説明

回転自走式内視鏡装置

【課題】挿入部、及び機器類に無理な負荷が与えられた場合でも、これら挿入部、及び機器類の損傷を防止すると共に、安定した挿入性を備えた回転自走式内視鏡装置を実現すること。
【解決手段】本発明の回転自走式内視鏡装置2は、長軸回りに回動自在な螺旋管51を備えた挿入部10と、上記螺旋管に上記長軸回りの回転駆動力を与える螺旋管回転駆動部59と、該螺旋管回転駆動部が発生するトルクを制限可能、且つ上記回転駆動力を上記螺旋管に伝達する回転伝達機構62と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に挿入可能な可撓性を有する細長なチューブの外周に螺旋形状部を配置した螺旋管を備えた回転自走式内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療用の内視鏡は、広く用いられている。このような医療用の内視鏡は、細長な挿入部を体腔内に挿入することによって体腔内の患部等を観察したり、必要に応じて処置具を鉗子チャンネル内に挿通したりして治療処置を行うことができるようになっている。
【0003】
上記内視鏡は、挿入部の先端側に湾曲自在な湾曲部を備えている。内視鏡は、湾曲操作ノブが操作されることにより湾曲部が上下または左右方向に湾曲動作される。
【0004】
内視鏡は、入り組んだ体腔内管路、例えば大腸などのように360°のループを描く管腔に挿入される際、湾曲操作ノブの操作により湾曲部が湾曲動作されると共に、捻り操作が行われて挿入部が観察目的部位に向けて挿入されていく。
【0005】
しかしながら、内視鏡操作は、複雑に入り組んだ大腸内の深部まで挿入部を短時間でスムーズに挿入することができるようになるまでに熟練を要する。経験の浅いユーザにおいては、挿入部を大腸内の深部まで挿入していく際に、挿入方向を見失うことによって手間取ったり、腸の走行状態を大きく変化させてしまったりする虞があった。
【0006】
このため、従来から、挿入部の挿入性を向上させるための提案が各種なされている。例えば、特開平10−113396号公報には、体腔内管路の深部まで容易にかつ低侵襲で医療機器を誘導し得る医療機器の推進装置が示されている。この推進装置では、回転部材に、この回転部材の軸方向に対して推進力発生部として斜めのリブが設けてある。
【0007】
このため、上記公報に記載の推進装置は、回転部材を回転動作させることにより、回転部材の回転力がリブによって推進力に変換され、推進装置に連結されている医療機器が推進力によって体腔内管路の深部方向に向かって移動される。これにより、上記公報に記載の推進装置は、低侵襲で、患者に身体的負担をかけることなく、医療機器を体腔内へと挿入することができる。
【0008】
このような技術を利用した内視鏡には種々のタイプのものがあるが、一例を挙げれば、経肛門により大腸内へ挿入を行うようになされた内視鏡において、挿入部の外周側に、軸回りに回動可能な可撓性を有する回転筒体を設けて、該回転筒体を回転させることにより、体腔内への挿入を自動的に行うことができるようにした回転自走式内視鏡装置がある。また、回転筒体は、体腔内に挿入するために長尺であり、その材質に回転伝達性の良い金属が用いられる。
【特許文献1】特開平10−113396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記回転筒体は、回転時に外周面と体腔壁との摩擦が増大すると、モータからの回転伝達が妨げられ、挿入部の挿入性が低下する場合がある。そのため、挿入性の低下を防止するために、モータからのトルクを上げることが考えられる。
【0010】
このとき、モータから所定のトルクで回転力を与えられている回転筒体には、回転の妨げに応じて、内部に捻り応力が発生する。そのため、このように回転が妨げられた回転筒体は、モータからの回転トルクに対応する捻り応力を受けて内部に発生するせん断力がかかり、変形したり、損傷したりする可能性がある。さらに、このような状態では、回転筒体を回転させるモータなどの機器類にも、負荷がかかり故障の原因、耐久性の低下となる問題がある。
【0011】
また、回転筒体の回転が妨げられると、回転自走式内視鏡装置は、体腔内に対する挿入部の挿入性、及び抜去性が低減し、患者に負担を与えたり、内視鏡検査に時間を要するなどの不具合が発生する問題がある。
【0012】
そこで、本発明は問題に鑑みてなされたものであり、回転自走式内視鏡装置の挿入部、及び機器類に無理な負荷が与えられた場合、これら挿入部、及び機器類の損傷を防止すると共に、安定した挿入性、及び抜去性のある回転自走式内視鏡装置を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく、本発明の回転自走式内視鏡装置は、長軸回りに回動自在な螺旋管を備えた挿入部と、上記螺旋管に上記長軸回りの回転駆動力を与える螺旋管回転駆動部と、該螺旋管回転駆動部が発生するトルクを制限可能、且つ上記回転駆動力を上記螺旋管に伝達する回転伝達機構と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による回転自走式内視鏡装置は、回転自走式内視鏡の挿入部、及び機器類に無理な負荷が与えられた場合、これら挿入部、及び機器類の損傷を防止すると共に、安定した挿入性、及び抜去性を実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1から図10は、本発明の第1の実施の形態に係り、図1は本発明の構成を備えた回転自走式内視鏡システムの全体構成を示す外観図、図2は内視鏡の先端部、湾曲部、及び螺旋形状部の一部を示す断面図、図3は回転筒体と挿入部本体を示す断面図、図4は操作部側案内管が接続されたコネクタカバーの一部を示す断面図、図5は回転伝達機構を説明するためのコネクタカバーとモータボックスが連結した状態の断面図、図6は回転自走式内視鏡システムの電気装置構成、及び回転伝達機構を示すブロック図、図7は図1の収納ケースを示す上面図、図8は挿入補助具が患者の肛門から直腸へ挿入された状態を示す説明図、図9は大腸内に挿入された挿入部本体がS字状結腸に到達した際の状態を示す説明図、図10は大腸内に挿入された挿入部本体が盲腸近傍に到達した際の状態を示す説明図である。
