説明

回転機構

【課題】小型の部品においてクリック感を得ることができるとともに、回転する際に滑らかな操作感をユーザに与えることができる回転機構を提供する。
【解決手段】回転機構30は、円周上に配置された少なくともN極およびS極を有する第1磁石部材22と、第1磁石部材22に対向する位置に設けられ、少なくともN極およ
びS極のいずれか一方を有する第2磁石部材26と、第1磁石部材22と第2磁石部材26とを相互に相対的に回転可能に保持する保持部材とを含み、第1第1磁石部材22と第2磁石部材26とが対向する端面にはヒステリシス材31が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転機構に関し、特に、ヒンジ機構、スイッチ、ボリューム、レンズ、ズームレンズ、レンズ用フィルター等の小型の部品に適用されて、クリック感を与える回転機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、クリックストップを行う回転機構をディスプレイの回転台に適用した例が、たとえば、特開2003−157016号公報に記載されている。図8は同公報に記載された回転台を構成する回転部取付板71と回転部取付板71に対向する位置に設けられた固定部取付板72とを示す図である。回転部取付板71と固定部取付板72には図8(B)に示すように、それぞれ開口部が設けられ、それぞれの開口部に回転固定用部品として、N極とS極とからなる磁石81が埋込まれ、相対応する位置で磁石が吸引しあうことによって(図8(A))クリックストップが行われ、ディスプレイの向きが決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−157016号公報(段落番号0028、0029、図7、図8等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の、クリックストップを行う回転機構は、上記のように構成されていた。ディスプレイのような大型の装置への適用例しか記載がなく、これらを小型の部品に適用した例については何ら考慮されていなかった。また、相互に単一極に着磁された磁石を用いているため、あまり大きなクリック感が得られない、という問題があった。
【0005】
また、従来の一般的なクリック感の得られる回転機構は、物理的な摺動抵抗を用いているため、摩耗の進行とともにクリック感が減少するとともに、クリック感を達成するための機構が複雑になるという問題があった。
【0006】
この発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、はっきりしたクリック感を得ることができるとともに、回転する際に滑らかな操作感をユーザに与えることができる回転機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る、回転機構は、回転軸線を取り囲む円周上に配置された少なくともN極およびS極を有する第1磁石部材と、第1磁石部材に対向する位置に設けられ、少なくともN極およびS極のいずれか一方を有する第2磁石部材と、第1磁石部材と第2磁石部材とを相互に相対的に回転可能に保持する保持部材とを含み、第1磁石部材上に配置されたN極およびS極は、回転軸線に対して直交するように延在する第1円板の端面に配置され、第2磁石部材は、少なくともN極およびS極を有し、第2磁石部材上に配置されたN極およびS極は、第1円板に対向する第2円板の端面に配置され、第1磁石部材の端面と、第2磁石部材の端面とが対向する端面には、ヒステリシス材が配置される。
【0008】
好ましくは、第1磁石部材と第2磁石部材のいずれか一方は固定部材に保持され、第1磁石部材と第2磁石部材のいずれか他方は、回転部材に保持される。
【0009】
第1磁石部材の極数と第2磁石部材の極数とは、同数であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
円周上に配置された少なくともN極およびS極を有する第1磁石部材と、少なくともN極およびS極のいずれか一方を有する第2磁石部材とを対向して配置して回転機構を構成し、第1磁石部材の端面と、前記第2磁石部材の端面とが対向する端面には、ヒステリシス材を配置したため、第1磁石部材と第2磁石部材の間の磁力によって、ユーザにクリック感を与えるとともに、回転する際に滑らかな操作感をユーザに与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施の形態に係る回転機構に用いられる永久磁石の着磁パターンの一例を示す図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係る回転機構に用いられる永久磁石の着磁パターンの他の例を示す図である。
【図3】この発明の一実施の形態に係る回転機構を示す斜視図である。
【図4】この発明の他の実施の形態に係る回転機構を示す図である。
