいて摩耗発生有無を自動判定させる場合の処理概要は以下のようになる。抽出結果判別部1340は、周波数成分抽出部1330によって抽出され、抽出結果判別テーブル150に記録されている抽出結果周波数データ群について、正常値と考えられるデータと異常値と考えられるデータとを判別し、異常値が検出された場合に、タービン翼TBの摩耗発生と判定してその旨の情報を、出力装置105を介して出力する処理を実行する。
【0043】
抽出結果判別部1340では、抽出結果判別テーブル150に記録されている抽出結果周波数データについて、複数の直近データを採用し、その抽出結果周波数データ群の中から、タービン翼TBの摩耗発生を示す異常値を検出している。図8に、抽出結果周波数データに対する抽出結果判別処理の概念図を示している。本実施形態では、異常値の抽出処理を、多変量解析手法の一法である1クラスν−サポートベクターマシンを用いて実行している。本実施形態では、異常値の割合を示すνを一例として10%とした。1クラスν−サポートベクターマシン自体は公知の演算方法であり、例えば、赤穂昭太郎著、「カーネル多変量解析」、岩波書店、2008年11月、p.4-10、p.86-105、p.106-112に詳しいので、ここでは以下に簡単に説明する。
【0044】
特徴ベクトルとパラメータの内積からなる関数
【数1】
をとると、外れ値を判別しようとする対象サンプルは、f(x(1)),...,f(x(n))のように1次元のデータとなる。これらのデータを、正の閾値ρによって分類する。ρ≦f(x(i))となるデータは正常値と、ρ<f(x(i))となるデータは外れ値と判定する。
【0045】
ここで、適切な閾値ρを設定するために、次の損失関数を作成する。
【数2】
この損失関数により定まる損失を抑えながら閾値ρを大とする基準を考えると、サンプルデータ中の外れ値を判別する処理を、以下の最適化問題を解くことに帰着させることができる。
【数3】
概略以上の操作によって、図8に示す正常値と異常値とを判別するための識別関数f(x)を求めることができる。
【0046】
抽出結果判別部1340では、前記のように、抽出結果周波数データの正常値と異常値とを判別するための閾値として、あらかじめ経験的に設定される正常値および異常値をそれぞれ代表する周波数データを利用して算出された識別関数f(x)を設定しておく。抽出結果判別部1340は、前記の設定された識別関数f(x)を用いて、実際に周波数成分抽出部1330によって抽出され抽出結果判別テーブル150に記録されている抽出結果周波数データに関して異常値が判別抽出された場合、タービン翼TBに摩耗が発生したものとして、異常値が検出された事象、及び異常値検出時刻、検出頻度などのデータを算出し、摩耗検出装置100の出力装置105などに送信する処理を実行する。
【0047】
《摩耗検出処理フローの説明》
次に、以上の構成によって実現される摩耗検出装置100の処理について説明する。図9に、摩耗検出装置100によって実行される摩耗検出処理フローの一例を示している。なお、図9において、各処理ステップに付した符号の「S」の文字は、「Step」を表している。この摩耗検出処理フローの開始契機は、摩耗検出装置100の入力装置104から手動で与えることができる。あるいは、摩耗検出装置100のOS120から時間情報を得て、所定の時刻に、又は所定の時間間隔で摩耗検出処理フロー開始の契機を与える機能ブロックを設けておいてもよい。
【0048】
前記の例を含む何らかの契機で本実施形態の摩耗検出処理フローが開始されると(S901)、まず、音響データ記憶部140は、集音装置30によって収集され、送信されてくるガスタービン装置10の動作音データを取得して、波形データとして記録する(S902)。本実施形態では、図4Aに例示したように、波形データは約80msにわたって収集するものとしている。ただし、本実施形態のように、ガスタービン装置10の回転速度が、出力周波数60Hzの2極発電機に適合する3600rpmであれば、最短で17ms程度の波形データを収集すれば、以後の処理は可能である。
【0049】
次いで、音響データ記憶部140は、動作音波形データが、m回分記録されたか判定し、m回分記録されていると判定した場合はS904の処理に進み、m回分のデータが記録されていないと判定した場合(S903、No)、適宜の時間間隔が設定されたタイマーで待機した後(S905)、S902に戻って動作音の波形データを記録する。S905のタイマーにより、摩耗検出処理に用いる動作音データが、タイマーに設定されている時間間隔ごとに、m個記録されることになる。なお、定数m及びタイマーの時間間隔は、対象となるガスタービン装置10の保守計画等に基づいて適宜に設定すればよく、例えば10分間隔でm=10個の動作音データを収集する等と設定することができる。