【0017】
まず、図1に基づいて、回転自走式内視鏡システム1の全体構成について説明する。
図1に示すように、回転自走式内視鏡システム1は、回転自走式内視鏡装置(以下、単に内視鏡と略記する)2と、制御装置3と、モニタ4と、吸引器5とで構成されている。
【0018】
内視鏡2は、内視鏡挿入部(以下、単に挿入部と略記する)6及び操作部7で構成されている。挿入部6は、先端から順に先端硬性部(以下、単に先端部と略記する)8と、湾曲部9と、挿入部本体10と、挿入補助具11と、挿入部収納ケース(以下、単に収納ケースと略記する)12と、挿入補助具11と収納ケース12との間において介装されるコルゲート状のチューブである先端側案内管13と、操作部7と収納ケース12との間に介装されるコルゲート状のチューブである操作部側案内管14と、この操作部側案内管14の一端が連結されたコネクタカバー15とで構成されている。
【0019】
操作部7は、回転装置としてのモータボックス16と、把持部17と、主操作部18とから構成されている。なお、モータボックス16は、挿入部6の一部を構成している。
【0020】
主操作部18には、挿入部6の湾曲部9を4方向(内視鏡2が捉える内視鏡画像に対応する上下左右方向)に湾曲させる湾曲操作ノブ19と、流体を送出操作、或いは吸引操作するボタン類20と、各種撮像、照明などの光学系を操作するスイッチ類21とが配設されている。
【0021】
湾曲操作ノブ19は、略円盤状の2つのノブが操作部7の主操作部18の一面に同軸上に重ねられて回動自在に配設されている。これらの2つのノブは、内視鏡画像の上下方向に湾曲部9を操作するための上下用湾曲操作ノブ19aと、内視鏡画像の左右方向に湾曲部9を操作するための左右用湾曲操作ノブ19bとである。
【0022】
上下用湾曲操作ノブ19aは、主操作部18の表面側に配置されている。左右用湾曲操作ノブ19bは、上下用湾曲操作ノブ19aと同軸上に、且つこの上下用湾曲操作ノブ19aよりも主操作部18の表面側に対して外側に配置されている。つまり、上下用湾曲操作ノブ19aは、左右用湾曲操作ノブ19bよりも主操作部18寄りに配置されている。このことにより、内視鏡2は、通常の内視鏡操作において、良く使用される上下用湾曲操作ノブ19aの上下湾曲操作を行い易くなっている。
【0023】
主操作部18の一側面からは、電気ケーブルであるユニバーサルコード18aが延設されている。また、主操作部18には、ユニバーサルコード18aが延出する根元部分に折れ止め部18bが設けられている。このユニバーサルコード18aの延出端には、コネクタ部22が配設されている。このコネクタ部22は、制御装置3に着脱自在に接続されている。
【0024】
また、主操作部18の一側面に配設されているボタン類20は、内視鏡2の先端部8から被検体内へ気体を送気、或いは液体を送水する際に操作する送気/送水ボタン20aと、内視鏡2の先端部8から被検体内の体液等を吸引する際に操作する吸引ボタン20bとである。
【0025】
コネクタカバー15からは、挿入部6内に挿通された3本のチューブ23が延出されている。これらの3本のチューブ23は、送気用チューブ23a、送水用チューブ23b、及び吸引用チューブ23cである。これらの3本のチューブ23の延出端は、夫々、着脱自在なコネクタを介して、制御装置3の前面部の所定位置で接続されている。尚、3本のチューブ23は、一体化しても、マルチルーメンチューブとしても良い。
【0026】
制御装置3には、送水タンク24が着脱自在に取り付けられている。この送水タンク24内には、蒸留水、滅菌水、または生理的食塩水が貯留されている。
【0027】
内視鏡2は、主操作部18の送気/送水ボタン20aが所定操作されると、制御装置3の制御により図示しないコンプレッサ、バルブ類の動作によって、送水タンク24からの蒸留水、滅菌水、または生理的食塩水が送水用チューブ23bに送液され、先端部8に形成されたチャンネル開口から噴出するようになっている。
【0028】
また、内視鏡2は、主操作部18の送気/送水ボタン20aが所定操作されると、制御装置3の制御により図示しないコンプレッサ、バルブ類の動作によって、コンプレッサからの空気が送気用チューブ23aに送気され、先端部8に形成されたチャンネル開口から噴出するようになっている。
【0029】
さらに、内視鏡2は、吸引ボタン20bが操作されると、同様に制御装置3の制御により図示しないコンプレッサ、バルブ類の動作によって先端部8の吸引チャンネル開口から被検体内の体液等が吸引される。この吸引された体液等は、吸引用チューブ23cを介して制御装置3から吸引器5に送り込まれる。なお、本実施の形態の回転自走式内視鏡システム1においては、吸引器5を使用しているが、病院に備え付けの吸引システムを利用しても構わない。
【0030】
制御装置3には、内視鏡2の挿入部本体10を所定の方向へ回動/停止操作するためのフットスイッチ25が電気ケーブル25aを介して接続されている。なお、挿入部本体10の回転方向を操作、及び停止操作する進退スイッチは、図示しないが操作部7の主操作部18にも配設されている。この進退スイッチは、モータボックス16に設けられていても良い。
【0031】
また、制御装置3の前面部には、電源スイッチ、内視鏡2の挿入部本体10の回転速度を可変するダイヤルなどが配設されている。なお、操作部7のモータボックス16には、挿入部本体10に回転力を付与する、ここでは図示しないモータが内蔵されている。また、制御装置3は、モニタ4と電気的に接続されている。モニタ4は、内視鏡2が捉えた内視鏡画像を表示する。
【0032】
次に、図2を用いて、内視鏡2の挿入部6の一部を構成する先端部8、湾曲部9、及び挿入部本体10について説明する。
【0033】
先ず、先端部8について、説明する。
先端部8は、生体適合性のある金属からなる硬質な略円環状の本体環26と、撮像ユニット27と、から主に構成されている。
【0034】
