説明

回転角度センサ

【課題】
コイル巻回の簡素化とタクトタイムの短縮が可能な回転角度センサを提供すること。
【解決手段】
突極の位相を所定の角度ずらして設けられた第一ロータ11および第二ロータ12と、第一ロータ11および第二ロータ12の突極より離間させて周設されるセンサ部20と、を備えた回転角度センサ。センサ部20は、複数の凹部を同一方向に開口させて設けた環状のボビン25と、ボビン25の厚み方向の第一ロータ11側に固設される第一サイドヨーク26と、磁性体からなりボビン25の厚み方向の第二ロータ12側に固設される第二サイドヨーク27と、を備える。ボビン25の凹部には第一ロータ11と第二ロータ12との境界面の延長位置に巻回される入力コイル21と、第一ロータ11および第二ロータ12に対応する位置に巻回される第一出力コイル23および第二出力コイル24と、が配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
回転角度センサとして、鉄心で構成され巻線を有しない回転子と、回転子の外周を囲むように内側向きに複数の突起を有する固定子と、複数の突起に巻かれた励磁コイルと複数の出力コイルと、を備えた回転角度センサが開示されている。励磁コイルと出力コイルは、各突起間に形成されるスロットに対して1スロットピッチで巻回される。また、出力コイルによる磁束分布が正弦波状となるように巻回される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、突起に励磁コイルと2相の出力コイルとを設けた固定子と、固定子との間のギャップパーミアンスが回転角θに対して正弦波状に変化する形状を有する回転子と、を備えた回転角度センサが開示されている。同極性の巻線が突起に、その巻き初めと巻き終わりが交差するようにして一方向に連続巻きされ、同極性の突起の巻回が終了したら巻回方向を反転して残りの逆極性の巻線が、その巻初めと巻き終わりが交差するようにして前記一方向とは逆方向に連続巻きされる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−178610号公報
【特許文献2】特開2004−251733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2では、固定子の内周に位置する複数の突起ごとに、入力コイルと複数の出力コイルとを巻回しなければならない。従って、ひとつの突起にコイルを巻回したのち、隣接する突起にコイルを巻回する、という動作を、固定子の内周を一周するまで繰り返す必要がある。しかも、固定子の内周に複数の突起があるため、コイルを巻回するときに、巻線装置を固定子の内側に挿入する必要がある。そのため、特殊な巻線機が必要になると同時に、巻線工程が複雑でタクトタイムが長くなる問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、コイルの巻回を簡素化でき、コイル巻回のためのタクトタイムを短縮可能な構造の回転角度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の課題解決手段は、磁性体からなり複数の突極を有する第一ロータと、磁性体からなり前記第一ロータの突極の位置より所定の角度位相をずらして設けられ前記第一ロータと一体回転可能な第二ロータと、前記第一ロータおよび前記第二ロータの共通の回転中心から前記第一ロータの突極の外周までの距離および前記第二ロータの突極の外周までの距離より径方向に離間させて周設されるセンサ部と、を備えた回転角度センサであって、前記センサ部は、前記第一ロータと前記第二ロータとの境界面を径方向に延長した位置に巻回される入力コイルと、前記第一ロータの径方向外側に巻回される第一出力コイルと、前記第一出力コイルと同径および同巻数になるように前記第二ロータの径方向外側に巻回される第二出力コイルと、前記入力コイルと前記第一出力コイルと前記第二出力コイルとを区画して巻回するための複数の凹部を同一方向に開口させて設けた環状のボビンと、磁性体からなり前記ボビンの厚み方向の前記第一ロータ側に、前記第一ロータが有する突極の数と同数かつ前記ボビンの周方向に等間隔に固設される第一サイドヨークと、磁性体からなり前記ボビンの厚み方向の前記第二ロータ側に、前記第二ロータが有する突極の数と同数かつ前記第一サイドヨークと同位相に固設される第二サイドヨークと、を備えることである。
【0008】
第2の課題解決手段は、前記センサ部は、前記入力コイルの径方向外周に参照コイルを備える、ことである。
【0009】
第3の課題解決手段は、前記第一出力コイルと前記第二出力コイルとの間に磁性体からなるインナーヨークを備える、ことである。