【図5】この発明のさらに他の実施の形態に係る回転機構を示す図である。
【図6】図5に示した実施の形態の変形例を示す図である。
【図7】この発明のさらに他の実施の形態に係る回転機構を示す図である。
【図8】従来のクリックストップを行なう回転機構を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1および図2はこの発明の一実施の形態に係る回転機構に用いられる、多極(2極以上)に着磁された永久磁石11a、11bを示す図である。図1は永久磁石11aを端面から見た平面図であり、ここでは、4極に着磁されている。図2は永久磁石11bの斜視図であり、ここでは、12極に着磁されている。なお、図1は、図2において、I-Iで示す矢視図に対応する(但し、4極に着磁されている)。
【0013】
次に、図1および図2に示した永久磁石11a、11bを用いた回転機構について説明する。図3は、上記した永久磁石11aを用いた回転機構10を示す側面図である。
【0014】
図3を参照して、回転機構10は、円周上に配置された2組のN極およびS極を有する第1磁石部材13と、第1磁石部材13に対向する位置に設けられ、少なくともN極およびS極のいずれか一方の磁極を有する第2磁石部材14と、第1磁石部材13と第2磁石部材14とを、第1磁石部材13の回転軸線15に対して、相互に相対的に回転可能に保持する、図示の無い保持部材とを含む。保持部材は、第1磁石部材13と第2磁石部材14とを対向して回転軸線15を取り囲んで、回転可能に保持できる構成であれば、任意の構成が採用でき、それぞれの保持部材を、スイッチ、ボリューム等の固定部および回転部等に適用することにより、クリック感の得られる回転機構を提供できる。
【0015】
ここで第1磁石部材13と第2磁石部材14との両方を回転部材に保持してもよいし、いずれか一方は固定部材に保持されていてもよい。
【0016】
また、第1磁石部材13の極数は、少なくともN極とS極とが存在すればよい。
【0017】
以上のようにこの実施の形態によれば、第2磁石部材14はN極とS極のいずれかに引かれ、他方から排斥されるため、大きなクリック感が得られるとともに、寿命が長く、長時間にわたってユーザに与えるクリック感が減少しない回転機構を与えることができる。
【0018】
次に、図2に示した永久磁石11bを用いた回転機構16について説明する。図4は回転機構16を示す斜視図である。図4を参照して、回転機構16は、回転軸線19を取り囲む円筒体の外周面に配置された6組のN極およびS極を有する第1磁石部材17と、第1磁石部材17に対向する位置に設けられ、少なくともN極およびS極のいずれか一方の磁極を有する第2磁石部材18と、第1磁石部材17と第2磁石部材18とを、回転軸線19に沿って、相互に相対的に回転可能に保持する、図示の無い保持部材とを含む。保持部材は、第1磁石部材17と第2磁石部材18とを対向して回転可能に保持できる構成であれば、任意のものが採用できる。
【0019】
ここで第1磁石部材17と第2磁石部材18との両方とも回転部材に保持されていてもよいし、いずれか一方は固定部材に保持されていてもよい。また、磁石部材の極数は、少なくともN極とS極とが存在すればよい。この場合も先の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0020】
なお、図1に示す磁石11aと、図2に示す磁石11bとを比較して、着磁する極性が多いほど、回転機構として、細かい設定が可能になる。
【0021】
次にこの発明の他の実施の形態について説明する。この実施の形態においては、図1に示した永久磁石11aを2つそれぞれの端面を対向するように配置する。図5はこの場合の回転機構20を示す図である。
【0022】
図5を参照して、回転機構20は、第1円板21と、第1円板21と同じ回転軸線28上に配置され、第1円板21に対向して設けられた第2円板25とを含む。第1円板21は、第1磁石部材22と、第1磁石部材22を保持するための第1ヨーク23とを含む。第2円板25は、第2磁石部材26と、第2磁石部材26を保持するための第2ヨーク27とを含む。
【0023】
第1磁石部材22および第2磁石部材26はそれぞれ、上記した永久磁石11aで構成されている。したがって、図1は、たとえば、図5において、矢印I-Iで示す部分の矢視図に対応する。
【0024】
このように構成された第1円板21と第2円板25とを同じ回転軸線28上で相互に対面させて配置し、それぞれの円板21、25をそれぞれのヨーク23、27を介してスイッチ、ボリューム等に適用することにより、磁石のN極とS極とが対面する位置で、確実に所定の動作が行なわれたことを確認できるとともに、先の実施の形態よりもより大きいクリック感が得られる。
【0025】
なお、ここでも、磁石部材の極数は、少なくともN極とS極とが存在すればよい。
【0026】