撮像ユニット27は、本体環26内に収容される金属からなる略円環状の保持環28aと、この保持環28aの基端側に嵌着される金属からなる略円環状のカバー環28bと、保持環28aの先端開口部を気密に封止するように嵌着され、生体適合性のある透明な合成樹脂によってドーム状に形成されたカバー体29と、によって外形が形成されている。
【0035】
これらの部材によって形成される撮像ユニット27の空間内には、対物レンズ群30と、この対物レンズ群30へ入射する撮影光が集光される位置に配置されるCCD(Charge Coupled Devices)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子31と、この撮像素子31によって光電変換された画像信号が入力されるフレキシブルプリント基板(FPC)32が配設される。
【0036】
このFPC32には、通信ケーブル33が接続されている。この通信ケーブル33は、湾曲部9、及び挿入部本体10内に挿通して、コネクタカバー15(図1参照)に配設される図示しないコネクタに接続されている。
【0037】
また、対物レンズ群30を保持する保持環を固定している板体35には、照明部材である複数のLED34が対物レンズ群30を囲むように配設されている。尚、板体35は、カバー体29の略中心を通る部分に延長線上にある内面と固着できるように、略円形に形成されている。そして、対物レンズ群30は、板体35の板面における略中心位置に光軸が通るように配置されている。
【0038】
このように構成された撮像ユニット27は、本体環26の中心に対して、偏芯する位置に配置され、本体環26の先端側開口部に配設される先端キャップ36により本体環26に固定されている。
【0039】
撮像ユニット27の保持環28aと本体環26との間にできる隙間には、吸引用チューブ23cの先端部分と、この吸引用チューブ23cが基端側に接続された吸引管37が配置されている。この吸引管37の先端部分は、先端キャップ36に固着されている。
【0040】
先端キャップ36には、吸引用の開口部38が形成されている。尚、図示していないが、上述した保持環28aと本体環26との間にできる隙間を利用して、送気用チューブ23a、及び送水用チューブ23bに連通する管路が配設され、それら管路の開口部も先端キャップ36に形成されている。これら、送気用チューブ23a、及び送水用チューブ23bには、ドーム状に形成されたカバー体29を洗滌するノズルを設けても良い。
【0041】
次に、湾曲部9について説明する。
湾曲部9には、先端部8の本体環26の基端開口部に嵌着された硬質な先端湾曲駒39と、硬質な複数の湾曲駒40(湾曲節輪とも言う)と、が枢支部40aによって回動自在に連設されている。これら駒39,40には、生体適合性のあるフッ素ゴムなどの弾性部材からなる湾曲外皮41が被覆されている。この湾曲外皮41の先端部分は、糸巻き接着部42により、先端部8の本体環26の基端部分と固着されている。
【0042】
複数の湾曲駒40は、その内周面から中心方向へ突出するワイヤガイド43を有している。このワイヤガイド43には、湾曲操作ワイヤ44(アングルワイヤとも言う)が挿通している。
【0043】
この湾曲操作ワイヤ44の先端部分は、湾曲部9内に4本存在し(図2では2本のみ図示している)、夫々に筒状の係止部材45が半田などにより溶着されている。これら湾曲操作ワイヤ44は、先端湾曲駒39に形成された4つの係止孔部39aに夫々の係止部材45が係止されている。
【0044】
4つの係止孔部39aは、先端湾曲駒39の軸に対して直交する面において、略等間隔となる4等分した位置に形成されている。この先端湾曲駒39は、上記内視鏡画像の上下左右に対応して、各係止孔部39aが位置するように軸回りの方向が決められている。そのため、4本の湾曲操作ワイヤ44は、上下左右方向に略等間隔に離間した4点において保持固定されている。
【0045】
また、これら湾曲操作ワイヤ44は、挿入部本体10内に挿通し、コネクタカバー15まで配設されている。尚、これら湾曲操作ワイヤ44の夫々の基端部分には、ここでは図示しないワイヤ留が設けられている。各湾曲操作ワイヤ44のワイヤ留は、コネクタカバー15がモータボックス16に一体となっている状態において、把持部17内に設けられた、図示しない湾曲ワイヤ係止部材であるチェーンエンドに夫々が対応して連結される。
【0046】
各チェーンエンドは、主操作部18内に配設された湾曲操作ノブ19に連動する、図示しない湾曲操作機構と、図示しないチェーンにより、連結されている。つまり、湾曲操作ノブ19が回動操作されると、湾曲操作機構により各チェーンエンドが交互に牽引又は弛緩され、その動きに連動して、各湾曲操作ワイヤ44が交互に牽引又は弛緩されるようになっている。
【0047】
従って、4本の湾曲操作ワイヤ44が夫々、牽引弛緩されると、複数の湾曲駒40が対応して回動する。こうして、湾曲部9が上述した4方向へ湾曲操作される。
【0048】
湾曲部9の基端部分には、最基端にある湾曲駒40の内部に嵌着されたコイルパイプ固定用の金属からなる第1口金46と、最基端にある湾曲駒40の外周側に嵌着された内層チューブ固定用の金属からなる第2口金47と、この第2口金47の外周側に嵌着された回転筒体を回動自在に係合するための合成樹脂からなる第3口金48と、が配設されている。これらの口金46〜48は、接着剤などにより強固に固着されている。
尚、上述した湾曲外皮41は、第3口金48とも糸巻き接着部42により、固着されている。
【0049】
また、上述の湾曲操作ワイヤ44は、夫々、第1口金46から基端側がコイルシース49内に夫々挿通している。コイルシース49の先端部分は、第1口金46に形成された穴部に挿入固定されている。尚、本実施の形態で用いられるコイルシース49は、ワイヤをパイプ状に密着巻きした非圧縮性の構造を有している。
【0050】
第2口金47の基端部分は、挿入部本体10内に挿通する通信ケーブル33、送気用チューブ23a、送水用チューブ23b、及び吸引用チューブ23cと、各コイルシース49とを纏めて保護している軟性なチューブ体である内層チューブ49aの先端部分が固定されている。この内層チューブ49aは、金属性の細線のワイヤなどを筒状に編み込んで可撓性を持たせたチューブ体でも良い。
【0051】