【発明の効果】
【0010】
第1の課題解決手段によれば、ボビンに入力コイル、第一出力コイルおよび第二出力コイルを巻回しうる複数の凹部が同一方向に開口させて設けられるため、ボビンを回転させながら入力コイル、第一出力コイルおよび第二出力コイルを巻回でき、従来技術のように特殊なコイル巻線機を用いなくてよい。換言すると、本発明はボビン外周にコイルを巻回させるだけであり、製造工程におけるタクトタイムを低減させることができる。また、ボビンを回転させながら入力コイル、第一出力コイルおよび第二出力コイルを同時に巻回することもでき、この場合には製造工程におけるタクトタイムをさらに低減できる。また、ボビンの凹部への入力コイルと第一出力コイルと第二出力コイルとの巻回を均一にできるため、コイル占積率が高い値で安定する。コイル占積率が高ければコイルインダクタンスも高くなるため、入力コイルから発生される磁束を強めることができ、第一出力コイルおよび第二出力コイルにおいて発生する誘導起電力を強化でき、出力が向上する。また、コイル占積率が安定することで各コイルの個体差を低減でき、性能の安定化が期待できる。
【0011】
入力コイルに励磁電圧を印加した場合には、入力コイルの周辺に磁束が発生する。この磁束との電磁的相互作用により、第一出力コイルおよび第二出力コイルに誘導起電力が発生する。第二ロータは、第一ロータに対し、突極の位相を所定の角度(例えば180°/突極の数)ずらして配設される。上記のような構造から、第一ロータおよび第二ロータの回転により、第一ロータの突極と第一サイドヨークとの間の距離、および第二ロータの突極と第二サイドヨークとの間の距離が変化する。第一ロータの突極と第一サイドヨークとの間の距離が近づくと、第一出力コイルの内側の領域の磁気抵抗が低下し、第一出力コイルの内側を通過する磁束が増加する。磁束の増加により、第一出力コイルに生じる誘導起電力が増加する。一方、第二サイドヨークと第二ロータの突極との間の距離は遠ざかるため、第二出力コイルの内側の領域の磁気抵抗が上昇し、第二出力コイルの内側を通過する磁束は減少し、第二出力コイルに生じる誘導起電力が減少する。第一出力コイルおよび第二出力コイルにより検出される誘導起電力の増減から、第一ロータおよび第二ロータの回転角度を求めることができる。
【0012】
第2の課題解決手段によれば、入力コイルの径方向外周に参照コイルを備えることにより、参照コイルからの出力と、第一出力コイルおよび第二出力コイルからの出力と、の差分演算により、回転角度を直接演算可能な出力が得られる。
【0013】
第3の課題解決手段によれば、第一出力コイルと第二出力コイルとの間に磁性体からなるインナーヨークを備えることにより、第一出力コイルと第二出力コイルの周辺の磁気抵抗が上昇する。さらにインナーヨークを備えることにより、第一ロータの突極が第一サイドヨークに近づいた際または第二ロータの突極が第二サイドヨークに近づいた際に、第一出力コイルまたは第二出力コイルに発生する誘導起電力が大きくなる。そのため、インナーヨークを備えない場合より第一ロータおよび第二ロータの回転角度の検出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態における回転角度センサを正面から見た説明図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態における第一出力コイルおよび第二出力コイルによる出力の一例である。
【図4】本発明の実施形態における参照コイルによる出力の一例である。
【図5】本発明の実施形態における差分演算による出力の一例である。
【図6】別実施形態における回転角度センサを正面から見た説明図である。
【図7】図6のB−B断面図である。
【図8】別実施形態における回転角度センサを正面から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は回転角度センサ1の正面図であり、図2は図1のA−A断面図である。図示したように、回転角度センサ1は、円盤状のロータ10と、ロータ10の外周に離間配置された中空円盤状のセンサ20とからなる。
【0017】
ロータ10は、第一ロータ11および第二ロータ12を貼り合わせた構成である。また、第一ロータ11および第二ロータ12は、それぞれ突極11aおよび突極12aを有しており、第二ロータ12の突極12aは、第一ロータ11の突極11aに対して位相を『90°/突極の数』ずらして配置される。本実施形態では、第一ロータ11の突極11aの数、第二ロータ12の突極12aの数は、それぞれ2個である。そのため、突極11aに対して突極12aは、位相を45°ずらして固設される。また、突極11aおよび突極12aの形状は扇形状であり、第一ロータ11の突極11aおよび第二ロータの突極12aの径方向外側に延在する外周縁部の両端から回転中心へと延在する一対の側縁部がなす中心角度は90°である。尚、突極11aおよび突極12aの数は、それぞれ2個以上であればよく、突極の数をより多く設けたほうがロータ10の回転角度の検出精度が向上する。