【0050】
次いで、フーリエ変換部1310が、音響データ記憶部140に記録されているm個の動作音データについて、フーリエ変換処理する(S904)。次いで変換後データ合成部1320が、フーリエ変換されたm個の動作音データを重ね合わせる合成処理を実行する(S906)。
【0051】
次に、周波数成分抽出部1330が、音響データ記憶部140に記録されている、合成された周波数データについて、本実施形態における基本周波数である60Hzの倍数の成分を抽出して抽出結果判別テーブル150に記録する(S907)。次いで、抽出結果判別部1340は、摩耗検出装置100のソフトウェア構成に関して説明したように、中間周波数領域(本実施形態では120〜5460Hz)に対応する抽出結果周波数データについて、あらかじめ設定した識別関数f(x)を用いて正常、異常の判別処理を行う(S908)。抽出結果判別部1340は、S908の判別結果に基づいて異常値が検出されたか判定し(S909)、異常値が検出されなかったと判定した場合(S909、No)、そのまま本処理フローを終了する(S911)。S909で異常値が検出されたと判定した場合(S909、Yes)、抽出結果判別部1340は、タービン翼TBの摩耗発生を検出した旨の情報を、データI/O部110を介して出力装置105に送信し(S910)、本処理を終了する(S911)。
【0052】
以上説明した本実施形態の摩耗検出方法によれば、ガスタービン装置10の稼働中に発生する動作音を、動作音が含む特定の周波数成分(例えば電源周波数60Hzの倍数)に着目して解析することにより、タービン翼TBに摩耗が生じているか判定することが可能となる。
【0053】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 ガスタービン装置 12 タービンアセンブリ
14 回転軸 16(16A〜16C) タービン
17 ディスク部 18 ハブ TB タービン翼 W 摩耗
20 発電機 30 集音装置 40 通信回線
100 摩耗検出装置 101 中央処理装置
102 主記憶装置 103 補助記憶装置
104 入力装置 105 出力装置 106 通信インターフェイス
110 データI/O部 120 OS 130 音響処理部
140 音響データ記憶部 150 抽出結果判別テーブル
1310 フーリエ変換部
1320 変換後データ合成部 1330 周波数成分抽出部
1340 抽出結果判別部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械の部品摩耗検出方法であって、
前記回転機械の動作音を収集して動作音データとして記録し、
記録した前記動作音データを、当該動作音データの周波数特性データに変換し、
前記周波数特性データから回転機械の回転周期に対応する周波数である基本周波数の所定倍までの各倍数に当たる周波数成分である特徴周波数成分を経時的に抽出し、
前記抽出した特徴周波数成分のデータと、最初に抽出した特徴周波数成分のデータとを、両者に含まれる前記特徴周波数の基本周波数と前記特徴周波数の最高周波数との間に存在する各特徴周波数成分について比較する、
ことを特徴とする回転機械の部品摩耗検出方法。
【請求項2】
前記抽出した特徴周波数成分のデータと、最初に抽出した特徴周波数成分のデータとを、前記基本周波数と前記特徴周波数の最高周波数との間に存在する各特徴周波数成分について比較した結果、両者の間に所定以上の差異が存在すると判定した場合、前記回転機械の部品に摩耗が生じている旨の情報を出力する、請求項1に記載の回転機械の部品摩耗検出方法。
【請求項3】
前記抽出した特徴周波数成分のデータと、最初に抽出した特徴周波数成分のデータとを、両者の差異が判別できるようにグラフィック表示する、請求項1に記載の回転機械の部品摩耗検出方法。
【請求項4】
前記動作音データは、フーリエ変換処理によって前記周波数特性データに変換され、複数の当該周波数特性データを重ね合わせることにより、当該周波数特性データに含まれるノイズを低減させる、請求項1に記載の回転機械の部品摩耗検出方法。
【請求項5】
前記回転機械がガスタービン装置であり、前記部品が前記ガスタービン装置のタービン翼である、請求項1に記載の回転機械の部品摩耗検出方法。
【請求項6】