第3口金48の基端部分には、所謂スナップフィット状の突起部48aが設けられている。また、この第3口金48は、突起部48aの外周側に隙間ができ、且つ、基端まで覆う長さを有するように、湾曲外皮41に完全にカバーされている。
【0052】
尚、本実施の形態の内視鏡2は、湾曲部9を備えているものに限定せず、該湾曲部9を備えていないものでも、勿論、適用可能である。
【0053】
次に、挿入部本体10について説明する。
挿入部本体10は、先端部分に連結用の合成樹脂からなる口金50と、この口金50と先端部分が接着材52により固着された外皮を構成する螺旋管である回転筒体51と、から主に構成されている。
【0054】
この挿入部本体10内には、上述した内層チューブ49aと、湾曲操作ワイヤ44が夫々挿通する4本のコイルシース49と、通信ケーブル33と、図示しない各種チューブ23と、が配設されている。すなわち、図からも判るように、内層チューブ49aが最も外側となっており、内部の各構成要素であるケーブルなどの内蔵物を保護している。
【0055】
口金50は、先端部分に上述した湾曲部9の第3口金48の突起部48aと係合し、所謂スナップフィット機能を有効にする凹凸部50aが形成されている。つまり、口金50と、第3口金48は、夫々の軸回りに回動自在となっている。
【0056】
この口金50と連結された回転筒体51は、図3に示すように、断面形状が凹凸となるように加工された生体適合性のある金属板体を螺旋状に巻回し、可撓性を備えた筒体である。この回転筒体51は、上述の凹凸が略隙間なく係合しており、その外周面に螺旋状凸部(あるいは、螺旋状凹部、さらにあるいは、螺旋に沿って連設されるように突設される凸部、など)となる螺旋形状部51aが形成される。
【0057】
この口金50と連結された回転筒体51は、断面形状が凹凸となるように加工された生体適合性のある金属板体を螺旋状に巻回し、可撓性を備えた筒体である。この回転筒体51は、上述の凹凸が略隙間なく係合しており、その外周面に螺旋状凸部(あるいは、螺旋状凹部、さらにあるいは、螺旋に沿って連設されるように突設される凸部、など)となる螺旋形状部51aが形成される。
【0058】
具体的には、回転筒体51は、体腔内への挿通性を考慮した螺旋管であり、例えばステンレス製で所定の径寸法が設定されている。また、回転筒体51は、板体に形成する凹凸の寸法を変更して、凹凸のピッチ、螺旋の角度などを種々設定できる。
【0059】
この回転筒体51は、挿入方向の軸回りに回動可能となるように構成されている。そして、この回転筒体51が回転すると、外周面の螺旋形状部51aが被検体の体腔内壁と接触して推力が発生し、回転筒体51自体が挿入方向へ進行しようとする。
【0060】
このとき、回転筒体51の先端部に固着されている口金50が、湾曲部9の基端部分にある第3口金48に当接して湾曲部9を押圧し、先端部8を含めた挿入部本体10全体が体腔内の深部に向かって前進する推進力が付与される。
【0061】
尚、回転筒体51は、操作部7のモータボックス16(図1参照)に配設された螺旋管回転駆動部であるモータ56(図5参照、ここでは不図示)により回転力が与えられる。
【0062】
つまり、挿入部本体10は、回転筒体51が内層チューブ49aの外周で長軸回りに回動自在となっており、内層チューブ49aが内蔵物である湾曲操作ワイヤ44が夫々挿通する4本のコイルシース49と、通信ケーブル33と、図示しない各種チューブ23とを、回転筒体51の回動による外的作用から保護する構成となっている。
【0063】
次に、図4を用いて、回転筒体51の基端側について説明する。
まず、操作部側案内管14の一端部とコネクタカバー15との接続について説明する。
操作部側案内管14の一端部には、略筒状の金属環(合成樹脂、プラスティックなどから形成される硬質な筒体でも良い)から形成される第5固定環78と、合成樹脂から形成される接続筒体79との螺着によって、その基端部分の外周を係止する留めリング81が内嵌保持されている。
【0064】
第5固定環78は、中途部分が外径方向に突出した形状をしており、基端部分の外周に雄ねじ部78aが形成されている。また、接続筒体79は、先端部分が外径方向に突出した形状をしており、先端部分の内周面に雌ねじ部79aが形成され、略等間隔で円を描くように基端側に向かって延設され、コネクタカバー15と着脱自在とするための複数の係止部80を有している。
【0065】
すなわち、第5固定環78と接続筒体79とは、雄ねじ部78aと雌ねじ部79aとが螺合することで接続され、その接続部内に留めリング81を内嵌保持している。この状態において、操作部側案内管14は、基端部分が圧縮された状態となり、基端外周部が接続筒体79の当接する端面に押圧されている。これにより、操作部側案内管14は、第5固定環78と接続筒体79との水密が保持された状態で接続される。
【0066】
コネクタカバー15と接続された接続筒体79は、係止部80がコネクタカバー15に接続されている。詳述すると、コネクタカバー15は、先端と基端部分に外向フランジ82aが形成された筒体に接続部82を有している。接続部82には、基端側へ延設された接続筒体79の複数の係止部80が外嵌するように接続されている。
【0067】
複数の係止部80は、基端部に接続筒体79の内周方向に向かって突起する突部80aを有している。このため、接続筒体79とコネクタカバー15とは、突部80aを接続部82の基端部分の外向フランジ82aを掛止することで着脱自在に接続される。
【0068】
また、係止部80の突部80aは、それぞれ接続筒体79の外向フランジ82aを係止しているため、接続筒体79がコネクタカバー15に対して軸回りに回動自在となっている。したがって、接続筒体79と連結する操作部側案内管14も、コネクタカバー15に対して回動自在に接続されている。
【0069】
このような操作部側案内管14とコネクタカバー15との接続部分において、螺旋形状部51aの基端部は、基端側口金83に接着剤83aにより固着されている。この基端側口金83は、回転軸84の先端部分とビスにより接続されている。
【0070】