【0018】
センサ20は、ロータ10の回転中心Cから突極11aの外周端部までの距離およびロータ10の回転中心Cから突極12aの外周端部までの距離より径方向に離間させて周設される。センサ20は、コイルを巻回するための環状のボビン25を備える。ボビン25は、同一方向に開口させた複数の凹部25aを備える。本実施形態では、ボビン25が有する凹部25aは3箇所であり、中央の凹部25aには入力コイル21と参照コイル22とが巻回され、両側の凹部25aには第一出力コイル23と第二出力コイル24とがそれぞれ巻回される。尚、ボビン25は非磁性体である樹脂材などからなり、第一出力コイル23と第二出力コイル24とは同じ巻数となるように巻回される。また、第一ロータ11と第二ロータ12の境界面が、入力コイル21および参照コイル22の厚み方向中央に位置するように配設される。
【0019】
また、ボビン25の厚み方向の両端部には一対のサイドヨーク26,27が備えられる。ロータ10の厚み方向における第一ロータ11側には第一サイドヨーク26が固設される。第一サイドヨーク26は、ボビン25の周方向に突極11aと同数備えられると共に、ボビン25の周方向に等間隔に固設される。ロータ10の厚み方向における第二ロータ12側には第二サイドヨーク27が固設される。そして、第一サイドヨーク26と第二サイドヨーク27とはボビン25を挟むように厚さ方向両端に配設されると共に、ボビン25の周方向における第一サイドヨーク26および第二サイドヨーク27の位置が同位置となるように配置される。第一サイドヨーク26および第二サイドヨーク27は、扇形状であり、突極の径方向外側に延在する外周縁部の両端から回転中心へと延在する一対の側縁部がなす中心角度は『180°/突極の数』である。本実施形態では、突極11aおよび突極12aは、それぞれ2個であるから、中心角度は90°となる。また、第一サイドヨーク26と第二サイドヨーク27との間には、磁性体からなるインナーヨーク28が備えられる。インナーヨーク28を備えることで、第一出力コイル23と第二出力コイル24との周辺の電気抵抗が低下し、第一出力コイル23と第二出力コイル24との出力が大きくなり、回転角度を検出する精度が向上する。尚、第一サイドヨーク26、第二サイドヨーク27およびインナーヨーク28は、ロータ10の回転中心Cに対して回転対称となる位置に、接着剤によってボビン25に固設される。また、第一サイドヨーク26、第二サイドヨーク27、およびインナーヨーク28は、一体成型によってボビン25に固設されてもよい。
【0020】
図3は、第一出力コイル23および第二出力コイル24による出力結果の一例である。図3(a)は、第一出力コイル23の出力結果の一例であり、図3(b)は、第二出力コイル24の一例である。横軸は、ロータ10の回転角度θを表し、縦軸は、第一出力コイル23または第二出力コイル24から得られる電圧値Vを表す。入力コイル21に励磁する励磁電圧VINは、
【数1】

【0021】
に基づいて変化する。ここで、Eは電圧値、ωは角周波数、tは時間である。第一ロータ11と第二ロータ12との一体回転によって、第一出力コイル23の出力電圧VOUT1と第二出力コイル24の出力電圧VOUT2は、
【数2】

【0022】
に基づいて変化する。ここで、KはVOUT1、VOUT2の振幅の中央値を示す変圧比、aはロータ回転に伴うVOUT1、VOUT2のKからの変化量、θは出力信号の電気角である。第一出力コイル23と第二出力コイル24から得られる出力の包絡線は、SIN形状、またはCOS形状の波形になる。
【0023】
図4は、参照コイル22の出力結果の一例である。横軸はロータ10の回転角度θを表し、縦軸は、参照コイル22から得られる電圧値Vを表す。入力コイル21および参照コイル22はインナーヨーク28の外周側に配置されているためロータ10の影響を受けにくく、入力コイル21と参照コイル22との間の相互インダクタンスは常に一定となる。よって、電磁誘導により発生する参照コイル22の出力電圧VREFは、
【数3】

【0024】
に基づいて変化する。参照コイル22から得られる出力の包絡線は、電圧変化が一定な波形になる。
【0025】