次に、図5に示した回転機構20の変形例について説明する。図6は、図5に示した回転機構20の変形例を示す図である。図6を参照して、この実施の形態に係る回転機構30は、図5に示した回転機構20の第1円板21と第2円板25との間に半硬質磁石31を設ける。この場合、第1磁石部材22と、半硬質磁石31および第2磁石部材26と半硬質磁石31とは互いに摺動可能に配置される。
【0027】
この実施の形態では、たとえば、第2磁石部材26を回転させると、第1磁石部材22と第2磁石部材26の間の磁力によって、ユーザにクリック感を与えるが、半硬質磁石31を使用しているため、回転開始直後には、第1磁石部材22と半硬質磁石31を通る磁力が強くなり、かつ第1磁石部材22と第2磁石部材26間の磁力、つまり吸引力が小さくなる。このため、回転する際に滑らかな操作感をユーザに与える。
【0028】
なお、この半硬質磁石31は、第1ヨーク23または第2ヨーク27のいずれかに保持されてもよいし、保持されなくても、第1磁石部材22または第2磁石部材26によって吸着されているため、問題は無い。
【0029】
次に、この発明のさらに他の実施の形態について説明する。図7は、この発明のさらに他の実施の形態を示す斜視図である。図7を参照して、この実施の形態に係る回転機構40は、回転軸線43を取り囲む第1磁石部材41と、第1磁石部材41と同芯の回転軸線43を有し、第1磁石部材41の外周面に設けられた第2磁石部材42とを含む。第1磁石部材41も第2磁石部材42も、ともに図2に示す永久磁石11bで構成されている。
【0030】
図7においては、第1磁石部材41および第2磁石部材42のそれぞれに設けられたヨークについては、図示を省略しているが、第1磁石部材41が、その内周面に配置されたヨークと一体化されて、第1円筒体を構成し、第2磁石部材42が、その外周面に配置されたヨークと一体化されて第2円筒体を構成する。また、それぞれのヨークに対して、所定のスイッチやボリューム等が接続されている。
【0031】
この実施の形態においては、円筒形状の磁石部材において、回転軸線方向に第1磁石部材41および第2磁石部材42を対面させるように配置したため、先の実施の形態で述べた効果とともに、長手方向に延在する部品においてクリック感を与えることができるという効果を奏する。
【0032】
なお、ここでも、磁石部材の極数は、少なくともN極とS極とが存在すればよい。
【0033】
また、以上のいずれの実施の形態においても、極数を変えることによって、クリック感を出す角度を任意に決めることができる。
【0034】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明に係る回転機構は、はっきりしたクリック感を得ることができるとともに、長時間にわたってクリック感が減少しないため、回転機構として有利に使用される。
【符号の説明】
【0036】
10、16、20、30、40 回転機構、11 永久磁石、13、17、22、41 第1磁石部材、14、18、26、42 第2磁石部材、21 第1円板、23 第1ヨーク、25 第2円板、27 第2ヨーク、15、19、28、43 回転軸線、31 半硬質磁石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線を取り囲む円周上に配置された少なくともN極およびS極を有する第1磁石部材と、
前記第1磁石部材に対向する位置に設けられ、少なくともN極およびS極のいずれか一方を有する第2磁石部材と、
前記第1磁石部材と前記第2磁石部材とを相互に相対的に回転可能に保持する保持部材とを含み、
前記第1磁石部材上に配置されたN極およびS極は、前記回転軸線に対して直交するように延在する第1円板の端面に配置され、
前記第2磁石部材は、少なくともN極およびS極を有し、前記第2磁石部材上に配置されたN極およびS極は、前記第1円板に対向する第2円板の端面に配置され、
前記第1磁石部材の端面と、前記第2磁石部材の端面とが対向する端面には、ヒステリシス材が配置される、回転機構。
【請求項2】
前記第1磁石部材と前記第2磁石部材のいずれか一方は固定部材に保持され、前記第1磁石部材と前記第2磁石部材のいずれか他方は、回転部材に保持される、請求項1に記載の回転機構。
【請求項3】
前記第1磁石部材の極数と前記第2磁石部材の極数とは、同数である、請求項1または2に記載の回転機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−64331(P2011−64331A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264931(P2010−264931)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【分割の表示】特願2004−340744(P2004−340744)の分割
【原出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】