この回転軸84は、ここでは図示していないが、図5に示すように、コネクタカバー15内で2つの軸受け34によって回動支持されている。
【0071】
尚、コネクタカバー15がモータボックス16(図1参照)と連結されている状態において、図5に示すように、回転軸84に設けられる挿入部側ギヤ84aと、モータボックス16に設けられる、モータ59のモータギヤ59aとが噛合する。そして、モータ59の駆動力が各ギヤに伝達されて、回転軸84、及び基端側口金83を介して、回転筒体51が軸回りに回転する。
【0072】
また、モータ59は、モータボックス16のモータカバー57の背面に固定されている。このモータカバー57には、モータギヤ59aが露呈する孔部57aを有している。つまり、モータボックス16のモータカバー57に形成された孔部57aから露呈するモータギヤ59aは、コネクタカバー15とモータボックス16との連結時に、回転軸84に設けられる挿入部側ギヤ84aと噛合する。
【0073】
本実施の形態では、モータボックス16のモータカバー57の背面には、モータ59のモータ軸56bに設けられたモータギヤ59aから挿入部側ギヤ84a、回転軸84、及び基端側口金83を介して回転筒体51を回転しているトルク量が所定量以上になるとスリップする回転伝達機構62が内蔵されたトルククラッチボックス61がモータ軸56bの中途位置で介装固定されている。このトルククラッチボックス61内の回転伝達機構62は、例えば、電磁石を利用して所定量のトルクを設定する電磁クラッチ、バネの付勢力を利用して所定量のトルクを設定するバネ式クラッチ、或いは磁性粉黛を利用して所定量のトルクを設定するパウダーリミッタである。
【0074】
次に、図6に示す電気的な各種装置を系統表示したブロック図を用いて、本実施の形態の回転自走式内視鏡システム1の内視鏡2、及び制御装置3に内蔵される各種装置について説明する。
【0075】
上述したように、内視鏡2と制御装置3は、ユニバーサルコード18a(図1参照)によって、電気的に接続される。本実施の形態の内視鏡2は、上述したように先端部8内に撮像ユニット27が内蔵されている。
【0076】
また、内視鏡2のモータボックス16には、挿入部本体10に外挿する回転筒体51をギヤにより回転させるモータ59が内蔵されている。また、操作部7の主操作部18には、モータ59を回転/停止させるための入力装置71が内蔵されている。
【0077】
これら内視鏡2に内蔵される各装置は、制御装置3内に内蔵される各種装置と電気的に接続されている。詳述すると、制御装置3には、回転制御装置66と、トルク検出装置であるモータドライバ67と、トルク変化検出装置68と、モニタ4に画像信号を出力する画像処理装置69と、が内蔵されている。
【0078】
先端部8の撮像ユニット27は、画像処理装置69と電気的に接続されている。画像処理装置69は、回転制御装置66と電気的に接続されている。この画像処理装置69は、撮像ユニット27からの画像信号が入力され、モニタ4へ画像信号を出力する。また、撮像ユニット27の各LED34への電力は、画像処理装置69を介して供給される。
【0079】
モータボックス16のモータ59は、モータドライバ67と電気的に接続されている。このモータドライバ67は、回転制御装置66と電気的に接続されている。モータドライバ67は、モータ59のトルクを検出し、回転制御装置66に検出信号を出力すると共に、回転制御装置66から電力が供給されている。
【0080】
トルク変化検出装置68は、回転制御装置66、及びモータドライバ67と電気的に接続されている。このトルク変化検出装置68は、モータドライバ67からのモータ59のトルク検出値が入力され、そのトルク変化量を回転制御装置66に出力する。
【0081】
このモータ59のトルク変化量が入力された回転制御装置66は、モータドライバ67へモータ59の電力供給量を可変し、最適なトルクでモータ59を回転させる制御を行う。
【0082】
なお、主操作部18に配設される入力装置71、及び図1で説明した制御装置3に接続されるフットスイッチ25は、回転制御装置66と電気的に接続され、回転筒体51を回転させるモータ59のON/OFFを切り替える。尚、入力装置71、及びフットスイッチ25は、どちらが操作されても、モータ59をON/OFFすることができる。
【0083】
尚、内視鏡2は、コネクタカバー15がモータボックス16(図1参照)と接続されると、回転軸84に設けられたギヤ84aと、モータボックス16に設けられたモータ59のギヤ59aとが噛合し、モータ59の駆動力が各ギヤに伝達されて、回転軸84、及び基端側口金83を介して、回転筒体51が長手軸回りに回転するようになっている。
【0084】
すなわち、回転筒体51は、モータボックス16からの回転駆動力を基端部から伝達されるようになっている。なお、回転筒体51内を挿通するチューブ体である内層チューブ49aは、コネクタカバー15内から回転軸84を挿通して回転筒体51へ至るようになっている。
【0085】
また、コネクタカバー15とモータボックス16とには、夫々が連結した状態で、撮像ユニット27が制御装置3と電気的に接続できるように、電気的に接続される図示しない電気コネクタを有している。尚、モータ59には、エンコーダ、ホール素子などのセンサを有するものを用いて、回転数をモニタリングし、回転数とトルク量を二重に検出できるようにしても良い。
【0086】
次に、回転自走式内視鏡システム1の使用例を説明する。なお、以下の説明において、図7〜図10を参照して大腸内視鏡検査を例に挙げて説明する。
まず、回転自走式内視鏡システム1は、図1で示したように準備される。ユーザは、挿入補助具11を例えば、ベッド上に横たわっている患者の肛門から挿入する。なお、挿入部本体10は、収納ケース12内において、図7に示すようなループを描いた状態で収容されている。
【0087】
尚、本実施の形態の挿入補助具11は、筒状の挿入管53、外向フランジとなりドーナツ円盤状の当接部54、及び保持管55からなる補助具挿入部58と、先端側案内管13を接続する2つの接続環56,57と、から構成されている。
【0088】