図5は、差分演算による出力結果の一例である。図5(a)は、第一出力コイル23の出力値から参照コイル22の出力値を引いた結果であり、図5(b)は第二出力コイル24の出力値から参照コイル22の出力値を引いた結果である。この差分演算は、第一出力コイル23と第二出力コイル24とのマイナス側の端子(図示略)に参照コイル22のプラス側の端子(図示略)を接続し、第一出力コイル23と第二出力コイル24とのプラス側の端子(図示略)に参照コイル22のマイナス側の端子(図示略)を接続すること、または、処理回路(図示略)により、実行可能である。第一出力コイル23の出力電圧VOUT1と参照コイル22の出力電圧VREFとの差分演算結果V1、第二出力コイル24の出力電圧VOUT2と参照コイル22の出力電圧VREFとの差分演算結果V2は、
【数4】

【0026】
に基づいて変化する。従って、差分演算した結果の包絡線は、SIN波形、またはCOS波形になる。
【0027】
次に本実施形態にかかる回転角度センサ1の動作について説明する。上記構成において、ロータ10に動力源(図示略)を接続し、動力源からの動力によってロータ10を回転させた場合の回転角度が求められる。
【0028】
入力コイル21に高周波の正弦波電圧(7Vrms、10kHz)を印加すると、参照コイル22と、第一出力コイル23と、第二出力コイル24と、の内側領域であるロータ10配設部分を磁束が通過する。それに伴い、参照コイル22と第一出力コイル23と第二出力コイル24とには、入力コイル21に印加された励磁電圧の振幅および強度に応じた誘導起電力が発生する。
【0029】
位相を45°ずらして突極11a,12aを設けたロータ10が回転し、第一ロータ11の突極11aが第一サイドヨーク26に近づくと、第一出力コイル23の内側の磁気抵抗が低下し、第一出力コイル23の内側を通過する磁束が増加する。磁束が増加するため、第一出力コイル23に発生する誘導起電力は大きくなる。ロータ10の回転により、第一ロータ11の突極11aと第一サイドヨーク26とが遠ざかると、第一出力コイル23の内側の磁気抵抗が上昇し、第一出力コイル23の内側を通過する磁束が減少する。磁束の減少により、第一出力コイル23に発生する誘導起電力は小さくなる。
【0030】
第一ロータ11の突極11aおよび第二ロータ12の突極12aの位相は45°ずれているため、第二出力コイル24の内側を通過する磁束の増減は、第一出力コイル23を通過する磁束の増減より45°ずれる。そのため、第二出力コイル12に発生する誘導起電力の増減は、第一出力コイル11に発生する誘導起電力の増減より電気角にして90°のずれとなり、第一出力コイル11から得られる出力の包絡線が図3(a)のようにSIN形状になる場合、第二出力コイル12から得られる出力の包絡線は図3(b)のようにCOS形状になる。
【0031】
参照コイル22は第一ロータ11と第二ロータ12との境界面(第一ロータ11と第二ロータ12との回転軸方向における境界面)を径方向に延長した位置であって入力コイル21の径方向外側に配設されるため、ロータ10が回転しても参照コイル22の内側の磁気抵抗は変化せず、参照コイル22の内側を通過する磁束は増減がない。そのため、参照コイル22から得られる出力の包絡線は、図4のように電圧変化が一定な波形になる。
【0032】
第一出力コイル23と参照コイル22との出力結果を差分演算すると、出力結果は図5(a)のようなSIN波形になり、第二出力コイル24と参照コイル22との出力結果を差分演算すると、図5(b)のようなCOS波形になる。そして、これらの出力結果に基づいて回転角度が算出される。
【0033】
本実施形態によれば、ボビン25に入力コイル21、参照コイル22、第一出力コイル23、および第二出力コイル24を巻回しうる複数の凹部25aを同一方向に開口させて設けたため、従来技術のように特殊なコイル巻線機を必要とせずにコイルを巻回できる。また、入力コイル21と第一出力コイル23と第二出力コイル24との巻回を同時にすることで、タクトタイムが低減可能となる。また、巻回時のコイル線の供給速度と軸方向に往復させる速度とを制御することにより、コイル線を規則正しくボビンに巻回でき、コイル占積率が高い値で安定する。コイル占積率が高ければコイルインダクタンスも高くなるため、入力コイル21から発生される磁束を強めることができ、第一出力コイル23および第二出力コイル24において発生する誘導起電力を強化でき、出力が向上する。また、コイル占積率が安定することで各コイルの個体差を低減でき、性能の安定化が期待できる。
【0034】
