説明

回転翼無人機用のナビゲーション電子カード支持体

本支持体300は、機械的振動を吸収する材料によって形成される機械的インターフェース310を介して、無人機内に設けられているハウジング内に固定されるように設計されている。環状形状の機械的インターフェースは、ハウジング内に設けられている対応する環状肩部上にフィットするように設計されている。ハウジング内のホルダーの固定部301は、少なくとも1つの接続支柱302がナビゲーション電子カード320を支持しているとともに該固定部の一端に自由に取り付けられている状態で、機械的インターフェース310を支持する。無人機用の電源バッテリー400もホルダー内に収納される。ナビゲーション電子カードは特に、無人機の重心に位置決めされるように該カードに配置される、加速度計のようなナビゲーションセンサー321を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転翼無人機用のナビゲーション電子カード支持体に関する。
【0002】
本発明は、特に、例えば戸建て住宅又はマンション内の一室のような屋内環境において、子どもが使用することができる無線操縦玩具の分野に特に有利な用途がある。
【背景技術】
【0003】
本明細書で用いる場合、「回転翼無人機」とは、既知のあらゆるヘリコプター方式、すなわち、反トルクローターを備えた従来型シングルローター方式、バナナ型ツインロータータンデム方式、同軸反転ローターを備えたカモフ方式、及び4つの固定ピッチローターを備えたクアッドリコプター又はクアッドローター方式等を意味する。
【0004】
クアッドリコプタータイプの無人機では、例えば、回転翼は4つの推進装置から構成され、該推進装置はそれぞれ、電気モーターの概して非常に高い回転速度を下げるシステムを介して該モーターによって駆動されるプロペラを含む。
【0005】
各推進装置の駆動モーターは、飛行パラメーターに基づき、推進装置全体に共通の単一のナビゲーション電子カードによって確立される制御信号を受け取る電子カードを含む。
【0006】
構造的観点から、直前に提示したそれらの機能要素は、正方形構成に従ってともに配置されている4つの円形フレームを含む艇体によって保持され、それらの円形フレームの中心に推進装置が配置される。
【0007】
艇体の円形フレームは、ナビゲーション電子カードと、推進装置駆動モーター及び関連の制御電子カード並びにナビゲーション電子カードに電流を供給するバッテリーとを受け入れることを意図されているハウジングが内部に設けられている中央の主要構造部の周りに構成されている。
【0008】
円形フレームの中心に位置付けられている推進装置は、例えばカーボンから作製されているチューブによって艇体の主要構造部に機械的に接続される。一方で駆動モーター間の電気接続に必要とされるリード線、及び他方でバッテリー及びナビゲーション電子カードに必要とされるリード線が、カーボンチューブの内部に配設される。
【0009】
最後に、無人機のナビゲーション電子カードが、無人機の軌道、速度、高度等に関する情報を提供することを意図されているナビゲーションセンサーを含むことを明記しておく。ナビゲーションセンサーは慣性ユニット、加速度計、レートジャイロ等から作製することができる。
【0010】
ナビゲーション電子カードが無人機の主要構造部に機械的に接続されており、かつ、主要構造部はそれ自体がカーボンチューブを介して推進装置に機械的に接続されているため、ナビゲーション電子カードが保持しているナビゲーションセンサーは、無人機の動作中に推進装置によって生じる機械的振動から保護されないことを理解されたい。さらに、ナビゲーションセンサーは本来、振動に対して非常に感度が高い。この結果、振動によって誘発されるセンサー読取りエラーが無人機の深刻な故障につながる可能性がある。
【0011】
特許文献1は、ナビゲーション電子カードと、ハウジングに固定されることを意図されている支持体とを備えるユニットを記載している。この支持体は、機械的振動を吸収するエラストマー材料から作製されている絶縁装置から形成される機械的インターフェースを含む。
【0012】
しかしながら、このユニットは、推進装置と保護すべきナビゲーションセンサーとの間が近いことを考慮すると、機械的振動を被り、そのフィルタリングが困難である遠隔操縦玩具のような小型無人機には適さない。
【0013】
この難点を克服するには、機械的振動に起因する成分を相殺するために、ナビゲーションセンサーの下流側に送られる信号に適用されるローパスデジタルフィルターを使用することが可能である。しかしながら、このような処理は、複雑であること、無人機の動きを考慮した遅延化、及びローパスフィルタリングによる関連情報の損失につながることという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0150144号
【発明の概要】