挿入補助具11は、図8に示すように、当接部54が患者の肛門501近傍の臀部510に当接することで、挿入管53のみが肛門501から直腸502内に挿入された状態となる。すなわち、挿入補助具11は、当接部54によって、その全体が直腸502内に挿入されることが防止される。このとき、ユーザは、当接部54をテープなどで患者の臀部510へ固定する。
【0089】
このような状態で、ユーザは、操作部7の把持部17を握持し、フットスイッチ25の足元操作、或いは主操作部18に設けた進退スイッチの手元操作により、挿入部本体10の螺旋形状部51aを長手軸回りに回転させる。
【0090】
なお、収納ケース12は、各案内管13,14の一端部分を夫々連結する案内管固定部材64,65が配設されている。このうち、先端側案内管13を連結する案内管固定部材64内に、図示しないが螺旋形状部51aにゴム板等を嵌合させることで回転筒体51に与えられた回転力を利用して、回転筒体51の螺旋形状部51aに推進力を与えるように構成してもよい。
【0091】
ユーザは、操作部7のモータボックス16内に配設されるモータを上述した足元操作、或いは手元操作によって、回転駆動状態にする。回転筒体51には、基端部分から先端側へ回転力が伝達され、その全体が図8の矢印に示すような軸回りに所定の方向へ回転し、収納ケース12の案内管固定部材64に配設されたゴム板などから推進力を与えられる。
【0092】
推進力を与えられた回転筒体51は、図2に示した先端側口金50が螺旋管接続口金48を押圧する。これにより、先端部8、及び湾曲部9を含む挿入部本体10全体は、回転筒体51の螺旋形状部51aの推進力によって、先端側案内管13、及び挿入補助具11を介して、大腸内の深部に向かって進んでいく。
【0093】
ユーザは、挿入部本体10を把持して押し進めることなく、挿入補助具11の保持管55を軽く把持し、案内管固定部材64内で与えられた推進力のみで挿入部本体10を大腸内の深部に向かって前進させることができる。
【0094】
このとき、螺旋形状部51aは、腸壁の襞との接触状態が雄ねじと雌ねじとの関係になる。螺旋形状部51aは、案内管固定部材64内で与えられた推進力と、腸壁の襞との接触により発生した推進力とによりスムーズに前進し、結果として挿入部本体10は直腸502からS字状結腸503に向かって進んでいく。
【0095】
図9に示すように挿入部本体10は、先端部8、及び湾曲部9がS字状結腸503に到達する。このとき、ユーザは、モニタ4により映し出された内視鏡画像を見ながら、主操作部18の湾曲操作ノブ19(図1参照)を操作して、湾曲部9をS字状結腸503の屈曲状態に合わせる湾曲操作などする。
【0096】
ユーザは、湾曲部9の湾曲操作により、挿入が困難であるS字状結腸503を推進力が与えられた挿入部本体10により、前進させながら先端部8をスムーズに通過させることができる。挿入部本体10は、大腸の深部に挿入されるにつれ、案内管固定部材64内で推進力が常に与えられている状態であり、且つ、螺旋形状部51aと腸壁との接触長が長くなる。
【0097】
このため、挿入部本体10は、螺旋形状部51aの一部がS字状結腸503の襞に接触している状態、挿入部本体10が複雑に屈曲している状態などでも安定した大腸深部方向への推進力が得られる。また、挿入部本体10は、充分な可撓性を有していることから、容易に位置が変化するS字状結腸503の走行状態を変化させることなく、腸壁に沿ってスムーズに前進していく。
【0098】
挿入部本体10は、S字状結腸503を通過し、その後、S字状結腸503と可動性に乏しい下行結腸504との境界である屈曲部,下行結腸504と可動性に富む横行結腸505との境界である脾湾曲506,横行結腸505と上行結腸508との境界である肝湾曲507の壁に沿うようにスムーズに前進して、図10に示すように大腸の走行状態を変化させることなく、例えば目的部位である盲腸509近傍に到達する。
【0099】
この挿入操作の際、ユーザは、先端部8が各屈曲部(脾湾曲506,肝湾曲507)に到達したとき、上述と同じように、モニタ4により映し出された内視鏡画像を見ながら、主操作部18の湾曲操作ノブ19を操作して、各部位の屈曲状態に合わせて、湾曲操作する。
【0100】
ユーザは、モニタ4の内視鏡画像により、先端部8が盲腸509近傍まで到達したと判断した後、上述の足元操作、或いは手元操作により、一度、螺旋形状部51aの回転を停止する。ユーザは、挿入時に回転させていた軸回りの回転方向とは逆の方向に、フットスイッチ25の足元操作、或いは主操作部18の入力装置71の手元操作で螺旋形状部51aを逆回転させる操作を行う。
【0101】
つまり、ユーザは、螺旋形状部51aを挿入時とは逆に反転させて、先端部8を大腸の深部、盲腸509の近傍から抜去する方向へと挿入部本体10を後進させながら大腸検査を行う。ユーザは、挿入部本体10に手を触れずとも、回転筒体51の螺旋形状部51aが案内管固定部材64内で与えられた後退力により、挿入部本体10を後退させることができる。また、挿入部本体10は、先端部8及び湾曲部9がスナップフィット機能により、回転筒体51に引っ張られることで、全体が螺旋形状部51aの推進力により後退する。
【0102】
ユーザは、挿入部本体10の先端部8が挿入補助具11まで到達したら、この挿入補助具11と共に、挿入部本体10を患者の肛門501より抜去して、大腸検査を終了する。このとき、挿入部本体10は、案内管固定部材64内で後退力が与えられ、収納ケース12内に図7に示したような元の状態に湾曲しながら収納される。
【0103】
以上のように、ユーザは、本実施の形態の回転自走式内視鏡システム1により、体腔、ここでは大腸の深部へと挿入部本体10を容易に挿入でき内視鏡検査を行うことができる。
【0104】
ところで、このような体腔に対して挿入部本体10を挿入、及び抜去している際に、屈曲した大腸などの体腔壁と回転する回転筒体51との摩擦が増大し、回転筒体51の回転がし難くなる場合がある。このとき、回転筒体51の回転以上にモータ59からのトルクが伝達されても、ある所定以上の摩擦抵抗を受けた回転筒体51は、回転速度が低下して、回転停止に近い状態となる場合がある。
【0105】