前記抽出した特徴周波数成分のデータと、最初に抽出した特徴周波数成分のデータとの間に、所定以上の差異が存在するか判定する処理が、サポートベクターマシンによって実行される、請求項2に記載の回転機械の部品摩耗検出方法。
【請求項7】
回転機械の部品摩耗検出装置であって、
前記回転機械の動作音を収集して動作音データとして記録する音響データ記憶部と、
記録した前記動作音データを、当該動作音データの周波数特性データに変換する動作音データ変換部と、
前記周波数特性データから回転機械の回転周期に対応する周波数である基本周波数の所定倍までの各倍数に当たる周波数成分である特徴周波数成分を経時的に複数回抽出する周波数成分抽出部と、
前記抽出した特徴周波数成分のデータと、最初に抽出した特徴周波数成分のデータとを、両者に含まれる前記特徴周波数の基本周波数と前記特徴周波数の最高周波数との間に存在する各特徴周波数成分について比較し、比較した結果、両者の間に所定以上の差異が存在すると判定した場合、前記回転機械の部品に摩耗が生じている旨の情報を出力する抽出結果判別部と、
を有することを特徴とする回転機械の部品摩耗検出装置。
【請求項1】
回転機械の部品摩耗検出方法であって、
前記回転機械の動作音を収集して動作音データとして記録し、
記録した前記動作音データを、当該動作音データの周波数特性データに変換し、
前記周波数特性データから回転機械の回転周期に対応する周波数である基本周波数の所定倍までの各倍数に当たる周波数成分である特徴周波数成分を経時的に抽出し、
前記抽出した特徴周波数成分のデータと、最初に抽出した特徴周波数成分のデータとを、両者に含まれる前記特徴周波数の基本周波数と前記特徴周波数の最高周波数との間に存在する各特徴周波数成分について比較する、
ことを特徴とする回転機械の部品摩耗検出方法。
【請求項2】
前記抽出した特徴周波数成分のデータと、最初に抽出した特徴周波数成分のデータとを、前記基本周波数と前記特徴周波数の最高周波数との間に存在する各特徴周波数成分について比較した結果、両者の間に所定以上の差異が存在すると判定した場合、前記回転機械の部品に摩耗が生じている旨の情報を出力する、請求項1に記載の回転機械の部品摩耗検出方法。
【請求項3】
前記抽出した特徴周波数成分のデータと、最初に抽出した特徴周波数成分のデータとを、両者の差異が判別できるようにグラフィック表示する、請求項1に記載の回転機械の部品摩耗検出方法。
【請求項4】
前記動作音データは、フーリエ変換処理によって前記周波数特性データに変換され、複数の当該周波数特性データを重ね合わせることにより、当該周波数特性データに含まれるノイズを低減させる、請求項1に記載の回転機械の部品摩耗検出方法。
【請求項5】
前記回転機械がガスタービン装置であり、前記部品が前記ガスタービン装置のタービン翼である、請求項1に記載の回転機械の部品摩耗検出方法。
【請求項6】
前記抽出した特徴周波数成分のデータと、最初に抽出した特徴周波数成分のデータとの間に、所定以上の差異が存在するか判定する処理が、サポートベクターマシンによって実行される、請求項2に記載の回転機械の部品摩耗検出方法。
【請求項7】
回転機械の部品摩耗検出装置であって、
前記回転機械の動作音を収集して動作音データとして記録する音響データ記憶部と、
記録した前記動作音データを、当該動作音データの周波数特性データに変換する動作音データ変換部と、
前記周波数特性データから回転機械の回転周期に対応する周波数である基本周波数の所定倍までの各倍数に当たる周波数成分である特徴周波数成分を経時的に複数回抽出する周波数成分抽出部と、
前記抽出した特徴周波数成分のデータと、最初に抽出した特徴周波数成分のデータとを、両者に含まれる前記特徴周波数の基本周波数と前記特徴周波数の最高周波数との間に存在する各特徴周波数成分について比較し、比較した結果、両者の間に所定以上の差異が存在すると判定した場合、前記回転機械の部品に摩耗が生じている旨の情報を出力する抽出結果判別部と、
を有することを特徴とする回転機械の部品摩耗検出装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−79850(P2013−79850A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219458(P2011−219458)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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