【0015】
したがって、本発明の目的は、推進装置によって生じるナビゲーションセンサーの動作へのスプリアス振動の影響を低減又は相殺さえすることを可能にするとともに、ローパスフィルターの存在に関連した欠点のない、ナビゲーション電子カード支持体を提案することである。
【0016】
この目的は、本発明によれば、上述の特許文献1に開示されている一般的なタイプの、すなわち、ハウジング内に固定されることを意図されている、ナビゲーション電子カード及びこの電子カード用の支持体を含む、回転翼無人機用のナビゲーション支持体によって達成される。支持体は、機械的振動を吸収する材料から作製される、ハウジングとの機械的インターフェースを含む。
【0017】
とりわけ無人機の主要構造部内に設けられた、ナビゲーション電子カードとハウジングとの間に介在している吸収用の機械的インターフェースにより、推進装置から生じるとともに無人機の主要構造部上で受ける機械的振動から、ナビゲーションセンサーを絶縁することが可能となる。
【0018】
本発明の特徴として、上記のユニットは、機械的インターフェースを支持する、ハウジング内に支持体を固定する固定部であって、機械的インターフェースは形状が環状であり、ハウジング内に設けられている対応する環状肩部に取り付けられることを意図されている、固定部と、ナビゲーション電子カードを保持するとともに、一端が固定部上に自由に装着される、少なくとも1つの接続脚部と、支持体内に収容されるとともに、ハウジング内の支持体の固定部に固定される、無人機の電源用のバッテリーと、を備える。
【0019】
したがって、ナビゲーション電子カードは、無人機の振動部とのいかなる直接の機械的接触もなく、少なくとも1つの接続脚部によって固定部に支持される。固定部を介してナビゲーション電子カードに達する可能性のある唯一の振動は、吸収用の機械的インターフェースによって相殺される。
【0020】
さらに、無人機に電流を供給するバッテリーがシステムのより重量のある要素であるため、艇体の、ナビゲーション電子カードに伝わる振動を更に制限することに寄与することができる所定位置にバッテリーを配置することによってその慣性を用いることが有利であろう。このように、バッテリーは懸架されない自重を制限することによって防振システムの一部となる。
【0021】
さらに、スプリアス振動の相殺がナビゲーションセンサーの上流側で行われるため、ナビゲーションセンサーによって供給される信号が、ローパスフィルタリング等、これに関連するあらゆる欠点を伴う、下流側での特定の処理を全く必要としないことが観察される。
【0022】
また、本発明による支持体は、ナビゲーション電子カードに関して、無人機が着陸するときにショックアブソーバーの役割を果たし、ナビゲーション電子カード上に配設された電気コネクターの、振動に起因する摩耗を回避することを強調しておく。
【0023】
有利には、ナビゲーション電子カードは、無人機の重心に位置決めされるようにカードに配置されているナビゲーションセンサーを含む。
【0024】
ナビゲーションセンサーについてのこの理想的な位置では、上記ナビゲーションセンサーは、例えばレートジャイロ等、無人機を傾けるための構成部材を加える必要のない、加速度計であるものとみなすことが可能である。実際、無人機の重心に配置される加速度計は、レートジャイロと同じ指標、特に重力の方向(傾斜計機能)を示すことができる。したがって、ナビゲーション専用の構成部材の数が減り、また、加速度計がレートジャイロよりも実質的により安価であるため、そのコストが減る。その上、±30度の範囲で正確に動作するがそれを超えるともはや制御可能ではない機械的なレートジャイロとは異なり、角度測定領域が制限されない。
【0025】
有利な実施の形態では、バッテリーは、フックアンドループテープによって支持体の固定部に固定される。フックアンドループテープによるこのタイプの固定は、例えばねじ固定と比較して扱いが非常に容易である。その上、この固定は振動の低減に寄与し、加速測定を妨げやすい機械的クリアランスを回避する。
【0026】
実際に、吸収材料は熱硬化性材料のフォーム(foam)、特にポリウレタンフォームとすることができる。
【0027】
好ましくは、吸収材料機械的インターフェースはボンディングによってハウジングに固定される。この構成により、支持体に加わる剪断応力のより良好な吸収を得ることが可能となる。本発明は、吸収材料機械的インターフェースが同じようにボンディングによって支持体に固定されることを更に提供する。
【0028】
最後に、本発明は、上述のようなナビゲーション電子カード支持体を備える回転翼無人機にも関する。
【0029】
ここで、本発明の装置の例示的な実施形態を添付の図面を参照しながら記載し、図面中、同じ参照符号は図全体を通して同一又は機能上同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による回転翼無人機の斜視図である。