しかし、本実施の形態の回転自走式内視鏡システム1は、内視鏡2のモータボックス16内に配設された、モータ59にかかるトルク量が設定された所定量以上となった場合、モータ59のモータ軸59bの回転がトルククラッチボックス61内の上述の回転伝達機構62でスリップする。
【0106】
すなわち、回転伝達機構62は、モータ59が回転筒体51に伝達するトルク量を規定された所定のトルク量以上で伝達されないように制限している。この制限は、挿入部本体10を体腔内に対して、挿入、及び抜去の際の両方で行われる。
【0107】
つまり、本実施の形態の回転自走式内視鏡システム1は、モータ59から所定のトルクで回転力を与えられている回転筒体51の回転が妨げられても、モータ59からの過大なトルク量が制限されることによって、所定の内部の捻り応力、及びせん断力を受けることで、発生する回転筒体51の変形、及び損傷を事前に防止することができる。さらに、回転自走式内視鏡システム1は、回転伝達機構62のスリップにより、回転筒体51を回転させるモータ59などの機器類にかかる負荷、故障、耐久性の低下なども事前に防止することができる構成となる。
【0108】
(第2の実施の形態)
次に、図11を用いて、第2の実施の形態の回転自走式内視鏡システム1について説明する。尚、本実施の形態の説明において、上述の第1の実施の形態と同じ各構成については、同じ符号を用いて、それらの説明を省略する。
【0109】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係り、回転自走式内視鏡システムの電気装置構成、及びチューブ回転駆動部を示すブロック図である。
【0110】
図11に示すように、本実施の形態の回転自走式内視鏡システム1の内視鏡2は、モータボックス16に、内層チューブ49aのみに回転を伝達するためのチューブ回転駆動部であるモータ63が内蔵されている。
【0111】
このモータ63は、モータ軸にモータギヤ63aを有している。また、内層チューブ49aには、コネクタカバー15がモータボックス16へ連結された状態で、モータギヤ63aが噛合するチューブ側ギヤ72が配設されている。
【0112】
これら各ギヤ63a,72の噛合については、第1の実施の形態での各ギヤ59a,32が噛合する状態と同様な構成にとなっているためその説明を省略する。また、内層チューブ49aは、コネクタカバー15内で図示しない2つの軸受けによって回動支持されている。
【0113】
モータ63は、制御装置3内のモータドライバ67と電気的に接続されている。このモータ63のON/OFFは、回転制御装置66によりモータドライバ67を介して行われる。尚、入力装置71、及びフットスイッチ25によって、モータ63のON/OFF操作を行えるようにしても良い。
【0114】
このように構成された回転自走式内視鏡システム1の内視鏡2では、第1の実施の形態の回転伝達機構62の作用に加え、モータ63の駆動により、内層チューブ49aを回転させることによって、内層チューブ49aと、この内層チューブ49aに外挿する回転筒体51との摩擦を低減することで、回転筒体51の回転性を向上させ、挿入部本体10の挿入性を向上させることができる。
【0115】
具体的には、例えば、回転筒体51と内層チューブ49aとを同一方向へ同じ回転速度で回転させると、回転筒体51と内層チューブ49aとの間では、摩擦抵抗が発生しないため、回転筒体51は、体腔壁からの摩擦抵抗のみしか受けない。つまり、回転筒体51は、体腔壁からの摩擦抵抗のみ作用し、内層チューブ49aとの摩擦抵抗量が低減されるため、モータ59から伝達される所定トルク量の回転性が向上する。
【0116】
そのため、回転筒体51には、体腔内での屈曲状況により内層チューブ49aとの変化する摩擦抵抗を受けないため、モータ59の回転が効率良く伝達される。その結果、内視鏡2の挿入部本体10は、回転筒体51の回転がスムーズとなり、安定して、体腔内に対する挿入性、及び抜去性が向上する。
【0117】
また、例えば、回転筒体51と内層チューブ49aとを相反する方向へ回転させると、体腔内で屈曲した状態の挿入部本体10は、内層チューブ49aの回転により直線化する方向の力が作用する。そのため、挿入部本体10は、体腔内で過度の状態で屈曲せず、体腔を直線化する方向へ変形することで、挿入性、及び抜去性が向上する。
【0118】
さらに、内層チューブ49aを相反する方向へ回転させることによって、回転筒体51と内層チューブ49aとの静止摩擦から動摩擦と変化するきっかけを作用させ易くなる。
【0119】
尚、これら内層チューブ49aの回転のON/OFF、回転方向、及び回転速度は、モータドライバ67によって、モータ59のトルクを検出して、回転制御装置66によって制御しても良いし、ユーザによる入力装置71の手元操作、或いはフットスイッチ25の足元操作により行うようにしても良い。
【0120】
(第3の実施の形態)
次に、図12を用いて、第3の実施の形態の回転自走式内視鏡システム1について説明する。尚、本実施の形態の説明においても、上述の第1、及び第2の実施の形態と同じ各構成については、同じ符号を用いて、それらの説明を省略する。
【0121】
図12は、本発明の第3の実施の形態に係り、回転自走式内視鏡システムの電気装置構成、及び回転伝達機構を示すブロック図である。
【0122】
図12に示すように、本実施の形態の回転自走式内視鏡システム1の内視鏡2には、モータボックス16内のモータ59に第2の回転伝達機構75が設けられている。このモータ59は、モータ軸59bに第1の実施の形態での回転伝達機構(本実施の形態では第1の回転伝達機構という)62と、モータギヤ(本実施の形態では第1のモータギヤという)59aと、が介装されるほか、第2の実施の形態での内層チューブ49aのチューブ側ギヤ72に噛合する第2のモータギヤ76と、第1、及び第2のモータギヤ59a,76の間に配設される第2の回転伝達機構75を有している。
【0123】
なお、ここでも各ギヤ76,65の噛合については、第1の実施の形態での各ギヤ59a,32が噛合する状態と同様な構成にとなっているためその説明を省略する。
【0124】
