説明

回転角度検出装置

【課題】回転体への誤組み付けなどに起因する制御システムの誤動作を抑制することのできる回転角度検出装置を提供する。
【解決手段】この回転角度検出装置は、ステアリングホイールの操舵角を絶対角度及び相対角度で検出することが可能であるとともに、検出した絶対角度を示す信号及び相対角度を示す信号を各制御装置30,31に出力する。ここでは、各制御装置30,31が相対角度及び絶対角度のいずれを必要としているかを示す必要角度情報を各制御装置30,31のメモリ30a,31aに予め記憶させる。そして、この必要角度情報に基づいて各制御装置30,31がステアリングホイールの相対角度及び絶対角度のいずれを必要としているかを判断し、この判断結果に基づいて各制御装置30,31に相対角度を示す信号及び絶対角度を示す信号のいずれの信号を出力するかを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象となる回転体の回転角度を相対角度及び絶対角度で検出することが可能な回転角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の横滑りを抑制すべくエンジン出力制御や各車輪のブレーキ制御などを自動的に行う横滑り防止システムが周知である。この横滑り防止システムは、車両のヨーレートやステアリングホイールの操舵角に基づいて車両が横滑りをしているか否かを判断し、その判断結果に基づいてエンジン出力を低下させる制御などを行うものであるため、同システムには通常、ステアリングホイールの操舵角を検出する装置が必要となる。また、こうした横滑り防止システムに限らず、例えば車両後退時の予想進路をディスプレイに表示することにより運転者の車両後退操作を補助するBGM(Back Guide Monitor)システムなどの各種車載制御システムでもステアリングホイールの操舵角を検出する装置は必要である。そして従来、こうしたステアリングホイールの操舵角を検出する回転角度検出装置としては、例えば特許文献1及び2に記載の回転角度検出装置が知られている。
【0003】
この特許文献1に記載の回転角度検出装置は、車両のステアリングホイールの回転軸であるステアリングシャフトと一体的に回転するメインギヤを有し、このメインギヤに一つの検知ギヤが歯合されている。また、この装置では、検知ギヤに磁石が設けられるとともに、この磁石に対向するかたちで、同磁石から発せられる磁界の方向に応じた電圧信号を出力する磁気検出部が配設されている。ちなみに、この磁気検出部は、印加される磁界の方向に応じて磁気抵抗効果により抵抗値が変化する磁気抵抗素子により構成されている。すなわち、この装置では、メインギヤの回転に伴って検知ギヤが回転すると、磁気検出部から出力される電圧信号に変化が生じる。そして、この装置では、磁気検出部の出力信号の出力値及びその周期に基づいて所要の演算処理を施すことにより、メインギヤの回転角度を相対角度で、換言すればステアリングホイールの操舵角を相対角度で検出する。なお、ステアリングホイールの相対角度とは、ステアリングホイールが回転したときにある基準点からの変化量で回転角度を示すものであって、車両直進状態からのステアリングホイールの操舵角と一対一に対応しない角度である。例えば、このステアリングホイールの相対角度は、図7に実線にて示すように、ある位置を「0°」としたときからのステアリングホイールの回転角度の変化に対して「60°」を一周期として、60°内の角度と周期数で示すことが可能である。
【0004】
そして、上記車載制御システムでは、この回転角度検出装置から出力される相対角度を示す信号(相対角度信号)を取り込むことにより、ステアリングホイールの相対角度を検出することができる。また、上記車載制御システムでは、例えば相対角度信号が何周期変化したかをカウントするとともに、そのカウント値及びステアリングホイールの相対角度に基づいてステアリングホイールの所定の基準位置からの操舵角、すなわちステアリングホイールの絶対角度を検出することもできる。
【0005】
一方、特許文献2に記載の回転角度検出装置は、この特許文献1に記載の回転角度検出装置と同様にメインギヤと検知ギヤとを有するものではあるが、互いに異なる歯数を有する2つの検知ギヤがメインギヤに歯合しているといった点で異なる構成を有している。また、この装置では、2つの検知ギヤに磁石がそれぞれ設けられるとともに、これらの磁石に対向するかたちで、同磁石から発せられる磁界の方向に応じた電圧信号を出力する磁気検出部がそれぞれ配設されている。ちなみに、これらの磁気検出部も、印加される磁界の方向に応じて磁気抵抗効果により抵抗値が変化する磁気抵抗素子により構成されている。そして、この装置では、各磁気検出部の出力信号に基づいてそれぞれの検知ギヤの回転角度を算出し、算出された回転角度の差分値を利用して所要の演算処理を施すことによってステアリングホイールの操舵角を絶対角度で検出するとともに、検出された絶対角度に応じた信号(絶対角度信号)を上記車載制御システムに出力する。なお、このステアリングホイールの絶対角度とは、上述のように、また先の図7に二点鎖線にて示すように、ステアリングホイールの操舵角と一対一に対応する角度である。