さらに、入力コイル21に電圧を印加すると、入力コイル21の内側領域である第一ロータ11および第二ロータ12を含む領域に磁束が発生する。入力コイル21を挟む位置に第一出力コイル23と第二出力コイル24とが配設されているため、第一出力コイル23および第二出力コイル24に誘導起電力が発生する。
【0035】
突極の位相を『90°/突極の数』ずらして配設される第一ロータ11と第二ロータ12とが一体回転すると、第一ロータ11の突極と第一サイドヨーク26の間の距離および第二ロータ12の突極と第二サイドヨーク27の間の距離が変化する。第一ロータ11の突極と第一サイドヨーク26との距離が近づくと、第一出力コイル23の内側領域の磁気抵抗が低下し、第一出力コイル23の内側領域を通過する磁束が増加する。磁束の増加により、第一出力コイルに生じる誘導起電力が増加する。一方、第二サイドヨーク27と第二ロータ12の突極との距離は遠ざかるため、第二出力コイル27の内側の磁気抵抗が上昇し、第二出力コイル27の内側を通過する磁束は減少する。磁束の減少により、第二出力コイル27に生じる誘導起電力が減少する。この誘導起電力の増減から、ロータ10の回転角度を求めることができる。
【0036】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0037】
図6および図7のように、第一ロータ111と第二ロータ112とが楕円形状、インナーヨーク128が扇形形状であり、参照コイル22が無い回転角度センサ100でも上記と同様の効果を奏する。
【0038】
図8のように、第一ロータ11および第二ロータ12の突極11a,12aの数を3つにしてもよく、突極の数をより多く設けたほうがロータ10の回転角度の検出精度が向上する。突極11a,12aの数を3つにした場合、第一ロータ11と第二ロータ12との位相のずれ角は30°となる。
【0039】
また、本実施形態では第一ロータ11および第二ロータ12を貼り合わせてロータ10を形成しているが、一体成型により第一ロータ11および第二ロータ12を設けたロータ10としても上記と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0040】
1 回転角度センサ
10 ロータ部
11 第一ロータ
11a 突極
12 第二ロータ
12a 突極
20 センサ部
21 入力コイル
23 第一出力コイル
24 第二出力コイル
25 ボビン
25a 凹部
26 第一サイドヨーク
27 第二サイドヨーク
C 回転中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体からなり複数の突極を有する第一ロータと、
磁性体からなり前記第一ロータの突極の位置より所定の角度位相をずらして設けられ前記第一ロータと一体回転可能な第二ロータと、
前記第一ロータおよび前記第二ロータの共通の回転中心から前記第一ロータの突極の外周までの距離および前記第二ロータの突極の外周までの距離より径方向に離間させて周設されるセンサ部と、を備え、
前記センサ部は、
前記第一ロータと前記第二ロータとの境界面を径方向に延長した位置に巻回される入力コイルと、
前記第一ロータの径方向外側に巻回される第一出力コイルと、
前記第一出力コイルと同径および同巻数になるように前記第二ロータの径方向外側に巻回される第二出力コイルと、
前記入力コイルと前記第一出力コイルと前記第二出力コイルとを区画して巻回するための複数の凹部を同一方向に開口させて設けた環状のボビンと、
磁性体からなり前記ボビンの厚み方向の前記第一ロータ側に、前記第一ロータが有する突極の数と同数かつ前記ボビンの周方向に等間隔に固設される第一サイドヨークと、
磁性体からなり前記ボビンの厚み方向の前記第二ロータ側に、前記第二ロータが有する突極の数と同数かつ前記第一サイドヨークと同位相に固設される第二サイドヨークと、を備える回転角度センサ。
【請求項2】
前記センサ部は、前記入力コイルの径方向外周に参照コイルを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の回転角度センサ。
【請求項3】
前記第一出力コイルと前記第二出力コイルとの間に磁性体からなるインナーヨークを備える、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転角度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−232122(P2011−232122A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101687(P2010−101687)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】