第2の回転伝達機構75は、単にモータ59の回転トルクの伝達をON/OFFするクラッチと、このクラッチに連設されるサンギヤ、複数のプラネタリギヤからなる遊星歯車装置を有している。また、第2の回転伝達機構75は、回転制御装置66と電気的に接続されている。
【0125】
このような第2の回転伝達機構75を備えた回転自走式内視鏡システム1の内視鏡2は、第2の実施の形態で記載したように、内層チューブ49aと回転筒体51とを同一方向、或いは相反する方向へ回転させることで、第2の実施の形態と同様な効果を奏することができる。
【0126】
尚、回転制御装置66は、第2の回転伝達機構75へクラッチをON/OFFする制御信号、及び遊星歯車装置による第2のモータギヤ76の回転伝達方向を切り換える制御信号を出力する。
【0127】
また、第2の実施の形態と同様に、内層チューブ49aの回転のON/OFF、回転方向、及び回転速度は、モータドライバ67によって、モータ59のトルクを検出して、回転制御装置66によって制御しても良いし、ユーザによる入力装置71の手元操作、或いはフットスイッチ25の足元操作により行うようにしても良い。
【0128】
以上に記載した各実施の形態の回転自走式内視鏡システム1は、回転筒体51が回転時に螺旋形状部51aと体腔壁との摩擦が増大した場合、回転伝達機構62によってモータ59から回転筒体51への回転伝達を制限するため、回転の妨げによって回転筒体51内部に発生する捻り応力、及びせん断力を制限することができる。これにより、回転筒体51は、変形したり、損傷したりすることが防止される。
【0129】
さらに、回転自走式内視鏡システム1は、回転筒体51の回転を制限するため、モータ59などの機器類に過大な負荷を与えることがないため、機器類の故障を事前に防止することができる。
【0130】
また、回転自走式内視鏡システム1は、回転筒体51が外挿する内層チューブ49aを回転させる機構を設けることで、回転筒体51が安定して体腔内で回転させることが出来るため、挿入部本体10の挿入性、及び抜去性が格段に向上する。
【0131】
以上の結果、本発明の回転自走式内視鏡システム1の回転自走式内視鏡装置2は、挿入部本体10、及び機器類に無理な負荷が与えられた場合、これら挿入部本体10、及び機器類の損傷を防止すると共に、安定した挿入性、及び抜去性を備えた構成とすることが出来る。
【0132】
以上の実施の形態に記載した発明は、その実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0133】
例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係り、回転自走式内視鏡システムの全体構成を示す外観図。
【図2】同、内視鏡の先端部、湾曲部、及び螺旋形状部の一部を示す断面図。
【図3】同、回転筒体と挿入部本体を示す断面図。
【図4】同、操作部側案内管が接続されたコネクタカバーの一部を示す断面図。
【図5】同、回転伝達機構を説明するためのコネクタカバーとモータボックスが連結した状態の断面図。
【図6】同、回転自走式内視鏡システムの電気装置構成、及び回転伝達機構を示すブロック図。
【図7】同、図1の収納ケースを示す上面図。
【図8】同、挿入補助具が患者の肛門から直腸へ挿入された状態を示す説明図。
【図9】同、大腸内に挿入された挿入部本体がS字状結腸に到達した際の状態を示す説明図。
【図10】同、大腸内に挿入された挿入部本体が盲腸近傍に到達した際の状態を示す説明図。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係り、回転自走式内視鏡システムの電気装置構成、及びチューブ回転駆動部を示すブロック図。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係り、回転自走式内視鏡システムの電気装置構成、及び回転伝達機構を示すブロック図。
【符号の説明】
【0135】
1・・・回転自走式内視鏡システム
2・・・回転自走式内視鏡装置
3・・・制御装置
6・・・挿入部
7・・・操作部
8・・・先端部
9・・・湾曲部
10・・・挿入部本体
15・・・コネクタカバー
16・・・モータボックス
32・・・挿入部側ギヤ
59a,63a,76・・・モータギヤ
59b・・・モータ軸
61・・・トルククラッチボックス
62・・・第1の回転伝達機構
63・・・モータ
72・・・チューブ側ギヤ
66・・・回転制御装置
67・・・モータドライバ
68・・・トルク変化検出装置
69・・・画像処理装置
71・・・入力装置
75・・・第2の回転伝達機構
76・・・モータギヤ
84・・・回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸回りに回動自在な螺旋管を備えた挿入部と、
上記螺旋管に上記長軸回りの回転駆動力を与える螺旋管回転駆動部と、
該螺旋管回転駆動部が発生するトルクを制限可能、且つ上記回転駆動力を上記螺旋管に伝達する回転伝達機構と、
を備えたことを特徴とする回転自走式内視鏡装置。
【請求項2】
上記回転伝達機構は、上記螺旋管回転駆動部からの所定量以上の上記トルクが上記螺旋管に伝達されないように上記回転駆動力を制限することを特徴とする請求項1に記載の回転自走式内視鏡装置。
【請求項3】
上記回転伝達機構は、クラッチであることを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の回転自走式内視鏡装置。
【請求項4】
さらに、上記挿入部は、上記螺旋管が外挿する回転自在なチューブ体を有し、
該チューブ体に長軸回りの回転駆動力を与えるチューブ回転駆動部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転自走式内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−313225(P2007−313225A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148659(P2006−148659)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】