【0006】
そして、上記車載制御システムでは、この回転角度検出装置から出力される絶対角度信号を取り込むことにより、ステアリングホイールの絶対角度を直接検出することができる。このため、上記車載制御システムでは、ステアリングホイールの絶対角度を検出するために各種演算処理を施す必要がないため、同システムの演算負担を軽減することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−239670号公報
【特許文献2】特開2007−127609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ステアリングホイールの絶対角度を検出する回転角度検出装置では、上記メインギヤや検知ギヤの歯数などによってその検出範囲が予め設定されているため、同装置を車両に組み付ける際に、上記メインギヤの所定の基準位置とステアリングホイールの所定の基準位置とを正確に一致させる必要がある。しかしながら、当該回転角度検出装置の車両への誤組み付けなどにより互いの基準位置がずれてしまうと、運転者によってステアリングホイールが回転操作された際に、同装置の検出範囲を超える角度が検出されてその出力信号が適正値から外れてしまう、いわゆる出力信号のオーバーフローが生じるおそれがある。そして、こうした出力信号のオーバーフローが生じた場合には、車載制御システムがステアリングホイールの操舵角を誤検出して、同システムの誤動作を招くおそれがある。ちなみに、ステアリングホイールの相対角度を検出する回転角度検出装置ではこうした出力信号のオーバーフローの問題が生じることがない。したがって、出力信号のオーバーフローの観点からセンサ取り付け時の冗長性を考慮すると、絶対角度信号を利用して各種制御を行うよりも相対角度信号を利用して各種制御を行った方が有利であると言える。
【0009】
一方、上述した横滑り防止システムやBGMシステムなどの車載制御システムには、そのシステムにかかる各種制御を実行するためにステアリングホイールの相対角度を必要とするシステムもあれば、ステアリングホイールの絶対角度を必要とするシステムもある。具体的には、ステアリングホイールの相対角度を必要とするシステムとしては、例えば上記横滑り防止システムが、また、ステアリングホイールの絶対角度を必要とするシステムとしては、例えば上記BGMシステムがある。
【0010】
ここで、横滑り防止システムのうち、例えば上述したステアリングホイールの相対角度から絶対角度を演算するシステムでは、仮に回転角度検出装置から出力される信号が絶対角度信号であったとしても、同信号に対して何ら特殊な演算処理を施すことなくステアリングホイールの絶対角度を検出することが可能である。したがって、こうした横滑り防止システムにあっては、相対角度信号に代えて絶対角度信号を出力するようにしたとしても実用上は問題がない。
【0011】
このため従来は、横滑り防止システム及びBGMシステムの双方が搭載されている車両であっても、あるいは横滑り防止システム及びBGMシステムのいずれか一方のシステムが搭載されている車両であっても、ステアリングホイールの絶対角度を検出する回転角度検出装置を車両に搭載することにより、車両としての標準化を図るようにしていた。すなわち、全てのシステムに絶対角度信号を出力するようにしていた。
【0012】
ただし、こうした構成を採用するようにした場合には、仮に上述した回転角度検出装置の車両への誤組み付けなどにより絶対角度信号にオーバーフローが生じたときに、全ての車載システムが誤動作してしまうおそれがある。すなわち、ステアリングホイールの相対角度を必要とする横滑り防止システムでは、入力信号が相対角度信号であるならばオーバーフローの問題が本来生じることがなかったにもかかわらず、横滑り防止システムが誤動作してしまうおそれがある。
【0013】
なお、こうした問題は、横滑り防止システムやBGMシステムが搭載される車両に限らず、ステアリングホイールの絶対角度及び相対角度を必要とする各種制御システムが搭載された車両であれば同様に発生し得る。また、ステアリングホイールの操舵角を検出するための回転角度検出装置に限らず、所定の回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置であれば同様に発生し得る。