【図2a】本発明によるナビゲーション電子カード支持体を示す、図1の無人機の主要構造部の斜視図である。
【図2b】図2aの無人機の主要構造部の透視図である。
【図3】図2a及び図2bのナビゲーション電子カード支持体の斜視図である。
【図4】図2a及び図2bの無人機の主要構造部の断面図である。
【図5a】電源が備わっている、図3のナビゲーション電子カード支持体の斜視図である。
【図5b】フックアンドループテープのバッテリー固定システムを示す、図5aのナビゲーション電子カード支持体の斜視図である。
【図6】主要構造部のための磁気固定密閉蓋を示す、図1の無人機の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付の図面に関して、非限定的な例としてのみ与えられた以下の記載により、本発明が構成するもの及び本発明を実施することができる方法を十分に理解することが可能となるであろう。
【0032】
図1には、回転翼が4つの共面推進装置100、100、100、100から構成される無人機を構成するクアッドリコプター10が示されている。各推進装置は、駆動電気モーターの回転速度を下げるシステムに連結されているプロペラを備える。
【0033】
無人機10の艇体は、発泡ポリプロピレンから作製されている4つの円形フレーム110、110、110、110から構成されており、それらの円形フレームの中心に推進装置100、100、100、100が配置されている。円形フレームは、特に、以下で詳細に記載する無人機のナビゲーション要素を備える主要構造部11によって互いと一体になされている。
【0034】
図1に示されているように、円形フレームは、撮像カメラ200を無人機10の中心の可能な限り最も近くに設置することができるように正方形構成に従って配置されており、これによって、カメラの慣性モーメントを減らすこと、及びカメラと主要構造部11との間の電気接続を短くすることが可能となる。
【0035】
推進装置100、100、100、100は、図2aにおいて最もよく見ることができるカーボンチューブ101、101、101、101によって無人機10の艇体の主要構造部11に機械的に接続されている。
【0036】
カーボンチューブ101、101、101、101は、艇体の中心構造部11と推進装置の駆動モーターとの間に延びる電気リード線も包含する。これらのリード線により、飛行パラメーターに基づき、主要構造部11に収容されているナビゲーション電子カード320によって供給された制御信号に従って、各推進装置のモーター自体及び関連の制御回路に給電することが可能となる。
【0037】
図2a、図2b、図3及び図4において、例えば加速度計タイプのナビゲーションセンサー321を保持するナビゲーション電子カード320が、主要構造部11内に設けられたハウジング120内に配置されている支持体300に固定されていることを見てとることができる。
【0038】
より詳細には、電子カード320用の支持体300は、2つの部品、すなわち、ハウジング120内に支持体を固定する固定部301、及び全体として302によって参照される脚部であって、該脚部302の一端が固定部301に自由に装着され、他端がセンサー321を有するナビゲーション電子カード320に支持される、脚部から構成される。
【0039】
支持体300の固定部301は、機械的振動を吸収する材料、特に熱硬化性材料、とりわけポリウレタンのフォームから作製されている機械的インターフェース310を介してハウジング120内に固定されている。上述した図に示されている例示的な実施形態では、固定部301によって保持されている吸収インターフェース310は環状形状を有しているため、ハウジング120のいかなる他の要素及び主要構造部11のいかなる他の要素とも機械的接触がなく、ハウジング120に設けられている対応する環状肩部121に取り付けることができる。
【0040】
他方では、特に図2bにおいて、カーボンチューブ101、101、101、101が、ナビゲーション電子カード320の支持体300とのいかなる機械的接触もなく、クロス状接続部130によって互いと一体になされていることを観察することができる。
【0041】
結果として、無人機10の動作中に推進装置100、100、100、100によって生じる機械的振動は、カーボンチューブ101、101、101、101を介して主要構造部11に伝わるが、本発明によって、振動を吸収するように主要構造部11と支持体300との間に機械的インターフェース310のみが設けられているため、支持体300に伝わることができない。この結果、ナビゲーションセンサー321によって行われる測定が無人機の推進装置の機械的振動によって妨げられることがなく、また、このため故障が生じ得ない。
【0042】