【0014】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転体への誤組み付けなどに起因する制御システムの誤動作を抑制することのできる回転角度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、検出対象となる回転体の回転角度を相対角度及び絶対角度で検出することが可能であるとともに、この検出した相対角度を示す信号及び絶対角度を示す信号を前記回転体の回転角度に基づいて各種制御を実行する制御システムに出力する回転角度検出装置において、前記制御システムが前記相対角度及び前記絶対角度のいずれを必要としているかを判断し、この判断結果に基づいて前記制御システムに前記相対角度を示す信号及び前記絶対角度を示す信号のいずれの信号を出力するかを決定することを要旨としている。
【0016】
同構成によれば、回転体の絶対角度を必要とする制御システムには絶対角度を示す信号を出力することによって同システムの適正な動作を確保しつつも、回転体の相対角度を必要とする制御システムには相対角度を示す信号を出力することができるようになる。そして、このように回転体の相対角度を必要とする制御システムに相対角度を示す信号を出力するようにすれば、仮に回転角度検出装置が回転体に誤組み付けされるような異常事態が生じたとしても、この回転体の相対角度を必要とする制御システムに入力される信号にオーバーフローが生じることはない。したがって、少なくとも回転体の相対角度を必要とする制御システムについてはその適正な動作を確保することができるようになるため、制御システムの誤動作を抑制することができるようになる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転角度検出装置において、前記制御システムには、前記相対角度及び前記絶対角度のいずれが必要であるかを示す必要角度情報が予め記憶され、前記制御システムが前記相対角度及び前記絶対角度のいずれを必要としているかを判断するにあたり、前記制御システムから前記必要角度情報を取得し、この取得した必要角度情報に基づいて前記制御システムが前記相対角度及び前記絶対角度のいずれを必要としているかを判断することを要旨としている。
【0018】
同構成によれば、相対角度及び絶対角度のいずれが必要であるかを示す必要角度情報を制御システムに記憶させるだけで、当該回転角度検出装置は、制御システムが相対角度及び絶対角度のいずれを必要としているかを判断することができるようになる。このため、制御システムが相対角度及び絶対角度のいずれを必要としているかを判断するための構成を容易に実現することができるようになる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の回転角度検出装置において、前記制御システムに前記絶対角度を必要とするシステムが少なくとも1つ存在していることが検知されたとき、前記制御システムの全てに前記絶対角度を示す信号を出力し、前記制御システムの全てが前記相対角度を必要とするシステムであることが検知されたとき、前記制御システムの全てに前記相対角度を示す信号を出力することを要旨としている。
【0020】
上述のように、回転体の相対角度を必要とする制御システムに相対角度を示す信号を出力するようにすることで、少なくとも回転体の相対角度を必要とする制御システムについてはその適正な動作を確保することができるようにはなる。ただし、例えば回転体の相対角度を必要とする制御システムには相対角度を示す信号を、また、回転体の絶対角度を必要とする制御システムには絶対角度を示す信号を出力するようにしたとしても、絶対角度を示す信号にオーバーフローが生じた場合には、結局、回転体の絶対角度を必要とする制御システムは誤動作してしまう。そしてこのように回転体の絶対角度を必要とする制御システムが誤動作してしまえば、制御システム全体としての正常な動作に支障をきたすおそれがある。したがって、上記構成によるように、制御システムに回転体の絶対角度を必要とする制御システムが少なくとも1つ存在している場合には制御システムの全てに絶対角度を示す信号を、また、制御システムの全てが回転体の相対角度を必要とする制御システムである場合には制御システムの全てに相対角度を示す信号を出力するようにすることで、制御システム全体としての正常な動作を確保するといった効果を十分に得ることはできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる回転角度検出装置によれば、回転体への誤組み付けなどに起因する制御システムの誤動作を抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態にかかる回転角度検出装置の一実施形態についてその概略構成を示す平面図。
【図2】図1のII−II線に沿った断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態の回転角度検出装置についてそのシステム構成を示すブロック図。
【図4】同実施形態の回転角度検出装置から出力される相対角度信号の波形例を示す波形図。
【図5】同実施形態の回転角度検出装置から出力される絶対角度信号の波形例を示す波形図。
【図6】同実施形態の回転角度検出装置による相対角度信号及び絶対角度信号のいずれの信号を出力するかを決定する処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図7】ステアリングホイールの操舵角とその相対角度及び絶対角度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかる回転角度検出装置を車両のステアリングホイールの操舵角を検出する装置に具体化した一実施形態について図1〜図6を参照して説明する。ここで、図1は、本実施形態にかかる回転角度検出装置の平面構造を、また、図2は、図1のII−II線に沿った断面構造を示したものであり、はじめに、これら図1及び図2を参照して、本実施形態にかかる回転角度検出装置の概略構成について説明する。なお、図1では、便宜上、回転角度検出装置を構成する各種部品を外部環境から保護するハウジング(図2のハウジング15)の図示を割愛している。
【0024】
同図1に示されるように、この回転角度検出装置も、ステアリングホイールの操舵角を検出するための構成は、先の特許文献2に記載の回転角度検出装置と基本的に同様である。すなわち、この回転角度検出装置は、車両のステアリングホイール(図示略)の回転軸として機能するステアリングシャフトSの外周に一体的に嵌合されるメインギヤ10を有しており、ステアリングシャフトSの回転に伴ってメインギヤ10が図中の中心軸Cを中心に図中の矢印c1及びc2で示す方向に回動する構造となっている。また、このメインギヤ10の外歯には、第1の検知ギヤ11が歯合されるとともに、この第1の検知ギヤ11と異なる歯数を有する第2の検知ギヤ12も歯合されている。ちなみに、図2に併せ示されるように、第1の検知ギヤ11の中心部には、ハウジング15の内壁面に形成された凹部15aに係合する凸部11aが設けられており、この凹凸係合構造、並びに第1の検知ギヤ11の底部を保持する保持部材19等により第1の検知ギヤ11は凸部11aを中心に回動可能に支持されている。また、この第1の検知ギヤ11において凸部11aの形成される側の面と反対側の面には第1の磁石13が固定配設されており、第1の検知ギヤ11の回動に伴って第1の磁石13が凸部11aを中心に回動する。すなわち、第1の検知ギヤ11の回動に伴って第1の磁石13から発せられる磁界の方向が変化する。また、ハウジング15の第1の磁石13に対向する部分には基板18が配設されており、この基板18に、磁石13から発せられる磁界の方向に応じた、換言すれば第1の検知ギヤ11の回転角度に応じた電圧信号を出力する第1の磁気検出部16が実装されている。
【0025】
ちなみに、第2の検知ギヤ12の構造はこの第1の検知ギヤ11の構造に準ずるものであり、この第2の検知ギヤ12も、その中央部に形成された凸部12aを中心に回動可能に支持されるとともに、この第2の検知ギヤ12にも第2の磁石14が固定配設されている。さらに、ハウジング15には、この第2の磁石14に対向するかたちで、同磁石14から発せられる磁界の方向に応じた、換言すれば第2の検知ギヤ12の回転角度に応じた電圧信号を出力する第2の磁気検出部17が配設されている。
【0026】
なお、第1及び第2の磁気検出部16,17は、先の特許文献1及び2に記載の回転角度検出装置と同様に、印加される磁界の方向に応じて磁気抵抗効果により抵抗値が変化する磁気抵抗素子により構成されている。
【0027】
そして、この回転角度検出装置では、ユーザによるステアリングホイールの回転操作に伴ってステアリングシャフトSが回動するとメインギヤ10が回動し、これに伴って第1及び第2の検知ギヤ11,12が回動する。また、第1及び第2の検知ギヤ11,12の回動に伴って上記第1及び第2の磁石13,14が回動するとこれらの磁石13,14から発せられる磁界の方向が変化し、第1及び第2の磁気検出部16,17の電圧信号がそれぞれ変化する。そして、この回転角度検出装置では、これら第1及び第2の磁気検出部16,17のそれぞれの電圧信号に基づいてメインギヤ10の回転角度を、換言すればステアリングホイールの操舵角を絶対角度及び相対角度で検出する。
【0028】
図3は、この回転角度検出装置のシステム構成をブロック図として示したものであり、次に、この図3を参照して、本実施形態にかかる回転角度検出装置の構成をより具体的に説明する。
【0029】
同図3に示されるように、上記第1及び第2の磁気検出部16,17の出力信号は、それらの信号に基づいてステアリングホイールの操舵角を絶対角度及び相対角度で検出する部分として機能するマイクロコンピュータ(マイコン)20に入力されている。すなわち、このマイコン20は、第1の磁気検出部16の出力信号に基づいて先の特許文献1に記載の回転角度検出装置による演算処理に準じた演算処理を実行することにより、メインギヤ10の回転角度の相対角度を示す信号を生成する。換言すれば、ステアリングホイール操舵角の相対角度を示す信号(相対角度信号)を生成する。また、マイコン20は、第1及び第2の磁気検出部16,17のそれぞれの出力信号に基づいて先の特許文献2に記載の回転角度検出装置による演算処理に準じた演算処理を実行することにより、メインギヤ10の回転角度の絶対角度を示す信号を生成する。換言すれば、ステアリングホイールの操舵角の絶対角度を示す信号(絶対角度信号)を生成する。