好ましくは、固定部301は機械的インターフェース310を形成するポリウレタンフォームにボンディングされている。同様に、機械的インターフェース310はハウジング120の肩部121にボンディングされている。したがって、剪断応力に対する最良の耐性が得られ、無人機10が逆さまになった場合にナビゲーション電子カード320が所定位置に保持される。さらに、ナビゲーションセンサー321を、無人機10の重心に配置されるようにナビゲーション電子カード320に位置決めすることができる。この配置により、この特権位置では加速度計はとりわけ重力の方向を示すように傾斜計として動作することもできることから、より安価な加速度計のため、レートジャイロの使用を回避することが可能となる。
【0043】
図4、図5a及び図5bは、ナビゲーション電子カード320の支持体300が無人機10のバッテリー400を収容するようにも機能することを示している。このため、バッテリー400を受け入れるようにクレードル303が固定部301に設けられている。この構成では、バッテリーの慣性が支持体300の慣性に加わり、懸架されない自重を制限することによって、機械的振動の吸収にも寄与する。
【0044】
図5bに例示されているように、バッテリー400はフックアンドループテープ410によって、クレードル303の所定位置に保持することができる。この固定モードは使用が非常に簡単であり、加速度計321によって示される指標におけるエラーの発端にある可能性がある機械的クリアランスがない。
【0045】
最後に、図6は、ハウジングにナビゲーション電子カード支持体が収容されている無人機10を示し、バッテリーが、永久磁石121、121、121、121のような磁気開閉手段によって主要構造部11に固定されている保護蓋12によって密閉されている。磁石を用いるこの固定システムは、特定の工具、とりわけスクリュードライバーを必要としないため、使用が非常に迅速かつ非常に簡単である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼無人機(10)用のナビゲーション電子カード(320)と、
前記無人機内に設けられているハウジング(120)内に固定されることを意図されている、前記電子カード用の支持体(300)であって、
機械的振動を吸収する材料から作製されている、前記ハウジングとの機械的インターフェースを含む、支持体(300)と、
を備える、ユニットであって、
該ユニットは、
前記機械的インターフェース(310)を支持する、前記ハウジング内に前記支持体を固定する固定部(301)であって、
前記機械的インターフェースは形状が環状であり、且つ前記ハウジング内に設けられている対応する環状肩部(121)に取り付けられることを意図されている、固定部(301)と、
前記ナビゲーション電子カードを保持するとともに、一端が前記固定部に自由に装着される、少なくとも1つの接続脚部(302)と、
前記支持体(300)内に収容されるとともに、前記ハウジング内の前記支持体の前記固定部(301)に固定される、前記無人機の電源用のバッテリー(400)と、
を備えることを特徴とする、ユニット。
【請求項2】
前記ナビゲーション電子カード(320)は、前記無人機(10)の重心に位置決めされるように該カードに配置されているナビゲーションセンサー(321)を含む、請求項1に記載のユニット。
【請求項3】
前記ナビゲーションセンサー(321)は加速度計である、請求項2に記載のユニット。
【請求項4】
前記バッテリーは、フックアンドループテープによって前記固定部に固定される、請求項1に記載のユニット。
【請求項5】
前記吸収材料は熱硬化性材料のフォームである、請求項1に記載のユニット。
【請求項6】
吸収材料の前記機械的インターフェースは、ボンディングによって前記ハウジングに固定される、請求項1に記載のユニット。
【請求項7】
吸収材料の前記機械的インターフェースは、ボンディングによって前記支持体に固定される、請求項1に記載のユニット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のユニットを備える、回転翼無人機。
【請求項9】
前記ハウジング(120)を密閉する磁気固定蓋(12)を備える、請求項8に記載の無人機。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−510760(P2013−510760A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538379(P2012−538379)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052186
【国際公開番号】WO2011/058255
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(509127457)パロット (23)
【Fターム(参考)】