【0030】
また、この車両には、上述した横滑り防止システムにかかる各種制御を統括的に実行する横滑り防止システム制御装置30と、上述したBGMシステムにかかる各種制御を統括的に実行するBGMシステム制御装置31とが搭載されている。ただし、車両によっては横滑り防止システムのみを搭載している車両もあり、こうした車両は横滑り防止システム制御装置30のみを有している。また、車両によってはBGMシステムのみを搭載している車両もあり、こうした車両はBGMシステム制御装置31のみを有している。なお、横滑り防止システム制御装置30は、ステアリングホイールの相対角度に基づいて横滑り防止システムにかかる各種制御を実行し、また、BGMシステム制御装置31は、ステアリングホイールの絶対角度に基づいてBGMシステムにかかる各種制御を実行する。
【0031】
そして、横滑り防止システム制御装置30に内蔵されている不揮発性のメモリ30aにはステアリングホイールの相対角度を必要とすることを示す必要角度情報が、また、BGMシステム制御装置31に内蔵されている不揮発性のメモリ31aには、ステアリングホイールの絶対角度を必要とすることを示す必要角度情報がそれぞれ記憶されている。ここで、マイコン20は、各制御装置30,31のメモリ30a,31aに記憶されている必要角度情報を取得するとともに、この取得した必要角度情報に基づいて上記相対角度信号及び絶対角度信号のいずれの信号を各制御装置30,31に出力するかを判断する。また、マイコン20は、この判断結果に基づいて相対角度信号及び絶対角度信号のいずれかの信号を生成し、生成された信号を各制御装置30,31に出力する。
【0032】
ちなみに、同図に示されるように、本実施形態にかかる回転角度検出装置には、車載バッテリ40の電圧に基づき定電圧を出力する定電圧回路21が設けられており、この定電圧回路21から出力される定電圧により上記第1及び第2の磁気検出部16,17やマイコン20の駆動電源が確保されている。また、同図において、符号41は当該車両のイグニッションスイッチを示している。
【0033】
次に、図4,図5を参照して、マイコン20を通じて生成される相対角度信号α及び絶対角度信号βについて説明する。図4及び図5は、ステアリングホイールの操舵角θを横軸に、また相対角度信号α及び絶対角度信号βを縦軸にとって、相対角度信号α及び絶対角度信号βの信号波形の一例をそれぞれ示したものである。なお、この図4及び図5では、ステアリングホイールが所定の基準位置に位置しているときの操舵角θを「0°」として示している。また、このステアリングホイールの操舵角θは、上記メインギヤ10が上記矢印c1で示す方向に回動したときに正の値に変化するものとして示している。
【0034】
同図4に示されるように、相対角度信号αは、例えばステアリングホイールの操舵角θが、出力分解能「1°」で、「0°〜89°」の範囲や「90°〜179°」の範囲で変化したときに「0〜89」の範囲で直線状に変化する信号である。換言すれば、この相対角度信号αは、ステアリングホイールの操舵角θが「90°」変化する毎に単調増加を繰り返して鋸波状に変化する信号である。
【0035】
一方、図5に示されるように、絶対角度信号βは、例えばステアリングホイールの操舵角θが「0°〜1620°」の範囲で変化したときに「0〜1620」の範囲で直線状に変化する信号であり、操舵角θの値と一対一に対応する値を示す。ちなみに、この絶対角度信号βは、このステアリングホイールの操舵角θが「0°〜1620°」の範囲外の値をとると、その値が操舵角θの値と一対一に対応しなくなる、いわゆるオーバーフローが生じる。
【0036】
そして、図6は、上記マイコン20を通じて実行される、相対角度信号α及び絶対角度信号βのいずれの信号を生成して上記各制御装置30,31に出力するかを決定する処理についてその処理手順をフローチャートとして示したものであり、以下、この図6に基づいて同処理の具体的手順を総括する。なお、この図6に示す処理は、車両の組み立て後に上記イグニッションスイッチ41が初めてオン操作されて上記定電圧回路21を介して定電圧がマイコン20に初めて供給されたときに実行される。
【0037】
同図6に示されるように、この処理では、まず、各制御システムの必要角度情報が取得される(ステップS1)。具体的には、例えば横滑り防止システム及びBGMシステムの双方が搭載されている車両にあっては、各制御装置30,31のメモリ30a,31aから必要角度情報が取得される。一方、例えば横滑り防止システムのみが搭載されている車両にあっては、横滑り防止システム制御装置30のみから必要角度情報が取得される。
【0038】
そして、このステップS1の処理に続いて、取得した必要角度情報に基づいてステアリングホイールの絶対角度を必要とする制御システムが存在しているか否かが判断される(ステップS2)。具体的には、まず、上記取得した必要角度情報に基づいて上記各制御装置30,31がステアリングホイールの相対角度及び絶対角度のいずれを必要としているかを判断する。続いて、この判断結果に基づいてステアリングホイールの絶対角度を必要とする制御装置が少なくとも1つ存在していることが検知されたとき、ステアリングホイールの絶対角度を必要とする制御システムが存在している旨が判断される。
【0039】
そして、絶対角度信号を必要とする制御システムが存在している旨が判断された場合には(ステップS2:YES)、上記絶対角度信号βを生成するとともに、生成した絶対角度信号βを上記各制御装置30,31に出力する状態に設定されて(ステップS3)、マイコン20はこの一連の処理を終了する。
【0040】
一方、ステップS2に処理において、取得した必要角度情報に基づいてステアリングホイールの絶対角度を必要とする制御システムが存在していないことが検知された場合には、換言すればステアリングホイールの相対角度を必要とする制御システムのみが存在していることが検知された場合には、絶対角度を必要とするシステムが存在していない旨が判断される(ステップS2:NO)。そしてこの場合には、上記相対角度信号αを生成するとともに、生成した相対角度信号αを上記各制御装置30,31に出力する状態に設定されて(ステップS4)、マイコン20はこの一連の処理を終了する。
【0041】
回転角度検出装置としてのこうした構成によれば、横滑り防止システム及びBGMシステムの双方が搭載されている車両では、各制御装置30,31に絶対角度信号βが出力されるようになる。また、BGMシステムのみが搭載されている車両でも、同様に、BGMシステム制御装置31に絶対角度信号βが出力されるようになる。このため、BGMシステム制御装置31の正常な動作を確保することができる。一方、横滑り防止システムのみが搭載されている車両では、横滑り防止システム制御装置30に相対角度信号αが出力されるようになる。そして、このように横滑り防止システム制御装置30に相対角度信号αが出力されるようになることにより、仮に当該回転角度検出装置がステアリングシャフトSに誤組み付けされるような異常事態が生じたとしても、同横滑り防止システム制御装置30に入力される信号にオーバーフローが生じることはない。したがって、仮にこうした異常事態が生じたとしても、横滑り防止システム制御装置30の適正な動作を確保することができるようになるため、同横滑り防止システムの誤動作を抑制することができるようになる。
【0042】
なお、本実施形態にかかる回転角度検出装置によれば、例えば横滑り防止システム制御装置30に相対角度信号αを出力するとともに、BGMシステム制御装置31に絶対角度信号βを出力するといった構成を採用することも一応は可能である。ただし、仮にこうした構成を採用するようにしたとしても、絶対角度信号βにオーバーフローが生じてしまえば、結局、BGMシステム制御装置31は誤動作してしまう。そして、このようにBGMシステム制御装置31が誤動作してしまえば、車両のBGMシステムの機能が正常に働かなくなるため、車両全体としての正常な動作に支障をきたすおそれがある。したがって、本実施形態にかかる回転角度検出装置によるように、車両に横滑り防止システムのみが搭載されている場合に限り横滑り防止システム制御装置30に相対角度信号αを出力するといった構成を採用するようにすることで、車両全体としての正常な動作を確保するといった効果を十分に得ることはできる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態にかかる回転角度検出装置によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)各制御装置30,31がステアリングホイールの相対角度及び絶対角度のいずれを必要としているかを判断するとともに、その判断結果に基づいてステアリングホイールの絶対角度を必要とする制御システムが少なくとも1つ検知された場合には各制御装置30,31に絶対角度信号βを出力するようにした。また、ステアリングホイールの相対角度を必要とするシステムのみが検知された場合には各制御装置30,31に相対角度信号αを出力するようにした。これにより、横滑り防止システム及びBGMシステムの双方が搭載されている車両、あるいはBGMシステムのみが搭載されている車両では、BGMシステム制御装置31の正常な動作を確保することができるようになる。また、横滑り防止システムのみが搭載される車両では、仮に当該回転角度検出装置がステアリングシャフトSに誤組み付けされるような異常事態が生じたとしても、横滑り防止システム制御装置30の適正な動作を確保することができるため、横滑り防止システムの誤動作を抑制することができるようになる。また、こうした構成を採用するようにすれば、車両全体としての正常な動作を確保するといった効果を十分に得ることはできる。
【0044】
(2)各制御装置30,31のメモリ30a,31aにステアリングホイールの相対角度及び絶対角度のいずれが必要であるかを示す必要角度情報を予めそれぞれ記憶させるようにした。そして、メモリ30a,31aに記憶されている必要角度情報を取得して、取得した必要角度情報に基づいて各制御装置30,31が相対角度及び絶対角度のいずれを必要としているかを判断するようにした。これにより、各制御装置30,31が相対角度及び絶対角度のいずれを必要としているかを容易に判断することができるようになる。
【0045】
(3)先の特許文献2に記載の回転角度検出装置を利用してステアリングホイールの相対角度及び絶対角度を検出するようにした。これにより、ステアリングホイールの相対角度及び絶対角度を容易に検出することができるようになる。
【0046】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・横滑り防止システム及びBGMシステムの双方が搭載されている車両にあっては、横滑り防止システム制御装置30に相対角度信号αを、またBGMシステム制御装置31に絶対角度信号βを出力するようにしてもよい。こうした構成を採用することにより、仮に当該回転角度検出装置がステアリングシャフトSに誤組み付けされるような異常事態が生じて絶対角度信号βにオーバーフローが生じたとしても、少なくとも横滑り防止システム制御装置30の適正な動作を確保することができるため、横滑り防止システムの誤動作を回避することができるようになる。
【0047】
・上記実施形態では、上記車両の組み立て後に上記イグニッションスイッチ41が初めてオン操作されて上記定電圧回路21を介して定電圧がマイコン20に初めて供給されたときに図6に例示した処理を実行するようにした。これに代えて、例えばイグニッションスイッチ41がオン操作される毎に図6に例示した処理を実行するようにしてもよい。
【0048】
・上記実施形態では、各制御装置30,31のメモリ30a,31aにステアリングホイールの相対角度及び絶対角度のいずれが必要であるかを示す必要角度情報を予め記憶させるようにした上で、この必要角度情報を取得することにより各制御装置が相対角度及び絶対角度のいずれを必要としているかを判断するようにした。これに代えて、例えば各制御装置30,31がステアリングホイールの相対角度及び絶対角度のいずれを必要としているかを示す情報をマイコン20に内蔵されているメモリに記憶させる。そして、このマイコン20のメモリに記憶されている情報に基づいて各制御装置30,31が相対角度及び絶対角度のいずれを必要としているかを判断するようにしてもよい。要は、マイコン20において各制御装置30,31がステアリングホイールの相対角度及び絶対角度のいずれを必要としているかを判断することができる回転角度検出装置であればよい。
【0049】
・上記実施形態では、先の特許文献2に記載の回転角度検出装置、すなわち1つのメインギヤ10と2つの検知ギヤとを備える回転角度検出装置を利用してステアリングホイールの絶対角度及び相対角度を検出するようにした。これに代えて、例えばメインギヤ10の周方向にそれぞれパターンの異なる複数のスリット列を設けた上で、各スリット列に対応する位置に光センサを配置する。そして、それらスリット列のスリットの有無に応じて各光センサから出力される信号に基づいてステアリングホイールの相対角度及び絶対角度を検出するようにしてもよい。要は、ステアリングホイールの操舵角を相対角度及び絶対角度で検出することが可能な回転角度検出装置であればよい。
【0050】
・横滑り防止システム制御装置30がステアリングホイールの絶対角度を必要とするものであって且つ、BGMシステム制御装置31がその相対角度を必要とするものであっても本発明は同様に適用することができる。また、各制御装置30,31がステアリングホイールの絶対角度を必要とするものであっても、あるいはそれらがステアリングホイールの相対角度を必要とするものであっても、本発明は同様に適用することができる。
【0051】
・上記実施形態では、相対角度信号、あるいは絶対角度信号を出力する対象として、横滑り防止システム制御装置30及びBGMシステム制御装置31を採用するようにした。これらの制御装置に代えて、あるいはこれらの制御装置に加えて、例えばステアリングホイールと車両の操舵輪との間の機械的な連結を排除した上で、ステアリングホイールの操舵角に基づいて操舵輪を転舵させるようにした、いわゆるステアバイワイヤシステムについてその各種制御を統括的に司る制御装置を採用するようにしてもよい。すなわち、相対角度信号、あるいは絶対角度信号を出力する対象は、ステアリングホイールの相対角度、あるいは絶対角度に基づいて各種制御を実行する制御装置であればよい。
【0052】
・上記実施形態では、検出対象となる回転体として車両のステアリングホイールを採用したが、軸等の回転体の相対角度、あるいは絶対角度を必要とする各種制御システムにそれらの角度情報を出力する回転角度検出装置であれば、本発明にかかる回転角度検出装置は適宜適用することができる。
【0053】
・上記実施形態にかかる回転角度検出装置を利用して、例えば各制御装置30,31に絶対角度信号βを出力している状況で同絶対角度信号βがオーバーフローするおそれがあることが検知されたときに、各制御装置30,31に出力する信号を絶対角度信号βから相対角度信号αに切り替えるといった制御を行うことも可能である。
(付記)
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
【0054】
(イ)請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転角度検出装置において、前記回転体と一体的に回動するメインギヤと、該メインギヤに歯合する第1の検知ギヤと、該第1の検知ギヤと異なる歯数を有して前記メインギヤに歯合する第2の検知ギヤと、前記第1の検知ギヤの回転角度に応じた信号を出力する第1の信号出力部と、前記第2の検知ギヤの回転角度に応じた信号を出力する第2の信号出力部とを備え、前記第1及び第2の信号出力部のいずれか一方の信号出力部の出力信号に基づいて前記相対角度を示す信号を生成し、前記第1及び第2の信号出力部の双方の出力信号に基づいて前記絶対角度を示す信号を生成することを特徴とする回転角度検出装置。同構成によれば、基本的には先の特許文献2に記載の回転角度検出装置を利用して回転体の絶対角度及び相対角度の双方を検出することができるため、回転体の絶対角度及び相対角度の双方を検出することのできる回転角度検出装置を容易に実現することができるようになる。すなわち、上記請求項1〜3に記載の回転角度検出装置を容易に実現することができるようになる。
【0055】
(ロ)請求項1〜3、及び付記イのいずれか一項に記載の回転角度検出装置において、前記回転体は、車両のステアリングホイールであることを特徴とする回転角度検出装置。上述のように、車両には、ステアリングホイールの操舵角の相対角度、あるいはその絶対角度を利用して各種制御を行う制御システムが複数搭載される場合がある。したがって、こうしたステアリングホイールの操舵角を検出する回転角度検出装置に上記請求項1〜3、及び付記イに記載の装置が適用することの意義は大きい。
【符号の説明】
【0056】
10…メインギヤ、11…第1の検知ギヤ、11a…凸部、12…第2の検知ギヤ、12a…凸部、13…第1の磁石、14…第2の磁石、15…ハウジング、15a…凹部、16…第1の磁気検出部、17…第2の磁気検出部、18…基板、19…保持部材、20…マイクロコンピュータ(マイコン)、21…定電圧回路、30…横滑り防止システム制御装置、30a,31a…メモリ、31…BGMシステム制御装置、40…車載バッテリ、41…イグニッションスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象となる回転体の回転角度を相対角度及び絶対角度で検出することが可能であるとともに、この検出した相対角度を示す信号及び絶対角度を示す信号を前記回転体の回転角度に基づいて各種制御を実行する制御システムに出力する回転角度検出装置において、
前記制御システムが前記相対角度及び前記絶対角度のいずれを必要としているかを判断し、この判断結果に基づいて前記制御システムに前記相対角度を示す信号及び前記絶対角度を示す信号のいずれの信号を出力するかを決定する
ことを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
前記制御システムには、前記相対角度及び前記絶対角度のいずれが必要であるかを示す必要角度情報が予め記憶され、前記制御システムが前記相対角度及び前記絶対角度のいずれを必要としているかを判断するにあたり、前記制御システムから前記必要角度情報を取得し、この取得した必要角度情報に基づいて前記制御システムが前記相対角度及び前記絶対角度のいずれを必要としているかを判断する
請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項3】
前記制御システムに前記絶対角度を必要とするシステムが少なくとも1つ存在していることが検知されたとき、前記制御システムの全てに前記絶対角度を示す信号を出力し、前記制御システムの全てが前記相対角度を必要とするシステムであることが検知されたとき、前記制御システムの全てに前記相対角度を示す信号を出力する
請求項1又は2に記載の回転角度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−256232(P2010−256232A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108021(P2009−108021)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】